特許異議申立
2024-700831
学習支援システム及びサービス提供方法
- 審判番号
- 2024-700831
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-206194
- 登録番号
- 7444489
- 請求日
- 2024年09月03日
- 審決日
- 2025年06月20日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社フューチャーアイ
- 【異議申立人】今井 洋
- 審判長/審判官
- 審判長 林 毅
- 審判官 吉田 美彦
- 審判官 脇岡 剛
- 分類
- P1651.113-YAA(G06N) / P1651.121-YAA(G06N) / P1651.537-YAA(G06N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7444489号発明「学習支援システム及びサービス提供方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7444489号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
特許第7444489号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第7444489号の請求項1、2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年8月27日に出願した特願2014-172512号の一部を、
平成30年9月20日に新たな出願(特願2018-175586号)とし、
その一部を令和元年7月11日に新たな出願(特願2019-128912号)とし、
その一部を令和3年3月22日に新たな出願(特願2021-046733号)とし、
その一部を令和3年10月9日に新たな出願(特願2021-166539号)とし、
その一部を令和4年4月20日に新たな出願(特願2022-069379号)とし、
その一部を令和4年12月23日に新たな出願(特願2022-206194号)としたものであって、その後の手続の概要は、次のとおりである。
令和6年 2月 8日付け:特許査定
同年 2月27日 :特許権の設定登録
同年 3月 6日 :特許掲載公報の発行
同年 9月 3日 :特許異議の申立て
(特許異議申立人 今井 洋)
同年10月 3日 :上申書の提出(特許権者)
同年12月13日付け:取消理由通知
同年12月30日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
令和7年 4月 8日付け:訂正請求があった旨の通知
なお、令和7年4月8日付けの通知に対して、特許異議申立人からは、指定した期間内に何ら応答がなかった。
第2.訂正請求について
1.訂正の趣旨及び訂正の内容
令和6年12月30日提出の訂正請求書における訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7444489号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求める。」(訂正請求書第1頁)というものであって、その内容は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
「特許請求の範囲の【請求項1】における「前記復習事項抽出手段は、前記個別ユーザの復習時期を、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期に特定することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出し、」と記載されているのを、「前記復習事項抽出手段は、前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出し、」に訂正する。」(訂正請求書第1頁)
(2)訂正事項2
「特許請求の範囲の【請求項2】における「前記復習事項抽出ステップは、前記個別ユーザの復習時期を、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期に特定することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出し、」と記載されているのを、「前記復習事項抽出ステップは、前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出し、」に訂正する。」(訂正請求書第5頁)
2.訂正の適否
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的について
訂正事項1は、「反復時期」を特定するために用いられる「個別データ」について、「前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用する」として明確にするものであって、本件訂正前の「反復時期」について明確化したものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件設定登録時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)における段落0104の「ウェアラブルコンピュータ等のモバイル通信装置3は、S200により、ユーザからの復習要求があったか否かの判断を行なう。…中略… 完成していない場合には制御がS205へ移行するが、既に完成している場合には制御がS204に進み、一般的な暗記学習モデル Ti=T0・iに、T0=TKを代入して、反復復習の時期が近い学習事項をユーザDB12のアラウンドデータから抽出する。なお、上記TKとは、当該ユーザの初学習から忘れる直前までの期間(具体的には初学習から記憶保持率が70%になるまでの時間)のことである。」との記載によると、反復時期を特定するために用いられる「個別データ」(「TK」)として、「当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期」(「当該ユーザの初学習から忘れる直前までの期間(具体的には初学習から記憶保持率が70%になるまでの時間)」を使用することが記載されているといえる。
