特許異議申立
2025-700406
巻鉄心
- 審判番号
- 2025-700406
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-529051
- 登録番号
- 7572658
- 請求日
- 2025年04月10日
- 審決日
- 2025年06月11日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日本製鉄株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】勝俣 智夫
- 【権利者代理人】山口 洋
- 【権利者代理人】飯田 恭宏
- 【権利者代理人】井口 翔太
- 【権利者代理人】堀田 耕一郎
- 【異議申立人】前田 洋志
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 篠原 功一
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.113-Y (H01F) / P1651.121-Y (H01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7572658号発明「巻鉄心」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7572658号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7572658号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、2023年6月21日(優先権主張2022年6月22日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月16日にその特許権が設定登録され、令和6年10月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年4月10日に特許異議申立人前田洋志(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7572658号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心であって、
前記巻鉄心は、複数の平坦部と、複数のコーナー部と、を有し、
前記曲げ加工体は、複数の平坦領域と、前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域と、を有し、
前記各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下であり、
前記曲げ加工体は、前記方向性電磁鋼板の長手方向の端面が対向した接合部を1以上有し、
最も内側に配置された前記曲げ加工体を第1曲げ加工体とし、前記第1曲げ加工体の前記接合部がある平坦領域を基準平坦領域としたとき、複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部にあり、
前記巻鉄心の側面視において、
前記基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第1屈曲領域とし、
前記基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第2屈曲領域とし、
前記第1屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第1仮想線とし、
前記第2屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第2仮想線とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線から前記第2仮想線の間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第1最短接合部とし、
前記第1最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第1端接合部とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第2最短接合部とし、
前記第2最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第2端接合部とし、
前記第1最短接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Aとし、
前記第1端接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Bとし、
前記第2最短接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Cとし、
前記第2端接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Dとし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Aと前記仮想線Bとの間にある前記接合部を第1群接合部とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Cと前記仮想線Dとの間にある前記接合部を第2群接合部とし、
前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記各第1群接合部の前記第1仮想線側の前記端面までの長さの平均を<Li>とし、
前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記各第2群接合部の前記第2仮想線側の前記端面までの長さの平均を<LO>としたとき、
下記(1)式および下記(2)式を満足する、巻鉄心。
2mm≦<Li><25mm・・・(1)
1.22 *<Li>≦<LO>・・・(2)
【請求項2】
前記第1群接合部の数は、前記第2群接合部の数と等しく、
前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域のある前記平坦部の中の前記接合部の数を前記第1群接合部の数で割って得た商と剰余のうち、前記商であるkが下記(3)式を満足する、請求項1に記載の巻鉄心。
9≦k≦20・・・(3)
【請求項3】
前記各曲げ加工体が対向する2つの平坦領域のそれぞれに前記接合部を有し、
前記第1曲げ加工体が、前記基準平坦領域と、前記基準平坦領域と対向する第2基準平坦領域を有し、
複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部および前記第2基準平坦領域がある前記平坦部にあり、
前記巻鉄心の側面視において、
前記第2基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第3屈曲領域とし、
前記第2基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第4屈曲領域とし、
前記第3屈曲領域の前記第2基準平坦領域側の端点を通り、前記第2基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第3仮想線とし、
前記第4屈曲領域の前記第2基準平坦領域側の端点を通り、前記第2基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第4仮想線とし、
前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第3仮想線から前記第4仮想線の間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第3仮想線から前記第3仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第3最短接合部とし、
前記第3最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第3仮想線から前記第3仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第3端接合部とし、
前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第4仮想線から前記第4仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第4最短接合部とし、
