特許異議申立
2023-700965
包装材料用積層体及び包装材料
- 審判番号
- 2023-700965
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-163937
- 登録番号
- 7238297
- 請求日
- 2023年09月14日
- 審決日
- 2025年03月04日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 木原 裕二
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7238297号発明「包装材料用積層体及び包装材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7238297号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7238297号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7238297号の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成30年8月31日の出願であって、令和5年3月6日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月14日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和5年 9月14日 :特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和5年12月13日付け:取消理由通知書
令和6年 2月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 3月27日 :申立人による意見書の提出
令和6年 8月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年10月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年11月18日 :申立人による意見書の提出
令和6年2月8日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7238297号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記接着層が、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤の硬化物であり、」の直後に、
「前記2液硬化型接着剤が、PASLIM(登録商標)VMシリーズであり、」との記載を追加する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であり、前記樹脂材料が、ポリプロピレンであることを特徴とする、積層体。」を、
「前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であり、前記樹脂材料が、ポリプロピレンであることを特徴とする、積層体(但し、前記基材と前記接着層との間に、水溶性高分子を含むコーティング剤からなるコーティング層を備える積層体を除く。)。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~4が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1で規定する2液硬化型接着剤を、訂正後の請求項1では、「PASLIM(登録商標)VMシリーズであり、」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1が、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるか否かについて検討すると、訂正事項1は、明細書の【0076】の「また、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤は市販されるものを使用してもよく、例えば、DIC株式会社から販売されている、パスリム(PASLIM)のシリーズが使用できる。」の記載に基づくものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1で規定する積層体を、訂正後の請求項1では、「積層体(但し、前記基材と前記接着層との間に、水溶性高分子を含むコーティング剤からなるコーティング層を備える積層体を除く。)」とすることによって、積層体が、「前記基材と前記接着層との間に、水溶性高分子を含むコーティング剤からなるコーティング層を備える積層体」以外の積層体であることを規定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、積層体から、特定態様の積層体を除外しているところ、これによって、新たな技術的事項が導入されるものではないから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~5を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材と、接着層と、ヒートシール性樹脂層とを備える、包装材料用積層体であって、
前記基材と前記接着層との間、又は前記接着層と前記ヒートシール性樹脂層との間に、蒸着膜をさらに備え、
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記接着層が、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤の硬化物であり、
前記2液硬化型接着剤が、PASLIM(登録商標)VMシリーズであり、
前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であり、前記樹脂材料が、ポリプロピレンであることを特徴とする、積層体(但し、前記基材と前記接着層との間に、水溶性高分子を含むコーティング剤からなるコーティング層を備える積層体を除く。)。
【請求項2】
前記接着層の厚さが、0.5μm以上6μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
23℃、相対湿度90%環境下における酸素透過度が、0.05cc/m2/day/atm以上2.0cc/m2/day/atm以下である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
