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特許異議申立

2023-701370

磁性成形体の製造方法、及び異方性ボンド磁石の製造方法

審判番号
2023-701370
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-521889
登録番号
7298804
請求日
2023年12月26日
審決日
2024年07月01日
公報発行日
2024年10月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社レゾナック
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】平野 裕之
  • 【権利者代理人】吉住 和之
  • 【異議申立人】安藤 宏
審判長/審判官
  • 審判長 岩間 直純
  • 審判官 篠原 功一
  • 審判官 畑中 博幸
分類
P1651.113-YAA(H01F) / P1651.121-YAA(H01F) / P1651.537-YAA(H01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7298804号発明「磁性成形体の製造方法、及び異方性ボンド磁石の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7298804号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 特許第7298804号の請求項1、4ないし14に係る特許を維持する。 特許第7298804号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7298804号の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、2022年12月26日を国際出願日とする出願であって、令和5年6月19日にその特許権が設定登録され、令和5年6月27日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年12月26日 :特許異議申立人安藤宏(以下、「申立人」という。)により請求項1ないし14に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年 2月26日付け:取消理由通知 令和6年 4月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和6年4月15日に提出された特許権者による意見書及び訂正請求書に対して、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人から意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和6年4月15日付けの訂正請求の趣旨は、特許第7298804号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-14に訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「である、」と記載されているのを、「であり、前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドヘ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドヘ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される、」に訂正する。 (請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~7及び9~13も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1」に訂正する。 (請求項4の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1」に訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1」に訂正する。 (請求項6の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。) (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1」に訂正する。 (請求項7の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「前記ワックスが、モンタン酸エステルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の磁性成形体の製造方法。」と記載されているのを、「磁石粉末と熱硬化性樹脂とワックスとを含むコンパウンドを、型内に供給する供給工程と、成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドヘ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形体を形成し、且つ前記成形体から前記ワックスを除去する成型工程と、前記成型工程後、前記成形体を脱磁する脱磁工程と、前記脱磁工程後、前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上である温度で前記成形体を加熱することにより、磁性成形体を得る熱硬化工程と、を備え、前記磁石粉末が、Sm-Fe-N系永久磁石を含み、前記成型温度Tmが、前記ワックスの滴点以上であり、且つ前記熱硬化性樹脂の前記熱硬化温度末満であり、前記ワックスが、モンタン酸エステルを含む、磁性成形体の製造方法。」に訂正する。 (請求項8の記載を引用する請求項14も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~3のいずれか一項」と記載されているのを、「請求項1」に訂正する。 2 訂正要件についての判断 (1)一群の請求項について 訂正事項1ないし9に係る本件訂正前の請求項1ないし14について、請求項2ないし14は請求項1を引用しているから、本件訂正前の請求項1ないし14に対応する本件訂正の請求項〔1-14〕は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件 ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「成形工程」について、「前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドヘ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドヘ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される」と限定するものである。 よって、訂正事項1は、請求項1について、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 明細書の段落【0043】には「成型工程は、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含んでよい。図2に示されるように、第一加圧工程において、成型温度Tmで加熱された型内のコンパウンドへ作用する圧力(成型圧力P)は、0MPaから第一圧力P1(単位:MPa)へ連続的に増加し、所定の時間にわたって第一圧力P1に維持される。図2に示されるように、第二加圧工程において、成型温度Tmで加熱された型内のコンパウンドへ作用する圧力(成型圧力P)は、第一圧力P1から第二圧力P2(単位:MPa)へ連続的に増加し、所定の時間にわたって第二圧力P2に維持される。つまり、第二圧力P2は、第一圧力P1よりも高い。第一加圧工程において比較的低い第一圧力P1でコンパウンドを加圧することにより、コンパウンドの過度の圧縮が抑制され、各磁石粒子同士の摩擦又は接触が抑制され、コンパウンド中の各磁石粒子が回転し易く、各磁石粒子が磁場に沿って配向され易い。第二加圧工程において比較的高い第二圧力P2で成形体(コンパウンド)を加圧することにより、ワックスが成形体から除去され易い。」と記載されている。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 イ 訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項3の訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 エ 訂正事項4について 訂正事項4に係る請求項4の訂正は、訂正前の請求項4が「請求項1~3のいずれか一項」を引用するものであったのを、「請求項1」を引用するものにする訂正であって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 オ 訂正事項5について 訂正事項5に係る請求項5の訂正は、訂正前の請求項5が「請求項1~3のいずれか一項」を引用するものであったのを、「請求項1」を引用するものにする訂正であって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項5に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 カ 訂正事項6について 訂正事項6に係る請求項6の訂正は、訂正前の請求項6が「請求項1~3のいずれか一項」を引用するものであったのを、「請求項1」を引用するものにする訂正であって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項6に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 キ 訂正事項7について 訂正事項7に係る請求項7の訂正は、訂正前の請求項7が「請求項1~3のいずれか一項」を引用するものであったのを、「請求項1」を引用するものにする訂正であって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項7に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ク 請求項8について 訂正事項8に係る請求項8の訂正は、訂正前の請求項8が「請求項1~3のいずれか一項」を引用するものであったのを請求項1のみを引用するものとすると共に、請求項1を引用する訂正前の請求項8の引用関係を解消し、独立形式へ改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項8に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮および第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ケ 訂正事項9について 訂正事項9に係る請求項9の訂正は、訂正前の請求項9が「請求項1~3のいずれか一項」を引用するものであったのを、「請求項1」を引用するものにする訂正であって、引用する請求項の数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項9に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ 独立特許要件について 訂正事項1ないし9は、上記「ア(ア)」ないし「ケ」に示したとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、訂正前の請求項1ないし14について特許異議の申立てがされているから、対応する訂正後の請求項1ないし14に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明14」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された次の事項により特定されるものである。