特許異議申立
2023-701128
加熱調理器
- 審判番号
- 2023-701128
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-044469
- 登録番号
- 7315608
- 請求日
- 2023年10月20日
- 審決日
- 2024年09月27日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】ポレール弁理士法人
- 【異議申立人】株式会社 ユビランド・インターナショナル
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 村山 美保
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P1651.121-YAA(F24C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7315608号発明「加熱調理器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7315608号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2~4]について訂正することを認める。
特許第7315608号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7315608号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和3年3月18日に出願され、令和5年7月18日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月26日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和5年10月20日 :特許異議申立人 株式会社ユビランド・インターナショナル(以下、「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立て
令和6年 4月18日付け:取消理由通知
同年 6月20日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
同年 8月 6日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の(1)のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「該凹部の下面と前記下ヒーターが接触しており、」と記載されているのを、「該凹部の下面の全域と前記下ヒーターが接触しており、」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3及び請求項4も同様に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、「前記下ヒーターが接触して」いる「該凹部の下面」について「該凹部の下面の全域」であることを特定することで、発明特定事項を直列的に付加して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(2)新規事項の有無について
本件特許明細書の段落【0022】に、「図5は、図4の底面22cの図示を省略した透視平面図である。ここに示すように、底面22cの下方には、底面22cの凹部下面の全域と接触する形状の下平面ヒーター26bが配置されている。」と記載されている。
そうすると、訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0022】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものと認める。
(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項1は、「下ヒーターが接触して」いる「凹部の下面」について具体的に特定するものであって、発明特定事項を直列的に付加するものであり、発明の対象やカテゴリーを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
(4)一群の請求項
訂正前の請求項2~4について、請求項3~4は、請求項2を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項2~4に対応する訂正後の請求項2~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2~4]について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
被調理物を収納する調理庫と、
該調理庫の前面開口を開閉するドアと、
