審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-700600

凝集を低減したシリカ粉末、及び樹脂組成物、並びに半導体封止材

審判番号
2025-700600
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-520999
登録番号
7599556
請求日
2025年06月05日
審決日
2025年09月17日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】デンカ株式会社
  • 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
  • 【異議申立人】竹口 美穂
  • 【異議申立人】池田 さおり
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 塩谷 領大
  • 審判官 河本 充雄
分類
P1651.113-Y (C01B) / P1651.121-Y (C01B) / P1651.536-Y (C01B) / P1651.537-Y (C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7599556号発明「凝集を低減したシリカ粉末、及び樹脂組成物、並びに半導体封止材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7599556号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7599556号の請求項1~7に係る特許(以下、「本件特許」ともいう。)についての出願は、2022年(令和4年)5月6日(優先権主張 令和3年5月13日(以下、「本件優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、令和6年12月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~7に係る特許に対し、令和7年6月5日に特許異議申立人 竹口 美穂(以下、「申立人竹口」という。)により特許異議の申立てがされ、請求項1、2、5~7に係る特許に対し、同年同月12日に特許異議申立人 池田 さおり(以下、「申立人池田」という。)により特許異議の申立てがされ、同年7月3日に申立人竹口から手続補正書(方式)が提出され、同年同月22日に申立人池田から手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、下記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であり、かつ比表面積(BET)が2~15m2/gである、シリカ粉末。 (測定方法) ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製する。前記樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(Dmax)を測定する。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用する。(以下、上記測定方法を、「本件測定方法」ともいう。) 【請求項2】 体積基準累積径(D90)が2.5μm以下である、請求項1に記載のシリカ粉末。 【請求項3】 体積基準累積径(D100)が4.7μm以下である、請求項1または2に記載のシリカ粉末。 【請求項4】 下記式(1)から算出される、体積基準累積径(D100)と体積基準累積径(D90)との差分に対する、体積基準累積径(D90)の体積基準頻度の値が、1.0~3.0である、請求項1または2に記載のシリカ粉末。 (体積基準累積径(D90)の体積基準頻度)/(体積基準累積径(D100)-体積基準累積径(D90))・・・(1) 【請求項5】 請求項1または2に記載のシリカ粉末と、樹脂とを含む、樹脂組成物。 【請求項6】 前記樹脂が熱硬化性樹脂を含む、請求項5に記載の樹脂組成物。 【請求項7】 請求項5に記載の樹脂組成物を用いてなる、半導体封止材。」 第3 申立理由の概要 1 申立人竹口の申立理由 申立人竹口は、証拠として甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1-1」~「甲1-3」という。)を提出し、以下の理由により、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由1-1(新規性) 本件発明1~7は、甲1-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由1-2(新規性) 本件発明1~7は、甲1-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 [証拠方法] 甲1-1:特開2005-170771号公報 甲1-2:特開2005-187302号公報 甲1-3:株式会社アドマテックス 製品紹介、「VMC法(Vaporized Metal Combustion Method.)」[online]、2016年8月19日、[取得日2025年6月27日]、取得先<URL:https://web.archive.org/web/20160819213654/https://www.admatechs.co.jp/product-admafine-vmc.html> 2 申立人池田の申立理由 申立人池田は、証拠として甲第1号証~甲第6号証(以下、「甲2-1」~「甲2-6」という。)を提出し、以下の理由により、本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由2-1(実施可能要件) 本件特許に係る願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1、2、5~7について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、請求項1、2、5~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)申立理由2-2(新規性) 本件発明1、2、5、6は、甲2-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由2-3(進歩性) 本件発明1、2、5~7は、甲2-2に記載された発明及び甲2-3~甲2-6に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4)申立理由2-4(サポート要件) 本件発明1、2、5~7は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1、2、5~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [証拠方法] 甲2-1:JIS K 5600-2-5(塗料一般試験方法-第2部:塗料の性状・安定性-第5節:分散度、[Online]、1999年、[検索日2025年6月6日])、取得先<URL:https://kikakurui.com/k5/K5600-2-5-1999-01.html> 甲2-2:国際公開第2020/031267号 甲2-3:特開2015-6729号公報 甲2-4:特開2004-273444号公報 甲2-5:特開2005-126281号公報 甲2-6:国際公開第2018/034234号 第4 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 1 甲1-1(特開2005-170771号公報) (1)甲1-1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【請求項1】 シリカ粉体の表面が塩基性物質又は塩基性混合物で処理された微塩基性シリカ粉体であって、該シリカ粉体又は微塩基性シリカ粉体は所定値以上の粒径の粗粒がカットされていることを特徴とする微塩基性シリカ粉体。」 