特許異議申立
2025-700159
リチウムイオン電池、電池パック、電気自動車及びエネルギー貯蔵装置
- 審判番号
- 2025-700159
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-573150
- 登録番号
- 7529810
- 請求日
- 2025年02月05日
- 審決日
- 2026年04月01日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ビーワイディー カンパニー リミテッド
- 【権利者代理人】赤岡 明
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 涌井 智則
- 分類
- P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7529810号発明「リチウムイオン電池、電池パック、電気自動車及びエネルギー貯蔵装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7529810号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7529810号の請求項1~7、9~13に係る特許を維持する。
特許第7529810号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7529810号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)5月24日(パリ条約による優先権主張2020年5月29日、中国)を国際出願日とする出願であって、令和6年7月29日にその特許権が設定登録され、同年8月6日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 2月 5日 :特許異議申立人 赤松智信(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 4月24日付け:取消理由通知
同年 7月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月16日 :特許異議申立人による意見書の提出
同年10月21日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和8年 1月22日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和7年7月28日にした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定によって、令和8年1月22日に訂正請求をしたことにより取り下げられたものとみなす。
また、令和8年2月4日付け通知書で、特許異議申立人に対して意見書提出の期間を指定して、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったが、当該期間内に特許異議申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和8年1月22日付けの訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「ケースと、前記ケース内に封止された電極体とを含み、」と記載されているのを、「金属のケースと、前記ケース内に封止された電極体とを含むリチウムイオン電池であって、」に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~7、9~13も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とするリチウムイオン電池。」と記載されているのを、「のうちの少なくとも1つを満たし、前記リチウムイオン電池が長方形電池であり、前記ケースの長さが500mm~2500mmである、ことを特徴とするリチウムイオン電池。」に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2~7、9~13も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。」と記載されているのを、「請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。」と記載されているのを、「請求項1~7および9のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。」と記載されているのを、「請求項1~7および9~10のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。」に訂正する。
(7)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、本件訂正1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、一群の請求項〔1~13〕に対して請求するものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件
以下、訂正の適否について判断する。
なお、特許異議の申立ては、上記第1のとおり、本件訂正前の全請求項(請求項1~13)に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1の「ケース」について、「リチウムイオン電池」が含む「金属のケース」であると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
願書に添付した明細書の段落【0035】には「具体的には、一定の強度を持つケース(好ましくは金属ケース)を有するリチウムイオン電池であってもよい。」と記載されているから、請求項1において、「金属のケース」であると限定する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項1の「リチウムイオン電池」について、「前記リチウムイオン電池が長方形電池であり、前記ケースの長さが500mm~2500mmである」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
