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特許異議申立

2025-700507

中程度の粘度を有する未調理デンプンを含む石膏組成物、およびそれに関連する方法および製品

審判番号
2025-700507
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-502401
登録番号
7582863
請求日
2025年05月12日
審決日
2025年08月08日
公報発行日
2025年09月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
  • 【権利者代理人】木村 満
  • 【権利者代理人】森川 泰司
  • 【権利者代理人】桜田 圭
  • 【異議申立人】上垣内 俊彦
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
  • 審判官 三崎 仁
分類
P1651.113-Y (C04B) / P1651.121-Y (C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7582863号発明「中程度の粘度を有する未調理デンプンを含む石膏組成物、およびそれに関連する方法および製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7582863号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7582863号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)7月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2017年7月18日 (US)アメリカ合衆国 2018年3月23日 (US)アメリカ合衆国 2018年7月3日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とするものであって、令和6年11月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行され、その後、令和7年5月12日に、請求項1~11に係る特許について、特許異議申立人 上垣内 俊彦(以下、「申立人」という。)により、甲第1~2号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年6月23日に、申立人により、甲第2号証の全訳文を添付して、特許異議申立書の手続補正書が提出されたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~11に係る発明は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下、請求項1~11に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 石膏ボードであって、 2つのカバーシート間に配設された硬化石膏芯であって、前記芯が、スタッコ、水、および少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され、前記少なくとも1つの未調理デンプンが、熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する、硬化石膏芯を含む、石膏ボード。 【請求項2】 石膏ボードであって、 2つのカバーシート間に配設された硬化石膏芯であって、前記芯が、スタッコ、水、および少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され、前記少なくとも1つの未調理デンプンが、15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する、硬化石膏芯を含む、石膏ボード。 【請求項3】 前記未調理デンプンが、25℃でブルックフィールド粘度計法に従って測定されたときに、10%の固形分で約50センチポアズ未満の冷水粘度を有する、請求項1または2に記載の石膏ボード。 【請求項4】 前記デンプンが、15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約800ブラベンダー単位のピーク粘度を有する、請求項1または3に記載の石膏ボード。 【請求項5】 前記スラリーが、起泡剤、分散剤、およびポリリン酸塩をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の石膏ボード。 【請求項6】 前記未調理デンプンが、約35pcf~約45pcfの嵩密度を有し、前記未調理デンプンが酸変性されており、前記ボードが約16pcf~約35pcfの密度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の石膏ボード。 【請求項7】 前記ボードが、ASTM473-10の方法Bに従って、少なくとも約72lb-fの釘抜き抵抗を有し、前記少なくとも1つの未調理デンプンが、熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約200ブラベンダー単位の熱水粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の石膏ボード。 【請求項8】 前記未調理デンプンが、タピオカデンプン、小麦デンプン、ジャガイモデンプン、および/またはトウモロコシデンプンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の石膏ボード。 【請求項9】 石膏ボードを調製する方法であって、 (a)スタッコ、水、および少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーを混合することであって、前記少なくとも1つの未調理デンプンが、(i)熱水粘度アッセイ(HWVA)法に従って約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度、および/または(ii)15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する、混合することと、 (b)第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に前記スラリーを配設して、湿潤アセンブリを形成することと、 (c)前記湿潤アセンブリをボードに切断することと、 (d)前記ボードを乾燥させることであって、前記乾燥したボードが約35pcf(560kg/m3)以下の密度を有し、前記ボードがASTM473-10の方法Bに従って少なくとも約72lbs-fの釘抜き抵抗を有する、乾燥させることと、を含む、方法。 【請求項10】 前記未調理デンプンが酸変性デンプンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の石膏ボード。 【請求項11】 前記未調理デンプンが酸変性デンプンを含む、請求項9に記載の方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について 本件発明1~11は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項所定の規定に違反してされたものである。 2 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件発明1~11は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~11に係る特許は、特許法第29条第2項所定の規定に違反してされたものである。 3 証拠方法 甲第1号証:特表2016-500639号公報 甲第2号証:国際公開第2015/095600号 第4 特許異議申立理由についての当審の判断 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証には、以下の(ア)~(ウ)の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 (ア) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯を備えるボードであって、前記芯が、スタッコ、水および少なくとも1種のアルファ化デンプンを含むスラリーから形成され、前記デンプンは、前記デンプンがVMA法に従う条件を受ける間に粘度が測定される場合に約20センチポイズから約700センチポイズの前記粘度の特性を有する、ボード。 ・・・ 【請求項9】 前記スラリーは、(a)糊化されていない、(b)VMA法に従って20センチポイズ未満の前記粘度の特性を有するアルファ化デンプンである、または(c)VMA法に従って700センチポイズを超える前記粘度の特性を有するアルファ化デンプンである、第2の種類のデンプンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のボード。 ・・・ 【請求項23】 デンプンは、約30%より大きい冷水溶解度を有し、 硬化石膏芯は、約30%未満の冷水溶解度を有するデンプンで作成された硬化石膏芯より大きい圧縮強度を有する、 (a)少なくとも水、スタッコおよび少なくとも1種のアルファ化デンプンを混合してスラリーを形成するステップと、 (b)前記スラリーを第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に配置して湿性アセンブリを形成するステップと、 (c)前記湿性アセンブリをボードに裁断するステップと、 (d)前記ボードを乾燥するステップと を含むボードを作成する方法。」 (イ) 「【0008】 別の態様において、本発明は、ボードを作成する方法を提供する。水、スタッコおよびVMA法に従ってミッドレンジの粘度により特徴づけられる少なくとも1種のアルファ化デンプンは、混合されてスラリーを形成する。デンプンは、湿性または乾燥形態で加えてよい。アルファ化デンプンは、スラリーに加える場合に完全に糊化する必要は無くかつVMA法に記述されている条件下である必要は無い。・・・一部の実施形態において、アルファ化デンプンは、スラリーに加えられる場合に部分的に糊化され、残りの糊化は乾燥ステップ(例えば、炉内)において起こる。デンプンは、一部の実施形態において炉内で完全に糊化になる。 ・・・ 【0015】 本発明の実施形態は、少なくともある程度、「ミッドレンジ」の粘度(例えば、約20センチポイズから約700センチポイズ)を有しているとして特徴付けられるアルファ化デンプンを石膏スラリー内に含めることを前提としている。粘度特性は、デンプンが本明細書に述べるVMA方法論に従うある種の条件下に置かれる時に決定されるが、これらの条件下でアルファ化デンプンをスラリーに加える必要は無いことが理解されるであろう。ミッドレンジの粘度のアルファ化デンプンの包含は、驚くほどかつ予想外に、(例えば、より少ないデンプンが用いられ得るように)デンプン効率、製品強度向上および水要求量に関してなど、例えば、一部の実施形態においては一斉に、重要な利益の組み合わせをもたらすことが分かった。本発明の実施形態に従って、デンプン効率、水要求量および/または強度に関する物を含めた利益は、VMA法に従って測定されるような、20センチポイズ未満、または700センチポイズを超える粘度を有する非糊化デンプン(未煮沸)またはアルファ化デンプン(煮沸済み)などの、石膏スラリーにおいて用いられることが知られているデンプンに関して相当な改善および増進を表す。これらの発見は、これに限らないが、原材料のコスト削減、製造効率の向上および例えば、十分な強度特性を備えるより軽量の製品を可能にする、製品強度の向上を含めた、相当の利点を与える。 ・・・ 【0023】 したがって、本明細書で使用する場合、「アルファ化」は、石膏スラリーに含められる前にデンプンが任意の程度の糊化を有することを意味する。一部の実施形態において、アルファ化デンプンは、スラリーに含められる場合に部分的に糊化されていてよいが、例えば、過剰な水を除去する乾燥ステップのための炉内で、上昇した温度に晒された場合に完全に糊化される。一部の実施形態において、アルファ化デンプンは、VMA法に従う条件下の場合にデンプンがミッドレンジの粘度特性に適合する限り、炉を出る時にさえも完全に糊化されない。 ・・・ 【0026】 述べたように、糊化の程度は、例えば約50%以上など、任意の適した量であってよい。しかしながら、より低い糊化の程度は、粒状デンプンにより近似することになり、本発明の一部の実施形態の強度向上、より優れた(より完全な)分散系および/または水要求量の減少を最大限に利用できない可能性がある。したがって、一部の実施形態において、より高い糊化の程度、例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%または完全(100%)の糊化があることが好ましい。・・・ ・・・ 【0038】 所望のミッドレンジの粘度特性を有するアルファ化デンプンは、本発明の実施形態に従って他のデンプンと組み合わせてもよい。・・・他のデンプンは、例えば、酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン、ならびに例えばエチル化デンプンなどの、糊化されていないアルキル化デンプンなどの形態であってもよい。デンプンの組み合わせは、石膏スラリーへの追加の前に(例えば、乾燥混合において、場合によってはスタッコなどの他の成分と、または湿性混合において他の湿性原料と)予備混合してもよく、またはそれらを石膏スラリーに一つずつ含めてもよく、あるいはそれらの任意の変形形態であってもよい。・・・ ・・・ 【0095】 別の実施形態において、ボードは、約27pcf(432kg/m3)から約34pcf(545kg/m3)の密度を有する。 ・・・ 【0117】 別の実施形態において、ボードが約1/2インチ(1.27センチメートル)の厚さで鋳造される場合、ボードは、ASTM標準C473-10に従って測定されるような少なくとも約72ポンド(32.7kg)の釘引抜き耐性を有する。」 (ウ) 「【0171】 実施例4-糊化されたデンプンをスタッコスラリーに加えることの強度への影響 本実施例は、粒状デンプン(すなわち、非糊化)をスタッコスラリーに加えることと糊化されたデンプンをスタッコスラリーに加えることとの石膏配合物の圧縮強度へのそれぞれの影響を比較する。それぞれのデンプンを、実施例3に記載の通りの立方体試験のための石膏スラリー内に入れた。 【0172】 表4に追加のデンプンを示す。デンプンの1つは、酸修飾ではなかったが、他は下表4に示す通りであった。 【0173】 【表4】 [図:0001426860000001.jpg] 【0174】 本実施例は、本発明の実施形態による粒状デンプンの代わりに石膏スラリーへのアルファ化デンプンの投入で達成される向上した強度を例示する。粒状形態は、粒状デンプンの非常に低い粘度が原因でスタッコスラリーに優れた流動性を提供する。しかしながら、粒状形態は、強度の効用としては与えない。したがって、アルファ化形態は、望ましい。 【0175】 実施例5-糊化されたデンプンに関する粘度および圧縮強度 本実施例は、VMA法に従って測定される粘度の範囲を示す、種々の糊化されたデンプンを例示する。実施例3に記述されている配合物および立方体試験に従って、デンプンのそれぞれの石膏配合物における圧縮強度への影響を評価した。糊化されたデンプンの粘度およびデンプンを含むスラリーから形成された石膏立方体の圧縮強度を示す結果を、下表5に記述する。 【0176】 【表5】 [図:0001426860000002.jpg] 【0177】 デンプンの幾つかは、既に糊化した形態で市販され、それらのデンプンは、表5において「製造時」糊化としてマークする。他のデンプンは、糊化無しで供給されたが、次いで実験室において糊化され、表5において「実験室において」としてマークした。・・・ ・・・ 【0207】 実施例14-冷水可溶性アルファ化デンプンおよび圧縮強度 本実施例は、パイロット規模の押出しを用いて冷水可溶性アルファ化デンプン(Clinton 277)を形成する方法、および押出しされたアルファ化デンプンを含む立方体の圧縮強度を記述する。 【0208】 したがって、Clinton 277酸修飾デンプン(含水量9%、100kg)および水(4.4kg)を、シリンダー内で混合した。酸修飾デンプン混合物を、Wenger TX 52二軸スクリュー押出機に加えた。追加の水(8.1kg)を、押出機に加えた。押出機バレル内の合計含水量は、20%であった。押出し条件を、下表15に記述する。アルファ化デンプンを、比較的乾燥している、膨張した材料として押出機から取り出した。デンプンを、約10%の含水量を有するまで乾燥し、次いで粉末に挽いた。石膏製品を作成するために用いる場合は、乾燥粉末を、製造時に乾燥原料に加えてもよい。 ・・・ 【0212】 冷水可溶性の押出しされたアルファ化デンプンを、実施例13の手順に従って立方体を調製するために使用した。立方体は、54lb/ft3(865kg/m3)の密度を有した。押出しされたデンプン(Clinton 277)の冷水溶解度は、立方体強度への重大な影響を示した(表15)。粒状デンプンは、水に不溶性であり、1561psi(10.76MPa)の圧縮強度を有する立方体を生じる。しかしながら、押出しによって調製されるアルファ化デンプンは、水溶性であり、より大きい強度を有する立方体を生じた。立方体の圧縮強度は、デンプンの冷水溶解度が増加するにつれて増加した。さらに、より低い含水量(約10%)を有するデンプンで開始することは、より大きい水への溶解度(最大71%)をもたらして、より大きい圧縮強度(1844psi(12.71MPa))を有する立方体を生じた。 【0213】 【表15】 [図:0001426860000003.jpg] 【0214】 冷水可溶性酸修飾アルファ化デンプンおよびアルファ化トウモロコシデンプンを、実施例13の手順に従って立方体を調製するために使用した。立方体は、29lb/ft3(465kg/m3)の密度を有した。押出しされたデンプンは、従来型のデンプンより大きい立方体強度を与えた(表16)。押出しされたClinton 277を含有する石膏泡スラリーの流動性は26%増加して、押出しされたデンプンを含有する発泡した立方体の圧縮強度は19%増加した。 【0215】 【表16】 [図:0001426860000004.jpg] 」 イ 前記ア(ア)の記載によれば、甲第1号証には、2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯を備えるボードであって、前記芯が、スタッコ、水及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを含むスラリーから形成され、前記デンプンは、前記デンプンがVMA法に従う条件を受ける間に粘度が測定される場合に約20センチポイズから約700センチポイズの前記粘度の特性を有する、ボードが記載されており(【請求項1】)、前記スラリーは、(a)糊化されていない、(b)VMA法に従って20センチポイズ未満の前記粘度の特性を有するアルファ化デンプンである、又は(c)VMA法に従って700センチポイズを超える前記粘度の特性を有するアルファ化デンプンである、第2の種類のデンプンを含むものである(【請求項9】)。 また、前記ア(イ)の記載によれば、前記ボードは、少なくともある程度、ミッドレンジの粘度(例えば、約20センチポイズから約700センチポイズ)を有しているとして特徴付けられるアルファ化デンプンを石膏スラリー内に含めることを前提としているものであって、ミッドレンジの粘度のアルファ化デンプンの包含は、驚くほどかつ予想外に、デンプン効率、製品強度向上及び水要求量に関してなど、重要な利益の組み合わせをもたらすものであり(段落【0015】)、ここで、前記アルファ化は、石膏スラリーに含められる前にデンプンが任意の程度の糊化を有することを意味するものであり(段落【0023】)、糊化の程度は、例えば約50%以上など、任意の適した量であってよいが、より低い糊化の程度は、粒状デンプンにより近似することになり、強度向上、より優れた(より完全な)分散系及び/又は水要求量の減少を最大限に利用できない可能性があるから、より高い糊化の程度、例えば、少なくとも約60%の糊化があることが好ましいものである(段落【0026】)。 更に、所望のミッドレンジの粘度特性を有するアルファ化デンプンは、他のデンプンと組み合わせてもよいものであり、他のデンプンは、例えば、酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン、並びに例えばエチル化デンプンなどの、糊化されていないアルキル化デンプンなどの形態であってもよいものであり(段落【0038】)、ボードは、約27pcf(432kg/m3)から約34pcf(545kg/m3)の密度を有するものであり(段落【0095】)、ボードが約1/2インチ(1.27センチメートル)の厚さで鋳造される場合、ボードは、ASTM標準C473-10に従って測定されるような少なくとも約72ポンド(32.7kg)の釘引抜き耐性を有するものである(段落【0117】)。 ウ 前記イによれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯を備えるボードであって、前記芯が、スタッコ、水及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを含むスラリーから形成され、前記デンプンは、前記デンプンがVMA法に従う条件を受ける間に粘度が測定される場合に約20センチポイズから約700センチポイズの前記粘度の特性を有する、ボードであり、 前記スラリーは、(a)糊化されていない、(b)VMA法に従って20センチポイズ未満の前記粘度の特性を有するアルファ化デンプンである、又は(c)VMA法に従って700センチポイズを超える前記粘度の特性を有するアルファ化デンプンである、第2の種類のデンプンを含むものであり、 前記ボードは、少なくともある程度、ミッドレンジの粘度(例えば、約20センチポイズから約700センチポイズ)を有しているとして特徴付けられるアルファ化デンプンを石膏スラリー内に含めることを前提としているものであり、ミッドレンジの粘度のアルファ化デンプンの包含は、驚くほどかつ予想外に、デンプン効率、製品強度向上及び水要求量に関してなど、重要な利益の組み合わせをもたらすものであり、 前記アルファ化は、石膏スラリーに含められる前にデンプンが任意の程度の糊化を有することを意味するものであり、糊化の程度は、例えば約50%以上など、任意の適した量であってよいが、より低い糊化の程度は、粒状デンプンにより近似することになり、強度向上、より優れた(より完全な)分散系及び/又は水要求量の減少を最大限に利用できない可能性があるから、より高い糊化の程度、例えば、少なくとも約60%の糊化があることが好ましいものであり、 所望のミッドレンジの粘度特性を有するアルファ化デンプンは、他のデンプンと組み合わせてもよいものであり、他のデンプンは、例えば、酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン、並びに例えばエチル化デンプンなどの、糊化されていないアルキル化デンプンなどの形態であってもよいものであり、 ボードは、約27pcf(432kg/m3)から約34pcf(545kg/m3)の密度を有するものであり、 ボードが約1/2インチ(1.27センチメートル)の厚さで鋳造される場合、ボードは、ASTM標準C473-10に従って測定されるような少なくとも約72ポンド(32.7kg)の釘引抜き耐性を有するものである、ボード。」(以下、「甲1-1発明」という。) エ また、前記ア(ア)の記載によれば、甲第1号証には、デンプンが、約30%より大きい冷水溶解度を有し、硬化石膏芯が、約30%未満の冷水溶解度を有するデンプンで作成された硬化石膏芯より大きい圧縮強度を有する、(a)少なくとも水、スタッコ及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを混合してスラリーを形成するステップと、(b)前記スラリーを第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に配置して湿性アセンブリを形成するステップと、(c)前記湿性アセンブリをボードに裁断するステップと、(d)前記ボードを乾燥するステップとを含む、ボードを作成する方法が記載されている(【請求項23】)。 このことと、前記イによれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「デンプンが、約30%より大きい冷水溶解度を有し、 硬化石膏芯が、約30%未満の冷水溶解度を有するデンプンで作成された硬化石膏芯より大きい圧縮強度を有する、 (a)少なくとも水、スタッコ及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを混合してスラリーを形成するステップと、 (b)前記スラリーを第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に配置して湿性アセンブリを形成するステップと、 (c)前記湿性アセンブリをボードに裁断するステップと、 (d)前記ボードを乾燥するステップとを含む、ボードを作成する方法であって、 前記ボードは、少なくともある程度、ミッドレンジの粘度(例えば、約20センチポイズから約700センチポイズ)を有しているとして特徴付けられるアルファ化デンプンを石膏スラリー内に含めることを前提としているものであり、ミッドレンジの粘度のアルファ化デンプンの包含は、驚くほどかつ予想外に、デンプン効率、製品強度向上及び水要求量に関してなど、重要な利益の組み合わせをもたらすものであり、 前記アルファ化は、石膏スラリーに含められる前にデンプンが任意の程度の糊化を有することを意味するものであり、糊化の程度は、例えば約50%以上など、任意の適した量であってよいが、より低い糊化の程度は、粒状デンプンにより近似することになり、強度向上、より優れた(より完全な)分散系及び/又は水要求量の減少を最大限に利用できない可能性があるから、より高い糊化の程度、例えば、少なくとも約60%の糊化があることが好ましいものであり、 所望のミッドレンジの粘度特性を有するアルファ化デンプンは、他のデンプンと組み合わせてもよいものであり、他のデンプンは、例えば、酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン、並びに例えばエチル化デンプンなどの、糊化されていないアルキル化デンプンなどの形態であってもよいものであり、 ボードは、約27pcf(432kg/m3)から約34pcf(545kg/m3)の密度を有するものであり、 ボードが約1/2インチ(1.27センチメートル)の厚さで鋳造される場合、ボードは、ASTM標準C473-10に従って測定されるような少なくとも約72ポンド(32.7kg)の釘引抜き耐性を有するものである、ボードの製造方法。」(以下、「甲1-2発明」という。) (2) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)の判断 ア 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、甲1-1発明における「ボード」は、「2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯を備える」ものであるから、本件発明1における「石膏ボード」に相当し、甲1-1発明における「2つのカバーシートの間に配置される硬化石膏芯」は、本件発明1における「2つのカバーシートの間に配設された硬化石膏芯」に相当する。 (イ) また、甲1-1発明において、「前記芯が、スタッコ、水及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを含むスラリーから形成され」ることは、本件発明1において、「前記芯が、スタッコ、水およびすくなくとも1つの」「デンプンを含むスラリーから形成され」ることに相当する。 (ウ) ここで、甲1-1発明においては、「前記スラリー」が、更に「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプンを含む」ものであるから、前記「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」が、本件発明1における「未調理デンプン」に相当するか否かについて検討すると、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0020】 本発明の実施形態は、少なくとも部分的に、スタッコスラリー(「石膏スラリー」と呼ばれることもある)中に、石膏スラリーから形成された1つ以上の石膏層を有する得られたボードの強度を高めるための未調理デンプンを含むことを前提としている。一態様では、未調理デンプンは、本明細書に記載の熱水粘度アッセイ(HWVA)法に従って約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する。・・・ ・・・ 【0025】 デンプンは、本発明の実施形態により未調理である。未調理デンプンは冷水不溶性であり、半結晶構造を有することを特徴とする・・・調理済みデンプンは、湿潤デンプンを加熱することによって調製され、例えば、押出技術によって調製され得る。例えば、同時係属中の米国特許出願第14/494,547、同第14/044,582号、および同第13/835,002号を参照されたい。調理済みデンプンは、デンプン顆粒の結晶構造が溶融し、偏光を用いた顕微鏡下での複屈折の消失によって特徴付けられるデンプンゼラチン化をもたらすので、時々アルファ化デンプンと称される。 ・・・ 【0040】 本明細書で使用する場合、未調理とは、スタッコスラリーに含まれる前のデンプンのゼラチン化の程度が約5%未満(例えば、約3%未満、またはゼロなど約1%未満)であることを意味する。いくつかの実施形態では、石膏ウォールボード製造工程、例えば、過剰な水分を除去するための乾燥手順の窯で高温にさらされると、未調理デンプンは部分的または完全にゼラチン化され得る。 【0041】 本発明の実施形態による熱水および/またはピーク粘度特性を有する未調理デンプンは、驚くべきことにかつ予期せぬことに、スラリーに比較的少量(固形分/固形分ベース)含まれ、さらにボードの著しい強度向上を達成することができる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、熱水および/またはピーク粘度特性を有する未調理デンプンは、スタッコの約2重量%以下など、スタッコの約5重量%以下(例えば、約1重量%~約4%)の量でスタッコスラリーに含まれる。・・・ ・・・ 【実施例】 【0183】 表1は、未調理デンプンAおよびB(それぞれ、Clinton 277およびClinton 260)およびアルファ化デンプンAおよびBの冷水粘度を比較する。アルファ化デンプンAは、VMA法による粘度が773センチポズのアルファ化トウモロコシデンプンであり、アルファ化デンプンBは、VMA法による粘度が100センチポアズのアルファ化トウモロコシデンプンである。 【0184】 【表1】 [図:0001426860000005.jpg] 【0185】 表2は、未調理の酸変性トウモロコシデンプンA~Cのピーク粘度を示す。 【0186】 【表2】 [図:0001426860000006.jpg] ・・・ 【実施例5】 【0213】 この実施例は、調理済み(アルファ化)デンプンと比較した、特定のデンプンの熱水粘度、および未調理トウモロコシデンプンを含むスタッコスラリーから形成されたボードの強度を実証している。 ・・・ 【0217】 表10は、前述のデンプンの熱水粘度、ならびにアルファ化デンプンを含むスラリーから形成された起泡試料と比較した、未調理の酸変性トウモロコシデンプンを含むスラリーから形成された発泡石膏試料の釘抜き強度を示す。 【0218】 【表10】 [図:0001426860000007.jpg] 」 前記段落【0040】の記載からみれば、本件発明1における「未調理デンプン」とは、スタッコスラリーに含まれる前のデンプンのゼラチン化の程度が約5%未満であるものを意味するものであり、段落【0025】、【0213】の記載からみれば、ここでいうゼラチン化とは、アルファ化と同様の意味を有するものと解される。 一方、甲1-1発明における「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」は、「酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン」でもよいものであり、係る「非アルファ化デンプン」は、ゼラチン化がアルファ化と同様の意味を有すると解されることからみれば、非ゼラチン化デンプン、すなわち、ゼラチン化されていないデンプンということができる そして、そもそもゼラチン化されていないデンプンは、ゼラチン化の程度が約5%未満のデンプンといえるものである。 してみれば、甲1-1発明における「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」は、ゼラチン化の程度が約5%未満のデンプンといえる点で、本件発明1における「未調理デンプン」と合致するから、本件発明1における「未調理デンプン」に相当する。 (エ) 前記(イ)及び(ウ)によれば、甲1-1発明において、「前記芯が、スタッコ、水及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを含むスラリーから形成され」、更に、「前記スラリー」が「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプンを含む」ことは、本件発明1において、「前記芯が、スタッコ、水およびすくなくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され」ることに相当する。 (オ) 前記(ア)及び(エ)によれば、本件発明1と甲1-1発明とは、 「石膏ボードであって、 2つのカバーシート間に配設された硬化石膏芯であって、前記芯が、スタッコ、水、および少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成される、硬化石膏芯を含む、石膏ボード。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:「石膏ボード」が、本件発明1においては、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」ものであるのに対して、甲1-1発明においては、「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」は、「酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン、ならびに例えばエチル化デンプンなどの、糊化されていないアルキル化デンプンなどの形態であってもよいものである」が、前記「熱水粘度」が明らかでない点。 (カ) 始めに、前記(オ)の相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証には、「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」の「熱水粘度」は記載されていないし、これをうかがわせる記載もないから、前記相違点1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1が甲1-1発明であるとはいえない。 (キ) 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、甲1-1発明に係る「ボード」は、「少なくともある程度、ミッドレンジの粘度(例えば、約20センチポイズから約700センチポイズ)を有しているとして特徴付けられるアルファ化デンプンを石膏スラリー内に含めることを前提としているものであり、ミッドレンジの粘度のアルファ化デンプンの包含は、驚くほどかつ予想外に、デンプン効率、製品強度向上及び水要求量に関してなど、重要な利益の組み合わせをもたらすもの」であるから、もともと、「未調理デンプン」の「熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって」「測定された」「熱水粘度」に注目したものではないので、甲1-1発明を、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」ものとする動機付けは存在しない。 また、そうすることを開示した証拠もないから、甲1-1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないので、本件発明1は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2について (ア) 前記ア(ア)と同様にして本件発明2と甲1-1発明とを対比すると、前記ア(ア)及び同(エ)に記載したのと同様の理由により、本件発明2と甲1-1発明とは、 「石膏ボードであって、 2つのカバーシート間に配設された硬化石膏芯であって、前記芯が、スタッコ、水、および少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成される、硬化石膏芯を含む、石膏ボード。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2:「石膏ボード」が、本件発明2においては、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」ものであるのに対して、甲1-1発明においては、「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」は、「酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン、ならびに例えばエチル化デンプンなどの、糊化されていないアルキル化デンプンなどの形態であってもよいものである」が、前記「ピーク粘度」が明らかでない点。 (イ) 始めに、前記(ア)の相違点2が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証には、「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」の「ピーク粘度」は記載されていないし、これをうかがわせる記載もないから、前記相違点2は実質的な相違点である。 したがって、本件発明2が甲1-1発明であるとはいえない。 (ウ) 次に、前記相違点2の容易想到性について検討すると、前記ア(キ)に記載したのと同様の理由により、甲1-1発明を、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」ものとする動機付けは存在しない。 また、そうすることを開示した証拠もないから、甲1-1発明を、前記相違点2に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないので、本件発明2は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件発明3~8、10について 本件発明3~8及び10は、いずれも、本件発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、これらについて検討しても事情は同じであるので、本件発明3~8及び10も、甲1-1発明であるとはいえないし、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 本件発明9、11について (ア) 本件発明9と甲1-2発明とを対比すると、甲1-2発明における「ボードの製造方法」は、「前記ボード」が「石膏スラリー」から製造されることからみれば、本件発明9における「石膏ボードを調製する方法」に相当する。 また、甲1-2発明において、「(a)少なくとも水、スタッコ及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを混合してスラリーを形成するステップ」は、本件発明9において、「(a)スタッコ、水、および少なくとも1つの」「デンプンを含むスラリーを混合すること」に相当する。 更に、甲1-2発明においては、「アルファ化デンプン」は、「酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン」、「糊化されていないアルキル化デンプン」などの「他のデンプンと組み合わせてもよい」ものであり、前記「酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン」を含む「他のデンプン」は、前記ア(ウ)に記載したのと同様の理由により、本件発明2における「未調理デンプン」に相当する。 すると、甲1-2発明において、「(a)少なくとも水、スタッコ及び少なくとも1種のアルファ化デンプンを混合してスラリーを形成するステップ」において、「アルファ化デンプン」を前記「他のデンプンと組み合わせ」ることは、本件発明9において、「(a)スタッコ、水、および少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーを混合すること」に相当する。 また、甲1-2発明において、「(b)前記スラリーを第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に配置して湿性アセンブリを形成するステップ」は、本件発明9において、「(b)第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に前記スラリーを配設して、湿潤アセンブリを形成すること」に相当し、甲1-2発明において、「(c)前記湿性アセンブリをボードに裁断するステップ」は、本件発明9において、「(c)前記湿潤アセンブリをボードに切断すること」に相当し、甲1-2発明において、「(d)前記ボードを乾燥するステップ」は、本件発明9において、「(d)前記ボードを乾燥させること」に相当する。 