特許異議申立
2018-700974
分電盤用内器、分電盤用内器ユニット、分電盤
- 審判番号
- 2018-700974
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-072461
- 登録番号
- 特許第6350937号(P6350937)
- 請求日
- 2018年11月30日
- 審決日
- 2019年12月20日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】川島 与志雄
- 審判長/審判官
- 審判長 大町 真義
- 審判官 小関 峰夫
- 審判官 井上 信
- 分類
- P1652.113-YAA(H02B) / P1652.121-YAA(H02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6350937号発明「分電盤用内器、分電盤用内器ユニット、分電盤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6350937号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第6350937号の請求項1、3、4、9及び10に係る特許を維持する。
特許第6350937号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許6350937号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成26年3月31日(優先権主張平成25年11月5日)の出願であって、平成30年6月15日に特許権の設定登録がされ、同年7月4日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年11月30日 :特許異議申立人川島与志雄(以下「異議申
立人」という。)による請求項1~4、9
及び10に係る特許に対する特許異議の申
立て
平成31年 3月15日付け:取消理由通知書
令和 1年 5月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
令和 1年 6月25日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和 1年 8月 6日 :異議申立人による意見書の提出
令和 1年 9月 3日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 1年11月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提
出
なお、異議申立人は特許異議申立書の意見書提出希望の有無の欄において、「希望する。」としているから、ここで、令和1年11月8日の訂正の請求に対する意見書を提出する機会を異議申立人に与える必要性の有無について検討する。
異議申立人は、令和1年5月21日の訂正の請求に対して、令和1年8月6日の意見書において、請求項2、請求項3(請求項2に従属するもの)、請求項4(請求項2に従属するもの)、請求項9(請求項2に従属するもの)、及び請求項10(請求項2に従属するもの)に係る発明についてのみ、特許が取り消されるべきものである旨主張している。
ところで、後述の「第2」に記載するように、令和1年11月8日の訂正の請求は、実質的に、令和1年5月21日の訂正の請求による訂正後の請求項1~10から、さらに請求項2を削除することと、当該請求項2の削除に伴う付随的な訂正だけである。
そうすると、異議申立人が令和1年8月6日の意見書において主張した上記請求項2、請求項3(請求項2に従属するもの)、請求項4(請求項2に従属するもの)、請求項9(請求項2に従属するもの)、及び請求項10(請求項2に従属するもの)に係る発明は、令和1年11月8日に請求された上記訂正により、対象が存在しないものとなる。
したがって、令和1年11月8日の訂正の請求に関しては、異議申立人の意見を聞く必要がない場合に該当することが明らかであって、特許法第120条の5第5項ただし書に規定される「特別の事情があるとき」にあたることから、異議申立人に意見書を提出する機会を与えないこととする。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和1年11月8日の訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されていることを特徴とする分電盤用内器。」とあるものを、
「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されており、前記電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体であることを特徴とする分電盤用内器。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、4、9及び10も同様に訂正する。)(下線は、特許権者が付与。以下同様。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「複数の前記機能アダプタのうち1つの前記機能アダプタのみに、前記各機能アダプタを制御する制御部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の分電盤用内器。」とあるものを、
請求項2を引用先から削除し、「複数の前記機能アダプタのうち1つの前記機能アダプタのみに、前記各機能アダプタを制御する制御部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の分電盤用内器。」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4、9及び10も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「複数の前記機能アダプタは、通信機能を有する電力計との間で通信可能な第1通信アダプタと、分電盤の外部の電気機器との間で通信可能な第2通信アダプタと、前記電気機器とは異なる外部装置との間で第1通信線を媒体として通信可能な第3通信アダプタとを備え、前記複数の前記機能アダプタは、前記第1通信アダプタ、前記第2通信アダプタ、前記第3通信アダプタの順番で並ぶように前記分電盤に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の分電盤用内器。」とあるものを、
