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特許異議申立

2026-700444

システム

審判番号
2026-700444
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-161773
登録番号
7773602
請求日
2026年05月19日
審決日
2026年07月02日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ソフトバンクグループ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】内野 雄二郎
審判長/審判官
  • 審判長 佐藤 智康
  • 審判官 田川 泰宏
  • 審判官 岩橋 龍太郎
分類
P1651.113-Y (G06Q) / P1651.121-Y (G06Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7773602号発明「システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7773602号の請求項1~2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7773602号の請求項1~2に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和6年9月19日(優先権主張 令和5年9月19日)に出願され、令和7年11月11日にその特許権の設定登録がされ、同年11月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年5月19日に特許異議申立人 内野 雄二郎(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7773602号の請求項1~2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明2」という。) 「【請求項1】 事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段と、 企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、前記データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段と、 前記マッチングの結果に基づいて、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、前記マッチングの結果が表す候補企業と、前記候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する手段と、 前記生成されたデータを提示する手段と、 を含むシステム。 【請求項2】 交渉を開始した後に、交渉担当者の感情を、感情エンジンを用いて推定する手段と、 前記交渉担当者の感情の推定結果である感情データおよび企業合併のデータベースの解析結果に基づいて、次の交渉戦略を生成するためのプロンプト文を生成し、前記生成AIモデルに入力して、次の交渉戦略を生成して提案する手段とを更に含む請求項1記載のシステム。」 第3 申立理由の概要 1 申立人の提出した証拠 申立人の提出した証拠は以下のとおりである。 (なお、甲第1号証~甲第11号証を以下それぞれ、「甲1」、「甲2」、・・・、という。) 甲第1号証:特開2021-57049号公報 甲第2号証:“M&Aクラウド、生成AIによる『シナジー提案』でマッチングをより効果的に効率的に~買い手企業は“待っているだけ”でスカウト候補企業が見つかる~” 甲第3号証:“【プレスリリース】M&Aクラウド、「AIおすすめ機能」で買い手企業のスカウト件数が120%増加” 甲第4号証:“10 best ChatGPT and GPT-4 prompts for product managers” 甲第5号証:“How to Use ChatGPT to Sell Your Business (in M&A) [includes a Prompt]” 甲第6号証:“10 best ChatGPT and GPT-4 prompts for seed stage founders” 甲第7号証:“80 Genius ChatGPT Prompts for Marketing to Save You Hours” 甲第8号証:“遊佐 優|M&A × AI” 甲第9号証:“ChatGPT Prompts For Partnership Marketing” 甲第10号証:国際公開第2016/178329号 甲第11号証:特許第6747683号公報 2 申立人の主張 申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 (1)申立理由1(新規性) ア 本件発明1は、甲1記載の発明と同一であるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。(異議申立書第51頁) イ 本件発明1は、甲2記載の発明と同一であるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。(異議申立書第52頁) (2)申立理由2(進歩性) ア 甲1を主引例とする場合 (ア)本件発明1は、甲1記載の発明に基づいて、又は、甲1記載の発明及び甲4~9に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(異議申立書第51頁) (イ)本件発明2は、甲1記載の発明及び甲10~11に開示された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(異議申立書第54頁) イ 甲2を主引例とする場合 (ア)本件発明1は、甲2記載の発明に基づいて、又は、甲2記載の発明及び甲4~9に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(異議申立書第53頁) (イ)本件発明2は、甲2記載の発明及び甲10~11に開示された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(異議申立書第54頁) 第4 甲号証 1 甲1~11の記載事項 (1)甲1の記載 本件特許出願の優先日前に公開された甲1には、以下の記載がある(下線は当審において付加した。以下同じ。)。 「【請求項1】 売り手に関する第1の企業情報及び買い手に関する第2の企業情報を取り込む情報入力部と、 前記第1の企業情報と前記第2の企業情報とに基づき、前記売り手と前記買い手との間でマッチング処理を実行するマッチング処理部と、を備え、 前記マッチング処理部は、 前記第1の企業情報及び前記第2の企業情報のうち、主観的かつ定性的な情報に基づいてマッチング処理を実行してマッチング候補を抽出することを特徴とするマッチングシステム。」 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、企業買収等において売り手と買い手とのマッチングを図るマッチングシステムに関する。 【背景技術】 【0002】 企業等の経営者が、例えば事業展開を推し進める目的で、あるいは後継者不在等の問題を解消する目的で、他企業の買収、他企業との提携、事業譲渡、会社譲渡等を模索することがある。このような一般にM&A(Mergers and Acquisitions)と称される活動においては、例えば売り手側の条件と買い手側の条件とをクラウド上に構築されたシステムに蓄積し、売り手側と買い手側とが提示した条件に基づくマッチングサービスを提供する、いわゆるマッチングサイト(M&Aプラットフォーム等と称される。)が存在する。 【0003】 しなしながら、ほとんどのマッチングサイトではあくまでサイト運営者によるマッチングを補完するための情報を掲載するに留まるのが実情である。このとき、マッチングは、実質的にサイト運営者が雇用する担当者等の経験や勘等による手法で紹介・斡旋が行われることになり、マッチングを希望する利用者にとって、マッチングの完結までに多大の時間と経費とを要することとなる。 【0004】 更に、マッチングサイトにおいては、利用者が自ら情報を登録し、売り手や買い手としての希望条件を提示することになるが、特に売り手の希望条件については希望譲渡価格が高額になりすぎることが多い。即ち、売り手は譲渡対象の客観的価値についてアドバイスを受ける機会に乏しく、売り手が提示する希望価格は独りよがりで説得力のない価格となっていることが多い。このような場合、売り手が提示した情報をマッチングサイトに掲載しても成約に至ることは実質的に困難である。 【0005】 更に、特に買い手は、自社の利益を増大する目的で売り手を選択しようとするが、例えば売上高や利益といった経営数値のみを重視して売り手を選択した場合、中長期的に見たときに買い手のメリットになるとは言い難いケースがある。 【0006】 さて、このマッチングサービスに関して、例えば、売方企業の企業情報と、買方企業のM&Aに関する希望条件とに基づき、売方企業と買方企業とのM&Aに関する適合性を表す指標であるスコアを算出し、買方企業の希望条件との間のスコアが高い順に、売方企業を並べたマッチング結果を求め、マッチング結果を買方企業に示すM&A候補表示方法が知られている。(特許文献1) 【0007】 特許文献1によれば、スコアを算出する際に、事業内容、事業エリア、従業員数、売上高、純資産、希望スキーム、希望売却額といった希望条件中、数値範囲で示される個別条件に関しては、数値範囲中に数値範囲に対応する個別情報である数値が入らない場合であっても、数値範囲と数値との距離に基づき合致度を算出することで、より効率的にマッチングを行うことができるM&Aマッチングサービスを実現するための装置及び方法を提供することができるとされている。 【0008】 また、M&Aに関するマッチングサービスについては直接的に言及されていないものの、コンピュータネットワーク上で顧客とウェブサイト運営者とをマッチングさせるネットワークナビエージェントシステムが知られている。 【0009】 当該ネットワークナビエージェントシステムでは、音声入力部から入力された利用者の音声を基に音声認識部がテキストデータを出力する。このテキストデータを基に文章理解部が意味を解釈し、ウェブサイトのカテゴリーを絞り込む。必要に応じてさらに、発話文生成部がカテゴリーの絞り込みのための質問等の文章を生成し、音声出力部から出力する。この質問等に対する利用者の応答は再び音声入力部から入力される。補助的にキー入力部からの入力も用いる。サイト決定部は、サイト属性データおよび顧客属性データを参照して、絞り込まれたカテゴリーに属する、利用者に合ったアクセス先サイトを決定する。 (特許文献2) 【0010】 特許文献2によれば、利用者による複雑な操作を必要とせずに、コンピュータネットワーク上で顧客とウェブサイト運営者とをマッチングさせるネットワークナビエージェントシステムを提供することができるとされている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0011】 【特許文献1】特開2017-078985号公報 【特許文献2】特開2002-007459号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 しかしながら、特許文献1に記載された技術は、マッチングサービスを提供するシステム(マッチングシステム)に入力された売方企業の企業情報と、買方企業のM&Aに関する希望条件とに基づいて、スコアリング手段が売方企業と買方企業とのM&Aに関する適合性を表す指標であるスコアを算出するとしているが、当該スコアの算出は、売方企業の企業情報、及び買方企業のM&Aに関する希望条件が正確であること(信頼性が確保されていること)が前提となっている。 【0013】 現実問題として、売り手と買い手とが共に十分な実務能力を有する財務部門等を組織内に備える場合はともかく、例えば年商が3億円以下といった中小企業等の場合、独立した財務部門を持たない(その多くが、企画や経理部門等が代替的に財務業務を手掛ける)企業体も数多く存在する。このような企業体では財務に関するリテラシーの低さは否めず、M&Aを遂行する際の実務能力が不足していることも多い。例えば売り手の企業情報等における特定の情報の意味に対する担当者の理解不足や、マッチングシステムに対して入力される情報の正確性(信頼性)が低下してしまうおそれは否めない。信頼性が低い情報に基づくマッチングでは、売り手と買い手との間に認識のギャップが生まれることは避けようがない。即ち、特許文献1に記載された技術は、マッチングの基礎となる情報の信頼性の向上を図るための具体的な手段は何ら示唆されておらず、結果的に信頼性を確保する観点では不十分であり、マッチングシステムによってM&Aをスムーズに進展させることは困難と考えられる。 【0014】 また、特許文献2に記載された技術は、コンピュータネットワーク上で顧客とウェブサイト運営者とをマッチングする際に、音声認識部、文書理解部及び発話文生成部によって利用者に合ったアクセス先サイトを決定しているが、特許文献2においては、あくまでも、音声によってシステムと顧客とがやりとりをすることで、顧客の希望する情報が得られると考えられるアクセス先サイトを決定しているにすぎず、顧客が伝えた情報が正確なものであるか否かについては、考慮されていない。 