特許異議申立
2025-700183
高強度ゼオライト成形体及びその製造方法
- 審判番号
- 2025-700183
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-104442
- 登録番号
- 7532935
- 請求日
- 2025年02月13日
- 審決日
- 2025年06月03日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東ソー株式会社
- 【異議申立人】榎木 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 原 賢一
- 審判官 宮澤 尚之
- 審判官 増山 淳子
- 分類
- P1651.121-Y (C01B) / P1651.537-Y (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7532935号発明「高強度ゼオライト成形体及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7532935号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7532935号の請求項1~5に係る特許(以下、「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、令和2年6月17日(優先権主張 令和1年6月20日)に出願され、令和6年8月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許1~5に対して、令和7年2月13日に特許異議申立人榎木宏(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年4月10日に特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出された。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下を含み、かつ、耐圧強度が20N以上であるゼオライト成形体であって、当該ゼオライトが、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含み、当該粘土が、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含むことを特徴とする高強度ゼオライト成形体。
【請求項2】
ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下、成形助剤1重量部以上5重量部以下、水溶性ナトリウム塩0.5重量部以上5重量部以下、水60重量部以上100重量部以下を混合した後に混練して、これらを含む混練物を得て、この混練物を成形した後に乾燥し、さらに得られたゼオライト成形体を破砕した後、400℃以上700℃以下で焼成するものであり、当該ゼオライトが、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含み、当該粘土が、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の高強度ゼオライト成形体の製造方法。
【請求項3】
ゼオライト100重量部に対して、さらに造孔剤20重量部以下を混合することを特徴とする請求項2に記載の高強度ゼオライト成形体の製造方法。
【請求項4】
当該ゼオライトが、ベータ型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトの一種以上を含むことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の高強度ゼオライト成形体の製造方法。
【請求項5】
当該粘土が、ベントナイト粘土、セピオライト粘土、アタパルジャイト粘土、パリゴルスカイト粘土、合成層状ケイ酸塩(スメクタイト系粘土)の一種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の高強度ゼオライト成形体の製造方法。」
第3 特許異議の申立てについて
1 申立ての理由の概要
申立人が主張する申立ての理由は、概略、以下のとおりである。
(1) 申立理由1(進歩性欠如)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び周知技術(甲第2~4号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明2~5は、甲第5号証に記載された発明、甲第1~7号証に記載された事項、及び周知技術(甲第2~4号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許1~5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由2(サポート要件違反)
本件特許1~5は、特許請求の範囲の記載が後記3(2)オ(ア)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 証拠方法
甲第1号証 特開2012-196675号公報
甲第2号証 特開平1-120247号公報
甲第3号証 Dennis R. Taylor, et al., "Bleaching with alternative layered minerals: A comparison with acid-activated montmorillonite for bleaching soybean oil", Journal of the American Oil Chemists Society, 1989, Vol.66, No.3, p334-341
甲第4号証 特開2017-136584号公報
甲第5号証 特開2018-111643号公報
甲第6号証 特開平10-81511号公報
甲第7号証 特開2010-158630号公報
甲第8号証 クニミネ工業株式会社ホームページ、[online]、[令和7年4月3日検索]、インターネット<https://www.kunimine.co.jp/kunimine/kunipia_sumecton.html>
甲第9号証 旭化成株式会社ホームページ、[online]、[令和7年4月3日検索]、インターネット<https://www.ceolus.com/ja/industry/products/ceolus_colloidal_list/>
2 甲各号証の記載事項について
(1) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「吸着剤含有成形体」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下、同様である。)。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、吸着力を維持することができるようにゼオライトを95重量%以上に高含有したゼオライト高含有成形体の吸着剤含有成形体の製造方法及び該製造方法により得られた吸着剤含有成形体を提供することである。」
イ 「【実施例】
【0026】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
疎水性ゼオライト粉末 100g
(商品名:HiSiV3000、ユニオン昭和社製)
セルロース系バインダー 25g
(商品名:セランダー、主成分メチルセルロース、ユケン工業株式会社製)
上記の材料を室温(23℃)で混合した。次に、純水100gを添加し、混練する。粘土状になったものを3本ロールで混練し、混練物を冷蔵庫(3℃)で12時間養成する。
