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特許異議申立

2025-700653

セラミックス基板

審判番号
2025-700653
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-044789
登録番号
7605359
請求日
2025年06月20日
審決日
2025年09月30日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社プロテリアル
  • 【異議申立人】廣瀬 妙子
審判長/審判官
  • 審判長 丸山 高政
  • 審判官 行武 哲太郎
  • 審判官 寺谷 大亮
分類
P1651.121-Y (C04B) / P1651.537-Y (C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第44条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7605359号発明「セラミックス基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7605359号の請求項1及び2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7605359号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、令和4年3月29日の出願である特願2022-54654号(以下「最初の原出願」という。)の一部を令和5年3月6日に新たな特許出願としたものである特願2023-33365号(以下「分割出願」という。)の一部を令和6年3月21日に新たな特許出願としたものであって、同年12月16日にその特許権の設定登録がされ、同年12月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1及び2)に係る特許に対し、令和7年6月20日に特許異議申立人 廣瀬 妙子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件の特許請求の範囲と本件発明 本件の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」及び「本件発明2」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、以下の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認める。 なお、後の参照の便宜のために、本件発明1については1A~1F′に分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。 【請求項1】(本件発明1) 1A 矩形状で平板状の窒化珪素基板と、 1B 前記窒化珪素基板の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、 1C 前記窒化珪素基板の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、 1D 前記第1のろう材層を介して前記窒化珪素基板の前記第1の主面側に固定され、電気回路部品が搭載される第1の金属層と、 1E 前記第2のろう材層を介して前記窒化珪素基板の前記第2の主面側に固定され、前記電気回路部品で発生した熱を放熱する第2の金属層と 1F からなるセラミックス基板において、 1G 前記第1の金属層および前記第2の金属層は、同種の金属であって、それぞれの厚さの差は、0.02mm以下であり、 1H 前記第1のろう材層および前記第2のろう材層は、いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下であり、 1I 前記窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下とした、 1F′ セラミックス基板。 【請求項2】(本件発明2) 前記第1の金属層と前記第2の金属層は、銅板からなる、 請求項1に記載のセラミックス基板。 第3 証拠方法及び申立理由 特許異議申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、本件発明に係る特許を取消すべきものである旨主張する。 1 証拠方法 甲1 特開2000-58723号公報 甲2 国際公開第2018/221492号 甲3 特開平4-170089号公報 甲4 国際公開第2021/095843号 甲5 特開2003-283064号公報 甲6 国際公開第2017/213207号 甲7 特開2022-165046号公報 2 申立理由 特許異議申立書に記載された申立理由の概要は、以下の申立理由1~3のとおりである。 (1)申立理由1 本件発明1及び2は、以下アの点で、特許請求の範囲の記載が不備のため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法第113条第4号) ア 本件発明1において、反り量の定義が窒化珪素基板のサイズとの関係で不明瞭であるため、反り量が明確に特定できない点(5頁6~14行目)(本件発明2についても同様) 本件発明1は、「窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下とした」構成を特定している。 しかしながら、本件発明1は、窒化珪素基板のサイズについて何ら特定されておらず、窒化珪素基板の各辺の長さが100mm未満の態様を含んでいる。そして、例えば「各辺が100mm以上である窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量」の場合と、「各辺が100mm未満である窒化珪素基板において、各辺を100mmに換算したときの各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量」の場合が考えられるため、反り量の定義が不明瞭である。 (2)申立理由2 本件発明1及び2は、以下ア及びイの点で、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法第113条第4号) ア 本件発明1が、第1及び第2のろう材層、及び、第1及び第2の金属層と寸法との関係で、課題が解決できるか定かでない点(5頁4及び5行目、5頁15行目~6頁9行目)(本件発明2についても同様) 本件発明1では、第1のろう材層、第2のろう材層、第1の金属層及び第2の金属層のサイズについて特定されていない。 一方、本件発明の課題は、本件特許明細書の[0007]からみて、「コストを抑制しながらも、反りを抑制する」ことであると認められる。そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明では、[0031]に「絶縁基材2は、長辺方向の長さL1が190.5mm、短辺方向の長さL2が138.0mm、長さT0が0.32mmである。