特許異議申立
2019-700371
積層セラミックコンデンサ
- 審判番号
- 2019-700371
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-061493
- 登録番号
- 特許第6421137号(P6421137)
- 請求日
- 2019年05月07日
- 審決日
- 2020年10月27日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】太陽誘電株式会社
- 【権利者代理人】片山 修平
- 【異議申立人】星 正美
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 酒井 朋広
- 分類
- P1651.121-YAA(H01G) / P1651.113-YAA(H01G) / P1651.537-YAA(H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第29条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6421137号発明「積層セラミックコンデンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6421137号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第6421137号の請求項3ないし6に係る特許を維持する。
特許第6421137号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6421137号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成28年3月25日に出願され、平成30年10月19日にその特許権の設定登録がされ、同年11月7日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 1年 5月 7日 :特許異議申立人星正美により特許異議の申立て
令和 1年 7月25日付け:取消理由通知
令和 1年 9月26日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 1年11月27日 :特許異議申立人星正美による意見書の提出
令和 2年 2月 3日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 2年 4月 3日 :特許権者による訂正請求
令和 2年 7月22日付け:取消理由通知
令和 2年 9月25日 :特許権者による訂正請求
令和1年9月26日及び令和2年4月3日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げたものとみなす。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和2年9月25日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている、請求項1又は2に記載の積層セラミックコンデンサ。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項3について、引用関係を解消し独立形式に改めて請求項3とする。
さらに、訂正前の請求項1に「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた」、「(2)前記容量素子の長さ方向一面を覆う矩形状の第1導体層」、「(3)前記容量素子の長さ方向他面を覆う矩形状の第2導体層」、「(4)前記第1導体層の外面を覆う矩形状の第1被覆層」及び「(5)前記第2導体層の外面を覆う矩形状の第2被覆層」とあるのを、それぞれ、「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面のみに矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた」、「(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層」、「(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層」、「(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層」及び「(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層」と訂正する。
(訂正後の請求項3を引用する請求項6も同時に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記第1導体層の前記第1外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第1被覆層の前記容量素子側に延びた部分によって覆われており、前記第2導体層の前記第2外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分によって覆われている、請求項1~3の何れか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項4について、引用関係を解消し独立形式に改めて請求項4とする。
加えて、訂正前の請求項1に「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた」、「(2)前記容量素子の長さ方向一面を覆う矩形状の第1導体層」、「(3)前記容量素子の長さ方向他面を覆う矩形状の第2導体層」、「(4)前記第1導体層の外面を覆う矩形状の第1被覆層」及び「(5)前記第2導体層の外面を覆う矩形状の第2被覆層」とあるのを、それぞれ、「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面のみに矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた」、「(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層」、「(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層」、「(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層」及び「(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層」と訂正する。
さらに、訂正前の請求項4に「前記第1被覆層の前記容量素子側に延びた部分」及び「前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分」とあるのを、それぞれ、「前記第1被覆層から前記容量素子側に延びた部分」及び「前記第2被覆層から前記容量素子側に延びた部分」と訂正する。