【0028】
粘土体の混練物を押出機で押出し、厚さ2mmのシート状の粘土体を得た。その後、60℃で5分間予備乾燥させた。その後、粘土体を、直線状の長さ100mmの一枚の刃からなるカッターを用いてシート状の粘土体の端部から順に5mm×5mmに切断した。
【0029】
次に、粘土体を電気炉により300℃で2時間一次乾燥、600℃で2時間二次乾燥させてセルロース系バインダーを消失させることにより、ゼオライト含有率100重量%の成形体が得られた。
【0030】
得られたゼオライト成形体を下記の評価方法に従って評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
<評価>
「押出成形性」
上記の材料を押出機でシート状に押出すまでの成形性を観察した。
【0032】
「硬度」
5mm×5mm×2mmに得られた成形体を上部からデジタルフォースゲージ(商品名:FGC-50、SHIMPO社製)を用いて荷重をかけヒビ割れた時点での値を測定し、5点測定した平均値を示す。実使用においては、電子部品内部に設置する際の取り扱いにあたり、成形品は10N以上の硬度があれば支障は生じなかった。
・・・
【0034】
(実施例5)
疎水性ゼオライト粉末 100g
セピオライト粉末 5g
(商品名:PANGEL、GROPO TOLSA(スペイン)社製)
セルロース系バインダー 20g
上記の材料を用いて実施例1と同様にして粘土体を作製した。その後、実施例1と同様にして乾燥させ成形体を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
・・・
【0043】
(比較例9)
疎水性ゼオライト粉末 100g
セピオライト粉末 40g
上記の材料を用いて実施例1と同様にして粘土体を作製した。その後、実施例1と同様にして乾燥させ成形体を作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
・・・
【0045】
【表2】
[図:0001424613000001.jpg]
」
(2) 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「酸化剤組成物」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
「作用
SiO2/Al2O3のモル比が約25以上の結晶性高シリカゼオライトが疎水性を示すことは、既に知られているが、天然ゼオライトまたはSiO2/Al2O3のモル比が約25以下のモレキュラーシーブと呼ばれるゼオライトには、疎水性は見られない。例えば、水分吸着量についてその性質をみると、SiO2/Al2O3のモル比が約25以上の結晶性高シリカゼオライトの場合、モル比が大きくなるにしたがって、水分吸着量が減少し、SiO2/Al2O3のモル比が約25~約500の場合、水分吸着量は約10~約0.1重量%である。一方、天然ゼオライトまたはモレキュラーシーブと呼ばれるゼオライトの水分吸着量は、約25~約35重量%と高吸湿性を示す。また、ゼオライトは、そのカチオンを水素イオンまたはアルカリ土金属イオンにイオン交換することにより、固体酸性を示すようになる。その酸点の数および酸点の強度とSiO2/Al2O3のモル比との関係は、モル比が高くなるにしたがって、酸点の数は減少し、酸点の強度は強くなることが知られている。」(第2ページ右下欄第5行~第3ページ左上欄第4行)
(3) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「Bleaching with alternative layered minerals: A comparison with acid-activated montmorillonite for bleaching soybean oil」(当審訳:代替層状鉱物を用いた漂白:大豆油の漂白における酸活性化モンモリロナイトとの比較)(タイトル)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「As shown (Figs. 1-3), surface acidity, surface area and pore volume all increase upon acid activation (the only exception being the pillared montmorillonite which is affected relatively little). Generalizations beyond these, however, are difficult to make. Some of the minerals display large changes in a given parameter upon activation, while others are relatively less affected. For example, sodium montmorillonite (NaM) exhibits a substantial increase in surface acidity (Fig. 1) upon activation, but vermiculite (VER) and chlorite (CHL) increase only moderately. In another example, the surface area (Fig. 2) for vermiculite is substantially increased; in contrast, chlorite increases about one-half, and sodium montmorillonite only about one-third as much. Other examples of nonuniformity in degree of response to acid-activation can be found upon examination of the data in Figure 1-4.」(第336ページ右欄第52行~第337ページ左欄第3行)
(当審訳:図1~3に示されるとおり、酸活性化により、表面酸度、表面積、細孔容積は全て増加する(唯一の例外は、柱状構造のモンモリロナイトであり、影響が比較的少ない)。しかし、これら以外を一般化するのは難しい。鉱物によっては、酸活性化により特定のパラメータに大きな変化を示すものもあれば、影響が比較的少ないものもある。例えば、酸活性化により、ナトリウム型モンモリロナイト(NaM)は表面酸度が大幅に増加する(図1)が、バーミキュライト(VER)及び緑泥石(CHL)は中程度の増加にとどまる。別の例では、バーミキュライトの表面積(図2)が大幅に増加する。対照的に、緑泥石は約半分の増加であるが、ナトリウム型モンモリロナイトは約3分の1の増加にとどまる。酸活性化に対する反応の程度が不均一であるその他の例は、図1~4のデータを調べると分かる。)
イ 「
[図:0001424613000002.jpg]
」(第337ページ)
(当審訳:
[図:0001424613000003.jpg]
図1.表面酸度に関する酸活性化効果の影響)
(4) 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、「プリン体用吸着剤」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
「【0053】
下記の実施例および比較例に示す吸着剤粉末について、物性および各種吸着試験結果を表1および表2に、濾過試験結果を表3に示す。
【0054】
