特許異議申立
2025-700017
固体酸化物型燃料電池およびその製造方法
- 審判番号
- 2025-700017
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-161058
- 登録番号
- 7504375
- 請求日
- 2024年12月24日
- 審決日
- 2025年03月19日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】太陽誘電株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人片山特許事務所
- 【異議申立人】鈴木 和行
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1652.113-Y (H01M) / P1652.121-Y (H01M) / P1652.536-Y (H01M) / P1652.537-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7504375号発明「固体酸化物型燃料電池およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7504375号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7504375号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、令和2年9月25日の出願であって、令和6年6月14日に特許権の設定登録がされ、令和6年6月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対して、令和6年12月24日に特許異議申立人 鈴木和行により請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、
前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層と、
前記中間層上に設けられたカソードと、を備え、
前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており、
前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
【請求項2】
前記中間層において、前記カソード側に対する凸部における前記空隙の数密度は、前記カソード側に対する凹部における前記空隙の数密度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項3】
前記空隙の平均径は、50nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項4】
前記電解質層の前記凹凸は、前記中間層側の面において、平面視で2次元方向に並ぶように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項5】
前記中間層は、セリアに添加物が添加された材料であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池。
【請求項6】
酸化物イオン伝導性材料粉末を含むスラリを塗工することで電解質層グリーンシートを作製し、
前記電解質層グリーンシート上に、前記電解質層グリーンシートの前記酸化物イオン伝導性材料粉末のD50%粒径よりも小さいD50%粒径を有する酸化物イオン伝導性材料粉末と、樹脂粒子とを含むスラリを塗工し、焼成することで、表面に凹凸を有する電解質層を形成する工程と、
前記電解質層上に、酸化物イオン伝導性を有しかつカソード活性を有していない中間層をPVD法で成膜し、
前記中間層上にカソードを成膜し、
前記中間層をPVD法で成膜する際に、前記電解質層側から前記カソード側にかけて複数の空隙が所定の線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されるように、成膜速度および基盤加熱温度の少なくともいずれか一方を制御することを特徴とする固体酸化物型燃料電池の製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立理由1
請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないため、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
申立理由2
請求項1に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないため、請求項1に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
申立理由3
請求項1、2、4、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明であるから、請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明であるから、請求項1ないし5に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
申立理由4
請求項2、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2018-142419号公報
甲第2号証:特開2018-174117号公報
甲第3号証:特開2018-174116号公報
第4 甲各号証の記載事項、引用発明
1 甲第1号証
(1)甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【0003】
こうした反応防止層を備える固体酸化物形燃料電池セルとして、反応防止層に固体電解質層側からカソード側に延びる複数の柱状Srジルコネートを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池セルでは、反応防止層の気孔中にカソードから固体電解質層へ拡散するSrをトラップしてSrZrO3層を偏析させ、反応防止層と固体電解質層とのネットワークを作ることにより酸素イオン導電を確保している。」
「【0011】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、
ジルコニア系の固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の面側に設けられたアノードと、前記固体電解質層の他方の面側に設けられたSrを含有するカソードと、前記固体電解質層と前記カソードとの間に設けられたセリアに希土類元素をドープした反応防止層と、を有する固体酸化物形燃料電池セルであって、
前記反応防止層は、前記希土類元素(A)の酸化物(AO1.5)としたときのドープ量が10mol%より多く30mol%未満である、
ことを特徴とする。」
「【0020】
