特許異議申立
2025-700127
表面改質酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料
- 審判番号
- 2025-700127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-518533
- 登録番号
- 7524943
- 請求日
- 2025年01月28日
- 審決日
- 2025年06月27日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友大阪セメント株式会社
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】佐藤 彰雄
- 【権利者代理人】萩原 綾夏
- 【異議申立人】麻生 陽一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 阿川 寛樹
- 審判官 酒井 英夫
- 分類
- P1652.113-Y (C01G) / P1652.121-Y (C01G) / P1652.4 -Y (C01G) / P1652.537-Y (C01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第39条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7524943号発明「表面改質酸化亜鉛粒子、分散液、化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7524943号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7524943号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2022-518533号。以下、「本願」という。)は、2020年(令和 2年) 4月30日を国際出願日とする出願であって、令和 6年 7月22日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月30日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 7年 1月28日に、その請求項1~4に係る特許について、特許異議申立人である麻生 陽一郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~6に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1~4に係る発明は以下のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~4に係る発明を「本件特許発明1」~「本件特許発明4」といい、総称して「本件特許発明」ということがある。
「【請求項1】
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であり、
下記式(1)中のAで示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子。
W2=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
【請求項2】
L*a*b*表色系色度図におけるb*が4.0以上かつ18以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有することを特徴とする分散液。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有することを特徴とする化粧料。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として下記4の甲第1号証~甲第3号証(以下、「甲1」等という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(サポート要件)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、特許法第36条第6項第1号に適合しないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(同日出願)
本件特許発明1~4と、本願と同日出願された出願に係る特許である甲1の請求項1~4に係る発明とは同一の発明であり、かつ、本件特許発明1~4も該甲1の請求項1~4に係る発明も特許されており協議を行うことができない。
したがって、本件特許発明1~4については、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(新規性、進歩性)
(1)申立理由3-1
本件特許発明1~4は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、本件特許発明1~4は、甲2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由3-2
本件特許発明1~4は、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、本件特許発明1~4は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許発明1~4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 証拠方法
甲1:特許第7524942号公報
甲2:特開2007-197412号公報
甲3:特開2007-161648号公報
第4 当合議体の判断
以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3に示した申立理由1~3のいずれによっても、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(サポート要件)について
(1)本願の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の記載
本件明細書等には、以下の記載がある(なお、下線は当合議体が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。
ア 「【0002】
酸化亜鉛は、紫外線遮蔽能に優れ、ガスバリア性が高く、さらに透明性が高いことが知られている。そのため、酸化亜鉛を形成材料とする粒子(以下、「酸化亜鉛粒子」と称する。)は、紫外線遮蔽やガスバリア等の機能を有するとともに、透明性が必要とされる種々の素材の形成材料として用いられる。このような素材としては、例えば、紫外線遮蔽フィルム、紫外線遮蔽ガラス、化粧料、ガスバリアフィルム等が挙げられる。
・・・
【0005】
このような表面改質酸化亜鉛粒子は、そのまま化粧料に配合されたり、分散媒に分散させた分散液の状態で化粧料に配合されたりしている。」
イ 「【0007】
しかしながら、シランカップリング剤を表面に有する酸化亜鉛粒子であっても、油性化粧料に配合するためには、多くの分散エネルギーが必要であった。また、油性化粧料に配合されても、透明性と紫外線遮蔽性が十分に得られない、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、油性化粧料への配合が容易で、かつ、透明性と紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子を提供することを目的とする。また、このような表面改質酸化亜鉛粒子を含む分散液、化粧料を提供することを目的とする。」
ウ 「【0018】
[表面改質酸化亜鉛粒子]
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子である。そして前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数(下記式(1)中のA)が、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である。
