特許異議申立
2025-700137
最適化問題求解装置及び最適化問題求解方法
- 審判番号
- 2025-700137
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-167709
- 登録番号
- 7526155
- 請求日
- 2025年01月30日
- 審決日
- 2025年05月02日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】JFEスチール株式会社
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】川原 敬祐
- 【権利者代理人】鈴木 俊樹
- 【権利者】国立大学法人東北大学
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】川原 敬祐
- 【権利者代理人】鈴木 俊樹
- 【異議申立人】国分 信宏
- 審判長/審判官
- 審判長 林 毅
- 審判官 松崎 孝大
- 審判官 脇岡 剛
- 分類
- P1651.113-Y (G06N) / P1651.121-Y (G06N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7526155号発明「最適化問題求解装置及び最適化問題求解方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7526155号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第7526155号の請求項1ないし5に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和3年10月12日に出願されたものであって、その後の手続の概要は、次のとおりである。
令和6年 6月28日付け:特許査定
同年 7月23日 :特許権の設定登録
同年 7月31日 :特許掲載公報の発行
令和7年 1月30日 :特許異議の申立て
(特許異議申立人 国分信宏による
特許異議申立書の提出)
第2.特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法について
1.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人による特許異議申立ての理由の概要は以下のとおりと認められる。
「本件の請求項1に係る特許発明及び請求項5に係る特許発明は、甲第1号証の発明に記載された発明に該当するから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。また、本件の請求項1に係る特許発明及び請求項5に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易になし得る発明、並びに、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び甲第3号証に記載の発明から当業者が容易になし得る発明、の少なくとも何れか1つに該当するから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
また、本件の請求項2に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載の発明から当業者が容易になし得る発明、並びに、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載の発明、及び甲第4号証に記載された発明から当業者が容易になし得る発明、の少なくとも何れか1つに該当するから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
また、本件の請求項3に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第5号証に記載の発明から当業者が容易になし得る発明、並びに、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載の発明、及び甲第5号証に記載された発明から当業者が容易になし得る発明、の少なくとも何れか1つに該当するから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
また、本件の請求項4に係る特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載の発明から当業者が容易になし得る発明、並びに、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載の発明、及び甲第6号証に記載された発明から当業者が容易になし得る発明、の少なくとも何れか1つに該当するから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。」(特許異議申立書第50頁ないし第51頁)
2.証拠方法
甲第1号証:特開2020-107277号公報
甲第2号証:久保幹雄、外3名、“あたらしい数理最適化 Python言語とGurobiで解く”、初版、株式会社 近代科学社、平成25年3月31日、p.55-65
甲第3号証:梅谷 俊治、今堀 慎治、“切出し・詰込み問題とその応用-(1)1次元資材切出し問題-”、オペレーションズ・リサーチ = Communications of the Operations Research Society of Japan : 経営の科学、2005、第50巻、第4号、社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会、平成17年4月、p.270-276
甲第4号証:特開2020-107211号公報
甲第5号証:特開2020-204928号公報
甲第6号証:特開2020-181576号公報
