特許拒絶査定不服審判
2023-009607
トンネル覆工コンクリートの打設方法
- 審判番号
- 2023-009607
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-235940
- 請求日
- 2023年06月09日
- 審決日
- 2026年04月17日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社奥村組
- 【請求人代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
- 【請求人】北陸鋼産株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 立澤 正樹
- 分類
- P18 .121-WZ (E21D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-235940「トンネル覆工コンクリートの打設方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月13日出願公開、特開2020- 23864〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月17日(国内優先権主張 平成30年8月3日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 7月27日付け:拒絶理由通知
同年11月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 3月 9日付け:拒絶査定(同月14日送達)
同年 6月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 9月27日付け:拒絶理由通知
同年11月29日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」等という。)は、令和5年6月9日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1についてみれば、その記載は以下のとおりである。
「 【請求項1】
トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリートの施工方法において、トンネルの側壁部分からアーチ形状部分のクラウン部に至るまでの覆工空間にコンクリートを打設する際に用いるトンネル覆工コンクリートの打設方法であって、
前記トンネル覆工用型枠の型枠本体は、トンネルのアーチ形状部分の上部の覆工空間を形成する上部型枠と、該上部型枠の両側の下端部に各々回転可能に接続された、アーチ形状部分の下部及び両側の側壁部分の覆工空間を形成する一対の側部型枠と、該一対の側部型枠の下端部に各々回転可能に接続された、一対の下端部型枠とを含んで構成されており、
前記側壁部分から前記アーチ形状部分のクラウン部に至るまでのトンネル覆工用型枠には、コンクリートポンプから延設する圧送配管を接続させる開閉可能な2段の圧入接続口が、前記型枠本体の前記側部型枠に設けられた下段の圧入接続口、及び前記型枠本体の前記上部型枠に設けられた上段の圧入接続口として、上下方向に間隔をおいて設けられており、
前記下段の圧入接続口に圧送配管を接続して、当該下段の圧入接続口に至るまでの、前記下端部型枠による覆工空間を含む下方の覆工空間に、当該下段の圧入接続口からコンクリートを流し込むことで供給した後に、引き続いて当該下段の圧入接続口の上方の覆工空間に、前記上段の圧入接続口との間の中間部分の高さ位置に至るまで、当該圧入接続口からコンクリートを圧入することで供給する、下段の圧入接続口におけるコンクリート流し込み圧入工程と、
しかる後に、前記上段の圧入接続口に圧送配管を切り換えて接続して、当該上段の圧入接続口に至るまでの下方の覆工空間に、当該上段の圧入接続口からコンクリートを流し込むことで供給した後に、引き続いて当該上段の圧入接続口の上方の覆工空間に、当該上段の圧入接続口からコンクリートを圧入することで供給する、上段の圧入接続口におけるコンクリート流し込み圧入工程とを含んでおり、
これらの工程によって、前記側壁部分から前記アーチ形状部分のクラウン部に至るまでの覆工空間にコンクリートを打設するトンネル覆工コンクリートの打設方法。」
第3 当審拒絶理由の概要
本願発明1に対し、当審において通知した令和6年9月27日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりである。
理由1.(進歩性)本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2015-67949号公報
第4 引用文献の記載
1 引用文献1
(1)記載事項
当審拒絶理由において引用された本願の優先日前である平成27年4月13日に頒布された刊行物である特開2015-67949号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。)。
ア 「【0001】
本発明は、トンネルの内壁に覆工コンクリートを打設する装置及び方法、並びに移動式セントルに関する。」
イ 「【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る覆工コンクリートの打設装置を示す正面図、図2は、同打設装置の全体側面図、図3は、同打設装置の全体平面図である。
図1において、この打設装置は、一次覆工されたトンネルTの内周面t1に対して、二次覆工コンクリート(以下、単に「覆工コンクリート」という)Cを打設するものであり、トンネルTの内周面t1との間に覆工コンクリートCの打設空間Dを形成するスライドセントル(移動式セントル)1と、覆工コンクリートC(生コンクリート)を圧送するコンクリートポンプPA,PBと、このコンクリートポンプPA,PBによって送られた覆工コンクリートCを打設空間Dに導く圧送管10A,10Bとを備えている。