W2=A・t (1)
(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)
【0019】
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数は、浸透重量検知法により算出することができる。具体的には、浸透重量を検知できる装置、例えば、ホソカワミクロン社製のペネトアナライザ(型番:PNT-N)を用いて算出することができる。底面が濾紙である直径36mmの円筒セルと、前記円筒セル及び/又は後述するシクロペンタシロキサンの重量の変化とその経過時間とを検知できる装置と、シクロペンタシロキサンをいれた容器と、この容器を昇降などの動作によって前記濾紙に接触させる部材を用いて、浸透速度係数を得ることが可能である。具体的には、前記円筒セルに10gの表面改質酸化亜鉛粒子を入れた後に、シクロペンタシロキサンを前記濾紙の表面に接触させて、前記セル及び/又はシクロペンタシロキサンの重量変化と経過時間とを測定し、前記式(1)から前記Aを得ればよい。
ホソカワミクロン社製のペネトアナライザを使用する場合、例えば、以下のようにして測定を行うことができる。
測定セルを、次の手順で準備する。
底面が濾紙(型番:定量濾紙 No.7、ADVANTEC社製)である直径36mmの円筒セルに、表面改質酸化亜鉛粒子を10g程度充填する。この充填した表面改質酸化亜鉛粒子の上に、アルミニウム製の200gの錘を乗せ、1分間静置する。
次いで、錘を除去し、その後、媒液であるシクロペンタシロキサンを昇降装置で上昇させ、セルの底面(濾紙)に接触させて、時間と重量変化とを測定することで、浸透速度を計測する。測定した時間と重量変化から、浸透速度係数が得られる。
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数が5.0×10-2g2/s以上であれば、シクロペンタシロキサンに対する表面改質酸化亜鉛粒子の濡れ性が高い。このため、油性化粧料に容易に分散できる。
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数が1.0×102g2/s以下であれば、表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料に配合したときの吸油による粘度の上昇を抑制できる。なお吸油とは、表面改質酸化亜鉛粒子が化粧料中の油成分を吸収することを意味する。
【0020】
シクロペンタシロキサンは、油性化粧料で一般的に使用される溶媒である。そのため、シクロペンタシロキサンへの濡れ性が高い表面改質酸化亜鉛粒子であれば、油性化粧料への分散が容易であると判断できるため、シクロペンタシロキサンを用いた。
ここで、「容易に分散する」とは、弱い分散エネルギーで、分散粒子径が小さい分散液や組成物が得られることを意味する。分散粒子径が小さい表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料に配合されたときに、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。」
エ 「【0029】
しかしながら、酸化亜鉛粒子を高エネルギーで溶媒に分散させることで、酸化亜鉛粒子の凝集がほぐれた状態で、シランカップリング剤で表面処理することができ、酸化亜鉛粒子の表面全体に、略均一にシランカップリング剤が存在することができる、と推測される。そのため、このような状態の表面改質酸化亜鉛粒子と、油成分と、が混合されると、酸化亜鉛粒子表面のどの部分も、油成分との濡れ性がよく、低エネルギーで前記粒子が油成分に分散できる。また、酸化亜鉛粒子表面に、略均一にシランカップリング剤が存在するため、表面改質酸化亜鉛粒子同士の凝集も抑制され、透明性と紫外線遮蔽性と分散安定性に優れる化粧料を得ることができる、と推測される。
【0030】
しかしながら、シランカップリング剤が、酸化亜鉛粒子表面に均一に存在していることを直接確認することは非常に難しい。本実施形態において、表面改質酸化亜鉛粒子を溶媒に容易に分散できるようになったという効果は、多数の要因の複雑な絡み合いによって、具体的には、酸化亜鉛粒子の形状、比表面積、粒度分布や、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の加水分解度合いや、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の酸化亜鉛粒子に対する付着の具合や、アルコキシ基を有するシランカップリング剤の酸化亜鉛粒子への付着率等、多数の要因の複雑な絡み合いによって発現していると推察される。そのため、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子の特徴を、アルコキシ基を有するシランカップリング剤によって表面修飾された酸化亜鉛粒子の表面の状態により、直接特定することは、およそ不可能であると考えられる。
そこで、本発明者等は、様々な検討を行った結果、表面改質酸化亜鉛粒子の濡れ性に着目し、目的の分散性を達成するように、シランカップリング剤による酸化亜鉛粒子の表面処理を高エネルギーで行うことにより、油性化粧料に容易に分散し、紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子が得られることを見出した。言い換えると、上記測定方法で得られる浸透速度係数の値は、シランカップリング剤が酸化亜鉛粒子表面に均一に存在しているかどうかの指標と考えて良い。
【0031】
本実施形態では、化粧料に好ましく使用される表面改質酸化亜鉛粒子を用いているため、粒子として酸化亜鉛粒子、表面修飾材料としてアルコキシ基を有するシランカップリング剤、溶媒としてシクロペンタシロキサンを用いて、表面処理の状態を評価する指標とした。
しかし、本実施形態の表面処理状態の評価方法は、酸化亜鉛粒子とアルコキシ基を有するシランカップリング剤の組み合わせに限らず、粒子と表面修飾材料にまで拡張して適用することができる。すなわち、溶媒を選択し、表面修飾剤で表面修飾された粒子の、前記選択した溶媒に対する浸透速度係数を測定することで、表面処理の均一性の指標とすることができる。」
オ 「【0048】
本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子は、シクロペンタシロキサンの浸透速度係数(上記式(1)中のA)が、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である。そのため、本実施形態の表面改質酸化亜鉛粒子によれば、シクロペンタシロキサンへの濡れ性が高く、油性化粧料に容易に分散でき、化粧料に配合したときの吸油による粘度の上昇を抑制できる。」
カ「【0122】
[実施例1]
「表面改質酸化亜鉛粒子の作製」
比表面積が21.3m2/g、b*が3.33の酸化亜鉛粒子(住友大阪セメント社製)を33.3質量部と、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、製品名:KBE-3083)を2.0質量部と、純水0.4質量部と、イソプロピルアルコール64.3質量部と、を混合した。
次いで、この混合液を、ビーズミルを用いて、3時間分散させた。分散条件は、回転数を2500rpmとした。温度は20℃とした。
ビーズを除去した分散液を、固液分離し、80℃で2時間乾燥し、実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。」
キ 「【0124】
「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数の測定」
