特許異議申立
2025-700424
情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
- 審判番号
- 2025-700424
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-206403
- 登録番号
- 7569539
- 請求日
- 2025年04月15日
- 審決日
- 2025年12月10日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】一般財団法人日本気象協会
- 【権利者代理人】岩池 満
- 【権利者代理人】菅沼 和弘
- 【権利者】国立大学法人 筑波大学
- 【権利者代理人】岩池 満
- 【権利者代理人】菅沼 和弘
- 【異議申立人】中田 覚史
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 伊藤 幸仙
- 分類
- P1651.113-YAA(G01W) / P1651.121-YAA(G01W) / P1651.536-YAA(G01W) / P1651.537-YAA(G01W) / P1651.851-YAA(G01W)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7569539号発明「情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7569539号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、〔3〕、〔4〕について訂正することを認める。
特許第7569539号の請求項1-4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7569539号の請求項1-4に係る特許についての出願(以下「本件出願」という。)は、令和5年12月6日の出願であって、令和6年10月9日にその特許権の設定登録がされ、同年10月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 4月15日 :特許異議申立人 中田覚史(以下「申立人」
という。)による請求項1-4に係る特許
に対する特許異議の申立て
同年 6月 3日付け:取消理由通知書(以下「取消理由通知書」
という。)
同年 8月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書
(以下「訂正請求書」という。)の提出
同年 9月19日 :特許権者による手続補正書の提出
同年 9月30日付け:当審合議体から申立人への、訂正請求が
あった旨の通知書
同年10月31日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
令和7年9月19日に提出の手続補正書により補正された本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、特許請求の範囲を、同訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2、3、4について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示している。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段と、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域における長期気象予測を行う気象予測手段と、
過去の数値予報モデルによる所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標のシミュレーションデータと、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明するモデルを生成する学習手段と、
を備え、
前記指標取得手段は、新しい数値予報モデルによる前記所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標の予想を取得し、
前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記モデルに入力し、前記予測領域の前記長期気象予測として当該モデルの出力を用いる、
情報処理装置。」
と記載されているのを、
「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段と、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段と、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段と、
を備え、
前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、
前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる、
情報処理装置。」
に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「情報処理装置が実行する情報処理方法において、
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得ステップと、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域における長期気象予測を行う気象予測ステップと、
過去の数値予報モデルによる所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標のシミュレーションデータと、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明するモデルを生成する学習ステップと、
を含み、
前記指標取得ステップは、新しい数値予報モデルによる前記所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標の予想を取得するステップを含み、
前記気象予測ステップは、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記モデルに入力し、前記予測領域の前記長期気象予測として当該モデルの出力を用いるステップを含む、
情報処理方法。」
と記載されているのを、
「情報処理装置が実行する情報処理方法において、
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得ステップと、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測ステップと、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習ステップと、
を含み、
前記指標取得ステップは、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得するステップを含み、
前記気象予測ステップは、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いるステップを含む、
情報処理方法。」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「コンピュータに、
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得ステップと、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域における長期気象予測を行う気象予測ステップと、
過去の数値予報モデルによる所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標のシミュレーションデータと、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明するモデルを生成する学習ステップと、
を含む制御処理を実行させ、
前記指標取得ステップとして、新しい数値予報モデルによる前記所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標の予想を取得するステップを含む制御処理を実行させ、
前記気象予測ステップとして、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記モデルに入力し、前記予測領域の前記長期気象予測として当該モデルの出力を用いるステップを含む制御処理を実行させる、
プログラム。」
と記載されているのを、
「コンピュータに、
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得ステップと、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測ステップと、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習ステップと、
を含む制御処理を実行させ、
前記指標取得ステップとして、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得するステップを含む制御処理を実行させ、
前記気象予測ステップとして、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いるステップを含む制御処理を実行させる、
プログラム。」
に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項、独立特許要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1の訂正について、以下の「(ア)~(エ)」の4項目に分けて検討する。
(ア)「前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域における長期気象予測を行う気象予測手段」を、「前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段」とする訂正
(イ)「過去の数値予報モデルによる所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標のシミュレーションデータと、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明するモデルを生成する学習手段」を「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段」とする訂正
(ウ)「前記指標取得手段は、新しい数値予報モデルによる前記所定期間後までの前記遠隔領域の前記指標の予想を取得し」を「前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し」とする訂正
(エ)「前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記モデルに入力し、前記予測領域の前記長期気象予測として当該モデルの出力を用いる」を「前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる」とする訂正
イ 前記「(ア)及び(エ)」における「長期気象予測」の期間を「予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における」(「前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における」)とその期間を明確化すること、及び前記「(イ)及び(ウ)」における「(第2)数値予報モデル」によりシミュレーションする遠隔領域の指標の「所定期間」を「第2所定期間」という名称にして長期気象予測の第1所定期間とは異なる期間であることを明確化することは、取消理由通知書で特許請求の範囲の記載が不備であるという特許法第36条第6項第2号違反の指摘を受けて訂正したものであり、明瞭でない記載の釈明に当たる。したがって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
ウ 前記「(イ)及び(ウ)」における「(第2)数値予報モデル」によりシミュレーションする遠隔領域の指標の「所定期間」について、「所定期間後」に対する期間の始点を、「過去所定時点から」及び「前記予測時点から」とする補正は、取消理由通知書で特許請求の範囲の記載が不備であるという特許法第36条第6項第2号違反の指摘を受けて訂正したものであり、明瞭でない記載の釈明に当たる。したがって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
エ 前記「(イ)及び(ウ)」における遠隔領域の指標をシミュレーションして求める「数値予報モデル」を「第2数値予報モデル」という名称にし、前記「(イ)及び(エ)」における「気象予測手段」における予測領域の長期気象予測を出力する「モデル」を「第1モデル」という名称にして、それぞれのモデルが別々のモデルであることを明確化することは、取消理由通知書で特許請求の範囲の記載が不備であるという特許法第36条第6項第2号違反の指摘を受けて訂正したものであり、明瞭でない記載の釈明に当たる。したがって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
オ 前記「(イ)」における「前記遠隔領域の前記指標のシミュレーションデータ」を「前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標」とし、前記「(ウ)」における「前記遠隔領域の前記指標の予想」を「前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想」とすることは、「(第2)数値予報モデル」により求められる遠隔領域の指標はシミュレーションデータであることをより明確化するための訂正であり、明瞭でない記載の釈明に当たる。したがって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
カ 前記「イ~オ」から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載が明瞭でない点を明瞭化するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載について、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
キ そして、モデルの区別、所定期間の区別、所定期間後の始点については、本件特許の明細書に以下のように記載されている。(下線は当審で付与した。)
(ア)「【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、1か月以上先の極端な高温や低温、大雨、及び渇水並びに梅雨明け時期や台風の接近数等も含め長期気象予測を精度良く行うことを目的とする。」
(イ)「【0007】
本発明によれば、1か月以上先の極端な高温や低温、大雨、及び渇水並びに梅雨明け時期や台風の接近数等も含め長期気象予測を精度良く行うことができる。」
(ウ)「【0010】
図1に示す情報処理システムは、気象予測装置1と、数値予報モデルによる指数演算装置2と、予測対象の気象観測データ提供装置3とが、インターネット等の所定のネットワークを介して相互に接続されることで構成される。
【0011】
数値予報モデルによる指数演算装置2は、予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する情報処理装置である。
気象予測装置1は、本発明が適用される情報処理装置の一実施形態であって、数値予報モデルによる指数演算装置2により演算された遠隔領域の指標に基づいて、予測領域における長期気象予測を行う情報処理装置である。
【0012】
ここで、長期気象予測とは、1ケ月以上先の所定期間における気象予測を意味し、一態様としては2ケ月以上先であってもよく、また一態様としては3ケ月以上先であってもよい。
予測領域とは、長期気象予測を行う領域であって、例えば、日本国の他、アメリカやヨーロッパ等が想定される。
遠隔領域とは、予測領域に対して、同一時間帯の気象自体は関連性を有しない程度に距離が離間した領域である。例えば、予測領域が日本国であれば、亜熱帯や熱帯のインド洋やフィリピン付近が遠隔領域となる。また例えば、予測領域がアメリカであれば、エルニーニョ監視海域が遠隔領域である。
【0013】
具体的には例えば、数値予報モデルによる指数演算装置2は、インド洋やフィリピン付近の対流活動の強さを指標として演算する。気象予測装置1は、当該指標に基づいて、所定時点よりも1ケ月以上先の所定月(例えば3月時点に対する7月)の日本国の日照時間を予想する。
また例えば、数値予報モデルによる指数演算装置2は、エルニーニョ監視海域の海面水温の変化を指標として演算する。気象予測装置1は、当該指標に基づいて、所定時点よりも1ケ月以上先の所定月(例えば3月時点に対する7月)のアメリカの降水量を予想する。
なお、このような遠隔領域の指標を用いた予測領域の長期気象予測の具体例については、図4乃至図7を参照して後述する。
【0014】
ここで、本実施形態の気象予測装置1は、所定の機械学習の結果得られるモデル(例えば後述の図3の予測式の回帰係数61)を用いて、予測領域の長期気象予測を行うことができる。
予測対象の気象観測データ提供装置3は、このような所定の機械学習によりモデルが生成又は更新される際に、学習用データの一部として予測領域の実際の気象観測データを提供する。
なお、所定の機械学習の詳細については、図3の予測式の回帰係数61の説明として後述する。
なお、ここでいう予測式の回帰係数は算出する手法を問わない。」
(エ)「【0022】
図3は、図1の情報処理システムにおける図2の気象予測装置1の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0023】
図3に示すように、気象予測装置1のCPU11においては、指標取得部51と、気象予測部52と、気象観測データ取得部53と、学習部54とが機能する。
記憶部18の一領域には、予測式の回帰係数61が配置されている。
【0024】
指標取得部51は、予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を演算する数値予報モデルによる指数演算装置2から、当該遠隔領域の当該指標を予測用データ(指標)として取得して、気象予測部52に提供する。
気象予測部52は、遠隔領域の指標(予測用データ)に基づいて、予測領域における長期気象予測を行う。
【0025】
本実施形態の気象予測部52は、所定の機械学習の結果得られる予測式の回帰係数61を用いて、予測領域の長期気象予測を行う。予測式は、Y=F(X,a)、Y:予測対象とする気象観測データ、X:数値予報モデルの指数、a:回帰係数によって表される。
この予測式の回帰係数61は、学習部54により生成又は更新される。
そこで、以下、学習フェーズにおける機能的構成について説明する。
【0026】
指標取得部51は、過去の数値予報モデルによる所定期間後までの遠隔領域の指標のシミュレーションデータを、学習用データ(指標)として、数値予報モデルによる指数演算装置2から取得して学習部54に提供する。
具体的には例えば、指標取得部51は、過去の数値予報モデルによる7ヶ月先までの遠隔領域の海面水温や対流活動のシミュレーションデータを、学習用データ(指標)として、数値予報モデルによる指数演算装置2から取得して学習部54に提供する。
【0027】
気象観測データ取得部53は、予測領域の実際の気象観測データを、学習用データとして、予測対象の気象観測データ提供装置3から取得して学習部54に提供する。
【0028】
学習部54は、指標取得部51により取得された学習用データ(指標)と、気象観測データ取得部53により取得された学習用データ(実際の気象観測データ)との関係を所定の機械学習により分析することで、遠隔領域の指標によって予測領域の長期気象観測の結果を説明する関係式としての予測式の回帰係数61を生成又は更新する。
【0029】
これにより、予測・運用フェーズでは、上述したように指標取得部51及び気象予測部52が機能することになる。
具体的には例えば、指標取得部51は、新しい数値予報モデルによる7ヶ月先までの遠隔領域の海面水温や対流活動の予想を、予測用データ(指標)として取得した場合、それを気象予測部52に提供する。
気象予測部52は、遠隔領域の指標(予測用データ)を予測式の回帰係数61(関係式)に取り込み、予測領域における長期気象予測を行う。」
(オ)「【0031】
図4において、本実施形態が適用された第1事例の長期気象予測の結果101(以下、「本実施形態第1事例結果101」と呼ぶ)は、日本国のうち西日本太平洋側を予測領域として、各年(1993年乃至2016年)の1月時点で予測した7月の降水量(平年比%)を示している。
本実施形態第1事例結果101において、遠隔地の指標としては、数値予報モデルによる亜熱帯や熱帯のインド洋やフィリピン付近の対流活動の予測が採用されている。
本実施形態第1事例結果101において、濃い実線は、観測(実際の気象観測データの値)を示している。薄い実線は、予測(長期気象予測の結果)を示している。破線は、70%予測区間を示している。」
(カ)「【0034】
図5において、本実施形態が適用された第2事例の長期気象予測の結果103(以下、「本実施形態第2事例結果103」と呼ぶ)は、日本国のうち関東甲信越を予測領域として、各年(1993年乃至2022年)の1月時点で予測した梅雨明け日(平年差)を示している。
本実施形態第2事例結果103において、遠隔地の指標としては、数値予報モデルによる亜熱帯や熱帯のインド洋やフィリピン付近の対流活動の予測が採用されている。
本実施形態第3事例結果103において、濃い実線は、観測(実際の気象観測データの値)を示している。薄い実線は、予測(長期気象予測の結果)を示している。破線は、70%予測区間を示している。」
(キ)「【0036】
図6において、本実施形態が適用された第3事例の長期気象予測の結果104(以下、「本実施形態第3事例結果104」と呼ぶ)は、日本国を予測領域として、各年(1993年乃至2023年)の6月時点で予測した9月の台風発生数を示している。
本実施形態が適用された第3事例の長期気象予測の結果105(以下、「本実施形態第3事例結果105」と呼ぶ)は、日本国を予測領域として、各年(1993年乃至2023年)の6月時点で予測した9月の本土への台風接近数を示している。ここで、本土とは、北海道、本州、四国、及び九州を意味している。
本実施形態第3事例結果104及び105において、遠隔地の指標としては、数値予報モデルによる亜熱帯や熱帯のインド洋やフィリピン付近の対流活動の予測が採用されている。
本実施形態第3事例結果104及び105において、濃い実線は、観測(実際の気象観測データの値)を示している。薄い実線は、予測(長期気象予測の結果)を示している。破線は、70%予測区間を示している。」
(ク)「【0038】
図7において、第4事例の対比のために示す実績106(以下、「第4事例実績106」と呼ぶ)は、日本国を予測領域として、各年(2019年乃至2022年)の7月の日照時間を示している。
本実施形態が適用された第4事例の長期気象予測の結果107(以下、「本実施形態第4事例結果107」と呼ぶ)は、日本国を予測領域として、各年(2019年乃至2022年)の4月時点で予測した7月の日照時間を示している。
本実施形態第4事例結果107において、遠隔地の指標としては、数値予報モデルによる亜熱帯や熱帯のインド洋やフィリピン付近の対流活動の予測が採用されている。」
ク 前記「キ」において、
(ア)第2数値予報モデルに当たる指数演算装置2の数値予報モデルは、本件特許の明細書の【0010】、【0011】、【0013】、【0024】及び【0026】に記載され、
(イ)第1モデルに当たる予測式の回帰係数61は、同明細書の【0014】及び【0028】に記載され、
(ウ)第2所定期間に当たる数値予報モデルでシミュレーションデータを演算する対象期間とその所定期間(対象期間)の始点は、同明細書の【0013】、【0026】及び【0029】に例示がなされ、
(エ)第1所定期間に当たる長期気象予測を行う対象期間とその所定期間(対象期間)の始点は、同明細書の【0005】、【0007】、【0012】、【0031】、【0034】、【0036】及び【0038】に例示がなされている。
ケ 前記「キ」で摘記した下線部の記載及び前記「ク」に示した各用語に対応する記載箇所を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、前記「ア(ア)~(エ)」に示した訂正後の技術事項は、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項3の「情報処理方法」が訂正前の請求項1の「情報処理装置」の各手段が行う技術事項をそれぞれステップで記載するようにしてそのカテゴリを変更した発明としたのと同様に、訂正後の請求項1の「情報処理装置」をそのカテゴリを変更して「情報処理方法」としたものであることに伴う訂正と認められる。したがって、その訂正内容は、訂正事項1と同様である。
