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特許異議申立

2025-700383

ボックス柱の接合方法

審判番号
2025-700383
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-035425
登録番号
7581975
請求日
2025年04月02日
審決日
2025年09月04日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社大林組
  • 【権利者代理人】恩田 誠
  • 【権利者代理人】恩田 博宣
  • 【異議申立人】▲高▼尾 亜希子
審判長/審判官
  • 審判長 刈間 宏信
  • 審判官 山田 康孝
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P1651.113-Y (B23K) / P1651.121-Y (B23K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7581975号発明「ボックス柱の接合方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7581975号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7581975号の請求項1に係る特許についての出願は、令和3年3月5日に出願され、令和6年11月5日にその特許権の設定登録がされ、同月13日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年4月2日に、その特許に対して、特許異議申立人 ▲高▼尾 亜希子(以下「申立人」という。なお、「高」は「はしごだか」を代替表記したものである。)は、請求項1に係る特許について、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7581975号の請求項1の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ボックス柱を構成する上柱部材と下柱部材との接合部を溶接により接合する接合方法であって、 前記接合部となる空間において、前記ボックス柱の角のラインを超える位置に、溶接を止めるタブを配置して、前記空間の一辺の溶接領域を溶接する先行溶接を行なう第1ステップと、 前記タブを取り外して、前記先行溶接の端部を前記ラインに向かって削る第2ステップと、 前記先行溶接の端部に接合する後行溶接を行なう第3ステップとを備えることを特徴とするボックス柱の接合方法。」 第3 申立ての理由 1 申立人が特許異議申立書で主張する申立ての理由の概要 (1) 理由1(甲第1号証を引用例とする新規性欠如) 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2) 理由2(甲第1号証~甲第2号証を引用例とする進歩性欠如) 請求項1に係る発明は、甲第1号証~甲第2号証の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 引用文献等一覧 (1) 甲第1号証:特開昭59-42183号公報 (2) 甲第2号証:特開昭54-103754号公報 (以下、甲第○号証を「甲○」という。) 第4 文献の記載 1 甲1 (1) 甲1の記載事項 ア 発明の詳細な説明 (ア)第1ページ左欄第15行~右欄第5行 「本発明はボックス柱継手の溶接方法に関するものである。 ボックス柱継手のコーナー部はこれを挾む両側面の溶接が結合する個所であり、従来は第1図および第2図に示すような方法などが行われてきた。 つまり、第1図(A)に示す如く、コーナー部の両側面の溶接ビード3を各々コーナー部寸前で止め、同図(B)の如くアークエアガウジング5にて始終端部溶接金属を若干取り除き、形を整えてから、同図(C)の如くコーナー部の廻し溶接により溶接金属6を盛り上げて成型する方法が取られている。」 (イ)第2ページ右上欄第10~19行 「第4図は、ボックス柱継手のコーナーにタブ材9を挿入した斜視図であり、マグネット等を利用した治具を用いて、タブ材を固定する。 