前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、
を具備した加熱調理器であって、
前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられており、
該凹部の下面と前記下ヒーターが接触しており、
前記下ヒーターは、平面ヒーターであり、
前記凸部の下面と前記平面ヒーターの間に密閉空間が形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
被調理物を収納する調理庫と、
該調理庫の前面開口を開閉するドアと、
前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、
を具備した加熱調理器であって、
前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられており、
該凹部の下面の全域と前記下ヒーターが接触しており、
前記下ヒーターは、平面ヒーターであり、
前記平面ヒーターの下方を弾性体の断熱部材で覆い、
該断熱部材の下方を剛体の抑え部材で覆い、
該抑え部材を前記調理庫の底面に固定することで、前記下ヒーターを前記調理庫の底面に押し付けることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記平面ヒーターには、前記抑え部材を前記調理庫の底面に固定するためのネジを通す切り欠き部を設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の加熱調理器において、
前記平面ヒーターは、電熱線を耐熱絶縁薄板で挟んだ平面ヒーターであることを特徴とする加熱調理器。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項2~4に係る特許に対して、当審が令和6年4月18日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(進歩性)
本件特許の請求項2~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて利用可能になった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
請求項2~4に係る発明に対して:甲第1号証、引用文献1
<引用文献等一覧>
(1)特開平6-94245号公報(甲第1号証であって、以下、「甲1」という。)
(2)国際公開第2017/154365号(以下、「引用文献1」という。)
第5 当審の判断
1 甲号証等の記載事項
(1)甲1について
ア 甲1の記載
本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである(以下同様。)。
a 「【0005】また、上記平面状ヒータ1は、加熱調理室の底板部の下面のうちのほぼ前端まで配設されているので、加熱調理室の前面開口部の下縁部がかなり高温になる。このため、加熱調理室の前面開口部を開閉する扉の温度がかなり高くなったり、調理終了後に扉を開放して調理物を取出すときに手指が高温部分に触れ易く、火傷をするおそれもあった。
【0006】更に、上記平面状ヒータ1の形状及び大きさが、加熱調理室の底板部の形状及び大きさとほぼ同じぐらいあるため、平面状ヒータ1から発生する熱が加熱調理室の底板部だけでなくオーブン本体の底部周辺まで伝わってこれを加熱してしまう傾向が強かった。従って、平面状ヒータ1から発生する熱が無駄に消費されてしまい、調理物の加熱に寄与する割合が低く、加熱効率が悪かった。
【0007】そこで、本発明の目的は、下ヒータの製作性を向上し得て、製造コストを易くでき、しかも、加熱調理室の前面開口部の下縁部が高温になることを防止でき、安全性を向上できると共に、加熱効率を良好にし得る加熱調理器を提供するにある。」
b 「【0012】また、平面状の下ヒータを、回転テーブルの回転軸よりも奥側に配置したので、加熱調理室の前面開口部の下縁部の温度がそれほど高くならず、従って、扉の温度が高くならないと共に、火傷することもなくなる。更に、平面状の下ヒータの形状及び大きさが、加熱調理室の底板部の形状及び大きさのほぼ半分程度になるため、下ヒータから発生する熱が加熱調理室の底板部以外の部分即ち調理器本体の底部周辺まで伝わり難くなる。このため、下ヒータから発生する熱が無駄に消費される量が減り、調理物の加熱に寄与する割合が高くなるため、加熱効率が良くなる。
【0013】この場合、下ヒータをほぼ半円形状に形成したので、下ヒータの形状は回転テーブルの奥側半分の形状に対応するものとなり、下ヒータの大きさが、回転テーブル上に載置された調理物を十分加熱するのに必要最小限の大きさになる。このため、下ヒータを必要最小限の大きさまで小形化することができ、それだけ製造コストも安くなる。」