なお、下線は、訂正箇所を示す。 「【請求項1】 磁石粉末と熱硬化性樹脂とワックスとを含むコンパウンドを、型内に供給する供給工程と、 成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形体を形成し、且つ前記成形体から前記ワックスを除去する成型工程と、 前記成型工程後、前記成形体を脱磁する脱磁工程と、 前記脱磁工程後、前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上である温度で前記成形体を加熱することにより、磁性成形体を得る熱硬化工程と、 を備え、 前記磁石粉末が、Sm-Fe-N系永久磁石を含み、 前記成型温度Tmが、前記ワックスの滴点以上であり、且つ前記熱硬化性樹脂の前記熱硬化温度未満であり、 前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、 前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、 前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、 前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、 前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される、 磁性成形体の製造方法。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記成形体が収容された前記型を、前記成型温度Tmから前記滴点未満である温度まで冷却する冷却工程を更に備え、 前記冷却工程が、前記成型工程に続き、 前記脱磁工程が、前記冷却工程後に実施される、 請求項1に記載の磁性成形体の製造方法。 【請求項5】 クリアランスが前記型に形成されており、 前記成型温度Tmでの前記ワックスの粘度が、前記成型温度Tmでの前記熱硬化性樹脂の粘度よりも低く、 前記成型工程では、前記成形体から除去された前記ワックスが、前記クリアランスを通じて、前記型外へ排出される、 請求項1に記載の磁性成形体の製造方法。 【請求項6】 前記磁石粉末の質量及び前記熱硬化性樹脂の質量の合計が、M1と表され、 前記コンパウンド中の前記ワックスの質量が、M2と表され、 (M2/M1)×100が、2以上10以下である、 請求項1に記載の磁性成形体の製造方法。 【請求項7】 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、マレイミド化合物、ポリイミド、ポリアミド、及びポリアミドイミドからなる群より選ばれる少なくとも一つの樹脂を含む、 請求項1に記載の磁性成形体の製造方法。 【請求項8】 磁石粉末と熱硬化性樹脂とワックスとを含むコンパウンドを、型内に供給する供給工程と、 成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形体を形成し、且つ前記成形体から前記ワックスを除去する成型工程と、 前記成型工程後、前記成形体を脱磁する脱磁工程と、 前記脱磁工程後、前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上である温度で前記成形体を加熱することにより、磁性成形体を得る熱硬化工程と、 を備え、 前記磁石粉末が、Sm-Fe-N系永久磁石を含み、 前記成型温度Tmが、前記ワックスの滴点以上であり、且つ前記熱硬化性樹脂の前記熱硬化温度未満であり、 前記ワックスが、モンタン酸エステルを含む、 磁性成形体の製造方法。 【請求項9】 請求項1に記載の磁性成形体の製造方法を備え、 前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。 【請求項10】 請求項4に記載の磁性成形体の製造方法を備え、 前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。 【請求項11】 請求項5に記載の磁性成形体の製造方法を備え、 前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。 【請求項12】 請求項6に記載の磁性成形体の製造方法を備え、 前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。 【請求項13】 請求項7に記載の磁性成形体の製造方法を備え、 前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。 【請求項14】 請求項8に記載の磁性成形体の製造方法を備え、 前記磁性成形体を着磁することにより、異方性ボンド磁石を得る着磁工程を更に備える、 異方性ボンド磁石の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 令和6年2月26日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 1.(進歩性)請求項1、3ないし7、9ないし13に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2.(明確性)請求項3ないし14に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 ●取消理由1(進歩性)について 引用文献1:国際公開第2019/189143号(甲第1号証) 引用文献2:特開平3-151612号公報 引用文献3:『化学大辞典』 株式会社東京化学同人、 第1版第1刷、1989年10月20日発行(甲第7号証) ●取消理由2(明確性)について 請求項3には、「第二圧力P2まで連続的に増加させる」と記載されている。 