(比較例1)
新潟県胎内市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を粗砕、乾燥(110℃)、粉砕、分級して吸着剤粉末を得た。
・・・
【0056】
(比較例2)
新潟県新発田市産のジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土を水簸精製し、乾燥(110℃)、粉砕、分級して吸着剤粉末を得た。
・・・
【0070】
・・・
【表2】
[図:0001424613000004.jpg]
」
(5) 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、「耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を15~50重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を1~5重量部、水を70~130重量部含む混合物を成形することを特徴とする耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のゼオライト成形体よりも耐熱水性に優れたゼオライト成形体の製造方法を提供するものである。本製造方法で製造されたゼオライト成形体は熱水雰囲気下にさらされた後でも高い強度を有する特徴があり、様々な吸着分離用途、触媒反応用途で使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゼオライト成形体を製造する時に水溶性ナトリウム塩を使用する製造方法を見出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を15~50重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を1~5重量部、水を70~130重量部含む混合物を成形することを特徴とする耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法である。」
ウ 「【0012】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれるゼオライトには制限はなく、例えば、ハイシリカゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩などが例示される。これらのうち、シリカアルミナ比が5以上のゼオライト(ハイシリカゼオライト)が好ましい。ハイシリカゼオライトは結晶骨格を形成するアルミ含有量が少ないものであり、A型又はX型ゼオライトとして知られている低シリカゼオライトよりも結晶骨格自体の耐熱性が高いため、耐熱水雰囲気下にさらされた後でもゼオライト成形体の吸着性能あるいは触媒性能の低下の割合が小さい利点がある。ハイシリカゼオライトとしては、例えば、ベータ型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、フェリエライト型ゼオライト、モルデナイト型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトなどが例示される。
【0013】
本発明の製造方法で使用される混合物に含まれるのは繊維状粘土である。粘土には様々な種類があるが、繊維状粘土はゼオライト結晶に存在する細孔をふさぐことがないため性能低下がない。カオリン粘土の様な板状結晶の粘土はゼオライト結晶の細孔をふさぐ恐れがあり、好ましくない。繊維状粘土としては、例えば、セピオライト粘土、アタパルジャイト粘土、パリゴルスカイト粘土などが例示される。繊維状粘土の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して15~50重量部である。15重量部未満の場合は耐熱水性が低くなり、50重量部より多い場合は、耐熱水性は高くなるが、吸着性能又は触媒性能が低下する。耐熱水性がより高くなるため、20~50重量部が好ましく、25~50重量部がさらに好ましい。粘土の粒径は特に制限されないが、好ましくは平均粒径として0.5~30μm程度である。」
エ 「【0027】
実施例1
ベータ型ゼオライト粉末(東ソー製:HSZ(登録商標)-940HOA)を100重量部(2959g;水分含有量2%)、アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB;アクティブミネラルズ製)を30重量部(1115g;水分含有量22%)、カルボキシメチルセルロースナトリウムを3重量部(87g)量り取り、ヘンシェルミキサー(三井鉱山製;FM/I-750)で380rpmの回転数で5分間混合した。水2000gにピロリン酸ナトリウム(キシダ化学製;Na4P2O7・10H2O)を2重量部(58g;Na4P2O7として)溶解した水を、ヘンシェルミキサーで380rpmの回転数で撹拌しながら添加した。その後、更に950gの水を添加して、20分間撹拌混練し、混合物を得た。得られた混合物を900℃、1時間の条件で強熱減量を測定した結果、ゼオライト100重量部に対して113重量部であった。得られた混合物を直径1.5mmの円柱状に成形した。その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体を得た。
【0028】
耐熱性試験を行った後の耐圧強度は23Nであった。」
(6) 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、「カルシウムX型ゼオライト成形体およびその製造方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、このような課題を克服した、すなわち、従来のカルシウムX型ゼオライト成形体よりも強度が高く、且つ、吸着特性に優れたカルシウムX型ゼオライト成形体およびその製造方法を提供することにある。」
イ 「【0045】実施例1
合成ナトリウムX型ゼオライト粉末(東ソ-株式会社製)と、この粉末100重量部に対してアタパルジャイト系粘土(ENGELHARD社製)10重量部およびカルボキシメチルセルロ-ス3重量部を混合混練し、水を加えながら最終的に、これら混合物の合計の無水重量に対して70重量%を加えて調整した後、十分に捏和した。この捏和物をディスクペレッタ-(不二パウダル社製、型式:F-5)を用い直径1.5mmφの柱状に押出し成形し、乾燥した後、長さ3~5mm程度に整粒した。次いでマッフル炉(アドバンテック社製、型式:KM-600)を用いて雰囲気中で2時間焼成してアタパルジャイト系粘土を焼結させた後、大気中で冷却して水分が30%程度になるよう加湿した。」
(7) 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、「脱臭材」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
「【0038】
得られた入口側ガス濃度と出口側ガス濃度との差が吸着されたとして、濃度差、流量より吸着量をもとめ、各試料により、吸着飽和までの時間が異なるため、100分間の通気に対する吸着量として算出した。結果を表1に示した。
【表1】
[図:0001424613000005.jpg]
【0039】
比較例3、4~6
もみがらシリカを用いることなく、疎水性のゼオライト(ユニオン昭和社製、商品名:HiSiV-3000、シリカ/アルミナ比:330)と、ベントナイト(ホージュン社製、商品名:スーパークレイ)とを用いて、また、疎水性のゼオライトの代わりに、シリカゲル(東海化学工業所社製、商品名:ML-839)を用いて、表1に示すとおりの配合量に配合し、実施例1と同様にして、ペレット状の脱臭材を得た。次いで、得られた脱臭材について、比表面積とプロピオンアルデヒドの吸着量とを、実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示した。」