第1の金属板401及び第2の金属板402は、矩形状の平板であり、長辺方向の長さL11,L21が188.4mm、短辺方向の長さL12,L22が133.6mm、厚さT10,T20が0.8mmである。第1のろう材層31及び第2のろう材層32は、第1の金属板401及び第2の金属板402と同じ大きさで形成されている」ことが記載されていることからもわかるとおり、各サイズについて1つの組み合わせしか実施例に記載が無い。そうすると、各サイズのその他の組み合わせの場合に上記課題を解決して「コストを抑制しながらも、反りを抑制する」という効果を得ることが可能であるかどうかについては、本件特許明細書の実施例で何ら証明されていない。 イ 本件発明1の「窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下」とすることは、発明の詳細な説明において比較例および実施例としては記載されていない点(6頁10~26行目)(本件発明2についても同様) 本件特許明細書の[0038]には「この比較例では、実施例よりも絶縁基材2の反りが大きく、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量が0.03mmよりも大きかった。すなわち、第1のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値と、第2のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値とを一致させることにより、第1のろう材層31の厚みと第2のろう材層32の厚みとの差を小さくすることができ、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下にできることが確認された」ことが記載されている。しかしながら、反り量が0.03mmよりも大きい比較例よりも反りが小さいからといって実施例における反り量が0.03mm以下であるとは必ずしも言えない。これは例えば、比較例における実際の反り量が0.05mmであった場合、実施例における実際の反り量が0.04mmであった可能性があるからである。 ゆえに、本件特許明細書の発明の詳細の説明には、比較例および実施例における反り量の具体的な数値について記載されているといえない。また、窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下とすることについては、本件特許明細書の実施例で何ら証明されていない。(下線は申立人が付した箇所に対応する部分に付した。) (3)申立理由3 本件発明1及び2は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(同法第113条第2号) 第4 当審の判断 1 申立理由1について (1)本件発明1において、反り量の定義が窒化珪素基板のサイズとの関係で不明瞭であるため、反り量が明確に特定できない点(前記「第3」2(1)ア)(下線は強調のため当審にて付与、以下同様。) 本件発明1の「前記窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下とした」(発明特定事項1I)との発明特定事項において、「反り量」は、「100mmあたり」にて特定されている。 ここで「各辺に沿った方向の100mmあたり」の「あたり」とは、「(13)(接尾辞的に)「…に対して」の意。」(広辞苑)であると解されるから、「各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下とした」とは、各辺に沿った方向の「100mm」に対する割合として「反り量」が「0.03mm以下」であることを表すと解される。これは割合であるがゆえに「窒化珪素基板」の「各辺」が「100mm」であることを特定するものではない。(時計が1日あたり2.4秒遅れると表現した場合、遅れは1日経って初めて確定するというわけではなく、1時間あたりで見れば0.1秒遅れるのと同様のことである。) ゆえに、本件発明1の反り量の定義は、窒化珪素基板のサイズに対する割合として明瞭であるから、反り量は明確に特定されており、不明確ではない。 (2)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 また、本件発明1及び2は、いずれも明確ではないという事情はない。 よって、本件発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。 2 申立理由2について (1)本件発明1が、第1及び第2のろう材層、及び、第1及び第2の金属層の寸法との関係で、課題が解決できるか定かでない点について(前記「第3」2(2)ア) 本件の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0005】・・・このため、本発明者らは、反りが発生する原因を鋭意研究し、セラミックス製の基材の各部位における一方の面と他方の面に塗布されたろう材の厚みの違いが反りの発生に関与していることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、コストを抑制しながらも、反りを抑制することが可能なセラミックス基板を提供することを目的とする。・・・」 「【0028】・・・セラミックス基板1は、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの絶縁基材2の反り量が0.03mm以下となっている。」 「【0029】(実施例) 次に、セラミックス基板1のより具体的な実施例について説明する。・・・」 「【0038】・・・すなわち、第1のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値と、第2のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値とを一致させることにより、第1のろう材層31の厚みと第2のろう材層32の厚みとの差を小さくすることができ、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下にできることが確認された。」 「【0039】(実施の形態の作用及び効果) ・・・第1のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値と、第2のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値とを一致させることにより、工程を追加することなく、各測定箇所における第1のろう材層31の厚さと第2のろう材層32の厚さとの差を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、コストを抑制しながらも、反りを抑制することが可能となる。」 段落【0005】の記載によれば、本件発明1が解決すべき課題は、「コストを抑制しながらも、反りを抑制することが可能なセラミックス基板を提供すること」にあり、反りが発生する原因は、「一方の面と他方の面に塗布されたろう材の厚みの違い」であると理解される。 