40℃、相対湿度90%環境下における水蒸気透過度が、0.01g/m2/day/atm以上2.0g/m2/day/atm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体から構成される、包装材料。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、以下の甲1~3、9~10及び引用文献1~3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の【0006】から明らかなとおり、本件発明の解決しようとする課題は、「酸素バリア性及び水蒸気バリア性が高」い包装材料用積層体を得ることであり、請求項1には、「前記接着層が、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤の硬化物であり、」と記載されているところ、本件特許の段落【0107】~【0131】には、接着層として2液硬化型接着剤である、DIC(株)製、商品名:PASLIMVM001/VM108CP(以下「DICパスリム」という。)を用いられた実施例のみが記載されているものである。すなわち、DICパスリム以外のポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤については、その効果について記載されておらず把握することはできないから、請求項1に記載の構成により、発明の課題を解決することができるか不明である。
<取消理由通知(決定の予告)に記載した引用文献>
甲1:特開2013-253133号公報(申立人の提示した甲第1号証)
甲2:‘包装材料「モノマテリアル化」加速’、化学工業日報、株式会社化学工業日報社、2018年6月14日、12頁(同甲第2号証)
甲3:‘国挙げて“デジタル革新”スペシャリティ志向鮮明に’(座談会記事)、 化学工業日報、株式会社化学工業日報社、2018年7月2日、14~15頁(同甲第3号証)
甲9:特開平9-193284号公報(同甲第9号証)
甲10:ニュースリリース「DIC 蒸着フィルムの酸素バリア性を補強するドライラミネート用接着剤「PASLIM VMシリーズ」を新発売」、DIC株式会社、[online]、2017年1月12日、[令和6年3月26日検索]、インターネット<URL:https://www.dic-global.com/ja/news/2017/products/20170110000000.html> (同甲第10号証)
引用文献1:特開2011-189540号公報(合議体が引用した文献)
引用文献2:特開2003-340960号公報(同上)
引用文献3:特開平11-105216号公報(同上)
第5 当審の判断
取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件特許の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1(進歩性)について
(1)甲号証、引用文献の記載事項、引用発明
ア 甲1
(ア)甲1の記載
甲1には次の記載がある。
「【請求項1】
官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)、及び一般式(1)若しくは一般式(2)で表されるリン酸変性化合物(C)を含有する接着剤用樹脂組成物。
【化1】
[図:0001423434000001.jpg]
(式中、R1~R3は、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、(メタ)アクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する炭素数1~4のアルキル基から選ばれる基であるが、少なくとも一つは水素原子であり、nは、1~4の整数を表す。)
【化2】
[図:0001423434000002.jpg]
(式中、R4~R5は、水素原子、炭素数1~30のアルキル基、(メタ)アクリロイル基、置換基を有してもよいフェニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する炭素数1~4のアルキル基から選ばれる基であり、nは1~4の整数、xは0~30の整数、yは0~30の整数を表すが、xとyが共に0である場合を除く。)」
「【0001】
本発明は、ラミネート強度、及び酸素バリア性に優れるフィルムを提供することができる樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化させてなる接着剤に関する。」
「【0017】
本発明が解決しようとする課題は、上記背景技術に鑑み、無機系基材に対するラミネート強度、及び酸素バリア性に優れる樹脂を主体とする接着剤用樹脂組成物、及び接着剤を提供することにある。」
「【0130】
上記リン酸変性化合物(C)は、本発明の無機系基材に対するラミネート強度を向上させる効果を有し、公知慣用のものを用いることができる。
【0131】
より具体的には、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等を挙げることができる。」
「【0152】
以下具体的用途の1つとしてフィルムラミネート用接着剤について説明する。
【0153】
本発明の接着剤は、フィルムラミネート用接着剤として使用できる。ラミネートされた積層フィルムは、酸素バリア性に優れるため、酸素バリア性積層フィルムとして使用できる。
【0154】
本発明で使用する積層用のフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンービニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施してあってもよい。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸或いは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。但し、接着剤成分としてポリエステルポリオール(A2)を使用した接着剤の両側に酸素バリア性の高い透明蒸着フィルム等を使用した場合、接着剤成分のポリエステルポリオール(A2)の重合性二重結合の重合が阻害され、良好なバリア性が発現しない場合がある。従って、接着剤成分としてポリエステルポリオール(A2)を使用する際は酸素バリア性積層フィルムの酸素バリア性としては少なくとも一種のラミネートフィルムの酸素透過率が0.1cc/m2・day・atm以上であることが好ましい。」
「【0161】
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる積層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、或いは、例えばPET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルム、さらに、例えばOPP、PET、ポリアミドから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、PET、ナイロンから選ばれた第1中間層を形成する熱可塑製フィルムとPET、ポリアミドから選ばれた第2中間層を形成する熱可塑製フィルム、LLDPE、CPPから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した4層からなる複合フィルムは、酸素バリア性フィルムとして、食品包装材として好ましく使用できる。」