反応防止層28は、セリアCe(+4価)の一部を希土類カチオン(+3価)でドープ(置換)したセリア系材料(GDC)であって、ドープ量が希土類元素(A)の酸化物(AO1.5)としたときに10mol%より多く30mol%未満としたものを用いることができる。セリアに希土類元素をドープしないと、カソード26から固体電解質層22へ酸素イオンが通過することができず、固体酸化物燃料電池として機能することができないが、セリアに希土類元素をドープすると、酸化セリウムの結晶格子中に酸素空孔が生成し、酸素空孔間を酸素イオンが移動することによって、ジルコニア系酸化物よりも高い酸素イオン導電性を示すようになる。一方、GDCは、焼結性が低いため、一般的な焼結温度である1300~1400℃の温度域では緻密化が充分とはならない。GDCが緻密化していないと、カソード26から固体電解質層22へ運ぶ酸素イオンの移動が阻害されてしまう。また、カソード26の構成材料に含まれるSrが反応防止層28を気相拡散して固体電解質22側へ突き抜け、固体電解質層22と反応して高抵抗層のSrZrO3層を生成し、オーム損が増加し、発電性能を低下させてしまう。本実施形態では、ドープ量を10mol%より多く30mol%未満とすることにより、一般的な焼結温度でもGDCの緻密化を図り、良好な酸素イオン導電性とSrの気相拡散の抑制を実現している。」
「【0025】
図2は比較例1(ドープ量が10mol%)を用いた固体酸化物形燃料電池セルの断面の写真であり、図3は実施例1(ドープ量が20mol%)を用いた固体酸化物形燃料電池セルの断面の写真であり、図4は比較例2(ドープ量が30mol%)を用いた固体酸化物形燃料電池セルの断面の写真である。図示するように、実施例1の反応防止層は、比較例1,2に比して緻密化しているのが解る。」
「【0027】
実験結果を次表に示す。表に示すように、実施例1は、反応防止層気孔率が5.2%であり、比較例1の27%や比較例2の21%に比して小さい。これは、実施例1は、比較例1,2に比して緻密化していることを示している。」
[図:0001421404000001.jpg]
ここで、特許異議申立人が引用する図4に示される比較例2に着目すると、甲第1号証には、固体酸化物形燃料電池セルに関して、次の事項が記載されている。
・【0011】によると、甲第1号証に記載された固体酸化物形燃料電池セルは、ジルコニア系の固体電解質層と、前記固体電解質層の一方の面側に設けられたアノードと、前記固体電解質層の他方の面側に設けられたカソードと、前記固体電解質層と前記カソードとの間に設けられたセリアに希土類元素をドープした反応防止層と、を有する固体酸化物形燃料電池セルである。
・【0003】及び【0027】によると、反応防止層には気孔が形成されており、反応防止層気孔率は21%である。
・図4より、反応防止層には気孔が形成されていること、及び反応防止層は、固体電解質層の反応防止層側の面に設けられた凹凸とは、境界に形成された気孔を隔てて形成されていることが見て取れる
ここで、特許異議申立人は、甲第1号証の図4の拡大図である図Aを示し(特許異議申立書13頁参照)、「図Aの2組の連続した3個の赤丸は、反応防止層内の空隙を示す。図Aに示すように、反応防止層(中間層)において、電解質層側からカソード側にかけて、複数の空隙(連続した3個の赤丸で示す空隙)が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」と主張している。(特許異議申立書12頁21行-13頁1行)
しかしながら、図4において、特許異議申立人が着目した2組以外の連続した3個の気孔(空隙)に着目すると、気孔の配置が不規則であることから、連続した3個の気孔はあらゆる方向に並んでいるといえる。
そうるすると、図Aの連続した3個の赤丸で示す気孔(空隙)は、電解質層側からカソード側にかけて、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている様に見えるが、これは、特許異議申立人が着目した2組の連続した3個の気孔に限ってのことであり、図4の気孔の配置を適切に表したものとはいえない。
したがって、図4からは、前記異議申立人の主張は認められず気孔の配置については、上記のように反応防止層に気孔が形成されていることが認められる。
(2)甲1発明
上記記載事項より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「ジルコニア系の固体電解質層と、
前記固体電解質層の一方の面側に設けられたアノードと、
前記固体電解質層の他方の面側に設けられたカソードと、
前記固体電解質層と前記カソードとの間に設けられたセリアに希土類元素をドープした反応防止層と、を有する固体酸化物形燃料電池セルであって、
前記反応防止層には気孔が形成されており、反応防止層気孔率は21%であり、
前記反応防止層は、前記固体電解質層の前記反応防止層側の面に設けられた凹凸とは、境界に形成された気孔を隔てて形成されている固体酸化物形燃料電池セル。」
2 甲第2号証
(1)甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「【0007】
上記の特徴構成のように、反応防止層と電解質層との界面に気孔率の大きい疎突出領域が存在すると、この疎突出領域がヒートサイクルにより生じる応力を緩和させるため、層間の界面強度が向上し、剥離しづらい電気化学素子を提供できる。」
「【0035】
上記の特徴構成によれば、反応防止層の焼成を1100℃以下で行うことにより、多孔質かつ微細な構造を有し、例えば燃料電池セルで用いる場合、ヒートサイクルや発電時に起こるセルの膨張収縮に起因する応力を吸収緩和することができ、さらには隣接する層との剥離が抑制できる反応防止層を得ることができるので好ましい。また1050℃以下の温度で反応防止層の焼成を行うと上述の効果が得やすくなるので更に好ましい。さらに金属基板1の劣化を抑制するため、反応防止層の焼成を1100℃以下の温度で行うことが好ましく、1050℃以下の温度で行うと更に好ましい。」
「【0037】
<第1実施形態>
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る電気化学素子Eおよび固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)について説明する。電気化学素子Eは、例えば、水素を含む燃料ガスと空気の供給を受けて発電する固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いられる。なお以下、層の位置関係などを表す際、例えば電解質層4から見て第2電極層6の側を「上」または「上側」、第1電極層2の側を「下」または「下側」という場合がある。また、金属基板1における第1電極層2が形成されている側の面を「表側」、反対側の面を「裏側」という場合がある。
【0038】
(電気化学素子)
電気化学素子Eは、図1に示される通り、金属基板1(金属支持体)と、金属基板1の上に形成された第1電極層2(対極電極層)と、第1電極層2の上に形成された中間層3と、中間層3の上に形成された電解質層4とを有する。そして電気化学素子Eは、更に、電解質層4の上に形成された反応防止層5と、反応防止層5の上に形成された第2電極層6(電極層)とを有する。つまり第2電極層6は電解質層4の上に形成され、反応防止層5は電解質層4と第2電極層6との間に形成されている。本実施形態に係る電気化学素子Eは、電解質層4と、電解質層4と第2電極層との間に配置された反応防止層5とを有する。第1電極層2は多孔質であり、電解質層4は緻密である。」
「【0052】
電解質層4の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。」
「【0057】
・・・具体的には反応防止層5の材料としては、GDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。」
「【0060】
以下、図5を参照しながら本実施形態の電解質層4が有する特徴的な凹凸形状について説明する。図5は、本実施形態に係る電気化学素子Eの断面の電子顕微鏡写真である。図5では、反応防止層5の内部の細孔空間が黒く示されている。