(訂正後の請求項4を引用する請求項6も同時に訂正する)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3に「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている、請求項1又は2に記載の積層セラミックコンデンサ。」、及び、特許請求の範囲の請求項4に「前記第1導体層の前記第1外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第1被覆層の前記容量素子側に延びた部分によって覆われており、前記第2導体層の前記第2外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分によって覆われている、請求項1~3の何れか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。」と記載されているのを、請求項1を引用する請求項3をさらに引用する請求項4について、引用関係を解消し独立形式に改めて新たな請求項5とする。
加えて、訂正前の請求項1に「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた」、「(2)前記容量素子の長さ方向一面を覆う矩形状の第1導体層」、「(3)前記容量素子の長さ方向他面を覆う矩形状の第2導体層」、「(4)前記第1導体層の外面を覆う矩形状の第1被覆層」及び「(5)前記第2導体層の外面を覆う矩形状の第2被覆層」とあるのを、それぞれ、「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面のみに矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた」、「(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層」、「(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層」、「(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層」及び「(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層」と訂正する。
さらに、訂正前の請求項4に「前記第1被覆層の前記容量素子側に延びた部分」及び「前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分」とあるのを、それぞれ、「前記第1被覆層から前記容量素子側に延びた部分」及び「前記第2被覆層から前記容量素子側に延びた部分」と訂正する。
(訂正後の請求項4を引用する請求項6も同時に訂正する)。
(6)訂正事項6
上記訂正事項3~5にともない、特許請求の範囲の請求項1及び2を引用する請求項3、特許請求の範囲の請求項1及び2を引用する請求項4、及び、特許請求の範囲の請求項1、2及び3を引用する請求項4について引用関係を整理するために、請求項2に「前記第1導体層と前記第2導体層それぞれの厚さは、前記複数の第1内部電極層と前記複数の第2内部電極層それぞれの厚さの1~5倍の範囲内で設定されている、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。」とあるのを、新たに請求項6として「前記第1導体層と前記第2導体層それぞれの厚さは、前記複数の第1内部電極層と前記複数の第2内部電極層それぞれの厚さの1~5倍の範囲内で設定されている、請求項3~5の何れか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。」と訂正する。
(7)訂正事項7
発明の詳細な説明の段落【0039】に「第1被覆層114の容量素子111側に延びた部分114a」及び「第2被覆層115の容量素子111側に延びた部分115a」とあるのを、それぞれ「第1被覆層114から容量素子111側に延びた部分114a」及び「第2被覆層115から容量素子111側に延びた部分115a」と訂正し、段落【0071】に「第1被覆層214の容量素子211側に延びた部分214a」及び「第2被覆層215の容量素子211側に延びた部分215a」とあるのを、それぞれ「第1被覆層214から容量素子211側に延びた部分214a」及び「第2被覆層215から容量素子211側に延びた部分215a」と訂正する。
(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし4は、請求項2ないし4が、訂正の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし6も一群の請求項である。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-6〕に対して請求されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、明細書の訂正に係る請求項の訂正請求の有無
ア.訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
イ.訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ.訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったのものを、請求項2の引用を削除し、請求項1を引用するものについて、請求項1との引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
加えて、訂正事項3は、訂正前の請求項1に係る発明における、「第1外部電極」及び「第2外部電極」の設けられる位置がコンデンサ本体の高さ方向一面「のみ」であることを限定し、さらに、「第1導体層」及び「第2導体層」が覆う部分が、それぞれ、容量素子の長さ方向一面「のみ」及び容量素子の長さ方向他面「のみ」であることを限定し、「第1被覆層」及び「第2被覆層」について、それぞれ「誘電体セラミックスから成る」ものであることを限定するものであるから、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正前の本件特許明細書において、積層セラミックコンデンサを容量素子111の第6面f6、第3面f3及び第5面f5から見た図を表す図1ないし3には、第1外部電極120及び第2外部電極130が高さ方向一面の第5面f5のみに設けられ、第1導体層112及び第2導体層113が、それぞれ容量素子111の長さ方向で向き合う第1面f1及び第2面f2のみに設けられることが示されている。
そして、訂正前の本件特許明細書の段落【0017】には、「第1被覆層114には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載され、段落【0018】には、「第2被覆層115には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載されている。また、段落【0047】及び【0048】にも、「第1被覆層214」及び「第2被覆層215」について同様の記載がある。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項3は上述のとおり、訂正前の請求項3に係る発明について引用関係を解消すると共に特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ.訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1~3の何れか1項の記載を引用するものであったのものを、請求項2及び請求項3の引用を削除し、請求項1を引用するものについて、請求項1との引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