願書に添付した明細書の段落【0035】には「いくつかの具体的な実施例では、上記リチウムイオン電池は、長方形電池であってもよく、さらに、上記リチウムイオン電池の長さは、500mm~2500mm(具体的には、例えば500mm、800mm、1000mm、1500mm、1800mm、2000mm、2200mm、2500mmなど)であってもよい。具体的には、一定の強度を持つケース(好ましくは金属ケース)を有するリチウムイオン電池であってもよい。」と記載されているから、請求項1において、「前記リチウムイオン電池が長方形電池であり、前記ケースの長さが500mm~2500mmである」と限定する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。また、訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項3は、上記アのとおり、請求項8の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4~6
ア 訂正の目的について
訂正事項4~6は、請求項9~11について、請求項8の引用を削除して引用請求項数を削減する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項4~6は、請求項8の引用を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 小括
本件訂正による訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明13」といい、合わせて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(なお、請求項1の【数1】の「w」及び「比L/w」、請求項2の【数2】、請求項5の「比L/w」における「w」は、請求項1の「Wは、前記有効部材の第2方向での寸法であり、Wの単位がmであり」との記載によれば、「W」のことであるから、以下「w」を「W」ということもある。)。
「【請求項1】
金属のケースと、前記ケース内に封止された電極体とを含むリチウムイオン電池であって、
前記電極体は、正極シートと、負極シートと、前記正極シートと前記負極シートとの間に位置するセパレータとを含み、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極材料層とを含み、正極集電体を有効部材として定義し、前記有効部材は、以下の条件を満たし、
【数1】
[図:0001436164000001.jpg]
ここで、Lは、前記有効部材の第1方向での寸法であり、Lの単位がmであり、Wは、前記有効部材の第2方向での寸法であり、Wの単位がmであり、d2は、前記有効部材の厚さであり、d2の単位がmであり、ρは、前記有効部材の密度であり、ρの単位がkg/m3であり、Cpは、前記有効部材の比熱容量であり、Cpの単位がJ/(Kg・℃)であり、前記第1方向は、前記有効部材における電流の引き出し方向と平行であり、前記第2方向は、前記第1方向と交差する、
前記正極集電体は、
前記正極集電体の厚さd2の値の範囲が6μm~15μmの間にあるという条件と、
前記正極集電体の比熱容量Cpの値の範囲が800J・kg-1・K-1~900J・kg-1・K-1の間にあるという条件と、
前記正極集電体の第1方向での寸法Lと前記正極集電体の第2方向での寸法Wとの比L/wの値の範囲は、2~30の間にあるという条件と
のうちの少なくとも1つを満たし、
前記リチウムイオン電池が長方形電池であり、前記ケースの長さが500mm~2500mmである、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
前記有効部材は、以下の条件を満たす、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【数2】
[図:0001436164000002.jpg]
【請求項3】
前記正極集電体の1つの辺に正極タブが引き出され、前記第1方向は、前記正極タブの引き出し方向と平行である、ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記第2方向は、前記第1方向と垂直である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記正極集電体は、
前記正極集電体の厚さd2の値の範囲が6μm~15μmの間にあるという条件と、
前記正極集電体の密度ρの値の範囲が2000kg・m-3~3000kg・m-3の間にあるという条件と、
前記正極集電体の比熱容量Cpの値の範囲が800J・kg-1・K-1~900J・kg-1・K-1の間にあるという条件と、
前記正極集電体の第1方向での寸法Lと前記正極集電体の第2方向での寸法Wとの比L/wの値の範囲は、2~30の間にあるという条件と
の全てを満たす、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記正極集電体の材料は、アルミニウムを含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記電極体は、
前記正極材料層がリン酸鉄リチウム材料を含むという条件と、
前記負極シートが黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、ケイ素系材料、スズ系材料及びチタン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む負極活物質を含むという条件と
のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
前記ケース内に封止された電極体は、複数であり、複数の前記電極体は、直列接続された複数の電極体群に分けられる、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記ケースと前記電極体との間に封止膜がさらに設置され、前記電極体は、封止膜内に封止される、ことを特徴とする請求項1~7および9のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
少なくとも1つの請求項1~7および9~10のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池を含む、ことを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項11に記載の電池パックを含む、ことを特徴とする電気自動車。
【請求項13】
請求項11に記載の電池パックを含む、ことを特徴とするエネルギー貯蔵装置。」
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
・請求項1~7、9、11~13