【0061】
反応防止層5は、電解質層4との界面に凹部Fおよび凸部Gから形成される凹凸形状を有して形成される。反応防止層5において、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとする。そして反応防止層5において、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、突出領域Kの頂部の線分Jからの高さが0.5μm以上であり、かつ、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する。なお疎突出領域Nにおいて、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間の距離は15μm以下である。」
「【0068】
(第2電極層)
第2電極層6は、反応防止層5の上に薄層の状態で形成することができる。・・・以上の材料を用いて構成される第2電極層6は、カソードとして機能する。」
図5
[図:0001421404000002.jpg]
(2)甲2発明
上記記載事項より、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「電解質層4と、
電解質層4の上に形成された反応防止層5と、
反応防止層5の上に形成された第2電極層6とを有し(【0038】)、
電解質層4の材料はYSZ(イットリア安定化ジルコニア)であり(【0052】)、
反応防止層5の材料はGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)であり(【0057】)、
第2電極層6はカソードであり(【0068】)、
反応防止層5は、電解質層4との界面に凹部Fおよび凸部Gから形成される凹凸形状を有し(【0061】)、
反応防止層5は内部に細孔空間を有し(【0060】)、
反応防止層5において、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとし、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する(【0061】)、
固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いられる電気化学素子E(【0037】)。」
なお、特許異議申立人は、甲第2号証の図5の拡大図である図Bを示し(特許異議申立書18頁参照)、「図Bの2組の連続した3個の赤丸は、反応防止層内の空隙を示す。図Bに示すように、反応防止層(中間層)において、電解質層側からカソード側にかけて、複数の空隙(連続した3個の赤丸で示す空隙)が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」と主張している。(特許異議申立書17頁7-11行)
しかしながら、上記主張については、甲第1号証の図4について検討したとおりである(上記「1(1)」)。
3 甲第3号証
(1)甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
「【0006】
〔構成1〕
上記目的を達成するための電気化学素子の特徴構成は、
電解質層と、電極層と、前記電解質層と前記電極層との間に配置された反応防止層とを有する電気化学素子であって、
前記反応防止層は、その内部に複数の細孔空間を有し、
前記反応防止層の断面において、前記反応防止層の厚さ方向に仮想直線を設定した場合、前記細孔空間の外周面との交点が1μmあたり平均3.3個以上となる仮想直線が存在する点にある。」
「【0008】
上記の特徴構成のように、反応防止層を多孔質かつ微細な構造とすることで、燃料電池セルのヒートサイクルや発電時に起こるセルの膨張収縮に起因する応力を反応防止層で吸収緩和することができ、反応防止層・電解質間あるいは反応防止層・空気極間の剥離が抑制できる。また、1層構造とすることでコストの低減にもつながる。」
「【0036】
<第1実施形態>
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る電気化学素子Eおよび固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)について説明する。電気化学素子Eは、例えば、水素を含む燃料ガスと空気の供給を受けて発電する固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いられる。なお以下、層の位置関係などを表す際、例えば電解質層4から見て第2電極層6の側を「上」または「上側」、第1電極層2の側を「下」または「下側」という場合がある。また、金属基板1における第1電極層2が形成されている側の面を「表側」、反対側の面を「裏側」という場合がある。
【0037】
(電気化学素子)
電気化学素子Eは、図1に示される通り、金属基板1(金属支持体)と、金属基板1の上に形成された第1電極層2(対極電極層)と、第1電極層2の上に形成された中間層3と、中間層3の上に形成された電解質層4とを有する。そして電気化学素子Eは、更に、電解質層4の上に形成された反応防止層5と、反応防止層5の上に形成された第2電極層6(電極層)とを有する。つまり第2電極層6は電解質層4の上に形成され、反応防止層5は電解質層4と第2電極層6との間に形成されている。本実施形態に係る電気化学素子Eは、電解質層4と、電解質層4と第2電極層との間に配置された反応防止層5とを有する。第1電極層2は多孔質であり、電解質層4は緻密である。」
「【0051】
電解質層4の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。」
「【0056】
・・・具体的には反応防止層5の材料としては、GDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。」
「【0060】
(第2電極層)
第2電極層6は、反応防止層5の上に薄層の状態で形成することができる。・・・以上の材料を用いて構成される第2電極層6は、カソードとして機能する。」
「【0081】
次に、GDCの微粉末に有機バインダーと有機溶媒(分散媒)を加えてペーストを作製した。そのペーストを用いて、スクリーン印刷により、電気化学素子Eの電解質層4の上に、反応防止層5を形成した。」
「【0085】
この電気化学素子Eの断面の電子顕微鏡写真を図5に示す。この電子顕微鏡写真から分かるように、反応防止層5が、内部に複数の細孔空間(黒く示された部位)を有する状態に形成されている」
図5
[図:0001421404000003.jpg]
図5より、反応防止層5は、電解質層4の反応防止層5側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されていることが見て取れる。
(2)甲3発明
上記記載事項より、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「電解質層4と、
電解質層4の上に形成された反応防止層5と、
反応防止層5の上に形成された第2電極層6とを有し(【0037】)、
電解質層4の材料はYSZ(イットリア安定化ジルコニア)であり(【0051】)、
反応防止層5の材料はGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)であり(【0056】)、
第2電極層6はカソードであり(【0060】)、