「【0055】 [比較例2] 平均粒径が0.5μ、比表面積が6.7m2/gの球状シリカ((株)アドマテックス製、SO-C2)を篩で105μ以上の粗大粒子を除去して、比較例サンプル2を作製した。」 「【0061】 [実施例12] 比較例2の比較例サンプル2を100重量部混粉機に投入し、粉体を攪拌しながら、0.1重量部のヘキサメチルジシラザンを噴霧して粉体を処理した。処理後の粉体を気流分級で3μ以上の粗大粒子を除去して、実施例サンプル11を作製した。 ・・・ 【0076】 上記実施例及び比較例の諸物性、塩基性物質処理、粒径カットを表1に一覧にした。 【0077】 【表1】 [図:0001428018000001.jpg] 」 (2)甲1-1に記載された発明 ア 上記(1)の【請求項1】には、シリカ粉体の表面が塩基性物質又は塩基性混合物で処理された微塩基性シリカ粉体であって、該シリカ粉体又は微塩基性シリカ粉体は所定値以上の粒径の粗粒がカットされている微塩基性シリカ粉体が記載され、【0055】には、比較例2として、平均粒径が0.5μ、比表面積が6.7m2/gの球状シリカ((株)アドマテックス製、SO-C2)を篩で105μ以上の粗大粒子を除去して、比較例サンプル2を作製したことが記載され、同【0061】には、実施例12として、比較例2の比較例サンプル2を100重量部混粉機に投入し、粉体を攪拌しながら、0.1重量部のヘキサメチルジシラザンを噴霧して粉体を処理し、処理後の粉体を気流分級で3μ以上の粗大粒子を除去して、実施例サンプル11を作製したことが記載され、同【0076】、【0077】の【表1】には、実施例12の諸物性として、平均粒径が0.5μ、比表面積が6.7m2/g、最大粒径が3μであることが記載されている。 イ 上記アの請求項1及び実施例12のシリカ粒子に注目すると、甲1-1には、以下の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されているといえる。 「シリカ粉体の表面が塩基性物質又は塩基性混合物で処理された微塩基性シリカ粉体であって、該シリカ粉体又は微塩基性シリカ粉体は所定値以上の粒径の粗粒がカットされている微塩基性シリカ粉体であって、 平均粒径が0.5μ、比表面積が6.7m2/gの球状シリカ((株)アドマテックス製、SO-C2)を篩で105μ以上の粗大粒子を除去した比較例サンプル2を100重量部混粉機に投入し、粉体を攪拌しながら、0.1重量部のヘキサメチルジシラザンを噴霧して粉体を処理し、処理後の粉体を気流分級で3μ以上の粗大粒子を除去して作製したものであり、 平均粒径が0.5μ、比表面積が6.7m2/g、最大粒径が3μである微塩基性シリカ粉体。」 2 甲1-2(特開2005-187302号公報) (1)甲1-2には、以下の記載がある。 「【請求項1】 粒径10μm以上の異物粒子の含有量が10個/g以下であることを特徴とする高純度非磁性金属酸化物粉末。」 「【0088】 実施例1 1]非磁性金属酸化物の調製 1)エマルションの調製 JIS3号水ガラス(25℃での粘度が350cpとまで濃縮したもの)20kg、イソパラフィン系炭化水素油(商品名:アイソゾール400、日本石油化学工業社製)7.5kg及びソルビタンモノオレート(商品名:レオドールSP-O10、花王社製)0.18kgを混合し、攪拌機で攪拌混合した後、乳化機を用いて乳化させてエマルションを作成した。 【0089】 2)凝固・不純物抽出・洗浄処理 28質量%の硫酸水溶液575gを室温で攪拌しながら、これに上記で作成したエマルション415gを添加した。添加終了後、室温下でさらに40分間攪拌を続けた。次いで攪拌下に62質量%工業用硝酸40gを添加し、さらに20分間攪拌した後、攪拌しながら100℃に加熱し、その温度で30分間保持した。この処理によって、乳濁状の反応液はオイル相(上相)とシリカゲル粒子が分散した水相(下相)とに分離した。 【0090】 オイル相を除き、水相中のシリカゲル粒子をヌッチェで濾過し、0.01%硫酸水溶液で反応液を置換洗浄した後、純水で、洗液のpHが4以上になるまで繰り返した。その後十分吸引して、脱水し、湿潤状の高純度球状シリカゲルを得た。 【0091】 3)乾燥 得られた湿潤状の高純度球状シリカゲルを温度120℃で20時間乾燥し、高純度乾燥球状シリカゲル粉末100gを得た。得られた高純度乾燥球状シリカゲル粉末は比表面積530m2/g、水分0.8質量%であった。 【0092】 2]解砕・異物粒子の除去 この高純度乾燥球状シリカゲル粉末を、ターボスクリーナー(ターボ工業製)を用い、ポリエステル製目開き27μmのスクリーンで解砕し、スクリーン下の排出口に8000ガウスの格子状マグネットを5段設置し、あらかじめ異物粒子を除去した。なお、格子状マグネットは表面をテフロン樹脂で被覆したものを用いた。 【0093】 異物粒子を除去した乾燥シリカ粒子を石英製坩堝(20リットル)に充填し、1150℃で6時間焼成した。 【0094】 焼成後、得られたシリカ粉末をポリエステル製目開き33μmスクリーンで再度解砕し、シリカ濃度が10質量%となるようにエタノール(表面張力:22.27×10-3N/m(20℃))に分散させ、ポリエステル製目開き24μmスクリーンで処理し、スクリーンを通過させたスラリーに12000ガウスのマグネット棒を入れ、10分間掻き混ぜた。マグネット処理したスラリーをクリーンルーム内でヌッチェを用いて脱液し、120℃で20時間乾燥させた。乾燥時はサンプルの入れた容器に蓋をかぶせ、エタノールが蒸発するために十分な隙間を保ちつつ、異物が混入しないように、窒素気流下で乾燥させた。 【0095】 得られたシリカ粉末について、平均粒径、最大粒径、比表面積、異物粒子(粒径10μm以上)及びチキソ比を測定した。平均粒径4.0μm、最大粒径11μm及び真比重2.20であった。また、BET法で測定した比表面積は0.7m2/gで理論批評面積の1.0倍であった。さらに、SEM写真で真球度が0.9以上である粒子の含有率が99%以上であり、表面の平滑性も良好な球状シリカ粉末であることが確認された。なお、異物粒子(粒径10μm以上)は1個/gであった。その結果を表1にまとめた。 【0096】 粒径はベックマンコールター社製LS-130(レーザー回折散乱方式)を用いて測定した。