そして、段落【0038】の記載によれば、「第1のろう材層31の厚みと第2のろう材層32の厚みとの差を小さくすること」により、「絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下にでき」たとされるのだから、2つのろう材の厚みの差を小さくすることにより上記課題を解決したことが理解され、「100mmあたりの反り量を0.03mm以下」は、課題を解決できた状態の反り量であると解される。 そして、本件発明1の発明特定事項1Hは、「第1のろう材層31の厚みと第2のろう材層32の厚みとの差を小さくすること」をより具体的に特定したものであり、これにより上記課題は解決されるから、課題解決手段であると解される。加えて、発明特定事項1Iは、上記課題を解決した状態を具体的に特定するものであるから、やはり、課題解決手段であると解される。これらの課題解決手段は、金属層の寸法に左右されるものではない。 ゆえに、本件発明1において、第1及び第2の金属層の寸法が特定されておらずとも、発明特定事項1H及び発明特定事項1Iが特定されているから、「コストを抑制しながらも、反りを抑制することが可能なセラミックス基板を提供することを目的とする」という課題を解決していると認められる。 (2)本件発明1の「窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下」とすることは、発明の詳細な説明において比較例および実施例としては記載されていない点について(前記「第3」2(2)イ) 発明の詳細な説明には、「本実施の形態」として、「セラミックス基板1は、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの絶縁基材2の反り量が0.03mm以下となっている。」(【0028】)との記載があり、これに続く実施例の説明に、「次に、セラミックス基板1のより具体的な実施例について説明する。」(【0029】)との記載がある。すなわち、「本実施の形態」では「セラミックス基板1」の「絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの絶縁基材2の反り量が0.03mm以下」となっており、「実施例」とは「セラミックス基板1」を「より具体的」にしたものと解される。 ゆえに、段落【0029】以降に説明される「実施例」においても、セラミックス基板1の絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量が0.03mm以下となっているものと解される。 よって、本件発明1で特定されている「前記窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下」とすること(発明特定事項1I)は、実施例として発明の詳細な説明に記載されていると認められる。 (3)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。 また、本件発明1及び2は、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものではないという事情はない。 よって、本件発明1及び2は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。 3 申立理由3について (1)甲1の記載と甲1発明 甲1には、以下アのとおりの記載がある。また、当該記載に基づき、以下イのとおり甲1発明を認定する。 ア 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。 (ア)「【0008】 【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に放熱銅板が、それぞれ活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなるものにおいて、放熱銅板側の接合層の厚みが銅回路側よりも10μm以上厚くなっていることを特徴とする回路基板である。・・・」 (イ)「【0014】本発明で使用されるセラミックス基板の材質としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ等であるが、パワーモジュールには窒化アルミニウムが適している。窒化アルミニウム基板の厚みとしては、厚すぎると熱抵抗が大きくなり、薄すぎると耐久性がなくなるため、0.5~0.8mm程度が好ましい。」 (ウ)「【0017】セラミックス基板に銅回路及び放熱銅板を形成する方法としては、セラミックス基板と銅板との接合体をエッチングする方法、銅板から打ち抜かれた回路及び放熱板のパターンをセラミックス基板に接合する方法等によって行うことができ、これらの際における接合方法としては、活性金属ろう付け法を用いる。」 (エ)「【0021】実施例1~2 重量割合で、Ag粉末90部、Cu粉末10部、TiH2粉末3部、Zr粉末3部にテルピネオール15部を配合し、ポリイソブチルメタアクリレートのテルピネオール溶液を加えて混練し、ろう材ペーストを調製した。それを、窒化アルミニウム基板(サイズ:60mm×36mm×0.65mm 曲げ強さ:40kg/mm2 熱伝導率:135W/mK)の銅回路形成面には塗布量(乾燥後)を9mg/cm2 とし、また放熱銅板形成面には塗布量(乾燥後)を実施例1では13mg/cm2 、実施例2では17mg/cm2 として、塗布した。 【0022】次に、窒化アルミニウム基板の銅回路形成面に、56mm×32mm×0.3mmの銅回路パターンを、また放熱銅板形成面に56mm×32mm×0.15mmの放熱銅板のパターンを接触配置してから、真空度1×10-5Torr以下の真空下、表1に示される条件で加熱した後、600℃まで急冷し、その後2℃/分の降温速度で冷却して回路基板を作製した。」 (オ)「【0023】比較例1 窒化アルミニウム基板の両面のペースト塗布量を9mg/cm2 としたこと以外は実施例1と同様にして回路基板を作製した。」 (カ)「【0024】比較例2 放熱銅板の厚みを0.30mmとしたこと以外は比較例1と同様にして回路基板を作製した。」 (キ)「【0026】・・・更には、銅回路及び放熱銅板の接合層の厚みを、回路基板を切断後、断面を研磨し、走査型電子顕微鏡で任意の5箇所で測定しその値を平均した。それらの結果を表1に示す。 【0027】【表1】 [図:0001428027000001.jpg] 」 段落【0026】の記載において、「銅回路」の「接合層」、及び、「放熱銅板」の「接合層」は、それぞれ、「銅回路」側の「接合層」、及び、「放熱銅板」側の「接合層」を意味していることは明らかである。また、【表1】において、「接合層の厚み」の列の「銅回路」及び「放熱銅板」は、それぞれ、「銅回路」側及び「放熱銅板」側を意味していることも明らかである。 そして、段落【0026】の記載から、【表1】は、「銅回路」側「及び放熱銅板」側「の接合層の厚みを」「走査型電子顕微鏡で任意の5箇所で測定しその値を平均した」「結果を」「示す」ものであると認められる。また、【表1】の「接合層の厚み」の列は、これ以外に「接合層の厚み」を示すと考えられる列は存在しないことを踏まえれば、当該「結果を」「示す」ものであると解される。 以上を踏まえれば、【表1】より、比較例2において、「銅回路」側「及び放熱銅板」側「の接合層の厚みを」「走査型電子顕微鏡で任意の5箇所で測定しその値を平均した結果」は、いずれも20μmであると認められる。 