【0015】 本発明は、このような従来技術の課題を解決するべく案出されたものであり、利用者との間でインタラクティブ性及びリアルタイム性を備え、利用者が提供(入力等)した情報の信頼性を向上させることが可能な情報入力装置、及びこの情報入力装置によって信頼性が向上した情報に基づいて、他企業の買収、他企業との提携、事業譲渡、会社譲渡等(以降、これらをまとめて「企業買収等」と称することがある。)の際に、複数の利用者(例えば、売り手と買い手)の間でマッチングを図ることが可能なマッチングシステムを提供することにある。」 「【発明を実施するための形態】 【0036】 (第1実施形態) 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るマッチングシステムS1の概要を示す機能ブロック図である。マッチングシステムS1は、第1の情報端末1と、第2の情報端末2と、第3の情報端末3と、サーバ4とで構成される。なお、図1において実線はデータの流れを、破線は人的な情報の流れを、一点鎖線は金銭(対価45)の流れを示している。 【0037】 第1の情報端末1と第2の情報端末2とは、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、いわゆるAIスピーカ等の機器であって、音声、テキスト、画像の少なくとも一つのコンテンツを用いて、機器を使用する者との間で双方向(インタラクティブ)に情報をやりとりする。ここで、第1の情報端末1は、第1の利用者21a(ここでは売り手)が使用し、第2の情報端末2は、第2の利用者21b(ここでは買い手)が使用する。なお、以降の説明において第1の利用者21aと第2の利用者21bとを区別しないときは、単に「利用者21」と称する。第1の情報端末1と第2の情報端末2とは、利用者21が情報を入力し、更に利用者21に対して情報を提示/提供するインタフェース(例えば図示しない表示装置やスピーカ)を備えている。 【0038】 第3の情報端末3も、第1の情報端末1あるいは第2の情報端末2と同様の機器で構成され、第3の利用者23(ここでは仲介業者。マッチングサイトの運営者であってもよい。)が使用する。 【0039】 サーバ4には、情報入力部4aとマッチング処理部4bとが含まれている。以下、まず情報入力部4aについて説明する。情報入力部4aは、利用者21との間で対話を行うロボットとしての第1のチャットボット31a及び第2のチャットボット31bと、信頼性向上部4eとを含む。第1のチャットボット31aは、第1の情報端末1との間で双方向(インタラクティブ)かつリアルタイムに情報をやりとり(送受信)することで、第1の情報端末1を介して第1の利用者21aとの間でコミュニケーションを成立させる。また、第2のチャットボット31bは、第2の情報端末2との間で双方向かつリアルタイムに情報をやりとり(送受信)することで、第2の情報端末2を介して第2の利用者21bとの間でコミュニケーションを成立させる。 【0040】 なお、ここでいう「リアルタイム」とは、真の即時応答を意味するものではない。現実問題としてサーバ4の応答時間(レスポンスタイム)はサーバ4の処理能力や処理するタスク・プロセスの負荷等に応じて変化する。従ってここでは、少なくとも利用者21との間でコミュニケーションを継続することが可能な応答時間の範囲でチャットボット31が利用者21に応答すれば、「リアルタイム」にやりとりを行っているものとする。 【0041】 また、以降の説明において第1のチャットボット31aと第2のチャットボット31bとを区別しないときは、単に「チャットボット31」と称する。また、図1においては、便宜上、第1のチャットボット31aと第2のチャットボット31bとを区別して記載しているが、チャットボット31が利用者21を例えばID(IDentification:識別子)で判別して、各利用者21に対して個別に応答を行うように構成すれば、チャットボット31は単一であってもよい。 【0042】 信頼性向上部4eは、チャットボット31が利用者21との間でコミュニケーションを図ることで、利用者21から提供された情報(第1の所定の情報及び第2の所定の情報)の信頼性を向上させる(信頼性向上部4eの機能及び動作については後に詳述する)。信頼性の向上が図られた、利用者21が提供した情報は、サーバ4から第3の情報端末3に送信され、第3の情報端末3を介して第3の利用者23に提供されるとともに、信頼性の向上が図られた、利用者21が提供した情報は、データベース4i(図2参照)に蓄積される。なお、サーバ4において情報入力部4aが機能を発揮しているとき、サーバ4は情報入力装置として機能することになる。 【0043】 次にマッチング処理部4bについて説明する。マッチング処理部4bは、信頼性向上部4eによって信頼性が向上された、第1の利用者21a(売り手)が提供した情報及び第2の利用者21b(買い手)が提供した情報に基づいて、売り手と買い手との双方の条件を満たす、あるいは一部に条件に違いがあったとしても、多くの条件を満たしあう、売り手と買い手とを抽出し、マッチング候補として出力する。マッチング処理部4bは、マッチング候補を第3の情報端末3に送信するとともに、第1の利用者21a(売り手)に対してマッチング候補と第2の利用者21b(買い手)に関する情報とを送信し、また、第2の利用者21b(買い手)に対してマッチング候補と第1の利用者21a(売り手)に関する情報とを送信する。また、マッチング処理部4bは、マッチング候補をデータベース4i(図2参照)に格納する。 【0044】 そして、更に第3の情報端末3は、マッチング候補と利用者21に関する情報をエージェント40(ここでは、自然人あるいは法人)に送信する。エージェント40は、入手したこれらの情報に基づいて、第1の利用者21aまたは(及び)第2の利用者21bにコンタクトを行う。また逆に利用者21はエージェント40にコンタクトを行うこともできる。これによって売り手と買い手との間で企業買収等の具体的な協議が開始される。 【0045】 なお、マッチングシステムS1が介在することによって企業買収等が成立した場合、第1の利用者21a(売り手)は、第2の利用者21b(買い手)から対価45を受け取るとともに、第3の利用者23(仲介業者)に対し所定の手数料(対価45)を支払う。また、第2の利用者21b(買い手)は、第1の利用者21a(売り手)に対して、買収額としての金銭(対価45)を支払うとともに、第3の利用者23(仲介業者)に対し所定の手数料(対価45)を支払う。なお、図示はしていないが、第3の利用者23は、企業買収等が成立した場合等にエージェント40に対して報酬を支払う。 【0046】 また、マッチングシステムS1が仲介業者としての第3の利用者23によって運営されているようなケースにおいて、当該仲介業者が他の仲介業者にマッチングシステムS1の使用を許諾(ライセンス)しているような場合は、当該仲介業者は他の仲介業者からマッチングシステムS1の使用料を受領する。」 「【0055】 さて、データベース4iには、言語の使用方法を蓄積した文書集合としてのコーパス、テキストデータを単語に分割し「表層形」「原形」「品詞」「読み」等を付与する語句リストとしての辞書が構築されている。更にデータベース4iには、予め学習したチャットボット31の応答パターンが格納されている。この観点で、本実施形態におけるチャットボット31は、いわゆる機械学習を応用したAIチャットボットであり、後述する利用者21とチャットボット31とのやりとりは応答パターンとして追加学習に供される。 【0056】 演算部4fは、受信したテキストデータに対して言語を構成する最小単位である単語を切り出す形態素解析を行い、更にテキストデータの内容の曖昧性を排除するために構造解析を行う。次に演算部4fは、上述したコーパス、辞書を参照して得た複数の語彙の関係性に基づき、データベース4iを検索して、利用者21に対する応答に必要となる情報を取得する。このようにして得られた情報をチャットボット31の応答パターンと組み合わせることで、あるいは既にデータベース4iに格納されている応答パターンをそのまま利用することで、最終的に利用者21に応答するテキストデータが生成される。 【0057】 なお、利用者21に対する応答には、利用者21からの質問に対して回答する回答テキストデータと、利用者21に対して質問を行う質問テキストデータとが含まれる。上述した信頼性向上部4eは、この回答テキストデータと質問テキストデータとによって(以降、回答テキストデータと質問テキストデータとを合わせて「応答テキストデータ」と称することがある。)、利用者21の提供した情報の信頼性を高める。 【0058】 チャットボット31が音声によって利用者21とやりとりしている場合、演算部4fは生成した応答テキストデータを発話生成部4mに出力する。発話生成部4mは、入力された応答テキストデータに基づき、ディジタル音声データを生成し、演算部4fに送信する。演算部4fは入手したディジタル音声データ(応答音声データ)を、送受信部4hを介して利用者21が使用する情報端末(例えば第1の情報端末1)に送信する。チャットボット31がテキストデータを用いて利用者21とやりとりしている場合、演算部4fは、応答テキストデータをそのまま利用者21が使用する情報端末に送信する。利用者21は、受信した応答音声データあるいは応答テキストデータを情報端末で取得することで、チャットボット31との間でコミュニケーションが継続する。」 「【0064】 まず、第1ステージ[興味]の段階における、利用者21とチャットボット31とのやりとり、及び信頼性向上処理の内容について説明する。[表1]は、企業買収等を受けようとする売り手としての第1の利用者21aがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び譲渡希望条件を記入するフォーム(「第1の所定の情報」。以下、単に「売り手記入フォーム」と称することがある。)の一例である。なお、[表1]では、既に信頼性向上部4eによって信頼性が向上された情報が記載されている。 【0065】 【表1】 [図:0001437449000001.jpg] 【0066】 第1の利用者21aは、まず第1の情報端末1に表示された売り手記入フォームに必須項目を入力し、例えば表示画面に表示された「登録」のアイコンをタップ等する。売り手記入フォームは第1の情報端末1からサーバ4に送信され、記憶部4gに一時的に保存される。信頼性向上部4eはデータベース4iにアクセスして売り手記入フォームに関するチェック項目を得て、売り手記入フォームの内容に不備があると判断した際に、第1のチャットボット31aを起動して、第1の利用者21aとの間でチャットを開始する。もちろん、売り手記入フォームへの記入に先立ち、演算部4fが第1のチャットボット31aを起動して、第1のチャットボット31aが第1の利用者21aに対して記入を促すようにしても構わない(以降説明する、利用者21による各種フォームへの入力に際しても同じ)。また利用者21がマッチングシステムS1の利用に際して所定のアプリケーションを起動した際に、演算部4fがチャットボット31を起動して、利用者21に対する各種サービスの案内を行っても構わない。 【0067】 本例においては、例えば会社名が単に「マゴコロ建設」となっている場合を仮定すると、第1の情報端末1の表示画面には「御社は株式会社ですか?」のテキストが表示される。第1の利用者21aが「はい。そうです。」と応答すれば、第1のチャットボット31aは「了解しました。」の旨を第1の利用者21aに通知するとともに、記載漏れの内容を信頼性向上部4eに出力し、信頼性向上部4eは売り手記入フォームの会社名を「マゴコロ建設株式会社」に修正し、修正された情報を、ネットワーク6を介して第1の情報端末1に送信する。 【0068】 仮に、第1の利用者21aが「御社は株式会社ですか?」の質問に対して「いいえ。」と回答した場合、第1のチャットボット31aは、「それでは、御社の会社の形態は、合同会社、合名会社、合資会社のいずれですか?」と質問する。第1の利用者21aは、この第1のチャットボット31aの質問に対して、「合同会社です。」のように回答を行い、これを受けた信頼性向上部4eは、会社名を「マゴコロ建設合同会社」に修正し、この修正内容が第1の情報端末1に表示される。このように、第1の利用者21aと第1のチャットボット31aとの間では、双方向性(インタラクティブ性)と、コミュニケーションが継続する観点においてリアルタイムのチャットが行われる。 【0069】 このように、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働することで得られた「信頼性が向上された情報」は、サーバ4から第1の情報端末1に送信される。これによって、第1の利用者21aは自ら第1の情報端末1を操作することなく、売り手記入フォームに記載された項目は「信頼性が向上された情報」に更新される。 【0070】 更に、信頼性向上部4eは、例えば会社名をキーとしてインターネットを検索し、当該企業の情報を取得し、例えば本店所在地に誤りを発見した場合、第1のチャットボット31aは、その誤りを第1の利用者21aに指摘して、修正に導くようにすることも可能である。このようにして、信頼性が向上された売り手記入フォームはデータベース4iに記憶される。 