したがって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記ア及びイから、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内で明瞭でない記載を明瞭にするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2
上記(1)アないしウの説示をふまえると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものであると認められる。
(3)特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立事件においては、全請求項が特許異議の申立ての対象とされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
第3.本件特許発明
本件訂正の請求が認められたことにより、本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。(以下、「本件特許発明1、2」という。)
「【請求項1】
ユーザが繰り返し行う学習を人工知能を利用して支援する学習支援システムであって、
学習する複数のユーザのデータを収集する学習データ収集手段と、
前記学習データ収集手段により収集された複数ユーザ分のデータに基づいて機械学習を行うことにより生成された暗記学習に関する一般的モデルを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された一般的モデルと前記学習データ収集手段により収集されたユーザ1人分の個別データとに基づいて、当該個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期を特定し、該反復時期に基づいて反復すべき復習事項を抽出する復習事項抽出手段と、
前記個別ユーザが当該個別ユーザの前記復習事項を復習するためのサービスを提供するサービス提供手段と、を備え、
前記一般的モデルは、学習事項の記憶の定着のために反復して行う復習を効率化するために生成された複数のユーザに当てはまるモデルであり、
前記復習事項抽出手段は、前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出し、
前記個別ユーザにパーソナライズされた復習事項に従って当該個別ユーザが復習することにより、復習回数の増加に伴って次回の復習までの間隔が広がり、個別ユーザの復習の効率を最適化する、学習支援システム。
【請求項2】
ユーザが繰り返し行う学習を人工知能を利用して支援するサービスを提供するサービス提供方法であって、
学習する複数のユーザのデータを収集する学習データ収集ステップと、
前記学習データ収集ステップにより収集された複数ユーザ分のデータに基づいて機械学習を行うことにより生成された暗記学習に関する一般的モデルを記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップに記憶された一般的モデルと前記学習データ収集ステップにより収集されたユーザ1人分の個別データとに基づいて、当該個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期を特定し、該反復時期に基づいて反復すべき復習事項を抽出する復習事項抽出ステップと、
前記個別ユーザが当該個別ユーザの前記復習事項を復習するためのサービスを提供するサービス提供ステップと、を備え、
前記一般的モデルは、学習事項の記憶の定着のために反復して行う復習を効率化するために生成された複数のユーザに当てはまるモデルであり、
前記復習事項抽出ステップは、前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出し、
前記個別ユーザにパーソナライズされた復習事項に従って当該個別ユーザが復習することにより、復習回数の増加に伴って次回の復習までの間隔が広がり、個別ユーザの復習の効率を最適化する、サービス提供方法。」
第4.特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法について
1.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人による特許異議申立ての理由の概要は以下のとおりと認められる。(特許異議申立書第1頁、第8頁、第15頁)
(1)理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
(2)理由2(特許法第29条第2項)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
2.証拠方法
甲第1号証:特開2001-188462号公報
第5.令和6年12月13日付けの取消理由通知書で通知された取消理由の概要
令和6年12月13日付けの取消理由通知書で通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
「 ア.請求項1に係る発明の「前記個別ユーザの復習時期」と、「当該個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期」とは、同じものであるのか、あるいは、異なるものであるのか特定されておらず、また、本願明細書において、「反復時期」との語はそもそも記載がなく、上記「反復時期」及び上記「復習時期」の関係に関して規定されているとも認められない。また、上記「反復時期」と上記「復習時期」との関係は、本願出願時の技術常識を参酌しても明確であるとはいえない。