反応防止層5は、電解質層4の反応防止層5側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており(図5)、
反応防止層5は内部に複数の細孔空間を有する(【0085】)、
固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いられる電気化学素子E(【0036】)。」
なお、特許異議申立人は、甲第3号証の図5の拡大図である図Cを示し(特許異議申立書22頁参照)、「図Cの2組の連続した3個の赤丸は、反応防止層内の空隙を示す。図Cに示すように、反応防止層(中間層)において、電解質層側からカソード側にかけて、複数の空隙(連続した3個の赤丸で示す空隙)が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」と主張している。(特許異議申立書22頁5-8行)
しかしながら、上記主張については、甲第1号証の図4について検討したとおりである(上記「1(1)」)。
第5 当審の判断
1 申立理由1(第36条第6項第1号)について
(1)特許異議申立人の主張
a 本件特許発明1には「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており」と記載されている。
一方、本件明細書の記載から、カソード60の反応抵抗を低下させるためには、a)カソード60の中間層50側の面に凹凸を形成し、さらに中間層50のカソード60側の面にカソード60の凹凸に沿うように凹凸を形成することで、両者の接触面積を拡大して反応抵抗を低下させる、及び、b)電解質層40の中間層50側の面に凹凸を形成し、さらに中間層50の電解質層50側の面に、電解質層40の凸部42と中間層50の凸部52との位置が略一致するように凹凸を形成して中間層50が部分的に厚くなることを抑制し、電解質層40とカソード60との距離を短くすることによりカソード60の反応抵抗を低下させる要件が必要であると考えられる。
しかしながら、本件特許発明1では、中間層は、電解質層の中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されていることのみが記載され、中間層のカソード側の面に凹凸が形成されていること、および、電解質層の凸部と中間層の凸部の位置が略一致することが記載されていない。そのため、本件特許発明1は、電解質層とカソードとの距離が必ずしも短くならない態様を含む。
以上から、本件特許発明1は、発明の課題が解決できること、即ちカソードの反応抵抗を低下できることを、当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている発明である。(特許異議申立書7頁7行-9頁2行)
b 本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており」との記載について、どの程度の凹凸であれば作用効果を奏するのか、開示されていない。したがって、本件特許発明1は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている発明である。(特許異議申立書9頁3-7行)
c 本件特許発明1には「前記中間層において、」「複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶ」と記載されている。
一方、本件明細書の記載から、中間層内に設けられる空隙は、所定の大きさを有し、且つ、所定線に沿って所定の個数を有していなければ、熱膨張率差に起因して生じる応力を吸収して剥離を抑制する効果を得ることができないと考えられる。
しかしながら、本件特許発明1では、空隙の大きさおよび所定線に沿って並ぶ空隙の個数や空隙が形成される場所等について何ら限定されていないため、上記した作用効果を奏することはできない。
従って、本件特許発明1は、発明の課題が解決できること、即ち熱膨張率差に起因して生じる応力を吸収して剥離を抑制できることを、当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている発明である。(特許異議申立書9頁8-25行)
(2)当審の判断
ア 上記主張aについて
発明の詳細な説明の「中間層を設けると、発電時の反応抵抗が高くなるおそれがある。また、昇降温を繰り返すと、電解質層と中間層との間の熱膨張率差に起因して中間層に剥がれが生じるおそれがある。」(【0004】)の記載からすると、本件特許の課題は、発電時の反応抵抗が高くなるおそれがあること、又は、熱膨張率差に起因して中間層に剥がれが生じるおそれがあることである。
そして、発明の詳細な説明に「図5で例示するように、中間層50には、複数の空隙53が形成されている。」(【0031】)、「中間層50内に形成されている空隙53は、電解質層40と中間層50との熱膨張率差に起因する応力を吸収する。したがって、当該応力が生じても、空隙53によって緩和されることになる。その結果、燃料電池100の昇降温サイクル耐性が向上し、電解質層40からの中間層50の剥がれが抑制される。」(【0032】)と記載されているように、中間層に複数の空隙を形成することにより、上記課題の一つである、熱膨張率差に起因して中間層に剥がれが生じるおそれを解決しているといえる。
そうすると、「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」と特定される本件特許発明1は、上記課題の一つを解決するための手段が反映されているといえる。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲であるので、発明の詳細な説明に記載したものである。
ここで、上記主張aについて検討すると、上記主張aに関係する、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており」の記載は、上記課題の他の一つである発電時の反応抵抗が高くなるおそれに対応するものである。
しかしながら、発明の詳細な説明の記載から複数の課題が把握できる場合は、そのうちのいずれかの課題を解決するための手段が請求項に反映されていれば足りるのであり、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」の特定により、上述のように課題の一つを解決している。
そうすると、本件特許発明1の記載が「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており」にとどまり、カソードの中間層側の面の凹凸や、電解質層の凸部と中間層の凸部との位置が略一致するように凹凸を形成することの記載が無くても、本件特許発明1は、上記課題を解決するための手段が反映されており、上記主張aを採用することができない。
イ 上記主張bについても、上記主張aと同様であり、採用することができない。
ウ 上記主張cについて
発明の詳細な説明には「図5で例示するように、中間層50には、複数の空隙53が形成されている。複数の空隙53は、中間層50内において、電解質層40の凸部42からカソード60に向かう所定線に沿って所定間隔で並ぶように形成されている。」(【0031】)、「中間層50内に形成されている空隙53は、電解質層40と中間層50との熱膨張率差に起因する応力を吸収する。したがって、当該応力が生じても、空隙53によって緩和されることになる。その結果、燃料電池100の昇降温サイクル耐性が向上し、電解質層40からの中間層50の剥がれが抑制される。」(【0032】)と記載されている。