【0071】 即ち、本発明に係る情報入力装置(情報入力部4a)は、第1の利用者21aが使用する第1の情報端末1との間で通信を行って、第1の情報端末1から第1の利用者21aが提供する第1の所定の情報(ここでは、売り手記入フォーム)を取り込む情報入力装置であって、情報入力装置は、第1の情報端末1から第1の所定の情報を取り込む際に、第1の情報端末1との間でインタラクティブかつリアルタイムに通信を行って、第1の利用者21aから提供される第1の所定の情報の信頼性を高める信頼性向上部4eを備える。また、情報入力装置は、第1のチャットボット31aを用いて、第1の情報端末1を介して第1の利用者21aとの間で、少なくとも音声またはテキストによってコミュニケーションを図る。 【0072】 [表2]は、企業買収等を行おうとする買い手としての第2の利用者21bがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び買収希望条件を記入するフォーム(「第2の所定の情報」。以下、単に「買い手記入フォーム」と称することがある。)の一例である。なお、[表2]では、既に信頼性向上部4eによって信頼性が向上された情報が記載されている。 【0073】 【表2】 [図:0001437449000002.jpg] 【0074】 第2の利用者21bは、まず第2の情報端末2に表示された買い手記入フォームに必須項目を入力し、例えば表示画面に表示された「登録」のアイコンをタップ等する。買い手記入フォームは第2の情報端末2からサーバ4に送信され、記憶部4gに一時的に保存される。信頼性向上部4eはデータベース4iにアクセスして買い手記入フォームに関するチェック項目を得て、買い手記入フォームの内容に不備があると判断した際に、第2のチャットボット31bを起動して、第2の利用者21bとの間でチャットを開始する。この過程については[表1](売り手記入フォーム)を用いて説明した内容と実質的に同一であるので、説明は省略する。最終的に、買い手記入フォームはサーバ4のデータベース4iに格納される。 【0075】 このように、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働することで得られた「信頼性が向上された情報」は、サーバ4から第2の情報端末2に送信される。これによって、第2の利用者21bは自ら第2の情報端末2を操作することなく、買い手記入フォームに記載された項目は「信頼性が向上された情報」に更新される。また、買い手記入フォームについても、第2の利用者21bと第2のチャットボット31bの間では、双方向性(インタラクティブ性)と、コミュニケーションが継続する観点においてリアルタイムのチャットが行われる。 【0076】 サーバ4のマッチング処理部4bは、データベース4iに売り手記入フォームが新規に登録されると、これまでに既に登録されている買い手記入フォームとの間で、マッチング処理を実行する。またデータベース4iに買い手記入フォームが新規に登録されると、これまでに既に登録されている売り手記入フォームとの間で、マッチング処理を実行する。また、利用者21は売り手記入フォームおよび買い手記入フォームの修正が可能となっており、マッチング処理部4bはこれらの記入フォームに修正が生じた場合も、再度マッチング処理を実行する。そしてマッチング処理の結果は、例えば[表2]の基本情報に含まれる会社名(ここでは、日本ホールディングス株式会社)あるいは当該会社名と紐づけられたコード情報(図示せず)をキーとして、データベース4iに記憶される。更に、最終的に企業買収等が成立した際に、その事実を示すフラグ(以降、「成立フラグ」と称することがある。)もデータベース4iに併せて記憶される。 【0077】 マッチング処理においては、記入フォームの各項目について重みづけ等を行って数値化(スコア化)してマッチング度を生成してもよく、マッチング処理部4bは、スコアの高い順にマッチング度のリストを生成してもよい。そしてマッチング処理部4bはマッチング処理の結果を演算部4fに出力し、演算部4fは、マッチング処理の結果を少なくとも、記入フォームを入力(あるいは修正)した利用者21に通知する。 【0078】 もちろん、第1の利用者21a及び第2の利用者21bの双方にマッチング処理の結果を通知してもよい。更にマッチング処理の結果は、第3の利用者23(仲介業者)にも通知され、仲介業者を介してエージェント40にも通知される。当該通知は、チャットボット31を介して行われることを想定しているが、第1の情報端末1ないし第3の情報端末3に表示された所定のダイアログボックスを介して行われてもよい。更に、当該通知は単なるインフォメーションとしてではなく、適切なパートナー候補を推薦するという観点で、スコアに基づくレコメンドの形式によって行われてもよい。 【0079】 即ち、本発明に係るマッチングシステムS1は、上述した情報入力装置(情報入力部4a)を備えるマッチングシステムであって、情報入力装置は、第2の利用者21bが使用する第2の情報端末2との間で通信を行って、第2の情報端末2から第2の利用者21bが提供する第2の所定の情報を取り込み、情報入力装置の信頼性向上部4eは、第2の情報端末2から第2の所定の情報を取り込む際に、第2の情報端末2との間でインタラクティブかつリアルタイムに通信を行って、第2の利用者21bから提供される第2の所定の情報の信頼性を高め、信頼性向上部4eによって信頼性の向上が図られた第1の所定の情報と第2の所定の情報とに基づいて、マッチング処理を行う。そして、情報入力装置は、第2のチャットボット31bを用いて、第2の情報端末2を介して第2の利用者21bとの間でコミュニケーションを図る。 【0080】 更に、マッチング処理部4bは、例えば第2の利用者21bについてマッチング処理を実行する際に、データベース4iに記憶された成立フラグを参照し、第2の利用者21bが過去に現実に企業買収等を成立させた際の傾向を学習しておき、学習した結果に基づいて記入フォームの各項目の重みづけを修正し、マッチング度を算出してもよい。具体的には、第2の利用者21bが、例えば特定の地域に本店所在地が登記されている企業または事業として飲食業を営む企業を選択的に買収している傾向が学習されている場合、マッチング処理部4bはそのような過去の傾向を参酌してマッチング度を算出する。これによってマッチング処理において、例えば垂直統合や水平統合といった利用者21のシナジー具現化の方針に基づいてマッチング度を算出することが可能となる。」 「【0112】 なお、上述の例では、財務資料フォーム(1)は、企業買収等を受けようと考える第1の利用者21aが、買い手側に提示する資料と想定して説明したが、この財務資料フォーム(1)は、マッチングシステムS1では買い手である第2の利用者21bにも提出を促すようアプリケーションプログラムが構成されている。そして、買い手が提出した財務資料フォーム(1)に対しても、信頼性向上部4eは第2のチャットボット31bと協働して、第2の利用者21bとのチャットを通じてSWOT分析を支援し、財務資料フォーム(1)の記載を充実したもの(即ち、信頼性が向上されたもの)とする。その理由は、マッチング処理部4bによるマッチング結果を解析して、例えば「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」等のレコメンドを行うことが可能となるからである。なお、このとき買い手が提出する財務資料フォーム(1)は、「第2の所定の情報」に対応する。 【0113】 これによって、マッチングシステムS1は、複数の利用者21から提出されたSWOT分析の内容を「信頼性が向上された第1の所定の情報」及び「信頼性が向上された第2の所定の情報」として取り扱い、マッチング処理を行うことが可能となる。マッチング処理の結果は、例えばチャットボット31を介して「この企業は御社の弱みを潰してくれる。しかも財務条件もマッチングしています。私(チャットボット31)からコンタクトをしてみましょうか?」といったレコメンドを提供することも可能となる。このレコメンドに対して興味を持つ企業が現れれば、具体的な提携相手の情報を開示することも可能となる。 【0114】 更に、マッチング処理において、マッチング処理部4bは、データベース4iに記憶された成立フラグを参照し、買い手(第2の利用者21b)が過去に現実に企業買収等を成立させた際の売り手(第1の利用者21a)のSWOT分析の内容を買い手毎に学習する。ここである買い手が過去に複数の企業買収等を成立させている場合、次に同じ買い手が企業買収等を検討する際、マッチング処理部4bは、学習された「過去に現実に企業買収等が成立した売り手のSWOT分析の内容」を参照し、これと一致あるいは類似するSWOT分析の内容が記載された財務資料フォーム(1)を提出している売り手を抽出し、買い手に企業買収等の候補としてレコメンドする。 【0115】 即ち、本実施形態では、マッチング処理部4bは、「買い手(第2の利用者21b)による企業買収等が現実に成立した複数の売り手(第1の利用者21a)」に関する情報(ここではSWOT分析の内容)を学習し、買い手が新たに企業買収等を検討する際に、学習結果に基づき新たな売り手候補を抽出し、買い手に提示(レコメンド)する。」 「【図1】 [図:0001437449000003.jpg] 」 「【図2】 [図:0001437449000004.jpg] 」 (2)甲2の記載 本件特許出願の優先日後であって本件特許出願日前に公開された甲2には、以下の記載がある。 「株式会社M&Aクラウド(本社:東京都新宿区、代表取締役CEO:及川厚博、以下「当社」)が提供するM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」は、買い手企業が登録をした買収ニーズと、売り手企業との想定されるシナジーを提案する『シナジー提案機能』を開発しました。これにより、買い手企業は待っているだけでシナジーが見込める売り手企業の情報を受け取ることができるようになり、効率的にスカウト相手を見つけることが可能になります。本件は「GenerativeAI活用プロジェクト」第4弾です。」 「「AIおすすめ機能」の開発背景と効果 「M&Aクラウド」は、買い手企業が自社の買収ニーズにマッチしそうな売り手企業へ直接メッセージを送ることができる『スカウト機能』を有しており、買い手企業からのスカウトでM&A成約に至るケースは半数近くに上ります。また、2023年12月にリリースした『AIおすすめ機能』は、買い手企業とシナジー効果を見込める売り手企業を優先的に上位に表示する機能で、買い手企業はスカウト企業を自ら探すことなく、マッチする可能性の高い企業へのアプローチが可能となっていました。 今回リリースした『シナジー提案機能』は、シナジー効果を見込める売り手企業* 1 とのシナジー案をAIが生成し、プラットフォームのログイン画面およびメールにてお知らせする機能です。これにより、買い手企業は“待っているだけ”でスカウト候補企業およびシナジー提案の情報を受け取ることができ、より効率的で精度の高いマッチングを生み出すことができます。 *1 シナジーの見込める売り手企業の抽出には、『AIおすすめ機能』を活用しています」 「▽買い手企業から見た「シナジー提案」事例 [図:0001437449000005.jpg] 」 「「GenerativeAI活用プロジェクト」とは 2023年3月の「GenerativeAI活用プロジェクト」発表後、過去3回に渡り生成AI活用サービスについて発表してまいりました。今回のプロジェクトは第4弾です。今後も生成AIの活用で、プラットフォームやアドバイザリー業務に関わる業務の効率化やマッチング精度の向上を推進してまいります。」 (3)甲3の記載 本件特許出願の優先日後であって本件特許出願日前に公開された甲3には、以下の記載がある。 「「AIおすすめ機能」の開発背景と効果 求人広告型のM&Aプラットフォーム「M&Aクラウド」は、売り手企業から買い手企業に買収打診を送ることができる機能に加え、買い手企業が自社の買収ニーズに合う売却案件を検索し、売り手企業へ直接メッセージを送ることができる「スカウト機能」も有しています。これまで買い手企業が売り手企業に買収に関するスカウトメッセージを送るためには、売却案件情報から業種・ビジネスキーワードなどを、手動で指定して検索する必要がありました。 今回リリースした「AIおすすめ機能」は、買い手企業が登録した買収ニーズにマッチする売却案件情報をスコア順で表示する機能です。買い手企業が探しているエリア、業種、ビジネスキーワード、買収対象領域等の情報を基に、売り手企業の売却情報と突合させ、マッチ度をスコア化し、スコアが高い順におすすめ企業として紹介します。この機能により、買い手企業が見る画面には、売却案件情報が「おすすめ順」に表示されるため、買い手企業は自ら売却案件情報を検索することなく、「おすすめ」された企業へ効率的にスカウトメッセージを送ることができるようになります。 12月上旬のリリース以降、マッチングの精度(売り手企業に打診をしたときの承諾率)は約4倍に向上しました。さらにスカウト件数は120%に増加、企業同士の新しい出会いを創出しています。 今回の開発にあたっては、1,000パターン以上のスコアで検証をおこない、マッチングの精度を高めるための”適切なスコアリング”を導き出しました。 なお本件は、2023年3月に発表した「GenerativeAI活用プロジェクト」の第2弾案件です。」 「 [図:0001437449000006.jpg] [図:0001437449000007.jpg] 」 (4)甲4の記載 本件特許出願の優先日前に公開された甲4には、以下の記載がある。 