しかし、請求項3及び請求項3が引用する請求項1には「第二圧力P2」の定義が記載されておらず、また、請求項1に記載された「コンパウンドを圧縮する」際の圧力との異同も特定されていないため、当該「第二圧力P2」が何の圧力を意味しているのか不明である。 また、請求項3を引用する請求項4~14にも同様の点が指摘される。 よって、請求項3~14に係る発明は明確でない。 2 当審の判断 (1)取消理由1(進歩性)について ア 引用文献に記載された発明 (ア)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。 「[0024] 圧縮成形ボンド磁石は、磁石粒子とバインダ樹脂に、(液状)潤滑剤を加えて圧縮成形したものでもよい。圧縮成形前に混合または添加等した潤滑剤は、圧縮成形中に外部へ漏出したり、キュア処理を行う場合はその処理中に放出されたりし得る。 ・・・<略>・・・」 「[0026] 潤滑剤として、室温で液体状の潤滑油(例えば、融点が15℃以下)、室温で固体状の固形物(ワックス、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸亜鉛等の成形用内部潤滑剤)等を用いることができる。 ・・・<略>・・・」 「[0031]《試料》 (1)原料 磁石粉末として、Nd系磁石粉末(粗粉末)である市販のNdFeB系異方性磁石粉末(愛知製鋼株式会社製マグファイン/Br:1.28T、iHc:1313kA/m、平均粒径:100μm)と、Sm系磁石粉末(微粉末)である市販のSmFeN系異方性磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製SmFeN合金微粉D/Br:1.10T、iHc:1170kA/m、平均粒径:3μm)を用意した。 [0032] バインダ樹脂として、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製K-60)と、熱可塑性樹脂であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)を用意した。 [0033](2)圧縮成形ボンド磁石の製造(試料1、2、3、C1) 試料1~3については、質量比で8:2に秤量したNd系磁石粉末とSm系磁石粉末をヘンシェエルミキサーでよく混合した。混合した磁石粉末へ、固形のエポキシ樹脂を加えて、バンバリーミキサーで加熱混練(110℃)した。こうして原料粉末となるコンパウンドを得た。コンパウンド全体(100質量%)に対して熱硬化性樹脂の割合は2.75質量%とした。 [0034] 各試料毎に、成形型のキャビティへ投入したコンパウンドを、磁場中(1.5T)で温間成形した。この際、成形温度はいずれも120℃とした。試料1、2の成形圧力は196MPa、試料3の成形圧力は98MPaとした。こうして、14×14×14mmの立方体形状の成形体を得た。 [0035] この成形体を大気中で150℃×1時間加熱して(キュア処理)、バインダ樹脂(エポキシ樹脂)を熱硬化させた。この硬化処理した成形体を約6Tの磁場中で着磁した。こうして、各試料に係る圧縮成形ボンド磁石(供試材)を得た。 [0036] なお、試料2と試料3は、圧縮成形前に、充填したコンパウンド上から、潤滑油(潤滑剤)であるポリオールエステル(日油株式会社社製ユニスターH-481R)を添加しておいた。その添加量は、コンパウンド全体(100質量部)に対して9質量%(10質量部)とした。なお、試料1は、潤滑油の添加を行わずに圧縮成形を行った。」 (イ)引用文献1に記載された技術事項 a 上記(ア)の段落[0033]の記載によれば、Nd系磁石粉末とSm系磁石粉末を混合した磁石粉末へ、固形のエポキシ樹脂を加えて、加熱混練し、原料粉末となるコンパウンドを得ることが記載されている。また、段落[0031]の記載によれば、Sm系磁石粉末はSmFeN系異方性磁石粉末である。 してみると、引用文献1には、Nd系磁石粉末とSmFeN系異方性磁石粉末を混合した磁石粉末へ、固形のエポキシ樹脂を加えて、加熱混練し、原料粉末となるコンパウンドを得ることが記載されている。 b 段落[0034]の記載によれば、コンパウンドを成形型のキャビティへ投入し、磁場中成形温度120℃、所定の成形圧力で温間成形し成形体を得ることが記載されている。 c 段落[0035]の記載によれば、成形体を大気中で150℃×1時間加熱してエポキシ樹脂を熱硬化させ、この硬化処理した成形体を約6Tの磁場中で着磁し、圧縮成形ボンド磁石を得ることが記載されている。 d 段落[0036]の記載によれば、圧縮成形前に充填したコンパウンド上から、潤滑剤であるポリオールエステルを、コンパウンド全体100質量部に対して10質量部添加することが記載されている。 e 段落[0024]の記載によれば、圧縮成形前に添加した潤滑剤は、圧縮成形中に外部へ漏出する。 (ウ)引用文献1に記載された発明 上記「(イ)aないしe」によれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「Nd系磁石粉末とSmFeN系異方性磁石粉末を混合した磁石粉末へ、固形のエポキシ樹脂を加えて、加熱混練し、原料粉末となるコンパウンドを得、 コンパウンドを成形型のキャビティへ投入し、磁場中成形温度120℃、所定の成形圧力で温間成形し成形体を得、 成形体を大気中で150℃×1時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ、この硬化処理した成形体を約6Tの磁場中で着磁し、圧縮成形ボンド磁石を得る圧縮成形ボンド磁石の製造方法において、 圧縮整形前に充填したコンパウンド上から、潤滑剤であるポリオールエステルを、コンパウンド全体100質量部に対して10質量部添加し、圧縮整形前に添加した潤滑剤は、圧縮成形中に外部へ漏出する、 圧縮成形ボンド磁石の製造方法。」 