前記第4最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第4仮想線から前記第4仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第4端接合部とし、
前記第3最短接合部の前記第3仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Eとし、
前記第3端接合部の前記第3仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Fとし、
前記第4最短接合部の前記第4仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Gとし、
前記第4端接合部の前記第4仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Hとし、
前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Eと前記仮想線Fとの間にある前記接合部を第3群接合部とし、
前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Gと前記仮想線Hとの間にある前記接合部を第4群接合部とし、
前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第3仮想線から前記各第3群接合部の前記第3仮想線側の前記端面までの長さの平均を<L2i>とし、
前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第4仮想線から前記各第4群接合部の前記第4仮想線側の前記端面までの長さの平均を<L2O>としたとき、
下記(4)式および下記(5)式を満足する、請求項1または2に記載の巻鉄心。
2mm≦<L2i><25mm・・・(4)
1.22 *<L2i>≦<L2O>・・・(5)
【請求項4】
前記第3群接合部の数は、前記第4群接合部の数と等しく、
前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域のある前記平坦部の中の前記接合部の数を前記第3群接合部の数で割って得た第2の商と第2の剰余のうち、前記第2の商であるk2が下記(6)式を満足する、請求項3に記載の巻鉄心。
9≦k2≦20・・・(6)
【請求項5】
前記屈曲領域の曲げ角度が、30°~60°である、請求項1または2に記載の巻鉄心。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
1 申立理由1(新規性)
本件請求項1および5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。このため、本件請求項1および5に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
2 申立理由2(進歩性)
本件請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。このため、本件請求項1ないし5に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
[証拠]
甲第1号証:Innovation in Transformer Cores and Manufacturing, AEM UNICORE, April 2010, AEM CORES PTY LID, p.3-7
甲第2号証:特開2018-148036号公報
甲第3号証:特開2018-157142号公報
甲第4号証:GSMArena.com,「Nokia 6210」(https://www.gsmarena.com/nokia_6210-12.php)
第4 甲第1号証の記載
1 記載事項
甲第1号証には、「Unicore」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。訳として、申立人提出の「甲第1号証の訳文(第3、6および7頁の引用箇所のみ)」を記載した。なお、下線は当審で付与した。
「MATERIALS FOR UNICORES
Unicores can be produced from any grade of Grain Oriented Silicon Steel (GOSS) with thickness from 0.2 to 0.35 and strip width from 20 to 300 mm. Two strips can be run simutaneously when using less than 140 mm strip.
It has been tested that some finer grades of GOSS can be also used for Unicores. For details please contact us.」
(ユニコアの材料
ユニコアは、厚さ0.2~0.35mm、帯幅20~300mmのあらゆるグレードの方向性電磁鋼板(GOSS)から製造できる。幅140mm未満の帯鋼を使用する場合は、2本同時に加工できる。
より高品質なGOSSの一部もユニコアに使用できることがテストされている。詳細については、我々に問い合わせされたい。)(第3頁第12ないし19行)
「UNICORE GEOMETRY AND SIZES
Unicores can weigh up to 1500 kg. A Unicore is defined by the following parameters:
Window Length (WL) Window Width (WW)
Strip Width (SW) Build-up (BU)
Strip Thickness (ST) Corner Angle
Tightness Factor (TF)
Unicore faces can be straight butt, DUO-core, Distributed Gap or Uncut. Unicores can be produced with 30°, 45° or 90° corners, depending on application.
All these values can be easily specified and programmed.
New Unicore types are continually developed.」
(ユニコアの形状およびサイズ
ユニコアの重量は最大1500kgである。ユニコアは以下のパラメータによって定義される。
窓長さ(WL) 窓幅(WW)
鋼帯幅(SW) 積層量(BU)
鋼帯厚さ(ST) コーナー角度
締め付け係数(TF)
ユニコアの合わせ面は、ストレートバット、デュオ・コア、分散ギャップ、または、カット無しである。ユニコアは、用途に応じて30°、45°、90°角で製造できる。これらの値は、全て簡単に指定および調整できる。
新しいユニコアの種類が継続的に開発されている。)(第3頁第20ないし33行)
「
[図:0001424629000001.jpg]
3-ph DG core
DISTRIBUTED GAP CORES
APPLICATION
DG Unicores represent a family of cores with a single cut per lamination. They are used for single-leg and shelltype, single and 3-phase Distribution Transformers.
Unlike traditional technology of producing DG cores, no tooling is needed for production of DG Unicores.
DG UNICORE TYPES
There are several different types of DG Unicores, namely a core with straight cut face, Diverging face (cascade of cut faces fans out) and End-Overlap (spirally wound laminations) face. The position and specification of the DG face can be easily programmed.
・・・
MATERIAL
Any grade of GOSS, thickness 0.2 to 0.35 mm.