・引用文献等 甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第7号証
・請求項10
・引用文献等 甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第7号証、周知例1、周知例2
<引用文献等一覧>
甲第1号証:特開2018-174032号公報
甲第3号証:国際公開第2012/014350号
甲第5号証:特許第6494596号公報
甲第6号証:特開2018-137112号公報
甲第7号証:特開2020-47524号公報
周知例1 :再公表特許第2016/132961号
周知例2 :特開2008-103245号公報
2 引用文献の記載事項、引用発明
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池の一例として、リチウムイオン二次電池が知られている。リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池等と比較して、軽量、高容量であり、携帯電子機器用の電源として広く用いられている。」
「【0019】
「第1実施形態」
[非水電解液二次電池]
図1は、第1実施形態にかかる非水電解液二次電池の断面模式図である。図1に示すように、第1実施形態にかかる非水電解液二次電池100は、積層体40と、外装体50とを備える。積層体40と非水電解液(図視略)は、外装体50に設けられた収容空間内に収容される。
【0020】
(積層体)
図1に示すように、積層体40は、正極20と、負極30と、セパレータ10と、をそれぞれ1層以上有する。セパレータ10は、正極20と負極30との間に配設されている。正極20、負極30、及びセパレータ10は、それぞれ1層以上設けられている。
【0021】
正極20は、正極集電体22と、正極活物質層24と、正極端子26とを有する。正極端子26は、第1端部が正極集電体22に接続され、第2端部が外装体50の外側に延出する。以下、積層体40の積層方向をz方向とし、z方向に対して直交する面の一方向をx方向、面内でx方向に直交する方向をy方向とする。」
「【0023】
正極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。正極端子26は、導電性を有すればよく、正極集電体22と同様のものを用いることができる。接触抵抗を下げるためには、いずれも同様の材質を用いることが好ましい。」
「【0029】
「負極」
負極30は、負極集電体32と、負極活物質層34と、負極端子36とを有する。負極端子36は、第1端部が負極集電体32に接続され、第2端部が外装体50の外側に延出する。」
「【0042】
例えば、外装体50として、金属箔を高分子膜で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔としては例えばアルミ箔を、高分子膜としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。」
「【0045】
図2は、本実施形態にかかる非水電解液二次電池の積層体の斜視模式図である。・・・」
「【0051】
第1実施形態においてアスペクト比とは、正極端子26及び負極端子36が延出するx方向における積層体40の長さL1と、正極端子26及び負極端子36が延出するx方向と直交するy方向における積層体40の長さの比であり、L1/L2で表される。図3では、積層体40の短軸方向に沿った側面に正極端子26及び負極端子36を接続しているが、長軸方向に沿った側面に接続されていてもよい。」
「【0058】
一方で、積層体40のアスペクト比は、上記条件を満たす一点に限られる訳ではなく、上記条件を満たす位置からのある程度のずれは許容される。積層体40のアスペクト比は、極小値Eminをとるアスペクト比Aminに対して0.6倍以上2.8倍以下の範囲内であることが好ましく、0.8倍以上1.7倍以下の範囲内であることがより好ましい。具体的な数値としては、アスペクト比L1/L2が2.5以上11.0以下であることが好ましく、3.0以上7.0以下であることがより好ましい。」
「【0091】
最後に、積層体40を外装体50に封入する。非水電解液は外装体50内に注入してもよいし、積層体40を非水電解液に含浸させてもよい。そして外装体50に熱等を加えて、ラミネートすることで封止して、非水電解液二次電池100を作製する。」
「【0093】
「実施例1」
実施例1では、図3に示すように、積層体の平面形状を矩形とし、正極端子及び負極端子を積層体の一方の側面にそれぞれ接続した場合に、アスペクト比を変更して過充電時の非水電解質二次電池の表面の最高温度の違いを測定した。
【0094】
(実施例1-1)
まず正極を作製した。正極はアルミニウム箔(厚み12μm、熱伝導率237.5W/mK)の上に正極活物質を塗工し、正極活物質層を作製した。正極活物質層は、90質量部のLiNi0.8Co0.15Al0.05O2(活物質)と、6質量部の炭素粉末(導電助剤)と、4質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF、バインダー)とを有する。」
「【0102】
【表1】
[図:0001436164000003.jpg]
」
「【図1】
[図:0001436164000004.jpg]
」
「【図2】
[図:0001436164000005.jpg]
」
「【図3】
[図:0001436164000006.jpg]
」
ここで、【0102】の表1によれば、甲第1号証に記載された「第1実施形態」における積層体40は、長辺の長さが57.64(実施例1-6)~117.73(実施例1-2)mmの範囲であることが読み取れる。
また、図1の非水電解液二次電池の断面模式図及び図2の非水電解液二次電池の積層体の斜視模式図から、非水電解液二次電池100は、長方形電池であるということができる。
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アによれば、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「積層体40と、外装体50とを備える非水電解液二次電池100であって、
積層体40は、外装体50に設けられた収容空間内に収容され(【0019】)、
外装体50は、金属箔を高分子膜で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムであり(【0042】)、
積層体40は、正極20と、負極30と、セパレータ10と、を有し、
セパレータ10は、正極20と負極30との間に配設されており(【0020】)、