ここで、段落【0031】には、中間層に複数の空隙が形成されていること、及び複数の空隙の並びについて記載されており、段落【0032】には、中間層内に形成されている空隙により、熱膨張率差に起因する応力を吸収して中間層の剥がれが抑制されることが示されている。また、段落【0050】には中間層形成工程について記載がある。してみれば、本件明細書等には、空隙の大きさ、及び個数については具体的な特定はないとしても、前記中間層形成工程により得られる、空隙の大きさ、及び個数であれば、本件特許の課題の一つである、熱膨張率差に起因して中間層に剥がれが生じるおそれを解決できることは、当業者にとって明らかである。
そうすると、「本件明細書の記載から、中間層内に設けられる空隙は、所定の大きさを有し、且つ、所定線に沿って所定の個数を有していなければ、熱膨張率差に起因して生じる応力を吸収して剥離を抑制する効果を得ることができないと考えられる。」との上記主張は採用できない。
そして、上述のように、「前記中間層において、」「複数の空隙が」「形成されている」との特定により、本件特許発明1は上記課題を解決しているので、「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」と特定される本件特許発明1は、上記課題の一つを解決するための手段が反映されているといえる。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲であるので、発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、上記主張cを採用することができない。
エ よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。
2 申立理由2(第36条第4項第1号)について
(1)特許異議申立人の主張
a 本件特許発明1には、「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側に面に設けられた凹凸に沿うように形成されており」と記載されている。しかしながら、凹凸の大きさについて、発明の詳細な説明に具体的な記載がなく、かつ周知のものでもないから、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。即ち請求項1における上記記載は実施可能要件を満たしていない。(特許異議申立書9頁27行-10頁4行)
b 本件特許発明1には、「複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶ」と記載されている。しかしながら、所定線の長さや角度について、発明の詳細な説明に具体的な記載がなく、且つ、周知のものでもないから、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。即ち請求項1における上記記載は実施可能要件を満たしていない。(特許異議申立書10頁5-9行)
(2)当審の判断
ア 上記主張aについて
発明の詳細な説明の段落【0048】には、支持体グリーンシートを複数枚、混合層グリーンシートを1枚、アノードグリーンシートを1枚、電解質層グリーンシートを1枚、凹凸層グリーンシートを1枚の順に積層し、酸素分圧が10-20atm以下の還元雰囲気において1100℃~1300℃程度の温度範囲で焼成し、電解質層40および凹凸層を備えるハーフセルを得ることができると、電解質層に設けられた凹凸を形成することが具体的に説明されている。
そして、実施例1として、支持体グリーンシート上に、混合層グリーンシート、アノードグリーンシート、電解質層グリーンシート、および凹凸層用グリーンシートを積層し、酸素分圧が10-16atm以下の還元雰囲気下で焼成し、GDCおよびNiをアノードの電極骨格に含浸させた後に大気雰囲気下で850℃以下の温度にて焼成し、その後、PVDにより、成膜速度は10nm/hour、基盤加熱温度は300℃としてCe0.8Gd0.2O2-xの中間層を形成し、中間層上に、スクリーン印刷等により、カソード用材料を塗布し、乾燥させ、その後、1000℃以下の温度で空気雰囲気での熱処理によってカソード用材料を焼結し、カソードを形成し、中間層のSTEM(走査型透過電子顕微鏡)写真を確認したところ、中間層において電解質層からカソードにかけて複数の空隙が所定線に沿って間隔を空けて形成されていることを確認し、空隙の平均径は、10nmであり、電解質層からカソードまで1つの凸部52当たりの空隙53の個数の平均値は、500個であったことが記載されている(【0055】)。
そうすると、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており、前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されていること」を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
ここで、上記主張aにおいて「しかしながら、凹凸の大きさについて、発明の詳細な説明に具体的な記載がなく、かつ周知のものでもないから、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」と主張するが、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いることが、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていればよいのであり、凹凸の大きさについては、必ずしも具体的に記載する必要はない。
そして、上述のように、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており、前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されていること」を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、上記主張aを採用することができない。
イ 上記主張bについて
上記アで検討したように、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており、前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されていること」を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
ここで、上記主張bにおいて「しかしながら、所定線の長さや角度について、発明の詳細な説明に具体的な記載がなく、且つ、周知のものでもないから、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。即ち請求項1における上記記載は実施可能要件を満たしていない。」と主張するが、本件特許発明1の「複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶ」ことが、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていればよいのであり、所定線の長さや角度については、必ずしも具体的に記載する必要はない。
そして、上述のように、発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されており、前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されていること」を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるので、上記主張bを採用することができない。