表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数を、ホソカワミクロン社製のペネトアナライザ(型番:PNT-N)を用いて、次の手順で測定した。
測定セルとしては、底面が濾紙(型番:定量濾紙 No.7、ADVANTEC社製)である直径36mmの円筒セルに、表面改質酸化亜鉛粒子を10g充填した。この充填した表面改質酸化亜鉛粒子の上に、アルミニウム製の200gの錘を乗せ、1分間静置した。次いで、錘を除去し、その後、媒液であるシクロペンタシロキサンを入れた容器を昇降装置で上昇させ、セルの底面(濾紙)にシクロペンタシロキサンを接触させ、浸透速度を計測した。
結果を表1に示す。」
ク 「【0128】
「分散液の透明性の評価」
実施例1の分散液において、表面改質酸化亜鉛粒子の濃度が0.005質量%となるように、シクロペンタシロキサンで希釈した。
この希釈液の360nmと550nmにおける直線透過率T1(%)と、360nmと550nmにおける全透過率T2(%)を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)を用いて測定した。結果を表1に示す。
360nmにおける透過率が低いことは、紫外線遮蔽性が高いことを示すため、360nmにおける透過率は、低いことが好ましい。
550nmにおける透過率が高いことは、透明性が高いことを示すため、550nmにおける透過率は、高いことが好ましい。」
ケ 「【0129】
[実施例2]
実施例1において、比表面積が21.3m2/g、b*が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が24.2m2/g、b*が3.60の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0130】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例2の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
[実施例3]
実施例1において、比表面積が21.3m2/g、b*が3.33の酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比表面積が38.2m2/g、b*が3.42の酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0132】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例3の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0133】
[実施例4]
実施例3において、3時間分散処理する替わりに9時間分散処理した以外は実施例3と同様にして、実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
分散時における遠心力と分散時間の積(力積)は、実施例1の約3倍であった。実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0134】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
[比較例1]
実施例3において、3時間分散処理する替わりに、5分分散処理した以外は実施例3と同様にして、比較例1の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
分散時における遠心力と分散時間の積(力積)は、実施例1の約40分の1であった。実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0136】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0137】
[比較例2]
比表面積が38.2m2/g、b*が3.42の酸化亜鉛粒子100質量部をヘンシェルミキサーに投入した。酸化亜鉛粒子をヘンシェルミキサーで酸化亜鉛粒子を撹拌しながら、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE-3083、信越化学社製)5質量部、純水0.375質量部、およびイソプロピルアルコール7.125質量部の混合液を添加した。これらの混合物をヘンシェルミキサー内で混合し、1時間撹拌した。
次いで、得られた混合物をジェットミルで粉砕し、この粉砕粉を100℃で乾燥することにより、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子を得た。
実施例1と同様にして、比表面積、浸透速度係数およびb*を測定した。結果を表1に示す。
【0138】
実施例1の表面改質酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2の分散液を得た。
実施例1と同様にして、d10、d50、d90、T1、T2を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
【表1】
[図:0001425775000001.jpg]
【0140】
表1の結果から、実施例1~実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子は、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子と比較して、d50が小さく、紫外線遮蔽性に優れるとともに、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子と同等以上の透明性を有することが確認された。」
コ 「【0141】
「易分散性の評価」
実施例1~実施例4、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子1gを、それぞれシクロペンタシロキサン20gが入ったスクリュー管に、静かに添加し、20分後のスクリュー管の様子を観察した。
その結果、実施例1~実施例4は、表面改質酸化亜鉛粒子が、全体的に分散しているのに対して、比較例1、比較例2の表面改質酸化亜鉛粒子は、多くの粒子が沈降しているのが確認された。実施例4と比較例2の結果を、図1に示す。図1の右側のスクリュー管が、実施例4で得られた表面改質酸化亜鉛粒子を含み、図1の左側のスクリュー管が、比較例2得られた表面改質酸化亜鉛粒子を含む。図1に示すように、実施例4では、表面改質酸化亜鉛粒子が、全体的に分散していることが確認された。一方、比較例2では、多くの表面改質酸化亜鉛粒子が沈降しているのが確認された。
すなわち、シクロペンタシロキサンの浸透速度係数が所定の範囲である実施例1~実施例4の表面改質酸化亜鉛粒子は、化粧料を作製する時の分散エネルギーが小さくても、容易に分散媒中に分散することが分かった。」
(2)サポート要件についての判断
ア 上記(1)ア、イの記載からすると、本件特許発明において解決すべき課題(以下、単に「課題」という。)は、油性化粧料への配合が容易で、かつ、透明性と紫外線遮蔽性に優れる表面改質酸化亜鉛粒子を提供することと認められる。
イ そして、(1)ウに示した【0019】~【0020】の記載からみて、表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数が5.0×10-2g2/s以上であれば、シクロペンタシロキサンに対する表面改質酸化亜鉛粒子の濡れ性が高く、このため、油性化粧料に容易に分散できることが理解できる。
また、上記「容易に分散できる」ことは、分散粒子径が小さい分散液や組成物が得られることを意味し、そのような粒子が得られれば、透明性と紫外線遮蔽性に優れるものとなることが理解できる。