そして、甲1-2発明において、「ボード」が「約27pcf(432kg/m3)から約34pcf(545kg/m3)の密度を有する」ことは、前記「ボード」は「乾燥したボード」といえるから、本件発明9において「前記乾燥したボードが約35pcf(560kg/m3)以下の密度を有」することを満たすし、甲1-2発明において、「ボードが約1/2インチ(1.27センチメートル)の厚さで鋳造される場合、ボードは、ASTM標準C473-10に従って測定されるような少なくとも約72ポンド(32.7kg)の釘引抜き耐性を有する」ことは、本件発明9において、「前記ボードがASTM473-10の方法Bに従って少なくとも約72lbs-fの釘抜き抵抗を有する」ことを満たす。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明9と甲1-2発明とは、 「石膏ボードを調製する方法であって、 (a)スタッコ、水、および少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーを混合することと、 (b)第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に前記スラリーを配設して、湿潤アセンブリを形成することと、 (c)前記湿潤アセンブリをボードに切断することと、 (d)前記ボードを乾燥させることであって、前記乾燥したボードが約35pcf(560kg/m3)以下の密度を有し、前記ボードがASTM473-10の方法Bに従って少なくとも約72lbs-fの釘抜き抵抗を有する、乾燥させることと、を含む、方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点3:「石膏ボードを調製する方法」が、本件発明9においては、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、(i)熱水粘度アッセイ(HWVA)法に従って約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度、および/または(ii)15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」のに対して、甲1-2発明においては、「アルファ化デンプン」と組み合わされる「他のデンプン」が、「酸修飾デンプンなどの非アルファ化デンプン、ならびに例えばエチル化デンプンなどの、糊化されていないアルキル化デンプンなどの形態であってもよいものである」が、前記「他のデンプン」の前記「熱水粘度」及び「ピーク粘度」が明らかでない点。 (ウ) 始めに、前記(イ)の相違点3が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証には、「アルファ化デンプン」と組み合わされる前記「他のデンプン」の「熱水粘度」や「ピーク粘度」は記載されていないし、これらをうかがわせる記載もないから、前記相違点3は実質的な相違点である。 したがって、本件発明9が甲1-2発明であるとはいえない。 (エ) 次に、前記相違点3の容易想到性について検討すると、前記ア(キ)に記載したのと同様の理由により、甲1-2発明を、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、(i)熱水粘度アッセイ(HWVA)法に従って約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度、および/または(ii)15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」ものとする動機付けは存在しない。 また、そうすることを開示した証拠もないから、甲1-2発明を、前記相違点3に係る本件発明9の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないので、本件発明9は、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (オ) 更に、本件発明9の発明特定事項を全て有する本件発明11について検討しても事情は同じであるから、本件発明11も、甲1-2発明であるとはいえないし、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 申立人の主張について ア 特許法第29条第1項又は第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についての申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 (ア) 本件発明1の「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」、との発明特定事項について、本件特許明細書の段落【0218】【表10】(前記(2)ア(ウ))には、このような「熱水粘度」を有する「未調理デンプン」として、Clinton 277、Clinton 260及びClinton 240等が記載されている。 これに対して、甲第1号証の段落【0171】~【0174】【表4】の実施例4には、石膏配合物の立方体試験においてスタッコスラリーに加えた粒状デンプン、すなわち非糊化デンプンとして、Clinton 106及びClinton 240が記載されており、同段落【0175】~【0176】【表5】の実施例5には、Clinton 240、Clinton 260及びClinton 277が酸修飾(変性)トウモロコシデンプンであることが記載され、同段落【0207】~【0215】【表15】【表16】の実施例14には、粒状デンプンであるClinton 277を実施例13のスタッコスラリーに加えた石膏配合物の立方体試験が記載されている(前記(1)ア(ウ))。 そして、甲第1号証に記載されたClinton 240及びClinton 277は、本件特許明細書の前記段落【0218】【表10】に記載されたClinton 240及びClinton 277と同一であるし、甲第1号証に記載された実施例は、石膏配合物の立方体試験においてスタッコスラリーに粒状デンプン、すなわち非糊化デンプンを加えて、アルファ化デンプンを加えたものに対して、石膏配合物の圧縮強度を比較しているのであるから、「未調理デンプン」を含むスラリーにより石膏配合物(石膏ボード)を形成する技術思想が明示されているのであり、石膏配合物の立方体試験においてスタッコスラリーに粒状デンプン、すなわち非糊化デンプンを加えたものが比較例であったとしても、新規性の有無を判断する際には作用効果の高低は要件とすべきではない。 また、甲第1号証の段落【0008】(前記(1)ア(イ))の記載によれば、甲第1号証に記載された発明が、「ボード」中に糊化していない、すなわち「未調理デンプン」を含有する形態を含むことは明らかであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(16ページ下から6行~20ページ5行)。 (イ) 本件特許明細書の段落【0186】【表2】(前記(2)ア(ウ))には、本件発明2で特定される「ピーク粘度」を有する「未調理デンプン」として、Clinton 277、Clinton 260及びClinton 240が記載されており、少なくともClinton 277及びClinton 240は、甲第1号証の前記実施例4及び実施例14に記載されたものと同一である。 また、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲第1号証には、「未調理デンプン」を含むスラリーにより石膏配合物(石膏ボード)を形成する技術思想が明示されているから、本件発明2も、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(20ページ6行~最終行)。 (ウ) 本件発明3~8も、前記(ア)、(イ)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(21ページ1行~23ページ12行)。 (エ) 甲第1号証に記載される粒状デンプンであるClinton 277は、本件発明9で特定される「熱水粘度」及び「ピーク粘度」を有する「未調理デンプン」であるClinton 277と同一であるから、本件発明9も、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(23ページ13行~21行)。 (オ) 本件発明10~11も、前記(ア)~(エ)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(23ページ22行~24ページ3行)。 イ 以下、前記ア(ア)~(オ)の主張について検討すると、前記ア(ア)~(オ)の主張は、総じて、甲第1号証の実施例においては、本件特許明細書の実施例に記載された「未調理デンプン」の商品名であるClinton 240及びClinton 277と同じ商品名の非糊化デンプンを、石膏配合物の立方体試験においてスタッコスラリーに加えており、前記「未調理デンプン」と同じ商品名の非糊化デンプンは、本件発明で特定される「熱水粘度」や「ピーク粘度」を有する「未調理デンプン」といえるから、甲第1号証には、「石膏ボード」を製造するスラリーに、本件発明で特定される「熱水粘度」や「ピーク粘度」を有する「未調理デンプン」を添加することが開示されているといえるので、本件発明1~11は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることをいうものといえる。 ところが、甲第1号証の実施例には、商品名がClinton 240及びClinton 277である非糊化デンプンを、石膏配合物の立方体試験、すなわち圧縮強度を測定する試験のための立方体を製造するスタッコスラリーに加えることが記載されているにすぎないし、これらの商品を用いた例は、圧縮強度の効用がないことを示すもので、良好な圧縮強度を示す成分に対する比較又は対照としてのものであるから、これらを「石膏ボード」を製造するスラリーに添加する技術思想が記載されているわけではない(良好な圧縮強度を示さない成分を「石膏ボード」を製造するスラリーに添加することはない。)。 そうすると、甲第1号証に、本件発明で特定される「熱水粘度」や「ピーク粘度」を有する「未調理デンプン」を含むスラリーにより「石膏ボード」を形成する技術思想が開示されているとはいえない。 また、甲第1号証の段落【0008】(前記(1)ア(イ))には、ボードを作成する際に少なくとも1種のアルファ化デンプンをスラリーに加えることを前提として、一部の実施態様において、前記アルファ化デンプンは、スラリーに加えられる場合に部分的に糊化され、残りの糊化は乾燥ステップにおいて起こることが記載されているにすぎないから、前記段落【0008】の記載に基づいて、甲第1号証に記載された発明が、ボード中に、ゼラチン化の程度が約5%未満のデンプンである「未調理デンプン」を含有する形態を含むことが明らかであるともいえない。 ここで、甲第1号証に記載された発明における「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」が本件発明1における「未調理デンプン」に相当することは、前記(2)ア(ウ)に記載したとおりであるが、「未調理デンプン」を用いているとしても、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、更に、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」ものであるか否かの点、すなわち、前記相違点1の点で実質的に相違するから、本件発明1が甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、前記相違点1が容易想到ではないことは、前記(2)ア(カ)、(キ)に記載したとおりである。 そして、甲第1号証には、商品名がClinton 240及びClinton 277である非糊化デンプンを、「石膏ボード」を製造するスラリーに添加する技術思想が記載されているわけではないし、これらを、「(a)糊化されていない」「第2の種類のデンプン」として「石膏ボード」を製造するスラリーに添加することが記載されているわけでもないから、Clinton 240及びClinton 277と同じ商品名の非糊化デンプンが、本件発明1において特定される「熱水粘度」を有するものであるとしても、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないことに変わりはない。 更に、本件発明2~11について検討しても事情は同じであるから、申立人の前記ア(ア)~(オ)の主張はいずれも採用できない。 (4) 小括 したがって、本件発明1~11は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の1の特許異議の申立て理由は理由がない。 2 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について (1) 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 ア 甲第2号証には、以下の(ア)~(カ)の記載がある。 (ア) 「1. A gypsum board formed from a gypsum slurry having a composition comprising: stucco; and an acid modified starch having a peak viscosity of between about 200 BU to about 2000 BU. ・・・ 4. The gypsum board of claim 1, wherein the acid modified starch is chemically modified to reduce the peak gelling temperature.」