イ.仮に、上記「反復時期」と上記「復習時期」とが同じものである場合、「復習事項抽出手段」は、「前記記憶手段に記憶された一般的モデルと前記学習データ収集手段により収集されたユーザ1人分の個別データとに基づいて、当該個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期を特定し」、さらに、「当該個別ユーザ固有の忘却態様」に従って「前記個別ユーザの復習時期」を特定することにより、「復習事項」を抽出するものと解されるところ、「一般的モデル」と「個別データ」とに基づいて「反復時期」を特定し、その上で、「当該個別ユーザ固有の忘却態様」に従って「前記個別ユーザの復習時期」を特定することにより「復習事項」を抽出することは、本願明細書に対応する事項が記載されておらず、本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識を参酌してもその処理の内容が明確とはいえない。
ウ.したがって、請求項1の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であって、当該記載から発明を明確に把握することができない。そして、同様の理由により、請求項2の記載は不明確であって、当該記載から発明を明確に把握することができない。」(明確性)
第6.当審の判断
1.取消理由について
本件発明1について、本件訂正前の「前記個別ユーザの復習時期を、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期に特定する」との事項が、本件訂正により、「前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用する」と訂正されたことにより、本件特許発明1の「前記記憶手段に記憶された一般的モデルと前記学習データ収集手段により収集されたユーザ1人分の個別データとに基づいて、当該個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期を特定する」との記載における「当該個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期」は、「前記個別データとして当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用する」ものであると解されるものとなった。
そうすると、本件特許発明1の上記「反復時期」は、当該発明における他の構成要素との関係において、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明1について、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
そして、同様の理由により、本件特許発明2は、不明確であるとはいえない。
2.特許異議申立ての理由1、2について
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証の記載によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ユーザの知識及び技能を学習、復習及び検索することの効果及び効率を最大化するための方法であって(段落0008、0025、0026)、
時間に対する記憶強度の通常の損失に従って(段落0024、図4)、記憶強度が最小保持レベルまで低下した場合(段落0026、図4)、ユーザの復習のためのアイテム及びスケジュールを決定することにより、復習することの効果及び効率を最大化すること(段落0008、0026)、
及び、さまざまなユーザに対して時間にわたり記憶強度にかなりの相違があるので、各アイテム及び各ユーザに対して記憶強度を定量的に測定すること(段落0025)、
を含む方法。」
(2)本件特許発明2について
ア.対比
(ア)甲1発明の「ユーザの知識及び技能を学習、復習及び検索することの効果及び効率を最大化するための方法」は、ユーザの復習を行うこと、すなわちユーザが繰り返し行う学習について、支援するサービスを提供するサービス提供方法と解されるから、甲1発明の上記方法と、本件特許発明2の「ユーザが繰り返し行う学習を人工知能を利用して支援するサービスを提供するサービス提供方法」とは、「ユーザが繰り返し行う学習について、支援するサービスを提供するサービス提供方法」である点で共通する。
(イ)甲1発明の「さまざまなユーザに対して時間にわたり記憶強度にかなりの相違があるので、各アイテム及び各ユーザに対して記憶強度を定量的に測定する」ことは、学習する複数のユーザのデータを収集することであるといえるから、甲1発明の「さまざまなユーザに対して時間にわたり記憶強度にかなりの相違があるので、各アイテム及び各ユーザに対して記憶強度を定量的に測定する」ことは、本件特許発明2の「学習する複数のユーザのデータを収集する学習データ収集ステップ」に相当する。
(ウ)甲1発明の「時間に対する記憶強度の通常の損失に従って、記憶強度が最小保持レベルまで低下した場合、ユーザの復習のためのアイテム及びスケジュールを決定すること」との事項において、「ユーザの復習のためのアイテム」及び「スケジュール」は、「個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期」及び「該反復時期に基づいて反復すべき復習事項」であるといえる。そうすると、甲1発明の「時間に対する記憶強度の通常の損失に従って、記憶強度が最小保持レベルまで低下した場合、ユーザの復習のためのアイテム及びスケジュールを決定すること」と、本件特許発明2の「前記記憶ステップに記憶された一般的モデルと前記学習データ収集ステップにより収集されたユーザ1人分の個別データとに基づいて、当該個別ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期を特定し、該反復時期に基づいて反復すべき復習事項を抽出する復習事項抽出ステップとは、「ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期を特定し、該反復時期に基づいて反復すべき復習事項を抽出するステップ」である点で共通する。