正極20は、正極集電体22と、正極活物質層24と、正極端子26とを有し(【0021】)、
正極集電体22は、厚み12μmのアルミニウム箔であり(【0023】、【0094】)、
負極30は、負極集電体32と、負極活物質層34と、負極端子36とを有し(【0029】)、
アスペクト比を、正極端子26及び負極端子36が延出するx方向における積層体40の長さL1と、正極端子26及び負極端子36が延出するx方向と直交するy方向における積層体40の長さL2の比として、L1/L2で表すと(【0051】、図3)、
積層体40は、アスペクト比L1/L2が2.5以上11.0以下であり(【0058】)、
非水電解液二次電池100は長方形電池であり(図1、図2)、積層体40の長辺の長さが57.64~117.73mmである(表1)、
リチウムイオン二次電池である非水電解液二次電池100(【0002】)。」
(2)甲第3号証
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「[0086]
表1
[図:0001436164000007.jpg]
」
(3)甲第5号証
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
正極集電体上に正極活物質層が設けられた正極シートと、負極集電体上に負極活物質層が設けられた負極シートとが、セパレータを介して積層された膜電極接合体と、該膜電極接合体を内部に収容して封止するシート状の外装体とを備え、
前記膜電極接合体は、少なくとも、前記正極シートと前記セパレータとの間、あるいは、前記負極シートと前記セパレータとの間の何れか一方に、シート状の熱可塑性樹脂層が介挿されており、
前記膜電極接合体と前記外装体との層間の内、少なくとも、前記正極シートと前記外装体との間、あるいは、前記負極シートと前記外装体との間の何れか一方に、シート状の熱可塑性樹脂層が介挿されており、
前記熱可塑性樹脂層が、多孔質ポリオレフィンシート、ポリオレフィン系の不織布、織物又は編物、及びポリオレフィン系の粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種のイオン透過性を有する熱可塑性樹脂材料を含み、前記熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂は、カルボン酸に由来する極性基が導 入された樹脂であって、
前記外装体が、アルミニウムラミネート又はポリマーフィルムからなり、
電池全体を湾曲させて使用される
とを特徴とするシート積層型リチウムイオン二次電池。」
「【0023】
本実施形態において説明するシート積層型リチウムイオン二次電池1は、図1B及び図2に示すように、例えば、長尺のシート状に構成されている。また、シート積層型リチウムイオン二次電池1は、例えば、その長尺方向の寸法が50~2000mm程度、幅方向の寸法が30~500mm程度、厚みが1~10mm程度とされ、図1Bに示すように、平面視において細長形状とされたものである。」
「【図1B】
[図:0001436164000008.jpg]
」
「【図2】
[図:0001436164000009.jpg]
」
(4)甲第6号証
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
「【0014】
先ず、本発明が適用される電池の構成について、積層型リチウムイオン二次電池を例にして説明する。図1は積層型リチウムイオン二次電池を分解して示す図であり、図2は組み立て状態を示す図である。
・・・
【0016】
実施形態において説明する積層型リチウムイオン二次電池1は、全体形状がシート状であり、例えば長手方向の寸法が50~2000mm程度、幅方向の寸法が30~500mm程度、厚みが0.5~20mm程度である。なかでも、サイズが大きい電池に適用することで、本発明の効果が顕著なものとなる。サイズが大きい電池としては、例えば長手方向の寸法が1200~2000mm程度、幅方向の寸法が60~500mm程度、厚みが1~15mm程度の大きさの電池を例示することができる。」
「【0032】
外装材20であるフィルム材21,22としては、例えばアルミニウム箔の両面に電気絶縁層が積層されたアルミラミネートフィルム等が用いられる。フィルム材の少なくとも片面(互いの対向面)は、熱封止可あるいは感圧封止が可能なラミネート材層を有する。熱封止が可能なラミネート材としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなるホットメルト樹脂などが挙げられる。感圧封止が可能なラミネート材としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等からなる粘着材や、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂系等の接着材等が挙げられる。」
「【図2】
[図:0001436164000010.jpg]
」
(5)甲第7号証
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
蓄電素子の一例として、例えば特許文献1で提案されているように、正極と負極とを交互に積層してなる積層型電池が広く普及している。積層型電池の一例として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。リチウムイオン二次電池は、他の形式の積層型電池と比較して大容量であることを特徴の一つとしている。このような特徴を有するリチウムイオン二次電池は、今般、車載用途や定置住宅用途等の種々の用途での更なる普及を期待されている。」
「【0034】
図3に示されているように、第1外装材3は、第1金属層3a及び第1金属層3aに積層された第1絶縁層3bを含んでいる。同様に、第2外装材4は、第2金属層4a及び第2金属層4aに積層された第2絶縁層4bを含んでいる。第1絶縁層3bと第2絶縁層4bとが向かい合うように、第1外装材3及び第2外装材4は設けられている。また、第1外装材3は、第1金属層3aの表面、すなわち第1金属層3aの第1絶縁層3bが積層された面とは逆側の面に設けられた、絶縁性を有する第1樹脂層3cをさらに含んでおり、第2外装材4は、第2金属層4aの表面、すなわち第2金属層4aの第2絶縁層4bが積層された面とは逆側の面に設けられた、絶縁性を有する第2樹脂層4cをさらに含んでいる。」
「【0038】