また、【表1】より、比較例2において、接合後の回路基板の反りは0(μm)であるものと認められる。 イ 甲1発明 前記アの記載によれば、甲1には、以下(ア)を踏まえると、比較例2として、以下(イ)のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (ア)比較例2に基づく認定 比較例2について記載する段落【0024】には、「放熱銅板の厚みを0.30mmとしたこと以外は比較例1と同様にして回路基板を作製した。」と記載されており、比較例1について記載する段落【0023】には、「窒化アルミニウム基板の両面のペースト塗布量を9mg/cm2 としたこと以外は実施例1と同様にして回路基板を作製した。」と記載されている。 よって、甲1発明を比較例2に基づいて認定するに際し、「放熱銅板の厚みを0.30mmとしたこと以外」については、比較例1及び実施例1に基づいて認定する。 (イ)甲1発明の認定 後の参照の便宜のため、甲1発明を1a~1a′に分説し、「構成1a」のようにして参照する。 1a セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に放熱銅板が、それぞれ活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる回路基板であって、放熱銅板側の接合層の厚みが銅回路側よりも10μm以上厚くなっており、(【0008】) 1b 回路基板の作製では、(【0021】~【0024】) 1b1 ろう材ペーストを調製し、それを、窒化アルミニウム基板(サイズ:60mm×36mm×0.65mm)の銅回路形成面と放熱銅板形成面に塗布し、(【0021】) 1b2 セラミックス基板に銅回路及び放熱銅板を形成する方法は、銅板から打ち抜かれた回路及び放熱板のパターンをセラミックス基板に接合する方法等によって行うことができ、(【0017】) 1b3 窒化アルミニウム基板の銅回路形成面に、56mm×32mm×0.3mmの銅回路パターンを、また放熱銅板形成面に放熱銅板のパターンを接触配置してから加熱した後、急冷し、その後2℃/分の降温速度で冷却し、(【0022】) 1b4 放熱銅板の厚みは0.30mmであり、(【0024】) 1b5 銅回路側及び放熱銅板側の接合層の厚みを走査型電子顕微鏡で任意の5箇所で測定しその値を平均した結果は、いずれも20μmであり、(【0026】及び【0027】【表1】) 1b6 接合後の回路基板の反りは0(μm)である、(【0027】【表1】) 1a’ 回路基板 (2)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 発明特定事項1Aについて 発明特定事項1Aは、「矩形状で平板状の窒化珪素基板と、」というものである。 甲1発明は「セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に放熱銅板が、それぞれ活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる回路基板」である(構成1a)。そして、「回路基板の作製」(構成1b)で用いている「セラミックス基板」は具体的には「窒化アルミニウム基板」(構成1b1及び1b3)である。ゆえに、本件発明1の「窒化珪素基板」と甲1発明の「セラミックス基板」は、いずれも窒化物セラミックス基板という点で共通している。 また、甲1発明において、「回路基板の作製では」(構成1b)、「窒化アルミニウム基板(サイズ:60mm×36mm×0.65mm)」(構成1b1)との特定があり、当該特定では全体の寸法が縦横の寸法で表されているから、「窒化アルミニウム基板」が矩形状であることは明らかである。また、「窒化アルミニウム基板」は「基板」であるから、平板状であることも明らかである。 よって、本件発明1の「窒化珪素基板」と甲1発明の「セラミックス基板」は、いずれも「矩形状で平板状」の窒化物セラミックス基板という点で一致している。 一方、窒化物セラミックス基板について、本件発明1において「窒化珪素基板」であるのに対し、甲1発明においては「窒化アルミニウム基板」である点で相違している。 イ 発明特定事項1Bについて 発明特定事項1Bは、「前記窒化珪素基板の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、」というものである。 甲1発明において、「セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に放熱銅板が、それぞれ活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる回路基板であって、放熱銅板側の接合層の厚みが銅回路側よりも10μm以上厚くなって」いるもの(構成1a)であり、ここで、「銅回路側」の「接合層」は、「セラミックス基板の一方の面に銅回路」「が、」「活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる」ことにより得られるものであるから、当該「接合層」は、「セラミックス基板」の主面である「一方の面」に設けられたろう材層であることは明らかである。そして、当該「一方の面」を「第1の主面」と呼び、また、当該「一方の面」に設けられた「接合層」を「第1のろう材層」と呼ぶことは任意である。 よって、窒化物セラミックス基板に関し、本件発明1の「窒化珪素基板」と甲1発明の「セラミックス基板」は、いずれもその「第1の主面に」「第1のろう材層」が「設けられ」ている点で一致している。 なお、窒化物セラミックス基板の材料が、本件発明1と甲1発明で相違している点については、前記アのとおりである。 ウ 発明特定事項1Cについて 発明特定事項1Cは、「前記窒化珪素基板の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、」というものである。 甲1発明において、「セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に放熱銅板が、それぞれ活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる回路基板であって、放熱銅板側の接合層の厚みが銅回路側よりも10μm以上厚くなって」いるもの(構成1a)であり、ここで、「放熱銅板側の接合層」は、「セラミックス基板の」「他方の面に放熱銅板が、」「活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる」ことにより得られるものであるから、当該「接合層」は、「セラミックス基板」の主面である「他方の面」に設けられたろう材層であることは明らかである。そして、当該「他方の面」を「第2の主面」と呼び、また、当該「他方の面」に設けられた「接合層」を「第2のろう材層」と呼ぶことは任意である。 よって、窒化物セラミックス基板に関し、本件発明1の「窒化珪素基板」と甲1発明の「セラミックス基板」は、いずれもその「第2の主面に」「第2のろう材層」が「設けられ」ている点で一致している。 