「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されており、複数の前記機能アダプタは、通信機能を有する電力計との間で通信可能な第1通信アダプタと、分電盤の外部の電気機器との間で通信可能な第2通信アダプタと、前記電気機器とは異なる外部装置との間で第1通信線を媒体として通信可能な第3通信アダプタとを備え、前記複数の前記機能アダプタは、前記第1通信アダプタ、前記第2通信アダプタ、前記第3通信アダプタの順番で並ぶように前記分電盤に取り付けられることを特徴とする分電盤用内器。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の分電盤用内器における複数の前記機能アダプタのうち1つの前記機能アダプタのみを備え、前記1つの前記機能アダプタには、前記複数の前記機能アダプタのうち残りの前記機能アダプタを着脱自在に結合させる結合部が設けられていることを特徴とする分電盤用内器ユニット。」とあるものを、、
請求項2を引用先から削除し、「請求項1、および請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の前記分電盤用内器における複数の前記機能アダプタのうち1つの前記機能アダプタのみを備え、前記1つの前記機能アダプタには、前記複数の前記機能アダプタのうち残りの前記機能アダプタを着脱自在に結合させる結合部が設けられていることを特徴とする分電盤用内器ユニット。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の分電盤用内器もしくは請求項9記載の分電盤用内器ユニットと、前記分電盤用内器もしくは前記分電盤用内器ユニットを収納する分電盤用キャビネットとを備えていることを特徴とする分電盤。」とあるものを、
請求項2を引用先から削除し、「請求項1、および請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の分電盤用内器もしくは請求項9記載の分電盤用内器ユニットと、前記分電盤用内器もしくは前記分電盤用内器ユニットを収納する分電盤用キャビネットとを備えていることを特徴とする分電盤。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0009】に「本発明の分電盤用内器は、電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されていることを特徴とする。」とあるものを、
「本発明の一の態様に係る分電盤用内器は、電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されており、前記電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体であることを特徴とする。」に訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の段落【0010】の記載を削除する。
(9)訂正事項9
明細書の段落【0013】に「この分電盤用内器において、複数の前記機能アダプタは、通信機能を有する電力計との間で通信可能な第1通信アダプタと、分電盤の外部の電気機器との間で通信可能な第2通信アダプタと、前記電気機器とは異なる外部装置との間で第1通信線を媒体として通信可能な第3通信アダプタとを備え、前記複数の前記機能アダプタは、前記第1通信アダプタ、前記第2通信アダプタ、前記第3通信アダプタの順番で並ぶように前記分電盤に取り付けられることが好ましい。」とあるものを、
「本発明の他の態様に係る分電盤用内器は、電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されており、複数の前記機能アダプタは、通信機能を有する電力計との間で通信可能な第1通信アダプタと、分電盤の外部の電気機器との間で通信可能な第2通信アダプタと、前記電気機器とは異なる外部装置との間で第1通信線を媒体として通信可能な第3通信アダプタとを備え、前記複数の前記機能アダプタは、前記第1通信アダプタ、前記第2通信アダプタ、前記第3通信アダプタの順番で並ぶように前記分電盤に取り付けられることを特徴とする。」に訂正する。
本件訂正は、一群の請求項〔1~10〕に対してなされたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「電源アダプタ」及び「機能アダプタ」に関して、「電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体であること」を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の明細書の段落【0063】における、「例えば、電源アダプタ5は、図4に示すように、電力計測用アダプタ1、第1通信アダプタ2、第2通信アダプタ3、第3通信アダプタ4それぞれと別体に構成してもよい。」との記載によれば、上記「電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体である」ことは、本件特許明細書等に開示されているといえるから、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内での訂正である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、5及び6について