「9. ChatGPT prompt to explore potential partnership opportunities Explore partnership opportunities: "Identify three potential strategic partners for our [product name] and explain the benefits and synergies that each partnership could bring." (当審訳) 9. ChatGPTによる潜在的なパートナーシップ機会の検討を促すプロンプト パートナーシップ機会の検討:「当社の[製品名]にとって潜在的な戦略的パートナーを3社特定し、それぞれのパートナーシップがもたらすメリットと相乗効果を説明してください。」」 (5)甲5の記載 本件特許出願の優先日前に公開された甲5には、以下の記載がある。 「Sample Prompt Create a 500-word executive summary for my business, Bigtalker. Bigtalker is a marketplace for people to find new people to meet and talk to around their city for conversations. Subscriptions for Bigtalker cost $10 per month. Right now we’ve been operating for two years and make $4,000 in MRR. We have between 300 and 500 active monthly users primarily in New York City and Chicago. Our major competitors are Quickconvos and SpeakEZ. Quickconvos is active in New York City and San Francisco. They do about the same MRR as us but charge $30 per month instead of $10. SpeakEZ Costs $20 for an entire year of membership and owns small markets throughout the United States. We believe we are well positioned as we recently received coverage from large publications like The Wall Street Journal. We also recently launched an integration with Reddit where “Bigtalkers” can search for other talkers in their area by searching for keywords in Reddit forums like “I want to talk with [blank] type of person in New York City”. Our website runs on Bubble with our backend in Notion. Operating costs are typically $1,000 per month. We want to sell our business to a financial buyer who could improve our service and flip it later for a profit. (当審訳) サンプルプロンプト 私のビジネス、Bigtalkerの500語のエグゼクティブサマリーを作成してください。Bigtalkerは、街中で新しい出会いや会話の相手を見つけることができるマーケットプレイスです。Bigtalkerの月額料金は10ドルです。 現在、当社は2年間運営しており、月間経常収益(MRR)は4,000ドルです。アクティブユーザー数は月間300人から500人で、主にニューヨーク市とシカゴにいます。 主な競合相手はQuickconvosとSpeakEZです。Quickconvosはニューヨーク市とサンフランシスコで事業を展開しており、MRRは当社とほぼ同額ですが、月額料金は10ドルではなく30ドルです。SpeakEZは年間会員費が20ドルで、全米各地に小規模な市場を展開しています。 当社は最近、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの大手メディアに取り上げられたことから、有利な立場にあると考えています。先日、Redditとの連携機能も導入しました。「ビッグトーカー」と呼ばれるユーザーが、Redditフォーラムで「ニューヨーク市で[〇〇]タイプの人と話したい」といったキーワードを検索することで、近隣の他のトーカーを探せるようになりました。 当社のウェブサイトはBubbleで構築され、バックエンドはNotionを使用しています。運営コストは通常月額1,000ドルです。 当社は、サービスを改善し、将来的に利益を上げて売却できるような、財務的な買い手に事業を売却したいと考えています。」 「ChatGPT-3 Created This Executive Summary Executive Summary: Bigtalker Introduction: Bigtalker is a thriving two-year-old marketplace that connects individuals seeking conversations with new people in their cities. With a focus on fostering meaningful interactions, Bigtalker has gained significant traction in the markets of New York City and Chicago. This executive summary provides an overview of Bigtalker’s business model, current performance, competitive landscape, recent developments, operational details, and the opportunity for potential acquisition. (当審訳) ChatGPT-3が作成したエグゼクティブサマリー エグゼクティブサマリー:Bigtalker 概要: Bigtalkerは、創業2年で成長を続ける活気あるマーケットプレイスです。都市内で新しい人々と会話を楽しみたいユーザーをつなぐプラットフォームとして、有意義な交流の促進に注力し、ニューヨーク市とシカゴの市場で大きな支持を得ています。本エグゼクティブサマリーでは、Bigtalkerのビジネスモデル、現在の業績、競合状況、最近の動向、運営の詳細、そして買収の可能性について概説します。」 「Opportunity for Acquisition: Bigtalker presents an attractive investment opportunity for a financial buyer seeking to enhance the service and capitalize on potential future profitability. With a solid foundation in two prominent cities, a competitive pricing structure, and recent media coverage, the platform is well-positioned for growth and expansion into new markets. The buyer can leverage the existing user base, optimize the platform’s features, explore marketing opportunities, and consider potential synergies with other businesses to maximize returns on investment. (当審訳) 買収機会: Bigtalkerは、サービスを強化し、将来の収益性向上を目指す投資家にとって魅力的な投資機会を提供します。主要2都市に確固たる基盤を持ち、競争力のある価格設定、そして最近のメディア露出も相まって、このプラットフォームは成長と新規市場への進出に向けて有利な立場にあります。買収者は、既存のユーザー基盤を活用し、プラットフォームの機能を最適化し、マーケティング機会を模索し、他の企業とのシナジー効果を検討することで、投資収益を最大化することができます。」 (6)甲6の記載 本件特許出願の優先日前に公開された甲6には、以下の記載がある。 「8. ChatGPT prompt to generate partnership opportunities Brainstorm ten potential partnership opportunities for my startup, and explain why they would be beneficial. Provide specific guidelines for evaluating potential partners and the criteria we should use to determine which partnerships are most valuable. (当審訳) 8. ChatGPTプロンプト:提携機会の創出 私のスタートアップにとって潜在的な提携機会を10個ブレインストーミングし、それぞれがなぜ有益なのかを説明してください。潜在的な提携先を評価するための具体的なガイドラインと、どの提携が最も価値があるかを判断するために用いるべき基準を提示してください。」 (7)甲7の記載 申立人が提出した甲7は不鮮明で記載内容が把握できず、申立人が提出した証拠説明書に記載された甲7のインターネットアドレス<https://madgicx.com/blog/chatgpt-prompts-for-marketing>にもアクセスできなかったが、インターネットアーカイブ<http://web.archive.org/web/20230605230454/https://madgicx.com/blog/chatgpt-prompts-for-marketing>に保存され、本件特許出願の優先日前に公開された甲7と同一と推定される“80 Genius ChatGPT Prompts for Marketing to Save You Hours”には、以下の記載がある。 「8. Create a plan for potential partnerships, collaborations, or co-marketing opportunities that could help amplify our marketing efforts for <PRODUCT> and reach new audiences. (当審訳) 8. <PRODUCT>のマーケティング活動を強化し、新たな顧客層にリーチするのに役立つ可能性のあるパートナーシップ、コラボレーション、または共同マーケティングの機会に関する計画を作成してください。」 (8)甲8の記載 本件特許出願の優先日後であって本件特許出願日前に公開された甲8には、以下の記載がある。 「【M&Aシナジーの自動生成完了】 ChatGPTのGPTsで、M&A当事者の“会社名”と“HP等のURL”を入力するだけで、M&Aによって得られるシナジーをアウトプットしてくれる「M&Aシナジー提案くん」を作成しました! 添付画像が、実際に利用した際の出力イメージになります。ご覧のうえ使用されたい方は、下記のリンクからご活用ください! ※ChatGPTの課金ユーザーのみ使用可能です。」 「 [図:0001437449000008.jpg] [図:0001437449000009.jpg] [図:0001437449000010.jpg] [図:0001437449000011.jpg] [図:0001437449000012.jpg] [図:0001437449000013.jpg] [図:0001437449000014.jpg] 」 (9)甲9の記載 本件特許出願の優先日後であって本件特許出願日前に公開された甲9には、以下の記載がある。 