(8) 甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、「精製・合成技術について(クニピア・スメクトン)」に関して、次の事項が記載されている。
「はじめに
ベントナイトは、膨潤性や増粘性、陽イオン交換性などといった性質を持っているため、私たちの身の回りの様々な産業分野で利用されています。しかし、ベントナイトのような天然に存在する粘土は、粘土鉱物以外に石英や長石などの不純物を含んでいます。このような不純物を含んでいると、工業用素材の開発などを検討する際、適用には不十分となる場合があります。そのため、不純物の少ない高純度の粘土が求められています。
当社製品の「クニピア」は、ベントナイトに含まれる不純物を取り除き、主成分であるモンモリロナイトの純度を限りなく高めたものです。昨今、粘土に対する機能および技術は、より高度なものを要求されています。しかし、クニピアは天然の粘土であるため、そのコントロールに限界があります。このような問題に対応するために合成された粘土もあります。
当社製品の「スメクトン」は、熱水処理によって化学合成してできた粘土です。クニピアおよびスメクトンは、その性能から様々な産業分野で利用、検討が行われています。」
(9) 甲第9号証の記載事項
甲第9号証には、「コロイダル製品一覧」に関して、次の事項が記載されている。
「
[図:0001424613000006.jpg]
」
3 当審の判断
(1) 申立理由1(進歩性欠如)について
ア 本件発明1について
(ア) 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、前記2(1)イによれば、比較例9として、疎水性ゼオライト粉末100g、セピオライト粉末40gを用いて、実施例1と同様にして粘土体を作製し、乾燥させて成形体を得たこと(【0043】)、及び、成形体の硬度が57.0Nであること(【表2】)が記載されている。そして、実施例1では、原材料を室温で混合し、純水100gを添加して混練し、混練物を冷蔵庫で12時間養成し、混練物からシート状の粘土体を得て、60℃で5分間予備乾燥させ、その後、粘土体を5mm×5mmに切断し、電気炉により300℃で2時間一次乾燥、600℃で2時間二次乾燥させてゼオライト成形体を製造しており(【0027】~【0030】)、原材料と乾燥除去される水以外を含まず、混練後に600℃で乾燥させていることから、比較例9の前記成形体は、疎水性ゼオライトとセピオライトからなるものといえる。
また、甲第1号証には、前記疎水性ゼオライト粉末は、「疎水性ゼオライト粉末(商品名:HiSiV3000、ユニオン昭和社製)」(【0027】)であり、前記セピオライト粉末は、「セピオライト粉末(商品名:PANGEL、GROPO TOLSA(スペイン)社製)」(【0034】)であることも記載されている。
これらの記載を比較例9の「成形体」に注目して整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「疎水性ゼオライト粉末(商品名:HiSiV3000、ユニオン昭和社製)100g、セピオライト粉末(商品名:PANGEL、GROPO TOLSA(スペイン)社製)40gを室温で混合し、純水100gを添加して混練し、混練物を冷蔵庫で12時間養成し、混練物からシート状の粘土体を得て、60℃で5分間予備乾燥させ、その後、粘土体を5mm×5mmに切断し、電気炉により300℃で2時間一次乾燥、600℃で2時間二次乾燥させて得たゼオライト成形体であって、疎水性ゼオライトとセピオライトからなり、硬度が57.0Nである、ゼオライト成形体。」
(イ) 本件発明1と甲1発明の対比
a 本件発明1と甲1発明を対比すると、両者の対応関係は次のとおりである。
(a) 本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0011】の記載によれば、「セピオライト」は「粘土」とされるものであるところ、甲1発明の「疎水性ゼオライトとセピオライトからな」る「ゼオライト成形体」は、疎水性ゼオライト粉末100g、セピオライト粉末40gを混合して、粘土体を作製し、乾燥させたものであり、疎水性ゼオライト粉末とセピオライト粉末の混合割合で、疎水性ゼオライトとセピオライトが存在しているといえるから、本件発明1の「ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下を含み」との規定を満足する。
(b) 甲1発明の「疎水性ゼオライト粉末(商品名:HiSiV3000、ユニオン昭和社製)」は、甲第7号証の「疎水性のゼオライト(ユニオン昭和社製、商品名:HiSiV-3000、シリカ/アルミナ比:330)」との記載(前記2(7)参照)を参酌すると、シリカ/アルミナ比が330であるといえ、疎水性ゼオライト粉末を混合して、粘土体を作製し、乾燥させても、そのシリカ/アルミナ比は変わるものでないから、甲1発明の「ゼオライト成形体」の「疎水性ゼオライト」は、本件発明1の「当該ゼオライトが、Si/Al2が300以上100000以下」との規定を満足する。
(c) 甲1発明の「硬度が57.0Nである、ゼオライト成形体」は、本件発明1の「耐圧強度が20N以上である」「高強度ゼオライト」に相当する。
b 前記aで検討した対応関係に照らすと、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
(a) 一致点
「ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下を含み、かつ、耐圧強度が20N以上であるゼオライト成形体であって、当該ゼオライトが、Si/Al2が300以上100000以下である、高強度ゼオライト成形体。」
(b) 相違点
(相違点1)
本件発明1は、ゼオライトが、「25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含」むのに対して、甲1発明は、「疎水性ゼオライト粉末(商品名:HiSiV3000、ユニオン昭和社製)」を原材料とした「疎水性ゼオライト」であり、その水分吸着量は明らかでない点。
(相違点2)
本件発明1は、粘土が、「NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含む」のに対して、甲1発明は、「セピオライト粉末(商品名:PANGEL、GROPO TOLSA(スペイン)社製)」を原材料とした「セピオライト」であり、その固体酸量は明らかでない点。
(ウ) 相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
まず、相違点2が実質的なものであるかを検討すると、甲1発明の「GROPO TOLSA(スペイン)社製のPANGELであるセピオライト粉末」を原材料とした「セピオライト」が、「NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含む」ことを示す証拠はないから、相違点2は実質的なものである。
次に、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性を検討する。
甲第1号証には、前記2(1)アに摘記したとおり、吸着力を維持することができるようにゼオライトを95重量%以上に高含有したゼオライト高含有成形体の吸着剤含有成形体の製造方法を提供することを目的とし、その製造方法において、セルロース系バインダーを用いることを特徴とするものであり、粘土鉱物バインダーに着目するものではない。