【0021】
図1に示されるように、スライドセントル1は、トンネルT内の床面に敷設されたレールR上を走行可能である。スライドセントル1は、坑口側(図2の左側)から切羽側(図2の右側)に向かって所定のスパンで順次セットされ、覆工コンクリートCの打設空間D(図3参照)を形成するようになっている。なお、本明細書においては、トンネル縦断方向(延長方向)を前後方向ということがあり、トンネル幅方向を左右方向ということがある。また、トンネル縦断方向の坑口側を前側、切羽側を後側ということがある。
【0022】
図1に示されるように、スライドセントル1は、トンネルT内を走行可能な門型台車2と、覆工コンクリートCの内周面を成型するための堰板となる型枠3とを備えている。
門型台車2は、基台部2aと、基台部2aを支持する支柱2bとを備えている。支柱2bの下端には、トンネルTの床面に敷設されたレールR上に係合する車輪2cが設けられており、この車輪2cがレールRに沿って転動することで、門型台車2がトンネルT内を走行する。
【0023】
型枠3は、トンネルTの内周面t1にほぼ沿う断面円弧状に形成され、所定のスパンの範囲で内周面t1に対して間隔をあけて覆うようにセットされ、これにより、型枠3の外周面3bとトンネルTの内周面t1との間に覆工コンクリートCが充填される打設空間Dが形成される。
【0024】
型枠3は、覆工コンクリートCの内周面を成型する型枠パネル3fと、この型枠パネル3fの内周側を補強する多数本の補強部材3gとを備えている。型枠パネル3fは、厚さ数ミリの板材により形成されている。補強部材3gは、溝型鋼等の鋼材により構成され、トンネルTの縦断方向に沿って配置されている。
【0025】
また、型枠3は、覆工コンクリートCの天端部分を成型する上部3cと、上部3cの両端に回動可能に連結され、覆工コンクリートCの側壁部分を成型する側部3dと、側部3dの下端に回動可能に連結され、覆工コンクリートCの側壁部分の下端部を成型する下端部3eとを備えている。
上部3cは、門型台車2の基台部2a上に設けられた複数のジャッキ4により上下方向に昇降可能に支持されている。」
ウ 「【0028】
型枠パネル3fにおける上部3c及び側部3dには、複数の開口部3hが前後方向及び左右方向に並べて形成されている。また、各開口部3hは、蓋体3jによって開閉可能に構成されている。そして、この開口部3hは、覆工コンクリートCを打設空間Dに流し込むため、或いは、打設状態を点検するため、或いは、打設空間Dに締固め用バイブレータ(図示省略)を挿入するため等の目的で用いられる。
【0029】
本実施形態の打設装置は、複数台(図示例では2台)のコンクリートポンプPA,PBを備えている。各コンクリートポンプPA,PBは、それぞれ車両(コンクリートポンプ車)に搭載されている。2台のコンクリートポンプPA,PBは、スライドセントル1よりも坑口側において左右に並べて設置され、それぞれコンクリートミキサー車20から覆工コンクリート(生コンクリート)が供給される。そして、各コンクリートポンプPA,PBは、供給された覆工コンクリートCを、圧送管10A,10Bを介してスライドセントル1側へ圧送し、トンネルTの内周面t1と型枠3との間の打設空間Dに流し込む。
【0030】
圧送管10A,10Bは、主配管11A,11Bと、この主配管11A,11Bから分岐する枝配管12A,12Bと、各枝配管12A,12Bの終端部に接続される端部配管13A,13Bとを有している。
主配管11A,11Bは、一端がコンクリートポンプPA,PBに接続され、他端側がスライドセントル1の型枠3の内側に配設されている。具体的に、主配管11A,11Bは、コンクリートポンプPA,PBから前後方向に延びる第1部分11A1,11B1と、この第1部分11A1,11B1の後端から左右内側(トンネル幅方向の中央側)へ延びる第2部分11A2,11B2と、トンネルの左右中央において第2部分11A2,11B2から後方(切羽側)に延びる第3部分11A3,11B3とを有している。」
エ 「【0032】
図3に示されるように、各第3部分11A3,11B3の後端には、それぞれ分岐管14を介して複数(図示例では2本)の枝配管12A,12Bが接続されている。分岐管14は、図4に拡大して示すように、Y字形状に形成され、1つの合流部分14aに主配管11A,11Bが接続され、2つの分岐部分14bに枝配管12A,12Bが接続されている。枝配管12A,12Bは、分岐管14から約90度湾曲してトンネル幅方向の両側に延びている。
【0033】
図1に示されるように、各枝配管12A,12Bには、内部を流れる覆工コンクリートCの圧力を計測する圧力計16と、流量を調整する流量調整バルブ17とが設けられている。
各枝配管12A,12Bの左右方向の外端部には、3本の端部配管13A,13Bが順次切り換えて接続される。この3本の端部配管13A,13Bのうち2本は、型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3hを介して打設空間Dに挿入されている。残りの1本は、型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3hに接続されている。そして、打設空間Dに覆工コンクリートCを打設する際には、枝配管12A,12Bが下段、中段、上段の順で各端部配管13A,13Bに切り換えて接続される。
なお、図1においては、理解を容易にするために、上下3本の端部配管13A,13Bに対して上段側から順に(U),(M),(L)の符号を付記している。」
オ 「【0038】
