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特許異議申立

2025-701089

基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置および方法

審判番号
2025-701089
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-510449
登録番号
7682999
請求日
2025年11月21日
審決日
2026年05月25日
公報発行日
2026年06月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
  • 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
  • 【異議申立人】麻生 陽一郎
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 綿引 隆
  • 審判官 中野 浩昌
分類
P1651.121-Y (H10P) / P1651.537-Y (H10P)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7682999号発明「基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置および方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7682999号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7682999号の請求項1~3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2021年(令和3年)7月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年8月14日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和7年5月16日にその特許権の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行されたものである。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和7年11月21日 :特許異議申立人 麻生 陽一郎(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立て 同年12月24日 :申立人による上申書の提出 令和8年 2月 4日付け:取消理由通知書 同年 4月22日 :特許権者による意見書の提出 第2 本件発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置であって、 上方ドームと下方ドームとの間のベースリングと、 前記層の堆積中の前記基板ウェーハのキャリアとしてのサセプタと、 プロセスガスを前記基板ウェーハの上面上を通すためのガス入口およびガス出口、送出ガスラインおよびガス供給ラインと、 スリットバルブトンネルおよびスリットバルブドアと、 前記サセプタおよび前記基板ウェーハを上昇させて回すための上昇および回転手段とを含み、 ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)で覆われており、 ステンレススチールの前記装置構成要素は、前記ベースリング、前記ガス入口、前記ガス出口、前記ガス供給ライン、蛇腹および円錐を含む前記送出ガスライン、前記スリットバルブトンネル、前記スリットバルブドア、ならびに、前記上昇および回転手段であり、 標準圧力下で前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されていることを特徴とする、装置。 【請求項2】 単一ウェーハリアクタとして構成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。 【請求項3】 基板ウェーハ上に半導体材料のエピタキシャル層を堆積させるための方法であって、 前記基板ウェーハは、請求項1または請求項2に記載の装置において前記エピタキシャル層でコーティングされることを特徴とする、方法。」 第3 取消理由及び申立理由の概要 1 取消理由通知書に記載した取消理由の概要 本件特許に対して、令和8年2月4日付け取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1(明確性要件) 本件発明1~3は、「官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)」との構成が不明瞭であるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由の概要 特許異議申立書に記載した申立理由のうち、取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 申立理由1(進歩性) 本件発明1~3は、甲第1号証(以下、申立人が提出した甲第1号証~甲第6号証を、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)に記載された発明及び甲2~甲6に記載された周知技術に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、又は、本件発明1~3は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 申立理由2(明確性要件) 本件発明1~3は、「円錐を含む前記送出ガスライン」との構成が不明確であるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 証拠一覧 甲1:特開2011-184719号公報 甲2:特開2009-049047号公報 甲3:特開2000-269137号公報 甲4:特表2011-517368号公報 甲5:特開2012-235074号公報 甲6:特開2004-245299号公報 第4 取消理由1(明確性要件)について 1 本件発明1 (1) 請求項1には、次の記載がある。 「ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)で覆われており、」 (2) 特許権者は、令和8年4月22日に提出した意見書の第3頁第19行~第4頁第14行において、本件特許の願書に添付した明細書の記載及び意見書に添付した参考資料の記載を参照して、上記(1)の「官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)」とは、二酸化ケイ素に類似した非晶質(非結晶性)ケイ素-酸素ネットワークに基づくコーティングであって、二酸化ケイ素に類似した非晶質(非結晶性)ケイ素-酸素ネットワークを、成膜時に炭素を取り込むことで意図的に改質し、非晶質Si-O-C構造としたものを意味すると明確にした。 そうすると、上記(1)の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 2 本件発明2、3について 請求項1を直接又は間接的に引用するものである本件発明2、3も、上記1と同様である。 3 取消理由1(明確性要件)についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由1は解消した。 第5 申立理由2(明確性要件)について 1 本件発明1について (1) 請求項1には、次の記載がある。 「ステンレススチールの前記装置構成要素は、・・・蛇腹および円錐を含む前記送出ガスライン・・・であり、」 (2) 上記(1)の「蛇腹および円錐を含む前記送出ガスライン」とは、「前記送出ガスライン」が、蛇腹状の部材と、円錐状の部材を含むことを意味するといえる。 また、円錐状の部材とは、その形状が円錐状の部材のことであり、明確に理解することができる。 そうすると、上記(1)の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 2 本件発明2、3について 請求項1を直接又は間接的に引用するものである本件発明2、3も、上記1と同様である。 3 申立理由2(明確性要件)についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立人の主張する特許異議の申立理由2は理由がない。 第6 申立理由1(進歩性)について 1 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明 (1) 甲1について ア 甲1の記載 甲1には、次の記載がある(下線は当審により付加。以下同じ。)。 「【請求項1】 金属を含む材料からなる金属製部材の金属の表面が耐食性のコーティング膜で覆われた耐食性部材であって、少なくとも、前記コーティング膜は3層以上の構造からなり、前記3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層で、前記最表層と最下層の間の中間層として、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層を含むものであることを特徴とする耐食性部材。 ・・・ 【請求項4】 少なくとも、チャンバーと、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内にガスを導入するガス導入管と、前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内からガスを排出するガス排出管と、前記チャンバー内に配置され、ウェーハを載置するサセプタとを具備する気相成長装置であって、少なくとも、 該気相成長装置を構成する部材のうち、金属を含む材料からなる金属製部材の金属の表面は、3層以上の構造からなるコーティング膜で覆われ、該3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層で、前記最表層と最下層の間の中間層として、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層を含むものであることを特徴とする気相成長装置。 【請求項5】 前記金属製部材の表面の金属は、ステンレスであることを特徴とする請求項4に記載の気相成長装置。 ・・・ 【請求項7】 請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の気相成長装置を用いて、前記サセプタ上にウェーハを載置し、前記ガス導入管から反応性ガスを前記チャンバー内に導入し、該導入された反応性ガスを前記ガス排出管から排出しながら、前記ウェーハ上に気相成長を行うことを特徴とする気相成長方法。」 「【発明を実施するための形態】 【0029】 以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 【0030】 図1は、本発明の耐食性部材の実施態様の一例を示す部分断面図である。 図1に示すように、本発明の耐食性部材15は、金属を含む材料からなる金属製部材14の金属の表面が耐食性のコーティング膜10で覆われた耐食性部材15であって、少なくとも、コーティング膜10は3層以上の構造からなり、3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層11、13で、最表層と最下層の間の中間層は、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層12である。 【0031】 最下層の緻密層13は、ポリシラザンから生成されるガラス質の二酸化ケイ素(SiO2)の層であるため、堅く強固で緻密であり、ステンレス等の金属の表面との密着性が良く、耐食性も良い。しかしながら、緻密であるがゆえに単体で厚く形成すると熱応力等によるクラックを生じやすいため、緻密層13上にアルコキシシランから生成される二酸化ケイ素(SiO2)の柔軟層12を形成することで、クラックを防止できる。しかし、この柔軟層12は多量の有機物を含むことから耐食性に欠けるため、さらに柔軟層12上にポリシラザンから生成される最表層の緻密層11を形成することで、柔軟層12を緩衝層としてクラックが入りにくく、耐食性も高い3層以上の構造のコーティング膜10となる。このようなコーティング膜10により、金属製部材14の耐食性を大きく向上させた本発明の耐食性部材15となる。 【0032】 このような、本発明の耐食性部材は、半導体製造プロセスに用いられる各種反応性ガスや腐食性ガス等、あるいは各種処理液に直接接触するか接触する可能性が大である部材として用いることができ、例えば、エッチング装置、CVD装置、PVD装置、プラズマCVD装置、スパッタ装置、イオン注入装置等の各種装置のチャンバー等に用いることができる。 その他、ロードロックチャンバー、トランスファーチャンバー、プロセスチャンバーなどの内壁、搬送用ロボット、ゲートバルブ、ゲートバルブを構成するシャッター、ガス供給系もしくは排気系の配管、ガス供給系もしくは排気系で使用されるバルブ、レギュレータ、圧力センサー、マスフローコントローラー、フィルタ、逆止弁、マニフォールドなどを構成する金属製部材に本発明のコーティング膜をコーティングして本発明の耐食性部材とすることができる。また、腐食性ガス・液体保管用ボトルあるいはボンベについても、本発明を適用することにより顕著な腐食性改善効果を期待できる。 【0033】 以下、特に本発明の耐食性部材を気相成長装置に用いた例として、本発明の気相成長装置について説明する。図2は、本発明の気相成長装置の実施態様の一例を示す概略図である。 【0034】 図2に示す気相成長装置24のチャンバー(反応容器)26は、例えばSUSからなるチャンバーベース25と、チャンバーベース25を上下から挟む透明石英部材27、28とから形成される。このチャンバー26内には、チャンバーベース25をカバーする不透明石英部材16、29と、ウェーハWを上面で支持するサセプタ17とを備えている。 【0035】 このサセプタ17はウェーハ回転機構18に接続されており、気相成長中はサセプタ17を回転させて、エピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させる。このウェーハ回転機構18内部はSUSが使われており、ウェーハ回転機構18内部をパージするパージガス導入管19が設けられている。 チャンバー26には、チャンバー26内に原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガスをサセプタ17の上側の領域に導入して、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20、21が接続されている。 また、チャンバー26のガス導入管20、21が接続された側の反対側には、チャンバー26内からガスを排出するガス排出管22、23が接続されている。 【0036】 そして、本発明の気相成長装置を構成する部材のうち、金属を含む材料からなる金属製部材の金属の表面は、3層以上の構造からなるコーティング膜で覆われ、3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層で、最表層と最下層の間の中間層は、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層である。 このコーティングされる金属製部材としては、HClガス等の反応性ガスと接触する部材が好ましく、例えば、チャンバーベース25、ガス導入管20、21、ガス排出管22、23等の反応性ガスに対して露出された面をコーティングすることが好ましい。 ・・・ 【0038】 また、本発明の気相成長方法は、上記した本発明の気相成長装置を用いて、サセプタ上にウェーハを載置し、ガス導入管から反応性ガスをチャンバー内に導入し、導入された反応性ガスをガス排出管から排出しながら、ウェーハ上に気相成長を行う。 このような気相成長方法であれば、パーティクルの発生や、金属不純物汚染の無い気相成長を行うことができるため、高品質のエピタキシャルウェーハを作製することができる。 ・・・ 【0045】 本発明のコーティング方法では、金属製部材の金属の表面上にポリシラザン溶液を塗布して熱処理することにより最下層の緻密層を形成し、当該緻密層上にアルコキシシラン溶液を塗布して熱処理することにより中間層の柔軟層を形成し、その後柔軟層上にポリシラザン溶液を塗布して熱処理することにより最表層の緻密層を形成する。なお、本発明のコーティング方法では、3層以上のコーティング膜であればよく、柔軟層上に緻密層を2層形成する等により4層以上の構造とすることもできる。また、その他中間層として、他の種の層をさらに設けることが可能である。 ・・・ 【0047】 ポリシラザンとしては、少なくとも分子内にSi-N結合を有するもので、下記化学式(1)で表される骨格を繰り返し単位として鎖状に結合した鎖状ポリマー、あるいは環状に結合した環状ポリマーである。また、それらポリマーを2種類以上を混合したものでもよい。 【化1】 [図:0001436206000001.jpg] (但し、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基のいずれか1種である) 【0048】 本発明に用いるポリシラザンとしては、最も緻密性を持つ膜が形成されるR1、R2、R3が全て水素であるペルヒドロポリシラザンもしくは、緻密性を持ちながらも比較的柔軟性も併せ持つ膜が形成され、前駆体の中で最も入手が容易であるR1,R2が水素、R3がメチル基であるポリメチルヒドロシラザンが望ましい。 【0049】 また、柔軟層の出発原料となるアルコキシシランを含む柔軟層形成用塗布液(アルコキシシラン溶液)は、例えば各所定量のアルコキシシランを有機溶媒に溶解した溶液を用いることができる。 この有機溶媒は、アルコキシシランの反応に悪影響を与えないものであればよく、アセトン、n-ブチルケトン、i-ブチルケトン等、ケトン類が好適に用いられる。 【0050】 アルコキシシランは、少なくとも分子内にO-Si-O結合を有するもので、下記化学式(2)で表されるモノマーまたは、下記化学式(3)で表される骨格を繰り返し単位として鎖状に結合した鎖状ポリマー、あるいは環状に結合した環状ポリマーである。 【化2】 [図:0001436206000002.jpg] 【化3】 [図:0001436206000003.jpg] (但し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基のいずれか1種である) 【0051】 本発明に用いるアルコキシシランとしては、R1、R2、R3、R4を全てメチル基としたメチルシリケートが最も望ましい。 ・・・ 【0054】 本発明における熱処理としては、溶液を上記のように塗布した後、ポリシラザン溶液又はアルコキシシラン溶液の塗布膜を乾燥させて、例えば、溶液が塗布された金属性部材を、大気中あるいは水蒸気を含む雰囲気中で、80~400℃の温度範囲で30~180分加熱処理する。 ポリシラザン溶液の塗布膜は、上記加熱処理プロセスで、加熱処理の初期段階においては、ペルヒドロポリシラザンやポリオルガノシラザンの反応が進行すると、Si-O結合の他に、Si-N結合、Si-H結合、Si-R結合等を含む重合体が形成される。この段階では、シロキサン結合(Si-O-Si)が充分形成されていないために、セラミックスへの転化が不十分なものである。加熱処理が更に進行すると、前記重合体が水や酸素と反応することで反応物の酸化、水蒸気による加水分解が進行し、シロキサン結合(Si-O-Si)あるいはSi-N結合が形成されて、緻密性を有するセラミックスに転化して緻密層となる。また、アルコキシシラン溶液の塗布膜は、上記加熱処理プロセスで、加熱処理が進行すると、アルコキシシランが水や酸素と反応し、アルキル基等がアルコールとして脱離することで、柔軟性を有するセラミックスに転化して柔軟層となる。また、塗布膜を乾燥させた後、触媒を使用することにより低温で反応を行わせることもできる。」 「【0068】 (比較例2) ポリメチルヒドロシラザン溶液をスピンコート法によりステンレススチール板の表面に塗布し、その後、大気中、350℃にて1時間熱処理を行い、有機質シリカ層とした。この有機質シリカ層の膜厚は0.8μmであった。」 「【図2】 [図:0001436206000004.jpg] 」 イ 甲1発明 (ア) 上記アの【0033】には「本発明の耐食性部材を気相成長装置に用いた例として、本発明の気相成長装置について説明する。図2は、本発明の気相成長装置の実施態様の一例を示す概略図である。」と記載されている。 (イ) 上記アの【0034】には「気相成長装置24のチャンバー(反応容器)26は、例えばSUSからなるチャンバーベース25と、チャンバーベース25を上下から挟む透明石英部材27、28とから形成される。