最初にボックス柱継手4つの面のうち、相対する2面を下向または横向姿勢にてアーク溶接する。 すなわち第4図(A)および(B)の○1(当審注:「○1」は、丸付き数字の「1」を代替表記したものである。丸付き数字については、以下同じ。)の位置の溶接を完了させる。 次にタブ材を取りはずし、残りの2つの面つまり同図(A)および(C)の○2の位置を、下向または横向姿勢にてアーク溶接し、コーナー部溶接を完了する。」 イ 図面 (ア)第1図 「 [図:0001427995000001.jpg] 」 (イ)第4図 「 [図:0001427995000002.jpg] 」 (2) 甲1の記載事項の整理 ア 前記(1)ア(ア)及び同イ(ア)の記載からみて、甲1においては、上柱1と下柱2がボックス柱を構成していることは自明であり、上柱1と下柱2との継手を溶接する溶接方法が記載されているものと認められる。 イ 前記(1)ア(ア)の記載からみて、甲1に記載された溶接方法は、継手のコーナー部の両側面において、このコーナー部を除いた側面の溶接を行っている。 ウ 前記(1)イ(ア)の記載((B)図の右下の円弧状の破線の記載)からみて、甲1に記載された溶接方法は、上記イの溶接の後、継手のコーナー部の側面の溶接の始終端部の金属を若干取り除いている。 エ 前記(1)ア(ア)及び同イ(ア)には、上記ウの金属を若干取り除いてから、この側面の溶接の端部の金属に接するようにコーナー部の廻し溶接を行っている。 (3) 甲1に記載された発明、及び、甲1に記載された事項 ア 前記(1)ア(ア)、(1)イ(ア)及び(2)ア~エより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ボックス柱を構成する上柱1と下柱2との継手を溶接する溶接方法であって、 前記継手のコーナー部の両側面において、前記コーナー部を除いた側面の溶接を行い、 前記継手のコーナー部の側面の溶接の始終端部の金属を若干取り除き、 前記継手のコーナー部の側面の溶接の端部の金属に接するようにコーナー部の廻し溶接を行う溶接方法。」 イ また、前記(1)ア(イ)、(1)イ(イ)より、甲1には、次の事項(以下「甲1記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「ボックス柱継手のコーナーにタブ材9を配置して、4つの面のうち相対する2面を溶接し、次にタブ材9を取り外して、残りの2つの面を溶接すること。」 2 甲2 (1) 甲2の記載事項 ア 発明の詳細な説明 (ア)第2ページ左上欄最終行~左下欄第2行 「以上のように、従来法では隅角部の品質を確保する方法として、始端と終端を必要溶接長より延出した位置にとつて余分に溶接し、その後余分な溶接ビードを除去するという方法をとるものであり、そのためにはガウジング、グラインダー、エンドタブの取付け・切断及びグラインダー仕上げといつた一連の作業が必要になり多くの労力を要していた。また、これらの作業のための機材の準備も必要であり、さらに一旦溶接した溶接金属を除去するところから経済性にも問題があつた。 本発明は前記の如き従来のボツクス柱溶接法の欠点を除去すべく研究した結果創案されたものであつて、その目的とするところは、ガウジング、グラインダー、タブの取付け・切断、グラインダーといつた一連の作業を全く省略し、隅角部の溶接品質を能率良く、且つ経済的に確保することにある。 しかして、この目的を達成するため、本発明は、ボツクス柱の柱と柱の溶接にあたり、対向する上柱のボツクス柱の隅角部に耐火性固形フラツクスタブを該隅角部の対角線方向に配した状態で溶接を行うことにある。」 (イ)第2ページ左下欄下から第3行~第3ページ左上欄第4行 「次いで、以上のような予備施工を行つた下柱(1)と上柱(1’)を対向させると共に、裏当金(2)(2’)(3)(3’),(4)(4’)(5)(5’)で形成された下柱(1)と上柱(1’)のギャップ間とくに隅角部に第9図の如く、それぞれ耐火性固形フラツクスタブ(7)を挿入する。この場合、先に溶接する面をa,cとすると、前記耐火性固形フラツクスタブ(7)はその先端面をb,d面の裏当金(3)(3’)の両端に密着させ、かつ該タブ(7)の一辺(71)が隅角部の対角線上に接するようにする。従つて4角柱の場合には約45度の傾斜をもつて配置する。この耐火性固形フラツクスタブ(7)を挿入した状態が第10図である。 