以上の構成において、トンネルTの内周面t1に覆工コンクリートCを打設するには、まず、各圧送管10A,10Bの枝配管12A,12Bの終端部を最下段の端部配管13A,13B(L)に接続しておく。そして、2台のコンクリートポンプPA,PBを同時に駆動し、各コンクリートポンプPA,PBから圧送管10A,10Bを介して型枠3の前後2箇所において、左右両側の打設空間Dの最下部に覆工コンクリートCを流し込む。
【0039】
打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが最下段の端部配管13A,13B(L)の近傍まで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止するとともに、全ての枝配管12A,12Bから最下段の端部配管13A,13B(L)を取り外し、中段の端部配管13A,13B(M)に繋ぎ替える。また、最下段の端部配管13A,13B(L)を開口部3hから抜き取って当該開口部3hを蓋体3jによって閉鎖する。その後、再び、2台のコンクリートポンプPA,PBを同時に駆動して打設空間Dに覆工コンクリートCを流し込む。
【0040】
打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが中段の端部配管13A,13B(M)の近傍まで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止するとともに、全ての枝配管12A,12Bから中段の端部配管13A,13B(M)を取り外し、上段の端部配管13A,13B(U)に繋ぎ替える。また、中段の端部配管13A,13B(M)を開口部3hから抜き取って当該開口部3hを蓋体3jによって閉鎖する。その後、再び、コンクリートポンプPA,PBを駆動して打設空間Dに覆工コンクリートCを流し込む。
【0041】
打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが上段の端部配管13A,13B(U)の高さにまで上昇しても、そのまま続けて覆工コンクリートCを流し込み、端部配管13A,13B(U)よりも上側に覆工コンクリートを圧入する。そして、図6に示されるように、覆工コンクリートCが型枠3の頂点付近にまで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止して主配管11A,11Bを吹き上げ管15に接続し、型枠3の頂点部分からトンネルTの天端部に覆工コンクリートCを打設する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の打設装置においては、型枠3の前後左右の4箇所において、同時に覆工コンクリートCを打設することができる。そのため、打設された覆工コンクリートCによって型枠3には左右方向の両側から荷重F(図1参照)が付与される。そのため、型枠3が左右方向に関して偏心してしまうのを防止することができ、安定した状態で覆工コンクリートCの打設を行うことができる。」
カ 「【0045】
本実施形態においては、地面によって支持されたジャッキ5b(図1参照)が型枠3の側部3dに連結されているので、型枠3に左右両側から同時に荷重Fが付与された場合であっても、当該荷重Fを地面によっても好適に受けることができる。
また、本実施形態においては、図6に示されるように、最上段の端部配管13A,13B(U)が、型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートC(図6に2点差線のハッチングで示す)を吹き上げて打設するように構成されているので、当該端部配管13A,13B(U)から広範囲に覆工コンクリートCを打設することができ、覆工コンクリートCが型枠3の頂点に到るまでは、当該頂点部分に設けられた開口部3hから打設状態の点検やバイブレータによる締固めを行うことができ、施工性を高めることができる。また、本実施形態では、枝配管12A,12Bに圧力計16と流量調整バルブ17とが設けられているので、左右の端部配管13A,13Bから供給された覆工コンクリートCのレベルが型枠3の頂点において同一となるように適切に流量を調整することができる。」
キ 図1
「
[図:0001436431000001.jpg]
」
ク 図3
「
[図:0001436431000002.jpg]
」
ケ 図6
「
[図:0001436431000003.jpg]
」
(2)引用文献1から看取される事項
ア 上記(1)イの記載を踏まえると、上記(1)キの図1から、
「覆工コンクリートCの天端部分はアーチ形状である。」
ことが看取される。
イ 上記(1)イ及びエの記載を踏まえると、上記(1)クの図3から、
「枝配管12A、12Bは、坑口側から切羽側へ前後して設けられ、トンネル縦断方向の2カ所の端部配管13A、13Bに接続されている。」
ことが看取される。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)からみて、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。
<引用発明>
「トンネルの内壁に覆工コンクリートを打設する方法において(【0001】)、
覆工コンクリートの打設装置は、トンネルTの内周面t1に対して、覆工コンクリートCを打設するものであり、トンネルTの内周面t1との間に覆工コンクリートCの打設空間Dを形成するスライドセントル1と、覆工コンクリートCを圧送するコンクリートポンプPA,PBと、このコンクリートポンプPA,PBによって送られた覆工コンクリートCを打設空間Dに導く圧送管10A,10Bとを備え(【0020】)、
スライドセントル1は、坑口側から切羽側に向かって所定のスパンで順次セットされ、覆工コンクリートCの打設空間Dを形成し(【0021】)、
スライドセントル1は、トンネルT内を走行可能な門型台車2と、覆工コンクリートCの内周面を成型するための堰板となる型枠3とを備え(【0022】)、