イ したがって、前記「(1)」で検討したのと同様の理由により、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項4の「プログラム」が訂正前の請求項1の「情報処理装置」の各手段が行う技術事項をそれぞれステップで記載しかつそのステップをコンピュータに行わせるプログラムとしてそのカテゴリを変更した発明としたのと同様に、訂正後の請求項1の「情報処理装置」をそのカテゴリを変更して「プログラム」としたものであることに伴う訂正と認められる。従って、その訂正内容は、訂正事項1と同様である。
イ したがって、前記「(1)」で検討したのと同様の理由により、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)一群の請求項及び独立特許要件について
訂正前の請求項2は、請求項1を引用するものであるから、請求項1及び2は一群の請求項である。そして、上記訂正事項1は、その一群の請求項〔1-2〕においてなされたものである。
また、訂正前の請求項3及び4は、それぞれ他の請求項を引用しない独立形式の請求項であり、訂正前の請求項3及び4を引用する請求項は存在しないことから、請求項3及び4はそれぞれ一群の請求項である。そして、上記訂正事項2及び3は、それぞれ一群の請求項〔3〕〔4〕においてなされたものである。
よって、上記訂正事項1~3は、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。
また、本件においては、訂正前の請求項1~4について特許異議の申立てがされているので、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3. 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、〔3〕、〔4〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~4に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、本件訂正に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段と、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段と、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段と、
を備え、
前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、
前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる、
情報処理装置。
【請求項2】
前記遠隔領域の前記指標は、前記遠隔領域の海における対流活動と海面水温のうち少なくとも一方である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
情報処理装置が実行する情報処理方法において、
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得ステップと、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測ステップと、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習ステップと、
を含み、
前記指標取得ステップは、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得するステップを含み、
前記気象予測ステップは、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いるステップを含む、
情報処理方法。
【請求項4】
コンピュータに、
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得ステップと、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測ステップと、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習ステップと、
を含む制御処理を実行させ、
前記指標取得ステップとして、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得するステップを含む制御処理を実行させ、
前記気象予測ステップとして、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いるステップを含む制御処理を実行させる、
プログラム。」
第4 特許異議の申立ての概要について
1.特許異議の申立てにおける証拠
令和7年4月15日提出の特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)に添付された甲第1~7号証は以下のとおりである。
甲第1号証:F. Mekanik, et al.,“ Forecasting Victorian spring rainfall using ENSO and IOD: A comparison of linear multiple regression and nonlinear ANN”2012 International Conference on Uncertainty Reasoning and Knowledge Engineering,(2012),pp.86-89
甲第2号証:HAMADA S.BADR et al., "Application of Statistical Models to the Prediction of Seasonal Rainfall Anomalies over the Sahel,", JOURNAL OF APPLIED METEOROLOGY AND CLIMATOLOGY, (2014),VOLUME 53, pp.614-636
甲第3号証:植田宏昭,”気候システム論 グローバルモンスーンから読み解く気候変動”, 筑波大学出版会,2012年3月25日発行、pp.20-21,pp.150-155
甲第4号証:特開2022-76416号公報
甲第5号証:Yuhei Takaya et ai., “Skilful predictions of the Asian summer monsoon one year ahead”,nature communications,2021年,Vol.12,article id 2094,pp.1-8
甲第6号証:S.HIRAHARA et al.,“Japan Meteorological Agency/Meteorological Research Institute Couples Prediction System Version 3 (JMA/MRI-CPS3)”,Journal of the Meteorological Society of Japan,2023年1月6日, 101(2),pp.149-169
甲第7号証:第1章基礎編 1.7.10季節アンサンブル予報システム」,令和4年度数値予報解説資料集,気象庁,2023年1月
2.令和7年10月31日提出の意見書における参考文献
令和7年10月31日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)には、異議申立書に添付された甲第5号証が再び添付されると共に、以下の参考資料1~5が添付されている。
参考資料1:P.Oettli et al.,”Combining Dynamical and Statistical Modeling to Improve the Prediction of Surface Air Temperature 2 Months in Advance:A Hybrid Approach”,Front.Clim.,2022.3月30日発行,Vol.4,Article 862707<https://doi.org/10.1038/s41467-021-22299-6>
参考資料2:令和3年度数値予報解説資料集(数値予報課),気象庁情報基盤部,2022年3月,pp.1-29
参考資料3:Jin Huang,”NOAA Climate Test Bed(CTB)”,NOAA’s 39th Climate Diagnostics and Prediction Workshop発表資料,2014年10月21日,スライド1-21,<https://www.cpc.ncep.noaa.gov/products/outreach/proceedings/cdw39_proceedings/Day_2/Session_5/Huang.pdf>
参考資料4:S.Saha et al.,”The NCEP Climate Forecast System Version 2”,Journal of Climate,2014年3月15日発行,Vol.27,pp.2185-2208
参考資料5:Annual Report 2017,ECMWF,<https://annualreport.ecmwf.int/en/annual-report-2017/advancing-weather-science>
3.特許異議の申立ての理由について
申立人によりなされた特許異議の申立ての理由の要旨は次のとおりである。
(1)異議申立理由1
本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、または甲第2号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、それらの特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)異議申立理由2
本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明から、または甲第2号証に記載された発明から、又は甲第1号証および/又は甲第2号証に記載された発明、並びに、甲第3号証から甲7発明等の周知技術等から、当業者が容易に発明することができたものであるから、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)異議申立理由3
本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明について、それら発明を特定する請求項1~4の記載にある「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が何を具体的に示すかが技術的に不明確であり、そのため当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえず、それらの特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4)異議申立理由4
本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、それら発明が備える技術事項である「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が、どのような数値予報モデルを選定したものかが不明であり、「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」の選定によっては、長期気象予測を精度の低下を許す可能性も生じ、課題解決にならない恐れがあるため、それら発明は発明の詳細な説明に記載された範囲を超えているから、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえず、それらの特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(5)異議申立理由5
本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、それら発明が備える技術事項である「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が、何を具体的に示すかが、技術的に不明確であり、それら発明の技術的範囲が明確であるとはいえず、それらの特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
第5 取消理由通知に記載した取消理由
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1-4に係る特許に対して、当審が令和7年6月3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性)訂正前の請求項1-4に係る発明は、特許請求の範囲の記載に、「所定期間」、「前記モデル」及び「当該モデル」という明確でない記載があり、そのため訂正前の請求項1-4に係る発明は明確であるとはいえないから、上記請求項1-4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)取消理由2(新規性)訂正前の請求項1-4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項1-4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(進歩性)訂正前の請求項1-4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明から、甲第1号証に記載された発明及び甲第5-7号証にも記載された周知技術から、甲第2号証に記載された発明から、又は甲第2号証に記載された発明及び甲第5-7号証にも記載された周知技術から、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項1-4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第6 甲号証の記載事項
1.甲第1号証
本件出願(以下「本願」という。)の出願前に公開された甲第1号証(以下「甲1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付与した。訳は特許異議申立書に記載された試訳を参考に当審で作成した。以下同様。)
(1)「(Title) "Forecasting Victorian spring rainfall using ENSO and IOD: A comparison of linear multiple regression and nonlinear ANN"
Abstract- El Nino southern Oscillation (ENSO) and Indian Ocean Dipole (IOD) have enormous effects on the precipitations around the world. Australian rainfall is also affected by these key modes of complex climate variables. Many studies have tried to establish the relationships of these large-scale climate indices among the rainfalls of different parts of Australia, particularly Western Australia, New South Wales, Queensland and Victoria. Unlike the other regions, no clear relationship can be found between each individual large-scale climate mode and Victorian rainfall. Past studies considering southeast Australian rainfall predictability could achieve a maximum of 30% correlation. This study looks into the lagged-time relationships of these modes on Victorian spring rainfall. On the other hand, few attempts have been made to establish the combined effect of these indices on rainfall in order to develop a better understanding and forecasting system. Thus, the aim of this research was to investigate the combined lagged relationship of ENSO and IOD with Victorian spring rainfall using multiple regression as a linear method compared to Artificial Neural Networks(ANN) as a nonlinear method. This study found that predicting spring rainfall using combined lagged ENSO-DMI indices with ANN can achieve 96.96% correlation as compared to multiple regression with only 66.15% correlation. This method can be used for other parts of the world where a relationship exists between rainfall and large scale climate modes which could not be established by linear methods. 」(86頁左欄)
(当審訳:「ENSOおよびIODを用いたビクトリア州春季降水量の予測:線形多重回帰と非線形ANNの比較」
要約- エルニーニョ南方振動(ENSO)およびインド洋ダイポール(IOD)は、世界中の降水に莫大な影響を及ぼす。オーストラリアの降水もまた、これらの複雑な気候変数の主要モードによって影響を受ける。多くの研究が、これらの大規模な気候指標とオーストラリアのさまざまな地域、特に西オーストラリア、ニューサウスウェールズ、クイーンズランドおよびビクトリア州の降水との関係を確立しようとしてきた。他の地域とは異なり、各個別の大規模気候モードとビクトリア州の降水との間に明確な関係は見つかっていない。南東オーストラリアの降水予測可能性に関する過去の研究では、最大でも30%の相関しか得られていない。本研究では、これらのモードとビクトリア州の春季降水との遅延時間関係を調査する。一方で、これらの指標の組み合わせ効果を降水と結びつけ、より良い理解と予測システムを構築しようとする試みは少ない。したがって、本研究の目的は、線形手法としての多重回帰と、非線形手法としての人工ニューラルネットワーク(ANN)を比較することにより、ENSOとIODの遅延関係がビクトリア州春季降水に与える組み合わせ効果を調査することである。本研究は、ANNを用いた遅延ENSO-DMI指標の組み合わせによる春季降水の予測で96.96%の相関が得られるのに対し、多重回帰では66.15%の相関しか得られないことを示した。この手法は、降水と大規模気候モードとの間に関係が存在するが、線形手法では確立できない他地域にも適用可能である。)
(2)「I. INTRODUCTION
Forecasting rainfall several months or seasons in advance can be beneficial for the management of water resources. Many studies have tried to find the relationships between large-scale climate modes and rainfall in different parts around the world using different linear and nonlinear methods [1-6]. It is believed that Australian rainfall is affected by several major climate patterns. The major drivers bringing rainfall over Australia which have been investigated by many researchers are, El Nino Southern Oscillation (ENSO), Indian Ocean Dipole (IOD) and Southern Annular Mode (SAM) [7]. ENSO is represented by two different type of indices; the Southern Oscillation Index (SOI) which is a measure of Sea Level Pressure (SLP) anomalies between Darwin and Tahiti and Sea surface temperature (SST) anomalies in equatorial Pacific Ocean noted as NINO3 (5°S - 5°N, 150° - 90°W), NINO3.4 (5°S - 5°N, 170° - 120°W) and NINO4 (5°S - 5°N, 160° - 150°W) [8]. The IOD is also a coupled ocean-atmosphere phenomenon in the equatorial Indian Ocean [9]. SAM is the major mode of atmospheric variability on the mid and high latitude of southern hemisphere. SAM is not considered in this study due to its shorter range of data. Many researchers have conducted different studies in different parts of Australia trying to establish the relationship between these climate modes and Australian rainfall [7, 8, 10-16]. Victoria is one of the regions that so far did not show good correlation of its rainfall and the climate modes. According to [17] in comparison to eastern Australia and particularly Queensland, past studies considering southeast Australian rainfall predictability could achieve a maximum of 30% correlation. Other than the work of [18] which analysed the combined impact of ENSO and SAM on Victorian rainfall, other studies focused only on finding the relationship between rainfall and a single driver. In the work of [16] Murphy the maximum correlation of 37% was achieved for spring rainfall with spring NINO4. On the other hand, the studies did not take into account the relationship between previous time lags of these drivers as a potential predictor for future rainfall. Kirono et al, [7] is the only accessible publication which considered the relationship between Australian rainfall and two months average lag of different climate indices.