第3.本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(便宜上、特許異議申立人が特許異議申立書第9頁ないし第10頁に示した分説に従って示す。)。
「【請求項1】
A. 複数の製品の組み合わせを1つの製造単位として、1つ以上の前記製造単位について最適化する組み合わせ最適化問題を解く最適化問題求解装置であって、
B. 前記組み合わせとなり得る候補パターンを列挙し、列挙した前記候補パターンのそれぞれについて評価値を定めるモデル構築部と、
C. 前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数の値が最大又は最小となるように前記候補パターンを選択し、選択済みパターンに追加する演算部と、
D. 前記評価関数が基準を満たす場合に、前記選択済みパターンを提示する結果提示部と、を備え、
E. 前記評価関数は、前記選択済みパターンに含まれる前記候補パターンの前記評価値の合算を含んで構成され、
F. 前記選択済みパターンは、同じ前記候補パターンを複数含むことができ、
G. 前記モデル構築部は、前記評価関数が基準を満たさない場合に、列挙する前記候補パターンを追加する、最適化問題求解装置。
【請求項2】
H. 前記モデル構築部は、前記評価関数が基準を満たさない場合に、直前に追加した前記候補パターンのうち前記演算部によって選択されなかった前記候補パターンを削除してから、列挙する前記候補パターンを追加する、請求項1に記載の最適化問題求解装置。
【請求項3】
I. 前記評価関数は、前記制約条件に関するペナルティ項を含み、
J. 前記ペナルティ項は、スラック変数を含む、請求項1又は2に記載の最適化問題求解装置。
【請求項4】
K. 前記評価関数が含むパラメータを更新するパラメータ更新部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の最適化問題求解装置。
【請求項5】
L. 複数の製品の組み合わせを1つの製造単位として、1つ以上の前記製造単位について最適化する組み合わせ最適化問題を、コンピュータによって解く最適化問題求解方法であって、
M. 前記組み合わせとなり得る候補パターンを列挙し、列挙した前記候補パターンのそれぞれについて評価値を定めることと、
N. 前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数の値が最大又は最小となるように前記候補パターンを選択し、選択済みパターンに追加することと、
O. 前記評価関数が基準を満たす場合に、前記選択済みパターンを提示することと、
P. 前記評価関数が基準を満たさない場合に、列挙する前記候補パターンを追加することと、を含み、
Q. 前記評価関数は、前記選択済みパターンに含まれる前記候補パターンの前記評価値の合算を含んで構成され、
R. 前記選択済みパターンは、同じ前記候補パターンを複数含むことができる、最適化問題求解方法。」
第4.当審の判断
1.甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証の記載によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。(以下、甲第1号証ないし甲第6号証を、それぞれ「甲1」ないし「甲6」という。)
「複数の製品を、所定のロット成立制約を満たすようにロットの単位で纏めて、生産又は処理するための計画を作成する問題を集合分割問題とし、該集合分割問題を、コンピュータにより列生成法を用いて解くことにより計画を作成する計画作成方法であって、(段落0013、0018)
製品情報を取得する取得工程、列生成工程、列追加工程によって、実現可能ロットの集合(行列Ai,j)を生成し(段落0013)、
最適解導出工程によって、前記実現可能ロットの集合に基づいて、制約式を満足する範囲で、目的関数の値を最小とするように実現可能ロット群の最適解を導出し(段落0013、0038ないし0041、0114、0115)、
前記目的関数は、実現可能ロットの製造コストに基づくコストCjの合算を含んで構成される(段落0040ないし0042、0114、0115)
方法。」
(2)甲第2号証
甲2の記載によれば、甲2には、次の事項が記載されていると認められる。
「すべての可能な切断パターンから、注文を注文数以上切り出し、かつ使用した原紙数を最小にするように選択する問題(切断問題)に列生成法を適用するに際し、どの切断パターンを何回使うかを求めること。」(第60頁ないし第63頁)
(3)甲第3号証
甲3の記載によれば、甲3には、次の事項が記載されていると認められる。
「なるべく少ない本数の母材(板材)を用いて注文をすべて満たす切出し計画を求める問題を、列生成法を用いて解く際に、各切出しパターンの切り出し回数を求めること。」(第270頁ないし第271頁)
(4)甲第4号証
甲4の記載によれば、甲4には、次の事項が記載されていると認められる。
「列挙された列に対する暫定双対解を導出し、導出した暫定双対解を用いて導出した列主双対ギャップが「0」以下にならない列を削除すること。」(段落0029、0051、0054、0059)
(5)甲第5号証
甲5の記載によれば、甲5には、次の事項が記載されていると認められる。
「目的関数は、制約に関するペナルティ項を含み、前記ペナルティ項は、スラック変数を含むこと。」(段落0147ないし0154)
(6)甲第6号証
甲6の記載によれば、甲6には、次の事項が記載されていると認められる。
「緩和した制約条件に対する違反量にラグランジュ乗数を乗じた項を目的関数に含め、ラグランジュ乗数を更新すること。」(段落0025ないし0026、0031ないし0034、0060ないし0065、0078ないし0079)
2.本件特許発明5について
(1)対比
ア.甲1発明の「複数の製品を、所定のロット成立制約を満たすようにロットの単位で纏めて、生産又は処理するための計画を作成する問題を集合分割問題とし、該集合分割問題を、コンピュータにより列生成法を用いて解くことにより計画を作成する計画作成方法」は、本件特許出願時の技術常識によると、「複数の製品の組み合わせを1つのトロットとして、1つ以上のロットについて最適化する組み合わせ最適化問題を、コンピュータによって解く最適化問題求解方法」であると解するのが相当である。