型枠3は、トンネルTの内周面t1にほぼ沿う断面円弧状に形成され、所定のスパンの範囲で内周面t1に対して間隔をあけて覆うようにセットされ、これにより、型枠3の外周面3bとトンネルTの内周面t1との間に覆工コンクリートCが充填される打設空間Dが形成され(【0023】)、
型枠3は、覆工コンクリートCの内周面を成型する型枠パネル3fを備え(【0024】)、
型枠3は、覆工コンクリートCの天端部分を成型する上部3cと、上部3cの両端に回動可能に連結され、覆工コンクリートCの側壁部分を成型する側部3dと、側部3dの下端に回動可能に連結され、覆工コンクリートCの側壁部分の下端部を成型する下端部3eとを備え(【0025】)、
覆工コンクリートCの天端部分はアーチ形状であり(図1)、
型枠パネル3fにおける上部3c及び側部3dには、複数の開口部3hが前後方向及び左右方向に並べて形成され、各開口部3hは、蓋体3jによって開閉可能に構成され、この開口部3hは、覆工コンクリートCを打設空間Dに流し込むための目的で用いられ(【0028】)、
各コンクリートポンプPA,PBは、供給された覆工コンクリートCを、圧送管10A,10Bを介してスライドセントル1側へ圧送し、トンネルTの内周面t1と型枠3との間の打設空間Dに流し込み(【0029】)、
圧送管10A,10Bは、主配管11A,11Bと、この主配管11A,11Bから分岐する枝配管12A,12Bと、各枝配管12A,12Bの終端部に接続される端部配管13A,13Bとを有し(【0030】)、
枝配管12A、12Bは、坑口側から切羽側へ前後して設けられ、トンネル縦断方向の2カ所の端部配管13A、13Bに接続され(図3)、
各枝配管12A,12Bの左右方向の外端部には、3本の端部配管13A,13Bが順次切り換えて接続され、この3本の端部配管13A,13Bのうち2本は、型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3hを介して打設空間Dに挿入され、残りの1本は、型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3hに接続され、そして、打設空間Dに覆工コンクリートCを打設する際には、枝配管12A,12Bが下段、中段、上段の順で各端部配管13A,13Bに切り換えて接続され(【0033】)、
トンネルTの内周面t1に覆工コンクリートCを打設するには、まず、各圧送管10A,10Bの枝配管12A,12Bの終端部を最下段の端部配管13A,13B(L)に接続し、そして、2台のコンクリートポンプPA,PBを同時に駆動し、各コンクリートポンプPA,PBから圧送管10A,10Bを介して型枠3の前後2箇所において、左右両側の打設空間Dの最下部に覆工コンクリートCを流し込み(【0038】)、
打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが最下段の端部配管13A,13B(L)の近傍まで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止するとともに、全ての枝配管12A,12Bから最下段の端部配管13A,13B(L)を取り外し、中段の端部配管13A,13B(M)に繋ぎ替え、また、最下段の端部配管13A,13B(L)を開口部3hから抜き取って当該開口部3hを蓋体3jによって閉鎖し、その後、再び、2台のコンクリートポンプPA,PBを同時に駆動して打設空間Dに覆工コンクリートCを流し込み(【0039】)、
打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが中段の端部配管13A,13B(M)の近傍まで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止するとともに、全ての枝配管12A,12Bから中段の端部配管13A,13B(M)を取り外し、上段の端部配管13A,13B(U)に繋ぎ替え、また、中段の端部配管13A,13B(M)を開口部3hから抜き取って当該開口部3hを蓋体3jによって閉鎖し、その後、再び、コンクリートポンプPA,PBを駆動して打設空間Dに覆工コンクリートCを流し込み(【0040】)、
打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが上段の端部配管13A,13B(U)の高さにまで上昇しても、そのまま続けて覆工コンクリートCを流し込み、端部配管13A,13B(U)よりも上側に覆工コンクリートを圧入し、覆工コンクリートCが型枠3の頂点付近にまで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止して主配管11A,11Bを吹き上げ管15に接続し、型枠3の頂点部分からトンネルTの天端部に覆工コンクリートCを打設し(【0041】)、
型枠3の前後左右の4箇所において、同時に覆工コンクリートCを打設することができ(【0042】)、
最上段の端部配管13A,13B(U)が、型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートCを吹き上げて打設するように構成されているので、当該端部配管13A,13B(U)から広範囲に覆工コンクリートCを打設することができ、施工性を高めることができる(【0045】)、
トンネルの内壁に覆工コンクリートを打設する方法(【0001】)。」
第5 当審の判断
1 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「型枠3」は、「覆工コンクリートCが充填される打設空間D」を形成するものであるから、本願発明1の「トンネル覆工用型枠」に相当し、引用発明は、「トンネルの内壁に覆工コンクリートを打設する方法」であるから、本願発明1の「トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリートの施工方法」に相当する。