ウ よって、本件特許発明1について、発明の詳細な説明の記載は当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
3 申立理由3(第29条第1項第3号)及び申立理由4(第29条第2項)について
(1)甲第1号証を主引例とした場合の申立理由3及び申立理由4
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。
a 甲1発明の「ジルコニア系の固体電解質層」は、本件特許発明1の「酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層」に相当する。
b 甲1発明の「前記固体電解質層と前記カソードとの間に設けられたセリアに希土類元素をドープした反応防止層」は、本件特許発明1の「前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層」に相当する。
但し、中間層について、本件特許発明1は「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層は、前記固体電解質層の前記反応防止層側の面に設けられた凹凸とは、境界に形成された気孔を隔てて形成されている」点で相違する。
また、中間層について、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層には気孔が形成されており、反応防止層気孔率は21%であ」るが、そのような特定がない点で相違する。
c 甲1発明は、固体電解質層とカソードとの間に反応防止層が設けられているので、甲1発明の「前記固体電解質層の他方の面側に設けられたカソード」は、本件特許発明1の「前記中間層上に設けられたカソード」に相当する。
e 甲1発明の「固体酸化物形燃料電池セル」は、本件特許発明1の「固体酸化物型燃料電池」に相当する。
以上によれば、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、
前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層と、
前記中間層上に設けられたカソードと、を備える
固体酸化物型燃料電池。」
(相違点1a)
中間層について、本件特許発明1は「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層は、前記電解質層の前記反応防止層側の面に設けられた凹凸とは、境界に形成された気孔を隔てて形成されている」点。
(相違点2a)
中間層について、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層には気孔が形成されており、反応防止層気孔率は21%であ」るが、そのような特定がない点。
(イ)判断
第29条第1項第3号について
本件特許発明1と甲1発明とは相違点1a及び2aを有しているので、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明でない。
イ 本件特許発明2
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明との対比を踏まえると、本件特許発明2と甲1発明とは、次の相違点を有する。
(相違点1a)
中間層について、本件特許発明2は「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層は、前記電解質層の前記反応防止層側の面に設けられた凹凸とは、境界に形成された気孔を隔てて形成されている」点。
(相違点2a)
中間層について、本件特許発明2は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層には気孔が形成されており、反応防止層気孔率は21%であ」るが、そのような特定がない点。
(相違点3a)
中間層について、本件特許発明2は「前記カソード側に対する凸部における前記空隙の数密度は、前記カソード側に対する凹部における前記空隙の数密度よりも大きい」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件特許発明2と甲1発明とは相違点1aないし3aを有しているので、本件特許発明2は甲第1号証に記載された発明でない。
b 第29条第2項について
事案に鑑み、まず、上記相違点2aについて検討する。
甲1発明の「反応防止層」には気孔が形成されている。
しかしながら、甲第1号証には、反応防止層28のセリアへの希土類元素のドープ量を10mol%より多く30mol%未満とすることにより、一般的な焼結温度でもセリアの緻密化を図り、良好な酸素イオン導電性とSrの気相拡散の抑制を実現することが記載されているが(【0020】)、反応防止層の気孔の配置を、固体電解質層側からカソード側にかけて、複数の気孔が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶようにすることの記載もなければ示唆もない。
そうすると、甲1発明において、「反応防止層」の緻密化、即ち気孔率の減少させることは容易に想到し得ても、「反応防止層」において、Srの気相拡散の抑制に反しかねない気孔を所定線に沿って間隔を空けて並ぶようにすることは、容易に想到し得ることとはいえない。
したがって、上記相違点2aに係る構成は、甲1発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明4
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明との対比を踏まえると、本件特許発明4と甲1発明とは、次の相違点を有する。
(相違点1a)
中間層について、本件特許発明4は「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層は、前記電解質層の前記反応防止層側の面に設けられた凹凸とは、境界に形成された気孔を隔てて形成されている」点。
(相違点2a)
中間層について、本件特許発明4は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲1発明は「前記反応防止層には気孔が形成されており、反応防止層気孔率は21%であ」るが、そのような特定がない点。
(相違点4a)
本件特許発明4は「前記電解質層の前記凹凸は、前記中間層側の面において、平面視で2次元方向に並ぶように設けられている」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件特許発明4と甲1発明とは相違点1a、2a、4aを有しているので、本件特許発明4は甲第1号証に記載された発明でない。
b 第29条第2項について
本件特許発明4と甲1発明とは相違点2aを有している。
したがって、本件特許発明2で検討したように、本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件特許発明5
第29条第1項第3号について
本件特許発明5は、本件特許発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件特許発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。
(2)甲第2号証を主引例とした場合の申立理由3及び申立理由4
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明を対比すると、次のことがいえる。