「【0172】
(製造例2)樹脂(A):THEI(OPAEG)3の製造例
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸1136.5部、エチレングリコール495.3部、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート668.1部及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppmに相当する量を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約860、水酸基価195.4mgKOH/g、酸価0.9mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。樹脂(A)1分子当たりの設計上の官能基の数 水酸基:3個、カルボキシ基:0個、樹脂(A)の溶解性の判定は○であった。」
「【0175】
(実施例1)~(実施例7)
表1、3、4の実施例に従い、樹脂、無機化合物、硬化剤および溶剤を混合し、接着剤を得た。塗工方法、評価方法は以下によった。」
「【0177】
(塗工方法1)
前記溶剤型接着剤を、バーコーターを用いて、塗布量約5.0g/m2(固形分)となるように基材フィルムのコロナ処理面に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、接着剤が塗布された基材フィルムの接着剤面と、シーラントフィルムのコロナ処理面とラミネートし、基材フィルム/接着層/シーラントフィルムの層構成を有する複合フィルムを作成した。次いで、この複合フィルムを40℃/3日間のエージングを行い、接着剤の硬化を行って、本発明の積層フィルムを得た。尚、表中の積層物の構成において左側が基材フィルム、右側がシーラントフィルムを示す。」
「【0188】
【表3】
[図:0001423434000003.jpg]
」
「【0190】
表中の略号は以下を示す。
・BARRISURF HX:BARRISURF HX(IMERYS社製、カオリン/非膨潤性、層間非イオン性、板状、平均粒径/1.5μm、アスペクト比/約100)
・HM6025:HM6025(HENGHAO社製、マイカ/非膨潤性、板状、平均粒径10μm、アスペクト比100以上)
・LX-703VL:ディックドライLX-703VL(DICグラフィックス社製:芳香族骨格を有するポリエステルポリオール)、不揮発分/約62%、酸素バリア性を有しない接着剤
・D-110N:タケネートD-110N(三井化学社製:XDI系ポリイソシアネート、不揮発分/約75%)
タケネート500:タケネート500(三井化学社製:XDIキシリレンジイソシアネート、不揮発分/約100%)
・KBM-403:KBM-403(信越化学工業製:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、不揮発分/約100%)
・リン酸:リン酸(関東化学製、リン酸の約85%水溶液)
・ピロリン酸:ピロリン酸(関東化学製、ピロリン酸74.5~80.0%品)
・AP-10:AP-10(大八化学工業製、イソデシルアシッドホスフェート、不揮発分/約100%)
・PET:ポリエステルフィルム、東洋紡績(株) E5102 12μm
・PET-AL:アルミ貼合ポリエステルフィルム、アルミ箔/東洋アルミニウム工業(株)製 アルミハクC 9μm
・CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、東レフィルム加工(株) トレファンNO ZK93KM 70μm
・VM-CPP:アルミ蒸着未延伸ポリプロピレンフィルム、東レフィルム加工(株) 2203 25μm
・VM-PE:アルミ蒸着低密度ポリエチレンフィルム、三井化学東セロ(株)、TUX-F30μm」
(イ)甲1の記載から明らかな事項
上記(ア)より、以下の点は明らかである。
a 【0177】の記載より、【0188】【表3】の実施例5の積層フィルム(PET/VM-CPP)は、PETである基材フィルムと、接着層と、VM-CPPであるシーラントフィルムとを備えるものである。
b VM-CPPであるシーラントフィルムは、シーラントフィルムであるからVM-CPPのうちCPP(未延伸ポリプロピレン)が積層フィルムの最表面に位置することは当業者にとって明らかである。また、甲1の【0161】に包装材の最内層をCPP又はLLDPEとすることが記載されていることからも、CPPが積層フィルムの最表面に位置するものといえる。そして、【0177】の記載より、基材フィルムの接着剤面とシーラントフィルムをラミネートするのであるから、VM-CPPのうち当然VM(アルミ蒸着)が接着剤側となる。すなわち、VM-CPPであるシーラントフィルムのVMは接着層とCPPとの間に位置することは明らかである。
c 【0188】【表3】の実施例5では、主剤の樹脂としてTHEI(OPAEG)3、硬化剤としてタケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)とタケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)、添加剤としてリン酸が示されているところ、【0172】の記載を参照すると、主剤の樹脂はポリエステルポリールであり、また、【0175】より、【0188】【表3】に示される硬化物が、接着剤であることは明らかである。
d 【0154】の「例えば食品包装用としては、」という記載、及び【0161】の「食品包装材として好ましく使用できる。」という記載から、甲1に記載の積層フィルムの用途として食品包装用という点が記載されていることは明らかである。
(ウ)甲1に記載の発明
上記(ア)及び(イ)より、甲1には、【0188】【表3】の実施例5に基づいて、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「PETである基材フィルムと、接着層と、VM-CPPであるシーラントフィルムとを備える、食品包装用積層フィルムであって、
前記VM-CPPは、アルミ蒸着未延伸ポリプロピレンフィルムを示し、
前記VM-CPPであるシーラントフィルムのVMは、接着層とCPPの間に位置し、
前記接着層が、主剤の樹脂としてポリエステルポリールであるTHEI(OPAEG)3、硬化剤としてタケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)とタケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)、添加剤としてリン酸を含む接着剤の硬化物である、
食品包装用積層フィルム。」
イ 甲2
(ア)甲2の記載
甲2には次の記載がある。
「
[図:0001423434000004.jpg]
」
(イ)甲2の記載事項