「5. I need to develop a plan for creating long-term partnerships that will provide lasting value for our company and our partners. This prompt is an effective way to create partnerships that are mutually beneficial and have long-term value. To use this prompt, fill in the variables with the relevant information: ・Identify the types of partnerships that could provide lasting value for your company and your partners. ・Create a list of potential partners who share your company's values, goals, and objectives. ・Outline the benefits of partnering with each potential partner, such as cost savings, access to new markets, or shared resources. ・Develop a plan for how you will reach out to each potential partner and what kind of agreement you would like to negotiate. (当審訳) 5. 当社とパートナー双方に持続的な価値をもたらす長期的なパートナーシップを構築するための計画を策定する必要があります。 この課題は、相互に利益をもたらし、長期的な価値を持つパートナーシップを構築するための効果的な方法です。 この課題を活用するには、以下の項目に該当する情報を記入してください。 ・貴社とパートナー双方に持続的な価値をもたらす可能性のあるパートナーシップの種類を特定してください。 ・貴社の価値観、目標、目的を共有する潜在的なパートナーのリストを作成してください。 ・各潜在的なパートナーとの提携によるメリット(コスト削減、新規市場へのアクセス、リソースの共有など)を概説してください。 ・各潜在的なパートナーにどのようにアプローチし、どのような契約を交渉したいのか、具体的な計画を策定してください。」 (10)甲10の記載 本件特許出願の優先日前に公開された甲10には、以下の記載がある。 「[0017] <<1.本開示の一実施形態による情報処理システムの概要>> まず、本開示の一実施形態による情報処理システムの概要について図1を参照して説明する。図1に示すように、例えば交渉や商談といった社会的コミュニケーションを行っている際、人は自身の感情を示す感情シグナルを表出していることが想定される。感情シグナルは、例えば4つの社会的シグナル、すなわち「影響力」、「ミミクリ(mimicry;模倣)」、「活動レベル」、「一貫性」により定量化され得る。 [0018] 「影響力」は、会話中における話者交代のパターンから算出される。例えばユーザAが一方的に話していたり、ユーザBの話を遮ってユーザAが話し続けていたりする場合、ユーザAの影響力が大きいと言える。また、相手の言葉に被せるようにして双方言葉を発している場合はどちらの影響力も大きい。また、会話に長く不規則な中断がある場合、影響力は小さいと言える。 [0019] 「ミミクリ」は、会話中においてユーザが相手の言葉や身振り・手振りを真似する回数や時間に基づいて算出される。通常、会話に夢中になり、波長が合っている場合、および共感している場合は、互いの身振り・手振りや言葉を真似し合う傾向があるため、「ミミクリ」の値が大きい程、相手に同調・共感していると言える。 [0020] 「活動量」は、身振り手振りの量や、身体の動きの激しさから算出される。「活動量」の値が大きい程、相手の話に関心を持ち、興味を示していることが分かる。 [0021] 「一貫性」は、発話の韻律や身振り手振りの変動量、話している際の声の高さや大きさやリズムの変動から算出される。「一貫性」の値が大きい程、精神が集中していることが分かり、値が小さい程、感情的になっていることが分かる。 [0022] このような感情シグナルは、例えばユーザに装着されたセンサ装置(カメラセンサ、マイクロホン、ジャイロセンサ、加速度センサ、および地磁気センサ等)により検知されるセンサデータから算出され得る。 [0023] 本システムでは、これらの感情シグナルに基づいてコミュニケーションの状態を認識し、コミュニケーションの目的やユーザの社会的な立場、対話者の関係等に応じた理想的なコミュニケーションの状態、すなわち理想的な感情シグナルが表出する状態にするためのアドバイスをユーザに対して行う。」 「[0073] 続いて、有意な感情シグナルが取得できると(ステップS115/Yes)、アドバイス生成サーバ3は、感情シグナルに基づいて、用途に応じた理想的な状態を構築するためのアドバイスを生成する(ステップS118)。アドバイス生成処理の具体的な処理内容については、図9を参照して後述する。アドバイス生成サーバ3は、生成したアドバイス情報をユーザ端末5に送信する。 [0074] そして、ユーザ端末5は、アドバイス生成サーバ3から受信したアドバイス情報を表示し、ユーザに通知する(ステップS121)。具体的には、ユーザ端末5は、図8に示すアドバイス表示画面114に、選択された用途に応じた理想的な状態に近付くためのアドバイス情報を表示する。また、グラフ画面111には、アドバイス情報と共にアドバイス生成サーバ3から受信した現在のユーザの各感情シグナルの値および理想的な各感情シグナルの値を表示し、現状の状態および理想の状態をユーザに直感的に把握させることができる。グラフ画面111のみの場合、コミュニケーション中にどのように対応したら理想状態に近付けるか判断できないことも想定されるため、具体的なアドバイスと共に表示される。アドバイス情報等の具体的な表示例については、図12~図13を参照して後述する。 [0075] <3-2.アドバイス生成処理> 次に、上記S118に示すアドバイス生成サーバ3によるアドバイス生成処理について図9を参照して具体的に説明する。図9は、本実施形態によるアドバイス生成処理を示すフローチャートである。 [0076] 図9に示すように、まず、アドバイス生成サーバ3は、ユーザの選択に基づいて設定された用途が「交渉」である場合(ステップS133/Yes)、アドバイス情報DB32から「交渉」のアドバイスセットを抽出し、当該アドバイスセットを用いて各感情シグナル(具体的には影響力、ミミクリ、活動レベル、および一貫性)におけるアドバイスを取得する(ステップS136)。ここで、図10に、アドバイス情報DB32に格納されるアドバイスセットの一例を示す。 [0077] アドバイス情報DB32には、図10に示すように、用途「交渉」のアドバイスセット60、「傾聴」のアドバイスセット61、「協業」のアドバイスセット62、「指導」のアドバイスセット63が格納される。各アドバイスセットは、「影響力」のアドバイス情報60a、「ミミクリ」のアドバイス情報60b、「活動レベル」のアドバイス情報60c、「一貫性」のアドバイス情報60dを含む。各アドバイス情報は、ユーザA(図10では「自分」と称す)とユーザB(図10では「相手」と称す)の正規化された感情シグナル値(影響力、ミミクリ、活動レベル、一貫性)の組み合わせに対応する座標に紐付けられる。ここでは一例として、アドバイスが各座標に格納されたマトリクス600を用いて説明する。 [0078] 用途設定部30aにより用途が「交渉」と設定された場合、アドバイス生成部30cは、「交渉」のアドバイスセット60を抽出し、まずはそのうちの「影響力」のアドバイスを生成する。以下、「影響力」のアドバイス生成処理について図11を参照して具体的に説明する。なお本実施形態においてコミュニケーションにおけるユーザの「影響力」は、上述したように例えば発言の頻度、発言の長さ、声の強度、発言の重複、発言が重複した時に発言を中断させられた頻度等に基づいて、正規化した0~1の間の数値で算出される。 [0079] 図11は、本実施形態による用途「交渉」の場合における「影響力」のアドバイス生成について説明する図である。用途が「交渉」の場合における「影響力」の理想的な状態は、相互に同じ様な影響力を持つ状態と考えられる。交渉においては、どちらか一方の人物が大きな影響力を与えている状態好ましくないためである。したがって、ユーザA(自分)とユーザB(相手)の理想的な影響力の組み合わせは、主に双方の影響力が均衡している領域601で示される部分となる。なお、かかる理想値は、「理想的な感情シグナル」として例えば感情シグナルサーバ2から受信されたデータに基づくものである。 [0080] しかしながら、図11に示すように、例えばユーザA(自分)の影響力(X)が0.75で、ユーザB(相手)の影響力(Y)が0.25の場合、両者の影響力の組み合わせはP座標となり、理想の状態から外れてしまう。この場合、相手の影響力をユーザAが強制的に変えることは出来ないため、ユーザAは自らの影響力を下げるよう行動することで、両者の影響力が均衡する理想的な状態に近付けることができる。P座標からは、例えば「(相手の言う事を)遮らず、自由に話させてください」というように、自らの影響力を下げる行動を指示するアドバイスが取得される。このようにして、アドバイス生成部30cは、ユーザAとユーザBの現在の「影響力」の値と、理想値に基づいて、アドバイス情報を参照し、理想的な状態に近付けるためのユーザAに対するアドバイスを生成することができる。 [0081] アドバイス生成部30cは、以上説明したアドバイス取得処理を、「ミミクリ」、「活動レベル」、および「一貫性」についても同様に行い、それぞれのアドバイスを取得する。 [0082] 次いで、図9に戻り、アドバイス生成サーバ3は、ユーザの選択に基づいて設定された用途が「傾聴」である場合(ステップS139/Yes)、アドバイス情報DB32から「傾聴」のアドバイスセットを抽出し、当該アドバイスセットを用いて同様に各感情シグナルにおけるアドバイスを取得する(ステップS142)。 [0083] 次に、アドバイス生成サーバ3は、ユーザの選択に基づいて設定された用途が「協業」である場合(ステップS145/Yes)、アドバイス情報DB32から「協業」のアドバイスセットを抽出し、当該アドバイスセットを用いて同様に各感情シグナルにおけるアドバイスを取得する(ステップS148)。 [0084] 続いて、アドバイス生成サーバ3は、ユーザの選択に基づいて設定された用途が「指導」である場合(ステップS151/Yes)、アドバイス情報DB32から「指導」のアドバイスセットを抽出し、当該アドバイスセットを用いて同様に各感情シグナルにおけるアドバイスを取得する(ステップS154)。 [0085] そして、アドバイス生成サーバ3は、選択された用途に応じたアドバイスが取得できると、アドバイスの他、例えばユーザAの現在の感情シグナル値(現在値)と、選択された用途に応じた理想値の表示を生成する(ステップS157)。 [0086] 以上、本実施形態によるアドバイス生成処理について詳細に説明した。」 (11)甲11の記載 本件特許出願の優先日前に公開された甲11には、以下の記載がある。 「【0054】 M&A案件データベース更新モジュール2046は、M&A案件データベース285を更新する処理を行う。サーバ20は、M&A案件の記事を配信する各配信者から、M&A案件の記事を取得する。または、M&A案件データベース更新モジュール2046は、ニュース記事のうち、M&A案件に係るニュース記事を抽出することにより、M&A案件の記事を取得する。例えば、ニュース記事中に含まれている所定のキーワード(例えば、「買収」「売却」など、M&Aに関連が高いとして予め設定したキーワード)に基づいて、ニュース記事の中からM&A案件の記事を抽出することとしてもよい。または、サーバ20によるサービスを運営する事業者が、ニュース記事を蓄積し、M&A案件の記事であると判別した実績に基づいて学習済みモデルを生成することとしてもよい。」 「【0099】 サーバ20は、M&Aに関する記事の見出しと、記事の本文とに基づいて形態素解析すること等により、これらM&Aの対象となる企業、買い手の企業、売り手の企業の情報を特定することとしてもよい。」 2 甲1発明 (1)甲1に記載されているに等しい事項 上記1(1)の摘記事項によると、引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。 ア 段落【0001】、【0036】、【0039】の記載によれば、引用文献1には、「マッチング処理部4bを含むサーバ4等から構成され、企業買収等において売り手と買い手とのマッチングを図るマッチングシステムS1」が記載されている。 イ 段落【0064】、【0070】の記載によれば、引用文献1には、「企業買収等を受けようとする売り手としての第1の利用者21aがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び譲渡希望条件を売り手記入フォームに記入し、売り手記入フォームはデータベース4iに記憶される」との事項が記載されている。 ウ 段落【0072】、【0074】の記載によれば、引用文献1には、「企業買収等を行おうとする買い手としての第2の利用者21bがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び買収希望条件を買い手記入フォームに記入し、買い手記入フォームはサーバ4のデータベース4iに格納される」との事項が記載されている。 エ 段落【0043】の記載によれば、引用文献1には、「マッチング処理部4bは、第1の利用者21a(売り手)が提供した情報及び第2の利用者21b(買い手)が提供した情報に基づいて、売り手と買い手との双方の条件を満たす、売り手と買い手とを抽出し、マッチング候補として出力する」との事項が記載されている。 