a 甲2発明の「YSZ(イットリア安定化ジルコニア)であ」る「電解質層4」は、本件特許発明1の「酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層」に相当する。
b 甲2発明の「電解質層4の上に形成された」「GDC(ガドリウム・ドープ・セリア)であ」る「反応防止層5」は、本件特許発明1の「前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層」に相当する。
甲2発明の「反応防止層5は、電解質層4との界面に凹部Fおよび凸部Gから形成される凹凸形状を有」することは、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いることに相当する。
但し、中間層について、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲2発明は「反応防止層5は内部に細孔空間を有し、反応防止層5において、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとし、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する」が、そのような特定がない点で相違する。
c 甲2発明の「反応防止層5の上に形成された」「カソードであ」る「第2電極層6」は、本件特許発明1の「前記中間層上に設けられたカソード」に相当する。
e 甲2発明の「電気化学素子E」を用いる「固体酸化物形燃料電池」は、本件特許発明1の「固体酸化物型燃料電池」に相当する。
以上によれば、本件特許発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、
前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層と、
前記中間層上に設けられたカソードと、を備え、
前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されている、
固体酸化物型燃料電池。」
(相違点1b)
中間層について、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲2発明は「反応防止層5は内部に細孔空間を有し、反応防止層5において、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとし、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する」が、そのような特定がない点。
(イ)判断
第29条第1項第3号について
本件特許発明1と甲2発明とは相違点1bを有しているので、本件特許発明1は甲第2号証に記載された発明でない。
イ 本件特許発明2
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明との対比を踏まえると、本件特許発明2と甲2発明とは、次の相違点を有する。
(相違点1b)
中間層について、本件特許発明2は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲2発明は「反応防止層5は内部に細孔空間を有し、反応防止層5において、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとし、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する」が、そのような特定がない点。
(相違点2b)
中間層について、本件特許発明2は「前記カソード側に対する凸部における前記空隙の数密度は、前記カソード側に対する凹部における前記空隙の数密度よりも大きい」のに対して、甲2発明は「反応防止層5において、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとし、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する」点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件特許発明2と甲2発明とは相違点1b、2bを有しているので、本件特許発明2は甲第2号証に記載された発明でない。
b 第29条第2項について
上記相違点1bについて検討する。
甲2発明の「反応防止層5」には、「凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとし、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する」。
そして、甲第2号証には、反応防止層と電解質層との界面に気孔率の大きい疎突出領域が存在すると、この疎突出領域がヒートサイクルにより生じる応力を緩和させるため、層間の界面強度が向上し、反応防止層を剥離しづらくすることが記載されている(【0007】、【0035】)。
そうすると、甲2発明は、反応防止層と電解質層との界面に気孔率の大きい疎突出領域が存在するという構成により、反応防止層の剥がれを抑制するという本件特許と同様の課題を解決しているので、上記構成に換えて、敢えて甲第2号証には記載も示唆もない上記相違点1bに係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
したがって、上記相違点1bに係る構成は、甲2発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3、5
第29条第1項第3号について
本件特許発明3、5は、本件特許発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件特許発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明でない。
エ 本件特許発明4
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明との対比を踏まえると、本件特許発明4と甲2発明とは、次の相違点を有する。
(相違点1b)
中間層について、本件特許発明4は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲2発明は「反応防止層5は内部に細孔空間を有し、反応防止層5において、凸部Gを介して隣り合う2つの凹部Fの底部間を結ぶ線分Jに対して電解質層4の側の領域を突出領域Kとし、線分Jに対して第2電極層6の側の領域を隣接領域Lとして、気孔率が隣接領域Lの気孔率よりも大きい突出領域Kである疎突出領域Nが存在する」が、そのような特定がない点。
(相違点3b)
本件特許発明4は「前記電解質層の前記凹凸は、前記中間層側の面において、平面視で2次元方向に並ぶように設けられている」のに対して、甲2発明はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件特許発明4と甲2発明とは相違点1b、3bを有しているので、本件特許発明4は甲第2号証に記載された発明でない。
b 第29条第2項について
本件特許発明4と甲2発明とは相違点1bを有している。
したがって、本件特許発明2で検討したように、本件特許発明4は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲第3号証を主引例とした場合の申立理由3及び申立理由4
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明を対比すると、次のことがいえる。