上記(ア)より、甲2には、以下の技術事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認める。
「食品世界最大手のネスレが、4月(2018年:当審注、記事の日付「2018年6月14日」より判断)に、2025年までに包装材料を100%リサイクル・リユース可能で、埋め立て処理などが不要なものに転換する方針及び、再生樹脂の採用拡大などとともに、複雑な組成の包装材料を避ける方針を打ち出したこと。」
ウ 甲3
(ア)甲3の記載
甲3には次の記載がある。
「司会(佐藤豊氏、化学工業日報社取締役編集本部長)の「域内経済は好調を維持しています。化学品や消費財市場の行方をどう見ますか。」という質問に対して、木下雅幸氏(三井化学アジアパシフィック社長)の発言
[図:0001423434000005.jpg]
[図:0001423434000006.jpg]
」
(イ) 甲3の記載事項
上記(ア)より、甲3には、以下の技術事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認める。
「SDGsを背景に多くの食品・飲料のグローバルブランドオーナーが、包材の100%リサイクル化やリユースできる包装材料の採用を打ち出したこと、またその方策として「モノマテリアル化(単一素材化)」が挙げられること。」
エ 甲9
(ア)甲9の記載
甲9には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遮光性を有する金属蒸着層を設けた包装材料における、ヒートシールによるガスバリヤー性の低下の小さい包装材料およびこの包装材料を用いた包装袋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、菓子等の包装袋、特に油分を含むスナック菓子などに用いられる包装袋には、酸素や水蒸気等のガスを遮断する、ガスバリヤー性が要求されるとともに、太陽光や蛍光灯光等の光線を遮断する、遮光性が要求されている。これは、内容物である菓子等が、水蒸気により湿気てしまうことを防止したり、酸素、特に酸素と光線の影響により、内容物の油脂が酸化劣化して、味覚等が損なわれることを防止するためである。
【0003】このような目的のため、従来、この種の包装袋の材料;すなわち包装材料としては、プラスチックフィルムを主体とし、遮光性およびガスバリヤー性を与えるための金属箔や、金属蒸着層を設けたものが使用されている。特に近年では、金属の使用量の少ない金属蒸着層を設けたものが広く用いられている。上記金属としては、安価で扱いやすい、アルミニウムを用いるのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記金属蒸着層は、遮光性を有する程度の、例えばアルミニウム蒸着では500~800Å程度の、非常に薄い層であるため、例えば
外側:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)/印刷層/エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)(15μm)/アルミニウム蒸着層(500Å)-無延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)
という、簡単な構成の包装材料とした場合、この包装材料を例えばピロー包装袋などの袋状にヒートシールすると、その熱および圧力により、ヒートシール部およびその縁近傍の金属蒸着層に微細な亀裂(クラック)が生じることがあった。このクラックが生じると、本来目的としているガスバリヤー性が損なわれる結果となり、内容物を十分に保護できないことがあった。」
「【0006】そこで本発明は、層の数が少なくコストメリットがあり、しかも遮光性のある金属蒸着層を有しながらヒートシール時のクラックの発生を軽減ないし防止した包装材料、およびこの包装材料を用いた包装袋を提供するものである。」
「【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の包装材料の一実施例を示す断面図である。
【0010】図1に示すように、本発明の包装材料は、金属蒸着層12を設けた熱接着性樹脂フィルム11(以下、このフィルムを蒸着シーラント1という)と、後述するコーティング層22を設けた基材フィルム21(以下、このフィルムを外層フィルム2という)とを、図示のように金属蒸着層12面とコーテイング層22面を対向させて重ね合わせ、接着層3を間に挟んで積層したものである。なお、外層フィルム2は、コーティング層22の上に設けられた印刷層23を含んでいる。
【0011】まず、蒸着シーラント1の熱接着性樹脂フィルム11は、この発明により得られる包装材料をヒートシールにより包装袋に製袋する際、シーラント(ヒートシール層)として機能するものである。同時に、熱接着性樹脂フィルム11は金属蒸着層12の蒸着基材としても機能するものである。従って、このフィルムとしては、ある程度の耐熱性のある、ヒートシール可能な材料からなることが必要である。従って、このフィルムとしては、無延伸ポリプロピレンフィルムが好適である。このフィルムの厚さは、12~100μm程度であることが一般的である。」
「【図1】
[図:0001423434000007.jpg]
」
(イ)甲9の記載から明らかな事項
上記(ア)より、以下の点は明らかである。
【0004】の「外側:2軸延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)/印刷層/エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)(15μm)/アルミニウム蒸着層(500Å)-無延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)」という構成の包装材料における「無延伸ポリプロピレンフィルム(25μm)」は、技術常識並びに【0010】、【0011】及び【図1】の記載を踏まえると、ヒートシールとして機能するものであること、すなわち、ヒートシール性樹脂層であることは明らかである。
(ウ)甲9に記載の発明
上記(ア)及び(イ)より、甲9には、【0004】に示される課題を有するとされる従来技術に基づいて、以下の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認める。
「2軸延伸ポリプロピレンフィルムと、エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)と、ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムとを備える、包装材料であって、
前記2軸延伸ポリプロピレンフィルムとヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムとの間に蒸着層をさらに備え、
前記蒸着層が、アルミニウム蒸着層であり、