[図:0001424629000002.jpg]
40kg single-phase DG core
」
(分散ギャップコア
用途
DGユニコアは、各層が1つの切れ込みを持つコアのシリーズである。これらは、単脚シェル型、単相および三相配電変圧器に使用される。
従来のDGコア製造技術とは異なり、DGユニコアの製造には専用工具は不要である。
DGユニコアの種類
DGユニコアには、いくつかの異なる種類があり、例えば、直線状の切れ込み面を持つコア、ダイバージング面を持つコア(多くの切れ込みが扇状に広がっている)、エンド・オーバーラップ面を持つコア(層が螺旋状に巻かれている)等である。DGの面の位置および仕様は簡単に調整できる。
・・・中略・・・
材料
厚み0.2から0.35mmのあらゆるグレードのGOSS)(第7頁第1ないし24行)
2 記載された技術事項
上記記載事項より、甲第1号証には次の技術事項が記載されているといえる。
(1)第7頁の上記摘記した写真(図面)及び第3頁の「ユニコアの材料」の欄の記載より、DGユニコア(DGコア)は複数の曲げ加工された帯鋼を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心であることが見てとれる。
(2)第7頁の「材料」の欄及び第3頁の「ユニコアの材料」の欄の記載によれば、DGユニコアを構成する帯鋼は厚み0.2~0.35mmのあらゆるグレードの方向性電磁鋼板(GOSS)からなる。
(3)第7頁の上記摘記した写真(図面)より、DGユニコア(DGコア)は複数の平坦部と複数のコーナー部とを有することが見てとれる。
また、DGユニコア(DGコア)を構成する複数の曲げ加工された帯鋼のそれぞれは、複数の平坦領域と前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域とを有していることが見てとれる。
(4)第7頁の上記摘記した写真(図面)より、DGユニコア(DGコア)を構成する複数の曲げ加工された帯鋼のそれぞれは、帯鋼の長手方向の端面が対向した接合部を1つ有することが見てとれる。
また、複数の帯鋼の接合部は、DGユニコアの同一の一辺の平坦部に形成されていることが見てとれる。
3 記載された発明
上記「2(1)」ないし「2(4)」の技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、DGユニコアとして次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の曲げ加工された帯鋼を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心であるDGユニコアにおいて、
帯鋼は厚み0.2~0.35mmのあらゆるグレードの方向性電磁鋼板(GOSS)からなり、
DGユニコアは複数の平坦部と複数のコーナー部とを有し、
複数の曲げ加工された帯鋼のそれぞれは、複数の平坦領域と前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域とを有し、
複数の曲げ加工された帯鋼のそれぞれは、帯鋼の長手方向の端面が対向した接合部を1つ有し、
複数の帯鋼の接合部は、DGユニコアの同一の一辺の平坦部に形成されている、
DGユニコア。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「複数の曲げ加工された帯鋼」は「厚み0.2~0.35mmのあらゆるグレードの方向性電磁鋼板(GOSS)からな」る。
してみると、甲1発明の「複数の曲げ加工された帯鋼」は、本件発明1の「方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体」に相当する。
そして、甲1発明の「複数の曲げ加工された帯鋼を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心であるDGユニコア」は、本件発明1の「方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心」に相当する。
b 甲1発明の「DGユニコアは複数の平坦部と複数のコーナー部とを有し」ていることは、本件発明1の「前記巻鉄心は、複数の平坦部と、複数のコーナー部と、を有」することに相当する。
c 甲1発明の「複数の曲げ加工された帯鋼のそれぞれは、複数の平坦領域と前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域とを有し」ていることは、本件発明1の「前記曲げ加工体は、複数の平坦領域と、前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域と、を有」することに相当する。
d 本件発明1は「前記各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下」であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
e 甲1発明の「複数の曲げ加工された帯鋼のそれぞれは、帯鋼の長手方向の端面が対向した接合部を1つ有し」ており「帯鋼は厚み0.2~0.35mmのあらゆるグレードの方向性電磁鋼板(GOSS)からな」ることは、本件発明1の「前記曲げ加工体は、前記方向性電磁鋼板の長手方向の端面が対向した接合部を1以上有」することに相当する。
f 甲1発明の「複数の曲げ加工された帯鋼のそれぞれは、帯鋼の長手方向の端面が対向した接合部を1つ有し、複数の帯鋼の接合部は、DGユニコアの同一の一辺の平坦部形成されている」ことは、本件発明1の「最も内側に配置された前記曲げ加工体を第1曲げ加工体とし、前記第1曲げ加工体の前記接合部がある平坦領域を基準平坦領域としたとき、複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部にあ」ることに相当する。
g 本件発明1は
「前記巻鉄心の側面視において、
前記基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第1屈曲領域とし、
前記基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第2屈曲領域とし、
前記第1屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第1仮想線とし、
前記第2屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第2仮想線とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線から前記第2仮想線の間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第1最短接合部とし、