According to [18] Victorian rainfall variability is not driven by a single climate mode. This study aims to further explore this hypothesis, thus attempt has been made to predict Victorian spring rainfall based on two set of dual lagged predictors containing IOD and ENSO representatives. Thus, this study is distinguished from previous studies by forecasting spring rainfall three consecutive years in advance by using the lag relationship of combined climate indices. Also, this study compares predictability of large scale climate modes using liner multiple regressions and nonlinear Artificial Neural Networks. The ENSO-IOD set include lagged NINO3-DMI and SOI-DMI, since there is no agreement on which of the ENSO indices can better represent this
ocean-atmospheric phenomenon.」(86頁左欄-右欄)
(当審訳:1.はじめに
降水を数ヶ月または季節単位で事前に予測することは、水資源管理にとって有益である可能性がある。多くの研究が、世界のさまざまな地域において、大規模な気候モードと降水との関係を、さまざまな線形および非線形手法を用いて解明しようとしてきた [1-6]。オーストラリアの降水は、いくつかの主要な気候パターンの影響を受けていると考えられている。オーストラリアに降水をもたらす主な要因として、多くの研究者によって調査されてきたのはエルニーニョ南方振動(ENSO)、インド洋ダイポール(IOD)、そして南半球環状モード(SAM)である [7]。ENSOは、2種類の指標で表現される:一つは南方振動指標(SOI)で、これはダーウィンとタヒチ間の海面気圧(SLP)の異常を示すものであり、もう1つは赤道太平洋における海面水温(SST)異常であり、それぞれNINO3(南緯5度~北緯5度、西経150度~90度)、NINO3.4(南緯5度~北緯5度、西経170度~120度)、NINO4(南緯5度~北緯5度、西経160度~150度)とされている[8]。IODもまた、赤道インド洋における大気・海洋結合現象である[9]。SAMは、南半球の中緯度および高緯度における大気変動の主要なモードである。SAMはデータ期間が短いため、本研究では考慮されていない。多くの研究者が、オーストラリア各地における降水とこれらの気候モードとの関係を明らかにしようと、さまざまな研究を行ってきた[7, 8, 10-16]。ビクトリア州は、これまでのところ、降水と気候モードとの良好な相関が示されていない地域の一つである。[17]によれば、東部オーストラリア、特にクイーンズランドと比較すると、南東オーストラリアの降水予測に関する過去の研究では、最大でも30%の相関しか得られていない。[18]による、ENSOとSAMの複合影響がビクトリア州の降水与える影響を分析した研究を除けば、他の研究は、降水と単一の要因との関係を明らかにすることに焦点を当てていた。[16]Murphyの研究では、春季NINO4と春季降水との相関が最大37%であった。一方で、これらの要因の過去の時間遅延との関係を、将来の降水の予測因子として考慮した研究は行われていない。Kironoら[7]は、さまざまな気候指標の2ヶ月平均遅延とオーストラリアの降水との関係を考慮した、唯一のアクセス可能な出版物である。
[18]によれば、ビクトリア州の降水変動は、単一の気候モードによって駆動されているわけではないという。本研究はこの仮説をさらに探求することを目的としており、IODとENSOの代表指標を含む2組の遅延予測因子に基づいて、ビクトリア州の春季降水の予測が試みられている。したがって、本研究は、組み合わせた気候指標の遅延関係を用いて、3年連続の春季降水を予測した点において、これまでの研究と差別化される。また、本研究では、線形多重回帰と非線形人工ニューラルネットワークを用いて、大規模気候モードの予測能力を比較している。ENSO-IODの組み合わせには、遅延NINO3-DMIおよびSOI-DMIが含まれる。なぜなら、ENSO指標のどちらの指標がこの海洋・大気現象をよりよく表すかについては、まだ合意が得られていないからである。)
(3)「II. DATA
A. Rainfall Data
Historical monthly rainfall data was obtained from the Australian Bureau of Meteorology for Horsham, Victoria, Australia as a case study. Fig.1 shows the location details of the station considered in this study. Spring (September - November) rainfall was obtained from monthly rainfall data from January 1900 to December 2009 (www.bom.gov.au/climate/data/) .
B. Climate Indices
In this study, monthly values of NINO3 were used as representation of ENSO. In addition to this SST related indices, Southern Oscillation Index (SOI) which is the SLP representation of ENSO was also considered in this study. A measure of IOD is the Dipole Mode Index (DMI) which is the difference in average SST anomalies between the tropical Western Indian Ocean (10OS - 10ON, 50O - 70OE) and the tropical Eastern Indian ocean (10OS - Equator, 90O - 110OE)[7]. ENSO and IOD indices were obtained from Climate Explorer website http://climexp.knmi.nl/ .」(86頁右欄-87頁左欄)
(当審訳:II. データ
A. 降水データ
ビクトリア州ホーシャムにおける過去の月別降水データは、オーストラリア気象局から取得された。図1は、本研究で対象とした観測地点の位置情報を示している。春(9月~11月)の降水量は、1900年1月から2009年12月までの月別降水データから取得された(www.bom.gov.au/climate/data/)。
B. 気候指標
本研究では、ENSOを表す指標として、NINO3の月別値が使用された。この海面水温(SST)関連指標に加えて、ENSOの海面気圧(SLP)表現である南方振動指標(SOI)も本研究では考慮された。 IODの指標としては、ダイポールモード指標(DMI)が用いられ、これは熱帯西インド洋(南緯10度-北緯10度、東経50度-70度)と熱帯東インド洋(南緯10度-赤道、東経90度-110度)との間の平均SST異常の差である[7]。ENSOおよびIODの指標は、Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得された。)
(4)「III. METHODOLOGY
As the first step for developing a prediction model, the process of input selection is crucial. December to August values of NINO3, SOI and DMI were chosen to be used in ANN modeling of spring rainfall. Since these months’ indices have high linear correlations with each other, it was assumed that they will provide the same information while being used in the multiple regression modeling, thus not being significant predictors. Thus, the correlation of these months’ NINO3, SOI and DMI with Horsham rainfall was calculated and the months with highest significant correlation were chosen to be used in multiple regression modeling. This will be further discussed in section 4. In this study, 1900-2006 was selected as the training and validation period and 2007-2009 was used as test period. The data were normalized between the range of 1 and 0.
The models were evaluated using mean square error (MSE), Pearson correlation (R) and index of agreement (d).」(87頁左欄)
(当審訳:III. 方法論
予測モデルを開発するための最初のステップとして、入力選択のプロセスが重要です。春の降雨のANNモデリングで使用するために、NINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値を選択しました。これらの月の指標は互いに高い線形相関があるため、重回帰モデリングで使用した場合も同じ情報を提供する可能性があるため、有意な予測因子ではありません。したがって、これらの月のNINO3、SOI、およびDMIとホーシャムの降雨との相関関係を計算し、最も有意な相関関係がある月を選択して、重回帰モデリングで使用しました。これについては、第4節でさらに説明します。この研究では、1900年から2006年をトレーニングおよび検証期間として選択し、2007年から2009年をテスト期間として使用しました。データは1と0の間の範囲で正規化されました。
モデルは、平均二乗誤差(MSE)、ピアソン相関(R)、および一致指標(d)を使用して評価しました。)
(5)上記甲1の上記下線部の記載事項は、方法に関するものであるところ、それらの方法を行う装置、及びプログラムも実質的に記載されているとして、それらの記載事項を総合勘案すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「人工ニューラルネットワーク(ANN)を用い、エルニーニョ南方振動(ENSO)およびインド洋ダイポール(IOD)を用いたオーストラリアのビクトリア州春季降水量の予測を行う装置、方法、及びプログラムにおいて、
ENSOは、2種類の指標で表現され、一つは南方振動指標(SOI)で、これはダーウィンとタヒチ間の海面気圧(SLP)の異常を示すものであり、もう1つは赤道太平洋における海面水温(SST)異常であり、
IODは、赤道インド洋における大気・海洋結合現象であり、
ENSOおよびIODの指標は、Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得され、
ビクトリア州ホーシャムにおける過去の月別降水データは、オーストラリア気象局から取得され、春(9月~11月)の降水量は、1900年1月から2009年12月までの月別降水データから取得され(www.bom.gov.au/climate/data/)、
春の降雨のANNモデリングで使用するために、NINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値を選択し、1900年から2006年をトレーニングおよび検証期間として選択し、2007年から2009年をテスト期間として使用し、
ANNを用いた遅延ENSO-DMI指標の組み合わせによる春季降水の予測で96.96%の相関が得られることを確認した、
装置、方法及びプログラム。」
2.甲第2号証
本願の出願前に公開された甲第2号証(以下「甲2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
(1)「Application of Statistical Models to the Prediction of Seasonal Rainfall Anomalies over the Sahel
ABSTRACT
Rainfall in the Sahel region of Africa is prone to large interannual variability, and it has exhibited a recent multidecadal drying trend. The well-documented social impacts of this variability have motivated numerous efforts at seasonal precipitation prediction, many of which employ statistical techniques that forecast Sahelian precipitation as a function of large-scale indices of surface air temperature (SAT) anomalies, sea surface temperature (SST), surface pressure, and other variables. These statistical models have demonstrated some skill, but nearly all have adopted conventional statistical modeling techniques-most commonly generalized linear models-to associate predictor fields with precipitation anomalies. Here, the results of an artificial neural network (ANN) machine-learning algorithm applied to predict summertime (July-September) Sahel rainfall anomalies using indices of springtime (April-June) SST and SAT anomalies for the period 1900-2011 are presented. Principal component analysis was used to remove multicollinearity between predictor variables. Predictive accuracy was assessed using repeated k-fold random holdout and leave-one-out crossvalidation methods. It was found that the ANN achieved predictive accuracy superior to that of eight alternative statistical methods tested in this study, and it was also superior to that of previously published predictive models of summertime Sahel precipitation. Analysis of partial dependence plots indicates that ANN skill is derived primarily from the ability to capture nonlinear influences that multiple major modes of large-scale variability have on Sahelian precipitation. These results point to the value of ANN techniques for seasonal precipitation prediction in the Sahel.」(614頁上欄)
(当審訳:サヘル地域の季節降雨量異常予測への統計モデルの応用
要約
アフリカのサヘル地域の降雨量では、年々大規模な変動が起きやすく、最近では数十年にわたる乾燥傾向を示している。この変動性の社会的影響は十分に文書化されているため、季節的な降水量を予測する多くの取り組みが行われており、その多くは、地表気温(SAT)異常、海面温度(SST)、地表気圧、およびその他の変数の大規模な指標の関数としてサヘル地域の降雨量を予測する統計的手法を採用している。これらの統計モデルは、ある程度の技術を示しているが、ほぼすべてが、予測フィールドを降水量異常と関連付けるために従来の統計モデリング手法(最も一般的なのは一般化線形モデル)を採用している。ここでは、1900年から2011年の期間の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を使用して、夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量異常を予測するために適用された人工ニューラルネットワーク(ANN)機械学習アルゴリズムの結果を示します。主成分分析を使用して、予測変数間の多重共線性を除去した。予測精度は、反復k-foldランダムホールドアウト法とleave-one-outのクロス検証法を使用して評価した。ANNは、この研究でテストされた8つの代替統計手法よりも優れた予測精度を達成し、以前に公開された夏季サヘル地域の降雨量の予測モデルよりも優れていることがわかった。部分従属プロットの分析により、ANNのスキルは主に、大規模変動の複数の主要モードがサヘル地域の降雨量に及ぼす非線形影響を捉える能力から派生していることが示された。これらの結果は、サヘル地域の季節降雨量予測におけるANN技術の価値を示している。)
(2)「1. Introduction
Seasonal prediction of precipitation is a core challenge for applied climatology. The attempt to forecast statistics of rainfall several months in advance requires that the forecaster engage with the theory of memory in the climate system, consider trade-offs between physically based dynamical methods and empirically grounded statistical methods, and decide between models that are generalizable and those that provide the best fit to recent observations. The forecaster also faces challenges in evaluation-do we optimize for fit or for predictive skill, and over what time horizon? - and must balance between predictive performance and physical interpretability of any given modeling system. Within this context, the proliferation of dynamical models, statistical techniques, satellite products, and data assimilation systems represents a tremendous opportunity to improve seasonal predictive skill, but it also amplifies the challenge of selecting and applying the appropriate predictive tools for each research question or application.
