特許異議申立
2025-700237
無線アクセス装置および通信システム
- 審判番号
- 2025-700237
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-199876
- 登録番号
- 7557794
- 請求日
- 2025年02月26日
- 審決日
- 2025年05月30日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【異議申立人】南 ヒメ子
- 審判長/審判官
- 審判長 丸山 高政
- 審判官 松原 徳久
- 審判官 土居 仁士
- 分類
- P1651.121-Y (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7557794号発明「無線アクセス装置および通信システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7557794号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7557794号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年10月29日に出願した特願2018-202995号の一部を令和4年12月15日に新たな特許出願としたものであって、令和6年9月19日にその特許権の設定登録がされ、同年9月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~3に係る特許に対し、令和7年2月26日に特許異議申立人 南 ヒメ子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
前記特許異議の申立てのために提出された特許異議申立書を、以下では単に「申立書」という。
第2 本件の特許請求の範囲と本件発明
本件の特許請求の範囲の記載を以下の1に示し、本件発明を以下の2で認定する。
1 本件の特許請求の範囲の記載
本件の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
建物の一部を構成する構造体または前記建物に支持されている構造体に取り付けられる無線アクセス装置であって、
前記無線アクセス装置と異なる通信デバイスと無線通信する第1通信部と、
前記通信デバイス以外の第1システムと通信する第2通信部と、
前記第1通信部および前記第2通信部を収納する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記第2通信部および前記第1システムの間の通信ケーブルを接続する端子部と、
前記構造体に取り付けられる側の前記筐体の外側に設けられ、前記通信ケーブルを挿通して支持するための挿通孔を有し、前記通信ケーブルにおける前記端子部と接続される部分と離間した少なくとも一部を支持する支持部と、
を備える無線アクセス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線アクセス装置と、
前記通信デバイスと
を備える通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線アクセス装置と、
前記通信デバイスと、
前記通信デバイス以外の第1システムと
を備える通信システム。」
2 本件発明の認定
本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、上記の請求項1~3に記載のとおりのものと認める。
なお、本件発明1については、後の参照の便宜のために、以下のA~Gに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 建物の一部を構成する構造体または前記建物に支持されている構造体に取り付けられる無線アクセス装置であって、
B 前記無線アクセス装置と異なる通信デバイスと無線通信する第1通信部と、
C 前記通信デバイス以外の第1システムと通信する第2通信部と、
D 前記第1通信部および前記第2通信部を収納する筐体と、
E 前記筐体に設けられ、前記第2通信部および前記第1システムの間の通信ケーブルを接続する端子部と、
F 前記構造体に取り付けられる側の前記筐体の外側に設けられ、前記通信ケーブルを挿通して支持するための挿通孔を有し、前記通信ケーブルにおける前記端子部と接続される部分と離間した少なくとも一部を支持する支持部と、
G を備える無線アクセス装置。
第3 申立理由及び申立人の主張の概要
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、請求項1~3に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1 特開2002-164808号公報
甲2 実公平3-22939号公報
甲3 特開平7-162164号公報
甲4 実公平1-26131号公報
甲5 特開2008-43056号公報
甲6 特開2008-35250号公報
2 申立理由
申立書に記載された申立理由は、以下のとおりである。