イ 対比・判断 (ア)対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 a 引用発明1の「磁石粉末」、「エポキシ樹脂」は、それぞれ、本件発明1の「磁石粉末」、「熱硬化性樹脂」に相当する。 してみると、引用発明1の「Nd系磁石粉末とSmFeN系異方性磁石粉末を混合した磁石粉末へ、固形のエポキシ樹脂を加え」た「コンパウンド」と、本件発明1の「コンパウンド」とは、「磁石粉末と熱硬化性樹脂」「とを含むコンパウンド」である点で一致する。 ただし、コンパウンドが、本件発明1は「ワックス」を含むのに対し、引用発明1は「潤滑剤であるポリオールエステル」が添加されるものの、ワックスを含むとは特定されていない点で相違する。 b 引用発明1の「成形型」は、本件発明1の「型」に相当する。そして、引用発明1の「コンパウンドを成形型のキャビティへ投入」することは、本件発明1の「コンパウンドを、型内に供給する供給工程」に相当する。 c 引用発明1の「コンパウンドを成形型のキャビティへ投入し、磁場中成形温度120℃、所定の成形圧力で温間成形し成形体を得」ることは、本件発明1の「成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形体を形成」する「成形工程」である点で一致する。 ただし、成形工程が、本件発明1は「成形体から前記ワックスを除去する」のに対して、引用発明1は成形体にワックスを含むとは特定されていないため、成形体からワックスを除去することも特定されていない点で相違する。 d 本件発明1は「成型工程後、前記成形体を脱磁する脱磁工程」を備えているのに対して、引用発明1は、脱磁工程を備えていない点で相違する。 e 引用発明1の「成形体を大気中で150℃×1時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ」「硬化処理した成形体」を得ることは、本件発明1の「前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上である温度で前記成形体を加熱することにより、磁性成形体を得る熱硬化工程」である点で一致する。 ただし、熱硬化工程が、本件発明1は「脱磁工程後」であるのに対し、引用発明1は脱磁工程を備えていないので、その旨特定されていない点で相違する。 f 引用発明1の「磁石粉末」が「Nd系磁石粉末とSmFeN系異方性磁石粉末を混合した」ものであることは、本件発明1の「前記磁石粉末が、Sm-Fe-N系永久磁石を含」むことに相当する。 g 引用発明1は「成形温度120℃で温間成形し」「150℃×1時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ」るものであるから、本件発明1と「前記成型温度Tmが、」「前記熱硬化性樹脂の前記熱硬化温度未満である」点で一致する。 ただし、成型温度が、本件発明1は「前記ワックスの滴点以上」であるのに対し、引用発明1は、「ワックス」を含むとは特定されていないため、成形温度がワックスの滴点以上であるとはいえない点で相違する。 h 本件発明1は「前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点で相違する。 i 引用発明1の「圧縮成形ボンド磁石の製造方法」は、本件発明1の「磁性成形体の製造方法」に相当する。 j 上記aないしiによれば、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 「磁石粉末と熱硬化性樹脂とを含むコンパウンドを、型内に供給する供給工程と、 成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形体を形成する成型工程と、 前記熱硬化性樹脂の熱硬化温度以上である温度で前記成形体を加熱することにより、磁性成形体を得る熱硬化工程と、 を備え、 前記磁石粉末が、Sm-Fe-N系永久磁石を含み、 前記成型温度Tmが、前記熱硬化性樹脂の前記熱硬化温度未満である、 磁性成形体の製造方法。」 〈相違点1〉 コンパウンドが、本件発明1は「ワックス」を含むのに対し、引用発明1は「潤滑剤であるポリオールエステル」が添加されるもののワックスを含むとは特定されていない点。 〈相違点2〉 成形工程が、本件発明1は「成形体から前記ワックスを除去する」のに対して、引用発明1は成形体にワックスを含むとは特定されていないため、成形体からワックスを除去することも特定されていない点。 〈相違点3〉 本件発明1は「成型工程後、前記成形体を脱磁する脱磁工程」を備えているのに対して、引用発明1は、脱磁工程を備えていない点。 〈相違点4〉 熱硬化工程が、本件発明1は「脱磁工程後」であるのに対し、引用発明1は脱磁工程を備えていないので、その旨特定されていない点。 〈相違点5〉 成型温度が、本件発明1は「前記ワックスの滴点以上」であるのに対し、引用発明1は、「ワックス」を含むとは特定されていないため、成形温度がワックスの滴点以上であるとはいえない点 〈相違点6〉 本件発明1は「前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される」のに対して、引用発明1はその旨特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点6について検討する。 引用文献2に、「R金属を主成分とする合金粉末成分と樹脂成分を前記配合割合で調合した混合物を、圧縮成形工程で第1図に示すような金型が取り外し可能な磁場配向プレス成形装置の金型内に充填して、磁場を印加しながら成形し、その後脱磁を行なう。そして硬化工程で金型ごと取り外してキュアー用の加熱装置に移し、加熱して樹脂成分を硬化させ、硬化した成形体を金型より取り外すことによって樹脂結合型永久磁石を製造することができる。」(第6コラム第18行~第7コラム第6行参照。)