特許異議申立
2021-700829
背くるみの構造および椅子
- 審判番号
- 2021-700829
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-213904
- 登録番号
- 6832677
- 請求日
- 2021年08月24日
- 審決日
- 2022年10月06日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】タカノ株式会社
- 【権利者代理人】村瀬 一美
- 【異議申立人】橋本 修子
- 審判長/審判官
- 審判長 藤井 昇
- 審判官 出口 昌哉
- 審判官 三宅 龍平
- 分類
- P1651.121-YAA(A47C) / P1651.113-YAA(A47C) / P1651.161-YAA(A47C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6832677号発明「背くるみの構造および椅子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6832677号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕、〔2、3、5、6〕について訂正することを認める。
特許第6832677号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6832677号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成28年10月31日に出願され、令和3年2月4日にその特許権の設定登録がされ、令和3年2月24日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 3年 8月24日 :特許異議申立人橋本修子(以下「申立人」と いう。)による請求項1~4に係る特許に対 する特許異議の申立て
同年10月21日付け:取消理由通知書
同年12月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 4年 2月14日 :申立人による意見書の提出
同年 3月24日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 5月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 6月 2日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120 条の5第5項)
(なお、当該通知に対して、申立人からの応答 はなかった。)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年5月28日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、令和3年12月27日にされた訂正請求は取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、前記張地に縫い付けられている」と記載されているのを、「前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する1枚の合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ」に訂正する(請求項1を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記背インナーシェルの後面から凸部が突出し、前記背フレームの前面には凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されていることを特徴とする請求項1記載の椅子の背凭れ。」と記載されているのを、
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている
ことを特徴とする椅子の背凭れ。」
に訂正する(請求項2を引用する請求項6も同様に訂正する。)。
なお、訂正請求書では、読点の「。」を省略している訂正が散見されるが、訂正特許請求の範囲及び訂正明細書では、「。」を含めた訂正としているため、訂正事項はこれに合わせる(以下同様である。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の椅子の背凭れ。」と記載されているのを、
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている
ことを特徴とする椅子の背凭れ。」
に訂正する(請求項3を引用する請求項6も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」と記載されているのを、「請求項1に記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の椅子の背凭れ。」と記載されているのを、新たな請求項5として、
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されており、
前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている
ことを特徴とする椅子の背凭れ。」
に訂正する(請求項5を引用する請求項6も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」と記載されているのを、新たな請求項6として「請求項2、3または5のうちのいずれか一つに記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0009】に「かかる目的を達成するため、本発明の椅子の背凭れは、背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、背インナーシェルの後面と背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、背インナーシェルの後面が張地に覆われ、背インナーシェルの取付部あるいは被取付部を張地から露出させ取付部あるいは被取付部の周辺の張地を固定する部材を有し、張地を介在させて取付部と被取付部とを連結して背フレームと背インナーシェルとを連結し、張地を固定する部材は取付部あるいは被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、張地に縫い付けられているものである。」と記載されているのを、
「かかる目的を達成するため、本発明の椅子の背凭れは、背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、背インナーシェルの後面と背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、背インナーシェルの後面が張地に覆われ、背インナーシェルの取付部あるいは被取付部を張地から露出させ取付部あるいは被取付部の周辺の張地を固定する部材を有し、張地を介在させて取付部と被取付部とを連結して背フレームと背インナーシェルとを連結し、張地を固定する部材は取付部あるいは被取付部を貫通させる孔を有する1枚の合成樹脂プレートであって、取付部あるいは被取付部を張地に対して貫通させるために張地に設けられた裂け目に配置され、裂け目の縁に縫い付けられて張地に固定されて裂け目の縁の形を保つようにしているものである。」に訂正する(なお、訂正請求書では「形を保つものである」としているが、訂正明細書では「形を保つようにしているものである」としているので、訂正明細書に合わせた。)。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0010】に「また、本発明の椅子の背凭れは、背インナーシェルの後面から凸部が突出し、背フレームの前面には凹部があり、凹凸部が嵌合した後にねじにより凹凸部が締結されている。」と記載されているのを、
「また、本発明の椅子の背凭れは、背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、背インナーシェルの後面と背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、背インナーシェルの後面が張地に覆われ、背インナーシェルの取付部あるいは被取付部を張地から露出させ取付部あるいは被取付部の周辺の張地を固定する部材を有し、張地を介在させて取付部と被取付部とを連結して背フレームと背インナーシェルとを連結し、張地を固定する部材は張地に縫い付けられている、取付部あるいは被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、背インナーシェルの後面から取付部あるいは被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、背フレームの前面には取付部あるいは被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、凹凸部が嵌合した後にねじにより凹凸部が締結されている。」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0011】に「また、本発明の椅子の背凭れは、張地が背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられるようにしている。」と記載されているのを、
「また、本発明の椅子の背凭れは、背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、背インナーシェルの後面と背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、背インナーシェルの後面が張地に覆われ、背インナーシェルの取付部あるいは被取付部を張地から露出させ取付部あるいは被取付部の周辺の張地を固定する部材を有し、張地を介在させて取付部と被取付部とを連結して背フレームと背インナーシェルとを連結し、張地を固定する部材は張地に縫い付けられている、取付部あるいは被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、張地が背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられるようにしている。
また、本発明の椅子の背凭れは、背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、背インナーシェルの後面と背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、背インナーシェルの後面が張地に覆われ、背インナーシェルの取付部あるいは被取付部を張地から露出させ取付部あるいは被取付部の周辺の張地を固定する部材を有し、張地を介在させて取付部と被取付部とを連結して背フレームと背インナーシェルとを連結し、張地を固定する部材は張地に縫い付けられている、取付部あるいは被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、背インナーシェルの後面から取付部あるいは被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、背フレームの前面には取付部あるいは被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、凹凸部が嵌合した後にねじにより凹凸部が締結されており、張地は背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられるようにしている。」に訂正する。
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、当該請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係を有する。
したがって、訂正事項1~4に係る本件訂正は、一群の請求項〔1~4〕に対して請求されたものである
また、特許権者は、上記一群の請求項1~4に対応する本件訂正後の請求項1~6のうち、請求項2、3、5及び6に係る訂正については、当該訂正が認められる場合には、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項1において、「張地を固定する部材」及び「張地」について「前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、前記張地に縫い付けられている」ことが特定されている。
これに対して、訂正事項1による訂正により、本件訂正後の請求項1において、「前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ」との記載により、「張地」の構成及び「張地を固定する部材」と「張地」との関係を特定する構成が具体的に限定されたから、上記訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
(ア)
願書に添付した明細書の段落【0045】の「総くるみ59は、背インナーシェル58の表側を覆う表側張地59aと、裏側を覆う裏側張地59bと、表側張地59aの裏面に縫い付けられる比較的薄手の緩衝用のウレタンクッションとで構成され、背インナーシェル58と相似形状の袋状に縫製されている(図18及び図19参照)。」との記載、段落【0046】の「凸部(取付部あるいは被取付部のいずれか一方を構成する)58g」、「本実施形態の場合、総くるみ59には、背インナーシェル58と背フレーム57との連結箇所、即ち背インナーシェル58の上辺の背面側でかつ凸部58gが突出している位置に凸部58gを貫通させる裂け目が設けられる。」との記載から、張地には、取付部あるいは被取付部を張地に対して貫通させる裂け目が設けられていると認められる。
(イ)
また、同明細書の段落【0046】の「そこで、背インナーシェルの取付部あるいは被取付部を張地から露出させ取付部(あるいは被取付部)の周辺の張地を固定する部材、本実施形態の場合、凸部58gを貫通させる孔53を有している板状の縁止め部材54を裂け目の縁に縫い付けて裂け目の縁を縁止め部材54に固定することにより、縁止め部材54の孔53から背インナーシェル58の凸部58gを飛び出させる一方、裂け目の縁を直線的に固定して乱れることがないにしている。」との記載、段落【0048】の「この縁止め部材54は、総くるみ9を縫製する際に、表側張地59aと裏側張地59bの縫い合わせ箇所の裏面側に縫い付けられて各張地59a,59bに固定されている。即ち、表側張地59aと裏側張地59bとの本来の縫合箇所を縫合せずに(つまり、裂け目26を設け)、表側張地59aと裏側張地59bのそれぞれの縁を縁止め部材54に縫い付けることで、表側張地59aと裏側張地59bとの間即ち裂け目に縁止め部材54を配置するようにしている。」との記載から、縁止め部材54は、裂け目に配置され、裂け目の縁に縫い付けられて張地に固定されて裂け目の縁の形を保つものと認められる。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)から、「張地を固定する部材」が「前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ」ことは、願書に添付した明細書に記載されていると認められる。