c 「【0015】
【実施例】以下、本発明をヒータ付き電子レンジに適用した第1の実施例について図1ないし図4を参照しながら説明する。まず、ヒータ付き電子レンヒータ体構成を示す図2において、レンジ本体11内には、加熱調理室12が設けられている。この加熱調理室12の前面開口部は、扉13により開閉されるように構成されている。
【0016】また、レンジ本体11内における加熱調理室12の右側には、機械室(図示しない)が設けられており、この機械室内にマグネトロン、その駆動回路、冷却ファン装置(いずれも図示しない)等が配設されている。上記マグネトロンは、マイクロ波を加熱調理室12内へ供給して、該加熱調理室12内に収容された調理物を高周波加熱するものである。」
d 「【0018】一方、加熱調理室12の底部である底板部16には、その下面の後半部側に平面状の下ヒータ17が配設されている。この下ヒータ17は、図3に示すように、ほぼ半円形の薄板状をなす芯マイカ18と、この芯マイカ18に図示するように巻回されたヒータ線19と、このヒータ線19が巻回された芯マイカ18を上下から挟むものであって該芯マイカ18とほぼ同形状をなす2枚のカバーマイカ20、20とから構成されている。
【0019】このような構成の下ヒータ17は、上記底板部16の下面に直接密接するように配置され、矩形板状の断熱材21を挟んでヒータ取付板22で押え付けることにより取付固定されている。この場合、上記ヒータ取付板22は、底板部16の下面にリベット23により固着されている。」
e 「【0031】更に、平面状の下ヒータ17の形状及び大きさが、加熱調理室12の底板部16の形状及び大きさのほぼ半分以下になるため、下ヒータ17から発生する熱が加熱調理室12の底板部16以外の部分即ちレンジ本体11の底部周辺まで伝わる割合が少なくなる。このため、下ヒータ17から発生する熱が無駄に消費される量が減り、調理物の加熱に寄与する割合が高くなるため、加熱効率が良くなる。具体的には、パンを焼く調理において、調理時間が従来構成に比べて約1分程度短縮される。」
f 「
[図:0001417624000001.jpg]
」(図1)
g 「
[図:0001417624000002.jpg]
」(図3)
h 「
[図:0001417624000003.jpg]
」(図4)
イ 上記アから認められること
a 図1及び図4から、加熱調理室12の底板部16の上面には同心円状に、凸部と凸部より低い凹部が設けられていることが看取される。
b 段落【0019】の「下ヒータ17は、上記底板部16の下面に直接密接するように配置され」との記載、及び、図1とから、底板部16の凹部の下面と下ヒータ17が接触していることが把握される。
c 上記bと、段落【0031】の「平面状の下ヒータ17の形状及び大きさが、加熱調理室12の底板部16の形状及び大きさのほぼ半分以下になる」との記載、及び、図1と図4とから、底板部16の凹部の下面のほぼ半分以下の領域と下ヒータ17が接触していることが把握される。
d 段落【0018】の「下ヒータ17は」「ほぼ半円形の薄板状をなす芯マイカ18と」「芯マイカ18を上下から挟むものであって該芯マイカ18とほぼ同形状をなす2枚のカバーマイカ20、20とから構成されている」との記載、及び、図1とから、下ヒータ17は平板状であることが把握される。
e 段落【0019】の「下ヒータ17は、上記底板部16の下面に直接密接するように配置され、矩形板状の断熱材21を挟んでヒータ取付板22で押え付けることにより取付固定されている。」との記載、及び、そして、図3より、断熱材21の大きさが下ヒータ17よりも大きく、ヒータ取付板22の大きさが断熱材21よりも大きいとが看取されるから、平板状の下ヒータ17の下方を断熱材21で覆い、断熱材21の下方をヒータ取付板22で覆っていることが把握される。
ウ 甲1発明
上記ア及びイを総合すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
〔甲1発明〕
「調理物を収容する加熱調理室12と、
加熱調理室12の前面開口部を開閉する扉13と、
加熱調理室12の底板部16の下面に直接密接するように配置した下ヒータ17と、
が配設されたヒータ付き電子レンジであって、
加熱調理室12の底板部16の上面には同心円状に、凸部と、凸部より低い凹部が設けられており、
凹部の下面のほぼ半分以下の領域と下ヒータ17が接触しており、
下ヒータ17は平板状の下ヒータ17であり、
平板状の下ヒータ17の下方を断熱材21で覆い、
断熱材21の下方をヒータ取付板22で覆い、
ヒータ取付板22を底板部16に固着することで、下ヒータ17を底板部16に押え付けるヒータ付き電子レンジ。」
(2)引用文献1について
ア 引用文献1の記載
本件特許の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、次の記載がある。