そして、甲第1号証~甲第9号証の子細を見ても、甲1発明の「セピオライト」の固体酸量を調整する動機付けとなる記載は見当たらないし、このような動機付けが本件特許出願の優先日前の技術常識であることを示す証拠もない。
したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
(エ) 申立人の主張について
申立人は、相違点2に関して、固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土が周知技術であることを論拠として、相違点2に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性を主張している(特許異議申立書第10ページ第18~36行)。
しかしながら、申立人は、当該周知技術を甲1発明に適用できる理由を説明していない。そして、前記(ウ)で検討したとおり、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とするための動機付けは見当たらない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(オ) 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
イ 本件発明2~5について
(ア) 甲第5号証に記載された発明
甲第5号証には、前記2(5)アによれば、「ゼオライト100重量部に対して、繊維状粘土を15~50重量部、水溶性ナトリウム塩を0.5~10重量部、成形助剤を1~5重量部、水を70~130重量部含む混合物を成形することを特徴とする耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法」が記載され、その具体例として、前記2(5)エに摘記した実施例1が記載されている。
これらの記載を実施例1の「耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法」に注目して整理すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。
「ベータ型ゼオライト粉末(東ソー製:HSZ(登録商標)-940HOA)を100重量部(2959g)、アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB;アクティブミネラルズ製)を30重量部(1115g)、カルボキシメチルセルロースナトリウムを3重量部(87g)量り取り、ヘンシェルミキサー(三井鉱山製;FM/I-750)で380rpmの回転数で5分間混合し、水2000gにピロリン酸ナトリウム(キシダ化学製;Na4P2O7・10H2O)を2重量部(58g)溶解した水を、ヘンシェルミキサーで380rpmの回転数で撹拌しながら添加し、その後、更に950gの水を添加して、20分間撹拌混練し、混合物を得て、得られた混合物を直径1.5mmの円柱状に成形し、その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行う、耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法。」
(イ) 本件発明2と甲5発明の対比
a 本件発明2と甲5発明を対比すると、両者の対応関係は次のとおりである。
(a) 甲5発明の「ベータ型ゼオライト粉末(東ソー製:HSZ(登録商標)-940HOA)」、「アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB;アクティブミネラルズ製)」は、それぞれ、本件発明2の「ゼオライト」、「粘土」に相当する。
(b) 甲5発明の「カルボキシメチルセルロースナトリウム」、「ピロリン酸ナトリウム(キシダ化学製;Na4P2O7・10H2O)」は、本件明細書の「成形助剤としては、・・・カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などが例示される。」(【0020】)、「水溶性ナトリウム塩としては、・・・ピロリン酸ナトリウム・・・などが使用できる。」(【0021】、【0022】)との記載によれば、それぞれ、本件発明2の「成形助剤」、「水溶性ナトリウム塩」に相当する。
(c) 甲5発明の「ベータ型ゼオライト粉末(東ソー製:HSZ(登録商標)-940HOA)を100重量部」、「アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB;アクティブミネラルズ製)を30重量部」、「カルボキシメチルセルロースナトリウムを3重量部」、及び「ピロリン酸ナトリウム(キシダ化学製;Na4P2O7・10H2O)を2重量部」は、前記(a)、(b)を踏まえると、本件発明2の「ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下、成形助剤1重量部以上5重量部以下、水溶性ナトリウム塩0.5重量部以上5重量部以下」との規定を満足する。
(d) 甲5発明は、水を2950g(=2000g+950g)添加しており、その添加量は、ベータ型ゼオライト粉末100重量部(2959g)に対して、99.7重量部(=2950g/2959g×100重量部)となるから、本件発明2の「ゼオライト100重量部に対して」、「水60重量部以上100重量部以下」との規定を満足する。
(e) 甲5発明の「ヘンシェルミキサーで」「撹拌混練し、混合物を得て、得られた混合物を直径1.5mmの円柱状に成形し、その後、100℃で12時間以上乾燥して、650℃、3時間の焼成を行う」ことは、本件発明2の「混合した後に混練して、これらを含む混練物を得て、この混練物を成形した後に乾燥し」、「400℃以上700℃以下で焼成する」ことに相当する。
(f) 甲5発明の「耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法」は、本件発明2の「ゼオライト成形体の製造方法」に相当する。
b 前記aで検討した対応関係に照らすと、本件発明2と甲5発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
(a) 一致点
「ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下、成形助剤1重量部以上5重量部以下、水溶性ナトリウム塩0.5重量部以上5重量部以下、水60重量部以上100重量部以下を混合した後に混練して、これらを含む混練物を得て、この混練物を成形した後に乾燥し、400℃以上700℃以下で焼成する、ゼオライト成形体の製造方法。」
(b) 相違点
(相違点3)
本件発明2では、乾燥後焼成前に「ゼオライト成形体を破砕」しているのに対して、甲5発明では、その点が明らかでない点。
(相違点4)
本件発明2は、ゼオライトが「Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含」むのに対して、甲5発明は、「ベータ型ゼオライト粉末(東ソー製:HSZ(登録商標)-940HOA)」であり、そのSi/Al2、水分吸着量は明らかでない点。
(相違点5)
本件発明2は、粘土が、「NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含む」のに対して、甲5発明は、「アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB;アクティブミネラルズ製)」であり、その固体酸量は明らかでない点。
(相違点6)