前記第1最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第1端接合部とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第2最短接合部とし、
前記第2最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第2端接合部とし、
前記第1最短接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Aとし、
前記第1端接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Bとし、
前記第2最短接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Cとし、
前記第2端接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Dとし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Aと前記仮想線Bとの間にある前記接合部を第1群接合部とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Cと前記仮想線Dとの間にある前記接合部を第2群接合部とし、
前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記各第1群接合部の前記第1仮想線側の前記端面までの長さの平均を<Li>とし、
前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記各第2群接合部の前記第2仮想線側の前記端面までの長さの平均を<LO>としたとき、
下記(1)式および下記(2)式を満足する」もの、
「2mm≦<Li><25mm・・・(1)
1.22 *<Li>≦<LO>・・・(2)」
であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
h 上記aないしgより、本件発明1と甲1発明とは、
「方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心であって、
前記巻鉄心は、複数の平坦部と、複数のコーナー部と、を有し、
前記曲げ加工体は、複数の平坦領域と、前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域と、を有し、
前記曲げ加工体は、前記方向性電磁鋼板の長手方向の端面が対向した接合部を1以上有し、
最も内側に配置された前記曲げ加工体を第1曲げ加工体とし、前記第1曲げ加工体の前記接合部がある平坦領域を基準平坦領域としたとき、複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部にある、巻鉄心。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
本件発明1は「前記各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下」であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。
〈相違点2〉
本件発明1は
「前記巻鉄心の側面視において、
前記基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第1屈曲領域とし、
前記基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第2屈曲領域とし、
前記第1屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第1仮想線とし、
前記第2屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第2仮想線とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線から前記第2仮想線の間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第1最短接合部とし、
前記第1最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第1端接合部とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第2最短接合部とし、
前記第2最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第2端接合部とし、
前記第1最短接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Aとし、
前記第1端接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Bとし、
前記第2最短接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Cとし、
前記第2端接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Dとし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Aと前記仮想線Bとの間にある前記接合部を第1群接合部とし、
前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Cと前記仮想線Dとの間にある前記接合部を第2群接合部とし、
前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記各第1群接合部の前記第1仮想線側の前記端面までの長さの平均を<Li>とし、
前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記各第2群接合部の前記第2仮想線側の前記端面までの長さの平均を<LO>としたとき、
下記(1)式および下記(2)式を満足する」もの、
「2mm≦<Li><25mm・・・(1)
1.22 *<Li>≦<LO>・・・(2)」
であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。
(2)判断
ア 申立理由1(新規性)について