図4に示された非限定的な例において、正極10X及び負極20Yは、長方形形状の外輪郭を有している板状の電極である。第1方向d1に非平行な第2方向d2が、正極10X及び負極20Yの長手方向であり、第1方向d1及び第2方向d2の両方に非平行な第3方向d3が、正極10X及び負極20Yの短手方向(幅方向)である。図4に示されているように、正極10X及び負極20Yは、第2方向d2にずらして配置されている。より具体的には、複数の正極10Xは、第2方向d2における一側に寄って配置され、複数の負極20Yは、第2方向d2における他側に寄って配置されている。図4に示すように、正極10X及び負極20Yは、第2方向d2における中央において、第1方向d1に重なり合っている。また、図4に示されているように、負極20Y(第2電極20)の第3方向d3(幅方向)に沿った長さは、正極10X(第1電極10)の第3方向d3に沿った長さよりも長くなっている。図示された例では、負極20Yは、正極10Xより、第3方向d3の一側及び他側に延び出ている。正極10X及び負極20Yの厚さ、すなわち第1方向d1の長さは、例えば80μm以上200μm以下であり、長手方向、すなわち第2方向d2に沿った長さは、例えば200mm以上950mm以下であり、短手方向、すなわち第3方向d3に沿った長さ(幅)は、例えば70mm以上350mm以下である。」
「【図4】
[図:0001436164000011.jpg]
」
(6)周知例1
「【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池は、エネルギー密度が高い、自己放電が小さい、長期信頼性に優れる等の利点により、ノート型パソコンや携帯電話などの電池としてすでに実用化されている。しかし、近年では電子機器の高機能化や電気自動車への利用が進み、よりエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池の開発が求められている。」
「【0015】
本発明の一態様によれば、正極および負極を含む電池要素と、
前記電池要素を封止する第一室を形成する内装体と、
前記第一室の少なくとも一部を包囲する第二室を形成するように前記内装体の少なくとも一部を覆う外装体と、
前記正極および負極に電気的に接続されて前記外装体の外部へ引き出される一対の端子と、を有し、
前記一対の端子のうち少なくとも一方の端子は、前記第二室内で電気的に接続されるように配置された第1端子および第2端子を有し、
前記第一室または前記第二室に、所定の温度以上または所定の電圧以上でガスを発生するガス発生材が封入されている電池が提供される。」
「【0021】
電池要素10は、正極、負極、セパレータおよび電解液を有し、第一室13a内に封止される。内装体13は、可撓性を有しており、好ましくは溶着可能なラミネートフィルムから形成されており、熱溶着または超音波溶着などによって外周部を接合することにより、電池要素10を封止する第一室13aを形成する。外装体14も内装体13と同様、可撓性を有しており、溶着可能なラミネートフィルムから形成することができ、熱溶着または超音波溶着などによって外周部を接合することにより、内装体13を封止する第二室14aを形成する。言い換えると、電池要素10は、内装体13で形成される第一室13aおよび外装体14で形成される第二室14aの二重の室の中に封入されている。外装体14は内装体13を包囲しており、したがって、第二室14aは第一室13aを包囲している。」
上記記載によれば、周知例1には次の事項が記載されている。
「正極および負極を含む電池要素を封止するラミネートフィルムから形成された内装体と、内装体を覆う外装体とを有するリチウムイオン電池。」
(7)周知例2
「【0002】
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられるリチウム電池等の二次電池の需要が増加している。
使用される用途が広がるに伴い、二次電池の更なる安全性の向上及び高性能化が要求されている。」
「【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る硫化物系二次電池を示す断面図である。
図1に示すように、硫化物系二次電池1は、電池セル10と、電池セル10を覆う外装材30と、電池セル10と外装材30との間に設けられる硫化水素ガスの無毒化物質31と、を備えて構成されている。
電池セル10は、負極12と、正極13と、負極12及び正極13間に挟持された固体電解質14と、リードフレーム(電極端子部分)15,16と、内装材20を備えて構成されている。リードフレーム15,16は、それぞれ一端が集電体(図示せず)を介して負極12及び正極13に連結し、他端が外装材30の外部に延びている。内装材20は、負極12、正極13及び固体電解質14を包んでいる。
内装材20及び外装材30は、その端部が、例えば、熱融着性の封止材を介して熱圧着されて、封止されている。
尚、外装材30と内装材20の間に支柱を設けたりして補強してよい。」
「【0018】
尚、図1及び図2に示す実施形態では、内装材20の封止部を含んで全体を硫化水素無毒化層で覆い、その外側に外装材30を設けているが、図3のように固体電解質14や電極12,13部分の外側のみを硫化水無毒化層31で覆ってもよい。用途によっては、図4のように片側のみを覆う態様も採用できる。」
「【0023】
本発明に使用される外装材、内装材として、防湿性シートを使用できる。」
「【0027】
本発明の硫化物系二次電池で使用するリチウムイオン伝導性固体電解質を構成する物質は、硫化物あるいは硫化物が配合された物質であれば特に限定されず、有機化合物、無機化合物、あるいは有機・無機両化合物からなる材料を用いることができ、リチウムイオン電池分野で公知のものが使用できる。」
上記記載によれば、周知例2には次の事項が記載されている。
「負極12、正極13及び固体電解質14を包んでおり、端部が封止されている防湿性シートの内装材20と、その外側の外装材30を有するリチウムイオン電池。」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。
(ア)甲1発明の「外装体50」、「積層体40」、「正極20」、「負極30」、「セパレータ10」、「正極集電体22」、「正極活物質層24」及び「リチウムイオン二次電池である非水電解液二次電池100」は、それぞれ、本件発明1の「ケース」、「電極体」、「正極シート」、「負極シート」、「セパレータ」、「正極集電体」、「正極材料層」及び「リチウムイオン電池」に相当する。
また、本件発明1では、「正極集電体を有効部材として定義」しているから、甲1発明の「正極集電体22」は、本件発明1の「有効部材」にも相当する。