訂正事項3、5及び6は、訂正事項2により訂正された、特許請求の範囲の請求項2の記載との整合を図るため、請求項3、9及び10の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1を引用する請求項5を独立形式の請求項にするとともに、訂正前の請求項2~4を引用するものを削除するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項7~9について
訂正事項7~9は、訂正事項1、2及び4により訂正された、特許請求の範囲の請求項1、2及び5の記載との整合を図るため、明細書の段落【0009】、【0010】及び【0013】の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)本件訂正後の請求項5~8に係る発明について
訂正後の請求項5~8に係る発明は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項4により直接又は間接的に訂正されるものであるところ、訂正前の請求項5~8は、特許異議が申し立てられていない請求項である。
そうすると、訂正後の請求項5~8は、特許要件の充足いかんについて見直すべき新たな事情は存在せず、また、特許法第36条第4項第1号又は第6項(第4号は除く)に規定する要件を満たさないものでもないから、独立特許要件を満たす。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合する。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上述のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、及び3~10に係る発明(以下「本件発明1」、及び「本件発明3」~「本件発明10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、及び3~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、
複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されており、
前記電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体であることを特徴とする分電盤用内器。
【請求項3】
複数の前記機能アダプタのうち1つの前記機能アダプタのみに、前記各機能アダプタを制御する制御部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の分電盤用内器。
【請求項4】
前記制御部が設けられた前記機能アダプタのみに、前記電源アダプタから電力が供給されることを特徴とする請求項3記載の分電盤用内器。
【請求項5】
電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、
複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されており、
複数の前記機能アダプタは、通信機能を有する電力計との間で通信可能な第1通信アダプタと、分電盤の外部の電気機器との間で通信可能な第2通信アダプタと、前記電気機器とは異なる外部装置との間で第1通信線を媒体として通信可能な第3通信アダプタとを備え、
前記複数の前記機能アダプタは、前記第1通信アダプタ、前記第2通信アダプタ、前記第3通信アダプタの順番で並ぶように前記分電盤に取り付けられることを特徴とする分電盤用内器。
【請求項6】
前記第1通信アダプタは、電波を媒体とする無線通信と、電力線を媒体とする電力線搬送通信との少なくとも一方の通信が可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の分電盤用内器。
【請求項7】
前記第2通信アダプタは、電波を媒体とする無線通信と、第2通信線を媒体とする有線通信との少なくとも一方の通信が可能に構成されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載の分電盤用内器。
【請求項8】
前記第3通信アダプタは、前記外部装置から送信されたパルスを受信する機能と、前記外部装置との間でシリアル通信を行う機能との少なくとも一方の機能を有するように構成されていることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の分電盤用内器。
【請求項9】
請求項1、および請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の前記分電盤用内器における複数の前記機能アダプタのうち1つの前記機能アダプタのみを備え、
前記1つの前記機能アダプタには、前記複数の前記機能アダプタのうち残りの前記機能アダプタを着脱自在に結合させる結合部が設けられていることを特徴とする分電盤用内器ユニット。
【請求項10】
請求項1、および請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の分電盤用内器もしくは請求項9記載の分電盤用内器ユニットと、前記分電盤用内器もしくは前記分電盤用内器ユニットを収納する分電盤用キャビネットとを備えていることを特徴とする分電盤。」
第4 令和1年9月3日付け取消理由通知(決定の予告)について
1 取消理由通知(決定の予告)の概要
令和1年5月21日に訂正の請求がされた請求項1~10に係る特許に対して、当審が令和1年9月3日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