本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された発明(周知技術)の組み合わせに基づいて、また、本件発明2及び3は、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に、甲2~甲5に記載された発明(周知技術)の組み合わせ、または、甲1に記載された発明に、甲2~甲6に記載された発明(周知技術)の組み合わせ、に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条1項2号)
第4 申立理由についての判断
申立理由の有無を判断するために、まず、以下の1において甲1発明の認定を行う。次いで、以下の2において本件発明1と甲1発明との対比を行い、以下の3において本件発明1と甲1発明との相違点について判断し、以下の4に小括する。
1 甲1発明の認定
以下の(1)に甲1の記載を摘記し、以下の(2)で甲1発明を認定する。
(1)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。なお、下線は、甲1発明の認定に使用する箇所を示すことを目的に、当審で付した。
「【0021】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態による無線LANアクセスポイントを示す斜視図である。以下、IEEE802.11b標準にて規定されたAccess point (AP)として使用される無線LAN装置を「無線LANアクセスポイント」あるいは単に「アクセスポイント」という。
【0022】同図に示すように、無線LANアクセスポイントは、本体ハウジング100と、それを着脱自在に載せるためのスタンド200からなる。本体ハウジング100は扁平な塔のような形状を有し、その前面の所定位置にはLED等による表示部101が設けられ、その両側面の上部から下部にわたって放熱穴102が高さ方向に所定間隔で複数配列されている。さらに、本体ハウジング100の両側面の上部には1対のダイバーシティアンテナ300aおよび300bが角のように突出して設けられている。以下、図2~図4を参照しながら、本実施形態の構造をより詳細に説明する。」
「【0025】図3(A)は本実施形態における本体ハウジングの正面図、(B)は底面図、および(C)は(A)のC-C線断面図である。同図(B)に示すように、本体ハウジング100の底部104には2つの切り欠き部104aおよび104bが形成されている。一方の切り欠き部104aには、直流電源用(ここでは、DC5V2.5A)コネクタ105、10/100BASE-TXのLANポート106、端末コネクタ107およびリセットスイッチ108が配置されており、他方の切り欠き部104bにはセットスイッチ109およびディップスイッチ110が配置されている。」
「【0028】図4(A)は本体およびスタンドの背面図である。本体ハウジング100の背面には、本体を壁や柱などに固定するための壁面取り付け穴112および113が設けられている。すなわち、壁面等に1対のフックあるいはねじを固定しておき、そこに壁面取り付け穴112および113をそれぞれ引っかけることで容易にアクセスポイントを室内高所に取り付けることができる。さらに、本体ハウジング100の下方中央には、スタンド200に固定するための凹部114が設けられている。
【0029】スタンド200の背面には背面プレート204が固定され、背面プレート204の中央より右側にはその上部から下部にかけて逆L字上のスリットが形成され、スリットの終端は鍵状のケーブル狭持部205を構成している。また、背面プレート204の中央には固定用フック206が設けられている。
【0030】例えば、図4(A)に例示するように本体底部104の電源コネクタ105とLANポート106とにそれぞれケーブルが接続されている場合、本体をスタンド200に取り付ける際、ケーブル類203を背面プレート204のスリットに通し、ケーブル狭持部205にまとめることができる。」
「【0034】図5は本実施形態の正面カバーを一部破断した状態の斜視図であり、図6(A)は本体のA-A断面図、図6(B)はB-B断面図である。図5に示すように、本体ハウジング100内には、種々の電子部品が搭載され配線が形成された回路基板401が垂直方向に固定されている。具体的には、図6に示すように、回路基板401は4本の支柱402によって本体ハウジング100の内壁から所定の距離を隔てて放熱穴102の列と平行に固定される。その際、図6(A)に示すように、放熱穴102の列が回路基板401の電子部品が実装された側に位置するように固定される。」
「【0037】しかしながら、ハウジングの構造が複雑化するに従って、このようなシールド層を別に形成する方法は次第に困難になっている。そこで、導電フィラーを含む樹脂(導電性プラスチック)を用いて本体ハウジングを成型することで、上述した本体形状を実現すると同時に、電磁シールドも実現可能となる。ただし、本実施形態のように、アンテナが外部に露出している構造であることが必要である。アンテナがハウジング内部に設けられる場合には、ハウジング材料は通常の樹脂を用いて電磁シールドしない、あるいは電磁シールド層を設けない。または電波の送受信に影響しない部分だけに電磁シールド層を設けてもよい。」
「【0039】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、本体ハウジングがスタンドの上に直立した状態で保持されるために、必要なスペースはスタンドの底板だけの面積となり、机等の上にも余裕を持って通信機器を設置することが可能となる。また、ケーブル類はケーブル狭持部を通して外部へ延びるために、複数のケーブルがまとまった状態で取り出され、従来のようにケーブルが散乱してスペースを占有することがない。」