ウ また、上記(1)カ~ケの記載からすると、上記浸透速度係数が2.6×10-2~4.5×10-2g2/sである比較例1、2の表面改質酸化亜鉛粒子は、紫外線である360nmにおける透過率は比較的高く、可視光である550nmにおける透過率は比較的低いものであるが、6.3×10-2~8.7×10-2g2/sである実施例1~4の表面改質酸化亜鉛粒子は、紫外線である360nmにおける透過率が比較的低く、可視光である550nmにおける透過率は比較的高いものとなっている。
さらに、上記(1)コの記載からすると、上記浸透速度係数が2.6×10-2~4.5×10-2g2/sである比較例1、2の表面改質酸化亜鉛粒子は、シクロペンタシロキサン中において多くの粒子が沈降するものであるが、6.3×10-2~8.7×10-2g2/sである実施例1~4の表面改質酸化亜鉛粒子は、シクロペンタシロキサン中において粒子が均一に分散するものとなっている。
これらからみて、浸透速度係数が、比較例における最大値である4.5×10-2g2/sと、実施例における最小値である6.3×10-2g2/sの間に存在する所定の下限値以上の表面改質酸化亜鉛粒子であれば、油成分との濡れ性が高まり、上記課題を解決できることが理解できる。
エ 上記ア~ウを総合すると、本願特許発明1において特定された5.0×10-2g2/sを浸透速度係数の下限値とする表面改質酸化亜鉛粒子は、上記課題を解決できると解される。
オ 申立人は、本件特許発明1の「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である」ことについて、特に上限の「1.0×102g2/s以下」なる数値が、実施例1~4と4桁も違う数値であり、その数値根拠が不明であることを挙げ、サポート要件を満たさないことを主張している。
しかし、上述のとおり、浸透速度係数は、その数値が高いほど上記アに示した課題の解決に寄与すると解されるし、申立人は、浸透速度係数が本件特許発明1の上限である「1.0×102g2/s」に近い場合において、課題が解決されないとの疑義が生じる程度の具体的根拠の提示も行っていないから、単に本願特許発明1において特定された「浸透速度係数」に関して、「5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下」なる数値の上限値付近が、実施例から乖離していることをもって該課題を解決できないとはいえない。
カ そうすると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、上記アの課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
この点は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~4についても同様である。
(3)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由1によって、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(同日出願)について
(1)甲1発明
本願と同日に同一出願人により国際出願され、令和 6年 7月22日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月30日に特許掲載公報が発行された甲1の請求項1~6に係る発明は、甲1の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1~4に係る発明は、次のとおりのものである。
なお、以下において、甲1の請求項1~4に係る発明を「甲1発明1」~「甲1発明4」という。
「【請求項1】
アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であり、
以下の測定方法で、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置で測定したときの、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径d50が4μm以下であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子。
(測定方法)
表面改質酸化亜鉛粒子10gと、シクロペンタシロキサン88gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン2gと、を混合して混合液を得て、
得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間分散処理した分散液を得て、
得られた分散液中の表面改質酸化亜鉛粒子の含有量が0.01質量%となるようにシクロペンタシロキサンで希釈した測定液を作製し、
得られた測定液を用いて、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置でd50を測定する。
【請求項2】
L*a*b*表色系色度図におけるb*が4.0以上かつ18以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面改質酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、分散媒と、を含有することを特徴とする分散液。
【請求項4】
請求項1または2に記載の表面改質酸化亜鉛粒子と、化粧品基剤原料を含有することを特徴とする化粧料。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明1とを対比すると、両者は、
「アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である表面改質酸化亜鉛粒子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1は「表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である」と特定しているのに対し、甲1発明1は「そのような特定をしていない点。
イ 判断
上記相違点1-1について検討する。
(ア)甲1発明1においては、浸透速度係数Aは不明であり、甲1の記載や出願時の技術常識を考慮しても、甲1発明1が本件特許発明1と同等の浸透速度係数Aを備えたものと認められる根拠を見出せないことから、この点は実質的な相違点と認められる。
また、該相違点1-1が、前記1(2)アに示した課題を解決するための具体化手段による微差であるともいえない。
(イ)申立人は、本件特許において示された実施例1~4、及び、甲1に示された実施例1~4は、いずれも同一の手法で製造された表面改質酸化亜鉛粒子であり、測定されたd50、色度、直線透過、全透過についても全く同一であること等を挙げ、同じ表面改質酸化亜鉛粒子を、甲1発明1では「粒径d50が4μm以下」と特定し、本件特許発明1では「浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下」と特定したにすぎないことを主張している。
しかし、上記実施例は、本件特許発明1、甲1発明1に含まれる態様の一例を表すものにすぎず、本件特許発明1、甲1発明1には、これらの実施例以外にも様々な態様が含まれるものであるから、実施例が同一であることをもって、少なくとも、本件特許発明1と甲1発明1とが、共に「浸透速度係数Aが5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下」なる特定事項を備えているとはいえない。
(ウ)したがって、上記相違点1-1は、実質的なものであり、課題を解決するための具体化手段による微差であるともいえない。
(3)本件特許発明2~4について