(イ)甲1発明の「金属箔を高分子膜で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムであ」る「外装体50」と本件発明1の「金属のケース」とは、「ケース」である点で共通する。
(ウ)甲1発明の「外装体50に設けられた収容空間内に収容され」た「積層体40」は、本件発明1の「前記ケース内に封止された電極体」に相当する。
(エ)甲1発明の「正極20と負極30との間に配設され」た「セパレータ10」は、本件発明1の「前記正極シートと前記負極シートとの間に位置するセパレータ」に相当する。
(オ)甲1発明の「正極20は、正極集電体22と、正極活物質層24」「とを有」することは、本件発明1の「前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極材料層とを含」むことに相当する。
(カ)甲第1号証には、アルミニウム箔である正極集電体22の密度ρ、比熱容量Cpについて記載されていないが、アルミニウムの密度は2700kg/m3、比熱容量は900J・kg-1・K-1程度であることは技術常識であるから(甲第3号証(【0086】、表1)参照)、甲1発明の「正極集電体22」についても、同程度であるといえる。
また、甲1発明は「正極集電体22」の厚みが12μmで、アスペクト比L1/L2が2.5以上11.0以下である。そして、甲1発明の長さL1と、L2は、本件発明1における正極集電体の第1方向(電流の引き出し方向と平行)の寸法Lと、第2方向の寸法Wにそれぞれ相当する長さである。
そうすると、甲1発明は、d2=12μm、ρ=2700kg/m3、Cp=900J・kg-1・K-1、L/w=2.5~11.0であり、これらの数値をもとに【数1】のAの値を計算すると、おおよそ98~433である。
したがって、甲1発明の「正極集電体22」は、本件発明1の「正極集電体を有効部材として定義し、前記有効部材は、以下の条件を満たし、
【数1】
[図:0001436164000012.jpg]
ここで、Lは、前記有効部材の第1方向での寸法であり、Lの単位がmであり、Wは、前記有効部材の第2方向での寸法であり、Wの単位がmであり、d2は、前記有効部材の厚さであり、d2の単位がmであり、ρは、前記有効部材の密度であり、ρの単位がkg/m3であり、Cpは、前記有効部材の比熱容量であり、Cpの単位がJ/(Kg・℃)であり、前記第1方向は、前記有効部材における電流の引き出し方向と平行であり、前記第2方向は、前記第1方向と交差する」ことに含まれる。
(キ)甲1発明の「正極集電体22は、厚み12μm」であることは、本件発明1の「前記正極集電体の厚さd2の値の範囲が6μm~15μmの間にあるという条件」を満たす。
(ク)甲1発明の「正極集電体22は、厚み12μmのアルミニウム箔であり」、アルミニウムの比熱容量は900J・kg-1・K-1程度であるから(甲第3号証(【0086】、表1)参照)、甲1発明の「正極集電体22」は、本件発明1の「前記正極集電体の比熱容量Cpの値の範囲が800J・kg-1・K-1~900J・kg-1・K-1の間にあるという条件」を満たす。
(ケ)甲1発明の「積層体40は、アスペクト比L1/L2が2.5以上11.0以下であ」ることは、本件発明1の「前記正極集電体の第1方向での寸法Lと前記正極集電体の第2方向での寸法Wとの比L/wの値の範囲は、2~30の間にあるという条件」を満たす。
(コ)甲1発明の「非水電解液二次電池100は長方形電池であ」ることは、本件発明1の「前記リチウムイオン電池が長方形電池であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「ケースと、前記ケース内に封止された電極体とを含み、
前記電極体は、正極シートと、負極シートと、前記正極シートと前記負極シートとの間に位置するセパレータとを含み、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体に担持された正極材料層とを含み、正極集電体を有効部材として定義し、前記有効部材は、以下の条件を満たし、
【数1】
[図:0001436164000013.jpg]
ここで、Lは、前記有効部材の第1方向での寸法であり、Lの単位がmであり、Wは、前記有効部材の第2方向での寸法であり、Wの単位がmであり、d2は、前記有効部材の厚さであり、d2の単位がmであり、ρは、前記有効部材の密度であり、ρの単位がkg/m3であり、Cpは、前記有効部材の比熱容量であり、Cpの単位がJ/(Kg・℃)であり、前記第1方向は、前記有効部材における電流の引き出し方向と平行であり、前記第2方向は、前記第1方向と交差する、
前記正極集電体は、
前記正極集電体の厚さd2の値の範囲が6μm~15μmの間にあるという条件と、
前記正極集電体の比熱容量Cpの値の範囲が800J・kg-1・K-1~900J・kg-1・K-1の間にあるという条件と、
前記正極集電体の第1方向での寸法Lと前記正極集電体の第2方向での寸法Wとの比L/wの値の範囲は、2~30の間にあるという条件と
のうちの少なくとも1つを満たし、
前記リチウムイオン電池が長方形電池である、リチウムイオン電池。」
(相違点)
ケースについて、本件発明1は「金属のケース」であり、「前記ケースの長さが500mm~2500mmである」のに対して、甲1発明の「外装体50」は「金属ラミネートフィルム」であり、「外装体50」の長さが「500mm~2500mm」であるとは特定されていない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
甲1発明は「リチウムイオン二次電池である非水電解液二次電池100」であるところ、上記2(1)のとおり、甲第1号証の【0002】には、甲1発明の背景技術として、「リチウムイオン二次電池は、・・・軽量、高容量であり、携帯電子機器用の電源として広く用いられている」ことが記載されている。
そうすると、甲1発明の「外装体50」について、「金属ラミネートフィルム」から金属のケースに変更すると、軽量ではなくなるから、甲1発明において、そのような変更は想定されておらず、また、携帯電子機器用の電源として用いられるのであるから、長さが500mm~2500mmとすることも想定し得ないことである。