「【図4】
[図:0001423545000001.jpg]
」
(2) 甲1発明の認定
前記(1)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をa1~hに分説し、「構成a1」のように参照する。
a1 無線LANアクセスポイントあるいは単にアクセスポイントは、Access point (AP)として使用される無線LAN装置をいい、(【0021】)
a2 無線LANアクセスポイントは、本体ハウジング100と、それを着脱自在に載せるためのスタンド200からなり、(【0022】)
b 本体ハウジング100の背面には、本体を壁や柱などに固定するための壁面取り付け穴112および113が設けられ、壁面等に1対のフックあるいはねじを固定しておき、そこに壁面取り付け穴112および113をそれぞれ引っかけることで容易にアクセスポイントを室内高所に取り付けることができ、(【0028】)
c1 本体ハウジング100の両側面の上部には1対のダイバーシティアンテナ300aおよび300bが角のように突出して設けられ、(【0022】)
c2 アンテナがハウジング内部に設けられる場合には、ハウジング材料は通常の樹脂を用いて電磁シールドしない、あるいは電磁シールド層を設けず、(【0037】)
d1 本体ハウジング100の底部104には2つの切り欠き部104aおよび104bが形成され、一方の切り欠き部104aには、10/100BASE-TXのLANポート106が配置され、(【0025】)
d2 LANポート106にケーブルが接続されており、(【0030】)
e 本体ハウジング100内には、種々の電子部品が搭載され配線が形成された回路基板401が垂直方向に固定されており、(【0034】)
f1 スタンド200の背面には背面プレート204が固定され、背面プレート204の中央より右側にはその上部から下部にかけて逆L字上のスリットが形成され、スリットの終端は鍵状のケーブル狭持部205を構成し、(【0029】)
f2 本体をスタンド200に取り付ける際、ケーブル類203を背面プレート204のスリットに通し、ケーブル狭持部205にまとめることができ、(【0030】)
g 本体ハウジングがスタンドの上に直立した状態で保持されるために、必要なスペースはスタンドの底板だけの面積となり、机等の上にも余裕を持って通信機器を設置することが可能となる、(【0039】)
h 無線LANアクセスポイント。(【0021】)
2 本件発明1と甲1発明との対比
以下において、本件発明1と甲1発明とを対比する。
(1)発明特定事項Aについて
発明特定事項Aは、「建物の一部を構成する構造体または前記建物に支持されている構造体に取り付けられる無線アクセス装置であって、」というものである。
甲1発明の「無線LANアクセスポイント」は、「Access point (AP)として使用される無線LAN装置」(構成a1)であるから、本件発明1の「無線アクセス装置」に相当する。
また、甲1発明の「無線LANアクセスポイント」は、「本体ハウジング100と、それを着脱自在に載せるためのスタンド200からなり」(構成a2)、「本体ハウジング100の背面には、本体を壁や柱などに固定するための壁面取り付け穴112および113が設けられ、壁面等に1対のフックあるいはねじを固定しておき、そこに壁面取り付け穴112および113をそれぞれ引っかけることで容易にアクセスポイントを室内高所に取り付けることができ」る(構成b)ものであって、「壁面等」には、建物を構成する壁の壁面だけでなく、例えば建物に対して後から設置した間仕切り壁等の壁面も当然含まれ得るから、建物を構成する壁は、「建物の一部を構成する構造体」、また、建物に対して後から設置した間仕切り壁等は、「建物に支持されている構造体」といえる。
そうすると、甲1発明の「無線LANアクセスポイント」は、壁面等、すなわち、「建物の一部を構成する構造体」または「建物に支持されている構造体」に取り付けられるものであるから、本件発明1の「建物の一部を構成する構造体または前記建物に支持されている構造体に取り付けられる無線アクセス装置」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「建物の一部を構成する構造体または前記建物に支持されている構造体に取り付けられる無線アクセス装置」である点で一致する。
(2)発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「前記無線アクセス装置と異なる通信デバイスと無線通信する第1通信部と、」というものである。
甲1発明の「本体ハウジング100」に設けられる「1対のダイバーシティアンテナ300aおよび300b」(構成c1)は、無線LANに用いられるアンテナであることは技術常識から明らかであり、「本体ハウジング100」とは異なる通信デバイスと無線通信するためのものといえる。
また、甲1発明の「本体ハウジング100」の中には、「種々の電子部品が搭載され配線が形成された回路基板401が垂直方向に固定されている」(構成e)から、「種々の電子部品」として、無線LANに使用される電子部品、すなわち、無線通信モジュールも当然含まれているといえる。