前記2軸延伸ポリプロピレンフィルム及び前記ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムが、同一種類の樹脂材料を含み、前記樹脂材料が、ポリプロピレンであることを特徴とする、包装材料積層体。」
オ 甲10
(ア)甲10の記載
甲10には次の記載がある。
「
[図:0001423434000008.jpg]
」
(第1頁記事本文第1行~第5行)
「
[図:0001423434000009.jpg]
」
(第1頁記事本文第9行~第17行)
「
[図:0001423434000010.jpg]
」
(第2頁第1行~第6行)
(イ)甲10の記載事項
上記(ア)より、甲10には、以下の技術事項(以下「甲10記載事項」という。)が記載されていると認める。
「ドライラミネート用接着剤「PASLIM VMシリーズ」を蒸着層に塗布すると、蒸着層に発生していたキズや亀裂を補填することによりガスの漏れを防ぎ、蒸着フィルムを使用した包材のバリア性を向上させ、食品の廃棄ロス削減や包材の層構造簡素化できること。」
カ 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
引用文献1には次の記載がある。
「【請求項1】
結晶性樹脂により形成される第一基材層と、この第一基材層の少なくとも片面に設けられ、結晶性樹脂により形成される第二基材層と、を具備する透明性積層シートの製造方法であって、
前記第二基材層を形成する結晶性樹脂としては、前記第一基材層を形成する結晶性樹脂よりもメルトフローレートが大きく、かつ、緩和時間が短いものを用い、
前記第一基材層を形成する結晶性樹脂と前記第二基材層を形成する結晶性樹脂とを、それぞれ溶融状態でシート状に押し出した直後に積層する状態で急冷することを特徴とする透明性積層シートの製造方法。」
「【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の透明性積層シートの製造方法において、
前記第一基材層および前記第二基材層がともにポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする透明性積層シートの製造方法。」
「【0032】
〔実施形態の作用効果〕
本実施形態により奏することができる作用効果は以下の通りである。
本実施形態によれば、樹脂シート2は、内層2aの両面に形成される外層2bを有し、外層2bを形成するポリプロピレン系樹脂は、内層2aを形成するポリプロピレン系樹脂よりもMFRが大きく、かつ、緩和時間が短い。
このため、外層2bのポリプロピレン系樹脂は、内層2aのポリプロピレン系樹脂よりもMFRが大きく緩和時間が短いので、押出中にシート表面に受けていた応力が緩和しやすく、結果として、応力配向に起因する結晶核生成を抑制することができる。
また、本実施形態では、造核剤が添加されないため、結晶化度を高め熱成形性の範囲が狭まり、熱成形が難しいものとなってしまうおそれがない。
したがって、本実施形態の樹脂シート2の製造方法では、造核剤を添加しなくとも透明性を向上(ヘイズを低減)させることができる。
【0033】
本実施形態では、樹脂シート2は、3層の積層構造を有しており、原料樹脂として、2種類のポリプロピレン系樹脂を用いている。このため、得られる樹脂シート2は、モノマテリアルとなるので、リサイクルを容易に行うことができる。」
「【0048】
本発明は、食品、医薬品、化粧品等の包装用途に適用することができる。」
(イ)引用文献1の記載事項
上記(ア)より、引用文献1には、以下の技術事項(以下「引1記載事項」という。)が記載されていると認める。
「包装用途に適用できる樹脂シートであって、樹脂シートは3層の積層構造を有しており、原料樹脂として、2種類のポリプロピレン系樹脂を用いることでモノマテリアルとすることにより、リサイクルを容易に行うことができる点。」
キ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
引用文献2には次の記載がある。
「【請求項1】金属で構成される外装体同士の間に介在させるフィルムであって、当該介在させるフィルムが厚さ10から80μmの範囲のポリプロピレン層を芯層とし、その芯層の少なくとも片側面に厚さが10から80μmの範囲の金属接着樹脂層を有することを特徴とする金属接着用介在フィルム。」
「【請求項9】前記ポリプロピレン層が、延伸ポリプロピレン層であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載した金属接着用介在フィルム。
【請求項10】前記金属接着樹脂層が、エチレンーメタクリル酸共重合体であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載した金属接着用介在フィルム。」
(イ)引用文献2の記載事項
上記(ア)より、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引2記載事項」という。)が記載されていると認める。
「延伸ポリプロピレン層を芯層とする金属接着用介在フィルムにおいて、その芯層の少なくとも片側面にエチレンーメタクリル酸共重合体である金属接着樹脂層を設けること。」
ク 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
引用文献3には次の記載がある。
「【0010】ポリオレフィンフィルムの表面に被覆する接着性樹脂は、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体及びアイオノマーから選ばれるものが好ましい。エチレンーアクリル酸共重合体及びエチレンーメタクリル酸共重合体は、エチレンーアクリル酸共重合体のアクリル酸及びエチレンーメタクリル酸共重合体のメタクリル酸の含有量が、それぞれ5~15重量%のものが望ましく、又、メルトフローレート(MFR)が、それぞれ5~10g/10分(荷重2.16kgf/cm3 ,温度190℃)のものが望ましい。上記接着性樹脂の内でも、エチレンーアクリル酸共重合体及びエチレンーメタクリル酸共重合体、特にエチレンーアクリル酸共重合体が好ましい。」
(イ)引用文献3の記載事項
上記(ア)より、引用文献3には、以下の技術事項(以下「引3記載事項」という。)が記載されていると認める。
「ポリオレフィンフィルムの表面に被覆する接着性樹脂として、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体及びアイオノマーが例示されること。」
(2)甲1を主引用例とする取消理由1について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「基材フィルム」は本件発明1の「基材」に相当し、甲1発明の「食品包装用積層フィルム」は、本件発明1の「包装材料用積層体」及び「積層体」に相当する。
甲1発明において「VM-CPPは、アルミ蒸着未延伸ポリプロピレンフィルムを示」すことを踏まえると、甲1発明の「VM-CPPであるシーラントフィルム」のうち、未延伸ポリプロピレンを示す「CPP」は本件発明1の「ヒートシール性樹脂層」に相当する。