本件発明2は、「請求項1に記載の高強度ゼオライト成形体の製造方法」であるのに対して、甲5発明は、「耐熱水性ゼオライト成形体の製造方法」である点。
(ウ) 相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点5から検討する。
まず、相違点5が実質的なものであるかを検討すると、本件明細書の「アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB:アクティブミネラルズ製)を20重量部(25.5g、水分含有量:22%、固体酸量:0.197mmol/g、平均粒径:11.6μm)」(【0042】)との記載によれば、甲5発明の「アタパルジャイト型粘土(ミニゲルMB;アクティブミネラルズ製)」の固体酸量は0.197mmol/gであるといえるから、相違点5は実質的なものである。
次に、甲5発明において、相違点5に係る本件発明2の構成とすることの容易想到性を検討する。
甲第5号証には、前記2(5)イに摘記したとおり、従来のゼオライト成形体よりも耐熱水性に優れたゼオライト成形体の製造方法を提供することを目的とし、ゼオライト成形体を製造する時に水溶性ナトリウム塩を使用することを特徴とするものであり、粘土の固体酸量に着目するものではない。
そして、甲第1号証~甲第9号証の子細を見ても、甲5発明の「アタパルジャイト型粘土」の固体酸量を調整する動機付けとなる記載は見当たらないし、このような動機付けが本件特許出願の優先日前の技術常識であることを示す証拠もない。
したがって、甲5発明において、相違点5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえない。
(エ) 申立人の主張について
申立人は、相違点5に関して、固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土が周知技術であることを論拠として、当該周知技術を甲5発明に適用して、相違点5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである旨を主張している(特許異議申立書第13ページ第2~8行)。
しかしながら、申立人は、当該周知技術を甲5発明に適用できる理由を説明していない。そして、前記(ウ)で検討したとおり、甲5発明において、相違点5に係る本件発明2の構成とするための動機付けは見当たらない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(オ) 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第5号証に記載された発明、甲第1~7号証に記載された事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
また、本件発明3~5は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、同様に、甲第5号証に記載された発明、甲第1~7号証に記載された事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
ウ 申立理由1についての結論
以上の検討のとおり、申立理由1に理由はない。
(2) 申立理由2(サポート要件違反)について
ア サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
以下、この観点に立って検討する。
イ 本件発明の課題について
(ア) 本件明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件発明の詳細な説明」という。)には、本件発明の課題に関して、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
・・・ゼオライト単体では可塑性が低く、所望の形に成形することや高強度の成形体を作製することが難しいため、バインダーを利用することが多い。バインダーとしては、粘土、シリカゾル、アルミナ等が利用される。これらバインダーは吸着分離には利用されないが、吸着分離能を下げる原因となることがある。例えば、芳香族炭化水素を吸着分離する場合、酸点を有する粘土やアルミナをバインダーとして使用すると芳香族炭化水素が反応し、所望の芳香族炭化水素を分離することができなくなる可能性がある。バインダーによる吸着分離能の低下を防ぐ方法として、成形体のバインダーレス化やバインダーのゼオライト化等の方法がとられてきた。・・・」
「【0004】
しかしながら、これらの手法は、いずれも工程が著しく複雑であり、経済的にも不利であるという問題点がある。さらに、これらのバインダーレスゼオライト成形体は強度がバインダー含有ゼオライト成形体より低く、粉化による装置の故障を招く可能性もあった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の方法よりも簡便かつ安価な方法で作製可能な低酸量の粘土バインダーを使用した高強度ゼオライト成形体及びその製造方法を提供するものである。・・・」
「【発明の効果】
【0030】
本発明の高強度ゼオライト成形体は、バインダーの酸量が低く、有機物質との反応性が低いため、副反応を起こすことなく、特に吸着分離用途で有用に使用することができる。また、本発明の高強度ゼオライト成形体は、高強度であるため、吸着分離で使用した場合でも粉化しにくく、装置の故障等が起こりにくい。」
(イ) 前記(ア)の記載を踏まえると、本件発明の課題は、バインダーによる吸着分離能の低下を防ぎ、粉化しにくく、従来の方法よりも簡便かつ安価な方法で作製可能な高強度ゼオライト成形体及びその製造方法を提供することであるといえる。
ウ 本件発明の詳細な説明の記載について
(ア) 本件発明の詳細な説明には、「高硬度ゼオライト成形体」及び「高硬度ゼオライト成形体の製造方法」に関して、次の記載がある。
「【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下を含み、かつ、耐圧強度が20N以上であるゼオライト成形体であって、当該ゼオライトが、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含み、当該粘土が、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含む高強度ゼオライト成形体、ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下、成形助剤1重量部以上5重量部以下、水溶性ナトリウム塩0.5重量部以上5重量部以下、水60重量部以上100重量部以下を混合した後に混練して、これらを含む混練物を得て、この混練物を成形した後に乾燥し、さらに得られたゼオライト成形体を破砕した後、400℃以上700℃以下で焼成するものであり、当該ゼオライトが、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含み、当該粘土が、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含む高強度ゼオライト成形体の製造方法である。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明の高強度ゼオライト成形体は、ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下を含むものである。
【0010】