平均粒径はメディアン値である。 【0097】 最大粒径は標準篩を用い、メッシュ下が100.00%を示したメッシュの開口大きさで示した。 ・・・ 【0104】 実施例6 原料水ガラスとして、JIS3号水ガラスを純水で希釈して、SiO2分を15質量%に調製したものを用いる他は実施例1と同様にして球状シリカ粉末を得た。得られた高純度球状シリカ粉末についての各種の測定並びに観察結果を表1に示す。 ・・・ 【0111】 【表1】 [図:0001428018000002.jpg] 」 (2)甲1-2に記載された発明 ア 上記(1)の【請求項1】には、粒径10μm以上の異物粒子の含有量が10個/g以下である高純度非磁性金属酸化物粉末が記載されている。 イ 上記(1)の【0104】、【0111】の【表1】には、実施例6の高純度球状シリカ粉末について、平均粒径が1.3μm、最大粒径が3μm、比表面積が2.8m2/g、異物粒子が3個/gであることが記載されている。 ウ 以上から、甲1-2には、以下の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されているといえる。 「平均粒径が1.3μm、最大粒径が3μm、比表面積が2.8m2/g、粒径10μm以上の異物粒子の含有量が3個/gである高純度球状シリカ粉末。」 3 甲1-3(株式会社アドマテックス 製品紹介、「VMC法(Vaporized Metal Combustion Method.)」[online]、2016年8月19日、[取得日2025年6月27日]、取得先<URL:https://web.archive.org/web/20160819213654/https://www.admatechs.co.jp/product-admafine-vmc.html>) 甲1-3には、以下の記載がある。 「 [図:0001428018000003.jpg] [図:0001428018000004.jpg] [図:0001428018000005.jpg] 」 4 甲2-1(JIS K 5600-2-5(塗料一般試験方法-第2部:塗料の性状・安定性-第5節:分散度、[Online]、1999年、[検索日2025年6月6日]、取得先<URL:https://kikakurui.com/k5/K5600-2-5-1999-01.html>) 甲2-1には、以下の記載がある。 「 [図:0001428018000006.jpg] 」(2ページ下から14行~12行) 「 [図:0001428018000007.jpg] 」(4ページ) 「 [図:0001428018000008.jpg] 」(6ページ) 5 甲2-2(国際公開第2020/031267号) (1)甲2-2には、以下の記載がある。 「[0017] 本発明の実施形態に係るシリカ粉末は形状が球状に近く、一次粒子同士が連結したストラクチャーを形成していない(凝集していない)ことが好適である。・・・」 「[0033] シリカ粉末の物性評価方法を以下(1)~(3)に示し、表1、2にまとめた。 ・・・ [0035](2)シリカ粉末の粒度評価 シリカ粉末の体積平均粒径はレーザー回折光散乱法に基づき測定し、粒度測定機として、ベックマン・コールター社製「モデルLS-230」を用いた。・・・ [0036](3)シリカ粉末の比表面積 シリカ粉末を1.0g計量し、測定用のセルに投入、前処理後、BET比表面積値を測定した。測定機はMACSORB社製「Macsorb HM model-1208」を使用した。以下に前処理条件を示す。 脱気温度:300℃ 脱気時間:18分 冷却時間:4分 ・・・ [0038] (1)水またはMEKへの分散性評価 シリカ粉末を水またはメチルエチルケトン(MEK)溶媒中に添加し、上記の「(2)シリカ粉末の粒度評価」に記載の粒度測定において、超音波ホモジナイザーによる分散処理前後の体積平均径(D50)を測定し、以下を基準として実施した。 ◎:D50(分散前)≦1.2×D50(分散後) ○:D50(分散前)≦1.5×D50(分散後)かつ>1.2×D50(分散後) ×:D50(分散前)>1.5×D50(分散後) [0039](2)樹脂への分散性評価 エポキシ樹脂として三菱化学社製、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂タイプ「807」100質量部に対し、シリカ粉末を67質量部添加し、シンキー社製「ARE-310」自転公転混合機を用いて、以下の条件で処理し樹脂組成物を調製した。 回転数:2000rpm 自転:3分 公転:1分 [0040] 樹脂組成物をJIS-5600-2-5に準拠して、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いることにより、分布図法にて樹脂への分散性を評価した。なお、本評価については、代表して実施例2、7、12、比較例2、7で用いたシリカ粉末に対して実施した。 ◎:粒子が密集し始めた位置の目盛が10μm未満 ○:粒子が密集し始めた位置の目盛が10μm以上20μm未満 ×:粒子が密集し始めた位置の目盛が20μm以上 [0041] [表1] [図:0001428018000009.jpg] ・・・ [0043][表3] [図:0001428018000010.jpg] 」 「[請求項1] 25℃から200℃に加熱した際に発生する水分量より算出される、シリカ粒子表面のH2O密度が5μg/m2以上80μg/m2以下であることを特徴とするシリカ粉末。」 (2)甲2-2に記載された発明 ア 上記(1)の[請求項1]には、25℃から200℃に加熱した際に発生する水分量より算出される、シリカ粒子表面のH2O密度が5μg/m2以上80μg/m2以下であるシリカ粉末が記載されている。 イ 上記(1)の[0033]、[0041]の[表1]には、実施例2のシリカ粉末の物性として、比表面積が6.2m2/g、平均粒子径が0.62μmであることが記載されている。 また、同[0035]には、シリカ粉末の粒度評価として、シリカ粉末の体積平均粒径はレーザー回折光散乱法に基づき測定したことが記載されているから、上記平均粒子径は、体積平均粒子径であるといえる。 さらに、同[0036]には、シリカ粉末の比表面積として、BET比表面積値を測定したことが記載されているから、上記比表面積は、BET比表面積であるといえる。 ウ 上記(1)の[0043][表3]には、実施例2のシリカ粉末の樹脂への分散性として、粒子が密集し始めた位置が3μmであることが記載され、同[0039]、[0040]には、樹脂への分散性評価として、エポキシ樹脂として三菱化学社製、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂タイプ「807」100質量部に対し、シリカ粉末を67質量部添加し、シンキー社製「ARE-310」自転公転混合機を用いて、回転数:2000rpm、自転:3分、公転:1分の条件で処理し樹脂組成物を調製し、樹脂組成物をJIS-5600-2-5に準拠して、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いることにより、分布図法にて樹脂への分散性を粒子が密集し始めた位置の目盛で評価したことが記載されている。 