甲1発明の「前記VM-CPPであるシーラントフィルムのVMは、接着層とCPPの間に位置し」は、本件発明1の「前記基材と前記接着層との間、又は前記接着層と前記ヒートシール性樹脂層との間に、蒸着膜をさらに備え」に相当する。
甲1発明の「VM-CPPであるシーラントフィルム」のうち、アルミ蒸着を示す「VM」は、本件発明1の「蒸着膜」及び「アルミニウム蒸着膜」に相当する。
甲1発明の「ポリエステルポリールであるTHEI(OPAEG)3」は、本件発明1の「ポリエステルポリオール」に相当し、甲1発明の「タケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)」及び「タケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)」は、本件発明1の「イソシアネート化合物」に相当し、甲1発明の「リン酸」は、本件発明1の「リン酸変性化合物」に相当する。
甲1発明の「主剤」と「硬化剤」を含む「接着剤」は、本件発明1の「2液硬化型接着剤」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材と、接着層と、ヒートシール性樹脂層とを備える、包装材料用積層体であって、
前記基材と前記接着層との間、又は前記接着層と前記ヒートシール性樹脂層との間に、蒸着膜をさらに備え、
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記接着層が、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤の硬化物である、
積層体。」
<相違点1-1>
「2液硬化型接着剤」について、本件発明1が「PASLIM(登録商標)VMシリーズであ」るのに対して、甲1発明では「主剤の樹脂としてポリエステルポリールであるTHEI(OPAEG)3、硬化剤としてタケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)とタケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)、添加剤としてリン酸を含む接着剤の硬化物である」点。
<相違点1-2>
本件発明1が、「前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であり、前記樹脂材料が、ポリプロピレンである」のに対し、甲1発明では、PETである基材フィルムとVM-CPPであるシーラントフィルムが、同一種類の樹脂材料ではない点。
<相違点1-3>
積層体において、本件発明1が「但し、前記基材と前記接着層との間に、水溶性高分子を含むコーティング剤からなるコーティング層を備える積層体を除く。」としているのに対し、甲1発明では当該規定を有しない点。
(イ)判断
<相違点1-1>及び<相違点1-2>について
a 甲1発明における接着剤の選択について
甲1の【0001】には「本発明は、ラミネート強度、及び酸素バリア性に優れるフィルムを提供することができる樹脂組成物、及び該樹脂組成物を硬化させてなる接着剤に関する。」と記載され、【0188】の【表3】には、実施例5が、ラミネート物の外観、ラミネート強度、酸素バリア性において問題がなく、当該実施例5が好適であることが示されている。そうすると、甲1発明の「PETである基材フィルムと、接着層と、VM-CPPであるシーラントフィルムとを備える、食品包装用積層フィルム」の接着剤として使用される「主剤の樹脂としてポリエステルポリールであるTHEI(OPAEG)3、硬化剤としてタケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)とタケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)、添加剤としてリン酸を含む接着剤」については、上記「ラミネート物の外観、ラミネート強度、酸素バリア性」の観点で好適なものを選択したものである。
b 甲1発明の基材の選択と、接着剤の選択との関係について
甲1発明の「PETである基材フィルム」については甲1の段落【0154】の記載を踏まえて適宜設計変更可能であり、その選択肢にはポリプロピレンフィルムが挙げられている。そして、引1記載事項には、「2種類のポリプロピレン系樹脂を用いてモノマテリアルとすることにより、リサイクルを容易に行うことができる」ことが示されており、モノマテリアル化を進めることは、甲2記載事項及び甲3記載事項にも示されるように本件特許の出願前に、当業者によく知られた事項でもある。そうすると、甲1発明において、基材フィルムの材質として、シーラントフィルムに用いられているポリプロピレンを選択する程度のことは当業者が容易に想到し得たといえる。
ここで、積層体で使用する接着剤を選択するにあたり、積層体の各層の材質等を踏まえて最適なものを選択すべきことは技術常識であるとはいえ、上記のように甲1発明の基材フィルムの材質をポリプロピレンに設計変更したとき、いかなる接着剤を選択すべきかという点については、当業者といえども直ちに把握できるものではない。すなわち、甲1発明の「主剤の樹脂としてポリエステルポリールであるTHEI(OPAEG)3、硬化剤としてタケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)とタケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)、添加剤としてリン酸を含む接着剤」に換えて選択すべき最適な接着剤を把握することはできない。
一方、甲10記載事項は、上記(1)オ(イ)のとおり、「ドライラミネート用接着剤「PASLIM VMシリーズ」を蒸着層に塗布すると、蒸着層に発生していたキズや亀裂を補填することによりガスの漏れを防ぎ、蒸着フィルムを使用した包材のバリア性を向上させ、食品の廃棄ロス削減や包材の層構造簡素化できること」というものである。しかしながら、これは、一般論として「PASLIM VMシリーズ」に期待できる性能を示したにすぎず、いかなる使用対象においてもこの性能が発揮できることを示すものではないことは明らかである。また、甲10の第3頁には、限定的記載ではないものの、「PASLIM VMシリーズ」を、PET基材を使用した積層体への適用例のみが記載されているものである。よって、基材をポリプロピレンに設計変更した甲1発明の「主剤の樹脂としてポリエステルポリールであるTHEI(OPAEG)3、硬化剤としてタケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)とタケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)、添加剤としてリン酸を含む接着剤」に換えて、「PASLIM VMシリーズ」を適用する動機付けも存在しない。
また、その他の申立人が提示した証拠及び合議体が引用した文献には、「PASLIM(登録商標)VMシリーズであ」る「2液硬化型接着剤」について、記載も示唆もされていない。