このチャンバー26内には、チャンバーベース25をカバーする不透明石英部材16、29と、ウェーハWを上面で支持するサセプタ17とを備えている。」と記載されている。 (ウ) 上記アの【0035】には「このサセプタ17はウェーハ回転機構18に接続されており、気相成長中はサセプタ17を回転させて、エピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させる。このウェーハ回転機構18内部はSUSが使われており、ウェーハ回転機構18内部をパージするパージガス導入管19が設けられている。」と記載されている。 (エ) 上記(イ)のとおり、【0034】には「図2に示す気相成長装置24のチャンバー(反応容器)26は、例えばSUSからなるチャンバーベース25と、チャンバーベース25を上下から挟む透明石英部材27、28とから形成される。」と記載され、上記アの【0035】には「チャンバー26には、チャンバー26内に原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガスをサセプタ17の上側の領域に導入して、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20、21が接続されている。 また、チャンバー26のガス導入管20、21が接続された側の反対側には、チャンバー26内からガスを排出するガス排出管22、23が接続されている。」と記載されている。また、上記アの【図2】から、SUSからなるチャンバーベース25に、ガス導入管20及びガス排出管22が接続されていることが見て取れる。 そうすると、甲1には、SUSからなるチャンバーベース25に、チャンバー26内に原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガスをサセプタ17の上側の領域に導入して、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20、21が接続され、チャンバーベース25のガス導入管20、21が接続された側の反対側に、チャンバー26内からガスを排出するガス排出管22、23が接続されていることが記載されているといえる。 (オ) 上記アの【0035】の記載を踏まえると、上記アの【図2】に描かれている右向きの矢印は、原料ガスとキャリアガスの流れを示すものであるといえるから、上記アの【図2】から、原料ガス及びキャリアガスが、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上を通過することが見て取れる。 (カ) 上記アの【0036】には「そして、本発明の気相成長装置を構成する部材のうち、金属を含む材料からなる金属製部材の金属の表面は、3層以上の構造からなるコーティング膜で覆われ、3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層で、最表層と最下層の間の中間層は、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層である。 このコーティングされる金属製部材としては、HClガス等の反応性ガスと接触する部材が好ましく、例えば、チャンバーベース25、ガス導入管20、21、ガス排出管22、23等の反応性ガスに対して露出された面をコーティングすることが好ましい。」と記載されている。 (キ) 上記アの【0033】の「本発明の耐食性部材を気相成長装置に用いた例として、本発明の気相成長装置について説明する。」との記載を考慮すると、上記アの【0030】の「本発明の耐食性部材15は、金属を含む材料からなる金属製部材14の金属の表面が耐食性のコーティング膜10で覆われた耐食性部材15であって、少なくとも、コーティング膜10は3層以上の構造からなり、3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層11、13で、最表層と最下層の間の中間層は、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層12である。」との記載、【0031】の「最下層の緻密層13は、ポリシラザンから生成されるガラス質の二酸化ケイ素(SiO2)の層であるため、堅く強固で緻密であり、ステンレス等の金属の表面との密着性が良く、耐食性も良い。しかしながら、緻密であるがゆえに単体で厚く形成すると熱応力等によるクラックを生じやすいため、緻密層13上にアルコキシシランから生成される二酸化ケイ素(SiO2)の柔軟層12を形成することで、クラックを防止できる。しかし、この柔軟層12は多量の有機物を含むことから耐食性に欠けるため、さらに柔軟層12上にポリシラザンから生成される最表層の緻密層11を形成することで、柔軟層12を緩衝層としてクラックが入りにくく、耐食性も高い3層以上の構造のコーティング膜10となる。このようなコーティング膜10により、金属製部材14の耐食性を大きく向上させた本発明の耐食性部材15となる。」との記載、及び、【0032】の「このような、本発明の耐食性部材は、半導体製造プロセスに用いられる各種反応性ガスや腐食性ガス等、あるいは各種処理液に直接接触するか接触する可能性が大である部材として用いることができ、例えば、エッチング装置、CVD装置、PVD装置、プラズマCVD装置、スパッタ装置、イオン注入装置等の各種装置のチャンバー等に用いることができる。 その他、ロードロックチャンバー、トランスファーチャンバー、プロセスチャンバーなどの内壁、搬送用ロボット、ゲートバルブ、ゲートバルブを構成するシャッター、ガス供給系もしくは排気系の配管、ガス供給系もしくは排気系で使用されるバルブ、レギュレータ、圧力センサー、マスフローコントローラー、フィルタ、逆止弁、マニフォールドなどを構成する金属製部材に本発明のコーティング膜をコーティングして本発明の耐食性部材とすることができる。また、腐食性ガス・液体保管用ボトルあるいはボンベについても、本発明を適用することにより顕著な腐食性改善効果を期待できる。」との記載も、「本発明の耐食性部材を気相成長装置に用いた例として」の「本発明の気相成長装置」に関する記載であるといえる。 (ク) 上記アの【0038】には「高品質のエピタキシャルウェーハを作製することができる。」と記載されている。 (ケ) 以上によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。(括弧内の記載は、上記検討箇所を示す。以下同じ。) 「 気相成長装置であって((ア))、 気相成長装置24のチャンバー(反応容器)26は、例えばSUSからなるチャンバーベース25と、チャンバーベース25を上下から挟む透明石英部材27、28とから形成され((イ))、 このチャンバー26内には、ウェーハWを上面で支持するサセプタ17とを備え((イ))、 このサセプタ17はウェーハ回転機構18に接続されており、気相成長中はサセプタ17を回転させて、エピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させ((ウ))、 このウェーハ回転機構18内部はSUSが使われており((ウ))、 SUSからなるチャンバーベース25に、チャンバー26内に原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガスをサセプタ17の上側の領域に導入して、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20、21が接続され、チャンバーベース25のガス導入管20、21が接続された側の反対側に、チャンバー26内からガスを排出するガス排出管22、23が接続されており((エ))、 原料ガス及びキャリアガスが、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上を通過し((オ))、 気相成長装置を構成する部材のうち、金属を含む材料からなる金属製部材の金属の表面は、3層以上の構造からなるコーティング膜で覆われ、3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層で、最表層と最下層の間の中間層は、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層であり((カ))、 このコーティングされる金属製部材としては、例えば、チャンバーベース25、ガス導入管20、21、ガス排出管22、23等の反応性ガスに対して露出された面をコーティングすることが好ましく((カ))、 最下層の緻密層13は、ポリシラザンから生成されるガラス質の二酸化ケイ素(SiO2)の層であるため、堅く強固で緻密であり、ステンレス等の金属の表面との密着性が良く、耐食性も良く((キ))、 緻密層13上にアルコキシシランから生成される二酸化ケイ素(SiO2)の柔軟層12を形成することで、クラックを防止でき((キ))、 この柔軟層12は多量の有機物を含み((キ))、 ゲートバルブ、ゲートバルブを構成するシャッターを構成する金属製部材にコーティング膜をコーティングし耐食性部材とすることができ((キ))、 高品質のエピタキシャルウェーハを作製することができる((ク))、 気相成長装置。」 (2) 甲2について ア 甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも、 チャンバーと、 前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内にガスを導入するガス導入管と、 前記チャンバー内に連通し、該チャンバー内からガスを排出するガス排出管と、 前記チャンバー内に配置され、ウェーハを載置するサセプタと を具備する気相成長装置であって、 該気相成長装置を構成する部材のうち、該部材の少なくとも一部が金属を含む材料からなり、該金属を含む材料からなる部位が、前記チャンバー並びに該チャンバーに連通する前記ガス導入管及び前記ガス排出管の内部に導通されるガスに対して露出されたものである金属露出部材において、前記金属露出部材の露出されている部位の少なくとも一部が保護膜で覆われていることを特徴とする気相成長装置。 【請求項2】 前記保護膜は、液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材が塗布され、焼成されて形成された酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。 