そして、本件明細書の「第1通信部11は、通信デバイス30と無線通信r1を行うアンテナおよび無線モジュールによって構成されている。」(【0021】)との記載を参照すると、本件発明1の「第1通信部」とは、アンテナ及び無線モジュールによって構成されるものと解される。
そうすると、甲1発明の「1対のダイバーシティアンテナ300aおよび300b」、及び、無線LANに使用される電子部品である無線通信モジュール(これらを「第1通信部」と呼ぶことは任意である。)が、本件発明1の「前記無線アクセス装置と異なる通信デバイスと無線通信する第1通信部」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記無線アクセス装置と異なる通信デバイスと無線通信する第1通信部」を備える点で一致する。
(3)発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、「前記通信デバイス以外の第1システムと通信する第2通信部と、」というものである。
本件明細書の「第2通信部12は、第1システム40と有線通信する通信モジュールである。」(【0026】)との記載を参照すると、本件発明1の「第2通信部」とは、有線通信するための通信モジュールのことと解される。
また、甲1発明の「本体ハウジング100」には、「10/100BASE-TXのLANポート106が配置され」ており(構成d1)、「LANポート106」には「ケーブルが接続されて」いる(構成d2)から、「本体ハウジング100」が、「LANポート106」に接続されたケーブルを用いた有線通信を行うことは明らかであり、また、「本体ハウジング100」の中には、「種々の電子部品が搭載され配線が形成された回路基板401が垂直方向に固定されて」いる(構成e)ことから、有線通信を行うための電子部品、すなわち、有線通信モジュールを備えていることも明らかである。
そうすると、甲1発明の「LANポート106」に接続されたケーブルを用いた有線通信を行うための有線通信モジュール(これを「第2通信部」と呼ぶことは任意である。)は、本件発明1の「通信する第2通信部」に相当する。
また、甲1発明では、有線通信モジュールの通信相手が特定されていないものの、通常は無線通信の通信相手が有線通信の通信相手となることはなく、例えばISPのシステムや構内の管理システム等の何らかのシステムが有線通信モジュールの通信相手となる、すなわち、無線通信の通信相手(前記(2)を鑑みると、本件発明1の「通信デバイス」に相当する。)とは異なるシステム(これを「第1システム」と呼ぶことは任意である。)が有線通信モジュールの通信相手となるものと解されるから、「第2通信部」は、「前記通信デバイス以外の第1システムと通信する」ものといえる。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記通信デバイス以外の第1システムと通信する第2通信部」を備える点で一致する。
(4)発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは、「前記第1通信部および前記第2通信部を収納する筐体と、」というものである。
甲1発明の「本体ハウジング100」は、本件発明1の「筐体」に相当することは自明である。
また、甲1発明の「アンテナ」、すなわち、「1対のダイバーシティアンテナ300aおよび300b」(構成c1)は、「ハウジング内部に設けられ」てもよい(構成c2)、すなわち、「本体ハウジング100」に収納されてもよいものであり、また、前記(2)、(3)のとおり、無線通信モジュール及び有線通信モジュールは、「本体ハウジング100」に収納されているといえる。
よって、甲1発明の「本体ハウジング100」は、本件発明1の「前記第1通信部および前記第2通信部を収納する筐体」に相当する。
(5)発明特定事項Eについて
発明特定事項Eは、「前記筐体に設けられ、前記第2通信部および前記第1システムの間の通信ケーブルを接続する端子部と、」というものである。
甲1発明の「LANポート106」には、「ケーブルが接続されて」(構成d2)おり、当該ケーブルが通信ケーブルであることは当然であるから、甲1発明の「LANポート106」は、本件発明1の「通信ケーブルを接続する端子部」に相当する。
また、前記(3)のとおり、甲1発明の有線通信モジュールは、第1システムと通信するといえ、この場合、甲1発明の「ケーブル」は、有線通信モジュール及び第1システムの間の通信ケーブルといえるから、本件発明1の「前記第2通信部および前記第1システムの間の通信ケーブル」に相当する。
そして、甲1発明の「LANポート106」は、「本体ハウジング100」に「配置されて」いるから(構成d1)、前記(4)も鑑みると、本件発明1の「前記筐体に設けられ」ているといえる。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記筐体に設けられ、前記第2通信部および前記第1システムの間の通信ケーブルを接続する端子部」を備える点で一致する。
(6)発明特定事項Fについて
発明特定事項Fは、「前記構造体に取り付けられる側の前記筐体の外側に設けられ、前記通信ケーブルを挿通して支持するための挿通孔を有し、前記通信ケーブルにおける前記端子部と接続される部分と離間した少なくとも一部を支持する支持部と、」というものである。
甲1発明の「無線LANアクセスポイント」には、「前記構造体に取り付けられる側の前記筐体の外側に設けられ、前記通信ケーブルを挿通して支持するための挿通孔を有し、前記通信ケーブルにおける前記端子部と接続される部分と離間した少なくとも一部を支持する支持部」を備える点が特定されていない点で、本件発明1と相違する。