(2)引用発明の「覆工コンクリートC」は、「型枠3」により「成型」された「側壁部分」と「天端部分」となることから、引用発明の「側壁部分」、「アーチ形状」の「天端部分」は、それぞれ本願発明1の「側壁部分」「アーチ形状のクラウン部」に相当し、引用発明の「型枠3の外周面3bとトンネルTの内周面t1との間」に「形成され」る「打設空間D」に「覆工コンクリートCが充填される」ものであるから、本願発明1の「トンネルの側壁部分からアーチ形状部分のクラウン部に至るまでの覆工空間にコンクリートを打設する」ことに相当する。
(3)引用発明の「型枠3」が備える「上部3c」、「一対の」「側部3d」、「一対の」「下端部3e」は、本願発明1の「上部型枠」「側部型枠」「下端部型枠」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明の「側部3d」は「上部3cの両端に回動可能に連結され」、「下端部3e」は「側部3dの下端に回動可能に連結され」ているから、本願発明1の「トンネル覆工用型枠の型枠本体は、トンネルのアーチ形状部分の上部の覆工空間を形成する上部型枠と、該上部型枠の両側の下端部に各々回転可能に接続された、アーチ形状部分の下部及び両側の側壁部分の覆工空間を形成する一対の側部型枠と、該一対の側部型枠の下端部に各々回転可能に接続された、一対の下端部型枠とを含んで構成され」ていることに相当する。
(4)引用発明の「トンネルTの内周面t1にほぼ沿う断面円弧状に形成され」る「型枠3」は、本願発明1の「前記側壁部分から前記アーチ形状部分のクラウン部に至るまでのトンネル覆工用型枠」に相当する。
(5)引用発明の「コンクリートポンプPA、PB」及び「圧送管10A、10B」は、それぞれ、本願発明1の「コンクリートポンプ」及び「圧送配管」に相当する。
そして、引用発明の「蓋体3jによって開閉可能に構成されている」「複数の開口部3h」は、本願発明1の「開閉可能」な「圧入接続口」に相当する。そのうち、引用発明の「型枠3」の「側部3d」の上段に「上部3c」が設けられていることから、引用発明の「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3h」は、本願発明1の「型枠本体の前記側部型枠に設けられた下段の圧入接続口」に相当し、また、引用発明の「型枠3の上部3c」に「形成され」た「開口部3h」は、本願発明1の「前記型枠本体の前記上部型枠に設けられた上段の圧入接続口」に相当する。
また、前述のとおり、引用発明の「型枠3」の「側部3d」の上段に「上部3c」が設けられており、「上部3c」及び「側部3d」に形成された「開口部3h」が「上下に間隔をおいて設けられて」いることは明らかであるから、引用発明は、本願発明1の「前記型枠本体の前記側部型枠に設けられた下段の圧入接続口、及び、前記型枠本体の前記上部型枠に設けられた上段の圧入接続口として、上下方向に間隔をおいて設けられて」いる構成を備える。
よって、上記(4)の対比を踏まえると、本願発明1の「前記側壁部分から前記アーチ形状部分のクラウン部に至るまでのトンネル覆工用型枠には、コンクリートポンプから延設する圧送配管を接続させる開閉可能な」「圧入接続口が、前記型枠本体の前記側部型枠に設けられた下段の圧入接続口、及び、前記型枠本体の前記上部型枠に設けられた上段の圧入接続口として、上下方向に間隔を置いて設けられて」いることと、引用発明の「コンクリートポンプPA、PBは、供給された覆工コンクリートCを、圧送管10A、10Bを介して」「圧送」し、「圧送管10A、10B」の「3本の端部配管13A、13Bのうち2本は、型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3hを介して打設空間Dに挿入され」、「残りの1本は、型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3hに接続されて」おり、「開口部3h」は「蓋体3jによって開閉可能に構成されている」こととは、「前記側壁部分から前記アーチ形状部分のクラウン部に至るまでのトンネル覆工用型枠には、コンクリートポンプから延設する圧送配管を接続させる開閉可能な」「圧入接続口が、前記型枠本体の前記側部型枠に設けられた下段の圧入接続口、及び、前記型枠本体の前記上部型枠に設けられた上段の圧入接続口として、上下方向に間隔をおいて設けられて」いる点で共通する。
(6)一致点・相違点
したがって、本願発明1と引用発明とは、
<一致点>
「トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリートの施工方法において、トンネルの側壁部分からアーチ形状部分のクラウン部に至るまでの覆工空間にコンクリートを打設する際に用いるトンネル覆工コンクリートの打設方法であって、
前記トンネル覆工用型枠の型枠本体は、トンネルのアーチ形状部分の上部の覆工空間を形成する上部型枠と、該上部型枠の両側の下端部に各々回転可能に接続された、アーチ形状部分の下部及び両側の側壁部分の覆工空間を形成する一対の側部型枠と、該一対の側部型枠の下端部に各々回転可能に接続された、一対の下端部型枠とを含んで構成されており、
前記側壁部分から前記アーチ形状部分のクラウン部に至るまでのトンネル覆工用型枠には、コンクリートポンプから延設する圧送配管を接続させる開閉可能な圧入接続口が、前記型枠本体の前記側部型枠に設けられた下段の圧入接続口、及び前記型枠本体の前記上部型枠に設けられた上段の圧入接続口として、上下方向に間隔をおいて設けられており、
前記側壁部分から前記アーチ形状部分のクラウン部に至るまでの覆工空間にコンクリートを打設するトンネル覆工コンクリートの打設方法。」
である点において一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1の「圧入接続口」は、