令和1年5月21日に訂正の請求がされた請求項2に係る発明、請求項2を引用する請求項3に係る発明、請求項2又は3を引用する請求項4に係る発明、請求項2、3又は4を引用する請求項9に係る発明、及び請求項2、3、4又は9を引用する請求項10に係る発明は、甲1~3発明、甲第3~5号証に記載された事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、それらの請求項2~4、9及び10に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、それらの請求項2~4、9及び10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
<引用文献等>
甲第1号証:特開2013-190208号公報
甲第2号証:「住宅盤用エネルギー監視装置 取扱説明書」(2013年3月現在のもの)日東工業株式会社
甲第3号証:特開2012-242354号公報
甲第4号証:特開2013-106322号公報
甲第5号証:「プチパネル(プチスリム搭載ホーム分電盤) HEMS対応ホーム分電盤」 平成23年5月発行 日東工業株式会社
2 判断
本件訂正により、請求項2は削除されたため、請求項2に係る発明、請求項2を引用する請求項3に係る発明、請求項2又は3を引用する請求項4に係る発明、請求項2、3又は4を引用する請求項9に係る発明、及び請求項2、3、4又は9を引用する請求項10に係る発明に対しての、取消理由通知(決定の予告)については、対象となる請求項が存在しないこととなった。
したがって、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由により、本件発明3、4、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
第5 令和1年9月3日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要について
異議申立人は、上記甲第1~5号証を挙げ、訂正前の請求項1、2、9及び10に係る発明は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明である旨、並びに訂正前の請求項1~4、9及び10に係る発明は、甲第3~5号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。
また、異議申立人は、令和1年8月6日に提出した意見書において、甲第6号証(実公平7-3699号公報)、甲第7号証(特開平10-78806号公報)、及び甲第8号証(特開2009-145163号公報)を挙げている。
2 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証の【図1】を参照すると、電流計測部11、電圧計測部12及び電力演算部13の3つの部分(以下「回路の電力測定部」という。)により、回路の電力を測定可能であることが分かる。
そして、甲第1号証には、上記事項及び特に段落【0015】~【0018】、【0023】、【0025】、【0036】、【0047】、【図1】及び【図3】~【図6】の記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「回路の電力測定部と、管理装置100との間でシリアル通信を行う通信部15とを有する本体ユニット1Aと、
回路の電力を測定可能な増設ユニット1Bとを備え、
本体ユニット1Aの電源回路部17は、本体ユニット1Aの電流計測部11、電圧計測部12、電力演算部13及び通信部15と、本体ユニット1Aに連結された増設ユニット1Bとに動作電源を供給し、
本体ユニット1Aと増設ユニット1Bとは、増設ユニット1Bの爪61fを本体ユニット1Aの溝に係止させることにより互いに連結され、且つ、本体ユニット1Aでは、電力演算部13が、増設ユニット1Bから、測定対象の回路の電流計測値を定期的に取り込み、
本体ユニット1Aは、増設ユニット1Bと別体であり、本体ユニット1Aは、電源回路部17、回路の電力測定部及び通信部15を備えている、
分電盤の盤内に設置される電力計測器。」
(2)甲第2号証
甲第2号証の4ページの「●ユニットとユニットの接続」に記載の図面を参照すると、一方のユニットの凹みと他方のユニットの凸部とにより、ユニットとユニットとが着脱自在に接続されていることがわかる。
また、同図面より、電源は主幹計測ユニット(PMU-HM1)の入力端子から入力され、ユニット間接続ケーブルにより各ユニット(PMU-HM2)~(PMU-HM4)に供給されることが分かるから、主幹計測ユニット(PMU-HM1)は、主幹電力を計測する部分の他に、電源を供給する部分も備えているといえる。
そして、甲第2号証には、上記事項及び特に2ページ~5ページの記載を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「主幹電力を計測する主幹計測ユニット(PMU-HM1)と、分岐回路の電力を計測する分岐計測ユニット(PMU-HM2)と、ガスメータパルス信号線用挿入端子を有するパルス計測ユニット(PMU-HM4)とを備え、
電源は主幹計測ユニット(PMU-HM1)の入力端子から入力され、ユニット間接続ケーブルにより分岐計測ユニット(PMU-HM2)及びパルス計測ユニット(PMU-HM4)に供給され、
各ユニットは、一方のユニットの凹みと他方のユニットの凸部とにより、ユニットとユニットとが着脱自在に接続され、且つ、主幹計測ユニット(PMU-HM1)と、分岐計測ユニット(PMU-HM2)及びパルス計測ユニット(PMU-HM4)とはユニット間接続ケーブルにより通信し、
主幹計測ユニット(PMU-HM1)と、分岐計測ユニット(PMU-HM2)及びパルス計測ユニット(PMU-HM4)とは別体であり、主幹計測ユニット(PMU-HM1)は、電源を供給する部分と主幹電力を計測する部分とを備えている、
住宅盤内に配置する住宅盤用エネルギー監視装置。」
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証(特に、段落【0020】、【0023】、【0026】~【0031】、【0034】、【0039】及び【図1】~【図3】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