そして、甲1発明の「複数の製品を、所定のロット成立制約を満たすようにロットの単位で纏め」ることは、「複数の製品の組み合わせを1つの製造単位」とすることであるといえることからすると、甲1発明の「複数の製品を、所定のロット成立制約を満たすようにロットの単位で纏めて、生産又は処理するための計画を作成する問題を集合分割問題とし、該集合分割問題を、コンピュータにより列生成法を用いて解くことにより計画を作成する計画作成方法」は、本件特許発明5の「複数の製品の組み合わせを1つの製造単位として、1つ以上の前記製造単位について最適化する組み合わせ最適化問題を、コンピュータによって解く最適化問題求解方法」に相当する。
イ.甲1発明において「実現可能ロット」は、最適解の候補となり得る製品の組み合わせパターン、すなわち、「最適化する組み合わせ」の「候補パターン」であるといえる。そして、甲1発明の「実現可能ロットの集合」は、本件特許発明5の「前記組み合わせとなり得る候補パターンを列挙」したものに相当する。
ウ.甲1発明の「実現可能ロットの製造コストに基づくコストCj」は、実現可能ロットのそれぞれについて算出される値であることからすると、甲1発明は、実現可能ロットの集合のそれぞれのロットについて、製造コストに基づくコストCjを算出する構成を有しているといえる。
エ.本件特許明細書の段落0022の「評価値は、その候補パターンにおける複数の製品の組み合わせの製造に対する好ましさ(又は不適切さ)を数値で示すものである。評価値は、例えば生産に要する時間、歩留り及び加工のし易さなどに基づいて算出されてよい。」との記載によると、本件特許発明5の「前記候補パターンのそれぞれについて評価値」の技術的意義は、「前記候補パターン」の製造に係る「コスト」を包含するものといえることからすると、甲1発明の「実現可能ロットの製造コストに基づくコストCj」は、本件特許発明5の「評価値」に相当する。
オ.上記ウ、エを踏まえると、上記ウで説示した甲1発明の「実現可能ロットの集合のそれぞれのロットについて、製造コストに基づくコストCjを算出する構成」は、本件特許発明5の「前記組み合わせとなり得る候補パターンを列挙し、列挙した前記候補パターンのそれぞれについて評価値を定めること」に相当するといえる。
カ.本件特許明細書の段落0023ないし0026、0034ないし0039の記載、及び、本件特許出願時の技術常識によると、本件特許発明5の「評価関数」は、候補パターンの組み合わせを「評価値」を用いて評価し、最適化する組み合わせを選択するためのものであると解される。そして、甲1発明の「目的関数」は、実現可能ロット群の最適解を選択するもの、すなわち、実現可能ロットの集合を評価して、最適化する当該実現可能ロット群を選択するためのものであるといえる。そうすると、甲1発明の「目的関数」は、本件特許発明5の「評価関数」に相当する。
キ.本件特許発明5の「前記選択済みパターン」は、「複数の製品の組み合わせを1つの製造単位として、1つ以上の前記製造単位について最適化する組み合わせ」を構成するパターンであると解されるところ、甲1発明の「実現可能ロット群の最適解」を構成する「実現可能ロット」は、「複数の製品の組み合わせを1つのロットとして、1つ以上の前記ロットについて最適化する組み合わせ」を構成するパターンといえるから、本件特許発明5の「選択済みパターン」に相当する。
ク.甲1発明の「制約式を満足する範囲」は、本件特許発明5の「組み合わせの制約条件」であるといえる。
ケ.上記カないしクによると、甲1発明の「前記実現可能ロットの集合に基づいて、制約式を満足する範囲で、目的関数の値を最小とするように実現可能ロット群の最適解を導出」することと、本件特許発明5の「前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数の値が最大又は最小となるように前記候補パターンを選択し、選択済みパターンに追加すること」とは、「前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数の値が最小となるような選択済みパターンを算出すること」で共通する。
コ.甲1発明の「実現可能ロット群の最適解を導出する」ことは、当該「実現可能ロット群の最適解」を提示するためのものと解されるから、甲1発明は、上記「実現可能ロット群の最適解」を提示することに係る構成を備えているといえる。そうすると、甲1発明の上記「実現可能ロット群の最適解」を提示することに係る構成と、本件特許発明5の「前記評価関数が基準を満たす場合に、前記選択済みパターンを提示すること」とは、「前記選択済みパターンを提示すること」で共通する。
サ.甲1発明の「前記目的関数は、実現可能ロットの製造コストに基づくコストCjの合算を含んで構成される」ことは、本件特許発明5の「前記評価関数は、前記選択済みパターンに含まれる前記候補パターンの前記評価値の合算を含んで構成」されることに相当する。
シ.以上のとおりであるから、本件特許発明5と甲1発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「複数の製品の組み合わせを1つの製造単位として、1つ以上の前記製造単位について最適化する組み合わせ最適化問題を、コンピュータによって解く最適化問題求解方法であって、
前記組み合わせとなり得る候補パターンを列挙し、列挙した前記候補パターンのそれぞれについて評価値を定めることと、
前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数の値が最小となるような選択済みパターンを算出することと、
前記選択済みパターンを提示することを含み、
前記評価関数は、前記選択済みパターンに含まれる前記候補パターンの前記評価値の合算を含んで構成される、
最適化問題求解方法。」
【相違点】