そして、上記2(3)~(5)のとおり、甲第5号証には、外装体がアルミニウムラミネート又はポリマーフィルムであり、シート積層型リチウムイオン二次電池の長尺方向の寸法が50~2000mm程度であること(【請求項1】、【0023】)、甲第6号証には、外装材20がアルミニウム箔の両面に電気絶縁層が積層されたアルミラミネートフィルムであり、積層型リチウムイオン二次電池の長手方向の寸法が1200~2000mm程度であること(【0032】、【0016】)、甲第7号証には、第1外装材3は、第1金属層3a及び第1金属層3aに積層された第1絶縁層3bを含んでおり、車載用途のリチウムイオン電池の長手方向の長さが200mm以上950mm以下であること(【0034】、【0002】、【0038】)が記載されているが、甲第5号証~甲第7号証には、リチウムイオン電池において、「金属のケース」であり、「前記ケースの長さが500mm~2500mmである」ことは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第5号証~甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(2)本件発明2~7、9、11~13について
本件発明2~7、9、11~13は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加して限定したものであるから、上記(1)の本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、及び甲第5号証~甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)本件発明10について
周知例1及び周知例2にも、上記相違点の構成である「金属のケース」であり、「前記ケースの長さが500mm~2500mmである」ことは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明、甲第5号証~甲第7号証、周知例1及び周知例2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(4)小括
以上のとおりであるから、当該取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由により、本件発明1~7、9~13に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 訂正前の請求項1~13に係る特許に対する特許異議申立理由のうち、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由1
請求項1~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2
請求項1~13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3)申立理由3
請求項1~4、6~13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないため、請求項1~4、6~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
証拠方法
甲第1号証:特開2018-174032号公報
甲第2号証:特表2013-524418号公報
甲第3号証:国際公開第2012/014350号
甲第4号証:特開2009-64767号公報
2 各号証の記載事項、引用発明
(1)甲第1号証
甲第1号証の記載事項、甲1発明は、上記第4の2(1)に記載したとおりである。
(2)甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【0125】
シミュレーションモデルの形状をここで説明する。銅(Cu)又はアルミニウム(Al)のダイバーターフィルムはそれぞれ20μmの厚みを有し、その内側に隣接して、電解質を染み込ませた厚さ60μmのそれぞれの電極がある。20μmの厚みを有し、同様に電解質を染み込ませたセパレーターが中央に配置され、1つのモデルとして、セパレーターは、その周縁に成長した5μmの半径を有するリチウム金属の円柱形の樹枝状結晶を有する。」
「【0128】
【表7】
[図:0001436164000014.jpg]
」
(3)甲第3号証
甲第3号証の記載事項は、上記第4の2(2)に記載したとおりである。
(4)甲第4号証
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
「【0028】
正極集電体11および負極集電体14の具体的な厚さについて特に制限はない。正極集電体11の厚さは、好ましくは1~26μmであり、より好ましくは1~20μmである。また、負極集電体14の厚さは、好ましくは1~9μmである。さらに、本発明の作用効果を十分に得るという観点からは、集電体がアルミニウムから構成される場合の厚さは好ましくは26μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下であり、さらにより好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは6μm以下であり、最も好ましくは4μm以下である。集電体がアルミニウムから構成される場合、当該集電体は正極集電体11であることが好ましい。また、集電体が銅から構成される場合の厚さは好ましくは9μm以下であり、より好ましくは6μm以下であり、さらに好ましくは4μm以下であり、特に好ましくは3μm以下であり、最も好ましくは2μm以下である。集電体が銅から構成される場合、当該集電体は負極集電体14であることが好ましい。」
3 当審の判断
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
ア 本件発明1
上記第4の3(1)アのとおり、本件発明1と甲1発明は、相違点を有しているから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。
イ 本件発明2~7、9、10
本件発明1を引用する本件発明2~7、9、10は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加して限定したものであるから、上記アの本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項)について
ア 本件発明1
特許異議申立人が提出する甲第2号証及び甲第4号証にも、相違点の構成である「金属のケース」であり、「前記ケースの長さが500mm~2500mmである」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、上記第4の3(1)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たことではない。
イ 本件発明2~7、9~13