【請求項3】 前記金属を含む材料が、ステンレスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気相成長装置。 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の気相成長装置を用いて、前記サセプタ上にウェーハを載置し、前記ガス導入管から反応ガスを前記チャンバー内に導入しながら前記ウェーハ上に気相成長を行い、反応後のガスを前記ガス排出管から排出することを特徴とする気相成長方法。」 「【0018】 図1に、本発明を適用することのできる気相成長装置の一例として、枚葉式の気相成長装置の概略断面図を示した。 気相成長装置10は、内部で気相成長を行うためのチャンバー17と、チャンバー17内に連通し、チャンバー17内に反応ガス等の各種のガスを導入するガス導入管13と、チャンバー17内に連通し、チャンバー17内からガスを排出するガス排出管16と、チャンバー17内に配置され、ウェーハWを載置するサセプタ12とを具備する。 【0019】 この他、気相成長装置10は、サセプタ12を回転させるためのサセプタ回転機構15や、ウェーハWを加熱するための加熱手段(図示せず)等を適宜具備するものでもよい。 サセプタ回転機構15は、サセプタ12を回転させることによりウェーハWを回転させ、気相成長がウェーハ面内において均一に行われるようにするためのものである。 また、加熱手段は、ランプ加熱装置等、種々のものをチャンバーの構造に応じて選択して用いることができる。 また、図1中には、サセプタ12に形成された貫通孔を貫通し、ウェーハWをサセプタ12から持ち上げて保持することができる突起等からなるウェーハ持上機構20も示している。 【0020】 また、チャンバー17は、通常、複数の部材から構成される。例えば、透明石英からなるチャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19や、チャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19を固定し、ガス導入管13、ガス排出管16等が備え付けられるチャンバー側部部材14等を組み合わせて構成される。 チャンバー17の内部は、上記各部材により、外気から遮断される。 【0021】 このような構成からなる気相成長装置10で気相成長を行うには、サセプタ12上にウェーハWを載置し、ガス導入管13から反応ガスを(必要に応じてキャリアガスとともに)チャンバー17内に導入しながらウェーハW上に気相成長を行うともに、反応後のガスをガス排出管16から排出する。なお、図1中に、矢印で気相成長装置内部のガスのおおまかな流れの様子を示した。 【0022】 上記したような、複数の部材からなる気相成長装置において、従来、少なくとも一部が金属を含む材料からなる部材であり、金属を含む材料からなる部位が、チャンバー並びに該チャンバーに連通するガス導入管及びガス排出管の内部に導通されるガスに対して露出されるものである金属露出部材が使用されている。 このような金属露出部材としては、通常、ガス導入管13やガス排出管16、チャンバー側部部材14、サセプタ回転機構15等が挙げられるが、これらに限定されず、様々な種類の気相成長装置が存在する。金属を含む材料の具体的な材質としては、機械的強度や加工性、化学的耐久性、耐熱性等の観点から、ステンレスが一般に使用されている。 【0023】 そして、本発明の気相成長装置では、金属露出部材の、上記ガス(チャンバー内部のみならず、チャンバーに連通するガス導入管内部及びガス排出管内部に導通されるガスも含む)に対して露出されている部位(以下、金属露出面と呼ぶことがある。)の少なくとも一部が保護膜で覆われているものとする。保護膜の材料は、酸化珪素等の高温でも安定な無機材料が望ましい。また、保護膜の厚さは特に限定されない。一般には保護膜は厚い方がより確実に金属の放出を防止することができるが、薄いものであっても、従来の気相成長装置よりも金属汚染を抑制することができる。 ・・・ 【0025】 このように金属露出部材を保護膜で覆うには、液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材(以下、単に液体状シリカガラス材と呼ぶことがある。)を塗布し、これを焼成して形成することによって行うことができる。 液体状シリカガラス材としては、ポリシラザン等のOH基を有しない無機ポリマーが有機溶剤に溶けているもの等を用いることができる。また、必要に応じてアミン、Pd等の脱水素、酸化機能等を有する触媒等の添加剤を含有する。具体的には、市販の液体状シリカコート材を用いることができ、例えば、(有)エクスシア社製シリカコート型番EPP等が挙げられる。 ・・・ 【0027】 そして、このように塗布した液体状シリカガラス材を焼成して硬化させることにより、酸化膜(アモルファス酸化珪素膜;シリカ)となり、これを保護膜とすることができる。 なお、液体状シリカガラス材の硬化方法は、焼成する他に、液体状シリカガラス材の組成等に応じて、空気中に放置することによって有機溶剤が揮発し、無機ポリマーが空気中の水分や酸素と反応して酸化膜としたり、加湿することによっても行うことができるが、上記のように、焼成することによって硬化させることが特に好ましい。焼成によれば、短時間でほぼ完全に酸化膜への転化を行うことができ、その結果、金属露出部材からの金属の放出レベルをより確実に抑制することができるためである。」 「【実施例】 【0036】 以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0037】 (実施例1) 図1に示したような、枚葉式の気相成長装置10を構成する各部材のうち、ステンレスからなる部材(具体的には、ガス導入管13、ガス排出管16、チャンバー側部部材14、サセプタ回転機構15)に対して、保護膜コーティング処理として、液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材((有)エクスシア社製シリカコート型番EPP)を、ステンレス露出部に塗布したうえで、200℃、60分の熱処理を行って酸化膜とした。 【0038】 このような本発明に従う気相成長装置を用いて、以下のように、チャンバーを大気に開放してメンテナンスをした後、実際に気相成長を行った。 ウェーハWとして、CZ法で作製された面方位(100)、直径200mm、P型、抵抗率10Ωcmのシリコン単結晶ウェーハを、サセプタ12上に載置し、所定の反応温度で反応ガスとしてSiHCl3(シリコン原料)とジボラン(不純物源)をチャンバー17内に流し、P型、10Ωcm、厚さ10μmのエピタキシャル層の成長を連続して繰り返し行った。 適当な頻度でウェーハを抜き取り、ライフタイムを測定した。なお、ウェーハのライフタイムは、ウェーハ中の微量の金属に対し敏感なため、結晶の金属汚染の指標として用いられる。」 「【図1】 [図:0001436206000005.jpg] 」 イ 甲2発明の認定 (ア) 上記アの【0018】には「図1に、本発明を適用することのできる気相成長装置の一例として、枚葉式の気相成長装置の概略断面図を示した。 気相成長装置10は、内部で気相成長を行うためのチャンバー17と、チャンバー17内に連通し、チャンバー17内に反応ガス等の各種のガスを導入するガス導入管13と、チャンバー17内に連通し、チャンバー17内からガスを排出するガス排出管16と、チャンバー17内に配置され、ウェーハWを載置するサセプタ12とを具備する。」と記載されている。 (イ) 上記アの【0019】には「この他、気相成長装置10は、サセプタ12を回転させるためのサセプタ回転機構15や、ウェーハWを加熱するための加熱手段(図示せず)等を適宜具備するものでもよい。 サセプタ回転機構15は、サセプタ12を回転させることによりウェーハWを回転させ、気相成長がウェーハ面内において均一に行われるようにするためのものである。 また、加熱手段は、ランプ加熱装置等、種々のものをチャンバーの構造に応じて選択して用いることができる。 また、図1中には、サセプタ12に形成された貫通孔を貫通し、ウェーハWをサセプタ12から持ち上げて保持することができる突起等からなるウェーハ持上機構20も示している。」と記載されている。 (ウ) 上記アの【0020】には「また、チャンバー17は、通常、複数の部材から構成される。例えば、透明石英からなるチャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19や、チャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19を固定し、ガス導入管13、ガス排出管16等が備え付けられるチャンバー側部部材14等を組み合わせて構成される。」と記載されている。 (エ) 上記アの【0021】には「このような構成からなる気相成長装置10で気相成長を行うには、サセプタ12上にウェーハWを載置し、ガス導入管13から反応ガスを(必要に応じてキャリアガスとともに)チャンバー17内に導入しながらウェーハW上に気相成長を行うともに、反応後のガスをガス排出管16から排出する。なお、図1中に、矢印で気相成長装置内部のガスのおおまかな流れの様子を示した。」と記載されている。 この記載によれば、甲2には、ガス導入管13から反応ガスを(必要に応じてキャリアガスとともに)チャンバー17内に導入しながらウェーハW上に気相成長を行うとともに、反応後のガスをガス排出管16から排出することが記載されているといえる。 また、上記の記載を勘案すると、上記アの【図1】から、反応ガスは、サセプタ12上に載置されたウェーハWの主表面上を通過することが見て取れる。 (オ) 上記アの【0022】には「このような金属露出部材としては、通常、ガス導入管13やガス排出管16、チャンバー側部部材14、サセプタ回転機構15等が挙げられるが、これらに限定されず、様々な種類の気相成長装置が存在する。金属を含む材料の具体的な材質としては、機械的強度や加工性、化学的耐久性、耐熱性等の観点から、ステンレスが一般に使用されている。」と記載されている。 この記載によれば、甲2には、金属露出部材として、ステンレスからなるガス導入管13やガス排出管16、チャンバー側部部材14、サセプタ回転機構15が挙げられることが記載されているといえる。 (カ) 上記アの【0023】には「そして、本発明の気相成長装置では、金属露出部材の、上記ガス(チャンバー内部のみならず、チャンバーに連通するガス導入管内部及びガス排出管内部に導通されるガスも含む)に対して露出されている部位(以下、金属露出面と呼ぶことがある。)