次にa,c面の溶接を行う。このa,c面及び後述するb,d面の溶接に際しては、隅角部で後述するようなアーク制御を行うが、いずれにしてもa,c面の溶接ビードの端部は前記耐火性固形フラツクスタブ(7)でサポートされ、この溶接の終つたときには、第11図に示される如き台形状に整形された溶接ビード(8)(8’)が形成される。このa,c面の溶接が完了したら、次に耐火性固形フラツクスタブ(7)を取り除く。この状況を示すのが第12図である。そして当該タブ(7)の除去の後に残るb,d面の溶接を行い、溶接ビード(9)(9’)が形成される。第13図はb,d面の溶接が完了した状況を示す。」 イ 図面 (ア)第9図 「 [図:0001427995000003.jpg] 」 (イ)第10図 「 [図:0001427995000004.jpg] 」 (ウ)第11図 「 [図:0001427995000005.jpg] 」 (エ)第12図 「 [図:0001427995000006.jpg] 」 (オ)第13図 「 [図:0001427995000007.jpg] 」 (2) 甲2記載の技術的事項 前記(1)より、甲2には次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。 「ボックス柱の隅角部に、溶接ビードの端部を整形する耐火性固形フラックス(7)を配置して、先に溶接するa、c面の溶接を行い、耐火性固形フラックス(7)の除去の後に、残るb、d面の溶接を行うこと。」 第5 当審の判断 1 本件特許発明1と甲1発明の対比 (1) 甲1発明の「上柱1」は本件特許発明1の「上柱部材」に相当し、以下同様に、「下柱2」は「下柱部材」に、「継手」は「接合部」に、「溶接する」は「溶接により接合する」に、「溶接方法」は「接合方法」及び「ボックス柱の接合方法」に、それぞれ相当する。 (2) 甲1発明の「継手のコーナー部の両側面」は本件特許発明1の「接合部となる空間」に相当し、同様に、「コーナー部を除いた側面の溶接を行」うことは「空間の一辺の溶接領域を溶接する先行溶接を行なう第1ステップ」に、それぞれ相当する。 (3) 甲1発明の「継手のコーナー部の側面の溶接の始終端部の金属」は本件特許発明1の「先行溶接の端部」に相当し、同様に「若干取り除き」は「削る」に相当する。そして、甲1発明の「前記継手のコーナー部の側面の溶接の始終端部の金属を若干取り除」くことと本件特許発明1の「前記タブを取り外して、前記先行溶接の端部を前記ラインに向かって削る第2ステップ」を対比すると、両者は「前記先行溶接の端部を削る第2ステップ」という点に限り一致する。 (4) 甲1発明の「継手のコーナー部の側面の溶接の端部の金属に接するようにコーナー部の廻し溶接を行う」ことは本件特許発明1の「先行溶接の端部に接合する後行溶接を行なう第3ステップとを備える」ことに相当する。 したがって、本件特許発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 2 本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点 (1) 一致点 「ボックス柱を構成する上柱部材と下柱部材との接合部を溶接により接合する接合方法であって、 前記接合部となる空間において、前記空間の一辺の溶接領域を溶接する先行溶接を行なう第1ステップと、 前記先行溶接の端部を削る第2ステップと、 前記先行溶接の端部に接合する後行溶接を行なう第3ステップとを備えるボックス柱の接合方法。」 (2) 相違点 本件特許発明1の第1ステップは、「ボックス柱の角のラインを超える位置に、溶接を止めるタブを配置して」、先行溶接を行い、第2ステップは、「タブを取り外して」、先行溶接の端部を「前記ラインに向かって」削るのに対して、甲1発明の第1ステップ(コーナー部を除いた側面の溶接を行うこと)は、タブを配置せずに先行溶接(コーナー部を除いた側面の溶接)を行い、したがって、第2ステップ(溶接の始終端部の金属を若干取り除くこと)は、タブの取り外しを行わずに、先行溶接の始終端部を削る点。 3 理由1(新規性、第3の1(1))について 前記2(2)のとおり、本件特許発明1は、甲1発明との間に相違点が存在するから、甲1発明と同一ではなく、甲1に記載された発明とはいえない。 