上記「(1)」のとおり、本件発明1と甲1発明とは相違点1、2を有するから、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。
よって、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
イ 申立人の特許異議申立書における主張について
(ア)相違点1に関して
申立人は特許異議申立書において、
「例えば、甲第2号証には、『前記屈曲部の側面視における内面側曲率半径rは1mmを超え、3mm未満』であることが記載され(【請求項1】)、屈曲部の曲率半径が0.5~5mmである多数の具体例(実施例および比較例)が記載されている(【表3-1】~【表5-4】)。特筆すべきは、甲第2号証においては、比較例であっても、曲率半径は最大で5mmであり、5mmを超えた具体例は記載されていない。
また、甲第3号証には、『電磁鋼板の巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、当該曲げ加工された電磁鋼板を重ね合わせることにより、電磁鋼板を積層して巻鉄心とする手法』に関して、『この製法の場合、電磁鋼板を曲げ加工するため、当該加工部分には曲率半径が1mm~3mm程度の比較的小さな屈曲部が形成される』ことが記載されている(【0004】)。
ここで、甲第1号証の図3の『ユニコア』も、・・・『電磁鋼板の巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、当該曲げ加工された電磁鋼板を重ね合わせることにより、電磁鋼板を積層して巻鉄心とする手法』により製造されていることは明らかであるから、『加工部分には曲率半径が1mm~3mm程度の比較的小さな屈曲部が形成される』ことが把握される。
したがって、甲第2号証および甲第3号証の記載を参酌すると、甲第1号証の第7頁の『三相DGコア』は、『各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下』」である旨主張している(第28頁第10行~第29頁第1行)。
しかしながら、甲第2、3号証の記載より、巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とする場合に、曲げ加工した部分の曲率半径を5mm以下とすること自体は周知技術であるとしても、当該曲率半径は、巻鉄心の寸法や巻鉄心に使用される電磁鋼板の厚さ等を考慮して決定されるものであると認められるから、かかる周知技術があることのみをもって、甲1発明の屈曲領域(曲げ加工した部分)の曲率半径が5mm以下であるとまではいえない。
そして、本件の明細書段落【0040】に記載されるように、本件請求項1に係る発明は、曲げ加工体の曲率半径を5.0mm以下とすることで、騒音が改善されるものであるところ、甲1ないし3には、かかる技術思想についての記載も示唆もない。
よって、申立人の主張は採用できず、相違点1は実質的な相違であるものと認められる。
(イ)相違点2に関して
申立人は特許異議申立書において、
本件発明1の第1仮想線、第2仮想線、仮想線A、仮想線B、仮想線C、仮想線Dと同様の仮想線を甲第1号証の第7頁の写真(図)に示された「3-ph DG core」(三相DGコア)に規定した場合、
「各部の寸法について具体的な開示はないが、サイズの目安として、『三相DGコア』とともに携帯電話が撮影されている。
この携帯電話は、甲第4号証によれば、・・・『Nokia6210』である蓋然性が高い。
・・・
そして、甲第4号証によれば、『Nokia6210』の本体の寸法(『BODY』の『Dimensions』)は、『129.5×47.3×18.8mm』である。すなわち、『Nokia6210』の幅は47.3mmであるから、これをもとに<Li>および<LO>を求めると、・・・それぞれ、11.6mmおよび38.8mmと算出される。
・・・
そうすると、甲第1号証の第7頁の『三相DGコア』は、
2mm≦<Li><25mm・・・(1)
を満足し、また、1.22*<Li>=14.15であるから、
1.22 *<Li>≦<LO>・・・(2)
も満足する」旨主張している(第31頁第2行ないし第32頁第9行)。
しかしながら、甲第1号証には、その第7頁の「三相DGコア」の写真(図)について屈曲領域と接合部との間の距離は記載されておらず、申立人が採った<Li>、<Lo>の値の算出方法は、その詳細が明らかでなく、そもそも当該写真(図)が一切の歪みなく正面から撮影されたものではないことも考慮すると、当該写真(図)より<Li>、<Lo>に相当する長さを特定することはできない。そうすると、甲1発明が本件発明1の(1)式、(2)式を必ずしも満足するとみることはできないから、申立人の主張は採用できない。
なお、甲1発明と本件発明1との間には、少なくとも上記相違点1が存在するから、甲1発明が本件発明1の相違点2に係る構成を備えるか否かに関わらず、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。したがって、申立人の主張の当否は上記の判断を左右しない。
ウ 申立理由2(進歩性)について
事案に鑑み、相違点1について検討する。
そもそも甲1発明において、屈曲領域の曲率半径を5mm以下とすべき動機があるものとは認められない。
したがって、たとえ甲第2、3号証の記載より、巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とする場合に、曲げ加工した部分の曲率半径を5mm以下とすることが周知技術であるとしても、甲1発明において、屈曲領域(曲げ加工した部分)の曲率半径を5mm以下とすることについて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
よって、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められず、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件発明2ないし5について
本件の請求項2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、本件の請求項2ないし5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
したがって、本件の請求項5に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでなく、本件の請求項2ないし5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700406