c まとめ
以上より、甲1発明において、基材フィルムの材質を「ポリプロピレン」に変更するとともに、「主剤の樹脂としてポリエステルポリールであるTHEI(OPAEG)3、硬化剤としてタケネート500(XDIキシレンジイソシアネート)とタケネートD110N(XDI系ポリイソシアネート)、添加剤としてリン酸を含む接着剤」に換えて、「PASLIM VMシリーズ」を適用することは容易に想到し得たとはいえない。
したがって、甲1発明並びに申立人が提示した証拠及び合議体が引用した文献に基いて、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明並びに申立人が提示した証拠及び合議体が引用した文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、甲1発明並びに申立人が提示した証拠及び合議体が引用した文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲9を主引用例とする取消理由1について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲9発明を対比する。
甲9発明の「2軸延伸ポリプロピレンフィルム」及び「ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルム」は、本件発明1の「基材」及び「包装材料用積層体」に相当し、甲9発明の「包装材料」は、積層体であることは明らかであるから、本件発明1の「包装材料用積層体」に相当するから、甲9発明の「2軸延伸ポリプロピレンフィルムと、エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)と、ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムとを備える、包装材料であって、」は、本件発明1の「基材と、接着層と、ヒートシール性樹脂層とを備える、包装材料用積層体であって、」と、「基材と、ヒートシール性樹脂層とを備える、包装材料用積層体であって、」の限りにおいて一致する。
甲9発明の「蒸着層」は、本件発明1の「蒸着膜」に相当するから、甲9発明の「前記2軸延伸ポリプロピレンフィルムとヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムとの間に蒸着層をさらに備え」ることは、本件発明1の「前記基材と前記接着層との間、又は前記接着層と前記ヒートシール性樹脂層との間に、蒸着膜をさらに備え」ることと、「前記基材と前記ヒートシール性樹脂層との間に、蒸着膜をさらに備え」る限りにおいて一致する。
甲9発明の「アルミニウム蒸着層」は、本件発明1の「アルミニウム蒸着膜」に相当する。
甲9発明の「前記2軸延伸ポリプロピレンフィルム及び前記ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムが、同一種類の樹脂材料を含み、前記樹脂材料が、ポリプロピレンである」ことは、本件発明1の「前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であり、前記樹脂材料が、ポリプロピレンである」ことと、「前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記樹脂材料が、ポリプロピレンである」限りにおいて一致する。
以上のことから、本件発明1と甲9発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「基材と、ヒートシール性樹脂層とを備える、包装材料用積層体であって、
前記基材と前記ヒートシール性樹脂層との間に、蒸着膜をさらに備え、
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記樹脂材料が、ポリプロピレンであることを特徴とする、積層体。」
<相違点9-1>
包装材料用積層体について、本件発明1が「基材と、接着層と、ヒートシール性樹脂層とを備える」ものであり、「基材と前記接着層との間、又は前記接着層と前記ヒートシール性樹脂層との間に、蒸着膜をさらに備え、」さらに「前記接着層が、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤の硬化物であり、前記2液硬化型接着剤が、PASLIM(登録商標)VMシリーズであ」るのに対し、甲9発明では、「2軸延伸ポリプロピレンフィルムと、エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)と、ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムとを備える」ものであるが、接着層の有無については不明であり、積層体における接着層と「蒸着層」の積層関係は規定されておらず、接着層がいかなるものであるかについても不明である点。
<相違点9-2>
本件発明1が、「前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であ」るのに対し、甲9発明では、同一種類の樹脂材料の含有量について規定していない点。
<相違点9-3>
積層体において、本件発明1が「但し、前記基材と前記接着層との間に、水溶性高分子を含むコーティング剤からなるコーティング層を備える積層体を除く。」としているのに対し、甲9発明では当該規定を有しない点。
(イ)判断
<相違点9-1>について
甲9発明の「2軸延伸ポリプロピレンフィルムと、エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)と、ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルムとを備える、包装材料」における「エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)」がいかなる機能を有し、作用効果をもたらす層であるかは不明であるが、引2記載事項及び引3記載事項より明らかなとおり、「エチレンーメタクリル酸共重合体」が積層体の接着剤として用いられることは周知の技術である。以下、「エチレンーメタクリル酸共重合体」が接着剤であった場合と、接着剤でなかった場合のそれぞれについて検討を行う。
(a)「エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)」が接着剤であった場合
甲9は、【0004】から明らかなとおり、甲9発明の課題を明らかにした上で、【0006】の記載のとおり、「層の数が少なくコストメリットがあり、しかも遮光性のある金属蒸着層を有しながらヒートシール時のクラックの発生を軽減ないし防止した包装材料、およびこの包装材料を用いた包装袋を提供する」ことを指向するものである。当該【0006】の記載から、「エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)」を他の接着剤に置き換えようとした場合、接着剤は種々のものが知られていることは当業者であれば技術常識であるところ、「包装材料」において要求される性能に基づいて選択すべきものである。