なお、窒化物セラミックス基板の材料が、本件発明1と甲1発明で相違している点については、前記アのとおりである。 エ 発明特定事項1Dについて 発明特定事項1Dは、「前記第1のろう材層を介して前記窒化珪素基板の前記第1の主面側に固定され、電気回路部品が搭載される第1の金属層と、」というものである。 甲1発明の「銅回路」(構成1a)は、金属層であり、また、「銅回路」を「第1の」と形容することは任意であることを踏まえると、本件発明1の「第1の金属層」に相当する。 甲1発明において、「銅回路」は、「セラミックス基板の一方の面に」「活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる」もの(構成1a)であること、また、当該接合により得られる「接合層」は、前記イのとおり、「セラミックス基板」の主面である「一方の面」に設けられているものであるから、「銅回路」は、当該「接合層」を介して「セラミックス基板」の主面である「一方の面」側に固定されていることは明らかである。 よって、本件発明1の「第1の金属層」と甲1発明の「銅回路」とは、「前記第1のろう材層を介して」窒化物セラミックス基板「の前記第1の主面側に固定され」る「第1の金属層」である点で共通している。 一方、本件発明1の「第1の金属層」は「電気回路部品が搭載される」のに対し、甲1発明の「銅回路」においてはそのように特定されていない点で相違している。 なお、窒化物セラミックス基板の材料が、本件発明1と甲1発明で相違している点については、前記アのとおりである。 オ 発明特定事項1Eについて 発明特定事項1Eは「前記第2のろう材層を介して前記窒化珪素基板の前記第2の主面側に固定され、前記電気回路部品で発生した熱を放熱する第2の金属層と」というものである。 甲1発明の「放熱銅板」(構成1a)は、金属層であり、また、「放熱銅板」を「第2の」と形容することは任意であることを踏まえると、本件発明1の「第2の金属層」に相当する。また、「放熱銅板」が、熱を放熱するものであることは明らかである。 甲1発明において、「放熱銅板」は、「セラミックス基板の」「他方の面に」「活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる」もの(構成1a)であること、また、当該接合により得られる「接合層」は、前記ウのとおり、「セラミックス基板」の主面である「他方の面」に設けられているものであるから、「放熱銅板」は、当該「接合層」を介して「セラミックス基板」の主面である「他方の面」側に固定されていることは明らかである。 よって、本件発明1の「第2の金属層」と甲1発明の「放熱銅板」とは、「前記第2のろう材層を介して」窒化物セラミックス基板「の前記第2の主面側に固定され」「熱を放熱する第2の金属層」である点で共通している。 一方、本件発明1の「第2の金属層」が「放熱する」「熱」は「前記電気回路部品で発生した」ものであるに対し、甲1発明において「放熱銅板」が放熱する熱の発生源については特定されていない点で相違している。 なお、窒化物セラミックス基板の材料が、本件発明1と甲1発明で相違している点については、前記アのとおりである。 カ 発明特定事項1Fについて 発明特定事項1Fは「からなるセラミックス基板において、」というものである。これは本件発明1の「セラミックス基板」が発明特定事項1A~1E「からなる」ことを特定するものである。 甲1発明の「回路基板」(構成1a)は、本件発明1の「セラミックス基板」に相当する。 本件発明1の「セラミックス基板」と甲1発明の「回路基板」は、前記ア~オを踏まえれば、本件発明1おいては、窒化物セラミックス基板が「窒化珪素基板」であること(前記ア)、「第1の金属層」に「電気回路部品が搭載される」こと(前記エ)、及び、「第2の金属層」が「放熱する」「熱」が「前記電気回路部品で発生した」ものであること(前記オ)を別にすれば、いずれも発明特定事項1A~1E「からなるセラミックス基板」である点で一致している。 キ 発明特定事項1Gについて 発明特定事項1Gは、「前記第1の金属層および前記第2の金属層は、同種の金属であって、それぞれの厚さの差は、0.02mm以下であり、」というものである。 甲1発明の「銅回路」が本件発明1の「第1の金属層」に相当することは前記エのとおりである。 甲1発明の「放熱銅板」が本件発明1の「第2の金属層」に相当することは前記オとおりである。 甲1発明において、「銅回路」及び「放熱銅板」のいずれも「銅」からなることは明らかであるから、同種の金属であると認められる。 甲1発明において、「銅回路パターン」は「56mm×32mm×0.3mm」である(構成1b3)から厚みは0.3mmであると認められる。そして、「セラミックス基板に銅回路」「を形成する方法は、銅板から打ち抜かれた回路」「のパターンをセラミックス基板に接合する方法等によって行うことができ」るもの(構成1b2)であり、ここで「銅板から打ち抜かれた回路」「のパターン」とは「銅回路パターン」のことであり、また「銅回路パターン」が「銅回路」となることは明らかであることを踏まえれば、「銅回路」の厚さも0.3mmであると認められる。また、「放熱銅板の厚」さ「は0.30mmであ」る(構成1b4)。以上を踏まえれば、「銅回路」及び「放熱銅板」の厚さの差は0mmであり、ゆえに0.02mm以下との範囲に含まれる。 よって、本件発明1の「前記第1の金属層および前記第2の金属層」と甲1発明の「銅回路」および「放熱銅板」は、いずれも「同種の金属であって、それぞれの厚さの差は、0.02mm以下であ」る点で一致している。 ク 発明特定事項1Hについて 発明特定事項1Hは、「前記第1のろう材層および前記第2のろう材層は、いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下であり、」というものである。 甲1発明において、「セラミックス基板」の主面である「一方の面」に設けられている「接合層」が、本件発明1の「第1のろう材層」に相当することは、前記イのとおりである。そして「銅回路」は、当該「接合層」を介して「セラミックス基板」の主面である「一方の面」側に固定されていることは、前記エのとおりである。してみると、当該「接合層」は、「銅回路側」のものであることは明らかである。 また、甲1発明において、「セラミックス基板」の主面である「他方の面」に設けられている「接合層」が、本件発明1の「第2のろう材層」に相当することは、前記ウのとおりである。そして「放熱銅板」は、当該「接合層」を介して「セラミックス基板」の主面である「他方の面」側に固定されていることは、前記オのとおりである。してみると、当該「接合層」は、「放熱銅板側」のものであることは明らかである。 そして、甲1発明において、「銅回路側及び放熱銅板側の接合層の厚みを走査型電子顕微鏡で任意の5箇所で測定しその値を平均した結果は、いずれも20μmであ」る(構成1b5)ものの、いずれの接合層も各箇所における厚さは特定されず、また、各箇所における厚さの差も特定されない。 よって、本件発明1の「前記第1のろう材層および前記第2のろう材層」は、「いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下であ」るのに対し、甲1発明の「銅回路側及び放熱銅板側の接合層」は、いずれも各箇所における厚さは特定されず、また、各箇所における厚さの差も特定されない点で相違している。 