本件特許発明2~4と甲1発明2~4とは、上記(2)アに示した相違点1-1において相違し、その余の点で一致する。そして、該相違点1-1は、(2)イに示したとおり、実質的なものであり、課題解決のための具体化手段における微差であるともいえないから、本件特許発明2~4と甲1発明2~4とが、実質的に同一の発明であるとすることはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件特許発明1~4は、本願と同日出願された出願に係る特許である甲1の請求項1~4に係る発明と同一の発明であるとはいえないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。したがって、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(新規性、進歩性)について
(1)申立理由3-1について
ア 甲2の記載事項、及び甲2に記載された発明
(ア)甲2の記載事項
本願の出願前に公知となった甲2には、「有機珪素化合物による処理粉体」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
下記(1)~(3)から選ばれる有機珪素化合物で表面処理されている粉体粒子を、過熱水蒸気と接触させてなることを特徴とする処理粉体。
(1) Si-H基を1つ以上有するシリコーン化合物
(2) (1)のシリコーン化合物と、Si-H基を有していないシリコーン化合物との混合物
(3) 下記一般式(II)にて表されるアルコキシシラン:
RnSi(OR’)4-n (II)
[式中、Rは、炭素原子数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、フェニル基、又は、水素原子を表し、R’は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のヒドロキシアルキル基を表し、nは、1~3の数を表す]
・・・
【請求項6】
上記アルコキシシラン(II)が、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、又は、オクタデシルトリエトキシシランであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の処理粉体。」
b 「【0001】
本発明は、特定の製造工程を経て得られる有機珪素化合物による処理粉体に関する発明である。当該処理粉体は、化粧料等の外用組成物の配合成分として非常に有益である。」
c 「【0009】
本発明が解決すべき課題は、上述のように、種々の問題を引き起こすことが知られている、有機珪素化合物による処理粉体におけるSi-H基や、アルコキシシランを用いた場合に残存するアルコキシ基の効率的な消去手段を確立して、いっそう優れた処理粉体を提供する手段を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題の解決のために鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、近年、調理分野で利用されつつある過熱水蒸気を用いることで、粉体に残存するSi-H基やアルコキシ基を効率的に消去し得ることを見出して本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記(1)~(3)から選ばれる有機珪素化合物で表面処理されている粉体粒子を、過熱水蒸気と接触させてなることを特徴とする処理粉体(以下、本処理粉体ともいう)を提供する発明である。
(1) Si-H基を1つ以上有するシリコーン化合物
(2) (1)のシリコーン化合物と、Si-H基を有していないシリコーン化合物との混合物
(3) 下記一般式(II)にて表されるアルコキシシラン:
RnSi(OR’)4-n (II)
[式中、Rは、炭素原子数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、フェニル基、又は、水素原子を表し、R’は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のヒドロキシアルキル基を表し、nは、1~3の数を表す]
【発明の効果】
【0012】
本処理粉体は、表面処理を行う有機珪素化合物として、上記(1)~(2)を用いた場合は、粉体に残存するSi-H基が効率的に消去され、(3)を用いた場合には、同アルコキシ基が効率的に消去される。その結果、本処理粉体においては、水素発生や臭いの発生が抑制されて、製品中における安定性に優れた疎水化処理粉体として用いることができるだけではなく、製造作業の環境を向上させることが可能である。さらに、本処理粉体は、それ自体、撥水性にも優れている。」
d 「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
核粒子
本発明では、有機珪素化合物(1)~(3)にて表面処理する対象となる粉体粒子を「核粒子」という。
【0014】
本発明で用いる核粒子の粒子径は、特に制限されるものではないが、一般に平均粒子径150μm以下(150μmより大きいものも含まれることがある)の任意に選択される種類の粉体粒子である。また、平均粒子径が0.02μm以下の超微粉体粒子を選択することも可能である(例えば、二酸化チタン粒子であれば、平均粒子径が0.001~1μm程度であることが好適である)。
【0015】
上記核粒子の素材も特に制限されず、例えば、無機系粉体であれば、タルク、セリサイト、マイカ、無水ケイ酸、窒化ホウ素、合成マイカ、二酸化チタン、低次酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、赤酸化鉄、雲母チタン、雲母、黒酸化チタン、コンジョウ、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛、アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、チタン酸鉄、チタン酸コバルト、リチウムコバルトチタネート、アルミン酸コバルト、オキシ酸ビスマス、等が挙げられる。有機系粉体であれば、例えば、セルロース末、デンプン、シルク末、ナイロン末、ポリアクリル酸、アルキル末、ポリエチレン末、金属石鹸、ポリスチレン末、シリコーン末、弾性ゴム粉末、シリカアルミナ、魚鱗末、色素(タール系色素、レーキ:染料・顔料)が挙げられる。」
e 「【0022】
(3)有機珪素化合物(3)は、上述したように、下記一般式(II)にて表されるアルコキシシランである。
RnSi(OR’)4-n (II)
[式中、Rは、炭素原子数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、フェニル基、又は、水素原子を表し、R’は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は、炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐のヒドロキシアルキル基を表し、nは、1~3の数を表す]
【0023】
Rは、直鎖のアルキル基であることが好適であり、特に、炭素原子数が6以上であることが好適である。また、R’は、メチル基又はエチル基が好適である。nは、1であることが好適である。
【0024】
アルコキシシラン(II)のさらなる具体例としては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランを挙げることができる。
【0025】
有機珪素化合物による表面処理
核粒子に対する上記有機珪素化合物(1)~(3)による表面処理は、常法に従って行うことができる。すなわち、有機珪素化合物(1)~(3)を、それ自体の蒸気の形態、適当な溶媒に溶かした溶液の形態、またはそれ自体の液体の形態で、核粒子と接触させることにより、シリコーンの表面処理粉体を製造することができる。
・・・
【0028】
有機珪素化合物(1)~(3)を、溶液として核粒子と接触させる場合、例えば、アルコール類、水、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の溶媒中に、当該有機珪素化合物を0.3~50重量%を含有する溶液を調製し、その中に核粒子を分散後加熱して、溶媒を蒸発させると共に有機珪素化合物を、核粒子の表面上で重合させることにより処理可能であり、かかる工程は、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、ニーダー、媒体攪拌ミル(ビーズミル等)等を用いて行うことができる。」