(エ)甲1発明において、「ユーザの復習のためのアイテム及びスケジュールを決定することにより、復習することの効果及び効率を最大化する」ためには、ユーザに対するサービスとして、上記決定した「ユーザの復習のためのアイテム」及び「スケジュール」を提供する構成を備えていると解するのが相当である。そうすると、甲1発明において、ユーザに対するサービスとして、上記決定した「ユーザの復習のためのアイテム」及び「スケジュール」を提供することと、本件特許発明2の「前記個別ユーザが当該個別ユーザの前記復習事項を復習するためのサービスを提供するサービス提供ステップ」とは、「ユーザが当該ユーザの復習事項を復習するためのサービスを提供するサービス提供ステップ」である点で共通する。
(オ)甲1発明の「復習することの効果及び効率を最大化する」ことは、ユーザが復習することによる効果及び効率を最大化するものであるから、当該「復習することの効果及び効率を最大化する」ことと、本件特許発明2の「前記個別ユーザにパーソナライズされた復習事項に従って当該個別ユーザが復習することにより、復習回数の増加に伴って次回の復習までの間隔が広がり、個別ユーザの復習の効率を最適化する」こととは、「前記復習事項に従って当該ユーザが復習することにより、ユーザの復習の効率を最適化する」点において共通する。
(カ)上記(ア)ないし(オ)によると、本件特許発明2と甲1発明とは、次の点で一致し、また、相違している。
【一致点】
「 ユーザが繰り返し行う学習を支援するサービスを提供するサービス提供方法であって、
学習する複数のユーザのデータを収集する学習データ収集ステップと、
ユーザが学習した学習事項を反復して記憶するための反復時期を特定し、該反復時期に基づいて反復すべき復習事項を抽出する復習事項抽出ステップと、
ユーザが当該ユーザの復習事項を復習するためのサービスを提供するサービス提供ステップを備え、
前記復習事項に従って当該ユーザが復習することにより、ユーザの復習の効率を最適化する、サービス提供方法。」
【相違点】
・相違点1
本件特許発明2の「ユーザが繰り返し行う学習を支援するサービス」は、「人工知能を利用して支援する」ものであるのに対して、甲1発明の「サービス提供方法」は、「人工知能を利用して支援する」点について特定されていない点。
・相違点2
本件特許発明2は、「前記学習データ収集ステップにより収集された複数ユーザ分のデータに基づいて機械学習を行うことにより生成された暗記学習に関する一般的モデルを記憶する記憶ステップ」を備え、「前記一般的モデルは、学習事項の記憶の定着のために反復して行う復習を効率化するために生成された複数のユーザに当てはまるモデル」であるのに対して、甲1発明は、当該事項が特定されていない点。
・相違点3
本件特許発明2の「復習事項抽出ステップ」は、「前記記憶ステップに記憶された一般的モデルと前記学習データ収集ステップにより収集されたユーザ1人分の個別データとに基づいて」、「反復時期を特定」し、「反復すべき復習事項を抽出」するものであって、その際に「前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出する」に対して、甲1発明は、当該事項が特定されていない点。
イ.判断
事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。
ユーザが繰り返し行う学習において、「前記記憶ステップに記憶された一般的モデルと前記学習データ収集ステップにより収集されたユーザ1人分の個別データとに基づいて」、「反復時期を特定」し、「反復すべき復習事項を抽出」すること、及び、その際に「前記個別データとして、当該個別ユーザ固有の忘却態様に従って当該個別ユーザが忘れる直前の記憶保持状態になる時期を使用することにより、当該個別ユーザにパーソナライズされた復習事項を抽出する」ことは、甲第1号証に記載ないし示唆されているとはいえず、また、本件特許出願時の技術常識であるともいえない。
したがって、本件特許発明2の相違点3に係る構成は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明2は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.小括
上記のとおり、相違点3は実質的な相違点であるから、本件特許発明2は、甲1発明と同一ではない。そして、本件特許発明2は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明1について
本件特許発明1は、本件特許発明2の「サービス提供方法」を、「学習支援システム」の発明として特定したものであるから、本件特許発明2と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由1、2には理由がない。
3.特許異議申立人の主張について
上記2.(2)において説示した相違点3は、本件訂正によって訂正された構成に係るものであるところ、特許異議申立人は、本件訂正に対して意見書を提出しておらず、少なくとも本件特許発明1及び2の上記相違点3に係る構成について何ら意見を述べていない。
第7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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