の少なくとも一部が保護膜で覆われているものとする。保護膜の材料は、酸化珪素等の高温でも安定な無機材料が望ましい。」と記載されている。 (キ) 上記アの【0025】には「このように金属露出部材を保護膜で覆うには、液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材(以下、単に液体状シリカガラス材と呼ぶことがある。)を塗布し、これを焼成して形成することによって行うことができる。」と記載されており、【0027】には「そして、このように塗布した液体状シリカガラス材を焼成して硬化させることにより、酸化膜(アモルファス酸化珪素膜;シリカ)となり、これを保護膜とすることができる。」と記載されている。 そうすると、甲2には、金属露出部材を保護膜で覆うには、液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材(以下、単に液体状シリカガラス材と呼ぶことがある。)を塗布し、これを焼成して形成することによって酸化膜(アモルファス酸化珪素膜;シリカ)を形成することによって行うことができることが記載されているといえる。 (ク) 上記アの【0036】に「以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する」と記載されているとおり、実施例の記載は本発明をより具体的に説明するものである。 そして、上記アの【0038】には「ウェーハWとして、CZ法で作製された面方位(100)、直径200mm、P型、抵抗率10Ωcmのシリコン単結晶ウェーハを、サセプタ12上に載置し、所定の反応温度で反応ガスとしてSiHCl3(シリコン原料)とジボラン(不純物源)をチャンバー17内に流し、P型、10Ωcm、厚さ10μmのエピタキシャル層の成長を連続して繰り返し行った。」と記載されている。 (ケ) 以上によれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。 「 枚葉式の気相成長装置であって((ア))、 内部で気相成長を行うためのチャンバー17と、チャンバー17内に連通し、チャンバー17内に反応ガス等の各種のガスを導入するガス導入管13と、チャンバー17内に連通し、チャンバー17内からガスを排出するガス排出管16と、チャンバー17内に配置され、ウェーハWを載置するサセプタ12とを具備し((ア))、 サセプタ12を回転させるためのサセプタ回転機構15を適宜具備するものであってもよく((イ))、 サセプタ12に形成された貫通孔を貫通し、ウェーハWをサセプタ12から持ち上げて保持することができる突起等からなるウェーハ持上機構20を具備し((イ))、 チャンバー17は、透明石英からなるチャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19と、チャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19を固定し、ガス導入管13、ガス排出管16等が備え付けられるチャンバー側部部材14等を組み合わせて構成され((ウ))、 ガス導入管13から反応ガスを(必要に応じてキャリアガスとともに)チャンバー17内に導入しながらウェーハW上に気相成長を行うとともに、反応後のガスをガス排出管16から排出し((エ))、 反応ガスは、サセプタ12上に載置されたウェーハWの主表面上を通過し((エ))、 金属露出部材として、ステンレスからなるガス導入管13やガス排出管16、チャンバー側部部材14、サセプタ回転機構15が挙げられ((オ))、 金属露出部材の、上記ガス(チャンバー内部のみならず、チャンバーに連通するガス導入管内部及びガス排出管内部に導通されるガスも含む)に対して露出されている部位(以下、金属露出面と呼ぶことがある。)の少なくとも一部が保護膜で覆われており、保護膜の材料は、酸化珪素等の高温でも安定な無機材料が望ましく((カ))、 金属露出部材を保護膜で覆うには、液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材(以下、単に液体状シリカガラス材と呼ぶことがある。)を塗布し、これを焼成して形成することによって酸化膜(アモルファス酸化珪素膜;シリカ)を形成することによって行うことができ((キ))、 ウェーハWとして、CZ法で作製された面方位(100)、直径200mm、P型、抵抗率10Ωcmのシリコン単結晶ウェーハを、サセプタ12上に載置し、所定の反応温度で反応ガスとしてSiHCl3(シリコン原料)とジボラン(不純物源)をチャンバー17内に流し、P型、10Ωcm、厚さ10μmのエピタキシャル層の成長を行うことができる((ク))、 枚葉式の気相成長装置。」 (3) 甲3~甲6について ア 甲3の記載 甲3には、次の記載がある。 「【0014】 図1及び図2は、本発明による半導体製造装置であるエピタキシャル成長装置を概略的に示している。図示のエピタキシャル成長装置10はシリコンウェハWを1枚ずつ処理する枚葉式であり、石英ガラスで構成された処理チャンバ12を備え、この処理チャンバ12内にウェハWを支持するためのサセプタ(ウェハ支持台)14が配設されている。 ・・・ 【0017】 また、このエピタキシャル成長装置10は、ウェハ搬送時にサセプタ14上にウェハWを降ろし或いはウェハWをサセプタ14から持ち上げるために、ウェハ搬送手段の一部をなすリフト機構22が設けられている。リフト機構22は、サセプタ支持シャフト16の主軸を囲むように配置された上下動可能なリフトチューブ24と、このリフトチューブ24を上下動させる駆動装置(図示しない)と、リフトチューブ24から放射状に延びる3本のリフトアーム26と、各リフトアーム26の先端から垂直上方に延設されたリフトピン28とから構成されている。各リフトピン28は、サセプタ14の凹部18の適所に形成された貫通孔30に挿通可能となっている。このようなリフト機構22においては、駆動装置を制御してリフトチューブ24及びリフトアーム26を上下させると、リフトピン28の上端がサセプタ14の上面の下方位置と上方位置との間で上下し、サセプタ14とリフトピン28の上端との間でウェハWの載せ変えを行うことができる。 【0018】 処理チャンバ12の外部には、処理チャンバ12に対してウェハWを搬入及び搬出するための搬送ロボット(ウェハ搬送手段)が配設されている。この搬送ロボットは、図2に示すように、ウェハWを載せて水平に支持するブレード32を備えており、ブレード32は処理チャンバ12の側部に設けられたスリットバルブ(開閉扉)34を通してサセプタ14の上方位置に挿入され得るようになっている。ウェハWは、ブレード32を処理チャンバ12内に挿入した状態で、リフトピン28の上端に受け渡される。 ・・・ 【0021】次に、上記構成において、本発明によるウェハ取扱方法を用いてウェハWを搬送し、処理チャンバ12内でエピタキシャル成長を行う場合について説明する。」 「【0033】 【実施例】次に、上記方法の実施例について述べる。この実施例では、半導体製造装置としてアプライド・マテリアルズ・インコーポレイテッドにより「Epi Centura」という商標名で製造、販売されているエピタキシャル成長装置を使用した。また、150mm径のウェハを使用し、処理チャンバに対するウェハの搬入時及び搬出時(ウェハがブレードに載置されている間)、並びに、リフトピンによりウェハが支持されている間に限って、上部のハロゲンランプを消灯した。下部のハロゲンランプは、ウェハの搬入から搬出までの間、常時、フルパワーで点灯状態とした。」 「【図1】 [図:0001436206000006.jpg] 」 イ 甲4の記載 甲4には、次の記載がある。 「【0001】 (発明の分野) 本発明の実施形態は、概ね、半導体処理システムに関する。特に、本発明の実施形態は半導体製造中に基板の背面からポリマーを除去するのに用いられる半導体処理システムに関する。 ・・・ 【0020】 加熱エレメント128は基板支持アセンブリ126内にあり、基板支持アセンブリ126に置かれた基板110の温度制御を行う。この加熱エレメント128は図示されてないスリップリングを介して基板支持アセンブリ126に結合された電源116により制御される。回転可能なシャフト112は処理チャンバ100の底170を貫通して上側に伸び、基板支持アセンブリ126に結合される。上下動及び回転の機構114はシャフト112に結合し、チャンバの天井178に対する、基板支持アセンブリ126の回転及び上下動を制御する。ポンプシステム120はプロセスチャンバ100に結合され、排気、及び、プロセスの圧力の維持を行う。」 「【図1】 [図:0001436206000007.jpg] 」 ウ 甲5の記載 甲5には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 この発明は、バレル型気相成長装置、詳しくは半導体ウェーハの表面にエピタキシャル膜を気相成長させるバレル型気相成長装置に関する。 ・・・ 【0021】 ベルジャ11は、石英からなり、かつ円筒形状の胴部の下端部が徐々に先細りとなったシリンダで、その上端部の開口が蓋体17により閉蓋されている。 ガス導入管14は、蓋体17の外周部の一部に形成され、蓋体17の下部の内周面と外周面とを連通するガス導入口17aに装着されている。 また、ベルジャ11の胴部の外周の全域には、前記多数のハロゲンランプ15が配設されている。 サセプタ13は、反応室12の内部空間に、回転軸18を中心にして回転自在に吊下されている。 サセプタ13は六角錐台型の筒体で、6つの周側面には上下2段(合計12箇所)にザグリ19がそれぞれ形成されている。各ザグリ19は、シリコンウェーハWを載置する正面視して円形の浅い凹部である。 ガス排気管16は、ベルジャ11の下端部の排気口にフランジ20aを介して連通された上流側配管部20と、真空発生装置の吸気部に下流側の開口部が連通され、かつ途中部分に水冷式排気ライン、熱交換器などが連通された下流側配管部21と、これらの上,下流側配管部20、21をフレキシブルに連通する蛇腹配管22と、蛇腹配管22の内部に収納されるスリーブ23とを有している(図2および図4)。 【0022】 蛇腹配管22は、ステンレスからなる伸縮自在なチューブで、その両端の開口部にフランジ22aを形成している。したがって、上,下流側配管部20、21と蛇腹配管22とは、互いのフランジを介して連結される。 