a 「[0001] 本開示は、加熱庫内の被調理物である食品を加熱調理する加熱調理器に関し、特に加熱庫の天井壁上に設けた平面ヒーターにより被調理物を加熱する加熱調理器に関する。」
b 「[0041] [平面ヒーターユニット]
図5は、平面ヒーターユニット8を分解して示す分解斜視図である。図5に示すように、平面ヒーターユニット8は、図5の下側から、加熱庫4の天井壁を構成する加熱庫上板10と、加熱庫上板10の上面に密着される平面ヒーター11と、マイカで形成された当て板となる押え具12と、平面ヒーター11から上方への熱伝導を遮断する第1断熱材13と、平面ヒーター11を加熱庫上板10に第1断熱材13を介して押圧する押え板14とを有している。また、平面ヒーターユニット8には、平面ヒーター11の端子部24(図16参照)などを電気的に絶縁する絶縁シート15と、平面ヒーターユニット8の熱が本体1の外カバーへ伝熱されるのを遮断する遮熱板16と、第2断熱材17とが設けられている。このように、平面ヒーターユニット8は、積み上げ方式の組み立て構造であり、保守時には、各部品をすべて交換できるため、保守性の向上が図られている。さらに、平面ヒーターユニット8には、平面ヒーター11により直接的に加熱された加熱領域の温度を検出するヒーター温度検出手段であるヒーター温度検出部18が設けられている。以下、平面ヒーターユニット8における各構成物について詳細に説明する。」
c 「[0057] [第1断熱材]
図5に示したように、平面ヒーター11を覆うように第1断熱材13が配設されている。第1断熱材13は、平面ヒーター11の上面からの熱を遮断する機能を有しており、例えば、ガラスウールにより形成されている。第1断熱材13は、加熱庫上板10における少なくとも発熱領域10aの全面を覆うことができる形状を持ち、実質的に同一の厚みを有して、少なくとも厚み方向に弾性力(復元力)を有する。」
d 「
[図:0001417624000004.jpg]
[図:0001417624000005.jpg]
」(図3ないし図5)
イ 引用文献1記載事項
上記アを総合すると、引用文献1には、次の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されていると認める。
〔引用文献1記載事項〕
「平面ヒーターにより被調理物を加熱する加熱調理器において、平面ヒーターユニット8は加熱庫上板10と、平面ヒーター11と、押え具12と、第1断熱材13と、押え板14とを有し、第1断熱材13は、ガラスウールにより形成され、弾性力を有すること。」
(3)甲2号証について
ア 甲2号証(実願平2-58276号(実開平4-18208号)のマイクロフィルム)(以下、「甲2」という。)には、以下の記載がある。
a 「また、従来では、例えば加熱室の底板に別部品としての金具を固着し、この金具を用いて平面ヒータを固定するようにしたものがある。
これは、底板自身から切り起こし等により金具を形成すると、孔が開き、電波漏れや食品等の外部への流出を生じる問題があるためである。
このヒータ取付用に別金具を設けた従来の加熱調理器は、第4図ないし第7図に示すように構成され、角筒状キャビティ本体(1)、キャビティ後面板(2)及び開口部を有するキャビティ前面板(3)により被加熱物を収納する加熱室(4)が形成され、被加熱物を電熱加熱する平面ヒータ(5)がキャビティ本体(1)の底板の下面に配置されると共に、この下面に断熱材(6)を介して押え板(7)が取り付けられている。
キャビティ本体(1)の底板の下面には、その四隅に引っ掛け金具(8)がスポット溶接により固着され、平面ヒータ(5)、断熱材(6)及び押え板(7)のそれぞれの四隅の透孔(5)’、(6)’、(7)’に引っ掛け金具(8)を順次挿通した後、この金具(8)を底板に平行になるように曲げるか、金具(8)の先端部を底板に直交した状態でひねることにより、平面ヒータ(5)を底板の下面に密着固定している。」(明細書第2頁第13行~第3頁第15行)
b 「
[図:0001417624000006.jpg]
」(第4図)
(4)甲3号証について
ア 甲3号証(特開2020-51633号公報)(以下、「甲3」という。)には、以下の記載がある。
a 「【0022】
マイカヒータ16aは、マイカ板にヒータ線を巻き付けて平面状に形成し、加熱室12の上面12aの裏側に押し付けるようにして配置される。また、マイカヒータ16aは、加熱室12の上面12aを加熱して加熱室12内の食品を輻射熱によって加熱する。」
b 「【0024】
断熱材16bは、マイカヒータ16aの上面に重ねられる。また、断熱材16bは、線状にしたガラス繊維を略矩形の板状に成形したものである。また、断熱材16bは、マイカヒータ16aよりも外周縁部が大きく形成されている。」
2 対比・判断
(1)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