エ 上記アの請求項1及び実施例2のシリカ粉末に注目すると、甲2-2には、以下の発明(以下、「甲2-2発明」という。)が記載されているといえる。 「25℃から200℃に加熱した際に発生する水分量より算出される、シリカ粒子表面のH2O密度が5μg/m2以上80μg/m2以下であるシリカ粉末であって、 BET比表面積が6.2m2/g、体積平均粒子径が0.62μmであり、 以下の測定方法でグラインドゲージにより測定された、粒子が密集し始めた位置の目盛が3μmであるシリカ粉末。 (測定方法) エポキシ樹脂として三菱化学社製、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂タイプ「807」100質量部に対し、シリカ粉末を67質量部添加し、シンキー社製「ARE-310」自転公転混合機を用いて、回転数:2000rpm、自転:3分、公転:1分の条件で処理し樹脂組成物を調製し、樹脂組成物をJIS-5600-2-5に準拠して、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いることにより、分布図法にて樹脂への分散性を評価し、粒子が密集し始めた位置の目盛を測定する。」(以下、上記測定方法を、「甲2-2測定方法」ともいう。) 6 甲2-3(特開2015-6729号公報) 甲2-3には、以下の記載がある。 「【0019】 ストラクチャー9が凝集した凝集体5は発泡シート2内で略均一に分散されているが、これは準備工程(詳細後述)で準備する凝集体分散液とウレタン樹脂溶液との混合液における凝集体5の分散状態で定められる。換言すれば、ストラクチャー9の凝集を抑制することで凝集体5の分散状態を良化することができる。この分散状態は、日本工業規格(JIS K5600-2-5、塗料一般試験方法-第2部:塗料の性状・安定性-第5節:分散度)のグラインドゲージ分布図法により長さの単位(例えば、μm)で表すことができる。グラインドゲージ分布図法では、長手方向に一端から深さゼロの他端まで均一な深さ勾配を有する溝(例えば、15、25、50、又は100μm)が形成されたゲージを用いて測定する。 【0020】 分散状態の測定では、スクレーパーを用いてゲージの溝にウレタン樹脂溶液を満たし、液面に粒が観察された位置での溝の深さを示す目盛りを読み取る。この結果、ウレタン樹脂溶液中に存在する凝集体5の分散状態が測定される。本例では、凝集体5の分散状態がグラインドゲージ分布図法で3.0μm以下に調整されている。凝集体5がストラクチャー9の凝集により形成されることから、ストラクチャー9の大きさ、すなわちDBP吸収量が大きくなると凝集体5の分散状態が3.0μmを超える可能性がある。このため、ストラクチャー9では、DBP吸収量が150ml/100g以下であることが好ましい。」 7 甲2-4(特開2004-273444号公報) 甲2-4には、以下の記載がある。 「【0020】 本発明においては、上述の試料分散液についてJIS K5400 粒ゲージ法によって測定される、粒が現れ始める粒子径を最大分散粒子径とするが(分布図法)、測定対象の試料分散液中では、活物質及び/又はカルボキシメチルセルロースが、通常ある程度の凝集を起こしているため、粒ゲージ法による分散度の測定において、粒が線条に観察されることが多い。従って、このような場合には、線条の現れ始める粒子径を最大分散粒子径とする(線条法)。」 8 甲2-5(特開2005-126281号公報) 甲2-5には、以下の記載がある。 「【0065】 (a)分散度の測定 JIS K 5400(塗料一般試験法)による分散度測定法(4.7.1分布図法)に準じて測定を行った。測定は、大佑機材社製グラインドメーター(0~50μm;つぶゲージ)を用いて「つぶ」の分布密度を測定し、密集した「つぶ」が現れはじめたところ(境界線)の目盛を読み取った。なお、数値は低いほど分散度が良いことを示している。 ・・・」 9 甲2-6(国際公開第2018/034234号) 甲2-6には、以下の記載がある。 「[0039] 第1の実施形態において、(C)充填剤の体積基準の粒度分布における50%累積時の粒径D50は、0.3μm以上4.0μm以下である。・・・ [0040] また、第1の実施形態の(C)充填剤は、粒度分布の幅が狭く設定されていることが好ましい。 より具体的には、(C)充填剤の体積基準の粒度分布における90%累積時の粒径D90を測定し、先述のD50との比(D90/D50)を計算した際に、その比が、3.5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。 ・・・」 「[0128] ・・・ ・無機充填剤1:球状シリカ1(D50:1μm、D90:2μm、D50に対するD90の比(D90/D50):2) ・・・」 第5 申立理由1-1(新規性)について 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1-1発明とを対比する。 ア 甲1-1発明の「微塩基性シリカ粉体」は、本件発明1の「シリカ粉末」に相当する。 イ 以上によれば、本件発明1と甲1-1発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「シリカ粉末。」 <相違点> 相違点1-1:本件発明1は、「体積基準累積径(D50)が2.0μm以下」であるのに対し、甲1-1発明は、「平均粒径が0.5μ」であるものの、「体積基準累積径(D50)」の値が不明である点。 相違点1-2:本件発明1は、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下」であるのに対し、甲1-1発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点1-3:本件発明1は、「比表面積(BET)が2~15m2/g」であるのに対し、甲1-1発明は、「比表面積が6.7m2/g」であるものの、「比表面積」が、BET比表面積であるかどうか不明である点。 (2)相違点についての判断 ア 事案に鑑み相違点1-2から検討する。 (ア)本件発明1の「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」ことについて、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0015】には、「グラインドゲージの測定は、前述の通り、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂中にシリカ粉末を分散させた樹脂組成物で行われる。この方法により、樹脂に分散させた際のシリカ粉末の分散性及び凝集の度合いを評価することができる。本発明に係るシリカ粉末は、前記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であり、これは、樹脂中でシリカ粉末の凝集が抑制されていることを意味する。すなわち、本発明に係るシリカ粉末は樹脂との混合時に分散しやすく、凝集しにくい。」