This challenge is particularly pressing for regions that are highly ecologically or socioeconomically vulnerable to climate variability. The Sahel, an ecoclimatic zone located on the southern edge of the Sahara Desert, stands out in this regard (Kandji et al. 2006). The Sahel extends for approximately 4500 km, from Cape Verde in the west through Senegal, Mauritania, Mali, Burkina Faso, Niger, and Chad to the east. It is limited by the Sahara to the north and by the more humid Sudano-Sahelian belt to the south. Climatically, the Sahel is a transitional zone between the arid Sahara and the tropical forest that borders themaritime coast. Annual rainfall varies from approximately 200mm in the north of the Sahel to approximately 600mmin the south and is subject to large variability at intraseasonal to decadal time scales.
Sahelian precipitation variability and its impacts have motivated a significant number of studies on the drivers of precipitation in the region. Researchers have consistently found that the El Ni~no-Southern Oscillation (ENSO) has a significant impact on rainy season precipitation (Folland et al. 1991; Giannini et al. 2003; Rowell et al. 1995). Influences of the tropical Atlantic Ocean (Vizy and Cook 2002) and tropical IndianOcean (Palmer 1986; Rowell 2001) have also been identified, and the extratropical influence also appears to be significant, including anomalies in Mediterranean Sea temperatures (Rowell 2003). This diversity of external drivers suggests that the processes governing precipitation variability in the Sahel may interact in complex and nonlinear ways, posing a challenge for seasonal forecast systems that derive their skill from memory in large-scale SST or surface pressure patterns.
Nevertheless, numerous statistical and dynamical efforts at seasonal prediction in the Sahel have been proposed, and some have had considerable success. Statistical methods, defined here as models based on purely empirical relationships derived from climate reanalyses or general circulation models (GCMs), can take any number of structural forms, but most models proposed for the Sahel are based on multivariate linear regression schemes, using standard climate indices, SST anomalies averaged over selected domains, or principal components of global SST or sea level pressure (SLP) variability as inputs. For example, Fontaine and Philippon (2000) and Fontaine et al. (1999) used statistical approaches to predict July-September (JAS) Sahelian rainfall for the period 1968-97 using April-May SST patterns and regional moist static energy. They showed that SST predictors aremore useful for predicting longerterm trends than interannual variability; better hindcast skills were obtained by adding PBL energy content to the predictors. Garric et al. (2002) used both statistical and dynamical approaches to predict monsoon rainfall anomalies over the central Sahel. Their statistical predictions utilized linear regressions from SST and rainfall predictors over 1968-97, which is a relatively dry period, and their dynamical predictions used the Action de Recherche Petite Echelle Grande Echelle (ARPEGE) atmospheric model forced by observed SST over the 1979-93 period. They found that the dynamical approach was less skillful overall but was better in simulating the variability of the large-scale monsoon circulation; therefore, they adopted a hybrid statistical-dynamical approach to achieve better predictions.
・・・
Here, we consider the problem of developing a statistical model capable of predicting summertime (JAS) Sahelian precipitation as a function of springtime (April-June) predictors. The goal is to produce a model that provides skillful prediction for the complete period of data availability, 1900-2011, which includes the pre-1950 regime of weak interannual persistence and the post-1950 period of stronger persistence (Brooks 2004; Nicholson 1995), such that processes associated with this shift will be included in the model. In this respect, our analysis complements recent seasonal prediction studies that have focused exclusively on prediction in the post-1950 regime (Fontaine et al. 1999; Garric et al. 2002). Further, in order to facilitate interpretation within the context of previous literature, we employ only previously defined and widely used climate indices as predictors. Under these constraints, we test the predictive skill of a diverse set of models: regression, tree based, and artificial neural network machine learning. The predictive skill of each model is compared against the others, as well as against the average of all models, the null model (the mean of the response variable in the training dataset), and a memory model that uses last year’s rainfall as this year’s prediction. To our knowledge, no such rigorous methodological comparison has been performed for the Sahel. High-performing models are then further investigated to identify the physical climate mechanisms that underlie model predictions, in order to provide confidence in the model results and to contribute to our basic understanding of the drivers of Sahelian precipitation variability.
The description of the data is presented in section 2 and methods used are presented in section 3. Section 4 presents the results and associated discussions including model comparisons, cross validation, and identification of various potential predictors. Conclusions are offered in section 5.」(614頁左欄-616頁左欄)
(当審訳:1. はじめに
降水量の季節予測は、応用気候学にとって中核的な課題である。数か月先の降水量の統計を予測するには、予報官が気候システムの記憶理論に取り組み、物理ベースの力学的方法と経験に基づく統計的方法のトレードオフを考慮し、一般化可能なモデルと最近の観測に最も適合するモデルの間で判断する必要がある。予報官は評価においても課題に直面する。適合性を最適化するのか、予測スキルを最適化するのか、またどの期間を対象にするのか。また、特定のモデリングシステムの予測性能と物理的解釈可能性のバランスを取る必要がある。この文脈において、力学的モデル、統計手法、衛星プロダクト、データ同化システムの急増は、季節予測スキルを向上させる絶好の機会となるが、同時に、各研究の質問や用途に適した予測ツールを選択して適用するという課題も増大する。
この課題は、生態学的または社会経済的に気候変動に対して非常に脆弱な地域にとって特に差し迫った問題である。サハラ砂漠の南端に位置する生態気候帯であるサヘル地域は、この点で際立っている(Kandji et al. 2006)。サヘル地域は、西はカーボベルデから東はセネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャドまで、およそ 4,500 km にわたって広がっている。北はサハラ砂漠、南はより湿潤なスーダン・サヘル地帯に囲まれている。気候的には、サヘル地域は乾燥したサハラ砂漠と海岸に隣接する熱帯林との間の移行地帯である。年間降雨量は、サヘル地域北部の約 200 mm から南部の約 600 mm まで変化し、季節内から十年単位の時間スケールで大きく変動する。
サヘル地域の降雨量の変動とその影響は、この地域の降雨量の要因に関する多数の研究のきっかけとなっている。研究者らは、エルニーニョ・南方振動(ENSO)が雨季の降雨量に大きな影響を与えていることを一貫して発見している(Folland et al. 1991; Giannini et al. 2003; Rowell et al. 1995)。熱帯大西洋(Vizy and Cook 2002)と熱帯インド洋(Palmer 1986; Rowell 2001)の影響も特定されており、地中海の水温の異常など、温帯の影響も大きいと思われる(Rowell 2003)。この外部要因の多様性は、サヘル地域の降雨量変動を支配するプロセスが複雑かつ非線形に相互作用する可能性があることを示唆しており、大規模なSSTまたは地表気圧パターンの記憶から予測能力を導き出す季節予報システムにとって課題となっている。
それにもかかわらず、サヘル地域の季節予測に関する統計的および力学的取り組みが数多く提案されており、そのうちのいくつかはかなりの成功を収めている。統計的手法は、ここでは気候再解析または一般循環モデル (GCM) から得られた純粋に経験的関係に基づくモデルとして定義され、さまざまな構造形式をとることができるが、サヘル地域用に提案されているほとんどのモデルは、標準気候指標、選択された領域で平均された SST異常、または全球 SSTまたは海面気圧 (SLP) 変動の主成分を入力として使用する多変量線形回帰スキームに基づいている。たとえば、Fontaine と Philippon (2000) および Fontaine 他 (1999) は、4 月から5 月の SST パターンと地域の湿潤静的エネルギーを使用して、1968年から 1997 年の期間の 7 月から9 月 (JAS) のサヘル地域の降雨量を予測するために統計的アプローチを使用した。彼らは、SST 予測子は年次変動よりも長期傾向の予測に役立つことを示した。PBL エネルギー内容を予測変数に追加することで、より優れた予測スキルが得られた。Garricら (2002)は、中央サヘルにおけるモンスーンの降雨量異常を予測するために、統計的アプローチと力学的アプローチの両方を使用しました。彼らの統計的予測では、比較的乾燥した期間である1968年から1997年のSSTと降雨量予測変数からの線形回帰を利用し、力学的予測では、1979年から1993年の期間に観測されたSSTによって強制されたAction de Recherche Petite Echelle Grande Echelle(ARPEGE)大気モデルを使用しました。彼らは、力学的アプローチは全体的にはスキルが低いものの、大規模なモンスーン循環の変動をシミュレートする点で優れていることを発見したため、より良い予測を実現するために、統計的アプローチと力学的アプローチを組み合わせたアプローチを採用した。
・・・
ここでは、春季(4月~6月)の予測因子の関数として、サヘル地域の夏季(JAS)降雨量を予測できる統計モデルの開発という問題について考える。目標は、1900年から2011年というデータが利用可能な期間全体にわたって、精度のよい予測を提供するモデルを作成することである。この期間のデータには、1950年以前の弱い経年継続性と、1950年以降の強い経年継続性(Brooks 2004; Nicholson 1995)があるため、このデータの切り替えに関連したプロセスはモデルに含まれることになる。この点で、私たちの分析は、1950年以降の体制での予測のみに焦点を当てた最近の季節予測研究(Fontaine et al. 1999; Garric et al. 2002)を補完するものである。
さらに、以前の文献の文脈内での解釈を容易にするために、予測因子として、以前に定義され広く使用されている気候指標のみを採用する。これらの制約の下で、回帰、ツリーベース、人工ニューラルネットワーク機械学習など、さまざまなモデルの予測能力をテストする。各モデルの予測能力は、他のモデル、すべてのモデルの平均、帰無モデル(トレーニングデータセットの応答変数の平均)、および昨年の降雨量を今年の予測として使用するメモリモデルと比較される。私たちの知る限り、サヘル地域ではこのような厳密な方法論的比較は行われていない。その後、高性能モデルをさらに調査して、モデル予測の根底にある物理的な気候メカニズムを特定し、モデル結果の信頼性を高め、サヘル地域の降雨量変動の要因に関する基本的な理解に貢献する。
第2節ではデータの説明を、第3節では使用した手法について説明する。第4節では、モデル比較、クロスバリデーション、様々な潜在的予測因子の特定など、結果と関連する考察を示す。第5節では結論を示す。)
(3)「2. Data description
This study focuses on the prediction of variability in total summertime Sahel rainfall, defined as the anomaly in July-September precipitation, averaged over the geographic region 108-208N and 108W-208E, which was defined using a rotated principal component analysis (PCA) of African precipitation (Janowiak 1988). This definition approximates that used in previous studies (Dezfuli and Nicholson 2011; Nicholson et al. 2012) and there is strong correlation in interannual precipitation variability across the area. The raw data for the Sahel rainfall anomaly are obtained from University of Washington’s Joint Institute for Study of the Atmosphere and Ocean (JISAO; jisao.washington.edu/data_sets/sahel). The JISAO Sahelian rainfall anomaly index is derived from the well-established National Oceanic and Atmospheric Administration’s (NOAA)Global Historical Climatology Network (GHCN) dataset and has been used in previously published studies of the Sahel, such as Haywood et al. (2013). It uses the raw precipitation stations in the GHCN product, without homogeneity adjustments. Here, we consider the entire historical record, 1900-2011.