(エ)
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
(オ)
さらに、訂正事項1による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項2につき、請求項1の記載を引用する形式であったのを、請求項1との引用関係を解消し、独立形式に改めるとともに、「凸部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部」に訂正し、「凹部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部」に訂正するものである。
上記訂正事項2による訂正のうち、「凸部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部」とし、「凹部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部」とする訂正は、「取付部」及び「被取付部」と「凸部」及び「凹部」との関係を整合させて明瞭とするものである。
したがって、上記訂正事項2による訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2による訂正のうち、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。
また、願書に添付した明細書の段落【0046】の「本実施形態の背凭れ9は、・・・背インナーシェル58の上辺58cの背面側から突出する凸部(取付部あるいは被取付部のいずれか一方を構成する)58gと背フレーム57の上辺57cの前面側に設けられた凹部(取付部あるいは被取付部のいずれか他方を構成する)57gとを嵌合させてビス止めすることで一端が連結されている。」との記載から、「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部」及び「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部」は願書に添付した明細書に記載されていると認められる。
したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項2による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3による訂正は、本件訂正前の請求項3につき、請求項1または2の記載を引用する形式であったのを、請求項1との引用関係を解消し、独立形式に改め、かつ、請求項2を引用しないようにして多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するものであって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項3による訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項3による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4による訂正は、本件訂正前の請求項4が請求項1から3のうちのいずれか一つを引用する記載であるところ、請求項1を引用する記載に訂正するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減に該当することから、上記訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項4による訂正は、引用する請求項の数を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項4による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5による訂正は、本件訂正前の請求項3につき、請求項1または2の記載を引用する形式であったのを、請求項1を引用する請求項2との全ての引用関係を解消し、独立形式に改め、かつ、請求項1を引用しないようにして多数項を引用している請求項の引用請求項数を削減するとともに、「凸部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部」に訂正し、「凹部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部」に訂正するものである。
上記訂正事項5による訂正のうち、「凸部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部」とし、「凹部」を「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部」とする訂正は、「取付部」及び「被取付部」と「凸部」及び「凹部」との関係を整合させて明瞭とするものである。
したがって、上記訂正事項5による訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするもの、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項5による訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするもの、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。
また、願書に添付した明細書の段落【0046】の「本実施形態の背凭れ9は、・・・背インナーシェル58の上辺58cの背面側から突出する凸部(取付部あるいは被取付部のいずれか一方を構成する)58gと背フレーム57の上辺57cの前面側に設けられた凹部(取付部あるいは被取付部のいずれか他方を構成する)57gとを嵌合させてビス止めすることで一端が連結されている。」との記載から、「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部」及び「前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部」は願書に添付した明細書に記載されていると認められる。
したがって、訂正事項5による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項5による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6による訂正は、訂正事項2、3及び5により、本件訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2、請求項1の記載を引用する請求項3、請求項1及び2の記載を引用する請求項3を、それぞれ、独立項として本件訂正後の請求項2、3及び5に訂正したことに伴って、本件訂正前の請求項1及び2の記載を引用する請求項4、請求項1及び3の記載を引用する請求項4、請求項1~3の記載を引用する請求項4を、本件訂正後の請求項2、3及び5を引用する新たな請求項6とするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項6による訂正により、本件訂正後の請求項6は本件訂正後の請求項2、3及び5を引用するものとなった。本件訂正後の請求項2、3及び5に係る訂正事項2、3及び5による訂正は新規事項の追加に該当しないから、訂正事項6による訂正についても、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項6による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7による訂正は、上記訂正事項1による訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項7による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項7による訂正は、上記訂正事項1による訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、訂正事項1による訂正は新規事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項7による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項7による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8による訂正は、上記訂正事項2による訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項8による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項8による訂正は、上記訂正事項2による訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、訂正事項2による訂正は新規事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項8による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項8による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9による訂正は、上記訂正事項3及び5による訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項9による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項9による訂正は、上記訂正事項3及び5による訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、訂正事項3及び5による訂正は新規事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項9による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、新規事項の追加に該当しない。
さらに、訂正事項9による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
3 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する許請求の範囲の減縮、第3号に規定する明瞭でない記載の釈明又は第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4〕、〔2、3、5、6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたので、本件訂正請求により訂正された請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1~6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ
ことを特徴とする椅子の背凭れ。
【請求項2】
背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている
ことを特徴とする椅子の背凭れ。
【請求項3】
背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている
ことを特徴とする椅子の背凭れ。
【請求項4】
請求項1に記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。
【請求項5】
背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されており、
前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている
ことを特徴とする椅子の背凭れ。
【請求項6】
請求項2、3または5のうちのいずれか一つに記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由等について
1 取消理由の概要
当審が令和4年3月24日付けの取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
[取消理由]
本件特許の請求項1、4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信の回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、その請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
特開2011-92538号公報(申立人が提出した甲第7号証、以下「甲7」という。)
2 当審の判断
2-1 甲7の記載事項等
(1)記載事項
甲7には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
「【0018】
(1).概略
図1,2に示すように、椅子は、脚支柱(ガスシリンダ)1のみを表示した脚装置、脚支柱1の状態に固定したベース2、ベース2の上方に配置した座3、座3の後ろに配置された背もたれ4を有している。
【0019】
背もたれ4は、ベース2に後傾動可能に連結されたバックフレーム5と、体圧支持体の一例としてバックフレーム5の前面に取り付けた背板6(インナーシェル)とを強度メンバーとしており、図1(A)に示すように、背板6の前面に薄いシート状のメッシュ式表皮材7を張っている。
【0020】
図3に示すように、バックフレーム5は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドフレーム8と、左右サイドフレーム8の上端に繋がった横長のアッパーフレーム9と、左右サイドフレーム8の下端に繋がった左右長手のロアフレーム10とを有しており、全体として略四角形で前後に開口した枠状になっている。更に、左右サイドフレーム8の下端には、ベース2の左右外面に向けて前向きに延びるサイドアーム11が一体に形成されている。
・・・
【0026】
(2).背板及びバックフレーム