・相違点1
本件特許発明5は、「前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数を最小又は評価関数の値が最大又は最小となるような選択済みパターンを算出する」際に、「前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数を最小又は評価関数の値が最大又は最小となるような前記候補パターンを選択し、選択済みパターンに追加する」こと、及び、「前記評価関数が基準を満たさない場合に、列挙する前記候補パターンを追加すること」との構成を備えているのに対して、甲1発明では、当該構成を備えていない点。
・相違点2
本件特許発明5は、「前記選択済みパターンは、同じ前記候補パターンを複数含むことができる」のに対して、甲1発明は、当該事項が特定されていない点。
(2)相違点についての判断
相違点1について検討すると、相違点1に係る本件特許発明5の構成は、甲1ないし6のいずれにも記載がなく、本件特許出願時における技術常識とも認められない。
よって、上記相違点2について判断するまでもなく、本件特許発明5は、甲1に記載された発明及び甲2ないし6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明5についてのまとめ
上記のとおり、相違点1は実質的な相違点であるから、本件特許発明5は、甲1に記載された発明ではない。そして、本件特許発明5は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3.本件特許発明1について
本件特許発明1は、本件特許発明5を「最適化問題求解装置」の発明として特定したものであるから、本件特許発明5と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2ないし6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではない。そして、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1をすべて包含するものであって、相違点1に係る本件特許発明1の構成を備えるものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲2ないし6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5.特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立書における主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、次の主張をしている。
ア.「そして、「(ア-2-3) 構成B、Mについて」の項において前述したように、甲第1号証には、(8)式~(22)式の制約式を満足する範囲で(24)式の目的関数の値を最小にする新たな実現可能ロットaの最適解を導出し、その結果、(24)式の目的関数の最小値が(25)式(列追加要件)を満足する場合には、新たな実現可能ロットaを実現可能ロットjの集合NI(行列Ai,j)に追加することが開示されている。
よって、本件特許発明1、5の構成C、Nは、甲第1号証に開示されていることは明らか又は甲1発明に基づいて容易になし得たものである。」(特許異議申立書第23頁)
イ.「 以上の記載から、甲第1号証の段落0114に記載されている実現可能ロットj群の最適解は、「(ア-2-3) 構成B、Mについて」の項において前述した甲第1号証の段落0109、0133に記載の「列追加要件を満足しない」と判定された場合に導出され、且つ、「列追加要件を満足しない」と判定された時点((24)式が基準を満たす時点)の実現可能ロットjの集合NI(行列Ai,j)に含まれる実現可能ロットjから選択されるものである。したがって、甲第1号証においてコンピュータディスプレイに表示される各実現可能ロットjに含まれるスラブグループiを構成するスラブの情報は、(25)式(列追加要件)を満足しない場合に表示される情報であって、(25)式(列追加要件)を満足しない時点の実現可能ロットjの集合NI内の実現可能ロットjに含まれるスラブグループiを構成するスラブの情報であると言える。よって、甲第1号証には、(25)式(列追加要件)を満足しない場合に、その時点において実現可能ロットjの集合NIに含まれる実現可能ロットjを提示することが開示されている。
よって、本件特許発明1の構成D、Oは、甲第1号証に開示されていることは明らか又は甲1発明に基づいて容易になし得たものである。」(特許異議申立書第24頁)
(2)検討
上記(1)ア、イによると、特許異議申立人は、甲1の「実現可能ロットjの集合NI」を、本件特許発明1、5の「選択済みパターン」に相当するものと主張していると認められるところ、甲1の段落0103ないし0115によると、甲1において、「実現可能ロットjの集合NI」は、「集合分割問題構築部」、「線形緩和問題構築部」、「双対解導出部」、「列生成部」、「判定部」によって生成され、「最適解導出部」において「実現可能ロットj群の最適解を導出する」ための母集合(「列挙した前記候補パターン」)となるものであると解するのが相当であって、「最適解」(本件特許発明1、5の「前記組み合わせの制約条件が満たされ、かつ、評価関数の値が最大又は最小となるように前記候補パターンを選択」したもの)には該当しない。そうすると、甲1の上記「実現可能ロットjの集合NI」は、本件特許発明1、5における「列挙した前記候補パターン」に相当するものいえるものの、「選択済みパターン」に相当するものではない。
以上のとおりであるから、特許異議申立人による上記主張は認められない。
6.特許異議申立理由についてのまとめ
上記1ないし5で説示したとおりであるから、特許異議申立ての理由は採用できない。
第5.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700137