GHCN data show that precipitation was above the long-term mean from 1915 through the late 1930s and during the 1950s-1960s, after which it was persistently below the long-term mean, with the largest negative anomalies in the early 1980s (Fig. 1a). The dry episode at the end of the twentieth century was of a particularly long duration, and has been described by Hulme (2001) as unprecedented in the Sahel and also in any other dryland region within the context of the modern observational record (Brooks 2004). There is also a notable shift in the nature of persistence in seasonal precipitation totals between the pre-1950 period, when interannual correlation in precipitation was quite low, and the post-1950 period, which is characterized by significant correlation on interannual time scales and weak anticorrelation at decadal time scales (Hulme 2001). This shift in persistence patterns (Fig. 1b) has been noted in previous studies (Brooks 2004; Nicholson 1995), and it has been associated with global SST (Brooks 2004).
The correlation patterns of summertime rainfall anomalies and springtime global SSTs and land temperatures are shown in Fig. 2. It is clear that the correlations are weak in general, and that regions with relatively high correlation are distributed in the Pacific, North Atlantic, and Indian Oceans in patterns that align with conventional climate indices such as ENSO, the Atlantic multidecadal oscillation (AMO), and the subtropical Indian Ocean dipole (SIOD). While one could use the correlations shown in Fig. 2 to define customized predictors for Sahel precipitation, the fact that zones of correlation generally align with well-known indices of climate variability indicates that combinations of these standard indices can serve as a basis for skillful prediction. The use of standard indices is advantageous in that it allows predictions to be understood within the context of extensive existing research on prevailing modes of global climate variability.
Based on this reasoning, we chose to use a set of climate indices and global temperature indicators to construct predictive models. Figure 2 shows the centers of action for the climate indices used in this study, which are summarized in Table 1. Several seasonal averages of 1-5 months (ranging from the previous season to a year lag) were tested as predictors of seasonal rainfall anomalies over the Sahel. It was found that all models perform best in fit and predictive skill when April-June (AMJ) predictors are used to predict JAS rainfall. For all models, the JAS Sahel rainfall index is the response variable, while the oceanic indices are computed as the mean of the previous season (AMJ). The SST indices are calculated from the extended reconstructed SST (ERSST), version 3b (v3b), dataset (Smith et al. 2008).The surface air temperature anomaly (SATA) indices are obtained from NOAA/National Climatic Data Center (www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/ faq/anomalies.php). The other indices listed in Table 1 [North Atlantic Oscillation (NAO); Pacific decadal oscillation (PDO); and SLP at Darwin, Northwest Territory, Australia, and Tahiti, French Polynesia] are obtained from the NOAA/Office of Oceanic and Atmospheric Research/Earth System Research Laboratory Physical Sciences Division archive (www.esrl.noaa.gov/psd/gcos_wgsp/Timeseries).
NOAA Merged Land-Ocean Surface Temperature Analysis (MLOST, 1900-2011), version 3.5.3-from the GHCN land surface temperature and NOAA ERSST v3b dataset-and the National Centers for Environmental Prediction-National Center for Atmospheric Research (NCEP-NCAR) reanalysis (Kalnay et al. 1996) atmospheric fields (1948-2011) were used to support a physically based explanation of the statistical results and to test associations with mechanisms of interannual precipitation variability over the Sahel.」(616頁左欄-618頁左欄)
(当審訳:2. データの説明
本研究は、この降水量は、アフリカ域の降水量に対して実施された回転主成分分析(PCA)(Janowiak 1988)に基づき定義された、北緯10度~20度、西経10度~20度の地理的範囲における7~9月の降雨量異常の平均として定義される、夏季サヘル地域総降雨量の変動予測に焦点を当てるものである。この定義は、先行研究(Dezfuli and Nicholson 2011; Nicholson et al. 2012)で用いられた定義に近似しており、本地域における年々の降水量変動には顕著な相関が認められる。サヘル地域の降雨量異常に関する生データは、ワシントン大学大気海洋合同研究所(JISAO; jisao.washington.edu/data_sets/sahel)より取得されたものである。 JISAOによるサヘル降雨量異常指標は、米国海洋大気庁(NOAA)の信頼性の高いデータセットである地球規模歴史気候学ネットワーク(GHCN)に基づいており、Haywoodら(2013)をはじめとする、これまでに公表されたサヘル地域に関する諸研究においても広く用いられている。本指標は、GHCNデータに含まれる降水観測所の生データを、均質性の調整を行うことなく使用している。本研究では、1900年から2011年までの全観測期間を対象とする。
GHCNデータによれば、降雨量は1915年から1930年代後半、および1950年代から1960年代にかけては長期平均を上回っていたが、それ以降は長期平均を持続的に下回り、1980年代初頭には最大の負の異常が観測された(図1a)。 20世紀末における乾燥期は特に長期にわたるものであり、Hulme (2001) はこれを、近代的な観測記録の文脈において、サヘル地域のみならず、他のいかなる乾燥地域においても前例のない現象であると評している (Brooks 2004)。また、季節降雨量の持続性の特性にも顕著な変化が認められ、1950年以前には降雨量の年々の相関は非常に低かったのに対し、1950年以降は年スケールでの有意な相関と、10年スケールでの弱い負の相関が特徴となっている (Hulme 2001)。このような持続性パターンの変化 (図1b) は、先行研究 (Brooks 2004、Nicholson 1995)においても指摘されており、全球的な海面水温(SST)との関連が示唆されている (Brooks 2004)。
夏季の降雨量異常と春季における全球の海面水温(SST)および陸地温度の相関パターンを図2に示す。全体として相関は弱いが、相対的に高い相関を示す地域は太平洋、北大西洋、インド洋に分布し、これらは、エルニーニョ・南方振動(ENSO)、大西洋数十年規模振動(AMO)、亜熱帯インド洋ダイポール(SIOD)といった、よく知られた気候指標と整合する空間パターンを示していることがわかる。図2に示す相関を用いてサヘル降雨量に対する独自の予測子を定義することも可能であるが、相関を示す領域が既存の気候変動指標と概ね一致することから、これらの標準的な気候指標の組み合わせが、高い予測精度をもたらす基盤となり得ることが示唆される。標準的な気候指標を用いる利点は、予測結果を全球的な気候変動モードに関する膨大な先行研究の文脈において解釈可能にする点にある。
この理由に基づき、本研究では、予測モデルの構築にあたり、一連の気候指標と地球温度指標を用いることとした。図 2 は、本研究で使用した気候指標の作用中心を示しており、それらの概要は表 1 にまとめられている。サヘル地域の季節降雨量異常の予測因子として、1~5 か月の季節平均(前季から最大 1 年の遅れを含む)をいくつか検討した結果、4 月~6 月(AMJ)の予測因子を使用して7月~9月(JAS)の降雨量を予測する場合に、すべてのモデルにおいて適合性および予測スキルが最も高くなることが明らかとなった。すべてのモデルで、JAS サヘル降雨指標が応答変数であり、海洋指標は前シーズン(AMJ)の平均値として計算されます。SST 指標は、拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)から取得した。地表気温異常(SATA)指数は、NOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)から取得した。表1に記載されているその他の指標(北大西洋振動(NAO)、太平洋十年規模振動(PDO)、オーストラリア北西部準州のダーウィンとフランス領ポリネシアのタヒチの海面気圧(SLP)は、NOAA/海洋大気研究局/地球システム研究所物理科学部門アーカイブ(www.esrl.noaa.gov/psd/gcos_wgsp/Timeseries)から取得した。
統計的結果に対する物理的根拠に基づく説明を補強し、サヘル地域における年々の降雨量変動メカニズムとの関連性を検証するために、NOAA 陸域・海洋面温度統合解析 (MLOST、1900~2011) バージョン 3.5.3 (GHCN 陸面温度および NOAA ERSST v3b データセットから) と国立環境予測センター・国立大気研究センター (NCEP-NCAR) 再解析 (Kalnay 他、1996 年) 大気場 (1948~2011 年) が使用された。)
(4)「APPENDIX A
Statistical Models
Ten different model approaches listed in Table A1 were applied and compared with each other and against three reference models based on the average of all models, null/climatology model, and a memory model.
These models are from different categories: likelihood based (GLMs and GAMs), MARS, tree-based (CARTs, BART, and RF), and neural networks (ANNs). The last three rows are for reference average, null, and memory models. A set of R packages (Table A2) was utilized for preprocessing of the data, fitting the models, and visualization of the results. The Bayes Tree package (Chipman et al. 2010) was used for fitting BART model(s). The caret package (Kuhn 2008) was used for preprocessing and training. The earth package (Friedman 1991) was used for fitting MARS models. The HH package (Heiberger 2013) was used mainly for visualizations. The ipred package (Peters et al. 2002) was used for bagging by the caret package. The mgcv (Wood 2001) package was utilized in fitting GAMs. The nnet (Venables et al. 1994) package was utilized to apply a feed-forward neural network approach in ANN models. The party (Hothorn et al. 2010) and tree (Ripley 2013) packages were used for fitting the trees. The random Forest package was used to apply Breiman and Cutler’s random forests for regression.
To test the robustness of our approach, large numbers of models, tuning parameters, and variable selection methods were tested. Different trials were performed by applying PCA on each set of variables and keeping only the leading PC, or choosing one by one; all trials were assessed based on both predictive skill (standard out-of sample error measures and correlation coefficient from cross-validation analysis) and goodness of fit (in-sample correlations and residuals). One ENSO index was selected from the set of SST indices (Ni~no-1.2, Ni~no-3, Ni~no-3.4, or Ni~no-4) and the Southern Oscillation index (SOI). Similarly, one index was selected for the equatorial North Atlantic SST from AMO, NAO, SST_MDR, and TNA. The subtropical Indian Ocean dipole was considered to be the difference between SIOD_E and SIOD_W instead of using the two variables. One index was tested for the Pacific Ocean from NP and PDO. Finally, one SATA index was used. Another approach of variable selection was examined based on the regression patterns between Sahelian rainfall index and global SST (Fig. 2). However, it was found that the PCA based models outperform all models that are based on different combinations of physically selected sets of original variables in terms of their predictive skill. The best sets of covariates that were selected for the final analysis are listed in Table A3. It was somewhat easier to interpret the physical meaning of simpler models that are based on well-known climate indices, but the primary objective of this study is to improve the operational rainfall predictions for the Sahel. For this reason we have adopted the approach that provided the best predictions, even though interpretation of the PCs is not as straightforward as interpretation of models based on conventional indices.