「電力計測部113を備えると共に、パルス出力回路117a、パルス入力回路117b、RS485通信回路117c、及びUSB通信回路117dを備え、外部機器と信号の授受を行う基本ユニット11と、
分岐電路D5、D6の電力を計測する増設ユニット12とを備え、
基本ユニット11は電源回路116を備え、増設ユニット12は基本ユニットの電源回路116から駆動電圧が供給され、
基本ユニット11と増設ユニット12とは、互いの対向面に形成されたコネクタ同士が嵌合して接続され、且つ、基本ユニット11と増設ユニット12との間で通信経路L1が形成され、
基本ユニット11と増設ユニット12とは別体であり、基本ユニット11は、電源回路116と、電力計測部113、パルス出力回路117a、パルス入力回路117b、RS485通信回路117c、及びUSB通信回路117dを備えている、
電力計測システム1。」
イ 甲第3号証の段落【0024】、【0034】及び【図1】の記載を参照すると、制御部114は、基本ユニット11のみに設けられていることが分かる。
ウ 甲第3号証の「増設ユニット12は、基本ユニット11の電源回路116から電力供給経路L2を介して駆動電圧が供給されることで動作する。なお、本実施形態では、電源供給経路L2における電圧降下やノイズ等を考慮して増設ユニット12に電源回路126を設けている。電源回路126は、DC/DCコンバータで構成されており、基本ユニット11の電源回路116と電源供給経路L1を介して接続されている。そして、電源回路126は、電源回路116の出力電圧を昇降圧して3.3Vおよび5Vの駆動電圧を生成し、増設ユニット12はこの駆動電圧を用いて動作する。なお、電源回路126を省略し、電源回路116から出力される駆動電圧を直接用いて増設ユニット12が動作するように構成してもよい。」(段落【0031】)との記載、及び【図1】の記載を参照すると、基本ユニット11のみに電源回路116を設けることが示唆されているといえる。
エ 【図2】を参照すると、電力計測システム1がメインブレーカ(B1a、B1b)や保護用ブレーカ(B2~B6)の二次側の電流を測定すること分かる。
(4)甲第4号証
甲第4号証には、「無線通信装置及びそれを備えた無線通信システム」に関して、次の事項が記載されている。
ア 「【0018】
スマートメータ2は、分電盤1に有線にて接続されており、送電線から電力の供給を受けて分電盤1に供給すると共に、宅内において累積して消費された電力を表示する。 ・・・(後略)」
イ 「【0021】 ・・・(中略)・・・ HEMS管理装置10は、電力計測部14と、無線通信装置15等を有し、宅内で消費される電力の計測機能と、HEMSネットワークを介した家電機器3等の管理制御機能と、スマートメータ2との通信機能等を備える。電力計測部14は、幹線13に接続され、宅内で消費される電力を計測する。電力計測部14によって計測された電力の情報は、PLCモデム16を介してスマートメータ2に送信されたり、送信部18を介して情報処理端末8に送信されたりする。」
ウ 【図2】を参照すると、スマートメータ2が分電盤1の外にあり、電力計測部14を備えるHEMS管理装置10が分電盤1内にあることが分かる。
(5)甲第5号証
甲第5号証の最終ページを参照すると、エネルギー監視装置は、主幹計測ユニット、分岐計測ユニット及びパルス計測ユニットからなり、分電盤内に配置されていることが分かる。
また、甲第5号証の2ページ及び3ページを参照すると、エネルギー監視装置は、無線(bluetooth (登録商標))又は有線(RS485)でモニターへ出力しているから、分電盤の外部にある機器と通信するといえる。
3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 甲第1号証を主引用例として
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「回路の電力測定部と、管理装置100との間でシリアル通信を行う通信部15とを有する本体ユニット1A」は、本件発明1の「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうち」「複数の機能を有する機能アダプタ」に相当する。
以下同様に、「回路の電力を測定可能な増設ユニット1B」は、「電力を含むエネルギーを計測する機能」「を有する機能アダプタ」に、
「本体ユニット1Aの電源回路部17は、本体ユニット1Aの電流計測部11、電圧計測部12、電力演算部13及び通信部15と、本体ユニット1Aに連結された増設ユニット1Bとに動作電源を供給」することは、「各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され」ていることに、
「本体ユニット1Aと増設ユニット1Bとは、増設ユニット1Bの爪61fを本体ユニット1Aの溝に係止させることにより互いに連結され」ていることは、「複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され」ていることに、
「本体ユニット1Aでは、電力演算部13が、増設ユニット1Bから、測定対象の回路の電流計測値を定期的に取り込む」ことは、「前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されていること」に、
「分電盤の盤内に設置される電力計測器」は、「分電盤用内器」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明においては、本体ユニット1Aの電源回路部17は、本体ユニット1Aに連結された増設ユニット1Bに動作電源を供給するから、甲1発明の「本体ユニット1A」は、本件発明1の「電源アダプタ」にも相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致する。
「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、