次に、背板6とバックフレーム5の構造を説明する。メッシュ式表皮材7の取付け構造は、背板6及びバックフレーム5の構造を説明してから述べる。
【0027】
背板6はポリプロピレンやナイロン樹脂のような合成樹脂製を材料にした成形品であり、図3に示すように、上下長手の左右のサイドメンバー16と、サイドメンバー16の上端間に一体に繋がったアッパーメンバー17と、左右サイドメンバー16の下端に一体に繋がったロアメンバー18とで略四角形の外形を構成し、更に、その内部には、左右サイドメンバー16に繋がった横長サポート板19が多段に配置されている。
・・・
【0035】
例えば図4に示すように、背板6におけるサイドメンバー16の内面には、上下長手で板状の雄形嵌合部27が上下離れて3個形成されている。他方、サイドフレーム8の縦長溝20には、背板6の雄形嵌合部27を左右から挟む2枚のリブより成る雌形嵌合部28が3対形成されている。なお、サイドメンバー16に雌形嵌合部28を形成して、サイドフレーム8に雄形嵌合部27を形成してもよい。
【0036】
これら雌雄嵌合部27,28が嵌まり合うことにより、背板6はバックフレーム5に対して左右ずれ不能に保持されている。このため、ロッキングに際してサイドメンバー16がサイドフレーム8に対して内向きにずれ移動することはなく、また、サイドフレーム8とサイドメンバー16とが一体化したような状態になって、背もたれ4の全体の剛性が高くなっている。
【0037】
図4,5に示すように、背板6におけるサイドメンバー16の溝内には、側面視で下向き鉤形の第1係合爪30が上下に離反して2個形成されている一方、バックフレーム5のサイドフレーム8には、第1係合爪30と噛み合う上向き鉤形の第2係合爪31が上下に離反して2個形成されている。これら係合爪30,31は請求項に記載した係合手段の具体例であり、これらの噛み合いにより、背板6はバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持されている。
・・・
【0056】
(3).メッシュ式表皮材7の取付け構造
次に、参考としてメッシュ式表皮材7の取付構造を説明する。メッシュ式表皮材7はその外周に固定された縁部材(テープ)によって背板6に取付けられる。
【0057】
すなわち、図10,11に示すように、メッシュ式表皮材7には、サイドメンバー16のうち露出部16aの上方の部位に裏から重なる第1サイド縁部材53と、サイドメンバー16の下露出部16aに裏から重なる第2サイド縁部材54と、背板6の上部のコーナー部に裏から重なるコーナー縁部材55と、コーナー縁部材55の間においてアッパーメンバー17に裏から重なるアッパー縁部材56と、背板6のロアメンバー18に裏から重なるロア縁部材57とが逢着や接着によって固定されている。
【0058】
各縁部材はポリプロピレンのような樹脂シートを使用しているが、他の素材を使用することも可能である。コーナー縁部材55は第1サイド縁部材53に一体に連結することも可能である。また、サイド縁部材53,54とコーナー縁部材55とを一連のものを使用して、メッシュ式表皮材7に逢着してから切り込みを入れて独立化することも可能である。更に、縁部材は線材や紐材を使用したり、溝付き部材を使用するなど、様々の形態のも野を使用できる。
【0059】
第1サイド縁部材53にはサイドメンバー16のボス36に嵌まる第1取付け穴58が形成されており、図13に示すように、第1サイド縁部材53は外側からサイドメンバー16とサイドフレーム8との間に入り込んで、ボス36に嵌め込まれている。第1サイド縁部材53はサイドメンバー16に向いており、このため、外側からはメッシュ式表皮材7しか見えない。また、メッシュ式表皮材7にはアッパーフレーム9の外壁23が当接しており、このためサイドフレーム8の内部(縦長溝20)が見えることはない。このため美感に優れている。
【0060】
図10,11に示すように、第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成している。
・・・
【0066】
(4).クッション材の取付け構造
次に、クッション材及び袋体の取付け構造を説明する。背板6にはクッション材を張ることも可能である。この点を図14~図16で表示している。クッション材63は、クロス等からなる表裏シート64,65を有する袋体66に収納されている。袋体66は表皮材の一例である。背板6とクッション材63と袋体66とで背板ユニットが構成されている。
【0067】
図14から理解できるように袋体66は基本的には上向きに開口しており、バックフレーム5の頂点部14よりも上の部分では左右側部も切り開かれている。従って、袋体のうちバックフレーム5の頂点部14よりも上の部分で表裏シート64,65は独立部になっている。但し、「表裏シート64,65の独立部」は単に「表裏シート64,65」と称する。背板6の前面にクッション材63を張って、両者を袋体66ですっぽり覆っている。従って、裏シート65は背板6の裏側に位置しており、背板6は裏からは視認できない(透けて見えることは有り得るが。)。
【0068】
そして、表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を取付け、裏シート65のコーナー部にコーナー縁部材55を取付け、表裏シート64,65のエンド部(上端縁)にアッパー縁部材56取り付けている。上シート65にはコーナー縁部材55は取付けていないが、これに取り付けることも可能である。
【0069】
図16に示すように、表シート64に固定した第1サイド縁部材53はメッシュ式表皮材7の場合と同様の態様でボス36に嵌まっている。他方、裏シート65の第1サイド縁部材53は内側からサイドメンバー16に裏側に配置されてボス36に嵌まっている。従って、裏シート65の側部はサイドフレーム8と内壁22とサイドメンバー16の内リブ24とで挟まれている。(段落【0057】、【0058】の「逢着」は「縫着」の誤記と認める。)
・・・
【0071】
図16に示すように、クッション材63をサイドメンバー16の側縁まで回り込ませると、クッション材63の縁部がサイドフレーム8の外段部26に入り込み得る。このためクッション材63の縁部を美麗に処理できて美感をアップできる。」
また、図1、3、4、11、14、16は以下のとおりである。
[図:0001393065000001.jpg]
[図:0001393065000002.jpg]
[図:0001393065000003.jpg]
[図:0001393065000004.jpg]
[図:0001393065000005.jpg]
(2)認定事項
ア
段落【0019】の「バックフレーム5の前面に取り付けた背板6(インナーシェル)」との記載、段落【0035】の下線部の記載、図4及び図11から、背板6におけるサイドメンバー16の後面には、上下長手で板状の雄形嵌合部27が上下離れて3個形成され、サイドフレーム8の縦長溝20の前面には、背板6の雄形嵌合部27を左右から挟む2枚のリブより成る雌形嵌合部28が3対形成されることが特定できる。
イ
段落【0019】の「バックフレーム5の前面に取り付けた背板6(インナーシェル)」との記載、段落【0037】の下線部の記載、図4及び図11から、背板6におけるサイドメンバー16の溝内の後面には、側面視で下向き鉤形の第1係合爪30が上下に離反して2個形成されている一方、バックフレーム5のサイドフレーム8の前面には、第1係合爪30と噛み合う上向き鉤形の第2係合爪31が上下に離反して2個形成され、これら係合爪30,31の噛み合いにより、背板6はバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持されることが特定できる。
ウ
段落【0057】の下線部の記載、段落【0066】の「袋体66は表皮材の一例である。」との記載、段落【0067】の「図14から理解できるように袋体66は基本的には上向きに開口しており、バックフレーム5の頂点部14よりも上の部分では左右側部も切り開かれている。」との記載、段落【0068】の下線部の記載、図1及び14から、第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を縫着によって取付けることが特定できる。
エ
段落【0060】の下線部の記載、段落【0067】の「図14から理解できるように袋体66は基本的には上向きに開口しており、バックフレーム5の頂点部14よりも上の部分では左右側部も切り開かれている。」との記載、図1及び14から、図14で図示された第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成していること、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部は袋体66の左右側部の切り開かれた部位を貫通することが特定できる。
オ
段落【0056】の下線部の記載、段落【0066】の「袋体66は表皮材の一例である。」との記載及び段落【0069】の下線部の記載から、袋体66は第1サイド縁部材53によって背板6に取付けられることが特定できる。
(3)記載された発明
上記(1)、(2)より、甲7には、次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認められる。
[甲7発明]
「椅子が有している背もたれ4であって、
背もたれ4は、バックフレーム5と、バックフレーム5の前面に取り付けた背板6(インナーシェル)とを強度メンバーとしており、
バックフレーム5は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドフレーム8と、左右サイドフレーム8の上端に繋がった横長のアッパーフレーム9と、左右サイドフレーム8の下端に繋がった左右長手のロアフレーム10とを有しており、
背板6は、上下長手の左右のサイドメンバー16と、サイドメンバー16の上端間に一体に繋がったアッパーメンバー17と、左右サイドメンバー16の下端に一体に繋がったロアメンバー18とで略四角形の外形を構成し、
背板6におけるサイドメンバー16の後面には、上下長手で板状の雄形嵌合部27が上下離れて3個形成され、サイドフレーム8の縦長溝20の前面には、背板6の雄形嵌合部27を左右から挟む2枚のリブより成る雌形嵌合部28が3対形成され、
これら雌雄嵌合部27,28が嵌まり合うことにより、背板6はバックフレーム5に対して左右ずれ不能に保持され、
背板6におけるサイドメンバー16の溝内の後面には、側面視で下向き鉤形の第1係合爪30が上下に離反して2個形成されている一方、バックフレーム5のサイドフレーム8の前面には、第1係合爪30と噛み合う上向き鉤形の第2係合爪31が上下に離反して2個形成され、これら係合爪30,31の噛み合いにより、背板6はバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持され、
背板6の前面にクッション材63を張って、両者をクロスからなる表裏シート64,65を有する袋体66で覆い、裏シート65は背板6の裏側に位置しており、
第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を縫着によって取付け、
第1サイド縁部材53はポリプロピレンのような樹脂シートを使用し、
第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し、
サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部は、袋体66の左右側部の切り開かれた部位を貫通し、
袋体66は第1サイド縁部材53によって背板6に取付けられる、
背もたれ4。」
2-2 対比・判断
本件訂正を踏まえると、本件発明2は、訂正前の請求項2に係る発明を含む発明であり、本件発明3は、訂正前の請求項3に係る発明であり、本件発明5、6は、いずれも、少なくとも訂正前の請求項2、3に係る発明を含む発明であって、これら本件発明2、3、5、6についての理由は、甲7発明を主たる引用発明とした場合、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当するのであるが、甲7発明を主たる引用発明として、対比・判断を行う便宜上(実質的に本件発明1~6は、いずれも訂正前の請求項1に係る発明を含み、この部分が本件発明1~6のそれぞれの主要な構成となっており、この訂正前の請求項1に係る発明の部分について対比・判断を行う便宜上)、この項目において、本件発明1~6の全てについて甲7発明と対比・判断を行うこととする。
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲7発明とを対比する。
(ア)
甲7発明の「背もたれ4」は、本件発明1の「背もたれ」及び「背凭れ」のいずれにも相当する。
また、甲7発明の「バックフレーム5」及び「背板6」は、それぞれ、本件発明1の「背フレーム」及び「背インナーシェル」に相当する。
(イ)
甲7発明の「背もたれ4」が、「バックフレーム5」と「背板6」とを「強度メンバーとして」いることは、上記(ア)も踏まえると、本件発明1の「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され」ることに相当する。
(ウ)
甲7発明の「雄形嵌合部27」及び「第1係合爪30」は、本件発明1の「取付部」に相当する。
また、甲7発明の「雌形嵌合部28」及び「第2係合爪31」は、本件発明1の「被取付部」に相当する。
(エ)
甲7発明の「背板6におけるサイドメンバー16の後面には、上下長手で板状の雄形嵌合部27が上下離れて3個形成され、サイドフレーム8の縦長溝20の前面には、背板6の雄形嵌合部27を左右から挟む2枚のリブより成る雌形嵌合部28が3対形成され」、「背板6におけるサイドメンバー16の溝内の後面には、側面視で下向き鉤形の第1係合爪30が上下に離反して2個形成されている一方、バックフレーム5のサイドフレーム8の前面には、第1係合爪30と噛み合う上向き鉤形の第2係合爪31が上下に離反して2個形成され」ることは、上記(ア)及び(ウ)も踏まえると、本件発明1の「前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え」ることに相当する。
(オ)
甲7発明の「クロスからなる表裏シート64,65を有する袋体66」は、本件発明1の「張地」に相当する。
(カ)
甲7発明の「裏シート65は背板6の裏側に位置して」いることは、上記(ア)及び(オ)も踏まえると、本件発明1の「前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ」ることに相当する。
(キ)
甲7発明の「サイドメンバー16」等から「構成」される「背板6」は、「袋体66」で「覆」われているが、「袋体66」の「表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部」とに「縫着によって取付け」られた「第1サイド縁部材53」は、「サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し」ている。