と記載されている。 そうすると、本件発明1の「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」粒子は、「シリカ粉末」をビスフェノールF型液状エポキシ樹脂に分散させた際の凝集粒子であると解される。 (イ)一方、甲1-1には、「微塩基性シリカ粉体」をビスフェノールF型液状エポキシ樹脂に分散させた際の凝集粒子の大きさ、すなわち、本件測定方法による「微塩基性シリカ粉体」の凝集粒子の大きさについて、何ら記載も示唆もされていない。 また、甲1-1発明の「微塩基性シリカ粉体」において、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」ことが、本件優先日において技術常識であったとはいえない。 したがって、甲1-1発明の「微塩基性シリカ粉体」は、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」とはいえない。 よって、相違点1-2は、実質的な相違点である。 イ 申立人竹口の主張について (ア)申立人竹口は、特許異議申立書の14ページ12行~15ページ1行において、 a 甲1-3の記載を根拠に甲1-1の実施例12で使用されている球状シリカと本件明細書の実施例のシリカとは、共に溶融法で製造されているという点において共通すること、 b 甲1-1の【0077】の【表1】には、実施例12で得られた球状シリカは、平均粒径が0.5μm、比表面積が6.7m2/g、最大粒径が3μmであることが記載されていること、 c 甲1-1には、最大粒径の測定方法は記載されていないが、甲1-1の実施例では粉末の分級手段として本件明細書の実施例においても用いられている気流分級(【0047】参照)を用いて3μ以上の粗大粒子を除去していること、 から、実施例12で得られた球状シリカについて、本件請求項1に記載のグラインドゲージによる測定を行ったとしても最大粒子径が5.0μm以下となることは明らかである旨主張している。 (イ)しかし、上記(ア)a~cを満足することで、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下」となることを示す証拠はない。 そして、上記ア(イ)で検討したとおり、甲1-1には、「微塩基性シリカ粉体」をビスフェノールF型液状エポキシ樹脂に分散させた際の凝集粒子の大きさ、すなわち、本件測定方法による「微塩基性シリカ粉体」の凝集粒子の大きさについて、何ら記載も示唆もされていないし、また、甲1-1発明の「微塩基性シリカ粉体」において、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」ことが、本件優先日において技術常識であったとはいえないから、甲1-1発明の「微塩基性シリカ粉体」は、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」とはいえない。 したがって、申立人竹口の上記主張は採用できない。 (3)小括 以上によれば、相違点1-1、相違点1-3について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明ではない。 2 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1-1に記載された発明ではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1-1(新規性)には理由がない。 第6 申立理由1-2(新規性)について 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1-2発明とを対比する。 ア 甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」の「平均粒径」について、甲1-2の【0096】(上記第4 2)には、「粒径はベックマンコールター社製LS-130(レーザー回折散乱方式)を用いて測定した。平均粒径はメディアン値である」と記載されているから、上記「平均粒径」は、体積基準メディアン径、すなわち、体積基準累積径(D50)であるといえる。 そうすると、甲1-2発明の「平均粒径」は、本件発明1の「体積基準累積径(D50)」に相当する。 そして、甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」は、「平均粒径が1.3μm」であり、この値は、本件発明1の「体積基準累積径(D50)」の「2.0μm以下」の範囲内である。 したがって、本件発明1と甲1-2発明とは、「体積基準累積径(D50)が2.0μm以下」である点で一致する。 イ 甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」の「比表面積」について、甲1-2の【0095】(上記第4 2)には、「BET法で測定した比表面積」と記載されているから、上記「比表面積」は、BET比表面積である。 そして、甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」は、「比表面積が2.8m2/g」であり、この値は、本件発明1の「比表面積(BET)」の「2~15m2/g」の範囲内である。 したがって、本件発明1と甲1-2発明とは、「比表面積(BET)が、2~15m2/gである」点で一致する。 ウ 甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」は、本件発明1の「シリカ粉末」に相当する。 エ 以上によれば、本件発明1と甲1-2発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、比表面積(BET)が2~15m2/gである、シリカ粉末。」 <相違点> 相違点1-4:本件発明1は、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下」であるのに対し、甲1-2発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 (2)相違点1-4についての判断 ア 上記第5 1(2)ア(ア)で検討したとおり、本件発明1の「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」粒子は、「シリカ粉末」をビスフェノールF型液状エポキシ樹脂に分散させた際の凝集粒子であると解される。 イ 一方、甲1-2には、「高純度球状シリカ粉末」をビスフェノールF型液状エポキシ樹脂に分散させた際の凝集粒子の大きさ、すなわち、本件測定方法による「高純度球状シリカ粉末」の凝集粒子の大きさについて、何ら記載も示唆もされていない。 また、甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」において、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」ことが、本件優先日において技術常識であったとはいえない。 