In all cases, the PCA model presented in the paper provided better predictive skill and strong generalizability to different baseline periods relative to other possible approaches. Unfortunately, most index-based models, which are much easier to interpret, were statistically indistinguishable when compared with the null model through both leave-one-out and random-holdout cross-validation analyses, and the best-performing of these models was significantly less accurate than the ANN PCA-based model.」(633頁左欄-634頁右欄)
(当審訳:付録A
統計モデル
表A1にリストされている10種類のモデルアプローチを適用し、相互に比較し、全てのモデルの平均、帰無/気候モデル、およびメモリモデルに基づく3つの参照モデルと比較しました。これらのモデルは、尤度ベース(GLMおよびGAM)、MARS、ツリーベース(CART、BART、およびRF)、およびニューラルネットワーク(ANN)という異なるカテゴリに属している。最後の3行は、参照平均、帰無モデル、およびメモリモデルである。データの前処理、モデルの適合、および結果の可視化には、Rパッケージセット(表A2)を使用しました。BARTモデルの適合には、Bayes Treeパッケージ(Chipman et al. 2010)を使用した。前処理とトレーニングにはcaretパッケージ(Kuhn 2008)を使用した。MARSモデルの適合には、earthパッケージ(Friedman 1991)を使用した。HHパッケージ(Heiberger 2013)は主に可視化に使用した。 caretパッケージによるバギングにはipredパッケージ(Peters et al. 2002)を使用した。GAMのフィッティングにはmgcvパッケージ(Wood 2001)を使用した。ANNモデルにフィードフォワードニューラルネットワークアプローチを適用するためにnnetパッケージ(Venables et al. 1994)を使用した。ツリーのフィッティングにはpartyパッケージ(Hothorn et al. 2010)とtreeパッケージ(Ripley 2013)を使用した。回帰分析にBreimanとCutlerのランダムフォレストを適用するためにrandom Forestパッケージを使用した。
このアプローチの堅牢性をテストするために、多数のモデル、調整パラメータ、および変数選択方法が試された。変数の各セットに PCA を適用し、主要な PC のみを保持するか、1 つずつ選択するかによって、さまざまな試行が実行された。すべての試行は、予測スキル (クロスバリデーション分析からの標準的なサンプル外誤差尺度と相関係数) と適合度 (サンプル内相関と残差) の両方に基づいて評価された。 ENSO指標は、SST指標のセット(Nino-1.2、Nino-3、Nino-3.4、または Nino-4) と南方振動指標 (SOI) から 1 つ選択された。同様に、赤道北大西洋 SST指標は、AMO、NAO、SST_MDR、および TNA から 1 つ選択された。亜熱帯インド洋ダイポール(SIOD)は、2 つの変数を使用する代わりに、SIOD_E と SIOD_W の差であるとみなされた。太平洋の1つの指標は、NP と PDO から試行されました。最後に、SATA指標が 1 つ使用された。サヘル降雨量指標とグローバルSST間の回帰パターンに基づいて、変数選択の別のアプローチが検討された(図2)。しかし、PCAベースのモデルは、予測能力の点で、物理的に選択された元の変数セットのさまざまな組み合わせに基づくすべてのモデルよりも優れていることがわかった。最終分析用に選択された共変量の最良のセットは、表A3にリストされている。よく知られている気候指標に基づくより単純なモデルの物理的な意味を解釈するのはやや簡単でしたが、この研究の主な目的は、サヘルの運用降雨予測を改善することである。このため、PCの解釈は従来の指標に基づくモデルの解釈ほど簡単ではないが、最良の予測を提供するアプローチを採用した。
すべてのケースで、論文で提示されたPCAモデルは、他の可能なアプローチと比較して、より優れた予測能力と、さまざまなベースライン期間への強力な一般化を提供した。残念ながら、解釈がはるかに簡単なほとんどの指標ベースのモデルは、leave-one-out および random-holdout クロス検証分析の両方で帰無モデルと比較した場合、統計的に区別がつかず、これらのモデルの中で最もパフォーマンスが良かったモデルは、ANN PCA ベースのモデルよりも大幅に精度が低かった。)
(5)上記甲2の上記下線部の記載事項は、方法に関するものであるところ、それらの方法を行う装置、及びプログラムも実質的に記載されているとして、それらの記載事項を総合勘案すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「アフリカのサヘル地域の季節降雨量異常予測を行う装置、方法、及びプログラムにおいて、
1900年から2011年の期間の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を使用して、夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量異常を予測するために適用された、人工ニューラルネットワーク(ANN)機械学習アルゴリズムにより、主成分分析を使用して予測変数間の多重共線性を除去したANN PCA ベースのモデルとして生成し、
サヘル地域の降雨量異常に関する生データは、ワシントン大学大気海洋合同研究所(JISAO; jisao.washington.edu/data_sets/sahel)より取得し、当該JISAOによるサヘル降雨量異常指標は、米国海洋大気庁(NOAA)の信頼性の高いデータセットである地球規模歴史気候学ネットワーク(GHCN)に基づいており、
SST 指標は、拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)から取得し、地表気温異常(SATA)指数は、NOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)から取得し、その他の指標(北大西洋振動(NAO)、太平洋十年規模振動(PDO)、オーストラリア北西部準州のダーウィンとフランス領ポリネシアのタヒチの海面気圧(SLP)は、NOAA/海洋大気研究局/地球システム研究所物理科学部門アーカイブ(www.esrl.noaa.gov/psd/gcos_wgsp/Timeseries)から取得し、
エルニーニョ・南方振動(ENSO)指標は、SST指標のセット(Nino-1.2、Nino-3、Nino-3.4、または Nino-4) と南方振動指標 (SOI) から 1 つ選択され、赤道北大西洋 SST指標は、AMO、NAO、SST_MDR、および TNA から 1 つ選択され、亜熱帯インド洋ダイポール(SIOD)は、2 つの変数を使用する代わりに、SIOD_E と SIOD_W の差であるとみなされ、太平洋の1つの指標は、NP と PDO から試行され、SATA指標が 1 つ使用され、
ANN PCA ベースのモデルの、夏季サヘル地域の降雨量の予測精度が、8つの代替統計手法よりも優れていることを確認した、
装置、方法、及びプログラム。」
3.甲第3号証
本願の出願前に公開された甲第3号証(以下「甲3」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
(1)
[図:0001433096000001.jpg]
(2)
[図:0001433096000002.jpg]
(3)
[図:0001433096000003.jpg]
(4)
[図:0001433096000004.jpg]
4.甲第4号証
本願の出願前に公開された甲第4号証(以下「甲4」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
「【0029】
学習部22は、学習用データ記憶部20に格納されている複数の学習用データに基づいて、所定時刻の気象データから所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するためのモデルを学習させることにより、所定時刻の気象データから所定時刻よりも後の時刻の気象データを予測するための学習済みモデルを生成する。」
5.甲第5号証
本願の出願前に公開された甲第5号証(以下「甲5」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
(1)
[図:0001433096000005.jpg]
[図:0001433096000006.jpg]
(当審訳:(タイトル)「アジア夏季モンスーンの1年前からの高精度予測」
(要約)アジア夏季モンスーンの年々変動は、アジア社会に大きな影響を及ぼす。気候モデルの進歩により、季節的なアジア夏季モンスーンの約半年先までの有用な予測が可能になっているが、長期予測は依然として困難である。ここでは、1980年から2016年までの52メンバーの大規模アンサンブル予測実験を使用して、最先端の気候モデルがアジア夏季モンスーンとそれに伴う夏の熱帯サイクロン活動を1年以上先に予測できることを示す。この長期予測の鍵は、EIニーニョ‐南方振動の進化をうまくシミュレートし、予測の2回目の北半球夏にインド洋と北西部太平洋で発生する大気と海洋の反応を現実的に表現することである。有用な予測スキルを達成するには、大規模なアンサンブルサイズも重要であり、さらに大規模なアンサンブルによってさらに改善できる余地があることも示されている。)
(2)
[図:0001433096000007.jpg]
(当審訳:インド洋偏差(IPOCモード)を介した遅延型ENSOの影響は、1年先行の高精度予測を確立するための主要なメカニズムである。IPOC関連の気候偏差を再現するモデルの精度も、高精度予測の基盤となる。台風の予測精度は、同時発生しているENSOに伴う中央東部赤道太平洋SSTの遠隔的影響からもさらに恩恵を受ける。予測精度は、アンサンブルサイズの増加だけでなく、西太平洋におけるENSOとその遅延影響をより正確に予測する能力の高いモデル、すなわちIPOCモードを用いることでさらに向上する可能性がある。本研究の結果は、アジアにおける将来の長期季節予測への期待を示しており、広範な応用への明るい見通しを示している。)
(3)
[図:0001433096000008.jpg]
(当審訳:さらに、西太平洋北部上空の500hPa高度偏差は、太平洋-日本パターン36と呼ばれる極方向のテレコネクションを示唆しており、中緯度南アジア23,26の予測可能性を高めている(補足図3)。観測されたこれらのIPOC関連のテレコネクションは、第2夏季予測においてかなりよく再現されている(図3および補足図3)。さらに、西太平洋北部の夏季モンスーンは、同時発生しているエル・ニーニョ24,32によって強められ、ラ・ニーニャによって抑制されている。これは、第2夏季までの正確なENSO予測が、インド-西太平洋北部モンスーンの予測精度にさらなる貢献をしていることを示している。)
6.甲第5~7号証に開示された技術
本願の出願前に公開された、上記5.で摘記した甲5の記載も含め、甲第6号証(以下「甲6」という。)、及び甲第7号証(以下「甲7」という。)には、日本国気象庁らが使用するJMA/MRI-CPS2やJMA/MRI-CPS3などの季節アンサンブル予報システムにより、現在より未来の地域気象予報を行うことが、本願出願前に公知であったことが開示されている。
第7 参考資料の記載事項
1.参考資料1
本願の出願前に公開された参考資料1には以下の記載がある。
(1)「A new type of hybrid prediction system (HPS) of the land surface air temperature (SAT) is described and its skill evaluated for one particular application. This approach utilizes sea-surface temperatures (SST) forecast by a dynamical prediction system, SINTEX-F2, to provide predictors of the SAT to a statistical modeling system consisting of a set of nine different machine learning algorithms. The statistical component is aimed to restore teleconnections between SST and SAT, particularly in the mid-latitudes, which are generally not captured well in the dynamical prediction system. The HPS is used to predict the SAT in the central region of Japan around Tokyo (Kanto) as a case study. Results show that at 2-month lead the hybrid model outperforms both persistence and the SINTEX-F2 prediction of SAT. This is also true when prediction skill is assessed for each calendar month separately. Despite the model's strong performance, there are also some limitations. The limited sample size makes it more difficult to calibrate the statistical model and to reliably evaluate its skill.」
(p1.アブストラクト)
(当審訳:地表面気温(SAT)の新しいタイプのハイブリッド予測システム(HPS)について説明し、特定のアプリケーションにおけるその予測能力を評価する。このアプローチは、力学予測システムSINTEX-F2による海面水温(SST)予測を利用し、9つの異なる機械学習アルゴリズムからなる統計モデリングシステムにSATの予測変数を提供する。統計コンポーネントは、特に中緯度地域において、力学予測システムでは一般的に十分に捉えられないSSTとSATのテレコネクションを復元することを目的としている。ケーススタディとして、HPSを用いて東京(関東)周辺の日本中部地域のSATを予測する。結果は、2ヶ月予測において、ハイブリッドモデルが持続性予測とSINTEX-F2によるSAT予測の両方を上回る性能を示したことを示している。これは、各暦月について予測能力を個別に評価した場合にも同様である。このモデルは優れた性能を示しているが、いくつかの限界もある。サンプルサイズが限られているため、統計モデルの較正とその能力の信頼性のある評価がより困難となっている。)
(2)「Our goal is the prediction of the SAT anomaly in the Kanto region, 2 months in advance using the information coming from the SINTEX-F2 SST anomaly prediction fields. To achieve this purpose, the predicted SST anomalies at 2 months lead time are taken for all 24 members plus the ensemble mean (hereafter 2mlEMs). The monthly anomalies we use are calculated by subtracting the 1983-2015 monthly climatology and removing the linear trend calculated over the same time period.」(p3、第1コラム17-24行目)
(当審訳:私たちの目標は、SINTEX-F2海面水温異常予測フィールドから得られる情報を用いて、関東地方の海面水温異常を2ヶ月先まで予測することである。この目的を達成するために、24メンバーすべてとアンサンブル平均(以下、2mlEM)について、2ヶ月先までの海面水温異常予測値を使用する。月ごとの異常値は、1983年から2015年の月間気候値を差し引き、同期間における線形トレンドを除去することで算出する。)
(3)「
[図:0001433096000009.jpg]
」
(4)「Selecting the Predictors
A set of predictors is designed by performing a feature selection (Figure 3, “PredS” block). First we test for multicollinearity to reduce the redundancy contained in the pool of potential predictors. The absolute values of pair-wise correlations are considered. If two variables have a high correlation, the function looks at the mean absolute correlation of each of the two variables with all the other variables and removes the variable with the largest mean absolute correlation. The cutoff is fixed at 0.8.」
(p4、第2コラム、21-29行目)
(当審訳:予測変数の選択
特徴選択(図3、「PredS」ブロック)を実行することで、予測変数のセットが設計する。まず、多重共線性を検定し、潜在的な予測変数プールに含まれる冗長性を低減する。ペアワイズ相関の絶対値が考慮される。2つの変数の間に高い相関がある場合、関数は2つの変数それぞれと他のすべての変数との平均絶対相関を調べ、平均絶対相関が最も大きい変数を除外する。カットオフは0.8に固定されている。)
(5)「Machine Learning
To predict an SAT index from 2mlEMs, we need to map the routes connecting SAT and SST, to create a general rule, i.e., a statistical model able to accurately predict the SAT from the 2mlEMs. ML can efficiently describe underlying processes between input and output data, mapping the paths from the former to the latter, and is thus applied to our purpose. Tuning parameters (or hyperparameters) of the algorithm are generated by a random search (Bergstra and Bengio, 2012), which generates 10 combinations of them. The details of the tuning parameters for each method are introduced below.」
(p6、第2コラム、13-23行目)
(当審訳:機械学習
2mlEMからSAT指標を予測するには、SATとSSTを結ぶ経路をマッピングし、一般的な規則、すなわち2mlEMからSATを正確に予測できる統計モデルを作成する必要がある。機械学習は、入力データと出力データ間の根底にあるプロセスを効率的に記述し、前者から後者へのパスをマッピングできるため、本研究の目的に応用できる。アルゴリズムのチューニングパラメータ(ハイパーパラメータ)は、ランダム探索(Bergstra and Bengio, 2012)によって生成され、10通りの組み合わせが生成される。各手法のチューニングパラメータの詳細は、以下で紹介する。)