本件発明1を引用する本件発明2~7、9~13は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加して限定したものであるから、上記アの本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証~甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得たことではない。
(3)申立理由3(特許法第36条第6項第1号)について
ア 判断
本件発明の課題は、発明の詳細な説明の【0003】の「本願は、関連技術における技術的課題の1つを少なくともある程度解決しようとする。このため、本願の1つの目的は、熱暴走の問題を効果的に解決し、使用安全性を向上させることができるリチウムイオン電池を提供することである。」との記載からすると、熱暴走の問題を効果的に解決し、使用安全性を向上させることができるリチウムイオン電池を提供することである。
そして、発明の詳細な説明の【0010】には「・・・本願の実施例によれば、該リチウムイオン電池は、ケースと、上記ケース内に封止された電極体とを含み、上記電極体は、正極シートと、負極シートと、上記正極シートと上記負極シートとの間に位置するセパレータとを含み、上記正極シートは、正極集電体と、上記正極集電体に担持された正極材料層とを含み、正極集電体、正極材料層、負極シート及びセパレータのうちの融点が最も低いものを有効部材として定義し、上記有効部材は、以下の条件を満たし、
【数3】(当審注:本件発明1の【数1】と同じである。なお、具体的な数式は省略する。以下同じ。)
ここで、Lは、上記有効部材の第1方向での寸法であり、Lの単位がmであり、Wは、上記有効部材の第2方向での寸法であり、Wの単位がmであり、d2は、上記有効部材の厚さであり、d2の単位がmであり、ρは、上記有効部材の密度であり、ρの単位がkg/m3であり、Cpは、上記有効部材の比熱容量であり、Cpの単位がJ/(Kg・℃)であり、上記第1方向は、上記有効部材における電流の引き出し方向と平行であり、上記第2方向は、上記第1方向と交差する。該リチウムイオン電池において、電極体部材の異なる方向での寸法などのパラメータを合理的に最適化し設計することにより、電池の安全性を大幅に向上させ、上記条件を満たすリチウムイオン電池は、電池の熱暴走又は熱拡散の発生確率を効果的に低下させるとともに、何らかの追加の部材がなく、電池システムの設計を変更せず、余計なコストを追加しない。また、本願のリチウムイオン電池において、A値が大きいほど、電池の安全性が相対的に低下し、850を超えると、電池内部構造の設計により、生成された熱をタイムリーに排出することができず、電池の安全性が低下し、A値が小さいほど、電池のスペースの浪費が深刻であり、電池形状が電気自動車内の電池の配置に不利である。」と記載されている。
また、発明の詳細な説明には、「正極集電体」を有効部材とし、上記【数1】のAの値が、3より大きく850より小さい実施例1~7における、釘刺実験の結果、「発火せず、爆発せず、釘刺された電池は、隣接する電池に影響を与えなかった」ことが示されている(【0051】、【表1】)。
そうすると、発明の詳細な説明には、正極集電体を有効部材として定義し、上記有効部材は、【数1】の条件を満たすことにより、上記課題を解決できることが記載されている。
したがって、本件発明1は、上記課題を解決するための手段が反映されているといえる。
イ 特許異議申立人の主張について
(ア) これに対し、特許異議申立人は、以下のとおり主張する。
本件発明の課題は、電池の安全性を大幅に向上させ、リチウムイオン電池の熱暴走又は熱拡散の発生確率を効果的に低下させることである。
そして、請求項1には、正極集電体について「厚さd2の値の範囲が6μm~15μmの間にあるという条件」、「比熱容量Cpの値の範囲が800J・kg-1・K-1~900J・kg-1・K-1の間にあるという条件」、「第1方向での寸法Lと前記正極集電体の第2方向での寸法Wとの比L/wの値の範囲は、2~30の間にあるという条件」のうちの「少なくとも1つを満たす」ことを発明特定事項とすることが記載されている。
しかしながら、上記条件の少なくとも1つを満たすことを技術的特徴とするのであれば、他の範囲が大きく外れる場合(例えば、厚みが非常に小さいときなど)においてリチウムイオン電池として期待される性能を発揮しないことは明らかであることから、当該請求項で特定する条件の少なくとも1つを満たすことのみでは、発明の課題を解決することは明らかであるとはいえない。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであることは明らかであり、本件特許の特許請求の範囲1及びこれを引用する2~4、6~13の記載はサポート要件を満たしているとはいえない。(特許異議申立書第20、21頁)
(イ) 特許異議申立人は、本件発明1で特定する条件の少なくとも1つを満たすことのみでは、発明の課題を解決することは明らかであるとはいえない旨主張するが、上記アのとおり、本件発明1は、上記【数1】の条件を満たすことにより、発明の課題を解決することができるのであって「厚さd2の値の範囲が6μm~15μmの間にあるという条件」、「比熱容量Cpの値の範囲が800J・kg-1・K-1~900J・kg-1・K-1の間にあるという条件」、「第1方向での寸法Lと前記正極集電体の第2方向での寸法Wとの比L/wの値の範囲は、2~30の間にあるという条件」のすべての条件を満たすことは、課題を解決するために必須であるとはいえない(なお、特許異議申立人が主張するように、厚みが非常に小さく「厚さd2」の条件を満たさないものがあったとしても、技術常識の範囲で他の条件を調整することによって、「正極集電体」が「【数1】」の条件を満たしていれば、発明の課題を解決できるといえる。)。
そうすると、本件発明1~4、6~13は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(3)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立理由1~3によっては、本件発明1~7、9~13に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項1~7、9~13に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に請求項1~7、9~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項8に係る特許は、上記第2の1(3)のとおり、本件訂正によって削除されたから、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700159