甲7発明の「雌雄嵌合部27,28が嵌まり合うことにより、背板6はバックフレーム5に対して左右ずれ不能に保持され」との構成、「係合爪30,31の噛み合いにより、背板6はバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持され」との構成及び甲7の図16(A)から、上記「連結部」が、「雄形嵌合部27」と「雌形嵌合部28」との「連結部」、及び、「第1係合爪30」と「第2係合爪31」との「連結部」であることは明らかである。
そうすると、甲7発明の「雄形嵌合部27」及び「第1係合爪30」は「袋体66」から露出しているといえる。
(ク)
甲7発明の「第1サイド縁部材53」は、「袋体66」の「表シート64のサイド部」と「裏シート65のサイド部」とに「縫着によって取付け」られ、当該「第1サイド縁部材53」には、「サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し」ているから、「連結部」である「雄形嵌合部27」及び「第1係合爪30」の周辺の「袋体66」に「第1サイド縁部材53」が「縫着によって取付け」られているといえる。
そして、「袋体66」のうち「第1サイド縁部材53」が「取付け」られた部位は、「第1サイド縁部材53」により固定されているといえる。
(ケ)
甲7発明の上記(キ)、(ク)に記載した構成を有する「第1サイド縁部材53」は、上記(ア)、(ウ)及び(オ)も踏まえると、本件発明1の「前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材」に相当する。
(コ)
甲7発明の「袋体66」の「裏シート65」が「背板6の裏側に位置し」、「雌雄嵌合部27,28が嵌まり合うことにより、背板6はバックフレーム5に対して左右ずれ不能に保持され」、「係合爪30,31の噛み合いにより、背板6はバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持され」ることで「背板6」を「バックフレーム5の前面に取り付けた」ことは、上記(ア)、(ウ)及び(オ)も踏まえると本件発明1の「前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結」することに相当する。
(サ)
甲7発明の「サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部」は「袋体66の左右側部の切り開かれた部位」を「貫通」すること、甲7発明の当該「連結部」が、「雄形嵌合部27」と「雌形嵌合部28」との「連結部」、及び、「第1係合爪30」と「第2係合爪31」との「連結部」であることは明らかであること(上記(キ))から、甲7発明の「袋体66の左右側部の切り開かれた部位」は、上記(ウ)及び(オ)も踏まえると、本件発明1の「前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目」に相当する。
そうすると、甲7発明の「第1サイド縁部材53」が「ポリプロピレンのような樹脂シートを使用し」、「袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を縫着によって取付け」ることと、本件発明1の「前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定される」こととは、上記(ア)、(ウ)、(オ)及び(ケ)も踏まえると、「前記張地を固定する部材は合成樹脂部材であって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定される」ことにおいて共通している。
(シ)
甲7発明の「椅子が有している背もたれ4」は、上記(ア)も踏まえると、本件発明1の「椅子の背凭れ」に相当する。
以上から、本件発明1と甲7発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1-7>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は合成樹脂部材であって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定される
椅子の背凭れ。」
<相違点1-1-7>
「張地を固定する部材」について、本件発明1では、「前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有」し、「前記裂け目の縁の形を保つ」のに対して、甲7発明では、「第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を縫着によって取付け」、「サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し」ている点。
<相違点2-1-7>
「張地を固定する部材」が「合成樹脂部材」であることについて、本件発明1では「張地を固定する部材」が「合成樹脂プレート」であるのに対して、甲7発明では「第1サイド縁部材53」が「ポリプロピレンのような樹脂シートを使用」している点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
a
甲7発明において、左右の「第1サイド縁部材53」を一体として(具体的には、図14の左右の第1サイド縁部材53の第1取付け穴58が設けられている切れ目の部分などを一体として)、「切欠き59」を「孔」とし、裂け目の縁の形を保つと、「袋体66の左右側部の切り開かれた部位」(裂け目)の縁の形を自由にすることはできないから、図16(B)のように、左右の第1サイド縁部材53の第1取付け穴58を順に、サイドメンバー16の裏側に配置されているボス36に嵌めることはできにくくなり、また、段落【0071】に記載されている、「図16に示すように、クッション材63をサイドメンバー16の側縁まで回り込ませると、クッション材63の縁部がサイドフレーム8の外段部26に入り込み得る。このためクッション材63の縁部を美麗に処理できて美感をアップできる。」という作用効果も得られなくなってしまうから、当業者であっても、甲7発明の「第1サイド縁部材53」を一体とすることで、「切欠き59」を「孔」として構成し、「裂け目の縁の形を保つ」ようにはしようとしない。
b
したがって、甲7発明において、相違点1-1-7に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)小括
上記(ア)のとおりであるから、相違点2-1-7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲7発明とを対比する。
(ア)
上記(1)ア(ア)~(コ)及び(シ)において、「本件発明1」を「本件発明2」に読み替えたとおりのことがいえる。
(イ)
甲7発明では、「第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し」ているが、当該「切欠き59」が孔とはいえないことを踏まえると、甲7発明の「第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに」「縫着によって取付け」られた「第1サイド縁部材53」が「使用し」ている「ポリプロピレンのような樹脂シート」、すなわち、甲7発明の「第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに」「縫着によって取付け」られた「第1サイド縁部材53」を構成している「ポリプロピレンのような樹脂シート」と、本件発明2の「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレート」とは、上記(ア)も踏まえると、「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、合成樹脂部材」において共通している。
以上から、本件発明2と甲7発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2-7>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、合成樹脂部材である
椅子の背凭れ。
<相違点1-2-7>
「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、合成樹脂部材」について、本件発明2では、前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、「前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する」合成樹脂「プレート」であるのに対して、甲7発明では、「第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を縫着によって取付け、第1サイド縁部材53はポリプロピレンのような樹脂シートを使用し、第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し」ている点。
<相違点2-2-7>
本件発明2では、「前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている」のに対して、甲7発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)相違点1-2-7について
甲7発明において、「切欠き59」を「孔」とすると、「袋体66の左右側部の切り開かれた部位」(裂け目)の縁の形を自由にすることはできないから、図16(B)のように、左右の第1サイド縁部材53の第1取付け穴58を順に、サイドメンバー16の裏側に配置されているボス36に嵌めることはできにくくなり、また、段落【0071】に記載されている、「図16に示すように、クッション材63をサイドメンバー16の側縁まで回り込ませると、クッション材63の縁部がサイドフレーム8の外段部26に入り込み得る。このためクッション材63の縁部を美麗に処理できて美感をアップできる。」という作用効果も得られなくなってしまうから、当業者であっても、甲7発明の「第1サイド縁部材53」を構成している「ポリプロピレンのような樹脂シート」を一体とすることで、「切欠き59」を「孔」として構成しようとはしない。
したがって、甲7発明において、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートの構成とすること、すなわち、相違点1-2-7に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)相違点2-2-7について
相違点2-2-7に係る本件発明2の構成のうち、「前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている」構成は、甲7に記載も示唆もされていない。
したがって、甲7発明において、相違点2-2-7に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)小括
上記(ア)、(イ)のとおりであるから、本件発明2は、甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲7発明とを対比する。
上記(2)ア(ア)及び(イ)において、「本件発明2」を「本件発明3」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明3と甲7発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点3-7>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、合成樹脂部材である
椅子の背凭れ。」
<相違点1-3-7>
「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、合成樹脂部材」について、本件発明3では、前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、「前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する」合成樹脂「プレート」であるのに対して、甲7発明では、「第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を縫着によって取付け、第1サイド縁部材53はポリプロピレンのような樹脂シートを使用し、第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し」ている点。
<相違点2-3-7>
本件発明3では、「前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」のに対して、甲7発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)相違点1-3-7について
相違点1-3-7に係る本件発明3の構成は、相違点1-2-7に係る本件発明2の構成と同じであるから、上記(2)イ(ア)において、「本件発明2」を「本件発明3」に、「相違点1-2-7」を「相違点1-3-7」に、それぞれ読み替えたとおりのことがいえる。
したがって、甲7発明において、相違点1-3-7に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)相違点2-3-7について
相違点2-3-7に係る本件発明3の構成のうち、「前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」構成は、甲7に記載も示唆もされていない。
したがって、甲7発明において、相違点2-3-7に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)小括
上記(ア)、(イ)のとおりであるから、本件発明3は、甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明4について
本件発明4は、「請求項1に記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」であるところ、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項4の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(1)で説示したのと同じ理由により、本件発明4は、甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲7発明とを対比する。