(特許請求の範囲) (当審訳:1.石膏スラリーから形成された石膏ボードであって、その組成は、スタッコと、ピーク粘度が約200BUから約2000BUの間の酸変性デンプンとを含む、石膏ボード。 ・・・ 4.酸変性デンプンが、ゲル化ピーク温度を低下させるように化学的に変性されている、請求項1に記載の石膏ボード。) (イ) 「[0003] Gypsum wallboard typically comprises a gypsum core sandwiched between two sheets of facing material (e.g., paper) ― i.e. a composite structure made from a gypsum core disposed between two facers, and having two paper-core interfaces between the gypsum core and facers. The gypsum core is commonly produced from a gypsum slurry that is prepared as a mixture of dry and wet ingredients. The dry ingredients consist primarily of calcium sulfate hemihydrate (stucco), and may include, but are not limited to, any combination of fiberglass, accelerator, vermiculate, potash, crystal modifiers, boric acid and/or a natural polymer such as starch. The wet ingredients consist of water and a variety of other components that commonly include, but are not limited to, paper pulp and potash (the "pulp paper solution"), dispersants, retarders, polymers, wax emulsion, silicone, surfactants, and thickening agent. If present, the pulp paper solution along with the gauging water provide a significant portion of the water that forms the gypsum slurry of the core composition of the wallboard. The dry ingredients, gauging water, and the pulp paper solution contain the basic chemical components of a piece of wallboard. [0004] Methods for manufacturing gypsum wallboard are well known in the art and commonly involve a continuous process. The wet and dry ingredients, gauging water, and pulp paper solution are typically mixed together in a pin mixer to create a fluid mixture or "slurry". The slurry is discharged from the mixer through the mixer's outlet chute or "boot" which spreads the slurry onto a moving, continuous sheet of bottom facing material (back). After the slurry is discharged onto the bottom facing material, a moving, continuous sheet of top facing material (face) is placed on the slurry, so that the slurry is sandwiched between the top and bottom facing materials to form the board. The board then passes through a forming station which forms the wallboard to the desired thickness and width. Although the facing material is described as paper, other materials known in the art may be used as a facing material, such as fiberglass mat. [0005] The board travels along a belt line for several minutes, during which time the stucco and water rapidly undergo a hydration reaction and the board stiffens and "sets". In the hydration reaction, the calcium sulfate hemihydrate is hydrated to form crystals of calcium sulfate dihydrate, according to the following equation: CaSO4・1/2H2O+11/2H2O→CaSO4・2H2O+heat The reaction time can be controlled to a certain extent by the use of additives such as accelerators and retarders. The boards are then cut into a desired length and fed into a large, continuous kiln for drying. During the drying process, the excess water (free water) is evaporated from the gypsum core while the chemically bound water is retained in the newly formed gypsum crystals.」 (当審訳:[0003] 石膏ボードは、通常、石膏コアを2枚の表面材(紙など)で挟んだもの、すなわち、2枚の表面材の間に石膏コアを配置し、石膏コアと表面材の間に2枚の紙-石膏コアの界面を設けた複合構造体である。石膏コアは一般的に、乾燥成分と湿潤成分の混合物として調製される石膏スラリーから製造される。乾燥成分は主に硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)からなり、限定されないが、ガラス繊維、促進剤、バーミキュレート、炭酸カリウム、結晶調整剤、ホウ酸及び/又はデンプンなどの天然ポリマーの任意の組み合わせを含むことができる。湿潤成分は水と、一般的に含まれるそのほかの様々な成分、限定されないが、紙パルプと炭酸カリウム(「パルプ紙溶液」)、分散剤、遅延剤、ポリマー、ワックスエマルジョン、シリコーン、界面活性剤、増粘剤を含む。存在する場合、パルプ紙溶液はゲージ水とともに、ウォールボードの石膏コア組成物の石膏スラリーを形成する水の大部分を提供する。乾燥成分、ゲージ水、パルプ紙溶液は、ウォールボードの基本的な化学成分を含んでいる。 [0004] 石膏ボードの製造方法は当該技術分野でよく知られており、一般的に連続工程を伴う。湿潤成分と乾燥成分、ゲージ水、パルプ紙溶液は、一般的にピンミキサーで混合され、流体混合物又は「スラリー」を生成する。スラリーはミキサーの出口シュート又は「ブート」を通ってミキサーから排出され、スラリーは下表面材(背面)の移動する連続シート上に広がる。スラリーが下表面材の上に排出された後、移動する連続シート状の上表面材(表面)がスラリーの上に置かれ、スラリーが上表面材と下表面材に挟まれるようにしてボードが形成される。その後、ボードは成形ステーションを通過し、ウォールボードを所望の厚みと幅に成形する。表面材は紙と記載されているが、ガラス繊維マットのような当該技術分野で知られている他の材料を表面材として使用してもよい。 [0005] ボードはベルトラインに沿って数分間移動し、その間にスタッコと水は急速に水和反応を起こし、ボードは硬化して「固まる」。水和反応では、硫酸カルシウム半水和物は、以下の式に従って水和され、硫酸カルシウム二水和物の結晶を形成する: CaSO4・1/2H2O+11/2H2O→CaSO4・2H2O+熱 反応時間は、促進剤や遅延剤などの添加剤を使用することである程度コントロールすることができる。その後、ボードは好みの長さにカットされ、乾燥のために大型の連続窯に投入される。乾燥の過程で、余分な水分(自由水)は石膏のコアから蒸発し、化学的に結合した水分は新しく形成された石膏の結晶に保持される。) (ウ) 「[0010] Gypsum board and methods of producing gypsum board with improved properties are disclosed, having a composition including a starch that is acid modified to a certain degree to control its migration in the core to a specific ratio and/or that is chemically modified to reduce the peak gelling temperature of the starch and improve cooking of the starch. ・・・In another embodiment, the gypsum board comprises a gypsum core formed from a gypsum slurry comprising stucco and an acid modified starch, the gypsum core having a front side, a back side, and a center core between the front and back sides. A facing material is disposed at the front and back sides of the gypsum core.・・・In a preferred embodiment, the starch has a plurality of -OH groups that are chemically modified by ethoxylation with ethylene oxide, wherein the starch has a peak gelling temperature of about 180 °F or less. ・・・ [0016] Improvements in gypsum board properties have been obtained by increasing the binding effects of the starch in the board core. The improved starch binding is obtained by varying the acid modification of the starch to change the migration profile and distribution of the starch in the core, and also by reducing the starch gelling temperature to ensure complete cooking of the starch during board manufacture. The starch in the gypsum core improves the adhesion between the gypsum crystals themselves (i.e. a co-binder). ・・・」 (当審訳:[0010] 石膏コア中の移行を特定の比率に制御するためにある程度酸変性されたデンプン、及び/又はデンプンのピークゲル化温度を低下させ、デンプンの調理を改善するために化学変性されたデンプンを含む組成物を有する、改善された特性を有する石膏ボード及び石膏ボードを製造する方法が開示されている。・・・別の実施形態では、石膏ボードは、スタッコ及び酸変性デンプンを含む石膏スラリーから形成された石膏コアを備え、石膏コアは、前面、背面、及び前面と背面の間の中心コアを有する。石膏コアの表裏には化粧材が配置される。・・・好ましい実施形態では、デンプンは、エチレンオキシドによるエトキシル化によって化学変性された複数の-OH基を有し、デンプンのゲル化ピーク温度は約180°F以下である。 ・・・ [0016] 石膏ボードの石膏コア部分のデンプンの結合効果を高めることにより、石膏ボードの特性が向上した。デンプンの結合力の向上は、デンプンの酸変性を変化させてコアの部分におけるデンプンの移動プロファイルと分布を変えることによって、また、デンプンのゲル化温度を下げてボード製造中にデンプンが完全に調理されることを確実にすることによって達成される。