オ 段落【0112】の記載によれば、引用文献1には、「マッチング処理部4bによるマッチング結果を解析して、例えば「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」等のレコメンドを行うことが可能となり」との事項が記載されている。 (2)甲1に記載されている発明 上記2(1)によれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「マッチング処理部4bを含み、企業買収等において売り手と買い手とのマッチングを図るマッチングシステムS1であって、(上記2(1)ア) 企業買収等を受けようとする売り手としての第1の利用者21aがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び譲渡希望条件を売り手記入フォームに記入し、売り手記入フォームはデータベース4iに記憶され、(上記2(1)イ) 企業買収等を行おうとする買い手としての第2の利用者21bがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び買収希望条件を買い手記入フォームに記入し、買い手記入フォームはサーバ4のデータベース4iに格納され、(上記2(1)ウ) マッチング処理部4bは、第1の利用者21a(売り手)が提供した情報及び第2の利用者21b(買い手)が提供した情報に基づいて、売り手と買い手との双方の条件を満たす、売り手と買い手とを抽出し、マッチング候補として出力し、(上記2(1)エ) マッチング処理部4bによるマッチング結果を解析して、例えば「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」等のレコメンドを行うことが可能となる、(上記2(1)オ) マッチングシステムS1。」 3 甲2発明 上記1(2)の摘記事項によれば、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 「買い手企業とシナジー効果を見込める売り手企業を優先的に上位に表示する機能で、買い手企業はスカウト企業を自ら探すことなく、マッチする可能性の高い企業へのアプローチが可能となっている『AIおすすめ機能』と、 シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案をAIが生成し、プラットフォームのログイン画面およびメールにてお知らせする機能であって、買い手企業が登録をした買収ニーズと、売り手企業との想定されるシナジーを提案する『シナジー提案機能』と、 を有し、 上記『シナジー提案機能』におけるシナジーの見込める売り手企業の抽出には、『AIおすすめ機能』を活用する、 M&Aマッチングプラットフォーム。」 第5 当審の判断 1 理由1(新規性)について (1)本件発明1について(甲1を主引例とする場合) ア 本件発明1と甲1発明との対比 (ア)「事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段と、」について 甲1発明は、企業買収等を受けようとする売り手としての第1の利用者21aがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び譲渡希望条件を売り手記入フォームに記入し、売り手記入フォームはデータベース4iに記憶されるものである。 ここで、甲1発明の企業買収等を受けようとする売り手は、事業継承を希望する企業であることは明らかであるから、甲1発明の売り手が売り手記入フォームに記入する自社の基本情報及び譲渡希望条件は、本件発明1の「事業承継を希望する企業に関する企業情報」に相当する。 また、甲1発明の、自社の基本情報及び譲渡希望条件が記入された売り手記入フォームはデータベース4iに記憶されるものであり、データベースに記憶される情報が検索可能であることは技術常識であるから、本件発明1と甲1発明は、「事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする」点で共通し、甲1発明の自社の基本情報及び譲渡希望条件が記入された売り手記入フォームをデータベース4iに記憶する機能を実現する手段は、本件発明1の「事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段」に相当する。 してみれば、本件発明1と甲1発明は、「事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段」を備える点で一致している。 (イ)「企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、前記データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段と、」について 甲1発明は、企業買収等を行おうとする買い手としての第2の利用者21bがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び買収希望条件を買い手記入フォームに記入し、買い手記入フォームはサーバ4のデータベース4iに格納され、マッチング処理部4bは、第1の利用者21a(売り手)が提供した情報及び第2の利用者21b(買い手)が提供した情報に基づいて、売り手と買い手との双方の条件を満たす、売り手と買い手とを抽出し、マッチング候補として出力するものである。 ここで、甲1発明の企業買収等を行おうとする買い手は、企業買収を希望する企業であることは明らかであるから、甲1発明の買い手が買い手記入フォームに記入する買収希望条件は、本件発明1の「企業買収を希望する企業の希望条件」に相当する。 また、甲1発明の、マッチング処理部4bによって行われる、売り手と買い手との双方の条件を満たす、売り手と買い手とを抽出する処理は、第1の利用者21a(売り手)が提供した情報及び第2の利用者21b(買い手)が提供した情報に基づいているところ、当該売り手が提供した情報及び買い手が提供した情報は、それぞれ売り手が売り手記入フォームに記入した自社の基本情報及び譲渡希望条件及び買い手が買い手記入フォームに記入した買収希望条件であり、当該売り手が提供した情報は、売り手が売り手記入フォームに記入した自社の基本情報及び譲渡希望条件であるとともに、上記買い手が提供した情報は、買い手が買い手記入フォームに記入した買収希望条件であり、この売り手記入フォーム及び買い手記入フォームは、データベース4iに記憶・格納されるものであるから、甲1発明の、売り手が提供した情報及び買い手が提供した情報に基づいて、売り手と買い手との双方の条件を満たす、売り手と買い手とを抽出することは、本件発明1の、「企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、前記データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う」ことに相当し、甲1発明のマッチング処理部4bは、本件発明1の「企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、前記データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段」に相当する。 してみれば、本件発明1と甲1発明は、「企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、前記データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段」を備える点で一致している。 (ウ)「前記マッチングの結果に基づいて、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、前記マッチングの結果が表す候補企業と、前記候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する手段と、」について 甲1発明は、マッチング処理部4bが、売り手と買い手との双方の条件を満たす、売り手と買い手とを抽出し、マッチング候補として出力し、マッチング処理部4bによるマッチング結果を解析して、例えば「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」等のレコメンドを行うことが可能となるものであり、当該レコメンドのデータは、甲1発明のマッチングシステムS1によって生成されることは明らかである。 また、甲1発明の、「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」というレコメンドにおける「この会社」は、マッチング候補として出力された会社であることは明らかであるから、本件発明1の「前記マッチングの結果が表す候補企業」に相当する。 そして、甲1発明の、「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」というレコメンドにおける「提携するとよりよいビジネスになります」は、新たなビジネスの機会を表しているものに他ならないから、本件発明1の「新たなビジネスチャンスを表すデータ」に相当する。 してみれば、本件発明1と甲1発明は、「前記マッチングの結果に基づいて、」「前記マッチングの結果が表す候補企業と、」「前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する」点で共通するものの、甲1発明には、マッチングの結果に基づいて、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力する旨特定されていない点で相違している。 また、甲1発明の「この会社と提携するとよりよいビジネスになります」というレコメンドは、買い手企業と売り手企業とが提携した場合の新たなビジネスチャンスを表すデータであるものの、売り手である候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータではない点で相違している。 (エ)「前記生成されたデータを提示する手段と、」について 甲1発明は、マッチング処理部4bによるマッチング結果を解析して、例えば「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」等のレコメンドを行うことが可能となるものであり、当該レコメンドは、甲1発明のマッチングシステムS1によって生成されることは明らかであるから、甲1発明のレコメンドを行うことは、本件発明1の生成されたデータを提示することに相当し、甲1発明のレコメンドを行う機能を実現する手段は、本件発明1の「前記生成されたデータを提示する手段」に相当する。 してみれば、本件発明1と甲1発明は、「前記生成されたデータを提示する手段」を含む点で一致している。 (オ)「を含むシステム」について 甲1発明はマッチングシステムS1の発明であり、本件発明1と甲1発明は、上述した相違はあるものの、「システム」の発明である点で共通している。 イ 一致点及び相違点 上記「ア 本件発明1と甲1発明との対比」で対比した事項を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、 「事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段と、 企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、前記データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段と、 前記マッチングの結果に基づいて、前記マッチングの結果が表す候補企業と、新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する手段と、 前記生成されたデータを提示する手段と、 を含むシステム。」という点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本件発明1は、マッチングの結果に基づいて、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力するのに対して、甲1発明は、マッチングの結果に基づく処理を行っているものの、マッチングの結果に基づいて、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力する旨特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1は、候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータを生成するのに対して、甲1発明は、新たなビジネスチャンスを表すデータを生成するものの、当該新たなビジネスチャンスを表すデータは、買い手企業と売り手企業とが提携した場合の新たなビジネスチャンスを表すデータであり、候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータではない点。 ウ 相違点についての判断 (ア)相違点1について 甲1発明は、マッチング処理部4bによるマッチング結果を解析して、例えば「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」等のレコメンドを行うものの、マッチング結果の解析に、生成AIモデルを用いるとの事項は特定されておらず、甲1に記載の事項から自明ともいえない。 