「前記型枠本体の前記側部型枠に設けられた下段の圧入接続口、及び前記型枠本体の前記上部型枠に設けられた上段の圧入接続口」の「2段の圧入接続口」であるのに対して、
引用発明は、「開口部3h」が、「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3h」、及び、「型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3h」と3カ所形成されている点。
<相違点2>
本願発明1は、「コンクリート流し込み圧入工程」において、
「前記下段の圧入接続口に圧送配管を接続して、当該下段の圧入接続口に至るまでの、前記下端部型枠による覆工空間を含む下方の覆工空間に、当該下段の圧入接続口からコンクリートを流し込むことで供給した後に、引き続いて当該下段の圧入接続口の上方の覆工空間に、前記上段の圧入接続口との間の中間部分の高さ位置に至るまで、当該圧入接続口からコンクリートを圧入することで供給する、下段の圧入接続口におけるコンクリート流し込み圧入工程と、しかる後に、前記上段の圧入接続口に圧送配管を切り換えて接続して、当該上段の圧入接続口に至るまでの下方の覆工空間に、当該上段の圧入接続口からコンクリートを流し込むことで供給した後に、引き続いて当該上段の圧入接続口の上方の覆工空間に、当該上段の圧入接続口からコンクリートを圧入することで供給する、上段の圧入接続口におけるコンクリート流し込み圧入工程とを含んで」
いるのに対して、
引用発明では、
「トンネルTの内周面t1に覆工コンクリートCを打設するには、まず、各圧送管10A,10Bの枝配管12A,12Bの終端部を最下段の端部配管13A,13B(L)に接続し、そして、2台のコンクリートポンプPA,PBを同時に駆動し、各コンクリートポンプPA,PBから圧送管10A,10Bを介して型枠3の前後2箇所において、左右両側の打設空間Dの最下部に覆工コンクリートCを流し込み、打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが最下段の端部配管13A,13B(L)の近傍まで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止するとともに、全ての枝配管12A,12Bから最下段の端部配管13A,13B(L)を取り外し、中段の端部配管13A,13B(M)に繋ぎ替え、また、最下段の端部配管13A,13B(L)を開口部3hから抜き取って当該開口部3hを蓋体3jによって閉鎖し、その後、再び、2台のコンクリートポンプPA,PBを同時に駆動して打設空間Dに覆工コンクリートCを流し込み、打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが中段の端部配管13A,13B(M)の近傍まで上昇すると、コンクリートポンプPA,PBを停止するとともに、全ての枝配管12A,12Bから中段の端部配管13A,13B(M)を取り外し、上段の端部配管13A,13B(U)に繋ぎ替え、また、中段の端部配管13A,13B(M)を開口部3hから抜き取って当該開口部3hを蓋体3jによって閉鎖し、その後、再び、コンクリートポンプPA,PBを駆動して打設空間Dに覆工コンクリートCを流し込み、打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが上段の端部配管13A,13B(U)の高さにまで上昇しても、そのまま続けて覆工コンクリートCを流し込み、端部配管13A,13B(U)よりも上側に覆工コンクリートを圧入」している点。
2 判断
上記<相違点1>と<相違点2>をあわせて判断する。
(1)引用発明は、「覆工コンクリートC」の「打設」について、「最上段の端部配管13A,13B(U)が、型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートCを吹き上げて打設するように構成されているので、当該端部配管13A,13B(U)から広範囲に覆工コンクリートCを打設することができ、施工性を高めることができる」とあり、すなわち、「覆工コンクリートC」を「型枠3への接続部分」の「下側」及び「上側」に「打設」することにより、「施工性を高めることができる」ものである。
そして、本願発明1の「コンクリート流し込み圧入工程」は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0034】に「また、本実施形態では、最上段の接続口である上段の圧入接続口11bにおいてコンクリート流し込み圧入工程を実施して、トンネル40のアーチ形状部分40bのクラウン部40cに至るまでの覆工空間21に、コンクリート22を供給したら、上述のように、引き続いて天頂部充填工程を実施することにより、側壁部分20aからアーチ形状部分20bのクラウン部20cの頂部に至るまでの覆工空間21の全体に、コンクリート22を充填することができる。すなわち、天頂部充填工程では、圧送配管31の分岐管31bを、トンネル覆工用型枠10の天頂部に設けられた天頂部圧入接続口12a,12bに接続して、天頂部圧入接続口12a,12bからコンクリート22を吹上げ方式で圧入することにより、覆工空間21の天頂部まで、コンクリート22を密な状態で容易に充填することが可能になる(図1(c)のドット部参照)。」と記載されているように、「吹き上げ」て打設するものである。