ここで、甲10記載事項は、上記(1)オ(イ)のとおり、「ドライラミネート用接着剤「PASLIM VMシリーズ」を蒸着層に塗布すると、蒸着層に発生していたキズや亀裂を補填することによりガスの漏れを防ぎ、蒸着フィルムを使用した包材のバリア性を向上させ、食品の廃棄ロス削減や包材の層構造を簡素化できること」というものである。しかしながら、これは、一般論として「PASLIM VMシリーズ」に期待できる性能を示したにすぎず、いかなる使用対象においてもこの性能が発揮できることを示すものではないことは明らかであり、甲10の第3頁には、限定的記載ではないものの、「PASLIM VMシリーズ」を、PET基材を使用した積層体への適用例のみが記載されているものであることも踏まえると、甲9発明の「包装材料」における「2軸延伸ポリプロピレンフィルム」と「ヒートシール性樹脂層である無延伸ポリプロピレンフィルム」との接着に使用することが明示的に示されてはいない。また、本件発明1は、相違点9-1の構成としたことにより、本件明細書の【0015】に記載のように「酸素バリア性及び水蒸気バリア性が高く、かつ耐屈曲負荷性の高い」包装材料用積層体を提供したものである。してみれば、甲9発明における包装材料の「2軸延伸ポリプロピレンフィルム」の接着層を構成する接着剤としての「エチレンーメタクリル酸共重合体」に換えて、接着剤として「PASLIM VMシリーズ」を適用すること、すなわち、上記相違点9-1にかかる本件発明1のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(b)「エチレンーメタクリル酸共重合体フィルム(EMAA)」が接着剤でなかった場合
積層体の各層間に対し、接着層を設け、ドライ積層を行うことは周知の技術であり、甲9発明の包装材料としての積層体の各層間に接着剤層を設けることは、当業者であれば適宜なし得たことであったとしても、上記(a)での説示と同様に、甲9発明における包装材料の積層体の各層間に、接着剤として「PASLIM VMシリーズ」を適用し接着層を設けること、すなわち、上記相違点9-1にかかる本件発明1のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、その他の相違点に検討するまでもなく、甲9発明並びに申立人が提示した証拠及び合議体が引用した文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、直接的又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、甲9発明並びに申立人が提示した証拠及び合議体が引用した文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由2(サポート要件)について
本件訂正により、本件訂正前の請求項1で規定する2液硬化型接着剤を、訂正後の請求項1では、「PASLIM(登録商標)VMシリーズであり、」と限定したことから、取消理由2(サポート要件)は解消した。
第6 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由の概要
取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)申立理由2(明確性)
本件特許は、請求項1~5の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の請求項1に「前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であり、」と記載されているところ、本件特許の実施例1では【0109】に「このようにして得られた積層体におけるPPの割合は、95.2質量%であった。」と記載されているが、積層体を構成する物質の密度や厚さから概算した積層体におけるPPの割合は95.2質量%とはならず、矛盾がある。したがって、本件特許の請求項1における「質量%」とはいかなるものであるのか不明確であり、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~5は、明確ではない。
(2)申立理由4(実施可能要件)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の請求項1には、「前記接着層が、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤の硬化物であり、」と記載されているところ、本件特許の段落【0107】~【0131】には、接着層として2液硬化型接着剤である、DIC(株)製、商品名:PASLIMVM001/VM108CP(以下「DICパスリム」という。)を用いられた実施例のみが記載されているものである。すなわち、請求項1で規定する、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含む2液硬化型接着剤の全範囲について、当業者が実施できるように記載されているとはいえない。したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1及びこれを引用する本件発明2~5を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
2 当審の判断
(1)申立理由2(明確性)について
請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。
ここで、本件特許の請求項1の「前記基材及び前記ヒートシール性樹脂層が、同一種類の樹脂材料を含み、前記積層体における前記同一種類の樹脂材料の含有量が、93質量%以上であり、」という記載は、積層体の質量に対して、同一種類の樹脂材料の質量が93%以上であることを意味するものとして明確であり、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。
なお、申立人は、実施例における各層の密度を仮定した上で概算した質量%の推測値が、明細書に記載された実施例の数値と合致しないことをもって質量%の意味が不明確である旨を主張する。しかしながら、推測値と実際値が合致しないことをもって、質量%の意味が不明確であるとはいえないから、申立人の主張は採用できない。
(2)申立理由4(実施可能要件)について
本件訂正により、本件訂正前の請求項1で規定する2液硬化型接着剤を、訂正後の請求項1では、「PASLIM(登録商標)VMシリーズであり、」と限定されており、申立理由4(実施可能要件)は理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1~5に係る特許は、取消由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700965