なお、甲1の段落【0055】には、チャットボット31が、いわゆる機械学習を応用したAIチャットボットであり、段落【0113】には、マッチング処理の結果を、チャットボット31を介してレコメンドとして提供することが記載されているものの、当該チャットボット31は、レコメンドをユーザに提供する手段として用いられるものにすぎず、マッチング結果の解析に用いられるものとは認められない。 してみると、相違点1に係る事項は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ)相違点2について 甲1発明は、候補企業と提携した場合の新たなビジネスチャンスを表すデータを生成するものの、候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータを生成するとの事項は特定されておらず、甲1に記載の事項から自明ともいえない。 してみると、相違点2に係る事項は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。 (ウ)異議申立人の主張について 異議申立人は、特許異議申立書の「ウ 理由A、B(特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について)」の「(ii)本件特許発明1と甲1発明との対比」(特許異議申立書第50~51頁)において、甲1には本件発明1の構成が開示されている旨主張しているが、上記(ア)~(イ)で検討したとおり、本件発明1は甲1に記載された発明であるとはいえないから、異議申立人の主張に理由はない。 したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との間には、実質的な相違点1~2が存在するので、本件発明1は、甲1に記載された発明ではあるとはいえない。 (2)本件発明1について(甲2を主引例とする場合) (2-1)本件特許の優先権主張の効果が認められる場合 甲2は2024年6月14日に掲載されたものであるところ、本件特許の優先権主張の効果が認められる場合、甲2に記載された発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明とはいえない。 したがって、本件発明1は、甲2を根拠に、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえない。 よって、申立人が主張する「本件発明1は、甲2記載の発明と同一であるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。」旨の申立理由には理由がない。 (2-2)本件特許の優先権主張の効果が認められない場合 甲2は2024年6月14日に掲載されたものであるところ、本件特許の優先権主張の効果が認められない場合、甲2に記載された発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、以下、本件発明1の新規性について検討する。 ア 本件発明1と甲2発明との対比 (ア)「事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段と、」について 甲2発明は、シナジーの見込める売り手企業の抽出を行うものであり、甲2発明の売り手企業が、本件発明1の「事業承継を希望する企業」に対応することは明らかであるものの、甲2発明には、売り手企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段を有する旨特定されていない点で相違している。 (イ)「企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、前記データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段と、」について 甲2発明は、買い手企業が登録をした買収ニーズと、売り手企業との想定されるシナジーを提案する『シナジー提案機能』を有し、当該『シナジー提案機能』におけるシナジーの見込める売り手企業の抽出には、買い手企業とシナジー効果を見込める売り手企業を優先的に上位に表示して、マッチする可能性の高い企業へのアプローチが可能となっている『AIおすすめ機能』を活用するものである。 ここで、甲2発明の買い手企業及び買収ニーズは、本件発明1の「企業買収を希望する企業」及び「希望条件」にそれぞれ対応することは明らかである。 また、甲2発明は、買い手企業が登録をした買収ニーズと、売り手企業との想定されるシナジーを提案する『シナジー提案機能』において、シナジーの見込める売り手企業の抽出に、マッチする可能性の高い企業へのアプローチが可能となっている『AIおすすめ機能』を活用するものであり、マッチする可能性の高い企業である売り手企業の抽出が、買い手企業が登録をした買収ニーズに基づいて行われることも、技術常識から明らかである。 してみれば、本件発明1と甲2発明は、「企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段」を含む点で共通し、甲2発明には、当該マッチングの処理において、データベースを検索する旨特定されていない点で相違している。 (ウ)「前記マッチングの結果に基づいて、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、前記マッチングの結果が表す候補企業と、前記候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する手段と、」について 甲2発明の『シナジー提案機能』は、シナジーの見込める売り手企業の抽出に、マッチする可能性の高い企業へのアプローチが可能となっている『AIおすすめ機能』を活用し、シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案をAIが生成するものである。 ここで、甲2発明の『AIおすすめ機能』により抽出されるシナジーの見込める売り手企業は、本件発明1の「前記マッチングの結果」に対応し、甲2発明のシナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案をAIが生成することは、本件発明1の「前記マッチングの結果が表す候補企業と、」「前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する」に対応する。 してみれば、本件発明1と甲2発明は、「前記マッチングの結果に基づいて、前記マッチングの結果が表す候補企業と、新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する手段」を含む点で共通するものの、甲2発明には、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力する旨特定されていない点で相違している。 また、甲2発明で生成されるデータは、シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案であり、当該シナジー案は、買い手企業と売り手企業とが提携した場合の新たなビジネスチャンスを表すデータといい得るものの、売り手企業である候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータではない点で相違している。 (エ)「前記生成されたデータを提示する手段と、」について 甲2発明は、シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案をAIが生成し、プラットフォームのログイン画面およびメールにてお知らせする機能を有しており、上記(ウ)で言及したように、本件発明1と甲2発明とは、生成されるデータが相違するものの、前記生成されたデータを提示する点で共通している。 してみれば、甲2発明の、シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案をAIが生成し、プラットフォームのログイン画面およびメールにてお知らせする機能を実現する手段は、本件発明1の「前記生成されたデータを提示する手段」に相当し、本件発明1と甲2発明は、「前記生成されたデータを提示する手段」を有する点で一致している。 (オ)「を含むシステム」について 本件発明1の「システム」について、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の段落【0016】には、「・・・データ処理システム10は、データ処理装置12及びスマートデバイス14を備えている。」と記載され、段落【0291】には「・・・データ処理装置12を「サーバ」と称し、スマートデバイスを「端末」と称する。」と記載されている。 そして、甲2発明は、シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案をAIが生成し、プラットフォームのログイン画面およびメールにてお知らせする機能を有しているものであるから、甲2発明のM&Aマッチングプラットフォームが、プラットフォームのログイン画面を提供するサーバ等と、ログイン画面を表示またはメールを受信する端末等を備えていることは技術常識から明らかであり、甲2発明のM&Aマッチングプラットフォームは、「システム」と称し得るものである。 イ 一致点及び相違点 上記「ア 本件発明1と甲2発明との対比」で対比した事項を踏まえると、本件発明1と甲2発明とは、 「企業買収を希望する企業の希望条件に基づいて、事業承継を希望する企業とのマッチングを行う手段と、 前記マッチングの結果に基づいて、前記マッチングの結果が表す候補企業と、新たなビジネスチャンスを表すデータを生成する手段と、 前記生成されたデータを提示する手段と、 を含むシステム。」という点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本件発明1は、事業承継を希望する企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段を備えているのに対して、甲2発明には、売り手企業に関する企業情報をデータベース化し、検索可能にする手段を有する旨特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1は、データベースを検索して、事業承継を希望する企業とのマッチングを行うのに対して、甲2発明は、マッチングの処理である売り手企業の抽出の際に、データベースを検索する旨特定されていない点。 [相違点3] 本件発明1は、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力しているものの、甲2発明には、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力するとの事項が旨特定されていない点。 [相違点4] 本件発明1は「前記候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータ」を生成するのに対して、甲2発明が生成するデータは、シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案であり、当該シナジー案は、買い手企業と売り手企業とが提携した場合の新たなビジネスチャンスを表すデータといい得るものの、候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータではない点。 ウ 相違点についての判断 (ア)相違点1~2について 甲2発明は、シナジーの見込める売り手企業の抽出に、買い手企業とシナジー効果を見込める売り手企業を優先的に上位に表示する『AIおすすめ機能』を活用するものであるものの、『AIおすすめ機能』を活用する際に、売り手企業に関する企業情報をデータベース化し、当該データベースを検索するとの事項は特定されておらず、甲2に記載の事項から自明ともいえない。 してみると、相違点1~2に係る事項は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。 (イ)相違点3について 甲2発明は、シナジー案の生成にAIを用いているものの、マッチングの結果に基づいて、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力するとの事項は特定されておらず、甲2に記載の事項から自明ともいえない。 してみると、相違点3に係る事項は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。 (ウ)相違点4について 甲2発明は、シナジー効果を見込める売り手企業とのシナジー案を生成するものの、候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータを生成するとの事項は特定されておらず、甲2に記載の事項から自明ともいえない。 してみると、相違点4に係る事項は、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2に記載された発明であるとはいえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明との間には、実質的な相違点1~4が存在するので、本件発明1は、甲2に記載された発明ではあるとはいえない。 