したがって、甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」は、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」とはいえない。 よって、相違点1-4は、実質的な相違点である。 ウ 申立人竹口の主張について (ア)申立人竹口は、特許異議申立書の18ページ下から12行~8行において、甲1-2の【0097】には「最大粒径は標準篩を用い、メッシュ下が100.00%を示したメッシュの開口大きさで示した。」と記載されており、この方法で測定される最大粒径が3μmの粒子であれば、本件請求項1に記載のグラインドゲージによる測定を行ったとした場合に最大粒子径が5.0μm以下となることは明らかである旨主張している。 (イ)しかし、標準篩を用いる方法で測定した最大粒径が3μmであれば、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下」となることを示す証拠はない。 そして、上記イで検討したとおり、甲1-2には、「高純度球状シリカ粉末」をビスフェノールF型液状エポキシ樹脂に分散させた際の凝集粒子の大きさ、すなわち、本件測定方法による「高純度球状シリカ粉末」の凝集粒子の大きさについて、何ら記載も示唆もされていないし、また、甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」において、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」ことが、本件優先日において技術常識であったとはいえないから、甲1-2発明の「高純度球状シリカ粉末」は、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である」とはいえない。 したがって、申立人竹口の上記主張は採用できない。 (3)小括 以上によれば、本件発明1は、甲1-2発明ではない。 2 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1-2に記載された発明ではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1-2(新規性)には理由がない。 第7 申立理由2-1(実施可能要件)について 1 申立人池田は、特許異議申立書の8ページ9行~9ページ最下行において、本件明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の【0041】には、グラインドゲージを用いた具体的な測定方法について、本件発明1とほぼ同様な記載のみがあるのに対し、「JIS K 5600-2-5」の内容を記載する甲2-1には、「4種類のゲージのうち,100μmのゲージが,最も一般的に使用され,50μm,特に25,15μmのゲージは,熟練した試験者によってだけ信頼できるデータが得られる。10μm以下のゲージを読み取る際には,特に注意が必要である。」(p.2中段)と記載され、各ゲージと目盛間隔、推奨(測定)範囲について以下のとおり記載されており、 [図:0001428018000011.jpg] 本件発明1では、「最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、」「5.0μm以下」の測定を行うこととなっているが、「5μm」はJISが定める100μmゲージの推奨(測定)範囲の下限である40μmを大きく下回っており、また、上記表によれば、5μm以下の測定を行うには15μmのゲージを用いる必要があり、その場合も、「熟練した試験者によってだけ信頼できるデータが得られる」とされており、これらの事情を踏まえると、「最大深さ100μmのグラインドゲージを用い」た「5.0μm以下」の測定は実質的に行えないものと考えられ、また、仮に測定が行えたとしても、発明の詳細な説明に記載される具体的な測定方法は、上記のとおり、本件発明1に記載程度のものしかないため、上記のようなJISの内容がある前提で、具体的にどのようにすれば、「最大深さ100μmのグラインドゲージを用い」た「5.0μm以下」の測定が行えるかを当業者が把握することができないから、発明の詳細な説明は、当業者が「最大深さ100μmのグラインドゲージを用い」た「5.0μm以下」の測定を含む本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないし、本件発明1に従属する、本件発明2、5~7についても同様である旨主張している。 2 しかし、上記1における甲2-1の各ゲージと目盛間隔、推奨(測定)範囲が示されている表に記載されているのは、推奨(測定)範囲であって、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて5.0μm以下の測定ができないことを示すものではない。 そして、甲2-1の6ページの図A(上記第4 4)に記載されているように、最大深さ100μmのゲージは、深さが100μm~0μmの溝が掘られているものであるから、本件測定方法によって最大粒子径(Dmax)が5μm以下のシリカ粉末を測定できるといえる。 したがって、申立人竹口の上記主張は採用できない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2-1(実施可能要件)に理由はない。 第8 申立理由2-2(新規性)、申立理由2-3(進歩性)について 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲2-2発明とを対比する。 ア 甲2-2発明の「シリカ粉末」は、「体積平均粒子径が0.62μm」である。 ここで、甲2-2の[0038](上記第4 5)には、「シリカ粉末を水またはメチルエチルケトン(MEK)溶媒中に添加し、上記の「(2)シリカ粉末の粒度評価」に記載の粒度測定において、超音波ホモジナイザーによる分散処理前後の体積平均径(D50)を測定し」と記載されているから、甲2-2発明の「シリカ粉末」の「体積平均粒子径」は、体積平均径(D50)、すなわち、体積基準累積径(D50)であるといえる。 そうすると、甲2-2発明の「体積平均粒子径」は、本件発明1の「体積基準累積径(D50)」に相当する。 そして、甲2-2発明の「シリカ粉末」は、「体積平均粒子径が0.62μm」であり、この値は、本件発明1の「体積基準累積径(D50)」の「2.0μm以下」の範囲内である。 したがって、本件発明1と甲2-2発明とは、「体積基準累積径(D50)が2.0μm以下」である点で一致する。 イ 甲2-2発明の「BET比表面積」は、本件発明1の「比表面積(BET)」に相当する。 そして、甲2-2発明の「シリカ粉末」は、「BET比表面積が6.2m2/g」であり、この値は、本件発明1の「比表面積(BET)」の「2~15m2/g」の範囲内である。 したがって、本件発明1と甲2-2発明とは、「比表面積(BET)が、2~15m2/gである」点で一致する。 ウ 甲2-2発明の「シリカ粉末」は、本件発明1の「シリカ粉末」に相当する。 エ 以上によれば、本件発明1と甲2-2発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、かつ比表面積(BET)が2~15m2/gである、シリカ粉末。」 <相違点> 相違点2-1:本件発明1は、「下記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下 (測定方法) ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製する。前記樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(Dmax)を測定する。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用する。」であるのに対し、甲2-2発明は、「以下の測定方法でグラインドゲージにより測定された、粒子が密集し始めた位置の目盛が3μm (測定方法) エポキシ樹脂として三菱化学社製、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂タイプ「807」100質量部に対し、シリカ粉末を67質量部添加し、シンキー社製「ARE-310」自転公転混合機を用いて、回転数:2000rpm、自転:3分、公転:1分の条件で処理し樹脂組成物を調製し、樹脂組成物をJIS-5600-2-5に準拠して、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いることにより、分布図法にて樹脂への分散性を評価し、粒子が密集し始めた位置の目盛を測定する。」である点。 (2)相違点2-1についての判断 ア 新規性について (ア)本件発明1の「最大粒子径(Dmax)」について、本件明細書の【0014】には、「本発明に係るグラインドゲージの測定方法において、「最大粒子径(Dmax)」とは、グラインドゲージの形成膜上に残された線状の痕跡のうち、最も粒子径の大きな位置に残された線状痕跡の値を意味する。」と記載されている。 (イ)一方、甲2-2発明は、「甲2-2測定方法でグラインドゲージにより測定された、粒子が密集し始めた位置の目盛が3μmである」ところ、この「3μm」との値は、グラインドゲージの形成膜上に残された線状の痕跡のうち、最も粒子径の大きな位置に残された線状痕跡の値であるとはいえない。 (ウ)そうすると、甲2-2発明は、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下」であるとの構成、すなわち、相違点2-1に係る本件発明1の構成を有しているとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲2-2発明ではない。 イ 進歩性について 甲2-2~甲2-6のいずれにも、シリカ粉末において、「本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下」であることは、記載も示唆もされていない。 したがって、甲2-2発明において、甲2-3~甲2-6に記載された事項を参酌して、相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 ウ 申立人池田の主張について (ア)申立人池田は、特許異議申立書の12ページ7行~下から6行において、甲2-3の【0019】、【0020】(上記第4 6)の「JIS K 5600-2-5」のグラインドゲージによる測定方法についての「液面に粒が観察された位置での溝の深さを示す目盛りを読み取る」との記載、甲2-4の【0020】(上記第4 7)の「JIS K 5400」(JIS K 5600の前身の規格)のゲージ法の「分布図法」についての「粒が現れ始める粒子径を最大分散粒子径とする」との記載、甲2-5の【0065】(上記第4 8)の「測定は、大佑機材社製グラインドメーター(0~50μm;つぶゲージ)を用いて「つぶ」の分布密度を測定し、密集した「つぶ」が現れはじめたところ(境界線)の目盛を読み取った」との記載、本件明細書の【0014】の「本発明に係るグラインドゲージの測定方法において、「最大粒子径(Dmax)」とは、グラインドゲージの形成膜上に残された線状の痕跡のうち、最も粒子径の大きな位置に残された線状痕跡の値を意味する。」との記載によれば、グラインドゲージで分布図法を行いて測定する場合、粒子が密集し始めた粒径が「最大分散粒子径」であるといえる旨主張している。 (イ)しかし、上記(ア)の本件明細書の【0014】に記載されているとおり、本件発明1の「最大粒子径(Dmax)」とは、グラインドゲージの形成膜上に残された線状の痕跡のうち、最も粒子径の大きな位置に残された線状痕跡の値を意味するものである。 一方、申立人が主張するとおり、甲2-3の【0019】、【0020】には、の「JIS K 5600-2-5」のグラインドゲージによる測定方法についての「液面に粒が観察された位置での溝の深さを示す目盛りを読み取る」と記載され、甲2-4の【0020】には、「JIS K 5400」(JIS K 5600の前身の規格)のゲージ法の「分布図法」についての「粒が現れ始める粒子径を最大分散粒子径とする」と記載され、甲2-5の【0065】には、「測定は、大佑機材社製グラインドメーター(0~50μm;つぶゲージ)を用いて「つぶ」の分布密度を測定し、密集した「つぶ」が現れはじめたところ(境界線)の目盛を読み取った」と記載されているものの、甲2-3~甲2-5のいずれにも、甲2-2発明の「グラインドゲージにより測定された、粒子が密集し始めた位置の目盛」が、グラインドゲージの形成膜上に残された線状の痕跡のうち、最も粒子径の大きな位置に残された線状痕跡の値であること、すなわち、本件発明1の「グラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)」の値であることは記載も示唆もされていない。 そうすると、グラインドゲージで分布図法を行いて測定する場合、粒子が密集し始めた粒径が「最大分散粒子径」であるとはいえない。 したがって、申立人池田の上記主張は採用できない。 (3)小括 以上によれば、本件発明1は、甲2-2発明ではなく、また、甲2-2発明及び甲2-3~甲2-6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 2 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2-2に記載された発明ではなく、また、甲2-2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2-2(新規性)、申立理由2-3(進歩性)には理由がない。 