f 「【0088】
実施例4-1
テフロン(登録商標)製1Lカップに、微粒子二酸化チタン(平均粒子径:0.01μm)100g、イソプロピルアルコール300g、オクチルトリエトキシシラン7g及びビーズミル(直径1mmΦのジルコニアビーズ)を200g入れ、ラボ分散機(VMA-GETZMANN GMBH製、DISPERMAT)にて室温で1時間攪拌・混合した。その後、ジルコニアビーズを篩い分けしたスラリーをヘンシェルミキサーに入れ、さらに減圧しながら攪拌することで溶媒であるイソプロピルア ルコールを蒸発させた。その後、第一高周波工業製、DHF-Super-Hiにより150℃に調整した過 熱水蒸気を、5kg/hで当該容器に導入し、そのまま容器内を120~150℃に保ち攪拌しながら2時間処理することで、処理粉体を得た。
【0089】
実施例4-2
実施例4-1の粉体を微粒子酸化亜鉛(平均粒子径:0.05μm)に代えて同様の処理を行い、処理粉体を得た。」
(イ) 甲2に記載された発明
上記(ア)に摘記した甲2の記載事項を総合勘案し、特に、実施例4-2として記載された、処理粉体に着目すると、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛100g、イソプロピルアルコール300g、オクチルトリエトキシシラン7g及びビーズミル(直径1mmΦのジルコニアビーズ)を200g入れ、ラボ分散機にて室温で1時間攪拌・混合し、その後、ジルコニアビーズを篩い分けしたスラリーをヘンシェルミキサーに入れ、さらに減圧しながら攪拌することで溶媒であるイソプロピルアルコールを蒸発させ、その後、150℃に調整した過熱水蒸気を、5kg/hで導入し、120~150℃に保ち攪拌しながら2時間処理することで得た処理粉体。」(以下、「甲2発明」という。)
イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「オクチルトリエトキシシラン」は、本件特許発明1の「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」であって、「前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であ」るものに相当する。
b 甲2発明の「処理粉体」は、微粒子酸化亜鉛を、イソプロピルアルコール、オクチルトリエトキシシラン及びビーズミルとともに、ラボ分散機にて室温で1時間攪拌・混合し、その後、ジルコニアビーズを篩い分けしたスラリーをヘンシェルミキサーに入れ、さらに減圧しながら攪拌することで溶媒であるイソプロピルアルコールを蒸発させ、その後、150℃に調整した過熱水蒸気下で攪拌しながら2時間処理されることで形成されるものであり、上記攪拌・混合等の処理により、微粒子酸化亜鉛の表面には、オクチルトリエトキシシランが存在し、該オクチルトリエトキシシランによって改質された状態となっていることは明らかである。
したがって、甲2発明の「処理粉体」は、「オクチルトリエトキシシラン」、すなわち「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」を「表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子」に相当する。
c そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、
「アルコキシ基を有するシランカップリング剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子であって、
前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする表面改質酸化亜鉛粒子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1では、「下記式(1)中のAで示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下であ」り、「W2=A・t (1) (式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)」と特定されているのに対して、甲2発明では、処理粉体に対する浸透速度係数に関する特定がなされていない点。
(イ)相違点についての判断
a 相違点2-1が実質的な相違点であるかについて
(a)甲2には、処理粉体に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数について、特段の記載がなく、本願出願時の技術常識を考慮しても、甲2発明の「処理粉体」が上記相違点2-1に係る本件特許発明1の特定事項を備えているとは認められない。
(b)この点につき、さらに検討すると、上記1(1)カ~コをみるに、本件明細書には、本件特許発明1の「シクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である」「表面改質酸化亜鉛粒子」は、比表面積20.7~43.6m2/gの酸化亜鉛粒子を、オクチルトリエトキシシラン、純水、イソプロピルアルコールと混合し、回転数2500rpmで3~9時間ビーズミルで撹拌した後、ビーズを除去、乾燥して製造されることが記載されている。
(c)一方、上記ア(ア)fをみるに、甲2には、甲2発明の「処理粉体」は、平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛を、オクチルトリエトキシシラン、イソプロピルアルコールと混合し、1時間ビーズミルで撹拌・混合した後、ビーズを除去、乾燥する工程を経て製造されることが記載されている。
上記微粒子酸化亜鉛が略球形であると仮定すれば、その比表面積は約21.4m2/gとなり、上記aで示した本件明細書の実施例に記載された態様の数値に含まれる。しかし、上記撹拌・混合の際におけるビーズミルの回転速度は不明であるし、表面処理溶液の組成も異なっており、撹拌時間についても、本件明細書に記載されたものよりも短いから、このような手法により製造された甲2発明の「処理粉体」が、本件特許発明1と同様な浸透速度係数を有しているとはいえない。
したがって、上記相違点2-1は、実質的な相違点である。
(d)以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2発明であるとはいえない。
b 相違点2-1の容易想到性について
(a)甲2には、表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数に着目した記載は見当たらないし、本願出願時の技術常識を考慮しても、上記浸透速度係数を所定の範囲に設定する動機付けがあるとはいえない。
また、甲2の記載や本願出願時における技術常識を考慮しても、上記(イ)bにおける撹拌・混合に際して、その回転数や表面処理溶液の組成、時間を変更する動機付けも特段存在しない。
そうすると、甲2発明において、上記相違点2-1に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(b)したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件特許発明2~4について
本件特許の請求項2~4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明2~4は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。
したがって、上記イ(イ)aのとおり、本件特許発明1が甲2発明であるとはいえない以上、同様に、本件特許発明2~4は、甲2発明であるとはいえない。