複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されている、分電盤用内器。」
[相違点1]
本件発明1においては、「電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体である」のに対して、
甲1発明においては、本体ユニット1Aは、増設ユニット1Bと別体であるものの、本体ユニット1Aは、電源回路部17、回路の電力測定部及び通信部15を備えている点。
相違点1について検討する。
(ア)特許法第29条第1項第3号(新規性)について
甲1発明における本体ユニット1Aの「電源回路部17」は、本件発明1における「電源アダプタ」と同じ役割をし、
同じく、甲1発明における本体ユニット1Aの「回路の電力測定部及び通信部15」は、本件発明1における「機能アダプタ」と同じ役割をするといえる。
以上のことから、甲1発明の「本体ユニット1Aは、電源回路部17、回路の電力測定部及び通信部15を備えている」ことは、本体ユニット1Aが電源アダプタと機能アダプタとを一体に備えていることといえる。
そうすると、相違点1は、電源アダプタと機能アダプタとの関係に関して、本件発明1においては、「いずれも別体」であるのに対して、甲1発明においては、「一体」のものもある点で、実質的な相違点である。
そして、相違点1に係る本件発明1の構成については、甲第1号証に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明(甲1発明)ということはできない。
(イ)特許法第29条第2項(進歩性)について
甲1発明において、本体ユニット1Aに備えられた、「電源回路部17」と、「回路の電力測定部及び通信部15」とを、それぞれ「別体」のユニットとなるように変更することについて(すなわち「電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体」とすることについて)、甲第1~8号証に記載又は示唆があるものではないから、たとえ甲1発明に甲第1~8号証に記載された事項を適用したとしても、相違点1に係る本件発明1の構成に至るものではない。
また、かかる変更が、周知技術であると認める証拠があるものではなく、更に、相違点1に係る本件発明1の構成により後述するような作用効果を奏しうるから、かかる変更が設計的事項であるともいえない。
そうすると、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲第1~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
一方、本件発明1は、相違点1に係る本件発明1の構成により、次の記載に示される作用効果を奏しうる。すなわち、「電源アダプタが、複数の機能アダプタのいずれとも別体であることにより、仮に、電源アダプタに故障等の異常が生じた場合には、複数の機能アダプタはそのままで、電源アダプタのみを交換することが可能である。特に、電源アダプタは、分電盤内において電力を供給するために、例えば直接的に分岐ブレーカ等に接続されて使用されるので、分電盤外の機器に比較して、例えば雷サージのような異常電流の影響を受けやすく、雷サージ等の影響で故障することが考えられる。このように、訂正発明1において、電源アダプタが、複数の機能アダプタのいずれとも別体とされたことで、電源アダプタの異常時には、電源アダプタのみを交換することで異常の解消を図ることが可能である。また、反対に、いずれかの機能アダプタに故障等の異常が生じた場合には、正常な機能アダプタ及び電源アダプタはそのままで、異常が生じた機能アダプタのみを交換することが可能である。 ・・・(中略)・・・ 各機能アダプタは、『電力を含むエネルギーを計測する機能』、『分電盤の外部の機器との間で通信する機能』のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有するものであるので、比較的小さな電力を扱う『弱電系』の装置であって、ノイズの影響を受けやすい。一方で、電源アダプタは、分電盤内において機能アダプタの動作用の電力を作り出す必要があるため、一例として、交流100〔V〕等の比較的大きな電力を扱う『強電系』の装置である。訂正発明1では、このような電源アダプタをいずれの機能アダプタとも『別体』にすることで、『強電系』の電源アダプタと『弱電系』の機能アダプタとの干渉を抑え、ノイズの影響を受けやすい機能アダプタをノイズから保護する機能を実現している。 ・・・(中略)・・・ 結果的に、上記相違点1に係る訂正発明1の構成(電源アダプタは、複数の機能アダプタのいずれとも別体である)によれば、例えば、必要最小限の機能を有する分電盤用内器を構成して低コスト化を図りつつ、分電盤の機能の拡張性を高めることができ、さらに、ノイズの影響を受けやすい機能アダプタをノイズから保護できる、という顕著な効果を奏し得る。」(特許権者が令和1年5月21日に提出した意見書の4ページ14行~5ページ26行を参照。)
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第1~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 甲第2号証を主引用例として
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「主幹電力を計測する主幹計測ユニット(PMU-HM1)」は、本件発明1の「電力を含むエネルギーを計測する機能」「を有する機能アダプタ」に相当する。
以下同様に、「分岐回路の電力を計測する分岐計測ユニット(PMU-HM2)」は、「電力を含むエネルギーを計測する機能」「を有する機能アダプタ」に、
「ガスメータパルス信号線用挿入端子を有するパルス計測ユニット(PMU-HM4)」は、「分電盤の外部の機器との間で通信する機能」「を有する機能アダプタ」に、
「電源は主幹計測ユニット(PMU-HM1)の入力端子から入力され、ユニット間接続ケーブルにより分岐計測ユニット(PMU-HM2)及びパルス計測ユニット(PMU-HM4)に供給」されることは、「各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され」ていることに、