2 理由2(進歩性)について (1)本件発明1について(甲1を主引例とする場合) ア 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明を対比すると、上記「1(1)イ」で示した上記一致点、相違点を有するものである。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点1~2について 相違点1~2について、甲1発明に甲4~7に記載された事項を適用することにより、当業者が本件発明1に容易に想到し得たか否かを検討する。 甲4には、「当社の[製品名]にとって潜在的な戦略的パートナーを3社特定し、それぞれのパートナーシップがもたらすメリットと相乗効果を説明してください。」というプロンプトの例が記載されており、甲5には、「当社は、サービスを改善し、将来的に利益を上げて売却できるような、財務的な買い手に事業を売却したいと考えています。」というサンプルプロンプトの例が記載されており、甲6には、「私のスタートアップにとって潜在的な提携機会を10個ブレインストーミングし、それぞれがなぜ有益なのかを説明してください。」というプロンプトの例が記載されており、甲7には、「<PRODUCT>のマーケティング活動を強化し、新たな顧客層にリーチするのに役立つ可能性のあるパートナーシップ、コラボレーション、または共同マーケティングの機会に関する計画を作成してください。」というプロンプトの例が記載されている。 以上のことから、甲4~7には、プロンプトを生成AIに入力することにより、提携先の特定や、得られるビジネスチャンス(相乗効果)を生成させる事項が記載されていると認められる。 しかしながら、甲4~7に記載された事項は、提携先と提携した場合の相乗効果を生成させるものであり、本件発明1のように、売り手である候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータを生成させるものではない。 そして、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成することは、甲4~甲7に記載されておらず、当該技術分野における周知技術であるともいえない。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲4~7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲8には、ChatGPTのGPTsで、M&A当事者の“会社名”と“HP等のURL”を入力するだけで、M&Aによって得られるシナジーをアウトプットすることが記載され甲9には、「各潜在的なパートナーとの提携によるメリット(コスト削減、新規市場へのアクセス、リソースの共有など)を概説してください。」というプロンプトの例が記載されていることから、甲8~9には、プロンプトを生成AIに入力することにより、M&Aを行う際に、提携によって得られるビジネスチャンス(相乗効果)を生成させる事項が記載されていると認められる。 しかしながら、甲8~9に記載された事項は、提携先と提携した場合の相乗効果を生成させるものであり、本件発明1のように、売り手である候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータを生成させるものではない。 そして、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成することは、甲4~甲9に記載されておらず、当該技術分野における周知技術であるともいえない。 したがって、仮に本件特許の優先権主張の効果が認められないとしても、本件発明1は、甲1発明及び甲4~9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)異議申立人の主張について 異議申立人は、特許異議申立書の「ウ 理由A、B(特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について)」の「(ii)本件特許発明1と甲1発明との対比」(特許異議申立書第50~51頁)において、「仮に、甲第1号証において、構成Cの「新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し」に対応する処理が具体的に開示されていないことを相違点と捉えるとしても、甲第4-9号証に示されるように、本件出願時において、「プロンプト」を生成AIモデルに入力することにより、M&Aを行う際の提携先の特定や、得られるビジネスチャンス(シナジー等)を生成させることは周知の技術であると認められる。また、生成AIモデルを活用するにあたり、プロンプト文を用いて生成AIモデルから所定の出力を得ることは常套手段であるところ、構成Cとして特定されるようなプロンプト文を生成することを妨げる事由もない。すなわち、本件特許発明1における「新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し」という処理は、生成AIモデルを利用する際の通常の入力処理を特定したに過ぎないことから、係る構成Cを採用することは設計的事項であるといえる。このような観点で、本件特許発明1は、甲1発明、又は、甲1発明及び甲第4-9号証に開示された周知技術に基づいて当業者が容易に想到できるものであるといえる。」と主張しているが、上記(ア)で検討したとおりであるから、異議申立人の主張に理由はない。 したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1記載の発明に基づいて、又は、甲1記載の発明及び甲4~9に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について(甲1を主引例とする場合) 新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成することは、甲10~甲11に記載されておらず、当該技術分野における周知技術であるともいえない。 そして、本件発明2は、本件発明1を直接的に引用するものであるから、上記「(1)本件発明1について(甲1を主引例とする場合)」で検討したとおり、甲1記載の発明及び甲10~11に開示された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明1について(甲2を主引例とする場合) (3-1)本件特許の優先権主張の効果が認められる場合 甲2は2024年6月14日に掲載されたものであるところ、本件特許の優先権主張の効果が認められる場合、甲2に記載された発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明とはいえない。 したがって、本件発明1は、甲2を根拠に、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえない。 よって、申立人が主張する「本件発明1は、甲2記載の発明に基づいて、又は、甲2記載の発明及び甲4~9に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」旨の申立理由には理由がない。 (3-2)本件特許の優先権主張の効果が認められない場合 甲2は2024年6月14日に掲載されたものであるところ、本件特許の優先権主張の効果が認められない場合、甲2に記載された発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、以下、本件発明1の進歩性について検討する。 ア 本件発明1と甲2発明との対比 本件発明1と甲2発明を対比すると、上記「1(2)イ」で示した上記一致点、相違点を有するものである。 イ 判断 相違点1~4について、甲2発明に甲4~9に記載された事項を適用することにより、当業者が本件発明1に容易に想到し得たか否かを検討する。 (ア)相違点1~2について 甲2発明は、シナジーの見込める売り手企業の抽出に、買い手企業とシナジー効果を見込める売り手企業を優先的に上位に表示する『AIおすすめ機能』を活用するものである。 ここで、所定の条件に一致する情報を抽出する処理において、抽出に必要な情報をデータベース化しておき、所定の条件に一致する情報の抽出時に当該データベースを検索することは、情報処理の技術分野における常套手段である。 したがって、甲2発明に上記「常套手段」を付加して、相違点1~2の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。 (イ)相違点3~4について 上記「(1)イ(ア)」で言及したように、甲4~9に記載された事項は、提携先と提携した場合の相乗効果を生成させるものであり、本件発明1のように、候補企業での新たなビジネスチャンスを表すデータを生成させるものではない。 そして、新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成することは、甲3、甲4~甲9に記載されておらず、当該技術分野における周知技術であるともいえない。 したがって、本件発明1は、甲3の記載事項を考慮しても、甲2発明及び甲4~9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件発明1は、甲2記載の発明に基づいて、又は、甲2記載の発明及び甲4~9に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)異議申立人の主張について 異議申立人は、特許異議申立書の「ウ 理由A、B(特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について)」の「(iii)本件特許発明1と甲2発明との対比」(特許異議申立書第52~53頁)において、「仮に、甲第2号証において、構成Cの「新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し」に対応する処理が具体的に開示されていないことを相違点と捉えるとしても、甲第4-9号証に示されるように、本件出願時において、「プロンプト」を生成AIモデルに入力することにより、M&Aを行う際の提携先の特定や、得られるビジネスチャンス(シナジー等)を生成させることは周知の技術であると認められる。また、生成AIモデルを活用するにあたり、プロンプト文を用いて生成AIモデルから所定の出力を得ることは常套手段であるところ、構成Cとして特定されるようなプロンプト文を生成することを妨げる事由もない。すなわち、本件特許発明1における「新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し」という処理は、生成AIモデルを利用する際の通常の入力処理を特定したに過ぎないことから、係る構成Cを採用することは設計的事項であるといえる。このような観点で、本件特許発明1は、甲2発明、又は、甲2発明及び甲第4-9号証に開示された周知技術に基づいて当業者が容易に想到できるものであるといえる。」と主張しているが、上記(イ)で検討したとおりであるから、異議申立人の主張に理由はない。 したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2記載の発明に基づいて、又は、甲2記載の発明及び甲4~9に開示された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2について(甲2を主引例とする場合) (4-1)本件特許の優先権主張の効果が認められる場合 甲2は2024年6月14日に掲載されたものであるところ、本件特許の優先権主張の効果が認められる場合、甲2に記載された発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明とはいえない。 したがって、本件発明2は、甲2を根拠に、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえない。 よって、申立人が主張する「本件発明2は、甲2記載の発明及び甲10~11に開示された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」旨の申立理由には理由がない。 (4-2)本件特許の優先権主張の効果が認められない場合 甲2は2024年6月14日に掲載されたものであるところ、本件特許の優先権主張の効果が認められない場合、甲2に記載された発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、以下、本件発明2の進歩性について検討する。 新たなビジネスチャンスを見つけるためのプロンプト文を生成し、生成AIモデルに入力して、候補企業での前記新たなビジネスチャンスを表すデータを生成することは、甲3、甲10~甲11に記載されておらず、当該技術分野における周知技術であるともいえない。 そして、本件発明2は、本件発明1を直接的に引用するものであるから、上記「(3)本件発明1について(甲2を主引例とする場合)」で検討したとおり、甲3の記載事項を考慮しても、甲2記載の発明及び甲10~11に開示された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700444

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