また、上記イ(イ)bのとおり、本件特許発明1が甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、本件特許発明2~4は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)申立理由3-2について
ア 甲3の記載事項、及び甲3に記載された発明
(ア)甲3の記載事項
本願の出願前に公知となった甲3には、「微粒子酸化亜鉛分散物及びそれを含む化粧料」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
一次粒子径15~55nmである微粒子酸化亜鉛が、疎水性分散媒中に平均分散粒子径70~140nmで分散していることを特徴とする微粒子酸化亜鉛分散物。」
b 「【0001】
本発明は微粒子酸化亜鉛分散物及びそれを含む化粧料、特に微粒子酸化亜鉛を油性分散媒中に分散させた微粒子酸化亜鉛分散物に関する。」
c 「【0005】
しかしながら、可視光の散乱能が小さい粒子径範囲では、可視光のみならず紫外線散乱能も小さいことが多く、高い透明性と優れた紫外線遮蔽能とを両立させることは困難であった。
また、微粒子酸化亜鉛は粒子間の凝集力が強く、いくら一次粒子径を細かくしても、組成物中で凝集して大きな二次粒子を形成してしまうことが多く、化粧料に使用すると色がくすんで透明感が損なわれたり、塗布時の伸びが悪くなったり、あるいは例え配合量を増加させても期待する紫外線防止効果が得られないことがあった。
本発明の目的は、透明感のある自然な仕上がり感が得られ、UVA・UVB両域において優れた紫外線防御効果を有し、経時安定性の良い微粒子酸化亜鉛分散物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情を鑑み、本発明者等が鋭意検討を行った結果、一次粒子径と分散粒子径の両方を特定することにより、透明感を有しながらもUVA・UVB両域における紫外線防御能に優れ、しかも再凝集を生じにくく経時安定性の良い微粒子酸化亜鉛分散物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の主題は、一次粒子径が15~55nmである微粒子酸化亜鉛が、疎水性分散媒中に平均分散粒子径70~140nmで分散していることを特徴とする微粒子酸化亜鉛分散物である。」
d 「【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
1.微粒子酸化亜鉛分散物
本発明の微粒子酸化亜鉛分散物は、一次粒子径15~55nmの微粒子酸化亜鉛を、疎水性分散媒中に平均分散粒子径70~140nmで分散させたものである。
[微粒子酸化亜鉛]
本発明における微粒子酸化亜鉛は、一次粒子径15~55nmであることを特徴とする。これより大きくても小さくても紫外線遮蔽効果が低くなり、配合量を増量する必要がでてくる。また、粒子径が小さすぎると、粒子間の凝集力が強く、分散が困難になる。
微粒子酸化亜鉛の形状及び結晶状態は任意であり、目的に応じて選択すればよい。例えば、粒(球)状、板状、薄片状等の形状のものを適宜使用できる。また、フランス法、アメリカ法、湿式法、その他何れの方法で製造された酸化亜鉛であってもよい。
微粒子酸化亜鉛の一次粒子径として、さらに好ましくは20~50nmである。
【0010】
微粒子酸化亜鉛は、必要に応じて公知の方法にて表面を疎水化して用いることもできる。
疎水化処理剤としては、特に限定されず、通常公知の疎水化処理剤を用いることができる。具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン化合物;パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等のフッ素化合物;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の油剤;ラウリン酸、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等の有機チタネート化合物;パーフルオロアルキルシラン、オクチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。」
e 「【0033】
試験例1 粒子径
下記分散用組成で、各種の一次粒径を有する市販の疎水化処理酸化亜鉛1~7を用い、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製、メディアに直径0.3mmのジルコニアビーズを使用)、又はホモミキサー処理[TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社)]で分散処理を行った。
分散用組成(1):
デカメチルシクロペンタシロキサン 50質量%
分散剤(両末端シリコーン化ポリグリセリン) 10
酸化亜鉛 40
計100
【0034】
得られた分散物をデカメチルシクロペンタシロキサンで酸化亜鉛濃度が10質量%となるように希釈して、評価を行った。結果を表1に示す。なお、試験例1-1~1-7はペイントシェーカー処理、試験例1-8は試験例1-1と同じ組成でホモミキサー処理した結果である。
(表1)
[図:0001425775000002.jpg]
【0035】
一次粒径が大きい場合(試料1-6~1-7)には透明性が低かった。これらにおいて、透明性を得ようとして分散時間を長くしても、分散粒子径はほとんど変化せず、透明性も低いままであった。
また、試料1-8のように、ホモミキサー処理のような分散力に欠ける処理であると、一次粒子径が小さくても分散が不十分で平均分散粒子径が大きいままとなり、やはりUV防御能や透明性において十分な効果が得られなかった。
また、何れの試験例においても、平均分散粒子径を70nm未満とするには、分散時間がかかりすぎて現実的でなく、かえって再凝集することがあった。
これらの結果から、一次粒子径が15~55nmの範囲の微粒子酸化亜鉛を、分散粒子径が70~140nmとした場合に、優れた透明感と、高いUV-B・UV-A防御能とを両立した安定な微粒子酸化亜鉛分散物を得られることが示唆された。
【0036】
微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が上記範囲よりも小さい場合には、分散粒子径を70~110nmとしてもUVA遮蔽力が十分でない。また、粒子間の凝集力も強くなる。一方、微粒子酸化亜鉛の一次粒子径が上記範囲よりも大きい場合には、一次粒子にまで分散して分散粒子径70~110nmとすることが現実的に困難となり、透明性やUV遮蔽力も十分でない。
透明感と紫外線防御効果とを両立させようとする場合、酸化亜鉛の一次粒子径をなるべく細かくして高分散させ、化粧料中に多量に配合できるようにするのが一般的な技術である。これに対して本発明においては、一定範囲の一次粒子径を有する微粒子酸化亜鉛を適度に分散させることにより、例え少量の配合でも透明感と紫外線防御効果との両立に成功したものである。」
(イ)甲3に記載された発明
上記(ア)dに示した【0010】の「微粒子酸化亜鉛は、必要に応じて公知の方法にて表面を疎水化して用いることもできる」なる記載や、「疎水化処理剤としては、特に限定されず、通常公知の疎水化処理剤を用いることができる」なる記載、出願時の技術常識を併せて鑑みるに、甲3に試験例1として記載された「市販の疎水化処理酸化亜鉛」は、何らかの疎水化処理剤で疎水化された酸化亜鉛と解される。
したがって、上記(ア)に摘記した甲3の記載事項を総合勘案し、特に、試験例1として記載された疎水化処理酸化亜鉛に注目すると、甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「一次粒子径15~55nmであり、疎水化処理剤で疎水化された微粒子酸化亜鉛。」(以下、「甲3発明」という。)