上記(2)ア(ア)及び(イ)において、「本件発明2」を「本件発明5」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明5と甲7発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点5-7>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、合成樹脂部材である
椅子の背凭れ。」
<相違点1-5-7>
「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、合成樹脂部材」について、本件発明5では、前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、「前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する」合成樹脂「プレート」であるのに対して、甲7発明では、「第1サイド縁部材53は袋体66の左右側部の切り開かれた部位に配置され、当該切り開かれた部位の縁である表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を縫着によって取付け、第1サイド縁部材53はポリプロピレンのような樹脂シートを使用し、第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成し」ている点。
<相違点2-5-7>
本件発明5では、「前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている」のに対して、甲7発明では、そのように特定されていない点。
<相違点3-5-7>
本件発明5では、「前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」のに対して、甲7発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)相違点1-5-7について
相違点1-5-7に係る本件発明5の構成は、相違点1-2-7に係る本件発明2の構成と同じであるから、上記(2)イ(ア)において、「本件発明2」を「本件発明5」に、「相違点1-2-7」を「相違点1-5-7」に、それぞれ読み替えたとおりのことがいえる。
したがって、甲7発明において、相違点1-5-7に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)相違点2-5-7及び相違点3-5-7について
相違点2-5-7に係る本件発明5の構成は、相違点2-2-7に係る本件発明2の構成と同じであるから、上記(2)イ(イ)において、「本件発明2」を「本件発明5」に、「相違点2-2-7」を「相違点2-5-7」に、それぞれ読み替えたとおりのことがいえる。
また、相違点3-5に係る本件発明5の構成は、相違点2-3-7に係る本件発明3の構成と同じであるから、上記(3)イ(イ)において、「本件発明3」を「本件発明5」に、「相違点2-3-7」を「相違点3-5-7」に、それぞれ読み替えたとおりのことがいえる。
したがって、甲7発明において、相違点2-5-7に係る本件発明5の構成とすること、及び、相違点3-5-7に係る本件発明5の構成とすることは、いずれも当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)小括
上記(ア)、(イ)のとおりであるから、本件発明5は、甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件発明6について
本件発明6は、「請求項2、3または5のうちのいずれか一つに記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」であるところ、本件発明2、3または5のうちのいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに請求項6の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(2)、(3)及び(5)で説示したのと同じ理由により、本件発明6は、甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
便宜上、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由を、以下のように整理する。
[取消理由1]
(取消理由1-1、取消理由1-2、取消理由1-3、取消理由1-4)
(拡大先願)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた以下の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、以下の請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[取消理由2]
(取消理由2-1、取消理由2-2)
(新規性)本件特許の下記請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[取消理由3]
(取消理由3-1、取消理由3-2)
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
取消理由毎の請求項と甲号証の対応関係は、以下のとおりである。
<取消理由1>
・取消理由1-1
・請求項1~4
・甲第1号証
・取消理由1-2
・請求項1~4
・甲第2号証
・取消理由1-3
・請求項1~4
・甲第3号証
・取消理由1-4
・請求項1~4
・甲第4号証
<取消理由2>
・取消理由2-1
・請求項1~4
・甲第5号証
・取消理由2-2
・請求項1~4
・甲第6号証
<取消理由3>
・取消理由3-1
・請求項1~4
・甲第5号証
・取消理由3-2
・請求項1~4
・甲第6号証
<刊行物等一覧>
甲第1号証:特願2015-218402号
(特開2017-86309号)
甲第2号証:特願2015-193087号
(特開2017-64033号)
甲第3号証:特願2015-193088号
(特開2017-64034号)
甲第4号証:特願2015-218401号
(特開2017-86308号)
甲第5号証:特開2013-63176号公報
甲第6号証:特開2013-63178号公報
甲第1号証~甲第6号証は、申立人が提出した甲第1号証~甲第6号証である。以下、この順に、それぞれ「甲1」~「甲6」という。
2 当審の判断
2-1 甲号証
2-1-1 甲1の記載事項等
(1)記載事項
甲1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
「【0020】
(1).椅子の概略
まず、図1~3を参照して、椅子の概略を説明する。図1のとおり、椅子は、主要要素として、脚装置1、座2、背もたれ3を備えている。脚1は、ガスシリンダより成る脚支柱4と放射方向に延びる枝部5とを有しており、各枝部5の先端にはキャスタを設けている。脚支柱4の上端には、上向きに開口した略箱状のベース(図示せず)が固定されている。
・・・
【0026】
(2).背部の概要
例えば図1,4に示すように、背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と、着座者の体圧を受けるメッシュ状の可撓性シート48とを有している。
【0027】
図示は省略するが、可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材を縫着等で固定しており、縁部材は、シート保持枠46,47の裏面に装着(係止)されている。また、シート保持枠46,47は、上シート保持枠46と下シート保持枠47とに分割されているが、可撓性シート48は1枚である。上シート保持枠46と下シート保持枠47との上下高さの比率は、任意に設定できる。
・・・
【0034】
(3).ヘッドレスト
ヘッドレスト21は、既述のとおり、前後に開口した周枠体23を有しているが、更に、主要部材として、周枠体23に手前から重なる補助枠体(フロント部材)31を有しており、補助枠体31に、図8に示す積層式体圧支持材32と、図9に示す単層メッシュ材33とを選択的に取り付けることができる。周枠体23及び補助枠体31は、平面視で前向き凹状に緩く湾曲している。
【0035】
図6,7,9から理解できるように、周枠体23は前向きに開口した樋状の形態になっている。他方、補助枠体31は、基本的には板状であるが、上部と下部とには、リブで囲われた補強部34を形成している。他方、図8,9のとおり、積層式体圧支持材32及び単層メッシュ材33の縁部にはテープ状の縁部材35が縫着等で一体に取付けられている一方、図7に示すように、補助枠体31の裏面には、縁部材35を取り付けるためのフック36が飛び飛びで多数形成されている。図示していないが、縁部材35には、フック36に嵌まる穴が多数形成されている。
・・・
【0037】
従って、補助枠体31を周枠体23に押し付けると、第1係合爪37aと第2係合爪37bとが噛み合うと共に、第3係合爪38aが第3係合部38bに噛み合い、これにより、補助枠体31は、上下左右にずれ不能で前向きに離脱不能に保持される。更に、図8,9に示すように、補助枠体31の下部の左右中間部に後ろ向きのセンター突起39を設け、このセンター突起39がビス40で周枠体23の下部に締結されている。
・・・
【0040】
これら4つの層32a~32dは、その縁部が互いに重なった状態で、縁部材35に縫着等で固定されている。これら4つの層32a~32dは全体として圧縮変形するので、周枠体23と補助枠体31との間に挟み込むことができる。但し、メッシュ状基材32aと両表皮材32c、32dの三層を重ねて縁部材35に固定して、クッション層32bは縁部材35の内側に位置させるというように、複数層のうち少なくとも1つの層を縁部材35に固定することは可能である。また、単層メッシュ材33及び積層式体圧支持材32は、縁部材35の前面と裏面とのうちいずれに固定してもよい。
・・・
【0044】
以上の説明はヘッドレストに適用した場合であったが、本願発明は、背もたれやショルダーレストのような他の体圧支持装置にも適用できる。また、本願発明は、回転椅子には限らず、いわゆるパイプ椅子など、各種の椅子(ベンチも含む)に広く適用できる。」
また、図1、7、8,9は以下のとおりである。
[図:0001393065000006.jpg]
[図:0001393065000007.jpg]
(2)記載された発明
上記(1)の段落【0020】、【0026】、【0027】より、甲1には、次の発明(以下「甲1先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
[甲1先願発明]
「背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と、着座者の体圧を受ける可撓性シート48とを有し、
可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材を縫着等で固定しており、縁部材は、シート保持枠46,47の裏面に係止されている、
背もたれ3を備えている椅子。」
2-1-2 甲2の記載事項等
(1)記載事項
甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0029】
(1).第1実施形態の概略・座の下降機構
図1~16では、第1実施形態を示している。まず、図1~6を参照して、第1実施形態の概略と座の動きとを説明する。図1のとおり、椅子は、主要要素として、脚装置1、座2、背もたれ3を備えている。脚1は、ガスシリンダより成る脚支柱4と放射方向に延びる枝部5とを有しており、各枝部5の先端にはキャスタを設けている。図4に示すように、脚支柱4の上端には、上向きに開口した略箱状のベース6が固定されている。
・・・
【0051】
(4).背部の概要
次に、本願発明の核心である背部を、図9以下の図面も参照して説明する。例えば図9に示すように、背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と、着座者の体圧を受ける可撓性シート48とを有している。可撓性シート48は、編地や織地のようなメッシュ状生地であり、横方向に強い弾性力が発揮されるように、強弾性糸を編み込んで(或いは織り込んで)いる。例えば図9や図11から判るように、上下のシート保持枠46,47の突き合わせ面は、水平面に対して傾斜している。正確には、両者の突き合わせ面は、正面視において、左右外側が低くて内側が高くなるように傾斜している。
【0052】
図9に部分的に示すように、可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材49を縫着等で固定しており、縁部材49は、シート保持枠46,47の裏面に装着(係止)されている。可撓性シート48は、シート保持枠46,47の前から裏側に巻き込まれているので、シート保持枠46,47は可撓性シート48によって全体が隠れているが、透けて見えることは有り得る。
・・・
【0077】
図15では、サイドメンバー52とサイドフレーム50との装着関係を表示している。縁部材49は、シート保持枠46,47に設けたボス80に掛け止めしている。そこで、縁部材49には、ボス80が嵌まる穴81を飛び飛びで空けている。ボス80は、カール部53bの外周縁の前面にも突設している。縁部材49には、鉤爪68,71,73と位置決め突起67,72との干渉を回避するための切り抜き穴が、飛び飛びで多数形成されている。」
また、図1、2、15は以下のとおりである。
[図:0001393065000008.jpg]
[図:0001393065000009.jpg]
(2)記載された発明
上記(1)の段落【0029】、【0051】、【0052】より、甲2には、次の発明(以下「甲2先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
[甲2先願発明]
「背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と、着座者の体圧を受ける可撓性シート48とを有し
可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材49を縫着等で固定しており、縁部材49は、シート保持枠46,47の裏面に係止されている
背もたれ3を備えている椅子。」
後述の「2-1-3(1)」の段落【0020】、【0042】、【0043】、及び、後述の「2-1-4(1)」の段落【0025】、【0030】、【0031】を参照すると、甲3及び甲4のそれぞれにも、甲2先願発明と同じ発明が記載されていると認められる。
以下、甲2先願発明、甲3、甲4にそれぞれ記載された発明を、いずれも「甲2~4先願発明」という。
2-1-3 甲3の記載事項等
(1)記載事項
甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0020】
(1).椅子の概略・座の下降機構
まず、図1~6を参照して、椅子の概略と座の動きとを説明する。図1のとおり、椅子は、主要要素として、脚装置1、座2、背もたれ3を備えている。脚1は、ガスシリンダより成る脚支柱4と放射方向に延びる枝部5とを有しており、各枝部5の先端にはキャスタを設けている。図4に示すように、脚支柱4の上端には、上向きに開口した略箱状のベース6が固定されている。
・・・
【0042】
(4).背部の概要
次に、本願発明の核心である背部を、図9以下の図面も参照して説明する。例えば図9に示すように、背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と、着座者の体圧を受ける可撓性シート48とを有している。可撓性シート48は、編地や織地のようなメッシュ状生地であり、横方向に強い弾性力が発揮されるように、強弾性糸を編み込んで(或いは織り込んで)いる。例えば図9や図11から判るように、上下のシート保持枠46,47の突き合わせ面は、水平面に対して傾斜している。正確には、両者の突き合わせ面は、正面視において、左右外側が低くて内側が高くなるように傾斜している。
【0043】
図9に部分的に示すように、可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材49を縫着等で固定しており、縁部材49は、シート保持枠46,47の裏面に装着(係止)されている。可撓性シート48は、シート保持枠46,47の前から裏側に巻き込まれているので、シート保持枠46,47は可撓性シート48によって全体が隠れているが、透けて見えることは有り得る。
・・・
【0071】
図15では、サイドメンバー52とサイドフレーム50との装着関係を表示している。縁部材49は、シート保持枠46,47に設けたボス80に掛け止めしている。そこで、縁部材49には、ボス80が嵌まる穴81を飛び飛びで空けている。ボス80は、カール部53bの外周縁の前面にも突設している。縁部材49には、鉤爪68,71,73と位置決め突起67,72との干渉を回避するための切り抜き穴が、飛び飛びで多数形成されている。」
2-1-4 甲4の記載事項等
(1)記載事項
甲4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0025】
(1).椅子の概略
まず、図1,2を参照して、椅子の概略を説明する。図1のとおり、椅子は、主要要素として、脚装置1、座2、背もたれ3を備えている。脚1は、ガスシリンダより成る脚支柱4と放射方向に延びる枝部5とを有しており、各枝部5の先端にはキャスタを設けている。脚支柱4の上端には、上向きに開口した略箱状のベース(図示せず)が固定されている。
・・・
【0030】
(2).メッシュタイプの背部の概要
次に、図3以下も参照して背もたれ3を説明する。例えば図1に示すように、背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と、着座者の体圧を受ける可撓性シート48とを有している。可撓性シート48は、編地や織地のようなメッシュ状生地であり、横方向に強い弾性力が発揮されるように、強弾性糸を編み込んで(或いは織り込んで)いる。例えば図3から判るように、上下のシート保持枠46,47の突き合わせ面は、水平面に対して傾斜している。正確には、両者の突き合わせ面は、正面視において、左右外側が低くて内側が高くなるように傾斜している。
【0031】
図7に部分的に示すように、可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材49を縫着等で固定しており、縁部材49は、シート保持枠46,47の裏面に装着(係止)されている。可撓性シート48は、シート保持枠46,47の前から裏側に巻き込まれているので、シート保持枠46,47は可撓性シート48によって全体が隠れているが、透けて見えることは有り得る。
・・・
【0056】
図7では、サイドメンバー52とサイドフレーム50との装着関係を表示している。縁部材49は、シート保持枠46,47に設けたボス80に掛け止めしている。そこで、縁部材49には、ボス80が嵌まる穴81を飛び飛びで空けている。ボス80は、カール部53bの外周縁の前面にも突設している。縁部材49には、鉤爪68,71,73と位置決め突起67,72との干渉を回避するための切り抜き穴が、飛び飛びで多数形成されている。」
2-1-5 甲5の記載事項等
(1)記載事項
甲5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0021】
(1).椅子の概要
まず、図1~図6に基づいて椅子の概要を説明する。本実施形態は回転椅子に適用しており、椅子は、図1に示すように、座1と背もたれ2とが一体に連続した身体受け部3と、脚支柱4を有する脚装置5と、脚支柱4の上端に取り付けたベース6と、ベース6に後傾動自在に連結した背フレーム7とを有している。脚装置5は放射方向に延びる枝足を有しており、各枝足の先端にはキャスタを設けている。ベース6と背フレーム7とはアルミダイキャスト品又は樹脂成形品である。
【0022】
図2,3から理解できるように、身体受け部3はシェル板とこれに一体成形したクッションとを有している。シェル板は、座1を構成する座シェル板8と、座シェル板8の後部に一体に繋がった下部背シェル板9と、下部背シェル板9とは別体の上部背シェル板10とを有しており、上部背シェル板10の下端部が下部背シェル板9の上端部に連結されている。従って、上下の背シェル板9,10によって背もたれ2のシェル板が構成されている。シェル板8,9,10は樹脂の成形品である。
・・・
【0031】
背フレーム7における基部22の左右両端部には、やや後ろ向きに後退してから上向きに立ち上がった背支柱27が一体に形成されており、背支柱27の上端部に前向き突設したボス部28に上部背シェル板10がねじ(ビス)29で締結されている。
・・・
【0063】
図14~16に示すように、上部背シェル板10には、背支柱27のボス部28が嵌まる受け座79が形成されている。また、背支柱27のうちボス部28の箇所の背面には、ねじ27の頭が入り込む座ぐり穴80が形成されている。そして、座ぐり穴80及びねじ27の頭は肘カバー34の後ろ壁34aで覆われている。このため、美観の悪化を防止できる。
・・・
【0066】
表皮材13の大まかな展開図を図13(C)で示している。表皮材13は、座1の部分を構成する平シート部13aと、背もたれ2の部分を構成する袋状部13bとが一体に連続している。平シート部13aの前端縁と左右両端縁と袋状部13bの下端縁とにはそれぞれ樹脂シート製の細長い縁部材86が縫着等によって固定されている。縁部材86には飛び飛びで複数個の穴87が空いている一方、座シェル板8の下面には、縁部材86の穴87が入り込む鉤状の係合爪88を突設している。
・・・
【0069】
図16(B)に示すように、表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設けている。このため、表皮材13は正確に位置決めされている。なお、図16(A)ではリング状樹脂板83は表示していないが、実際には、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している。
・・・
【0075】
クッション11,12はシェル板8,9,10にインサート成形されるので、補強板31は予め上部背シェル板10に装着している。この場合は、補強板31は、上部背シェル板10に設けた突起と補強板31に設けた穴との嵌め合わせにより、正確に位置決めされている。また、図16(B)を参照して説明したように、表皮材13には上部背シェル板10の受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を一体に設けているため、表皮材13の後部は上部背シェル板10に正確に位置決めされる。」
また、図1、2、16は以下のとおりである。
[図:0001393065000010.jpg]
[図:0001393065000011.jpg]
(2)記載された発明
甲5の段落【0021】、【0022】、【0031】、【0066】及び図1~図3、図16の記載から、背もたれ2構造が、背支柱27が形成された背フレーム7と、上部背シェル板10とを有し、上部背シェル板10の後側が表皮材13で覆われた椅子の背もたれ2構造が認定できる。
このことと、上記(1)の段落【0063】、【0069】より、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。
[甲5発明]
「背もたれ2構造が、背支柱27が形成された背フレーム7と、上部背シェル板10とを有し、
上部背シェル板10には、背支柱27のボス部28が嵌まる受け座79が形成され、
上部背シェル板10の後側が表皮材13で覆われ、
表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、
受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している
椅子の背もたれ2構造。」
後述の「2-1-6(1)」の段落【0022】、【0023】、【0031】、【0044】、【0047】、【0050】及び図1~図3、図11の記載を参照すると、甲6にも、甲5発明と同じ発明が記載されていると認められる。
以下、甲5発明、甲6に記載された発明を、いずれも「甲5~6発明」という。
2-1-6 甲6の記載事項等
(1)記載事項
甲6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0022】
(1).椅子の概要
まず、図1~図6に基づいて椅子の概要を説明する。本実施形態は回転椅子に適用しており、椅子は、図1に示すように、座1と背もたれ2とが一体に連続した身体受け部3と、脚支柱4を有する脚装置5と、脚支柱4の上端に取り付けたベース6と、ベース6に後傾動自在に連結した背フレーム7とを有している。脚装置5は放射方向に延びる枝足を有しており、各枝足の先端にはキャスタを設けている。ベース6と背フレーム7とはアルミダイキャスト品又は樹脂成形品である。
【0023】
図2,3から理解できるように、身体受け部3はシェル板とこれに一体成形したクッションとを有している。シェル板は、座1を構成する座シェル板8と、座シェル板8の後部に一体に繋がった下部背シェル板9と、下部背シェル板9とは別体の上部背シェル板10とを有しており、上部背シェル板10の下端部が下部背シェル板9の上端部に連結されている。従って、上下の背シェル板9,10によって背もたれ2のシェル板が構成されている。シェル板8,9,10は樹脂の成形品であり、その裏面には縦横に延びる多数のリブが形成されている。なお、本実施形態では、上部背シェル板10で背もたれ2の大部分(70~80%程度)が構成されている。
・・・
【0031】
背フレーム7における基部22の左右両端部には、やや後ろ向きに後退してから上向きに立ち上がった背支柱27が一体に形成されており、背支柱27の上端部に前向き突設したボス部28に上部背シェル板10がねじ(ビス)29で締結されている。
・・・
【0044】
図9~11に示すように、上部背シェル板10には、背支柱27のボス部28が嵌まる受け座79が形成されている。また、背支柱27のうちボス部28の箇所の背面には、ねじ29の頭が入り込む座ぐり穴80が形成されている。そして、座ぐり穴80及びねじ29の頭は肘カバー34の後ろ壁34aで覆われている。このため、美観の悪化を防止できる。
・・・
【0047】
表皮材13の大まかな展開図を図13(B)で示している。表皮材13は、座1の部分を構成する平シート部13aと、背もたれ2の部分を構成する袋状部13bとが一体に連続している。平シート部13aの前端縁と左右両端縁と袋状部13bの下端縁とにはそれぞれ樹脂シート製の細長い縁部材86が縫着等によって固定されている。縁部材86には飛び飛びで複数個の穴87が空いている一方、座シェル板8の下面には、縁部材86の穴87が入り込む鉤状の係合爪88を突設している。
・・・
【0050】
図11(B)に示すように、表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設けている。このため、表皮材13は正確に位置決めされている。なお、図11(A)ではリング状樹脂板83は表示していないが、実際には、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している。
・・・
【0053】
クッション11,12はシェル板8,9,10にインサート成形されるので、補強板31は予め上部背シェル板10に装着している。この場合、補強板31は、上部背シェル板10に設けた突起と補強板31に設けた穴との嵌め合わせにより、正確に位置決めされている。また、図11(B)を参照して説明したように、表皮材13には上部背シェル板10の受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を一体に設けているため、表皮材13の後部は上部背シェル板10に正確に位置決めされる。上部背シェル板10と下部背シェル板9とを凹凸を持って重ね合わせると、上下背シェル板10,9は高さを変えた位置で連結されるため、連結強度を向上できる利点がある。」
2-2 特許法第29条の2
(取消理由1:取消理由1-1、1-2、1-3、1-4)
2-2-1 取消理由1-1
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1先願発明とを対比する。
(ア)
甲1先願発明の「背もたれ3」、「前後に開口した背枠41」及び「背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47」は、それぞれ、本件発明1の「背もたれ」、「背フレーム」及び「背インナーシェル」に相当する。
このことから、甲1先願発明の「背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と」「を有し」ていることは、本件発明1の「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成されている」ことに相当する。
(イ)
甲1先願発明の「背もたれ3を備えている椅子」の「背もたれ3」は、本件発明1の「椅子の背凭れ」に相当する。
以上から、本件発明1と甲1先願発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1-1>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成されている
椅子の背凭れ。」
<相違点1-1>
本件発明1では、
「前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ」のに対して、