石膏コア内のデンプンは、石膏結晶自体(つまり、共結合剤)間の接着性を向上させる。・・・) (エ) 「[0021] As shown in FIG. 3, gypsum board prepared using low and medium thinning starches exhibited higher nail pull strength compared to high thinning or control starches. By reducing the ratio of migrating (face, back) to non-migrating (center core) starch(es) from about 3.8 - 4 (control) to about 1.2 - 1.5 (low thinning), the resulting board nail pull values are increased by about 5 to 8 lbf. ・・・ ・・・ [0023] In another embodiment, the starch gelling temperature range can be adjusted to control the gelling process of the starch in the core. ・・・Unmodified starch (e.g., pearl starch) has a gelling temperature that is too high and is often not fully cooked during the drying process. By adjusting the starch gelling temperature range, one can completely utilize the starch in the core by fully cooking it. This complete utilization results in improved board properties and potential cost savings by reduction in starch usage. ・・・ [0026] Modification of the starch to reduce the peak gelling temperature may be combined with acid modification to adjust the starch viscosity and further improve nail pull and compressive strength. In a preferred embodiment, the acid modified starch has a peak viscosity in the range between about 200 BU to about 2000 BU, where slight acid modification corresponds to a peak viscosity in a range between about 800 BU to about 2000 BU, and more acid modification corresponds to a peak viscosity in a range of about 200 BU to about 800 BU. [0027] Referring to FIG. 4, starches were modified by ethylation to reduce peak gelling temperature in combination with acid modification to further improve the compressive strength of the gypsum board. Gypsum board was prepared in the laboratory by conventional methods from compositions comprising starches with and without ethylation, and with and without acid modification. ・・・ [0028] The nail pull strength of the gypsum boards was measured against the board weight as described above. As shown in FIG. 4, gypsum board containing ethylated/acid modified starch exhibited improved nail pull strength in comparison to either acid modified starch without ethylation, or ethylated starch without acid modification.」 (当審訳: [0021] 図3に示すように、低及び中薄化の変性デンプンを使用して製造された石膏ボードは、高薄化デンプン又は対照デンプンと比較して、より高い釘引き強度を示した。移行デンプン(表面、裏面)と非移行デンプン(中心コア)の比率を約3.8-4(コントロール)から約1.2-1.5(低処理)に減らすと、結果として得られる板釘引張値は約5~8lbf増加する。・・・ ・・・ [0023] 別の実施形態では、デンプンのゲル化温度範囲を調整して、石膏コア内のデンプンのゲル化プロセスを制御することができる。・・・変性されていないデンプン(例:パールデンプン)はゲル化温度が高すぎるため、乾燥工程で十分に調理されないことがよくある。デンプンのゲル化温度範囲を調整することで、コアにあるデンプンを完全に調理し、完全に利用することができる。この完全な利用により、ボードの特性が向上し、デンプンの使用量が減ることでコストが節約される可能性がある。 ・・・ [0026] ピークゲル化温度を下げるためのデンプンの改質は、デンプンの粘度を調整し、釘抜き強度及び圧縮強度をさらに向上させるための酸変性と組み合わせることができる。好ましい実施形態では、酸変性デンプンは、約200BU~約2000BUの範囲のピーク粘度を有し、わずかな酸変性は約800BU~約2000BUの範囲のピーク粘度に相当し、より強い酸変性は約200BU~約800BUの範囲のピーク粘度に相当する。 [0027] 図4を参照すると、デンプンはエチル化によって改質され、酸変性と組み合わせてゲル化ピーク温度が低下し、石膏ボードの圧縮強度がさらに向上した。石膏ボードは、エチル化の有無、酸変性の有無にかかわらずデンプンを含む組成物から従来の方法によって実験室で製造された。・・・ [0028] 石膏ボードの釘抜き強度は、前記のようにボードの重量に対して測定された。図4に示すように、エチル化/酸変性デンプンを含む石膏ボードは、エチル化されていない酸変性デンプン、又は酸変性されていないエチル化デンプンのいずれと比較しても、釘引き強度が向上した。) (オ) 「 [図:0001426860000008.jpg] 」 (当審訳: [図:0001426860000009.jpg] ) (カ) 「 [図:0001426860000010.jpg] 」 (当審訳: [図:0001426860000011.jpg] ) イ 前記ア(ア)の記載によれば、甲第2号証には、石膏スラリーから形成された石膏ボードであって、その組成は、スタッコと、ピーク粘度が約200BUから約2000BUの間の酸変性デンプンとを含む石膏ボードであり、酸変性デンプンが、ゲル化ピーク温度を低下させるように化学的に変性されている、石膏ボードが記載されている(請求項1、4)。 また、前記ア(イ)の記載によれば、甲第2号証には、石膏ボードは、通常、石膏コアを2枚の表面材(紙など)で挟んだもの、すなわち、2枚の表面材の間に石膏コアを配置し、石膏コアと表面材の間に2枚の紙-石膏コアの界面を設けた複合構造体であり、石膏コアは一般的に、乾燥成分と湿潤成分の混合物として調製される石膏スラリーから製造されるものであり、乾燥成分は主に硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)からなり、限定されないが、ガラス繊維、促進剤、バーミキュレート、炭酸カリウム、結晶調整剤、ホウ酸及び/又はデンプンなどの天然ポリマーの任意の組み合わせを含むことができるものであり、湿潤成分は水と、一般的に含まれるそのほかの様々な成分、限定されないが、紙パルプと炭酸カリウム(「パルプ紙溶液」)、分散剤、遅延剤、ポリマー、ワックスエマルジョン、シリコーン、界面活性剤、増粘剤を含むものであることが記載されている(段落[0003])。 そして、石膏ボードの製造方法は、一般的に連続工程を伴い、湿潤成分と乾燥成分、ゲージ水、パルプ紙溶液は、一般的にピンミキサーで混合され、流体混合物又はスラリーを生成し、スラリーはミキサーの出口シュート又はブートを通ってミキサーから排出され、下表面材(背面)の移動する連続シート上に広がり、スラリーが下表面材の上に排出された後、移動する連続シート状の上表面材(表面)がスラリーの上に置かれ、スラリーが上表面材と下表面材に挟まれるようにしてボードが形成され、その後、ボードは成形ステーションを通過し、ウォールボードを所望の厚みと幅に成形するものである(段落[0004])。 更に、ボードはベルトラインに沿って数分間移動し、その間にスタッコと水は急速に水和反応を起こし、硬化して固まるものであり、その後、ボードは好みの長さにカットされ、乾燥のために大型の連続窯に投入され、乾燥の過程で、余分な水分(自由水)は石膏のコアから蒸発し、化学的に結合した水分は新しく形成された石膏の結晶に保持されるものである(段落[0005])。 また、前記ア(ウ)の記載によれば、石膏ボードにおけるデンプンは、エチレンオキシドによるエトキシル化によって化学変性された複数の-OH基を有し、デンプンのゲル化ピーク温度は約180°F以下であるものであり(段落[0010])、石膏ボードの石膏コア部分のデンプンの結合効果を高めることにより、石膏ボードの特性が向上したものであり、デンプンの結合力の向上は、デンプンのゲル化温度を下げてボード製造中にデンプンが完全に調理されることを確実にすることによって達成されるものである(段落[0016])。 更に、前記ア(エ)及び(カ)の記載によれば、デンプンのゲル化温度範囲を調整して、石膏コア内のデンプンのゲル化プロセスを制御することができるものであり、変性されていないデンプン(例:パールデンプン)はゲル化温度が高すぎるため、乾燥工程で十分に調理されないことがよくあるが、デンプンのゲル化温度範囲を調整することで、コアにあるデンプンを完全に調理し、完全に利用することができ、この完全な利用により、ボードの特性が向上し、デンプンの使用量が減ることでコストが節約される可能性があるものであり(段落[0023])、ピークゲル化温度を下げるためのデンプンの改質は、デンプンの粘度を調整し、釘抜き強度及び圧縮強度をさらに向上させるための酸変性と組み合わせることができるものである(段落[0026])。 そして、デンプンはエチル化によって改質され、酸変性と組み合わせてゲル化ピーク温度が低下し、石膏ボードの圧縮強度がさらに向上したものであり、石膏ボードは、デンプンを含む組成物から従来の方法によって製造されたものであり(段落[0027])、エチル化/酸変性デンプンを含む石膏ボードは、エチル化されていない酸変性デンプン、又は酸変性されていないエチル化デンプンのいずれと比較しても、釘引き強度が向上したものである(段落[0028])。 ウ 前記イによれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「石膏スラリーから形成された石膏ボードであって、その組成は、スタッコと、ピーク粘度が約200BUから約2000BUの間の酸変性デンプンとを含む石膏ボードであり、酸変性デンプンが、ゲル化ピーク温度を低下させるように化学的に変性されている、石膏ボードであり、 前記石膏ボードは、通常、石膏コアを2枚の表面材(紙など)で挟んだもの、すなわち、2枚の表面材の間に石膏コアを配置し、石膏コアと表面材の間に2枚の紙-石膏コアの界面を設けた複合構造体であり、石膏コアは一般的に、乾燥成分と湿潤成分の混合物として調製される石膏スラリーから製造されるものであり、乾燥成分は主に硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)からなり、限定されないが、ガラス繊維、促進剤、バーミキュレート、炭酸カリウム、結晶調整剤、ホウ酸及び/又はデンプンなどの天然ポリマーの任意の組み合わせを含むことができるものであり、湿潤成分は水と、一般的に含まれるそのほかの様々な成分、限定されないが、紙パルプと炭酸カリウム(「パルプ紙溶液」)、分散剤、遅延剤、ポリマー、ワックスエマルジョン、シリコーン、界面活性剤、増粘剤を含むものであり、 前記石膏ボードの製造方法は、一般的に連続工程を伴い、前記湿潤成分と乾燥成分、ゲージ水、パルプ紙溶液は、一般的にピンミキサーで混合され、流体混合物又はスラリーを生成し、スラリーはミキサーの出口シュート又はブートを通ってミキサーから排出され、下表面材(背面)の移動する連続シート上に広がり、スラリーが下表面材の上に排出された後、移動する連続シート状の上表面材(表面)がスラリーの上に置かれ、スラリーが上表面材と下表面材に挟まれるようにしてボードが形成され、その後、ボードは成形ステーションを通過し、ウォールボードを所望の厚みと幅に成形するものであり、 ボードはベルトラインに沿って数分間移動し、その間にスタッコと水は急速に水和反応を起こし、硬化して固まるものであり、その後、ボードは好みの長さにカットされ、乾燥のために大型の連続窯に投入され、乾燥の過程で、余分な水分(自由水)は石膏のコアから蒸発し、化学的に結合した水分は新しく形成された石膏の結晶に保持されるものであり、 石膏ボードにおけるデンプンは、エチレンオキシドによるエトキシル化によって化学変性された複数の-OH基を有し、デンプンのゲル化ピーク温度は約180°F以下であるものであり、 石膏ボードの石膏コア部分のデンプンの結合効果を高めることにより、石膏ボードの特性が向上したものであり、デンプンの結合力の向上は、デンプンのゲル化温度を下げてボード製造中にデンプンが完全に調理されることを確実にすることによって達成されるものであり、 デンプンのゲル化温度範囲を調整して、石膏コア内のデンプンのゲル化プロセスを制御することができるものであり、変性されていないデンプン(例:パールデンプン)はゲル化温度が高すぎるため、乾燥工程で十分に調理されないことがよくあるが、デンプンのゲル化温度範囲を調整することで、コアにあるデンプンを完全に調理し、完全に利用することができ、この完全な利用により、ボードの特性が向上し、デンプンの使用量が減ることでコストが節約される可能性があるものであり、 ピークゲル化温度を下げるためのデンプンの改質は、デンプンの粘度を調整し、釘抜き強度及び圧縮強度をさらに向上させるための酸変性と組み合わせることができるものであり、 デンプンはエチル化によって改質され、酸変性と組み合わせてゲル化ピーク温度が低下し、石膏ボードの圧縮強度がさらに向上したものであり、石膏ボードは、デンプンを含む組成物から従来の方法によって製造されたものであり、エチル化/酸変性デンプンを含む石膏ボードは、エチル化されていない酸変性デンプン、又は酸変性されていないエチル化デンプンのいずれと比較しても、釘引き強度が向上したものである、石膏ボード。」