第9 申立理由2-4(サポート要件)について 1 申立人池田は、特許異議申立書の17ページ下から7行~18ページ下から6行において、発明の詳細な説明の【0007】によれば、本件発明が解決しようとする課題は「粒子径が2.0μm以下のシリカ粉末であって、凝集しにくく、ハンドリングが良好であり、かつ樹脂との混合時に分散しやすいシリカ粉末、及び前記シリカ粉末を含む樹脂組成物並びに半導体封止材を提供する」ことであり、また、発明の詳細な説明【0034】の記載及び実施例1-4と比較例1-7の対比によれば、上記課題の解決手段は、窒素ガスを用い、低ガス温度(120℃以下)かつ低流速(45m/s)というコアンダ効果を向上させる条件で原料粉末を分級しシリカ粉末を製造することであるが、本件発明1、2の「シリカ粉末」は、粒径に関して「体積基準累積径(D50)」、「最大粒子径(Dmax)」のみが特定され、上記課題を解決するための手段の製造方法以外の製造方法で製造されたものを含んでいるから、本件発明1、2には、課題を解決するための手段が反映されておらず、本件発明1、2は発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないし、本件発明1、2に従属する、本件発明5~7についても同様である旨主張している。 2 しかし、発明の詳細な説明の【0007】の記載によれば、本件発明の課題は、「粒子径が2.0μm以下のシリカ粉末であって、凝集しにくく、ハンドリングが良好であり、かつ樹脂との混合時に分散しやすいシリカ粉末、及び前記シリカ粉末を含む樹脂組成物並びに半導体封止材を提供すること」である。 そして、発明の詳細な説明の【0011】には、「[シリカ粉末] 本発明に係るシリカ粉末は、体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、下記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であることを特徴とする。 (測定方法) ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製する。前記樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(Dmax)を測定する。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用する。」と記載されている。 また、発明の詳細な説明の【0015】の「グラインドゲージの測定は、前述の通り、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂中にシリカ粉末を分散させた樹脂組成物で行われる。この方法により、樹脂に分散させた際のシリカ粉末の分散性及び凝集の度合いを評価することができる。本発明に係るシリカ粉末は、前記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であり、これは、樹脂中でシリカ粉末の凝集が抑制されていることを意味する。すなわち、本発明に係るシリカ粉末は樹脂との混合時に分散しやすく、凝集しにくい。」と記載されている。 以上の発明の詳細な説明の記載によれば、体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であるシリカ粉末であれば、上記本件発明の課題を解決できるといえる。 そうすると、本件発明1の「シリカ粉末」は、「体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下」であるから、上記本件発明の課題を解決できるものである。 3 申立人が主張する上記課題を解決するための手段の製造方法の「窒素ガスを用い、低ガス温度(120℃以下)かつ低流速(45m/s)というコアンダ効果を向上させる」との条件は、体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、本件測定方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であるシリカ粉末を得るための条件であるから、「窒素ガスを用い、低ガス温度(120℃以下)かつ低流速(45m/s)というコアンダ効果を向上させる条件で原料粉末を分級しシリカ粉末を製造すること」は、上記課題を解決するための手段であるとはいえない。 したがって、申立人池田の主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2-4(サポート要件)には理由がない。 第10 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700600

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決280件(デンカ株式会社、池田 さおり、竹口 美穂)
  • 2025-700346異議申立 / 2025-12-15 / 訂正認容球状結晶質シリカ粉末及びその製造方法
    同じ当事者: デンカ株式会社、池田 さおり
  • 2025-700252異議申立 / 2025-06-30 / 維持アルミナ粉末、樹脂組成物、及び放熱部品
    同じ当事者: デンカ株式会社、池田 さおり
  • 2026-700320異議申立 / 2026-08-14 / 維持酸化チタン粒子及びその製造方法
    同じ当事者: 竹口 美穂
  • 2026-700186異議申立 / 2026-06-23 / 維持酸化チタン粒子及びその製造方法
    同じ当事者: 竹口 美穂
  • 2025-701040異議申立 / 2026-06-16 / 訂正認容組成物、硬化体及び有機EL表示装置
    同じ当事者: デンカ株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)358件(113・C01B、121・C01B、536・C01B ほか)
  • 2026-700279異議申立 / 2026-07-17 / 維持PFAS除去材、吸着フィルター、浄水器カートリッジ、浄水器および水浄化設備
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、536・C01B、537・C01B
  • 2025-700665異議申立 / 2026-04-07 / 訂正認容多結晶シリコンロッドおよびその製造方法
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、536・C01B、537・C01B
  • 2025-700886異議申立 / 2026-04-07 / 請求成立(取消)原子層堆積によって改質された活性炭およびその方法
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、536・C01B、537・C01B
  • 2025-700642異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容炭素材料およびそれを用いてなる導電性組成物、導電膜
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、536・C01B、537・C01B
  • 2025-700193異議申立 / 2025-12-25 / 訂正認容低誘電シリカ粉体、及び該シリカ粉体を含有する樹脂組成物
    共通の審決分類: 113・C01B、121・C01B、536・C01B、537・C01B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存