甲1先願発明では、
「背もたれ3は、前後に開口した背枠41と、背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47と、着座者の体圧を受ける可撓性シート48とを有し、
可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材を縫着等で固定しており、縁部材は、シート保持枠46,47の裏面に係止されている」点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)
甲1の段落【0044】には、「以上の説明はヘッドレストに適用した場合であったが、本願発明は、背もたれ・・・にも適用できる」と記載されているが、この記載だけでは、具体的に、ヘッドレストのどの構成を背もたれのどの部分に適用してよいのか定かではないから、甲1先願発明は、上記2-1 2-1-1(2)で認定したとおりである。
(イ)
ここで、仮に、この段落【0044】の記載と、段落【0035】、【0037】、【0040】の記載及び図1~9(特に、段落【0035】、図7,図9)の記載を総合することで、甲1先願発明の「背枠41の前面に重なった上下のシート保持枠46,47」に、「縁部材35を取り付けるためのフック36」を設けることが想定でき、相違点1-1に係る本件発明1の「前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し」ている構成などが示唆されているといえたとしても、本件発明1では、「合成樹脂プレート」であるのに対して、甲1先願発明では、「樹脂テープ等からなる帯状の縁部材」である点で相違する。
(ウ)
また、甲1において、「樹脂テープ等からなる帯状の縁部材」が、「センター突起39」(本件発明1の「取付部あるいは被取付部」に対応。)を貫通させる孔を備え、その孔に対応して「4つの層32a~32d」(本件発明1の「張地」に対応。)に孔が設けられていることが見てとれたとしても、この孔は裂け目とはいえない。
そして、仮に、この孔を裂け目としてみたとしても、甲1の段落【0027】には「可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材を縫着等で固定しており」と記載され、段落【0035】には「可撓性シート48の周囲には、樹脂テープ等からなる帯状の縁部材を縫着等で固定しており」と記載され、段落【0040】には「これら4つの層32a~32dは、その縁部が互いに重なった状態で、縁部材35に縫着等で固定されている」と記載されていることから、「樹脂テープ等からなる帯状の縁部材」が、孔や裂け目の縁に縫い付けられているという事項を特定することはできない。
(エ)
したがって、相違点1-1について、本件発明1では、「前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ」構成を備えているのに対して、甲1先願発明では、そのような構成を備えていない点で明らかに相違する。
(オ)
以上から、相違点1-1は、実質的な相違点である。
そして、相違点1-1に係る本件発明1の構成により、本件発明1は、「背凭れの組み立て作業の容易性を確保しつつ張地の強度を十分に確保することができ、椅子の背凭れに纏わる構造としての有用性及び汎用性の向上を図ることが可能になる。」(本件明細書の段落【0014】)という格別に顕著な作用効果を奏するから、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、単なる周知技術の付加や設計上の微差ではない。
したがって、本件発明1は、甲1先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1先願発明とを対比すると、上記(1)アにおいて、「本件発明1」を「本件発明2」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明2と甲1先願発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2-1>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成されている
椅子の背凭れ。」
<相違点2-1>
本件発明2では、
「前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている」のに対して、
甲1先願発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
(ア)
上記(1)イ(ア)~(ウ)において、「本件発明1」及び「相違点1-1」を、それぞれ、「本件発明2」及び「相違点2-1」に読み替えたとおりのことがいえる。
(イ)
そして、相違点2-1について、本件発明2では、「前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている」構成を備えているのに対して、甲1先願発明では、凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されていることはなく、当該構成を備えていない点で明らかに相違する。
(ウ)
以上から、相違点2-1は、実質的な相違点である。
そして、相違点2-1に係る本件発明2の構成により、本件発明2は格別に顕著な作用効果を奏するから(上記(1)イ(オ)参照)、相違点2-1に係る本件発明2の構成は、単なる周知技術の付加や設計上の微差ではない。
したがって、本件発明2は、甲1先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1先願発明とを対比すると、上記(1)アにおいて、「本件発明1」を「本件発明3」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明3と甲1先願発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点3-1>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成されている
椅子の背凭れ。」
<相違点3-1>
本件発明3では、
「前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」のに対して、
甲1先願発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
(ア)
上記(1)イ(ア)~(ウ)において、「本件発明1」及び「相違点1-1」を、それぞれ、「本件発明3」及び「相違点3-1」に読み替えたとおりのことがいえる。
(イ)
そして、相違点3-1について、本件発明3では、「前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」構成を備えているのに対して、甲1先願発明では、そのような構成を備えていない点で明らかに相違する。
(ウ)
以上から、相違点3-1は、実質的な相違点である。
そして、相違点3-1に係る本件発明3の構成により、本件発明3は格別に顕著な作用効果を奏するから(上記(1)イ(オ)参照)、相違点3-1に係る本件発明3の構成は、単なる周知技術の付加や設計上の微差ではない。
したがって、本件発明3は、甲1先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
(4)本件発明4について
本件発明4は、「請求項1に記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」であるところ、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項4の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(1)で説示したのと同じ理由により、本件発明4は、甲1先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
(5)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1先願発明とを対比すると、上記(1)アにおいて、「本件発明1」を「本件発明5」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明5と甲1先願発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点5-1>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成されている
椅子の背凭れ。」
<相違点5-1>
本件発明5では、
「前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結し、
前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、
前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されており、
前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」のに対して、
甲1先願発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
(ア)
上記(1)イ(ア)~(ウ)において、「本件発明1」及び「相違点1-1」を、それぞれ、「本件発明5」及び「相違点5-1」に読み替えたとおりのことがいえる。
(イ)
そして、相違点5-1について、本件発明5では、「前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている」構成を備えているのに対して、甲1先願発明では、凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されていることはなく、そのような構成を備えていない点で明らかに相違する。
さらに、相違点5-1について、本件発明5では、「前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」構成を備えているのに対して、甲1先願発明では、そのような構成を備えていない点で明らかに相違する。
(ウ)
以上から、相違点5-1は、実質的な相違点である。
そして、相違点5-1に係る本件発明5の構成により、本件発明5は格別に顕著な作用効果を奏するから(上記(1)イ(オ)参照)、相違点5-1に係る本件発明5の構成は、単なる周知技術の付加や設計上の微差ではない。
したがって、本件発明5は、甲1先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
(6)本件発明6について
本件発明6は、「請求項2、3または5のうちのいずれか一つに記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」であるところ、本件発明2、3または5のうちのいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに請求項6の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(2)、(3)及び(5)で説示したのと同じ理由により、本件発明6は、甲1先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
2-2-2 取消理由1-2、取消理由1-3、取消理由1-4
甲2~4先願発明は、甲1先願発明と同じ発明である。
そうすると、本件発明1~6と甲2~4先願発明とを対比すると、各一致点及び各相違点は、上記2-2-1(1)~(6)の各アで、「甲1先願発明」を「甲2~4先願発明」に読み替えたとおりである。
また、判断について、上記2-2-1(1)イ(ア)~(ウ)の説示はあてはまらないが、それ以外の判断の説示については、上記2-2-1(1)~(6)の各イで、「甲1先願発明」を「甲2~4先願発明」に読み替えたとおりである。
そして、上記2-2-1(1)イ(ア)~(ウ)のかわりに、以下の事項がいえる
甲2(段落【0077】)、甲3(段落【0071】)、甲4(段落【0056】)では、いずれも、「縁部材49は、シート保持枠46,47に設けたボス80に掛け止めしている」が、甲2の図15(C)、甲3の図15(C)、甲4の図7(C)を見ると、当該ボス80は可撓性シート48の横に位置し、当該ボス80(本件発明1の「取付部あるいは被取付部」に対応。)は可撓性シート48(本件発明1の「張地」に対応。)を貫通していないから、甲2~4先願発明が、本件発明1が備えている「前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ」という構成を備えていないことは、明らかである。
したがって、本件発明1~6は、甲2~4先願発明と実質的に同一の発明であるとはいえない。
2-3 特許法第29条第1項第3号
(取消理由2:取消理由2-1、取消理由2-2)、及び、
特許法第29条第2項
(取消理由3:取消理由3-1、取消理由3-2)
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5~6発明とを対比する。
(ア)
甲5~6発明の「背もたれ2構造」、「背支柱27が形成された背フレーム7」及び「上部背シェル板10」は、それぞれ、本件発明1の「背もたれ」、「背フレーム」及び「背インナーシェル」に相当する。
このことを踏まえると、甲5~6発明の「背もたれ2構造が、背支柱27が形成された背フレーム7と、上部背シェル板10とを有し」ていることは、本件発明1の「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され」ることに相当する。
(イ)
甲5~6発明の「受け座79」は、「上部背シェル板10」の後面に備えられていることが明らかであり、本件発明1の「取付部」又は「被取付部」に相当するし、甲5~6発明の「ボス部28」は、「背支柱27」の前面に備えられていることが明らかであり、本件発明1の「取付部」又は「被取付部」に相当する。
このことと上記(ア)を踏まえると、甲5~6発明の「上部背シェル板10には、背支柱27のボス部28が嵌まる受け座79が形成され」ている構成は、本件発明1の「前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え」る構成に相当する。
(ウ)
甲5~6発明の「上部背シェル板10の後側が表皮材13で覆われ」ることは、本件発明1の「背インナーシェルの後面が張地に覆われ」ることに相当する。
(エ)
甲5~6発明の「表皮材13に」「縫着等で一体に設け」た「受け座79に嵌まるリング状樹脂板83」は、本件発明1の「張地を固定する部材」に相当する。