「各ユニットは、一方のユニットの凹みと他方のユニットの凸部とにより、ユニットとユニットとが着脱自在に接続され」ることは、「複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され」ることに、
「主幹計測ユニット(PMU-HM1)と、分岐計測ユニット(PMU-HM2)及びパルス計測ユニット(PMU-HM4)とはユニット間接続ケーブルにより通信」することは、「各機能アダプタ間で通信可能に構成されていること」に、
「住宅盤内に配置する住宅盤用エネルギー監視装置」は、「分電盤用内器」に、それぞれ相当する。
また、甲2発明においては、電源は主幹計測ユニット(PMU-HM1)から入力され、ユニット間接続ケーブルにより分岐計測ユニット(PMU-HM2)及びパルス計測ユニット(PMU-HM4)に供給されるから、甲2発明の「主幹計測ユニット(PMU-HM1)」は、本件発明1の「電力を供給する電源アダプタ」にも相当する。
以上のことから、本件発明1と甲2発明とは次の点で一致する。
「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、
複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されている、分電盤用内器。」
一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点2]
本件発明1においては、電源アダプタは、「複数の前記機能アダプタのいずれとも別体である」のに対して、
甲2発明においては、主幹計測ユニット(PMU-HM1)と、分岐計測ユニット(PMU-HM2)及びパルス計測ユニット(PMU-HM4)とは別体であるものの、主幹計測ユニット(PMU-HM1)は、電源を供給する部分と主幹電力を計測する部分とを備えている点。
相違点2について検討する。
(ア)特許法第29条第1項第3号(新規性)について
甲2発明における主幹計測ユニット(PMU-HM1)の「電源を供給する部分」は、本件発明1における「電源アダプタ」と同じ役割をし、
同じく、甲2発明における主幹計測ユニット(PMU-HM1)の「主幹電力を計測する部分」は、本件発明1における「機能アダプタ」と同じ役割をするといえる。
以上のことから、甲2発明の「主幹計測ユニット(PMU-HM1)は、電源を供給する部分と主幹電力を計測する部分とを備えている」ことは、主幹計測ユニット(PMU-HM1)が電源アダプタと機能アダプタとを一体に備えていることといえる。
そうすると、相違点2は、電源アダプタと機能アダプタとの関係に関して、本件発明1においては、「いずれも別体」であるのに対して、甲2発明においては、「一体」のものもある点で、実質的な相違点である。
そして、相違点2に係る本件発明1の構成については、甲第2号証に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明(甲2発明)ということはできない。
(イ)特許法第29条第2項(進歩性)について
甲2発明において、主幹計測ユニット(PMU-HM1)に備えられた、「電源を供給する部分」と「主幹電力を計測する部分」とを、それぞれ「別体」のユニットとなるように変更することについて(すなわち「電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体」とすることについて)、甲第1~8号証に記載又は示唆があるものではないから、たとえ甲2発明に甲第1~8号証に記載された事項を適用したとしても、相違点2に係る本件発明1の構成に至るものではない。
また、かかる変更が、周知技術であると認める証拠があるものではなく、更に、相違点2に係る本件発明1の構成により前記「ア(イ)」に示した作用効果を奏しうるから、かかる変更が設計的事項であるともいえない。
そうすると、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲第1~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲第1~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 甲第3号証を主引用例として
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「電力計測部113を備えると共に、パルス出力回路117a、パルス入力回路117b、RS485通信回路117c、及びUSB通信回路117dを備え、外部機器と信号の授受を行う基本ユニット11」は、本件発明1の「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうち」「複数の機能を有する機能アダプタ」に相当する。
以下同様に、「分岐電路D5、D6の電力を計測する増設ユニット12」は、「電力を含むエネルギーを計測する機能」「を有する機能アダプタ」に、
「基本ユニット11は電源回路116を備え、増設ユニット12は基本ユニットの電源回路116から駆動電圧が供給」されることは、「各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され」ていることに、
「基本ユニット11と増設ユニット12とは、互いの対向面に形成されたコネクタ同士が嵌合して接続され」ていることは、「複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され」ていることに、
「基本ユニット11と増設ユニット12との間で通信経路L1が形成される」ことは、「各機能アダプタ間で通信可能に構成されていること」に、それぞれ相当する。
また、甲3発明においては、増設ユニット12は基本ユニットの電源回路116から駆動電圧が供給されるから、甲3発明の「基本ユニット11」は、本件発明1の「電力を供給する電源アダプタ」にも相当する。