これに対して、申立人は、甲1に記載された発明(特許異議申立書第5ページ下から第11~4行の第1図に係る記載を根拠として認定した発明)の第1ステップについて、「タブ」を認定していないにもかかわらず、本件特許発明1との対比(特許異議申立書第7ページ第6~13行)において、甲1に記載された発明の第1ステップが、本件特許発明1の第1ステップ、すなわち、タブを配置して先行溶接を行うステップに相当する旨を説明している。 しかし、甲1の第1図に係る記載を根拠として発明を認定すると、タブを配置して先行溶接を行うことは認定できないから、申立人の上記の説明は誤っており、採用できない。 4 理由2(進歩性、第3の1(2))について 本件特許発明1と甲1発明の相違点について、以下、検討する。 (1) 甲2記載の技術的事項について 甲2記載の技術的事項(上記第4の2(2))は、「ボックス柱の隅角部に、溶接ビードの端部を整形する耐火性固形フラックス(7)を配置して、先に溶接するa、c面の溶接を行い、耐火性固形フラックス(7)の除去の後に、残るb、d面の溶接を行うこと。」であり、甲2記載の技術的事項の「溶接ビードの端部を整形する耐火性固形フラックス(7)」が、相違点に係る「溶接を止めるタブ」に相当するといえるから、溶接を止めるタブを配置して先行溶接を行い、タブを取り外して後行溶接を行なうことは、甲2記載の技術的事項に示されているといえる。 しかし、甲1発明に甲2記載の技術的事項を適用しても、以下に説示するように、相違点に係る「ボックス柱の角のラインを超える位置に、溶接を止めるタブを配置」するという構成には至らない。 すなわち、甲2記載の技術的事項は、従来の溶接方法では、必要な溶接長よりも始端と終端を余分に延出して先行溶接を行った後に、余分な溶接部を除去して、後行溶接を行うものであったところを、余分な溶接や、溶接部の除去作業を省略するために、タブ(耐火性固形フラックス(7))を配置して先行溶接を行うものである(上記第4の2(1)ア(ア))から、甲2記載の技術的事項に接した当業者は、甲1発明に甲2記載の技術的事項を適用する際に、余分な溶接や、溶接部の除去作業が生じないように、ボックス柱の角のラインに沿うように、タブを配置するといえる。 したがって、甲1発明に甲2記載の技術的事項を適用しても、相違点に係る「ボックス柱の角のラインを超える位置に、溶接を止めるタブを配置」するという構成には至らない。 (2) 甲1記載の技術的事項について 甲1記載の技術的事項(上記第4の1(3)イ)は、「ボックス柱継手のコーナーにタブ材9を配置して、4つの面のうち相対する2面を溶接し、次にタブ材9を取り外して、残りの2つの面を溶接すること。」であり、甲1記載の技術的事項の「タブ材9」は、甲2記載の技術的事項の「耐火性固形フラックス(7)」と同様のものであるから、上記(1)で説示する理由と同様の理由により、甲1発明に甲1記載の技術的事項を適用しても、相違点に係る「ボックス柱の角のラインを超える位置に、溶接を止めるタブを配置」するという構成には至らない。 (3) 申立人の主張について 申立人は、甲1の第4図に係る記載を根拠として、甲1には、角のラインに溶接を止めるタブを設ける構成が示されているから、甲1に記載された発明に甲1のタブを適用すれば、角のラインを超える位置にタブを設けることを容易に想到できる旨の説明(特許異議申立書第8ページ下から第2行~第9ページ第6行)や、甲1に記載された発明に甲2の耐火性固形フラックスタブ7を適用すれば、角のラインを超える位置にタブを設けることを容易に想到できる旨の説明(特許異議申立書第9ページ第7~15行)をしているが、上記(1)及び(2)で説示するとおりであるから、当該主張は採用できない。 (4) 理由2(進歩性)の小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明、甲1記載の技術事項及び甲2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 小括 よって、請求項1に係る特許は、理由1(新規性)及び理由2(進歩性)により取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700383

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