(2)また、「施工性」をより高いものとすることは、「トンネルの内壁に覆工コンクリートを打設する」技術分野においても、当然考慮すべき課題であるところ、引用発明の「覆工コンクリートC」の「打設」において、「施工性」をより高いものとするべく、型枠3の接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートCを吹き上げて打設するようにし、「端部配管13A、13B」が「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3hを介して打設空間Dに挿入され」、「覆工コンクリートCを流し込み」、「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3h」よりも「上側」に「覆工コンクリートCを吹き上げて打設」、すなわち、覆工コンクリートCを圧入し、そのまま続けて覆工コンクリートCを流し込み、「枝配管12A,12B」を介して「圧送管10A、10B」がつながる箇所を「繋ぎ替え」、「型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3h」を介して「覆工コンクリートCを流し込み」が行われるように構成をなし、その際に、「吹き上げで打設」された「覆工コンクリートC」を受け入れることができる、「型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3h」と同様の開口部として、本願発明1の相違点2に係る構成をなすことは、当業者が容易になし得ることである。
そして、型枠3の接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートCを吹き上げて打設するようにする際、施工性を考慮して、いかなる高さまで継続するようにするのかを決定することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
また、施工性を考慮して、「覆工コンクリートCを吹き上げて打設」する際、「コンクリートの流し込み」が行われる「開口部3h」に関して、「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3h」を、「型枠3の側部3d」に対応する箇所に「コンクリートの流し込み」が行われるように1つの「開口部3h」とし、「開口部3h」を「型枠3の側部3dに設けられた」「開口部3h」及び「型枠3の上部3cに設けられた開口部3h」の二段として、本願発明1の相違点1に係る構成をなすことは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
3 本願発明1のまとめ
相違点1及び2については、前記2で検討したとおりであり、また、相違点1及び2について勘案しても、本願発明1の奏する効果としては、当業者にとって予測困難であり、かつ、格別顕著なものを認めることはできない。
よって、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、令和6年11月29日提出の意見書において、次の事項を主張している。
ア 「すなわち、引用文献1には、本願発明1の上記発明特定事項A)及びB)や、上記発明特定事項E)及びF)の構成が示唆されていますが、引用文献1によれば、本願発明1の側部型枠に相当する型枠3の側部3dに、端部配管13A,13Bが配置される開口部3hが下部側及び上部側の2段に設けられており、また端部配管13A,13Bは、2段の開口部3hに各々挿入されているだけで、圧入可能に接続されてはいない点で、本願発明1の上記発明特定事項C)の、型枠本体の側部型枠には、圧入接続口が、下段の圧入接続口として1段にのみ設けられており、しかも圧入接続口は、圧送配管からコンクリートを圧入可能な接続口として設けられている構成とは、顕著に相違しています。
また、引用文献1によれば、コンクリートは、側部型枠に相当する型枠3の側部3dに2段に設けられた下部側及び上部側の開口部3hを介して、打設空間Dに各々挿入された端部配管13A,13Bから流し込まれるようになっているだけで、圧入することはできないようになっていることから、本願発明1の上記発明特定事項D)の、側部型枠に設けられた下段の圧入接続口に圧送配管を接続して、当該下段の圧入接続口に至るまでの下方の覆工空間に、当該下段の圧入接続口からコンクリートを流し込むことで供給した後に、引き続いて側部型枠に設けられた当該下段の圧入接続口の上方の覆工空間に、側部型枠に設けられた圧入接続口からコンクリートを圧入することで供給する、側部型枠に設けられた下段の圧入接続口におけるコンクリート流し込み圧入工程を、何等示唆するものではありません。」
「さらに、審判官殿は、引用文献1では、型枠3の上部(上部型枠)3cに設けられた端部配管13A,13B(U)が、型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートCを吹き上げて打設するように構成されているので、これを型枠3の側部(側部型枠)3dの下部側及び上部側の2段に設けられた開口部3hを介して打設空間Dに挿入された、端部配管13A,13B(M)や端部配管13A,13B(L)に適用して、これらの端部配管13A,13B(M)や端部配管13A,13B(L)から打設空間Dに覆工コンクリートCを流し込んだ後に、これらの端部配管13A,13B(M)や端部配管13A,13B(L)よりも上側に、そのまま続けて覆工コンクリートCを吹き上げて打設することは、当業者が容易になし得ることである旨を指摘しておられますが、引用文献1によれば、側部型枠の下部側及び上部側の2段に設けられた開口部3hは、端部配管13A,13Bを単に「挿入」させるものであって、圧入可能に「接続」させる機能を備えていないことから、側部型枠に設けられた開口部3hに適用することは、流し込まれたコンクリートCを垂れ流すことになるといった、阻害要因となるため困難です。」