と記載されているとおり、樹脂結合型永久磁石の製造工程において、成型後、熱硬化前に脱磁処理を行うことは周知技術であり、引用文献3に「ろう[wax] ・・・<略>・・・一般に50~90℃で融解するものをいう。」(第2554頁左欄第49行~右欄第5行参照。)と記載されているとおり、ワックスの滴点は通常50~90℃程度であるものの、引用文献2および3の何れにも、「第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される」成型工程とすることは、記載も示唆もされていない。 したがって、上記相違点6に係る構成を得ることは、引用発明1及び引用文献2ないし3に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 そして、本件明細書の【0043】の記載を考慮すれば、上記相違点6に係る構成を備えることにより、第一加圧工程において比較的低い第一圧力P1でコンパウンドを加圧することにより、各磁石粒子が磁場に沿って配向され易く、第二加圧工程において比較的高い第二圧力P2で成形体(コンパウンド)を加圧することにより、ワックスが成形体から除去され易いものである。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明1および引用文献2ないし3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件の請求項4ないし7、9ないし13に係る発明はいずれも請求項1を直接又は間接的に引用する発明であるから、本件発明4ないし7、9ないし13も引用発明1および引用文献2ないし3に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、本件訂正により、請求項3は削除された。 (2)取消理由2(明確性)について 請求項3は、本件訂正により削除された。 したがって、当審が令和6年2月26日付けで特許権者に通知した取消理由2は解消した。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人の主張 申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張している。 (1)請求項1、5ないし7に係る発明は下記の甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)請求項1、3ないし7、9ないし13に係る発明は下記の甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3ないし7、9ないし13係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 甲第1号証:国際公開第2019/189143号 甲第2号証:特開2012-216586号公報 甲第3号証:特開平8-236352号公報 甲第4号証:特開2006-19521号公報 甲第5号証:特開2001-167963号公報 甲第6号証:特開2021-95616号公報 甲第7号証:「化学大辞典」、株式会社東京化学同人、第1版第1刷、1989年10月20日発行 (3)本件請求項1ないし14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 (3-1) 「発明の課題を解決するには、ワックスの潤滑性により各磁石粒子の回転を補助し、磁場に沿って配向を揃えた後、その配向を乱さずに成形体からワックスを除去することが不可欠と解される。 しかしながら、請求項1には、単にワックスを除去することだけが記載されており、発明の課題を解決に不可欠と解される、磁石粒子の配向を乱さずにワックスを除去する手段については、何ら記載されていない。 ・・・中略・・・ この点、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、・・中略・・発明の課題を解決するための手段として、成型工程を、第一加圧工程と、第二加圧工程とを含む工程とし、第二加圧工程において、第一加圧工程よりも高い圧力が維持されることによってワックスを除去することが記載されていると解される。 また、発明の詳細な説明には、発明の課題を解決しうるその他の手段は何ら記載されておらず、そして、いかなる手段でワックスを除去したとしても、発明の課題を解決できると理解しうるに足る説明は記載されていない。 そうすると請求項1には、発明の課題を解決するための手段が記載されておらず、本件特許発明1は、サポート要件を満たさない。 請求項1を引用する従属請求項に係る本件特許発明3ないし14についても同様である。」(第33頁第14行ないし第34頁第26行) (3-2) 「本件特許発明1は、ワックス成分の除去量を特定していない。ワックス成分がわずかにしか除去されず、成形体にワックスが多く残るような場合にも、課題が解決されるとは到底考え難い。 ・・・中略・・・ また、本件特許明細書には、実施例として、ワックスとして、モンタン酸エステルを用いた場合しか記載されていない。 ワックスは、化学構造や特性が異なる多岐の化合物を含み、いかなるワックスを用いた場合にも、モンタン酸エステルを用いた場合と同様の効果を奏するとは到底認められない。 したがって、本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された、ものとはいえない。 ワックスの除去量及びワックスの種類が特定されていない点に関しては、請求項1を引用する従属請求項に係る本件特許発明2ないし7、9ないし14についても同様である。 また、ワックス成分の除去量が特定されていない点に関しては、請求項1を引用する請求項8に係る本件特許発明8についても同様である。」