甲3発明の「電力計測システム1」と、本件発明1の「分電盤用内器」とは、「電力系統の機器」である限りにおいて共通する。
以上のことから、本件発明1と甲3発明とは次の点で一致する。
「電力を含むエネルギーを計測する機能、分電盤の外部の機器との間で通信する機能のうちいずれか1つもしくは複数の機能を有する機能アダプタを複数備え、前記各機能アダプタは、電力を供給する電源アダプタと電気的に接続され、
複数の前記機能アダプタは、互いに着脱自在に結合され、且つ、前記各機能アダプタ間で通信可能に構成されている、電力系統の機器。」
一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点3A]
本件発明1においては、「電源アダプタは複数の前記機能アダプタのいずれとも別体である」との構成を備えているのに対して、
甲3発明においては、基本ユニット11と増設ユニット12とは別体であるものの、基本ユニット11は、電源回路116と、電力計測部113、パルス出力回路117a、パルス入力回路117b、RS485通信回路117c、及びUSB通信回路117dを備えている点。
[相違点3B]
電力系統の機器に関して、本件発明1においては、「分電盤用内器」であるのに対して、
甲3発明においては、電力計測システム1は、分電盤内に配置されるものか否か明らかでない点。
相違点3Aについて検討する。
甲3発明における基本ユニット11の「電源回路116」は、本件発明1における「電源アダプタ」と同じ役割をし、
同じく、甲3発明における基本ユニット11の「電力計測部113、パルス出力回路117a、パルス入力回路117b、RS485通信回路117c、及びUSB通信回路117d」は、本件発明1における「機能アダプタ」と同じ役割をするといえる。
以上のことから、甲3発明の「基本ユニット11は、電源回路116と、電力計測部113、パルス出力回路117a、パルス入力回路117b、RS485通信回路117c、及びUSB通信回路117dを備えている」ことは、基本ユニット11が電源アダプタと機能アダプタとを一体に備えていることといえる。
そうすると、相違点3Aは、電源アダプタと機能アダプタとの関係に関して、本件発明1においては、「いずれも別体」であるのに対して、甲3発明においては、「一体」のものもある点で、実質的に相違している。
そして、甲3発明において、基本ユニット11に備えられた、「電源回路116」と、「電力計測部113、パルス出力回路117a、パルス入力回路117b、RS485通信回路117c、及びUSB通信回路117d」とを、それぞれ「別体」のユニットとなるように変更することについて(すなわち「電源アダプタは、複数の前記機能アダプタのいずれとも別体」とすることについて)、甲第1~8号証に記載又は示唆があるものではないから、たとえ甲3発明に甲第1~8号証に記載された事項を適用したとしても、相違点3Aに係る本件発明1の構成に至るものではない。
また、かかる変更が、周知技術であると認める証拠があるものではなく、更に、相違点3Aに係る本件発明1の構成により前記「ア(イ)」に示した作用効果を奏しうるから、かかる変更が設計的事項であるともいえない。
そうすると、甲3発明において、相違点3Aに係る本件発明1の構成とすることは、甲第1~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、相違点3Bについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲第1~8号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 本件発明1についての小括
以上のことから、本件発明1は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明ということはできないし、また、甲第1~8号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
(2)本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明ということはできないし、また、甲第1~8号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
(3)本件発明1、3又は4を引用する本件発明9及び10について
本件発明1、3又は4を引用する本件発明9及び10は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明ということはできないし、また、甲第1~8号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
(4)本件発明5~8を引用する本件発明9及び10について
本件発明5~8を引用する本件発明9及び10は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項4(請求項5の訂正)により間接的に訂正されるものであるところ、訂正前の請求項5~8は、特許異議が申し立てられていない請求項である。
そうすると、本件発明5~8を引用する本件発明9及び10は、特許要件の充足いかんについて見直すべき新たな事情は存在せず、甲第1~8号証に基いた取消理由が存在するとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由に照らしても、本件発明1、3、4、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、3、4、9及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2に対して異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったことから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-700974