イ 「さらにまた、審判官殿は、型枠3の側部(側部型枠)3dに開口部3hを1箇所にのみ設けるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である旨を指摘しておられますが、本願発明1は、そもそも、側部型枠に2段に設けられていたコンクリートの流し込み専用の開口(検査窓)を、圧入接続口として1段に減少させて、コンクリートポンプから延設して設けられた圧送管を下段から上段に切り換えてトンネル覆工用型枠に接続してゆく作業を少なくして、コンクリートの打設時間を短くすることにより、特にトンネル覆工用型枠の延長を長くした場合に、覆工コンクリートを形成するための工程の進捗を効率良く早めることができるようにするといった、特有の技術的課題を鑑みて、特に上記発明特定事項C)及びD)の構成を採用するに至ったものであり、このような構成を具体的に開示する先行技術文献を何等に示すことなく、単なる設計事項であるとして、本願発明1の進歩性を否定するのは、行き過ぎたご見解であると思量致します。」
(2)当審の判断
ア 上記(1)アについて
引用文献1の段落【0033】に、「この3本の端部配管13A,13Bのうち2本は、型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3hを介して打設空間Dに挿入されている。」と記載されている。
しかしながら、引用文献1の段落【0033】には、「この3本の端部配管13A,13Bのうち2本は、・・・残りの1本は、型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3hに接続されている。・・・なお、図1においては、理解を容易にするために、上下3本の端部配管13A,13Bに対して上段側から順に(U),(M),(L)の符号を付記している。」、と記載されており、「端部配管13A,13B」の1本は(U)の付合が付記され、「型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3hに接続されている」ことが理解される。
そして、引用文献1の段落【0041】に「打設空間Dに流し込まれた覆工コンクリートCが上段の端部配管13A,13B(U)の高さにまで上昇しても、そのまま続けて覆工コンクリートCを流し込み、端部配管13A,13B(U)よりも上側に覆工コンクリートを圧入する。」、及び、段落【0045】に「・・・最上段の端部配管13A,13B(U)が、型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートC(図6に2点差線のハッチングで示す)を吹き上げて打設するように構成されているので、・・・」、と記載されていることから、「端部配管13A,13B(U)」は、「開口部3h」に「接続」され、「覆工コンクリートCの流し込み」、及び、「端部配管13A,13B(U)よりも上側に覆工コンクリートを圧入する」ことが理解される。
そうしてみると、引用発明の「覆工コンクリートC」の「打設」において、型枠3の接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートCを吹き上げて打設するようにし、「端部配管13A、13B」が「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3hを介して打設空間Dに挿入され」、「覆工コンクリートCを流し込み」、「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3h」よりも「上側」に「覆工コンクリートCを吹き上げて打設」し、そのまま続けて覆工コンクリートCを流し込み、「枝配管12A,12B」を介して「圧送管10A、10B」がつながる箇所を「繋ぎ替え」、「型枠3の上部3cの幅方向端部に形成された開口部3h」を介して「覆工コンクリートCを流し込み」が行われるようにして、「端部配管13A,13B」「(M)」、及び、「端部配管13A,13B」「(L)」は、「開口部3h」に「挿入」される構成から、圧入可能となるように接続されることは、当業者であれば容易になし得る程度のことであり、構成を変更する特段の阻害要因が存在するとはいえない。
よって、上記請求人の主張((1)ア)を採用することはできない。
イ 上記(1)イについて
引用文献1の段落【0045】に、「最上段の端部配管13A,13B(U)が、型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側にも覆工コンクリートC(図6に2点差線のハッチングで示す)を吹き上げて打設するように構成されているので、当該端部配管13A,13B(U)から広範囲に覆工コンクリートCを打設することができ、・・・施工性を高めることができる。」と記載されていることから、引用文献1においても、「覆工コンクリートC」を「型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側」に「吹き上げて打設」することにより、「施工性」を高めていると理解される。
そうしてみると、「覆工コンクリートC」の打設は、「型枠3への接続部分よりも下側だけでなく上側」に「吹き上げて打設」することができ、接続部分よりも高い位置までコンクリートを打設することが可能となり、1箇所の接続部分からの「覆工コンクリートC」の打設範囲が広がることは明らかであるから、コンクリートの打設のために設けられる接続部分の段数も当然に減らすことができ、引用発明の「開口部3h」に関して、「型枠3の側部3dに設けられた下部側及び上部側の開口部3h」を、「型枠3の側部3d」に対応する箇所に「コンクリートの流し込み」が行われるように1つの「開口部3h」とし、「開口部3h」を「型枠3の側部3dに設けられた」「開口部3h」及び「型枠3の上部3cに設けられた開口部3h」として、コンクリートの打設のために設けられる接続部分を3段から2段にすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である
よって、上記請求人の主張((1)イ)を採用することはできない。
(3)小括
以上のとおりであるから、請求人の主張について検討しても、上記2での判断を左右するものではなく、採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-009607