(第34頁第28行ないし第35頁第16行) (4)本件請求項1ないし14に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 (4-1) 「請求項1には、『成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドヘ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形体を形成し、且つ前記成形体から前記ワックスを除去する成型工程』と記載されている。 ・・・中略・・・ 当該成形工程における『前記コンパウンドから成形体を形成し、且つ前記成形体から前記ワックスを除去する成型工程』という部分は、成形体の形成とワックス除去が並行して同時に起こることを意味するのか、又は、成形体を形成した後にワックスを除去する工程が加わることを意味するのか、異なる二通りの解釈が可能であり、どちらであるか明確ではない。 ・・・中略・・・ 請求項1を引用する従属請求項に係る本件特許発明3ないし14についても同様である。」(第35頁第21行ないし第36頁第16行) (4-2) 「請求項3には、『前記成型工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドヘ作用する圧力を、第二圧力P2まで連続的に増加させることにより、前記成形体から前記ワックスが除去される、』と記載されている。 ここで、請求項3と、請求項3の引用する請求項1には、第二圧力に対応する『第一圧力』と観念しうる技術的事項は記載されておらず、何を以って第二圧力P2と定義されるのか、第二圧力P2はいかなる技術的意義を有するものか、不明である。 また、当該成形工程において圧力を第二圧力P2まで連続的に増加させる過程でワックスが除去されるのか、第二圧力P2に到達した後にワックスが除去されるのか、明確ではない。」(第36頁第18ないし26行) (4-3) 「請求項1には、『ワックス』と記載されている。 ここで、ワックスという用語は、技術用語として、一定の意味を有するといったものではなく、種々の意味で用いられている。 ・・・中略・・・ 一方、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、ワックスの定義は記載されていない。 したがって、請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるものでなければならないとの要件を満たさない。 請求項1を引用する従属請求項に係る本件特許発明2ないし14についても同様である。」(第37頁第2行ないし同頁下から1行目) 2 当審の判断 (1)特許法第29条第1項の規定違反について 甲第1号証は引用文献1であるから、甲第1号証には引用発明1と同一の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 してみると、本件発明1と甲1発明とは、「第4」の「2(1)イ(ア)j」で検討した一致点および相違点1ないし6を有する。 そして、甲第2号証の段落【0003】、甲第3号証の段落【0002】、【0003】、甲第4号証の段落【0084】、甲第5号証の段落【0003】に記載されるように、磁粉を金型により圧縮成形した後に脱磁工程を設けることは周知慣用技術であり、相違点3は実質的な相違でないとしても、少なくとも、成型工程が第一加圧工程と第二加圧工程とを含むものである相違点6に係る構成は実質的な相違と認められる。 したがって、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえず、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 また、本件の請求項5ないし7に係る発明はいずれも請求項1を引用する発明であるから、本件の請求項5ないし7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 よって、請求人の主張は採用できない。 (2)特許法第29条第2項の規定違反について 上記(1)で述べたように、甲1発明は引用発明1と同一であり、本件発明1と甲1発明とは「第4」の「2(1)イ(ア)j」で検討した一致点および相違点1ないし6を有する。 そこで、事案に鑑み、相違点6について検討する。 甲第2号証の段落【0003】、甲第3号証の段落【0002】、【0003】、甲第4号証の段落【0084】、甲第5号証の段落【0003】には、磁粉を金型により圧縮成形した後に脱磁工程を設けることが記載されているものの、甲第2ないし5号証の何れにも、「前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される」とすることは、記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明1は甲1発明および甲第2ないし5号証に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲第6号証、甲第7号証のいずれにも、「前記成型工程が、第一加圧工程と、前記第一加圧工程に続く第二加圧工程と、を含み、前記第一加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第一圧力P1に維持され、前記第二加圧工程において、前記成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ作用する圧力が、第二圧力P2に維持され、前記第二圧力P2が、前記第一圧力P1よりも高く、前記第二加圧工程において、前記成形体から前記ワックスが除去される」とすることは、記載も示唆もされていない。 したがって、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 また、本件の請求項4ないし7、9ないし13に係る発明はいずれも請求項1を直接又は間接的に引用する発明であるから、本件の請求項4ないし7、9ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 よって、請求人の主張は採用できない。 