2.参考資料2
本願の出願前に公開された参考資料2には以下の記載がある。
「
[図:0001433096000010.jpg]
」
「
[図:0001433096000011.jpg]
」
3.参考資料3
本願の出願前に頒布された参考資料3には以下の記載がある。なお試訳は、申立人意見書に記載のものをそのまま示している。
「
[図:0001433096000012.jpg]
[図:0001433096000013.jpg]
」
4.参考資料4
本願の出願前に頒布された参考資料4には以下の記載がある。なお試訳は、申立人意見書に記載のものをそのまま示している。
「
[図:0001433096000014.jpg]
[図:0001433096000015.jpg]
」
5.参考資料5
本願の出願前に公開された参考資料5には以下の記載がある。なお試訳は、申立人意見書に記載のものをそのまま示している。
「
[図:0001433096000016.jpg]
」
第8 取消理由通知について
1.甲号証について
申立人が特許異議申立書において証拠として提示した甲号証は、上記「第4 1.」で整理し、その内容は「第6」に示したとおりである。
2.当審の判断
(1)取消理由1(明確性)について
ア 本件発明1において、訂正前の請求項1に記載された「所定期間」については、本件発明1を特定する請求項1の記載において、
(ア)「前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段と、」
(イ)「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段と、」
(ウ)「前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、」
(エ)「前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる、」(下線は当審で付与した。)
という記載に訂正された。
イ 前記「ア」に示した訂正により、訂正前の請求項1に記載された「数値予報モデルによる(前記)所定期間」は、
(ア)気象予測手段における、予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間
(イ)第2数値予報モデルによる過去所定時点(または予測時点)からの第2所定期間
と気象予測手段における第1所定期間とは別の第2所定期間であり、第2数値予報モデルにおいて過去所定時点(又は予測時点)を始点とする第2所定期間であると特定され、明確となった。
ウ また、本件発明1において、訂正前の請求項1に記載された「モデル」については、本件発明1を特定する請求項1の記載において、
(ア)「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段と、」
(イ)「前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、」
(ウ)「前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる、」(下線は当審で付与した。)
という記載に訂正された。
エ 前記「ウ」に示した訂正により、訂正前の請求項1に記載された「モデル」は、
(ア)学習手段で生成され、気象予測手段で使用される第1モデル
(イ)遠隔領域のシミュレーションデータによる指標(の予想)を生成する第2数値予報モデル
とそれぞれ別のモデルであることを明示し、「前記第1モデル」及び「当該第1モデル」と言う記載により、どのモデルを指すのかも明示され、明確となった。
オ さらに、本件発明3及び4においても、前記「ア」及び「ウ」に示したのと同様の訂正がなされており、本件発明3及び4においても「所定期間」及び「モデル」について明確となった。そして、本件発明2は、請求項1の記載を引用する発明であり、請求項1の記載は前記「ア」及び「ウ」に示したとおりの訂正がなされていることから、本件発明1と同様に「所定期間」及び「モデル」について明確となった。
カ 以上のことから、当審において令和7年6月3日付けで特許権者に通知した取消理由1は解消されており、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消す理由とはならない。
(2)取消理由2(新規性)について
ア 本件発明1について
(ア)甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明とを比較する。
a 甲1発明の「オーストラリアのビクトリア州」は、本件発明1の「予測領域」に相当する。
b 甲1発明の「エルニーニョ南方振動(ENSO)およびインド洋ダイポール(IOD)」は、オーストラリアのビクトリア州春季降水量の予測を行うために、ANNモデリングにおいて使用されるものであることから、本件発明1の「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標」に相当する。また、甲1発明の「エルニーニョ南方振動(ENSO)」は、「一つは南方振動指標(SOI)で、これはダーウィンとタヒチ間の海面気圧(SLP)の異常を示すものであり、もう1つは赤道太平洋における海面水温(SST)異常であ」ることから、甲1発明の「エルニーニョ南方振動(ENSO)およびインド洋ダイポール(IOD)」の対象となる領域である、「ダーウィンとタヒチ間の海面」、「赤道太平洋における海面」及び「インド洋」は、本件発明1の「遠隔領域」に相当する。
c 甲1発明の「エルニーニョ南方振動(ENSO)およびインド洋ダイポール(IOD)」の指標は、Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得されることから、甲1発明の「Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)」は、本件発明1の「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段」及び「第2数値予報モデル」に相当し、甲1発明と本件発明1とは、「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段」を備える点で共通する。
d 甲1発明は「ANNを用いた遅延ENSO-DMI指標の組み合わせによる」「オーストラリアのビクトリア州春季降水量」「の予測」を行っており、用いる指標は「12月から8月までの値」で、降水量予測の期間は「春(9月~11月)」であることから、「遅延ENSO-DMI指標の組み合わせ」を用いた「人工ニューラルネットワーク(ANN)」は、本件発明1の「前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段」に相当する。
e 甲1発明は、「ビクトリア州ホーシャムにおける過去の月別降水データは、オーストラリア気象局から取得され、春(9月~11月)の降水量は、1900年1月から2009年12月までの月別降水データから取得され(www.bom.gov.au/climate/data/)」、かつ「春の降雨のANNモデリングで使用するために、NINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値を選択し、1900年から2006年をトレーニングおよび検証期間として選択」することから、甲1発明は、1900年から2006年のNINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値を入力データ、オーストラリア気象局の月別降水データから取得されたビクトリア州ホーシャムにおける1900年から2006年の春(9月~11月)の降水量を正解データとして、春の降雨のANNモデリングをトレーニングしている。よって、甲1発明の「Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得される」「1900年から2006年のNINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値」は、本件発明1の「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標」に相当し、甲1発明の「オーストラリア気象局の月別降水データから取得されたビクトリア州ホーシャムにおける1900年から2006年の春(9月~11月)の降水量」は本件発明1の「前記予測領域の実際の気象観測データ」に相当し、甲1発明の「春の降雨のANNモデリング」は本件発明1の「前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデル」に相当するから、甲1発明と本件発明1とは、「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段」を備える点で共通する。
f 甲1発明は、「2007年から2009年をテスト期間として使用し、」「ANNを用いた遅延ENSO-DMI指標の組み合わせによる春季降水の予測で96.96%の相関が得られることを確認し」ていることから、1900年から2006年のデータによりトレーニングされた春の降雨のANNモデリングに、Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得された2007年から2009年のNINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値を入力して得られた結果と、オーストラリア気象局から取得された2007年から2009年のビクトリア州ホーシャムにおける春(9月~11月)の降水量データと、を対照し、96.96%の相関があることを確認している。よって、甲1発明の「Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得された2007年から2009年のNINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値」は本件発明1の「新しい第2数値予報モデルによる」「前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想」に相当し、甲1発明の「2007年から2009年のビクトリア州ホーシャムにおける春(9月~11月)の降水量データ」と「対照」される「1900年から2006年のデータによりトレーニングされた春の降雨のANNモデリングに、Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得された2007年から2009年のNINO3、SOI、DMIの12月から8月までの値を入力して得られた結果」は、本件発明1の「前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として」の「当該第1モデルの出力」に相当するから、甲1発明と本件発明1とは、「前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる」「前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、」「前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該モデルの出力を用いる」点で共通する。
g 以上のことから、甲1発明と本件発明1とは、
「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段と、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段と、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段と、
を備え、
前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、
前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる、
情報処理装置」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
第1モデルを用いて、前記遠隔領域の前記指標の予想に基づいて、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段が、本件発明1では、「予測時点から第2所定期間後までのシミュレーションデータによる指標の予想」に基づいて、予測時点から1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行うのに対し、甲1発明では、Climate Explorerのウェブサイト(http://climexp.knmi.nl/)から取得された12月から8月までのシミュレーションデータによる指標に基づいて、春(9月~11月)の降水の予測を行う点。
h したがって、本件発明1は、甲1発明とは前記相違点1で相違しており、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
(イ)甲2発明との対比・判断
本件発明1と甲2発明とを比較する。
a 甲2発明の「アフリカのサヘル地域」は、本件発明1の「予測領域」に相当する。
b 甲2発明の「SSTおよびSAT異常の指標」は、アフリカのサヘル地域の季節降雨量異常予測を行うために、ANN PCA ベースのモデルにおいて使用されるものであることから、本件発明1の「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標」に相当する。また、甲2発明の「SST指標」は、「エルニーニョ・南方振動(ENSO)指標」に含まれる指標や「赤道北大西洋 SST指標」であることから、甲2発明の「SST指標」の対象となる領域である、「オーストラリア北西部準州のダーウィンとフランス領ポリネシアのタヒチの海」や「赤道大西洋」は、本件発明1の「遠隔領域」に相当する。
c 甲2発明の「SST指標」は、拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)から取得されることから、甲2発明の「拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)」は、本件発明1の「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段」に相当し、甲2発明と本件発明1とは、「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段」を備える点で共通する。
d 甲2発明は「1900年から2011年の期間の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を使用して、夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量異常を予測するために適用された、人工ニューラルネットワーク(ANN)機械学習アルゴリズムにより、主成分分析を使用して予測変数間の多重共線性を除去したANN PCA ベースのモデルとして生成」していることから、「春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を使用して、夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量異常を予測する」「ANN PCA ベースのモデル」は、本件発明1の「前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段」に相当する。
e 甲2発明は、「1900年から2011年の期間の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を使用して、夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量異常を予測するために適用された、人工ニューラルネットワーク(ANN)機械学習アルゴリズムにより、主成分分析を使用して予測変数間の多重共線性を除去したANN PCA ベースのモデルとして生成」し、「サヘル地域の降雨量異常に関する生データは、ワシントン大学大気海洋合同研究所(JISAO; jisao.washington.edu/data_sets/sahel)より取得し、」かつ「SST 指標は、拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)から取得し、地表気温異常(SATA)指数は、NOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)から取得」することから、甲2発明は、拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)及びNOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)から取得した1900年から2011年の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を入力データ、ワシントン大学大気海洋合同研究所(JISAO; jisao.washington.edu/data_sets/sahel)より取得されたサヘル地域の降雨量異常に関する生データのうち1900年から2011年の夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量を正解データとして、ANN PCA ベースのモデルを人工ニューラルネットワーク(ANN)機械学習アルゴリズムにより生成している。よって、甲2発明の「拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)」及び「NOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)」から取得した「1900年から2011年の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標」は、本件発明1の「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標」に相当し、甲2発明の「ワシントン大学大気海洋合同研究所(JISAO; jisao.washington.edu/data_sets/sahel)より取得されたサヘル地域の降雨量異常に関する生データのうち1900年から2011年の夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量」は本件発明1の「前記予測領域の実際の気象観測データ」に相当し、甲2発明の「ANN PCA ベースのモデル」は本件発明1の「前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデル」に相当するから、甲2発明と本件発明1とは、「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段」を備える点で共通する。
f 甲2発明は、「1900年から2011年の期間の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を使用して、夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量異常を予測する」「夏季サヘル地域の降雨量の予測精度が、」「8つの代替統計手法よりも」「ANN PCA ベースのモデル」が「優れていることを確認し」ていることから、1900年から2011年のデータにより人工ニューラルネットワーク(ANN)機械学習アルゴリズムにより生成されたANN PCA ベースのモデルに、拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)及びNOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)から取得した1900年から2011年の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標を入力して得られた結果と、ワシントン大学大気海洋合同研究所(JISAO; jisao.washington.edu/data_sets/sahel)より取得されたサヘル地域の降雨量異常に関する生データのうち1900年から2011年の夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量データと、を対照し、予測精度が良いことを確認している。よって、甲2発明の「拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)及びNOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)から取得した1900年から2011年の春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標」は本件発明1の「新しい第2数値予報モデルによる」「前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想」に相当し、甲2発明の「夏季(7月~9月)のサヘル地域の降雨量」「予測」は本件発明1の「前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測」に相当し、甲2発明と本件発明1とは、「前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる」「前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、」「前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる」点で共通する。