(ア) 甲1発明の「調理物」は、本件発明2の「被調理物」に相当し、以下同様に、「収容する」は「収納する」に、「加熱調理室12」は「調理庫」に、「前面開口部」は「前面開口」に、「扉13」は「ドア」に、「底板部16」は「底面」に、「直接密接するように配置した」は「接触配置した」に、「下ヒータ17」は「下ヒーター」に、「配設された」は「具備した」に、「ヒータ付き電子レンジ」は「加熱調理器」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1発明の「調理物を収容する加熱調理室12と、加熱調理室12の前面開口部を開閉する扉13と、加熱調理室12の底板部16の下面に直接密接するように配置した下ヒータ17と、が配設されたヒータ付き電子レンジ」は、本件発明2の「被調理物を収納する調理庫と、該調理庫の前面開口を開閉するドアと、前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、を具備した加熱調理器」に相当する。
(イ) 甲1発明の「同心円状に、凸部と、凸部より低い凹部が設けられ」ていることは、畝状に凸部と凹部が配置されているといえる。
そうすると、甲1発明の「加熱調理室12の底板部16の上面には同心円状に、凸部と、凸部より低い凹部が設けられて」いることは、本件発明2の「前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられて」いることに相当する。
(ウ) 甲1発明の「凹部の下面のほぼ半分以下の領域と下ヒータ17が接触して」いることと、本件発明2の「該凹部の下面の全域と前記下ヒーターが接触して」いることとは、「凹部の下面と下ヒーターが接触して」いることの限りにおいて一致する。
(エ)甲1発明の「平板状の下ヒータ17」は、本件発明2の「平面ヒーター」に相当するから、甲1発明の「下ヒータ17は平板状の下ヒータ17であり」は、本件発明2の「前記下ヒーターは、平面ヒーターであり」に相当する。
(オ) 甲1発明の「断熱材21」は、本件発明2の「断熱部材」に相当するから、甲1発明の「平板状の下ヒータ17の下方を断熱材21で覆」うことと、本件発明2の「前記平面ヒーターの下方を弾性体の断熱部材で覆」うこととは、「前記平面ヒーターの下方を断熱部材で覆」うことの限りにおいて一致する。
(カ) 甲1発明の「ヒータ取付板22」は、本件発明2の「抑え部材」に相当するから、甲1発明の「断熱材21の下方をヒータ取付板22で覆」うことと、本件発明2の「該断熱部材の下方を剛体の抑え部材で覆」うこととは、「該断熱部材の下方を抑え部材で覆」うことの限りにおいて一致する。
(キ) 甲1発明の「固着する」は、本件発明2の「固定する」に相当し、甲1発明の「押え付ける」は、本件発明2の「押し付ける」に相当するから、甲1発明の「ヒータ取付板22を底板部16に固着することで、下ヒータ17を底板部16に押え付ける」ことは、本件発明2の「該抑え部材を前記調理庫の底面に固定することで、前記下ヒーターを前記調理庫の底面に押し付ける」ことに相当する。
(ク) 甲1発明の「ヒータ付き電子レンジ」は、本件発明2の「加熱調理器」に相当する。
以上のことから、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
「被調理物を収納する調理庫と、
該調理庫の前面開口を開閉するドアと、
前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、
を具備した加熱調理器であって、
前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられており、
該凹部の下面と前記下ヒーターが接触しており、
前記下ヒーターは、平面ヒーターであり、
前記平面ヒーターの下方を断熱部材で覆い、
該断熱部材の下方を抑え部材で覆い、
該抑え部材を前記調理庫の底面に固定することで、前記下ヒーターを前記調理庫の底面に押し付ける加熱調理器。」
〔相違点1〕
断熱部材に関して、本件発明2では、「弾性体」であるのに対して、甲1発明では、弾性体であるか否か不明な点。
〔相違点2〕
抑え部材に関して、本件発明2では、「剛体」であるのに対して、甲1発明では、剛体であるか否か不明な点。
〔相違点3〕
下ヒーターが接触していることに関して、本件発明2では、該凹部の下面「の全域」と接触しているのに対して、甲1発明では、凹部の下面「のほぼ半分以下の領域」と接触している点。
イ 判断
事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。