このことを踏まえると、甲5~6発明の「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」構成と、本件発明1の「前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の前記張地を固定する部材を有」する構成とは、「張地を固定する部材を有」する構成において共通している。
(オ)
上記(ア)、(イ)を踏まえると、甲5~6発明の「上部背シェル板10には、背支柱27のボス部28が嵌まる受け座79が形成され」「受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」構成は、本件発明1の「張地を介在させて取付部と被取付部とを連結して背フレームと背インナーシェルとを連結する」構成に相当する。
(カ)
甲5~6発明の「椅子の背もたれ2構造」は、本件発明1の「椅子の背凭れ」に相当する。
以上から、本件発明1と甲5~6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1-5>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結する
椅子の背凭れ。」
<相違点1-1-5>
「前記張地を固定する部材」について、本件発明1では、「前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の」前記張地を固定する部材であるのに対して、甲5~6発明では、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」点。
<相違点2-1-5>
本件発明1では、「前記張地を固定する部材は前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであって、前記取付部あるいは前記被取付部を前記張地に対して貫通させるために前記張地に設けられた裂け目に配置され、前記裂け目の縁に縫い付けられて前記張地に固定されて前記裂け目の縁の形を保つ」のに対して、甲5~6発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)相違点1-1-5について
甲5~6発明において、上部背シェル板10の受け座79(背インナーシェルの取付部あるいは被取付部)を表皮材13(張地)から露出さるためには、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」という構造を変える必要があるが、当該構造を変えてしまうと、「表皮材13には上部背シェル板10の受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を一体に設けているため、表皮材13の後部は上部背シェル板10に正確に位置決めされる」(甲5の段落【0075】及び甲6の段落【0053】)という作用効果が得られなくなってしまい、そのようにしてまで当該構造を変えようとする動機付けはない。
そうすると、相違点1-1-5に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)相違点2-1-5について
相違点2-1-5に係る本件発明1の構成は、甲5及び甲6に記載も示唆もされていない。
また、当該構成を想到しようとする動付けもない。
そうすると、甲5~6発明に基いて、相違点2-1-5に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)作用効果について
そして、本件発明1が奏する作用効果(上記2-2 2-2-1(1)イ(オ)参照)は格別に顕著なものである。
(エ)小括
したがって、本件発明1は、甲5~6発明であるとはいえず、また、甲5~6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲5~6発明とを対比すると、上記(1)アにおいて、「本件発明1」を「本件発明2」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明2と甲5~6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2-5>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結する
椅子の背凭れ。」
<相違点1-2-5>
「前記張地を固定する部材」について、本件発明2では、「前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の」前記張地を固定する部材であるのに対して、甲5~6発明では、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」点。
<相違点2-2-5>
本件発明2では、「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されている」のに対して、甲5~6発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)相違点1-2-5について
甲5~6発明において、上部背シェル板10の受け座79(背インナーシェルの取付部あるいは被取付部)を表皮材13(張地)から露出さるためには、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」という構造を変える必要があるが、当該構造を変えてしまうと、「表皮材13には上部背シェル板10の受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を一体に設けているため、表皮材13の後部は上部背シェル板10に正確に位置決めされる」(甲5の段落【0075】及び甲6の段落【0053】)という作用効果が得られなくなってしまい、そのようにしてまで当該構造を変えようとする動機付けはない。
そうすると、甲5~6発明に基いて、相違点1-2-5に係る本件発明2の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)相違点2-2-5について
相違点2-2-5に係る本件発明2の構成は、甲5及び甲6に記載も示唆もされていない。
また、当該構成を想到しようとする動付けもない。
そうすると、甲5~6発明に基いて、相違点2-2-5に係る本件発明2の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)作用効果について
そして、本件発明2が奏する作用効果(上記2-2 2-2-1(1)イ(オ)参照)は格別に顕著なものである。
(エ)小括
したがって、本件発明2は、甲5~6発明であるとはいえず、また、甲5~6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲5~6発明とを対比すると、上記(1)アにおいて、「本件発明1」を「本件発明3」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明3と甲5~6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点3-5>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結する
椅子の背凭れ。」
<相違点1-3-5>
「前記張地を固定する部材」について、本件発明3では、「前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の」前記張地を固定する部材であるのに対して、甲5~6発明では、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」点。
<相違点2-3-5>
本件発明3では、「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」のに対して、甲5~6発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)相違点1-3-5について
甲5~6発明において、上部背シェル板10の受け座79(背インナーシェルの取付部あるいは被取付部)を表皮材13(張地)から露出さるためには、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」という構造を変える必要があるが、当該構造を変えてしまうと、「表皮材13には上部背シェル板10の受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を一体に設けているため、表皮材13の後部は上部背シェル板10に正確に位置決めされる」(甲5の段落【0075】及び甲6の段落【0053】)という作用効果が得られなくなってしまい、そのようにしてまで当該構造を変えようとする動機付けはない。
そうすると、甲5~6発明に基いて、相違点1-3-5に係る本件発明3の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)相違点2-3-5について
相違点2-3-5に係る本件発明3の構成は、甲5及び甲6に記載も示唆もされていない。
また、当該構成を想到しようとする動付けもない。
そうすると、甲5~6発明に基いて、相違点2-3-5に係る本件発明3の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)作用効果について
そして、本件発明3が奏する作用効果(上記2-2 2-2-1(1)イ(オ)参照)は格別に顕著なものである。
(エ)小括
したがって、本件発明3は、甲5~6発明であるとはいえず、また、甲5~6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明4について
本件発明4は、「請求項1に記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」であるところ、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項4の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(1)で説示したのと同じ理由により、本件発明4は、甲5~6発明であるとはいえず、また、甲5~6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲5~6発明とを対比すると、上記(1)アにおいて、「本件発明1」を「本件発明5」に読み替えたとおりのことがいえる。
以上から、本件発明5と甲5~6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点5-5>
「背もたれが背フレームと背インナーシェルとで構成され、
前記背インナーシェルの後面と前記背フレームの前面のいずれか一方に取付部を他方に被取付部を備え、
前記背インナーシェルの後面が張地に覆われ、前記張地を固定する部材を有し、
前記張地を介在させて前記取付部と前記被取付部とを連結して前記背フレームと前記背インナーシェルとを連結する
椅子の背凭れ。」
<相違点1-5-5>
「前記張地を固定する部材」について、本件発明5では、「前記背インナーシェルの前記取付部あるいは被取付部を前記張地から露出させ前記取付部あるいは被取付部の周辺の」前記張地を固定する部材であるのに対して、甲5~6発明では、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」点。
<相違点2-5-5>
本件発明5では、「前記張地を固定する部材は前記張地に縫い付けられている、前記取付部あるいは前記被取付部を貫通させる孔を有する合成樹脂プレートであり、前記背インナーシェルの後面から前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか一方を構成する凸部が突出し、前記背フレームの前面には前記取付部あるいは前記被取付部のいずれか他方を構成する凹部があり、前記凹凸部が嵌合した後にねじにより前記凹凸部が締結されており、前記張地は前記背インナーシェルを包んで覆う袋状に縫製された張地であって、前記張地を固定する部材が表側張地と裏側張地の縫合箇所に設けられている」のに対して、甲5~6発明では、そのように特定されていない点。
イ 判断
相違点について以下検討する。
(ア)相違点1-5-5について
甲5~6発明において、上部背シェル板10の受け座79(背インナーシェルの取付部あるいは被取付部)を表皮材13(張地)から露出さるためには、「表皮材13には、受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を縫着等で一体に設け、受け座79とボス部28との間にリング状樹脂板83及び表皮材13が介在している」という構造を変える必要があるが、当該構造を変えてしまうと、「表皮材13には上部背シェル板10の受け座79に嵌まるリング状樹脂板83を一体に設けているため、表皮材13の後部は上部背シェル板10に正確に位置決めされる」(甲5の段落【0075】及び甲6の段落【0053】)という作用効果が得られなくなってしまい、そのようにしてまで当該構造を変えようとする動機付けはない。
そうすると、甲5~6発明に基いて、相違点1-5-5に係る本件発明5の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(イ)相違点2-5-5について
相違点2-5-5に係る本件発明5の構成は、甲5及び甲6に記載も示唆もされていない。
また、当該構成を想到しようとする動付けもない。
そうすると、甲5~6発明に基いて、相違点2-5-5に係る本件発明5の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(ウ)作用効果について
そして、本件発明2が奏する作用効果(上記2-2 2-2-1(1)イ(オ)参照)は格別に顕著なものである。」
(エ)小括
したがって、本件発明5は、甲5~6発明であるとはいえず、また、甲5~6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)本件発明6について
本件発明6は、「請求項2、3または5のうちのいずれか一つに記載の背凭れを備えることを特徴とする椅子。」であるところ、本件発明2、3または5のうちのいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに請求項6の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記(2)、(3)及び(5)で説示したのと同じ理由により、本件発明6は、甲5~6発明であるとはいえず、また、甲5~6発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700829