高強度ゼオライト成形体に含まれるゼオライトは、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトであり、これを一種以上含むものである。Si/Al2が300未満の場合は、ゼオライトと水の親和性が高く、VOC等の吸着が阻害される可能性がある。25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)を超える場合は、ゼオライトと水の親和性が高く、VOC等の吸着が阻害される可能性がある。・・・
【0011】
高強度ゼオライト成形体に含まれる粘土の量は、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して10重量部以上40重量部以下である。10重量部未満の場合は耐圧強度が低くなり、40重量部より多くした場合でも、耐圧強度が向上せず、かつゼオライト成形体に含まれるゼオライト量が減少するので吸着分離能を下げる原因となる。・・・
【0012】
高強度ゼオライト成形体に含まれる粘土は、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土であり、これを一種以上含むものである。NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/gを超えると、粘土由来の酸点で吸着質と反応する可能性がある。・・・」
「【0014】
本発明の高強度ゼオライト成形体は、木屋敷硬度計で測定される耐圧強度が20N以上である。耐圧強度が20N未満の場合は粉化しやすく、圧力損失や吸着効率の低下を引き起こすおそれがある。
【0015】
本発明の高強度ゼオライト成形体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)は、ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下、成形助剤1重量部以上5重量部以下、水溶性ナトリウム塩0.5重量部以上5重量部以下、水60重量部以上100重量部以下を混合した後に混練して、これらを含む混練物を得て、この混練物を成形した後に乾燥し、さらに得られたゼオライト成形体を破砕した後、400℃以上700℃以下で焼成することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の製造方法で使用される混練物に含まれるゼオライトは、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトであり、これを一種以上含むものである。Si/Al2が300未満の場合は、ゼオライトと水の親和性が高く、VOC等の吸着が阻害される可能性がある。25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)を超える場合は、ゼオライトと水の親和性が高く、VOC等の吸着が阻害される可能性がある。・・・
【0017】
本発明の製造方法で使用される混練物に含まれる粘土は、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である。NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/gを超えると、粘土由来の酸点で吸着質と反応する可能性がある。・・・」
「【0019】
粘土の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して10重量部以上40重量部以下である。10重量部未満の場合は成形性が低下し、40重量部より多くした場合でも、成形性の向上は認められない。・・・
【0020】
本発明の製造方法で使用される混練物に含まれるのは成形助剤である。成形助剤としては、成形性を改善するものであり・・・成形助剤の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して、1重量部以上5重量部以下であり、好ましくは2重量部以上4重量部以下である。1重量部未満の場合は成形性が低下し、5重量部を超える場合は耐圧強度が低下する。
【0021】
本発明の製造方法で使用される混練物に含まれるのは水溶性ナトリウム塩である。・・・理由は定かではないが、水溶性ナトリウム塩を使用することで耐圧強度は著しく高くなる。水溶性ナトリウム塩の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して、0.5重量部以上5重量部以下である。0.5重量部未満ではその効果が十分でなく、5重量部より多くしてもその効果は変化しない。・・・」
「【0024】
本発明の製造方法で使用される混練物に含まれる水の量としては、ゼオライト100重量部(無水換算)に対して、60重量部以上100重量部以下であり、60重量部以上90重量部以下が好ましい。60重量部未満の場合も、100重量部より多い場合も成形が困難になることがある。」
「【0026】
本発明の製造方法で使用される混練物は、ゼオライト100重量部に対して、所定の粘土10重量部以上40重量部以下、成形助剤1重量部以上5重量部以下、水溶性ナトリウム塩0.5重量部以上5重量部以下、水60重量部以上100重量部以下(又は、さらに造孔剤を20重量部以下)を混合した後に混練することで得られるものである。混合した後に混練する方法としては特に制限はなく、例えば、ロール式混練機のミックスマーラー、羽根撹拌式であるヘンシェルミキサー、バッチ式又は連続式のニーダーなどが使用できる。
【0027】
本発明の製造方法は、上記した通りにより得られた混練物を成形するものである。成形する方法としては特に制限はなく、例えば、転動造粒、撹拌造粒、押出し成形、噴霧造粒、これらの方法を2種以上組み合わせた方法等により成形することができる。・・・
【0028】
成形されたゼオライト成形体は乾燥される。乾燥方法は特に制限なく、例えば、箱型乾燥機、連続式乾燥機などが使用できる。・・・乾燥されたゼオライト成形体は、所望の大きさに破砕される。
【0029】
乾燥されたゼオライト成形体は焼成される。焼成方法は特に制限なく、例えば、箱型マッフル炉、ロータリーキルン、シャフトキルンなどの装置で行うことができる。焼成温度は繊維状粘土が焼結されて強度が発現できる温度であり、400℃以上700℃以下である。焼成温度が400℃未満であるとバインダーが焼結せず強度が低下し、700℃を超えてもその焼結度合に変化はない。・・・」
(イ) また、本件発明の詳細な説明の実施例には、前記(ア)に摘記した「高硬度ゼオライト成形体」及び「高硬度ゼオライト成形体の製造方法」の具体例である実施例1として、「MFI型ゼオライト粉末(HSZ(登録商標)-891HOA:東ソー製(Si/Al2:1500、水分吸着量:4(g/100g)))を100重量部(103g;水分含有量:3%)、ベントナイト型粘土(クニピアF:クニミネ工業製)を20重量部(22.2g、水分含有量:10%、NH3-TPD法による固体酸量(以下、単に「固体酸量」と記載する場合がある):0.009mmol/g、平均粒径:1.8μm)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(成形助剤、セロゲン:第一工業製薬製)を3重量部(3g)、ポリアクリル酸ナトリウム(DL-40S:日本触媒製)を1重量部(1g)測りとり、混練器(ハイビスミックス:プライミクス製)で5分間混合した。水を68重量部(68g)添加し、混練物がまとまるまで混練した。得られた混練物を直径1.5mmの円柱状に成形した。その後、100℃で12時間以上乾燥し、1~3mm程度に破砕した。その後650℃、3時間の焼成を行い、ゼオライト成形体(ゼオライト100重量部に対する粘土:20重量部、ゼオライトのSi/Al2:1500、ゼオライトの水分吸着量:4(g/100g)、粘土の固体酸量:0.009mmol/g、粘土の平均粒径:1.8μm)を得た。耐圧強度は37Nであった。」と記載されている(【0035】)。