甲1の段落【0005】には、「上記平面状ヒータ1は、加熱調理室の底板部の下面のうちのほぼ前端まで配設されているので、加熱調理室の前面開口部の下縁部がかなり高温になる。このため、加熱調理室の前面開口部を開閉する扉の温度がかなり高くなったり、調理終了後に扉を開放して調理物を取出すときに手指が高温部分に触れ易く、火傷をするおそれもあった。」と記載され、段落【0006】には、「上記平面状ヒータ1の形状及び大きさが、加熱調理室の底板部の形状及び大きさとほぼ同じぐらいあるため、平面状ヒータ1から発生する熱が加熱調理室の底板部だけでなくオーブン本体の底部周辺まで伝わってこれを加熱してしまう傾向が強かった。」と記載され、段落【0012】には、「平面状の下ヒータの形状及び大きさが、加熱調理室の底板部の形状及び大きさのほぼ半分程度になるため、下ヒータから発生する熱が加熱調理室の底板部以外の部分即ち調理器本体の底部周辺まで伝わり難くなる。このため、下ヒータから発生する熱が無駄に消費される量が減り、調理物の加熱に寄与する割合が高くなるため、加熱効率が良くなる。」と記載され、段落【0013】には、「下ヒータをほぼ半円形状に形成したので、下ヒータの形状は回転テーブルの奥側半分の形状に対応するものとなり、下ヒータの大きさが、回転テーブル上に載置された調理物を十分加熱するのに必要最小限の大きさになる」と記載されている。
これら段落【0005】、【0006】、【0012】、【0013】の記載と図4から、甲1発明の平面状の下ヒータの形状及び大きさが、加熱調理室の底板部の形状及び大きさのほぼ半分程度であることで、下ヒータから発生する熱が加熱調理室の底板部以外の部分、すなわち調理器本体の底部周辺まで伝わり難くなること、及び、下ヒータをほぼ半円形状に形成したので、回転テーブル上に載置された調理物を十分加熱するのに必要最小限の大きさになることが理解される。そうすると、甲1発明において下ヒータを、底板部の全域と接触する大きさにすることには、阻害要因があるといわざるを得ない。
したがって、甲1発明と引用文献1記載事項に基いて、上記相違点3に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたということはできない。
甲2及び甲3の記載事項は、上記第5 1(3)及び(4)のとおりであって、上記相違点3に係る本件発明2の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
よって、相違点1~2について論じるまでもなく、本件発明2は、甲1発明、引用文献1記載事項及び甲2ないし甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明3~4について
本件発明3~4も、本件発明2の「該凹部の下面「の全域」と前記下ヒーターが接触している」ことと同一の構成を備えるものであるから、本件発明2と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明、引用文献1記載事項及び甲2、甲3に記載された事項及びに基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)令和6年8月6日の意見書における申立人の主張について
令和6年8月6日の意見書において、申立人は、参考資料1(特開昭63-183318号公報)を提出し、次の主張をしている。
「参考資料1の発明には、『加熱室1の底面外側には面状ヒーター8が全域に設けられ、面状ヒーター8の外側にはヒータ押さえ板9b、断熱材10b、断熱板2が配置されその外側から電動機固定板16が取付けられる。電動機固定板16の折り曲げ部は断熱板2、断熱材10bを貫通してヒーター押さえ板9b、面状ヒーター8を加熱室1底面の外壁へ圧接させることにより均一な面接触にしている。』(第3ページ 右側上段9行目から17行目)と、記載されている。
参考資料1の発明は上記のように『加熱室1の底面外側には面状ヒーター8が全域に設けられ、(中略)面状ヒーター8を加熱室1底面の外壁へ圧接させることにより均一な面接触にしている。』ことが明記されている。
つまり訂正請求項2の訂正により新たに生じた相違点「該凹部の下面の全域と前記下ヒーターが接触しており、」については、参考資料1の発明に記載されている。
前述のように、本件特許発明と参考資料1の発明は技術分野が一致しており、ともに加熱効率の改善を課題としている発明であるので、本件特許発明2に周知技術である参考資料1の発明を適用することは阻害されない。」
上記主張について検討すると、相違点3の検討で述べたとおり、甲1の記載から、甲1発明の平面状の下ヒータの形状及び大きさが、加熱調理室の底板部の形状及び大きさのほぼ半分程度であり、下ヒータから発生する熱が加熱調理室の底板部以外の部分即ち調理器本体の底部周辺まで伝わり難くなること、及び、下ヒータをほぼ半円形状に形成したので、回転テーブル上に載置された調理物を十分加熱するのに必要最小限の大きさになることが理解される。そうすると、甲1発明の下ヒータを底板部の全域と接触する大きさとすることには、阻害要因があるといわざるを得ない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明2~4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立ての理由について