g 以上のことから、甲2発明と本件発明1とは、
「予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段と、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から前記1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段と、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段と、
を備え、
前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、
前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる、
情報処理装置」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2>
第1モデルを用いて、前記遠隔領域の前記指標の予想に基づいて、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段が、本件発明1では、「予測時点から第2所定期間後までのシミュレーションデータによる指標の予想」に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行うのに対し、甲2発明では、拡張再構築 SST(ERSST)、バージョン 3b(v3b)、データセット(Smith ら、2008 年)及びNOAA/国立気候データセンター(www.ncdc.noaa.gov/monitoring-references/faq/anomalies.php)から取得した春季(4月~6月)のSSTおよびSAT異常の指標に基づいて、夏季(7月~9月)の降雨量異常を予測を行う点。
h したがって、本件発明1は、甲2発明とは前記相違点2で相違しており、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
イ 本件発明2について
請求項1の記載を引用する発明である本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備える発明であるから、前記「ア」で検討したとおり、甲1発明とは少なくとも前記相違点1で相違し、甲2発明とは少なくとも前記相違点2で相違する。したがって、本件発明2も、甲1発明及び甲2発明と相違し、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の「情報処理装置」を「情報処理方法」とそのカテゴリを変更して、本件発明1の各手段が備える技術事項を各ステップが備える技術事項として過不足なく書き換えた発明である。
よって、前記「ア」で検討したとおり、甲1発明とは少なくとも前記相違点1で相違し、甲2発明とは少なくとも前記相違点2で相違する。したがって、本件発明3も、甲1発明及び甲2発明と相違し、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の「情報処理装置」を「コンピュータに」「制御処理を実行させ」る「プログラム」とそのカテゴリを変更して、本件発明1の各手段が備える技術事項をコンピュータが行う制御処理の各ステップが備える技術事項として過不足なく書き換えた発明である。
よって、前記「ア」で検討したとおり、甲1発明とは少なくとも前記相違点1で相違し、甲2発明とは少なくとも前記相違点2で相違する。したがって、本件発明4も、甲1発明及び甲2発明と相違し、特許法第29条第1項第3号には該当しない。
オ 取消理由2についてのまとめ
以上のことから、当審において令和7年6月3日付けで特許権者に通知した取消理由2は解消されており、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消す理由とはならない。
(3)取消理由3(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)甲1発明との対比・判断
a 前記「(2)ア(ア)」で検討したとおり、本件発明1と甲1発明とは、前記相違点1で相違する。
b 前記相違点2は、前記相違点1に係る技術事項である本件発明1が備える「第1モデルを用いて、前記遠隔領域の前記指標の予想に基づいて、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段が、「予測時点から第2所定期間後までのシミュレーションデータによる指標の予想」に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う」という技術事項を甲2発明が備えていないというものであることから、甲2発明も前記相違点1に係る技術事項を備えていない。
c また、前記「第6 3~6」及び「第7」の記載事項を参酌しても、甲3~甲7や参考資料1~5に、前記相違点1に係る技術事項は開示されていないし、前記相違点1に係る技術事項が本件特許の出願前において周知の技術であるとも認められない。
d 申立人は、申立人意見書第9~28頁において、特許権者の令和7年8月5日提出の意見書における主張に対して反論を行っている。その反論の中には、前記相違点1に係る技術事項が甲5や参考資料1に開示されているという主張もあるが、甲5や参考資料1には、前記相違点1に係る技術事項が開示されているとはいえない。仮に、甲5や参考資料1に、予測時点から未来のシミュレーションデータを入力し、予測時点から未来の気象を予測することが示唆されていたとしても、甲1発明の気象予測手段の第1モデルに相当する「春の降雨のANNモデリング」は、予測時点から過去のデータを元に予測時点から先の気象を出力するよう学習手段にて学習されたものであり、その入力データと出力データの組み合わせを異なるものとすることは、甲1発明の気象予測手段で意図する結果を出力するものとはならないことから、そのような入力データ及び気象予測の対象の変更を甲1発明において行うことは、当業者が容易になし得たことであるとは認められない。以上のことから、前記申立人の主張は採用することができない。
e したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2~甲7に記載された技術、及び参考資料1~5に記載された事項から当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
(イ)甲2発明との対比・判断
a 前記「(2)ア(イ)」で検討したとおり、本件発明1と甲2発明とは、前記相違点2で相違する。
b 前記相違点1は、前記相違点2に係る技術事項である本件発明1が備える「第1モデルを用いて、前記遠隔領域の前記指標の予想に基づいて、前記予測領域の前記予測時点から前記1ヶ月以上先の前記第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段が、「予測時点から第2所定期間後までのシミュレーションデータによる指標の予想」に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ヶ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う」という技術事項を甲1発明が備えていないというものであることから、甲1発明も前記相違点2に係る技術事項を備えていない。
c また、前記「第6 3~6」及び「第7」の記載事項を参酌しても、甲3~甲7や参考資料1~5に、前記相違点1に係る技術事項は開示されていないし、前記相違点2に係る技術事項が本件特許の出願前において周知の技術であるとも認められない。
d 申立人は、申立人意見書第9~28頁において、特許権者の令和7年8月5日提出の意見書における主張に対して反論を行っている。その反論の中には、前記相違点2に係る技術事項が甲5や参考資料1に開示されているという主張もあるが、甲5や参考資料1には、前記相違点1に係る技術事項が開示されているとはいえない。仮に、甲5や参考資料1に、予測時点から未来のシミュレーションデータを入力し、予測時点から未来の気象を予測することが示唆されていたとしても、甲2発明の気象予測手段の第1モデルに相当する「ANN PCA ベースのモデル」は、予測時点から過去のデータを元に予測時点から先の気象を出力するよう学習手段にて学習されたものであり、その入力データと出力データの組み合わせを異なるものとすることは、甲2発明の気象予測手段で意図する結果を出力するものとはならないことから、そのような入力データ及び気象予測の対象の変更を甲2発明において行うことは、当業者が容易になし得たことであるとは認められない。以上のことから、前記申立人の主張は採用することができない。
e したがって、本件発明1は、甲2発明、甲1及び甲3~甲7に記載された技術、及び参考資料1~5に記載された事項から当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
イ 本件発明2について
請求項1の記載を引用する発明である本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備える発明であるから、前記「ア」で説示したのと同様の理由により、当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の「情報処理装置」を「情報処理方法」とそのカテゴリを変更して、本件発明1の各手段が備える技術事項を各ステップが備える技術事項として過不足なく書き換えた発明である。
よって、前記「ア」で説示したのと同様の理由により、当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の「情報処理装置」を「コンピュータに」「制御処理を実行させ」る「プログラム」とそのカテゴリを変更して、本件発明1の各手段が備える技術事項をコンピュータが行う制御処理の各ステップが備える技術事項として過不足なく書き換えた発明である。
よって、前記「ア」で説示したのと同様の理由により、当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
オ 申立人の主張について
本件発明1~4の新規性、及び進歩性に関する請求人の主張については、前記「ア(ア)d」及び「ア(イ)d」で検討したとおりであり、採用することはできない。
カ 取消理由3(進歩性)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1~4は、甲1発明、甲2~甲7に記載された技術、及び参考資料1~5に記載された事項から当業者が容易になし得た発明であるとはいえず、また、甲2発明、甲1及び甲3~甲7に記載された技術、並びに参考資料1~5に記載された事項から当業者が容易になし得た発明であるとはいえないから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
3.取消理由についてのまとめ
以上のことから、当審において令和7年6月3日付けで特許権者に通知した取消理由1~3は解消されており、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消す理由とはならない。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.甲号証について
申立人が異議申立書において証拠として提示した甲号証は、上記「第4 1.」で整理し、その内容は「第6」に示したとおりである。
2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が異議申立書において申し立てた理由のうち、上記「第5 1.」の取消理由通知で採用した理由(異議申立理由1,2,5)以外の特許異議申立理由の概要は以下のとおりである。なお、異議申立理由5については、取消理由で通知した内容と重複するものでもあるが、ここで再掲する。
(1)異議申立理由3
本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明について、それら発明を特定する請求項1~4の記載にある「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が何を具体的に示すかが技術的に不明確であり、そのため当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえず、それらの特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)異議申立理由4
本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、それら発明が備える技術事項である「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が、どのような数値予報モデルを選定したものかが不明であり、「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」の選定によっては、長期気象予測を精度の低下を許す可能性も生じ、課題解決にならない恐れがあるため、それら発明は発明の詳細な説明に記載された範囲を超えているから、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえず、それらの特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)異議申立理由5
本件訂正前の請求項1~4に係る発明は、それら発明が備える技術事項である「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が、何を具体的に示すかが、技術的に不明確であり、それら発明の技術的範囲が明確であるとはいえず、それらの特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
3.当審の判断
前記「2.」より、申立人が異議申立書において申し立てた理由のうち、上記「第5 1.」の取消理由通知で採用した理由(異議申立理由1,2,5)以外の特許異議申立理由は、「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が不明確であるがゆえに、上記異議申立理由5の明確性違反のみならず、上記異議申立理由3の実施可能要件違反及び上記異議申立理由4のサポート要件違反の申立理由が生じたものといえる。よって、本件発明1~4における「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」が不明確であるかどうかについて検討する。
(1)本件発明1について
ア 本件発明1を特定する請求項1の記載は、前記「第3」に示したとおりであり、「過去の数値予報モデル」及び「新しい数値予報モデル」という記載はない。
イ 申立人は、申立人意見書第7~9頁において、本件発明1の「過去の第2数値予報モデル」と「新しい第2数値予報モデル」がどのようなモデルを指しているのか分からず不明確である旨主張する。よって、この主張について検討する。
ウ 本件発明1を特定する請求項1の記載において、「過去の第2数値予報モデル」と「新しい第2数値予報モデル」は以下のように用いられている。(下線は当審で付与した。)
「【請求項1】
予測領域と遠隔領域とで相関する気象現象に着目した指標を計算する計算手段から、当該遠隔領域の当該指標を取得する指標取得手段と、
前記遠隔領域の前記指標に基づいて、前記予測領域の予測時点から1ケ月以上先の第1所定期間における長期気象予測を行う気象予測手段と、
過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標と、前記予測領域の実際の気象観測データとの関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する学習手段と、
を備え、
前記指標取得手段は、新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想を取得し、
前記気象予測手段は、取得された前記遠隔領域の前記指標の予想を前記第1モデルに入力し、前記予測領域の前記予測時点から前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測として当該第1モデルの出力を用いる、
情報処理装置。」
エ 前記「ウ」より、
(ア)学習手段は「過去の第2数値予報モデルによる過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標」と「前記予測領域の実際の気象観測データ」との関係を所定の機械学習により分析することで、前記遠隔領域の前記指標によって前記予測領域の前記長期気象観測の結果を説明する第1モデルを生成する
(イ)前記1ケ月以上先の前記第1所定期間における前記長期気象予測を出力するために第1モデルに入力するため「指標の予想」を取得する指標取得手段は「新しい第2数値予報モデルによる前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータによる前記指標の予想」を取得する
と読み取るものと認められる。そうすると、「シミュレーションデータによる」「指標」を生成するのが「第2数値予報モデル」であり、学習手段で使う「指標」は「過去所定時点から第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータ」による「過去の」「指標」であり、指標取得手段で取得する指標の予想は、「前記予測時点から前記第2所定期間後までの前記遠隔領域のシミュレーションデータ」による「新しい」「指標(の予想)」であると認められる。
オ したがって、「過去の第2数値予報モデル」という記載の「過去の」は「指標」を修飾し、「新しい第2数値予報モデル」という記載の「新しい」は「指標の予想」を修飾するものと認められ、「第2数値予報モデル」が過去のものである、又は新しいものであるといった修飾をするものではない。
カ よって、前記申立人の主張は採用することはできない。
(2)本件発明2について
請求項1の記載を引用する発明である本件発明2についても、前記「(1)」で説示したとおりである。
(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の「情報処理装置」を「情報処理方法」とそのカテゴリを変更して、本件発明1の各手段が備える技術事項を各ステップが備える技術事項として過不足なく書き換えた発明であり、本件発明3を特定する請求項3の記載も請求項1の記載に準じたものとなっている。よって、本件発明3についても、前記「(1)」で説示したとおりである。
(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の「情報処理装置」を「コンピュータに」「制御処理を実行させ」る「プログラム」とそのカテゴリを変更して、本件発明1の各手段が備える技術事項をコンピュータが行う制御処理の各ステップが備える技術事項として過不足なく書き換えた発明であり、本件発明4を特定する請求項4の記載も請求項1の記載に準じたものとなっている。よって、本件発明4についても、前記「(1)」で説示したとおりである。
(5)小括
以上のことから、該異議申立理由3~5は、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消す理由とはならない。
4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についてのまとめ
したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由である、異議申立理由3~5については、本件発明1~4に対しいずれも理由はない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700424