(7)発明特定事項Gについて
発明特定事項Gは、「を備える無線アクセス装置。」というものである。
前記(1)のとおり、甲1発明の「無線LANアクセスポイント」が、本件発明1の「無線アクセス装置」に相当する。
(8)一致点及び相違点
前記(1)~(7)によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「建物の一部を構成する構造体または前記建物に支持されている構造体に取り付けられる無線アクセス装置であって、
前記無線アクセス装置と異なる通信デバイスと無線通信する第1通信部と、
前記通信デバイス以外の第1システムと通信する第2通信部と、
前記第1通信部および前記第2通信部を収納する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記第2通信部および前記第1システムの間の通信ケーブルを接続する端子部と、
を備える無線アクセス装置。」である点。
〈相違点〉
「無線アクセス装置」について、本件発明1は、「前記構造体に取り付けられる側の前記筐体の外側に設けられ、前記通信ケーブルを挿通して支持するための挿通孔を有し、前記通信ケーブルにおける前記端子部と接続される部分と離間した少なくとも一部を支持する支持部」を備えるのに対し、甲1発明は、当該構成について特定されていない点。
3 本件発明1と甲1発明との相違点についての判断
前記2(8)に示した相違点について、以下、検討する。
(1)相違点について
甲1発明の「スタンド200」は、「本体ハウジング100」とは別体であり(構成a2)、「スタンド200の背面には背面プレート204が固定され」(構成f1)、「ケーブル類203を背面プレート204のスリットに通し、ケーブル狭持部205にまとめることができ」る(構成f2)が、「スタンド200」は、「本体ハウジングがスタンドの上に直立した状態で保持され」、「机等の上にも余裕を持って通信機器を設置する」(構成g)ためのもの、すなわち、「本体ハウジング100」を机等の上に設置する際に用いるものであって、「本体ハウジング100」を壁面等に取り付ける際に用いるものではない。
一方で、本件発明1の「無線アクセス装置」は、「建物の一部を構成する構造体または建物に支持されている構造体に取り付けられる」ものである。
以上によれば、甲1発明の「無線LANアクセスポイント」を壁面等に取り付ける際には、「本体ハウジング100」のみを取り付けるものであって、「スタンド200」を含む「無線LANアクセスポイント」を壁面等に取り付けるものではないから、「スタンド200」を含む「無線LANアクセスポイント」が、本件発明1の「無線アクセス装置」に相当するものとはいえない。
また、甲1には、「スタンド200」に設けられた「ケーブル挟持部205」に相当する構造を、「本体ハウジング100」に設けるようにすること等の記載も示唆もない。
加えて、申立人は、相違点は、甲2~甲5に開示された周知技術である旨を主張しているが、甲2~甲5に記載された発明(以下、それぞれ「甲2発明」~「甲5発明」という。)に基づいて、通信ケーブルを挿通して支持するための挿通孔、及び、通信ケーブルにおける端子部と接続される部分と離間した少なくとも一部を支持する支持部、が仮に周知技術であるとしても、甲2~甲5はいずれも、建物の一部を構成する構造体または建物に支持されている構造体に取り付けられる装置に関する発明ではなく、構造体に取り付けられる側に当該支持部を設けることは当然特定されていないから、甲1発明に甲2発明~甲5発明を適用したとしても、甲1発明の「本体ハウジング100」の背面、すなわち、構造体に取り付けられる側の面に、本件発明1の「支持部」を設けることは、当業者といえども容易に相当し得たとは認められない。
したがって、本件発明1と甲1発明との相違点に係る発明特定事項Fは、当業者といえども、甲1発明及び甲2発明~甲5発明から容易に相当し得たとは認められない。
(2)本件発明1と甲1発明との相違点についての小括
前記(1)によれば、本件発明1と甲1発明との相違点は、甲1発明及び甲2発明~甲5発明から容易に想到し得たものではない。
また、当該相違点は、その他の証拠及び技術常識によっても容易に想到し得たものではない。
4 申立理由についての小括
前記3(2)によれば、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲2発明~甲5発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
そして、本件発明2~3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明2~3と甲1発明とは、少なくとも前記2(8)に示した相違点を有し、当該相違点については前記3(1)のとおりであるから、本件発明2~3も、当業者が甲1発明及び甲2発明~甲5発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められず、甲6の存在は、結論を左右するものではない。
以上によれば、申立理由には理由がない。
第5 むすび
前記第4によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700237