ケ 発明特定事項1Iについて 発明特定事項1Iは、「前記窒化珪素基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下とした、」というものである。 甲1発明において、「回路基板」は、「セラミックス基板の一方の面に銅回路、他方の面に放熱銅板が、それぞれ活性金属成分を含むろう材を用いて接合されてなる」もの(構成1a)であり、「接合後の回路基板の反りは0(μm)である」(構成1b6)から、「セラミックス基板」自体の「反り」も「0(μm)である」ことは明らかである。そして、「反り」が「0(μm)である」ということは、100mmあたりの反り量も「0(μm)である」ことは明らかである。 よって、窒化物セラミックス基板に関し、本件発明1の「窒化珪素基板」と甲1発明の「セラミックス基板」は、いずれもその「各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下と」なっている点で一致している。 なお、窒化物セラミックス基板の材料が、本件発明1と甲1発明で相違する点については、前記アのとおりである。 コ 発明特定事項1F′について 発明特定事項1F′は、「セラミックス基板。」というものである。 甲1発明の「回路基板」(構成1a)は、前記アを考慮すると、本件発明1の「セラミックス基板」に相当する。 サ 一致点及び相違点について 前記ア~コによれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (ア)一致点 矩形状で平板状の窒化物セラミックス基板と、 前記窒化物セラミックス基板の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、 前記窒化物セラミックス基板の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、 前記第1のろう材層を介して前記窒化物セラミックス基板の前記第1の主面側に固定された第1の金属層と、 前記第2のろう材層を介して前記窒化物セラミックス基板の前記第2の主面側に固定された第2の金属層とからなるセラミックス基板において、 前記第1の金属層および前記第2の金属層は、同種の金属であって、それぞれの厚さの差は、0.02mm以下であり、 前記窒化物セラミックス基板の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下とした、 セラミックス基板。 (イ)相違点1 窒化物セラミックス基板について、本件発明1において「窒化珪素基板」であるのに対し、甲1発明においては「窒化アルミニウム基板」である点。(発明特定事項1A~1E及び1I) (ウ)相違点2 本件発明1の「第1の金属層」は「電気回路部品が搭載され」、「第2の金属層」が「放熱する」「熱」は「前記電気回路部品で発生した」ものであるのに対し、甲1発明の「銅回路」においてはそのように特定されておらず、また、「放熱銅板」が放熱する熱の発生源については特定されていない点。(発明特定事項1D、1E) (エ)相違点3 本件発明1の「前記第1のろう材層および前記第2のろう材層」は、「いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下であ」るのに対し、甲1発明の「銅回路側及び放熱銅板側の接合層」は、いずれも各箇所における厚さは特定されず、また、各箇所における厚さの差も特定されない点。(発明特定事項1H) シ 特許異議申立人の主張と検討 上記対比についての特許異議申立書での特許異議申立人の主張及びそれに対する当審の判断は以下のとおりである。 (ア)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明1と甲1発明の相違点の検討に際し、発明特定事項1Hの構成と関連して、以下のaを主張している。 a 甲1発明において銅回路の接合層および銅放熱板の接合層がいずれも厚さが「20μm」であり、これは本件発明1の発明特定事項1Hに相当する点(23頁18~24行目、24頁1~17行目) 甲1の段落【0027】の【表1】には、比較例2において、銅回路の接合層および銅放熱板の接合層が、いずれも厚さが「20μm」であることが記載されており、このことは、本件発明1における「前記第1のろう材層および前記第2のろう材層は、いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下」(発明特定事項1H)である構成に相当する。 (イ)特許異議申立人の主張についての検討 a 甲1発明において銅回路の接合層および銅放熱板の接合層がいずれも厚さが「20μm」であり、これは本件発明1の発明特定事項1Hに相当する点について(前記(ア)a) 発明特定事項1Hは、第1のろう材層及び第2のろう材層に関し、「いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であ」ることを特定するものであり、また、「任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下であ」ることを特定するものである。 一方、甲1発明において「20μm」とされているのは、「銅回路側及び放熱銅板側の接合層の厚みを、走査型電子顕微鏡で任意の5箇所で測定した値の平均」(構成1b5)であり、接合層の各箇所における厚さは特定されず、また、各箇所における厚さの差も特定されないことは前記クのとおりである。 ゆえに、甲1発明において銅回路の接合層および銅放熱板の接合層がいずれも厚さが「20μm」であることが、本件発明1の発明特定事項1Hに相当するものであるということはできない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、採用することができない。 (3)相違点(相違点3)についての判断 事案にかんがみ、前記(2)サに示した相違点のうち、相違点3(前記(2)サ(エ))について検討する。 ア 当審の判断 甲2~6のいずれにも、第1のろう材層および第2のろう材層において、いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下であることは、記載も示唆もされていない。 よって、相違点3は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到することができたものであるとはいえない。 また、前記「第1」のとおり、本件特許についての出願は、最初の原出願の一部を新たな特許出願としたものである分割出願の一部を新たな特許出願としたものであり、特許法44条2項の規定により最初の原出願の出願時(令和4年3月29日)にしたものとみなされる一方、甲7の公開日は令和4年10月31日であるから、甲7に記載された発明は、最初の原出願の出願後に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当しない。ゆえに、本件発明1が、甲7に記載された発明に基づいて特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 イ 特許異議申立人の主張 相違点3についての特許異議申立書での特許異議申立人の主張及びそれに対する当審の判断は以下のとおりである。 (ア)特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書(26頁8行目~29頁2行目)において、発明特定事項1Hの構成と関連して、以下のa~eを主張している。 a 発明特定事項1Hは、甲2、甲3、甲6及び甲7に記載された周知技術である点(26頁8~17行目) 仮に、甲1の段落【0026】の記載のとおり、各接合層の厚さが5箇所の平均値から算出されたものが、本件発明1における「第1、第2のろう材層の厚さ」に相当しない場合であっても、第1のろう材層および第2のろう材層を、いずれの箇所においても厚さを11.2μm以上20.4μm以下とし、任意の箇所における第1のろう材層の厚さと任意の箇所の裏側にあたる箇所の第2のろう材層の厚さとの差を4.0μm以下とすること(発明特定事項1H)は、例えば甲2の段落[0007]および[図1]や甲3の[特許請求の範囲]および[第1表]、甲6の段落[0010]、[0011]、[0012]、[0013]、[0055]、[0056]、[0063]、[0071]、甲7の段落【0062】等に記載された周知技術である。 b 甲2に記載された事項に基づき、甲1に記載されている銅回路の接合層と放熱銅板の接合層の厚さの差は4μmである点(26頁18行目~27頁2行目) 甲2の図1は、セラミックス基板1と、金属板と、Ag-Cu-Snろう材層組織3と、Cuリッチ相4と、接合界面5と、を有するセラミックス回路基板の断面を示している。また甲2では、接合層をAg-Cu-Snろう材層組織3としている。図1では、Cuリッチ相が黒色であるから、白色に見えるのはAgリッチ相である。Agリッチ相の厚さの最小値と最大値の差は下記図の赤線に示すように4μm以下である。つまり、活性金属ろう材ペーストの塗布量が同じであれば、活性金属ろう材層の厚さは、大きくばらつくものではない。そのため、甲1における銅回路の接合層と放熱銅板の接合層の厚さの差も4μm以下であることは明らかである。また、甲1の段落【0013】には「接合層厚さは10~20μm」とあるように、この範囲で活性金属ろう材ペーストの塗布量をこの範囲で同じにすれば、表裏の接合層厚さの差は4μm以下になる。 [図:0001428027000002.jpg] c 甲6に、接合前と接合後を比較しても厚さは4μm以上変化しないことが示されている点(27頁3~6行目) 甲6の段落[0071]の[表1]において、「ろう材層厚さ」と「接合層厚さ」とを比較すると、これらに大きな変化はない。このことは、接合前と接合後を比較しても厚さは4μm以上変化しないことを示している。 d 甲6に、接合層の厚さの差が4.0μm以下の試料が記載されている点(27頁7行目~28頁4行目) 甲6の段落[0009]、[0010]、[0011]、[0012]、[0013]、[0055]、[0056]及び[0063]等の記載から、甲6の実施例ではバルク状活性金属ろう材を用いていることは明らかである。また、段落[0071]の[表1]では比較例(活性金属ろう材ペースト)の接合層厚さについて具体的な記載はないが、段落[0063]に示されているように「略同じ」であるから接合層厚さも略同じであることは明らかである。 さらに、[表1]において、試料No.1、2及び7における接合層の厚さが11.2~20.4μmであることが記載されており、前述のとおり、厚さの変化も4μm以上変化しないことから、接合層の厚さの差が4.0μm以下であることは明らかである。なお、甲6には、反り量に関して記載されていないが、本件発明1は、前述のとおり第1のろう材層、第2のろう材層、第1の金属層及び第2の金属層のそれぞれの厚さと、これらの厚さの差を制御し、セラミックス基板の反り量を制御するものであるから、これらの厚さが同等の範囲であれば、得られる反り量も同等の値であることは明らかである。 e 甲7に、「前記第1のろう材層および前記第2のろう材層は、いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下である」構成を満たす試料が記載されている点(28頁5行目~29頁2行目) 甲7には、【請求項1】~【請求項3】、段落【0061】、【0062】、【0068】及び【0071】の【表2】等の記載から、試料No.4~6において、回路層側、金属層側の活性金属化合物層、Ag-Cu合金層のライン分析により測定された厚さが開示されている。ここで、接合層の厚さは、以下の表に示すとおり、活性金属化合物層の厚さとAg-Cu合金層の厚さの合計となる。 [図:0001428027000003.jpg] 試料No.4とNo.5は本件発明1における「前記第1のろう材層および前記第2のろう材層は、いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下である」構成を満たしている。なお、甲7には反り量について記載されていないが、本件発明1は、前述のとおり第1のろう材層、第2のろう材層、第1の金属層及び第2の金属層のそれぞれの厚さと、これらの厚さの差を制御し、セラミックス基板の反り量を制御するものであるから、これらの厚さが同等の範囲であれば、得られる反り量も同等の値であることは明らかである。 (イ)特許異議申立人の主張についての検討 a 発明特定事項1Hは、甲2、甲3、甲6及び甲7に記載された周知技術である点について(前記(ア)a) 本件発明1と甲1発明との相違点3は前記サ(エ)のとおりであり、発明特定事項1Hについて相違している。 そして、発明特定事項1Hは、甲2、甲3、甲6及び甲7のいずれにも記載されていない。また、発明特定事項1Hが周知技術であるといえる事情はない。 b 甲2に記載された事項に基づき、甲1に記載されている銅回路の接合層と放熱銅板の接合層の厚さの差は4μmである点について(前記(ア)b) まず、甲2の図1を以下に示す。 [図:0001428027000004.jpg] 甲2の図1には、長さ4μmの赤線は記載されていないため、特許異議申立書に示されている図は、特許異議申立人が、図1に対し、図中右下に示されている10μmの長さを示すスケールに基づいて赤線を追記したものであると認められる。 しかし、図1は、段落[0011]に記載されているとおり、セラミックス回路基板の一例であり、また図1は10μmのスケールからもわかるように、その一部分を示しているものであることを踏まえれば、図1が一般論として、セラミックス回路基板のその全体においてろう材層(接合層)の厚さの最小値と最大値の差が4μm以下であることを示しているものとは認められない。また、甲2には、図1以外のその他の箇所においても、ろう材層の厚さの最小値と最大値については記載も示唆もされていない。よって、甲2に基づくろう材層の厚さの最小値と最大値の差が4μmであるとの主張、及び、当該主張に基づく他の主張は、採用することができない。 なお、念のため付言すると、甲2の図1に基づき、甲1における銅回路の接合層と放熱銅板の接合層の厚さの差が4μm以下であることは明らかである旨主張している点についても、甲2の記載は甲1の接合層に関する記載を説明していると認められる事情はないため、当該主張も採用することはできない。 