申立人は、特許異議申立書の4-1-3(第14ページ第9行~第12行)において、「甲1発明に甲2発明を適用し、甲1発明のヒータ17を、底板部16の下面の全域に接触配置させるようにすることで、凸部の下面と平面状の下ヒータ17間を密閉空間とし、特許発明1とすることは、当業者ならば容易にできることである。」との申立て理由を主張する。
以下、当該申立て理由について検討する。
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
(ア) 甲1発明の「調理物」は、本件発明1の「被調理物」に相当し、以下同様に、「収容する」は「収納する」に、「加熱調理室12」は「調理庫」に、「前面開口部」は「前面開口」に、「扉13」は「ドア」に、「底板部16」は「底面」に、「直接密接するように配置した」は「接触配置した」に、「下ヒータ17」は「下ヒーター」に、「配設された」は「具備した」に、「ヒータ付き電子レンジ」は「加熱調理器」にそれぞれ相当する。
そうすると、甲1発明の「調理物を収容する加熱調理室12と、加熱調理室12の前面開口部を開閉する扉13と、加熱調理室12の底板部16の下面に直接密接するように配置した下ヒータ17と、が配設されたヒータ付き電子レンジ」は、本件発明1の「被調理物を収納する調理庫と、該調理庫の前面開口を開閉するドアと、前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、を具備した加熱調理器」に相当する。
(イ) 甲1発明の「同心円状に、凸部と、凸部より低い凹部が設けられ」ていることは、畝状に凸部と凹部が配置されているといえる。
そうすると、甲1発明の「加熱調理室12の底板部16の上面には同心円状に、凸部と、凸部より低い凹部が設けられて」いることは、本件発明1の「前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられて」いることに相当する。
(ウ) 甲1発明の「凹部の下面のほぼ半分以下の領域と下ヒータ17が接触して」いることは、本件発明1の「該凹部の下面と前記下ヒーターが接触して」いることに相当する。
(エ)甲1発明の「平板状の下ヒータ17」は、本件発明1の「平面ヒーター」に相当するから、甲1発明の「下ヒータ17は平板状の下ヒータ17であり」は、本件発明1の「前記下ヒーターは、平面ヒーターであり」に相当する。
(オ) 甲1発明の「ヒータ付き電子レンジ」は、本件発明1の「加熱調理器」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
「被調理物を収納する調理庫と、
該調理庫の前面開口を開閉するドアと、
前記調理庫の底面の下面に接触配置した下ヒーターと、
を具備した加熱調理器であって、
前記調理庫の底面の上面には、畝状の凸部と、該凸部より低い凹部が設けられており、
該凹部の下面と前記下ヒーターが接触しており、
前記下ヒーターは、平面ヒーターである、
加熱調理器。」
〔相違点4〕
本件発明1は「前記凸部の下面と前記平面ヒーターの間に密閉空間が形成されている」のに対し、甲1発明はかかる事項を有しない点。
以下、相違点4について検討する。
上記1(1)イaで述べたとおり、甲1の図1及び図4から、加熱調理室12の底板部16の上面には同心円状に、凸部と凸部より低い凹部が設けられていることが看取される。
そして、底板部の凸部が同心円状に設けられていることを考慮すると、甲1発明の底板部の凸部の下面と下ヒータ17との間に密閉空間を形成するためには、下ヒータが、同心円状の凸部が設けられている範囲を覆う大きさ以上である必要があると認められる。
一方、上記2(1)イで述べたとおり、甲1の段落【0005】、【0006】、【0012】、【0013】の記載と図4から、甲1発明の平面状の下ヒータの形状及び大きさが、加熱調理室の底板部の形状及び大きさのほぼ半分程度であり、下ヒータから発生する熱が加熱調理室の底板部以外の部分、すなわち調理器本体の底部周辺まで伝わり難くなること、及び、下ヒータをほぼ半円形状に形成したので、回転テーブル上に載置された調理物を十分加熱するのに必要最小限の大きさになることが理解される。
そうすると、甲1発明において、下ヒータを、底板部の凸部の下面と密閉空間を形成するように、底板部の凸部が設けられた面を覆う大きさとすることには、阻害要因があるといわざるを得ない。
本件発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許異議申立書に記載された理由(特許法第29条第2項)により取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701128