a 甲3発明の「YSZ(イットリア安定化ジルコニア)であ」る「電解質層4」は、本件特許発明1の「酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層」に相当する。
b 甲3発明の「電解質層4の上に形成された」「GDC(ガドリウム・ドープ・セリア)であ」る「反応防止層5」は、本件特許発明1の「前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層」に相当する。
甲3発明の「反応防止層5は、電解質層4の反応防止層5側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いることは、本件特許発明1の「前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されて」いることに相当する。
但し、中間層について、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲3発明は「反応防止層5は内部に複数の細孔空間を有する」が、そのような特定がない点で相違する。
c 甲3発明の「反応防止層5の上に形成された」「カソードであ」る「第2電極層6」は、本件特許発明1の「前記中間層上に設けられたカソード」に相当する。
e 甲3発明の「電気化学素子E」を用いる「固体酸化物形燃料電池」は、本件特許発明1の「固体酸化物型燃料電池」に相当する。
以上によれば、本件特許発明1と甲3発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物を含む電解質層と、
前記電解質層上に設けられ、酸化物イオン伝導性を有する中間層と、
前記中間層上に設けられたカソードと、を備え、
前記中間層は、前記電解質層の前記中間層側の面に設けられた凹凸に沿うように形成されている、
固体酸化物型燃料電池。」
(相違点1c)
中間層について、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲3発明は「反応防止層5は内部に複数の細孔空間を有する」が、そのような特定がない点。
(イ)判断
第29条第1項第3号について
本件特許発明1と甲3発明とは相違点1cを有しているので、本件特許発明1は甲第3号証に記載された発明でない。
イ 本件特許発明2
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明との対比を踏まえると、本件特許発明2と甲3発明とは、次の相違点を有する。
(相違点1c)
中間層について、本件特許発明1は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲3発明は「反応防止層5は内部に複数の細孔空間を有する」が、そのような特定がない点。
(相違点2c)
中間層について、本件特許発明2は「前記カソード側に対する凸部における前記空隙の数密度は、前記カソード側に対する凹部における前記空隙の数密度よりも大きい」のに対して、甲3発明はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件特許発明2と甲3発明とは相違点1c、2cを有しているので、本件特許発明2は甲第3号証に記載された発明でない。
b 第29条第2項について
上記相違点1cについて検討する。
甲第3号証には、反応防止層の断面において、反応防止層の厚さ方向に仮想直線を設定した場合、細孔空間の外周面との交点が1μmあたり平均3.3個以上となる仮想直線が存在するように、反応防止層を多孔質かつ微細な構造とすることで、燃料電池セルのヒートサイクルや発電時に起こるセルの膨張収縮に起因する応力を反応防止層で吸収緩和することができ、反応防止層・電解質間の剥離が抑制できることが記載されている(【0006】、【0008】)。
そうすると、甲第3号証には、反応防止層を多孔質かつ微細な構造とすることで、反応防止層の剥がれを抑制するという本件特許と同様の課題を解決しているので、甲第3号証には記載も示唆もない上記相違点1cに係る構成にすることを着想することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
加えて、本件特許においては、中間層において、電解質層側からカソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶ構成を得るために、中間層に含まれる酸化物イオン伝導性セラミックスをPVDにより、電解質層上に成膜速度および基盤加熱温度を制御して成膜することにより中間層を形成している(【0050】)。これに対して、甲第3号証の記載の実施例では、GDCの微粉末に有機バインダーと有機溶媒を加えてたペーストを、スクリーン印刷により、電解質層の上に反応防止層を形成している(【0081】)。
そうすると、本件特許と甲第3号証では、中間層(反応防止層)の形成方法が相違しており、甲3発明に基づいて、上記相違点1cに係る構成を得ることは相当困難であり、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
したがって、上記相違点1cに係る構成は、甲3発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明3、5
第29条第1項第3号について
本件特許発明3、5は、本件特許発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件特許発明1と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明でない。
エ 本件特許発明4
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明との対比を踏まえると、本件特許発明4と甲3発明とは、次の相違点を有する。
(相違点1c)
中間層について、本件特許発明4は「前記中間層において、前記電解質層側から前記カソード側にかけて、複数の空隙が、所定線に沿って間隔を空けて並ぶように形成されている」いるのに対して、甲3発明は「反応防止層5は内部に複数の細孔空間を有する」が、そのような特定がない点。
(相違点3c)
本件特許発明4は「前記電解質層の前記凹凸は、前記中間層側の面において、平面視で2次元方向に並ぶように設けられている」のに対して、甲3発明はそのような特定がない点。
(イ)判断
a 第29条第1項第3号について
本件特許発明4と甲3発明とは相違点1c、3cを有しているので、本件特許発明4は甲第3号証に記載された発明でない。
b 第29条第2項について
本件特許発明4と甲3発明とは相違点1cを有している。
したがって、本件特許発明2で検討したように、本件特許発明4は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということができず、同法第113条第4号により取り消すことができない。
また、請求項1ないし5に係る特許は、いずれも特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものであるということができず、請求項2、4に係る特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということができず、同法第113条第2号により取り消すことができない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700017