スリーブ23は、ステンレスからなる円柱体に中グリ加工などを行って作製したもので(図1および図2)、スリーブ23の外径は、通常時の使用状態における蛇腹配管22の内径より短い(図2および図4)。また、スリーブ23の上流側の開口部には、段差状に大径化した拡径部23aが、スリーブ23と同一素材で一体形成されている。拡径部23aの厚さは、スリーブ23の通常部分の厚さと同一である。」 「【図1】 [図:0001436206000008.jpg] ・・・ 【図4】 [図:0001436206000009.jpg] 」 エ 甲6の記載 甲6には、次の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】 半導体製造装置や液晶製造装置等では、各種真空処理システムを利用し、真空環境下において、ウエハーや液晶ガラス等を製造している。この場合、真空処理室で一つの製造工程が終わると次の工程に移る必要があるが、このとき真空処理室の真空度を保つために、ゲートバルブやスリットバルブと云った開閉システムを備えたシール機構を利用する場合が多い。図12はゲートバルブ51の一例を示しており、これらのゲートバルブ51やスリットバルブは、シールプレート52と称される金属プレートよりなるハウジングの装着溝にエラストマーやゴム等よりなるゴム状弾性体製シール53を組み付けたものである。シールプレート52に使用されるシール53はスクィーズシールタイプであり、またシールプレート52が開閉作動したときにシール53が装着溝から抜け出ることがないように従来は抜け止め対策として、 ▲1▼図13に示すように、装着溝54を蟻溝状とし、この蟻溝状の装着溝54にシール53としてOリング53Aを装着する、 ▲2▼図14に示すように、装着溝54を蟻溝状とし、この蟻溝状の装着溝54にシール53として抜け止め対策を施した特殊断面形状シール53Bを装着する(特許文献1参照)、 ▲3▼または図15に示すように、シール53を接着剤55を用いて装着溝54内に接着する、などの構造が用いられている。」 2 甲1を主たる証拠とする進歩性について (1) 本件発明1 ア 本件発明1と甲1発明との対比 (ア) 甲1発明の「ウェーハW」は、本件発明1の「基板ウェーハ」に相当する。 また、甲1発明は、「エピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させ」て「高品質のエピタキシャルウェーハを作製することができる」ものであるから、この「エピタキシャル層」は、本件発明1の「半導体材料の層」及び「エピタキシャル層」に相当する。 また、甲1発明の「気相成長」は、本件発明1の「堆積」に相当する。 そうすると、甲1発明の「チャンバー26内に、ウェーハWを上面で支持するサセプタ17とを備え」、「気相成長中はサセプタ17を回転させて、エピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させ」るものである「気相成長装置」と、本件発明1の「基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置であって」、「標準圧力下で前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されている」「装置」とは、「基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置であって」、「標準圧力下で前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されている」「装置」である点で共通する。 (イ) 甲1発明の「チャンバーベース25を上下から挟む透明石英部材27、28」は、本件発明1の「上方ドームと下方ドーム」にそれぞれ対応し、甲1発明の「透明石英部材27、28」によって挟まれる「チャンバーベース25」は、本件発明1の「上方ドームと下方ドームとの間のベースリング」に対応する。 (ウ) 甲1発明は、「気相成長中はサセプタ17を回転させて、エピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させ」るものであるから、甲1発明の「ウェーハWを上面で支持するサセプタ17」は、本件発明1の「前記層の堆積中の前記基板ウェーハのキャリアとしてのサセプタ」に相当する。 (エ) 甲1発明の「原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガス」は、本件発明1の「プロセスガス」に相当する。 また、甲1発明は、「SUSからなるチャンバーベース25に、チャンバー26内に原料ガス及びキャリアガス(例えば、水素)を含む気相成長ガスをサセプタ17の上側の領域に導入して、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20、21が接続され、チャンバーベース25のガス導入管20、21が接続された側の反対側には、チャンバー26内からガスを排出するガス排出管22、23が接続されており」、「原料ガス及びキャリアガスが、サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上を通過」するものであるから、甲1発明の「SUSからなるチャンバーベース25」は、「ガス導入管20、21」が接続された箇所、及び、「ガス排出管22、23」が接続された箇所に、本件発明1の「プロセスガスを前記基板ウェーハの上面上を通すためのガス入口およびガス出口」に対応する構成を備えているといえる。 また、甲1発明の「サセプタ17上に載置されたウェーハWの主表面上に原料ガスとキャリアガスを供給するガス導入管20、21」は、本件発明1の「ガス供給ライン」に相当し、甲1発明の「チャンバー26内からガスを排出するガス排出管22、23」は、本件発明1の「送出ガスライン」に相当する。 (オ) 甲1発明の「サセプタ17」が接続されている「ウェーハ回転機構18」と、本件発明1の「前記サセプタおよび前記基板ウェーハを上昇させて回すための上昇および回転手段」とは、「前記サセプタおよび前記基板ウェーハを回すための回転手段」である点で共通する。 (カ) 甲1発明の「SUSからなるチャンバーベース25」は、本件発明1の「ステンレススチールの前記装置構成要素」として列記された「前記ベースリング」に対応する。 また、上記(エ)のとおり、甲1発明の「SUSからなるチャンバーベース25」は、「ガス導入管20、21」が接続された箇所、及び、「ガス排出管22、23」が接続された箇所に、本件発明1の「プロセスガスを前記基板ウェーハの上面上を通すためのガス入口およびガス出口」に対応する構成を備えているといえるから、甲1発明の「SUSからなるチャンバーベース25」は、本件発明1の「ステンレススチールの前記装置構成要素」として列記された「前記ガス入口、前記ガス出口」に対応する構成を備えているといえる。 また、甲1発明は、「このコーティングされる金属製部材としては、例えば、チャンバーベース25、ガス導入管20、21、ガス排出管22、23等の反応性ガスに対して露出された面をコーティングすることが好まし」いものであるから、甲1発明の「ガス導入管20、21」、「ガス排出管22、23」は、本件発明1の「ステンレススチールの前記装置構成要素」として列記された「前記ガス供給ライン」、「前記送出ガスライン」に相当する。 また、甲1発明の「ウェーハ回転機構18」は、その「内部はSUSが使われて」いるものであるから、本件発明1の「ステンレススチールの前記装置構成要素」として列記された「回転手段」に対応する。 (キ) 甲1発明の「アルコキシシランから生成される二酸化ケイ素(SiO2)の柔軟層12」は、「多量の有機物を含」むものであるから、Si-O-C構造となっているといえる。 また、甲1発明は、「気相成長装置を構成する部材のうち、金属を含む材料からなる金属製部材の金属の表面は、3層以上の構造からなるコーティング膜で覆われ、3層以上の構造の最表層と最下層は、ポリシラザンを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする緻密層で、最表層と最下層の間の中間層は、アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層であ」るから、「金属を含む材料からなる金属製部材の金属の表面」は、「3層以上の構造からなるコーティング膜」が含む「柔軟層12」で覆われるといえる。 そうすると、上記第4のとおり、本件発明1の「官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)」とは、二酸化ケイ素に類似した非晶質(非結晶性)ケイ素-酸素ネットワークに基づくコーティングであって、二酸化ケイ素に類似した非晶質(非結晶性)ケイ素-酸素ネットワークを、成膜時に炭素を取り込むことで意図的に改質し、非晶質Si-O-C構造としたものを意味するものであるから、甲1発明の「多量の有機物を含」むものである「アルコキシシランから生成される二酸化ケイ素(SiO2)の柔軟層12」と、本件発明1の「官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)」とは、Si-O-C構造のコーティングである点で共通し、甲1発明は、本件発明1と、ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、Si-O-C構造のコーティングで覆われたものである点で共通するといえる。 (ク) 以上によれば、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「 基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置であって、 上方部材と下方部材との間のベースリングと、 前記層の堆積中の前記基板ウェーハのキャリアとしてのサセプタと、 プロセスガスを前記基板ウェーハの上面上を通すためのガス入口およびガス出口、送出ガスラインおよびガス供給ラインと、 前記サセプタおよび前記基板ウェーハを回すための回転手段とを含み、 ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、Si-O-C構造のコーティングで覆われており、 ステンレススチールの前記装置構成要素は、前記ベースリング、前記ガス入口、前記ガス出口、前記ガス供給ライン、前記送出ガスライン、前記スリットバルブトンネル、前記スリットバルブドア、ならびに、前記回転手段であり、 前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されていることを特徴とする、装置。」 [相違点1] 本件発明1は、「上方ドームと下方ドーム」を含むのに対し、甲1発明の「チャンバーベース25を上下から挟む透明石英部材27、28」は、ドーム状であるか明らかでない点。 [相違点2] 本件発明1は、「スリットバルブトンネルおよびスリットバルブドア」を含むのに対し、甲1発明は、対応する構成を含むか明らかでない点。 [相違点3] 本件発明1は、「前記サセプタおよび前記基板ウェーハを上昇させて回すための上昇および回転手段とを含」むのに対し、甲1発明は、「ウェーハ回転機構18」が「ウェーハWを上面で支持するサセプタ17」を上昇させるものであるのか明らかでない点。 [相違点4] 本件発明1は、「ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)で覆われており」、この「官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)」は、アモルファスであるのに対し、甲1発明は、「アルコキシシランを熱処理して得られた二酸化ケイ素を主成分とする柔軟層」であって、「多量の有機物を含」む「アルコキシシランから生成される二酸化ケイ素(SiO2)の柔軟層12」がアモルファスであるのか明らかでない点。 [相違点5] 本件発明1は、「前記送出ガスライン」が、「蛇腹および円錐を含む」のに対し、甲1発明は、「ガス排出管22、23」がそのような構成であるか明らかでない点。 [相違点6] 本件発明1は、「標準圧力下で前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されていることを特徴とする、装置」であるのに対し、甲1発明は、「エピタキシャル層をウェーハW上に膜厚均一に気相成長させ」る際の雰囲気が「標準圧力下」であるか明らかでない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3、5について検討する。 (ア) 相違点3について a 甲4は、【0001】(上記1(3)イ)に「発明の分野」として「本発明の実施形態は、概ね、半導体処理システムに関する。特に、本発明の実施形態は半導体製造中に基板の背面からポリマーを除去するのに用いられる半導体処理システムに関する。」と記載されているとおり、半導体製造中に基板の背面からポリマーを除去するのに用いられる半導体処理システムに関するものであって、気相成長装置に関するものではない。 そうすると、甲4に記載された発明は、気相成長装置に係る発明ではなく、甲1発明とは異なる処理を行う装置に係る発明であって、装置の構成が異なるものであるから、甲1発明に甲4に記載された発明を組み合わせる動機付けがない。 b 甲5は、【0001】(上記1(3)ウ)に「技術分野」として「この発明は、バレル型気相成長装置、詳しくは半導体ウェーハの表面にエピタキシャル膜を気相成長させるバレル型気相成長装置に関する。」と記載され、【0021】に「サセプタ13は六角錐台型の筒体で、6つの周側面には上下2段(合計12箇所)にザグリ19がそれぞれ形成されている。各ザグリ19は、シリコンウェーハWを載置する正面視して円形の浅い凹部である。」と記載されているように、六角錐台型の筒体のサセプタ13の6つの周側面にシリコンウェーハWを載置するものであって、甲1発明の「ウェーハWを上面で支持するサセプタ17」を備えるものではない。 そうすると、甲1発明に甲5に記載された発明を組み合わせる動機付けがない。 c また、甲2、甲3、甲6には、相違点3に係る本件発明1の構成は記載されていない。 d したがって、申立人が示す証拠によって、甲1発明を相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であったとはいえない。 (イ) 相違点5について a 甲5の【0021】(上記1(3)ウ)に「ガス排気管16は、ベルジャ11の下端部の排気口にフランジ20aを介して連通された上流側配管部20と、真空発生装置の吸気部に下流側の開口部が連通され、かつ途中部分に水冷式排気ライン、熱交換器などが連通された下流側配管部21と、これらの上,下流側配管部20、21をフレキシブルに連通する蛇腹配管22と、蛇腹配管22の内部に収納されるスリーブ23とを有している(図2および図4)。」と記載されており、この「蛇腹配管22」は、本件発明1の「蛇腹」「を含む前記送出ガスライン」に相当するものの、本件発明1の「円錐を含む前記送出ガスライン」は記載されていない。 b また、甲2~甲4、甲6には、相違点5に係る本件発明1の構成は記載されていない。 c したがって、申立人が示す証拠によって、甲1発明を相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であったとはいえない。 ウ 申立人の主張 (ア) 相違点3について a 申立人は、特許異議申立書の第21頁第17行~第19行において、「甲第1号証に記載の気相成長装置におけるウェーハ回転機構18において、甲第4号証の図1、段落【0020】に記載の「基板支持アセンブリ126の回転及び上下動を制御」する「上下動及び回転の機構」を適用することに、格別の困難性はない。」と主張する。 b しかしながら、上記イ(ア)aのとおり、甲1発明に甲4に記載された発明を組み合わせる動機付けがあるとはいえないから、上記の主張は採用できない。 c また、申立人は、特許異議申立書の第15頁第10行~第12行において、甲3の【0033】の「この実施例では、半導体製造装置としてアプライド・マテリアルズ・インコーポレイテッドにより「Epi Centura」という商標名で製造、販売されているエピタキシャル成長装置を使用した。」との記載を摘記し、第21頁第11行~第15行において、本件発明1における相違点3に係る本件発明1の構成は、アプライド・マテリアルズ社のセンチュラ(Centura)(本件明細書の【0016】参照)の一般的な構成、及び/又は、当業者にとって周知慣用の技術にすぎない旨主張する。 d しかしながら、申立人は、相違点3に係る本件発明1の構成は、アプライド・マテリアルズ社のセンチュラ(Centura)の一般的な構成であることを立証する証拠を示していない。 また、甲3の【0017】(上記1(3)ア)には「また、このエピタキシャル成長装置10は、ウェハ搬送時にサセプタ14上にウェハWを降ろし或いはウェハWをサセプタ14から持ち上げるために、ウェハ搬送手段の一部をなすリフト機構22が設けられている。リフト機構22は、サセプタ支持シャフト16の主軸を囲むように配置された上下動可能なリフトチューブ24と、このリフトチューブ24を上下動させる駆動装置(図示しない)と、リフトチューブ24から放射状に延びる3本のリフトアーム26と、各リフトアーム26の先端から垂直上方に延設されたリフトピン28とから構成されている。」と記載されており、この構成は、相違点3に係る本件発明1の構成とは異なるものである。 さらに、申立人は、気相成長装置において、相違点3に係る本件発明1の構成を採用することが、周知慣用の技術であることを立証する証拠も示していない。 したがって、上記の主張は採用できない。 (イ) 相違点5について a 申立人は、特許異議申立書の第21頁第21行~第23行において、「後述のように、「円錐を含む前記送出ガスライン」は著しく不明確な記載である。以下、「円錐を含む」との事項については、甲第1号証に記載の発明との相違点とはせずに検討を行う。」と主張する。 b しかしながら、上記第5の1(2)のとおり、「円錐を含む前記送出ガスライン」は第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 c そして、上記イ(オ)a、bのとおり、甲1~甲6には、相違点5に係る本件発明1の構成は記載されていない。 d したがって、申立人が示す証拠によって、甲1発明を相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であったとはいえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2) 本件発明2、3について 上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点1~6に係る本件発明1の構成を有している。 そうすると、本件発明2、3と甲1発明を対比すると、少なくとも、上記相違点3、5の構成で相違するから、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2、3も、甲1発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 甲1を主たる証拠とする進歩性についてのまとめ 以上によれば、本件発明1~3は、甲1に記載された発明及び甲2~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 甲2を主たる証拠とする進歩性について (1) 本件発明1 ア 本件発明1と甲2発明との対比 (ア) 甲2発明の「ウェーハW」は、本件発明1の「基板ウェーハ」に相当する。 また、甲2発明は、「ウェーハWとして、CZ法で作製された面方位(100)、直径200mm、P型、抵抗率10Ωcmのシリコン単結晶ウェーハを、サセプタ12上に載置し、所定の反応温度で反応ガスとしてSiHCl3(シリコン原料)とジボラン(不純物源)をチャンバー17内に流し、P型、10Ωcm、厚さ10μmのエピタキシャル層の成長を行うことができる」ものであり、この「エピタキシャル層」は、本件発明1の「半導体材料の層」及び「エピタキシャル層」に相当する。 また、甲2発明の「気相成長」や「エピタキシャル層の成長」は、本件発明1の「堆積」に相当する。 そうすると、甲2発明の「ウェーハWとして、CZ法で作製された面方位(100)、直径200mm、P型、抵抗率10Ωcmのシリコン単結晶ウェーハを、サセプタ12上に載置し、所定の反応温度で反応ガスとしてSiHCl3(シリコン原料)とジボラン(不純物源)をチャンバー17内に流し、P型、10Ωcm、厚さ10μmのエピタキシャル層の成長を行うことができる」ものである「枚葉式の気相成長装置」と、本件発明1の「基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置であって」、「標準圧力下で前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されている」「装置」とは、「基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置であって」、「標準圧力下で前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されている」「装置」である点で共通する。 (イ) 甲2発明の「透明石英からなるチャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19」は、本件発明1の「上方ドームと下方ドーム」にそれぞれ対応し、甲2発明の「チャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19を固定し、ガス導入管13、ガス排出管16等が備え付けられるチャンバー側部部材14」は、本件発明1の「上方ドームと下方ドームとの間のベースリング」に対応する。 (ウ) 甲2発明は、「ウェーハWとして、CZ法で作製された面方位(100)、直径200mm、P型、抵抗率10Ωcmのシリコン単結晶ウェーハを、サセプタ12上に載置し、所定の反応温度で反応ガスとしてSiHCl3(シリコン原料)とジボラン(不純物源)をチャンバー17内に流し、P型、10Ωcm、厚さ10μmのエピタキシャル層の成長を行うことができる」ものであるから、甲2発明の「ウェーハWを載置するサセプタ12」は、本件発明1の「前記層の堆積中の前記基板ウェーハのキャリアとしてのサセプタ」に相当する。 (エ) 甲2発明の「反応ガス」及び「キャリアガス」は、本件発明1の「プロセスガス」に相当する。 また、甲2発明は、「ガス導入管13、ガス排出管16等が備え付けられるチャンバー側部部材14」を具備し、「反応ガスは、サセプタ12上に載置されたウェーハWの主表面上を通過」するものであるから、甲2発明の「チャンバー側部部材14」は、「ガス導入管13、ガス排出管16」が備え付けられる箇所に、本件発明1の「プロセスガスを前記基板ウェーハの上面上を通すためのガス入口およびガス出口」に対応する構成を備えているといえる。 また、甲2発明の「ガス導入管13」は、本件発明1の「ガス供給ライン」に相当し、甲2発明の「ガス排出管16」は、本件発明1の「送出ガスライン」に相当する。 (オ) 甲2発明の「サセプタ12を回転させるためのサセプタ回転機構15」と、本件発明1の「前記サセプタおよび前記基板ウェーハを上昇させて回すための上昇および回転手段」とは、「前記サセプタおよび前記基板ウェーハを回すための回転手段」である点で共通する。 (カ) 甲2発明の、「金属露出部材として、ステンレスからなる」構成としてて挙げられる「ガス導入管13やガス排出管16、チャンバー側部部材14、サセプタ回転機構15」は、本件発明1の「ステンレススチールの前記装置構成要素」として列記された「前記ガス供給ライン」、「前記送出ガスライン」、「前記ベースリング」、「前記上昇および回転手段」にそれぞれ対応する。 また、上記(エ)のとおり、甲2発明の「チャンバー側部部材14」は、「ガス導入管13、ガス排出管16」が備え付けられる箇所に、本件発明1の「プロセスガスを前記基板ウェーハの上面上を通すためのガス入口およびガス出口」に対応する構成を備えているといえるから、甲2発明の「チャンバー側部部材14」は、本件発明1の「ステンレススチールの前記装置構成要素」として列記された「前記ガス入口、前記ガス出口」に対応する構成を備えているといえる。 (キ) 甲2発明は、「金属露出部材の、上記ガス(チャンバー内部のみならず、チャンバーに連通するガス導入管内部及びガス排出管内部に導通されるガスも含む)に対して露出されている部位(以下、金属露出面と呼ぶことがある。)の少なくとも一部が保護膜で覆われ」たものであって、「液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材(以下、単に液体状シリカガラス材と呼ぶことがある。)を塗布し、これを焼成して形成することによって酸化膜(アモルファス酸化珪素膜;シリカ)を形成することによって行うことができ」るものであるから、甲2発明の「酸化膜(アモルファス酸化珪素膜;シリカ)」と、本件発明1の「官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)」とは、シリカ構造のコーティングである点で共通し、甲2発明は、本件発明1と、ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、シリカ構造のコーティングで覆われたものである点で共通するといえる。 (ク) 以上によれば、本件発明1と甲2発明の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「 基板ウェーハ上に半導体材料の層を堆積させるための装置であって、 上方部材と下方部材との間のベースリングと、 前記層の堆積中の前記基板ウェーハのキャリアとしてのサセプタと、 プロセスガスを前記基板ウェーハの上面上を通すためのガス入口およびガス出口、送出ガスラインおよびガス供給ラインと、 前記サセプタおよび前記基板ウェーハを回すための回転手段とを含み、 ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、シリカ構造のコーティングで覆われており、 ステンレススチールの前記装置構成要素は、前記ベースリング、前記ガス入口、前記ガス出口、前記ガス供給ライン、前記送出ガスライン、前記スリットバルブトンネル、前記スリットバルブドア、ならびに、前記回転手段であり、 前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されていることを特徴とする、装置。」 [相違点7] 本件発明1は、「上方ドームと下方ドーム」を含むのに対し、甲2発明の「チャンバー上部部材18及びチャンバー下部部材19」は、ドーム状であるか明らかでない点。 [相違点8] 本件発明1は、「スリットバルブトンネルおよびスリットバルブドア」を含むのに対し、甲2発明は、対応する構成を含むか明らかでない点。 [相違点9] 本件発明1は、「前記サセプタおよび前記基板ウェーハを上昇させて回すための上昇および回転手段とを含」むのに対し、甲2発明は、「サセプタ回転機構15」が「ウェーハWを載置するサセプタ12」を上昇させるものであるのか明らかでない点。 [相違点10] 「ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素」を覆う構成は、本件発明1は、「官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)」であるのに対し、甲2発明は、「保護膜の材料は、酸化珪素等の高温でも安定な無機材料が望まし」いものであって、「液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材(以下、単に液体状シリカガラス材と呼ぶことがある。)を塗布し、これを焼成して形成することによって酸化膜(アモルファス酸化珪素膜;シリカ)」である点。 [相違点11] 本件発明1は、「前記送出ガスライン」が、「蛇腹および円錐を含む」のに対し、甲2発明は、「ガス排出管16」がそのような構成であるか明らかでない点。 [相違点12] 本件発明1は、「標準圧力下で前記基板ウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために設計されていることを特徴とする、装置」であるのに対し、甲2発明は、「エピタキシャル層の成長を行う」際の雰囲気が「標準圧力下」であるか明らかでない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点9~11について検討する。 (ア) 相違点9について 上記2(1)イ(ア)と同様の理由により、甲2発明を相違点9に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であったとはいえない。 (イ) 相違点10について 甲2発明は、「保護膜の材料は、酸化珪素等の高温でも安定な無機材料が望まし」いものであるから、甲2発明の保護膜を、成膜時に炭素を取り込むことで意図的に改質し、相違点10に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であったとはいえない。 (ウ) 相違点11について 上記2(1)イ(イ)と同様の理由により、甲2発明を相違点11に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であったとはいえない。 ウ 申立人の主張 申立人は、令和7年12月24日付けの上申書の第2頁の下から8行~最終行において、「甲第2号証の請求項2、【0037】に記載の「液体状の無機ポリマーからなるシリカガラス材」について、甲第2号証の【0025】に「液体状シリカガラス材としては、ポリシラザン等のOH基を有しない無機ポリマー・・・等を用いることができる。」と記載されている。これを焼成して得られた膜にはポリマー中の官能基が含まれるものであり、本件発明1の構成要件Gにおける「ステンレススチールからなる1つ以上の装置構成要素が、官能性シリカ様コーティング(a-SiOx:CHy)で覆われており」に相当するといえる。」と主張する。 しかしながら、上記イ(イ)で述べたとおりであるから、上記の主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2) 本件発明2、3について 上記第2のとおり、本件発明2、3は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、いずれも上記相違点7~12に係る本件発明1の構成を有している。 そうすると、本件発明2、3と甲2発明を対比すると、少なくとも、上記相違点9~12の構成で相違するから、本件発明1について判断したことと同様の理由により、本件発明2、3も、甲2発明及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 甲2を主たる証拠とする進歩性についてのまとめ 以上によれば、本件発明1~3は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701089

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