(以下、「甲2-1発明」という。) エ また、甲第2号証に記載された「石膏ボード」の製造方法に注目すると、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「石膏スラリーから形成された石膏ボードであり、その組成は、スタッコと、ピーク粘度が約200BUから約2000BUの間の酸変性デンプンとを含む石膏ボードであり、酸変性デンプンが、ゲル化ピーク温度を低下させるように化学的に変性されている、石膏ボードの製造方法であって、 前記石膏ボードは、通常、石膏コアを2枚の表面材(紙など)で挟んだもの、すなわち、2枚の表面材の間に石膏コアを配置し、石膏コアと表面材の間に2枚の紙-石膏コアの界面を設けた複合構造体であり、石膏コアは一般的に、乾燥成分と湿潤成分の混合物として調製される石膏スラリーから製造されるものであり、乾燥成分は主に硫酸カルシウム半水和物(スタッコ)からなり、限定されないが、ガラス繊維、促進剤、バーミキュレート、炭酸カリウム、結晶調整剤、ホウ酸及び/又はデンプンなどの天然ポリマーの任意の組み合わせを含むことができるものであり、湿潤成分は水と、一般的に含まれるそのほかの様々な成分、限定されないが、紙パルプと炭酸カリウム(「パルプ紙溶液」)、分散剤、遅延剤、ポリマー、ワックスエマルジョン、シリコーン、界面活性剤、増粘剤を含むものであり、 前記石膏ボードの製造方法は、一般的に連続工程を伴い、前記湿潤成分と乾燥成分、ゲージ水、パルプ紙溶液は、一般的にピンミキサーで混合され、流体混合物又はスラリーを生成し、スラリーはミキサーの出口シュート又はブートを通ってミキサーから排出され、下表面材(背面)の移動する連続シート上に広がり、スラリーが下表面材の上に排出された後、移動する連続シート状の上表面材(表面)がスラリーの上に置かれ、スラリーが上表面材と下表面材に挟まれるようにしてボードが形成され、その後、ボードは成形ステーションを通過し、ウォールボードを所望の厚みと幅に成形するものであり、 ボードはベルトラインに沿って数分間移動し、その間にスタッコと水は急速に水和反応を起こし、硬化して固まるものであり、その後、ボードは好みの長さにカットされ、乾燥のために大型の連続窯に投入され、乾燥の過程で、余分な水分(自由水)は石膏のコアから蒸発し、化学的に結合した水分は新しく形成された石膏の結晶に保持されるものであり、 デンプンは、エチレンオキシドによるエトキシル化によって化学変性された複数の-OH基を有し、デンプンのゲル化ピーク温度は約180°F以下であるものであり、 石膏ボードの石膏コア部分のデンプンの結合効果を高めることにより、石膏ボードの特性が向上したものであり、デンプンの結合力の向上は、デンプンのゲル化温度を下げてボード製造中にデンプンが完全に調理されることを確実にすることによって達成されるものであり、 デンプンのゲル化温度範囲を調整して、石膏コア内のデンプンのゲル化プロセスを制御することができるものであり、変性されていないデンプン(例:パールデンプン)はゲル化温度が高すぎるため、乾燥工程で十分に調理されないことがよくあるが、デンプンのゲル化温度範囲を調整することで、コアにあるデンプンを完全に調理し、完全に利用することができ、この完全な利用により、ボードの特性が向上し、デンプンの使用量が減ることでコストが節約される可能性があるものであり、 ピークゲル化温度を下げるためのデンプンの改質は、デンプンの粘度を調整し、釘抜き強度及び圧縮強度をさらに向上させるための酸変性と組み合わせることができるものであり、 デンプンはエチル化によって改質され、酸変性と組み合わせてゲル化ピーク温度が低下し、石膏ボードの圧縮強度がさらに向上したものであり、石膏ボードは、デンプンを含む組成物から従来の方法によって製造されたものであり、エチル化/酸変性デンプンを含む石膏ボードは、エチル化されていない酸変性デンプン、又は酸変性されていないエチル化デンプンのいずれと比較しても、釘引き強度が向上したものである、石膏ボードの製造方法。」(以下、「甲2-2発明」という。) (2) 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)の判断 ア 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、甲2-1発明における「2枚の表面材」は、その間に「石膏コア」が「配置」されるものであるから、本件発明1における「2つのカバーシート」に相当し、甲2-1発明における「石膏コア」は、本件発明1における「2つのカバーシート間に配設された硬化石膏芯」に相当する。 (イ) また、甲2-1発明において、「石膏スラリーから形成された石膏ボード」の「組成」が、「スタッコと、ピーク粘度が約200BUから約2000BUの間の酸変性デンプンとを含」むことは、前記「組成」は「石膏コア」の「組成」をいうものであり、前記「石膏スラリー」は水を含むものといえ、更に前記「酸変性デンプン」は「デンプン」であるから、本件発明1において「前記芯が、スタッコ、水およびすくなくとも1つの」「デンプンを含むスラリーから形成され」ることに相当する。 (ウ) ここで、甲2-1発明における「酸変性デンプン」が、本件発明1における「未調理デンプン」に相当するか否かについて検討すると、本件発明1における「未調理デンプン」とは、スタッコスラリーに含まれる前のデンプンのゼラチン化の程度が約5%未満であるものを意味するものであり、ここでいうゼラチン化とは、アルファ化と同様の意味を有するものと解されることは、前記1(2)ア(ウ)に記載したとおりである。 一方、甲第2号証には、前記「酸変性デンプン」が、スタッコスラリーに含まれる前のデンプンのゼラチン化の程度が約5%未満であるものであることは記載されていないし、このことをうかがわせる記載もないから、甲2-1発明における「酸変性デンプン」が、本件発明1における「未調理デンプン」に相当するとはいえない。 (エ) 前記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲2-1発明とは、 「石膏ボードであって、 2つのカバーシート間に配設された硬化石膏芯であって、前記芯が、スタッコ、水、および少なくとも1つのデンプンを含むスラリーから形成される、硬化石膏芯を含む、石膏ボード。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点4:「石膏ボード」が、本件発明1においては、「前記芯が」、「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され」るものであって、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」ものであるのに対して、甲2-1発明においては、「石膏コア」が、「スタッコ及び約200BU~約2000BUのピーク粘度を有する酸変性デンプンを含む組成物を有する石膏スラリーから形成され」るものであって、「酸変性デンプン」が「ゲル化ピーク温度を低下させるように化学的に変性されている」「酸変性デンプン」であるが、「熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」「少なくとも1つの未調理デンプン」を含むものではない点。 なお、本件特許明細書の段落【0041】(前記1(2)ア(ウ))の記載によれば、本件発明1においては、「未調理デンプン」の「熱水粘度」を「約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位」とすることで、「石膏ボード」の著しい強度向上を達成できるのであるから、「未調理デンプン」とその「熱水粘度」は一体不可分のものといえるので、相違点4を前記のとおりに認定する。 (オ) 以下、前記相違点4の容易想到性について検討すると、甲2-1発明に係る「石膏ボード」は、「石膏ボードの石膏コア部分のデンプンの結合効果を高めることにより、石膏ボードの特性が向上したものであり、デンプンの結合力の向上は」、「デンプンのゲル化温度を下げてボード製造中にデンプンが完全に調理されることを確実にすることによって達成されるものであり」、「デンプンのゲル化温度範囲を調整することで、コアにあるデンプンを完全に調理し、完全に利用することができ、この完全な利用により、ボードの特性が向上し、デンプンの使用量が減ることでコストが節約される可能性がある」ものである。 すると、甲2-1発明は、「石膏ボード」中の「デンプン」が「完全に調理されるように」することを前提としたものであり、そのような「石膏ボード」を形成する「石膏スラリー」にゼラチン化の程度が約5%未満である「未調理デンプン」を添加することは、「石膏ボード」中の「デンプン」を「完全に調理」することを困難なものとするものである。 してみれば、甲2-1発明において、「石膏スラリー」にあえて「未調理デンプン」を添加することは、そもそも想定されないので、甲2-1発明を、「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され」るものとする動機付けは存在しない。 また、甲2-1発明は、もともと、「デンプン」の「熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって」「測定された」「熱水粘度」に注目したものではないから、甲2-1発明において、「デンプン」を、「熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」ものとする動機付けも存在しない。 更に、甲第1号証に、本件発明で特定される「熱水粘度」や「ピーク粘度」を有する「未調理デンプン」を含むスラリーにより「石膏ボード」を形成する技術思想が開示されているとはいえないことは、前記1(3)イに記載したとおりであるから、甲第1号証の記載を参照しても、甲2-1発明を、「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され」るものとするには至らないし、更にそこから進んで、「前記少なくとも1つの未調理デンプン」を、「熱水粘度アッセイ(HWVA)法によって粘度が測定されたときに、約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度を有する」ものとすることは、到底想到し得ることではない。 したがって、甲2-1発明を、前記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないから、本件発明1は、甲2-1発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2について (ア) 前記ア(ア)と同様にして本件発明2と甲2-1発明とを対比すると、前記ア(ア)~(ウ)に記載したのと同様の理由により、本件発明2と甲2-1発明とは、 「石膏ボードであって、 2つのカバーシート間に配設された硬化石膏芯であって、前記芯が、スタッコ、水、および少なくとも1つのデンプンを含むスラリーから形成される、硬化石膏芯を含む、石膏ボード。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点5:「石膏ボード」が、本件発明2においては、「前記芯が」、「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され」るものであって、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」ものであるのに対して、甲2-1発明においては、「石膏コア」が、「約200BU~約2000BUのピーク粘度を有するスタッコ及び酸変性デンプンを含む組成物を有する石膏スラリーから形成され」るものであって、「酸変性デンプン」が「ゲル化ピーク温度を低下させるように化学的に変性されている」「酸変性デンプン」であるが、「15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」「少なくとも1つの未調理デンプン」を含むものではない点。 なお、前記相違点5の認定の理由も、前記ア(エ)に記載した理由と同様である。 (イ) 以下、前記相違点5の容易想到性について検討すると、前記相違点5は、「石膏ボード」が「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され」るものであるか否かの点で前記相違点4と共通するから、前記ア(オ)に記載したのと同様の理由により、甲2-1発明を、前記相違点5に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないので、本件発明2は、甲2-1発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3~8、10について 本件発明3~8及び10は、いずれも、本件発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、これらについて検討しても事情は同じであるので、本件発明3~8及び10も、甲2-1発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明9、11について (ア) 本件発明9と甲2-2発明とを対比すると、甲2-2発明における「石膏ボードの製造方法」は、本件発明9における「石膏ボードを調製する方法」に相当する。 また、甲2-2発明における「乾燥成分」には、「スタッコ」及び「酸変性デンプン」が含まれるのであるが、前記ア(ウ)に記載したのと同様の理由により、前記「酸変性デンプン」が本件発明9における「未調理デンプン」に相当するとはいえないから、甲2-2発明において、「湿潤成分と乾燥成分、ゲージ水、パルプ紙溶液」が「ピンミキサーで混合され、流体混合物又はスラリーを生成」することは、本件発明9において、「(a)スタッコ、水、および少なくとも1つの」「デンプンを含むスラリーを混合すること」に相当する。 更に、甲2-2発明における「下表面材(背面)」及び「上表面材(表面)」は、本件発明9における「第1のカバーシート」及び「第2のカバーシート」に相当し、甲2-2発明において、「スラリー」が「ミキサーの出口シュート又はブートを通ってミキサーから排出され、下表面材(背面)の移動する連続シート上に広がり、スラリーが下表面材の上に排出された後、移動する連続シート状の上表面材(表面)がスラリーの上に置かれ、スラリーが上表面材と下表面材に挟まれるようにしてボードが形成」されることは、本件発明9において、「(b)第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に前記スラリーを配設して、湿潤アセンブリを形成すること」に相当し、甲2-2発明において、「ボード」が「ベルトラインに沿って数分間移動し、その間にスタッコと水は急速に水和反応を起こし、硬化して固ま」り、「その後、ボード」が「好みの長さにカットされ」ることは、本件発明9において、「(c)前記湿潤アセンブリをボードに切断すること」に相当し、甲2-2発明において、「ボード」が「乾燥のために大型の連続窯に投入され、乾燥の過程で、余分な水分(自由水)は石膏のコアから蒸発」することは、本件発明9において、「(d)前記ボードを乾燥させること」に相当する。 (イ) 前記(ア)によれば、本件発明9と甲2-2発明とは、 「石膏ボードを調製する方法であって、 (a)スタッコ、水、および少なくとも1つのデンプンを含むスラリーを混合することと、 (b)第1のカバーシートと第2のカバーシートとの間に前記スラリーを配設して、湿潤アセンブリを形成することと、 (c)前記湿潤アセンブリをボードに切断することと、 (d)前記ボードを乾燥させることと、を含む、方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点6:「石膏ボードを調製する方法」が、本件発明9においては、「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーを混合する」ものであって、「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、(i)熱水粘度アッセイ(HWVA)法に従って約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度、および/または(ii)15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」のに対して、甲2-2発明においては、「湿潤成分と乾燥成分、ゲージ水、パルプ紙溶液」が「ピンミキサーで混合され、流体混合物又はスラリーを生成」するものであって、「乾燥成分」として「スタッコ及び約200BU~約2000BUのピーク粘度を有する酸変性デンプン」を含み、前記「酸変性デンプン」が「ゲル化ピーク温度を低下させるように化学的に変性されている」「酸変性デンプン」であるが、「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーを混合する」ものとはいえず、更に「前記少なくとも1つの未調理デンプンが、(i)熱水粘度アッセイ(HWVA)法に従って約20ブラベンダー単位~約300ブラベンダー単位の熱水粘度、および/または(ii)15%の固形分のデンプン濃度の水を含むスラリー中に前記デンプンを置き、前記デンプンが3℃/分の速度で25℃から95℃まで加熱され、前記スラリーが10分間95℃に保持され、前記デンプンが-3℃/分の速度で50℃に冷却される、75rpmおよび700cmgに設定されたビスコグラフE機器を使用することによって粘度が測定されたときに、約120ブラベンダー単位~約900ブラベンダー単位のピーク粘度を有する」ものでもない点。 ・相違点7:「石膏ボードを調製する方法」が、本件発明9においては、「前記乾燥したボードが約35pcf(560kg/m3)以下の密度を有し、前記ボードがASTM473-10の方法Bに従って少なくとも約72lbs-fの釘抜き抵抗を有する」のに対して、甲2-2発明においては、「乾燥」した後の「ボード」の「密度」及び「釘抜き抵抗」が明らかでない点。 なお、前記相違点6の認定の理由も、前記ア(エ)に記載した理由と同様である。 (ウ) 始めに、前記(イ)の相違点6の容易想到性について検討すると、前記相違点6は、「石膏ボード」が「少なくとも1つの未調理デンプンを含むスラリーから形成され」るものであるか否かの点で前記相違点4と共通するから、前記ア(オ)に記載したのと同様の理由により、甲2-2発明を、前記相違点6に係る本件発明9の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではないので、前記(イ)の相違点7について検討するまでもなく、本件発明9は、甲2-2発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 更に、本件発明9の発明特定事項を全て有する本件発明11について検討しても事情は同じであるから、本件発明11も、甲2-2発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立人の主張について ア 特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)についての申立人の主張は、概略、以下のとおりである。 (ア) 甲第2号証には、スタッコと、約200BU~約2000BUのピーク粘度を有する酸変性デンプンを含むスラリーから形成される石膏ボードが記載され、段落[0004]及び[0005](前記(1)ア(イ))には、スタッコと水とを混合してスラリーを調製し、連続シート間にスラリーを挟んでボードを形成し、該ボードを所定の長さに切断した後に乾燥することが記載され、段落[0010](前記(1)ア(ウ))には、スタッコとデンプンを含むスラリーによってコア部を形成し、両面にカバーシートを有する石膏ボードが開示され、段落[0021](前記(1)ア(エ))には、低~中程度に酸変性されたデンプンを使用したボードが、無変性や高変性のデンプンを使用したボードよりも高い釘抜き強度を有することが示され、Fig.3(前記(1)ア(カ))には、低程度に酸変性されたデンプンを使用したボードについて、ボードの重量1275lbs/MSF以上で釘抜き強度75lbf以上であったことが示され、段落[0023](前記(1)ア(エ))の記載から、スラリーの段階でデンプンは「未調理」であることが把握され、段落[0026](前記(1)ア(エ))には、釘抜き強度を向上させる観点から、ゲル化温度を下げるためにデンプンに酸変性を行うことが開示され、段落[0027](前記(1)ア(エ))には、ゲル化温度を下げたデンプンを用いたボードは、ゲル化温度を下げていないデンプンを用いたボードよりも高い釘抜き強度を有することが示されている。 これらのことから、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比したとき、甲第2号証にはデンプンの「熱水粘度」に関する記載がない点で相違するが、甲第2号証の段落[0021]、[0026]及び[0027]には、低~中程度に酸変性されたデンプンを用いることが釘抜き強度に有効であることが示されているから、釘抜き強度を向上させる観点から、甲第1号証に記載された酸変性トウモロコシデンプンであるClintonシリーズを選択し、本件発明1で特定される「熱水粘度」を満足するClinton240又はClinton277をスタッコスラリーに混合することは、当業者が容易になし得ることである。 また、本件発明1により得られる効果は、甲第1~2号証に記載された事項から予測し得る範囲のものであるから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(24ページ4行~27ページ14行)。 (イ) 本件発明2と甲第2号証に記載された発明とを対比したとき、甲第2号証にはデンプンの「ピーク粘度」に関する記載がない点で相違するが、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲第1号証に記載された酸変性トウモロコシデンプンであるClintonシリーズを選択し、本件発明2で特定される「ピーク粘度」を満足するClinton240又はClinton277をスタッコスラリーに混合することは、当業者が容易になし得ることであるから、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(27ページ15行~28ページ4行)。 (ウ) 本件発明3~8も、前記(ア)、(イ)と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(28ページ5行~30ページ9行)。 (エ) 本件発明9と甲第2号証に記載された発明とを対比したとき、甲第2号証にはデンプンの「熱水粘度」や「ピーク粘度」に関する記載がない点で相違するが、前記(ア)、(イ)と同様の理由により、甲第1号証に記載された酸変性トウモロコシデンプンであるClintonシリーズを選択し、本件発明9で特定される「熱水粘度」や「ピーク粘度」を満足するClinton240又はClinton277をスタッコスラリーに混合することは、当業者が容易になし得ることであるから、本件発明9は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(30ページ10~24行)。 (オ) 本件発明10~11も、前記(ア)~(エ)と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(30ページ25~31ページ4行)。 イ 以下、前記ア(ア)~(オ)の主張について検討すると、前記ア(ア)~(オ)の主張は、総じて、甲第2号証の段落[0023](前記(1)ア(エ))の記載から、甲第2号証に記載された発明においては、スラリーの段階のデンプンが「未調理デンプン」であることを前提として、甲第2号証には「未調理デンプン」の「熱水粘度」や「ピーク粘度」に関する記載がない点で、本件発明と相違することをいうものといえる。 ところが、前記段落[0023]には、加工されていないデンプン(例:パールデンプン)はゲル化温度が高すぎるため、乾燥工程で十分に調理されないことがよくあること、デンプンのゲル化温度範囲を調整することで、コアにあるデンプンを完全に調理し、完全に利用することができることが記載されているにすぎず、甲第2号証に記載された発明において、スラリーの段階のデンプンが「未調理デンプン」であること、すなわち、スタッコスラリーに含まれる前のデンプンのゼラチン化の程度が約5%未満であることを開示したものとはいえない。 また、甲第2号証には、このほかに、スラリーの段階のデンプンが「未調理デンプン」であることが記載されるものではないから、甲第2号証に記載された発明において、スラリーの段階のデンプンが「未調理デンプン」であるとはいえないので、前記ア(ア)~(オ)の主張は前提において誤っている。 そして、甲第2号証に記載された発明において「未調理デンプン」を添加することはそもそも想定されないことは、前記(2)ア(オ)に記載したとおりであるし、仮に、甲第2号証に記載された発明において、スラリー段階のデンプンが「未調理デンプン」であったとしても、甲第1号証には、Clinton240又はClinton277の粒状デンプン(すなわち、「未調理デンプン」)をスタッコスラリーに加えても、圧縮強度の効用がないことが記載されているのであるから(前記1(1)ア(ウ))、甲第2号証に記載された発明において、デンプンとして甲第1号証に記載されたClinton240又はClinton277の粒状デンプンを用いることは、当業者が容易になし得ることではない。 してみれば、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 更に、本件発明2~11について検討しても事情は同じであるから、申立人の前記ア(ア)~(オ)の主張は、いずれも採用できない。 (4) 小括 したがって、本件発明1~11は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1~2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第3の2の特許異議の申立て理由も理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議の申立て理由によっては、本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700507

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