c 甲6に、接合前と接合後を比較しても厚さは4μm以上変化しないことが示されている点について(前記(ア)c) 甲6には以下(a)のとおりの記載があり、これに基づき(b)のとおり判断する。 (a)甲6の記載 甲6には、以下の記載がある。 「[0013] 即ち、本発明は、セラミックス基板と、前記セラミックスの一方の面に接合層を介して接合された銅系材料からなる銅回路と、前記セラミックスの他方の面に接合層を介して接合された銅系材料からなる銅放熱板よりなるセラミックス回路基板において、前記接合層は、Agを必須成分とすると共に少なくとも2種以上の金属からなるろう材成分と、少なくとも1種以上の活性金属成分とからなり、前記活性金属の含有量が、接合層全体の金属元素量に対して0.5質量%以上2.0質量%以下となっており、前記接合層は、前記ろう材成分からなるろう材層と前記活性金属を含む活性金属化合物層とからなり、前記活性金属化合物層が前記セラミックス基板との接合界面に沿って形成されており、更に、前記接合層と前記セラミックス基板との接合面積に占める、前記活性金属化合物層と前記セラミックス基板との接合面積の割合が、88%以上であることを特徴とするセラミックス回路基板である。」 「[0049] 本発明に係るセラミックス回路基板の製造方法では、以上のようにして製造され用意された複合材料を、セラミックス基板の両面に配置し、加熱して複合材料を接合する。ここで、この活性金属ろう材による接合の条件については、上述した接合層の構成(活性金属化合物層の厚さ及び接合面積)を発現させるものであることが要求される。」 「[0066]第2実施形態:ここでは、組成の異なる複数の活性金属ろう材を使用して回路基板を製造した。第1実施形態と同様にして、下記表1に記載の組成の活性金属ろう材を製造して複合材料を製造した。そして、第1実施形態と同様に回路基板を製造した。」 「[0071] [表1] [図:0001428027000005.jpg] 」 (b)判断 前記(a)に基づくと、甲6は、「セラミックス基板と、前記セラミックスの一方の面に接合層を介して接合された銅系材料からなる銅回路と、前記セラミックスの他方の面に接合層を介して接合された銅系材料からなる銅放熱板よりな」り、「前記接合層は、」「ろう材成分からなるろう材層と」「活性金属を含む活性金属化合物層とからなり」「前記活性金属化合物層が前記セラミックス基板との接合界面に沿って形成されて」いる「セラミックス回路基板」([0013])が記載されていると認められる。 そして、セラミックス回路基板の製造の際には、「複合材料を、セラミックス基板の両面に配置し」、「接合層の構成を発現させる」「接合の条件」にて「加熱して複合材料を接合」すること([0049])も記載されていると認められる。 また、表1は、「第2実施形態」として「組成の異なる複数の活性金属ろう材を使用して回路基板を製造した」際の「活性金属ろう材」の「組成」を記載しているもの([0066])と認められ、表1から、それぞれの回路基板を製造した際の「ろう材厚さ」、「接合層厚さ」、「活性金属化合物層」の厚さが記載されているとも認められる。 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は必ずしも判然としないが、表1には、特許異議申立人が主張するような、ろう材層の厚さと接合層の厚さとの間に大きな変化がないことについては記載されておらず、また、表1は「接合前と接合後を比較」するものとは解されず、表1には、接合前と接合後を比較して厚さが「4μm以上変化しない」ことも示されていない。 よって、甲6に基づく4μm以上変化しないとの主張、及び、当該主張に基づく他の主張は、採用することができない。 d 甲6に、接合層の厚さの差が4.0μm以下の試料が記載されている点について(前記(ア)d) 甲6には、段落[0039]の記載より、「活性金属ろう材層」に「バルク状」のものを「使用する」ことが記載されていると認められる。また、表1のNo.1、2及び7において、接合層の厚さは、11.2~20.4μmの範囲内のものであるとも認められる。 一方、段落[0063]には、「一方、比較例についてみると、接合層の組織そのものは本実施形態と略同じであり、・・・。また、活性金属化合物層の厚さは、0.6μmであった。・・・」と記載されている。この記載から、「比較例」は「接合層の組織そのものは本実施形態と略同じ」であるものと認められるが、続いて同段落内に「また、活性金属化合物層の厚さは、0.6μmであった。」と厚さに関する記載もあるため、「比較例についてみると、接合層の組織そのものは本実施形態と略同じ」の記載において「接合層の組織」が膜厚の意を含むかは定かではない。 ゆえに、段落[0063]で「接合層の組織そのものは」「略同じ」と記載されているからといって、実施例と比較例で、接合層厚さも略同じであるが明らかであるとはいえない。また、前記cのとおり、甲6に基づく4μm以上変化しないとの主張、及び、当該主張に基づく他の主張は、採用することができない。 e 甲7に、「前記第1のろう材層および前記第2のろう材層は、いずれの箇所においても厚さが11.2μm以上20.4μm以下であって、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さと前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さとの差が4.0μm以下である」構成を満たす試料が記載されている点について(前記(ア)e) 前記アのとおり、本件発明1が、甲7に記載された発明に基づいて特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。 (4)小括 以上のとおりであるから、その余の相違点(相違点1及び2)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものであるといえない。また、本件発明1が、甲7に記載された発明に基づいて特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (5)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項により限定されたものであるから、本件発明2と甲1発明との間には、前記(2)サに示した相違点がある。 そして、そのうちの相違点3(前記(2)サ(エ))についての判断は、前記(3)のとおりであるから、本件発明2についても、前記(4)同様、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものであるといえない。また、本件発明2が、甲7に記載された発明に基づいて特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (6)小括 以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基づいて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700653

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