さらに、前記実施例には、実施例1のベントナイト型粘土を、固体酸量が0.01~0.134mmol/gであるベントナイト型粘土に変更した実施例2~4、及び、実施例1の混練物に結晶性セルロース造孔剤を2~8重量部で加えた実施例5~7が記載され、ゼオライト100重量部に対して、粘土20重量部を含み、ゼオライトのSi/Al2が1500、ゼオライトの水分吸着量が4g/100gであり、粘土の固体酸量が0.009~0.134mmol/gであるゼオライト成形体が得られたこと、及び、その耐圧強度が28~42Nであったことが記載されている(【0036】~【0041】)。
(ウ) 前記(ア)、(イ)によれば、本件発明の詳細な説明には、ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下を含み、耐圧強度が20N以上であり、前記ゼオライトが、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含み、前記粘土が、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含む、高強度ゼオライト成形体が記載されており(【0007】、【0010】~【0014】)、実施例1~7には、この高強度ゼオライト成形体の具体例も記載されているといえる(【0035】~【0041】)。
そして、本件発明の詳細な説明には、前記(ア)によれば、前記高強度ゼオライト成形体の各数値範囲の限定理由に関して、粘土の量が10重量部未満の場合は耐圧強度が低くなり、40重量部より多くした場合は、耐圧強度が向上せず、吸着分離能が下げること(【0011】)、耐圧強度が20N未満の場合は粉化しやすく、圧力損失や吸着効率の低下を引き起こすおそれがあること(【0014】)、前記ゼオライトのSi/Al2が300未満、あるいは、水分吸着量が10(g/100g)を超える場合には、ゼオライトと水の親和性が高く、VOC等の吸着が阻害される可能性があること(【0010】)、及び、前記粘土の固体酸量が0.15mmol/gを超えると、粘土由来の酸点で吸着質と反応する可能性があること(【0012】)が記載されているから、当該数値範囲を満たす前記高強度ゼオライトは、当業者において本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
(エ) また、前記(ア)、(イ)によれば、本件発明の詳細な説明には、ゼオライト100重量部に対して、粘土10重量部以上40重量部以下、成形助剤1重量部以上5重量部以下、水溶性ナトリウム塩0.5重量部以上5重量部以下、水60重量部以上100重量部以下を混合した後に混練して、これらを含む混練物を得て、この混練物を成形した後に乾燥し、さらに得られたゼオライト成形体を破砕した後、400℃以上700℃以下で焼成するものであり、前記ゼオライトは、Si/Al2が300以上100000以下で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、10(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含み、前記粘土は、NH3-TPD法による固体酸量が0.15mmol/g以下である粘土を一種以上含む、高強度ゼオライト成形体の製造方法が記載されており(【0007】、【0015】~【0017】)、実施例1~7には、この高強度ゼオライト成形体の製造方法の具体例も記載されているといえる(【0035】~【0041】)。
そして、本件発明の詳細な説明には、前記(イ)によれば、前記高強度ゼオライト成形体の製造方法の各数値範囲の限定理由に関して、粘土の量が10重量部未満の場合は成形性が低下し、40重量部より多くしても成形性の向上は認められないこと(【0019】)、成形助剤の量が1重量部未満の場合は成形性が低下し、5重量部を超える場合は耐圧強度が低下すること(【0020】)、水溶性ナトリウム塩の量が0.5重量部未満では耐圧強度の向上効果が十分でなく、5重量部より多くしてもその効果は変化しないこと(【0021】)、水の量が60重量部未満あるいは100重量部より多い場合は成形が困難になること(【0024】)、焼成温度が400℃未満であるとバインダーが焼結せず強度が低下し、700℃を超えてもその焼結度合に変化はないこと(【0029】)、前記ゼオライトのSi/Al2が300未満、あるいは、水分吸着量が10(g/100g)を超える場合には、ゼオライトと水の親和性が高く、VOC等の吸着が阻害される可能性があること(【0016】)、及び、前記粘土の固体酸量が0.15mmol/gを超えると、粘土由来の酸点で吸着質と反応する可能性があること(【0017】)が記載されているから、当該数値範囲を満たす前記高強度ゼオライトの製造方法は、当業者において本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
エ 特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比、検討
本件特許請求の範囲の請求項1~5の記載は、前記第2に示したとおりであるところ、本件発明1の「高強度ゼオライト成形体」、本件発明2の「高強度ゼオライト成形体の製造方法」は、前記ウ(ウ)、(エ)で検討した「高強度ゼオライト成形体」及び「高強度ゼオライト成形体の製造方法」であるから、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。
また、本件請求項2の記載を引用する本件発明3~5についても事情は同じである。
オ 申立人の主張について
(ア) 申立人の指摘事項
本件明細書の実施例1~7では、「MFI型ゼオライト100重量部に対して、ベントナイト型粘土20重量部を含み、かつ、耐圧強度が28~39Nであるゼオライト成形体であって、当該ゼオライトが、Si/Al2が1500で、25℃、相対圧0.5の条件で、水分吸着量が、4(g/100g)以下であるゼオライトを一種以上含み、当該粘土が、NH3-TPD法による固体酸量が0.01~0.134mmol/gである粘土を一種以上含む高強度ゼオライト成形体」の発明のみをサポートしているにすぎない。
そして、出願時の技術常識又は本件明細書の記載では、本件発明の数値範囲及び発明特定事項にまで、特許発明の技術的範囲を拡張できるとの技術的根拠が不明である。
したがって、本件発明の範囲にまで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張又は一般化できないから、本件発明はサポート要件を満たしていない(特許異議申立書第14ページ第16行~第15ページ第17行)。
(イ) 指摘事項の検討
前記エで検討したとおり、本件発明1~5は、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。
そして、申立人は、単に、本件明細書の実施例に記載された範囲が本件発明の数値範囲や特定事項に比べて狭いことを主張するにとどまり、実施例の範囲から外れた場合に、本件発明の課題を解決できない具体的な証拠や理由を示していない。
そうすると、前記アの指摘事項は、正当な理由があるとはいえず、採用できない。
カ 申立理由2についての結論
以上の検討のとおり、申立理由2に理由はない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許1~5を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1~5を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700183