イ 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
a 甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」は、本件特許発明1の「酸化亜鉛粒子」に相当する。
b 甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」は、何らかの疎水化処理剤で疎水化されたものであり、その表面が疎水化処理剤の存在により改質されていると認められる。したがって、甲3発明の「疎水化処理剤で疎水化された微粒子酸化亜鉛」は、何らかの「剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子」である点で、本件特許発明1と共通するものである。
c そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、
「剤を表面に有する表面改質酸化亜鉛粒子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1では、酸化亜鉛粒子表面に「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」を有し、「前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であ」るのに対し、甲3発明では、そのような特定がなされていない点。
<相違点3-2>
本件特許発明1では、「下記式(1)中のAで示される、前記表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサン浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下であ」り、「W2=A・t (1)(式中、Wは浸透重量(単位:g)、tは時間(単位:s)である。)」と特定されているのに対して、甲3発明では、「微粒子酸化亜鉛」の浸透速度係数に関する特定がなされていない点。
(イ)相違点についての判断
a 相違点3-1が実質的な相違点であるかについて
(a)甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」は、何らかの疎水化処理剤で表面が疎水化されたものであるが、該「疎水化処理剤」が何であるのかは不明である。
(b)ここで、該「疎水化処理剤」に関し、甲3には、上記ア(ア)dに示したように、「特に限定されず、通常公知の疎水化処理剤を用いることができる」こと、及び、「具体的には、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン化合物;パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等のフッ素化合物;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ラノリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス等の油剤;ラウリン酸、ステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート等の有機チタネート化合物;パーフルオロアルキルシラン、オクチルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる」ことが記載されている。
しかし、試験例1に基づいて認定した甲3発明において用いられる「疎水化処理剤」が、これらのうち具体的に何であるのかは全く不明である。
(c)したがって、上記相違点3-1は、実質的な相違点である。
b 相違点3-1の容易想到性について
(a)甲3には、上記ア(ア)dに示されるように、「疎水化処理剤」に関し、本件特許発明1の「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」であって「前記シランカップリング剤が、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーの群から選ばれる少なくとも1種であ」るもののうち、「オクチルトリエトキシシラン」が例示されている。
しかし、甲3の記載や本願の出願時における技術常識を考慮しても、甲3発明において、「疎水化処理剤」のうち「オクチルトリエトキシシラン」を選択して用いようとする動機付けは特段存在しない。
(b)そうすると、甲3発明において、上記相違点3-1に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
c 相違点3-2が実質的な相違点であるかについて
(a)甲3には、微粒子酸化亜鉛に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数について、特段の記載がなく、本願出願時の技術常識を考慮しても、甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」が上記相違点3-2に係る本件特許発明1の特定事項を備えているとは認められない。
(b)この点につき、さらに検討するに、上記1(1)カ~コをみるに、本件明細書には、本件特許発明1の「シクロペンタシロキサンの浸透速度係数Aが、5.0×10-2g2/s以上かつ1.0×102g2/s以下である」「表面改質酸化亜鉛粒子」は、比表面積20.7~43.6m2/gの酸化亜鉛粒子を、オクチルトリエトキシシラン、純水、イソプロピルアルコールと混合し、回転数2500rpmで3~9時間ビーズミルで撹拌した後、ビーズを除去、乾燥して製造されることが記載されている。
(c)一方、上記ア(ア)dをみるに、甲3には、甲3発明の「微粒子酸化亜鉛」が、何らかの疎水化処理剤で疎水化されたものであり、その表面が疎水化処理剤の存在により改質されているものであることが示されている。しかし、該疎水化に際しての処理条件は全く不明であり、このことからも、甲3発明が本件特許発明1と同様な浸透速度係数を有しているとはいえない。
(d)したがって、上記相違点3-2は、実質的な相違点である。
d 相違点3-2の容易想到性について
甲3には、表面改質酸化亜鉛粒子に対するシクロペンタシロキサンの浸透速度係数に着目した記載は見当たらないし、本願出願時の技術常識を考慮しても、上記浸透速度係数を所定の範囲にする設定する動機付けがあるとはいえない。
また、甲3の記載や本願出願時における技術常識を考慮しても、疎水化の諸条件を変更する動機付けも特段存在しない。
そうすると、甲3発明において、上記相違点3-2に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
e したがって、本件特許発明1は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ウ 本件特許発明2~4について
本件特許の請求項2~4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明2~4は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。
したがって、上記イのとおり、本件特許発明1が甲3発明ではなく、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、同様に、本件特許発明2~4は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1~4は、甲2または甲3に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないものである。
また、本件特許発明1~4は、甲2または甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、申立理由3によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700127