なお、本件訂正により、請求項3は削除された。 (3)特許法第36条第6項第1号の規定違反について (3-1) 本件の明細書段落【0008】には「本発明の一側面の目的は、残留磁束密度及び機械的強度に優れた異方性ボンド磁石の製造に用いる磁性成形体の製造方法」「を提供することである。」と、段落【0036】には「成型工程では、成型温度Tmで加熱された型内のコンパウンド2へ磁場Hを印加しながら、型内のコンパウンド2が圧縮される。(図1中の(b)参照。)成型温度Tmは、ワックスの滴点以上であるので、コンパウンド2中のワックスは液化される。液化されたワックスの潤滑性に因り、磁石粒子同士が互いに滑り易く、磁場Hによって磁化された各磁石粒子が回転し易く、各磁石粒子中の磁区の磁化容易軸が磁場Hに沿って配向する。」と、段落【0039】には「成型工程では、ワックスの滴点以上である成型温度Tmで型を加熱しながら、コンパウンド2が圧縮される。その結果、成形体2Aの形成過程(コンパウンド2の圧縮過程)において、成形体2A中の液化されたワックスの一部又は全部が成形体2Aから染み出して、ワックスが成形体2Aから除去される。したがって、本実施形態によれば、異方性ボンド磁石の残留磁束密度の増加に寄与するワックスに起因する異方性ボンド磁石の機械的強度の低下を抑制することができる。」と記載されている。 これらの記載によれば、ワックスの滴点以上の成型温度に型を加熱して圧縮成形することにより、磁石粒子中の磁化容易軸を配向させつつワックスが成形体より除去され、発明が解決しようとする課題を解決し得ると当業者は認識することができるものと認められる。 そして、請求項1および請求項8には「成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮する」と記載されるとともに、「前記成形温度Tmが、前記ワックスの滴点以上であり」と記載されているから、請求項1および8には、発明の課題を解決するための手段が記載されているといえる。 また、請求項1を引用する請求項4ないし7、9ないし13、請求項8を引用する請求項14についても同様である。 よって、請求人の意見は採用できない。 (3-2) 本件の明細書段落【0039】には「成型工程では、ワックスの滴点以上である成型温度Tmで型を加熱しながら、コンパウンド2が圧縮される。その結果、成形体2Aの形成過程(コンパウンド2の圧縮過程)において、成形体2A中の液化されたワックスの一部又は全部が成形体2Aから染み出して、ワックスが成形体2Aから除去される。したがって、本実施形態によれば、異方性ボンド磁石の残留磁束密度の増加に寄与するワックスに起因する異方性ボンド磁石の機械的強度の低下を抑制することができる。」と記載されており、滴点が成型温度以下のワックスを用いて圧縮成形すれば、ワックスの除去量やワックスの種類が具体的に特定されていなくとも、機械的強度の低下を一定程度抑制することができ、発明が解決しようとする課題を解決し得ると、当業者は認識することができるものと認められる。 そして、請求項1および請求項8には「成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮する」と記載されるとともに、「前記成型温度Tmが、前記ワックスの滴点以上であり」と記載されているから、請求項1および8には、発明の課題を解決するための手段が記載されているといえる。 また、請求項1を引用する請求項4ないし7、9ないし13、請求項8を引用する請求項14についても同様である。 よって、請求人の意見は採用できない。 (4)特許法第36条第6項第2号の規定違反について (4-1) 請求項1および8には「成型温度Tmで加熱された前記型内の前記コンパウンドへ磁場を印加しながら、前記型内の前記コンパウンドを圧縮することにより、前記コンパウンドから成形体を形成し、且つ前記成形体から前記ワックスを除去する成型工程」と記載されており、成型工程において成形体の形成とワックスの除去が起きることが明確である。 そして、成型工程において成形体の形成とワックスの除去が起きることは特定されており、成型工程中に成形体の形成とワックスの除去とが並行して同時に起こるか、成形体を形成した後にワックスを除去する工程が加わるかについての特定がなくとも、第三者に不測の不利益を与えるほどに明確でないとはいえない。 したがって、請求項1および8には、明確である。 また、請求項1を引用する請求項4ないし7、9ないし13についても、請求項1を引用する請求項14についても同様である。 よって、請求人の意見は採用できない。 (4-2) 本件訂正により、請求項3は削除された。 よって、請求人の意見は採用できない。 (4-3) 請求項1及び8には「前記成型温度Tmが、前記ワックスの滴点以上」と記載されており、成型温度以下の滴点のワックスであることが特定されている。また、本件の明細書段落【0064】には、具体的なワックスが例示されている。 そして、当業者は、ボンド磁石を圧粉成型する場合に通常用いられるワックスの中から成型温度に応じて選択し得るものと認められる。 してみると、請求項1および8は、ワックスの種類が具体的に特定されていなくとも、第三者に不測の不利益を与えるほどに明確でないとはいえない。 また、請求項1を引用する請求項4ないし7、9ないし13についても、請求項1を引用する請求項14についても同様である。 よって、請求人の意見は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1、4ないし14に係る特許を取り消すことはできない。さらに、ほかに請求項1、4ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件特許の請求項2、3に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701370

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