加えて、訂正事項4は、訂正前の請求項1に係る発明における、「第1外部電極」及び「第2外部電極」の設けられる位置がコンデンサ本体の高さ方向一面「のみ」であることを限定し、さらに、「第1導体層」及び「第2導体層」が覆う部分が、それぞれ、容量素子の長さ方向一面「のみ」及び容量素子の長さ方向他面「のみ」であることを限定し、「第1被覆層」及び「第2被覆層」について、それぞれ「誘電体セラミックスから成る」ものであることを限定するものであるから、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項4は、訂正前の請求項4の「第1被覆層の容量素子側に延びた部分」及び「第2被覆層の容量素子側に延びた部分」との記載が、訂正前の請求項1における特定事項(第1被覆層及び第2被覆層が矩形状である旨の特定)との関係で明瞭でなかったところ、これを明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正前の本件特許明細書において、積層セラミックコンデンサを容量素子111の第6面f6、第3面f3及び第5面f5から見た図を表す図1ないし3には、第1外部電極120及び第2外部電極130が高さ方向一面の第5面f5のみに設けられ、第1導体層112及び第2導体層113が、それぞれ容量素子111の長さ方向で向き合う第1面f1及び第2面f2のみに設けられることが示されている。
そして、訂正前の本件特許明細書の段落【0017】には、「第1被覆層114には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載され、段落【0018】には、「第2被覆層115には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容
量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載されている。また、段落【0047】及び【0048】にも、「第1被覆層214」及び「第2被覆層215」について同様の記載がある。
さらに、訂正前の本件特許明細書の段落【0039】及び図6において、「第1被覆層114の容量素子111側に延びた部分114a」及び「第2被覆層115の容量素子111側に延びた部分115a」は、それぞれ、第1被覆層114における第1面f1に形成された部分(これが訂正後の「第1被覆層」に対応)から容量素子側に延びた部分、及び、第2被覆層における第2面f2に形成された部分(これが訂正後の「第2被覆層」に対応)から容量素子側に延びた部分であることは自明である。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項4は上述のとおり、訂正前の請求項4に係る発明について引用関係を解消すると共に特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
この点につき特許異議申立人は令和1年11月27日付け提出の意見書において、「第1の被覆層」と「第1の被覆層から延びた部分」とが別体の場合も含まれる旨主張しているが、「第1の被覆層から延びた部分」は、第1の被覆層から延長されて延びた部分であって、第1の被覆層と一体であると解されるから、上記主張は採用できない。
オ.訂正事項5について
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったのものを、請求項2の引用を削除し、訂正前の請求項4が請求項1~3の何れか1項の記載を引用するものであったのものを、請求項1及び請求項2の引用を削除し、請求項1を引用する請求項3をさらに引用する請求項4について、請求項間の引用関係を解消するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
加えて、訂正事項5は、訂正前の請求項1に係る発明における、「第1外部電極」及び「第2外部電極」の設けられる位置がコンデンサ本体の高さ方向一面「のみ」であることを限定し、さらに、「第1導体層」及び「第2導体層」が覆う部分が、それぞれ、容量素子の長さ方向一面「のみ」及び容量素子の長さ方向他面「のみ」であることを限定し、「第1被覆層」及び「第2被覆層」について、それぞれ「誘電体セラミックスから成る」ものであることを限定するものであるから、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項5は、訂正前の請求項4の「第1被覆層の容量素子側に延びた部分」及び「第2被覆層の容量素子側に延びた部分」との記載が、訂正前の請求項1における特定事項(第1被覆層及び第2被覆層が矩形状である旨の特定)との関係で明瞭でなかったところ、これを明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正前の本件特許明細書において、積層セラミックコンデンサを容量素子111の第6面f6、第3面f3及び第5面f5から見た図を表す図1ないし3には、第1外部電極120及び第2外部電極130が高さ方向一面の第5面f5のみに設けられ、第1導体層112及び第2導体層113が、それぞれ容量素子111の長さ方向で向き合う第1面f1及び第2面f2のみに設けられることが示されている。
そして、訂正前の本件特許明細書の段落【0017】には、「第1被覆層114には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載され、段落【0018】には、「第2被覆層115には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容
量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載されている。また、段落【0047】及び【0048】にも、「第1被覆層214」及び「第2被覆層215」について同様の記載がある。
さらに、訂正前の本件特許明細書の段落【0039】及び図6において、「第1被覆層114の容量素子111側に延びた部分114a」及び「第2被覆層115の容量素子111側に延びた部分115a」は、それぞれ、第1被覆層114における第1面f1に形成された部分(これが訂正後の「第1被覆層」に対応)から容量素子側に延びた部分、及び、第2被覆層における第2面f2に形成された部分(これが訂正後の「第2被覆層」に対応)から容量素子側に延びた部分であることは自明である。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項5は上述のとおり、訂正前の請求項4に係る発明について引用関係を解消すると共に特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
カ.訂正事項6について
(ア)訂正の目的
特許請求の範囲の請求項1及び2を引用する請求項3、特許請求の範囲の請求項1及び2を引用する請求項4、及び、特許請求の範囲の請求項1、2及び3を引用する請求項4について、訂正前の請求項1に係る発明における、「第1外部電極」及び「第2外部電極」の設けられる位置がコンデンサ本体の高さ方向一面「のみ」であることを限定し、さらに、「第1導体層」及び「第2導体層」が覆う部分が、それぞれ、容量素子の長さ方向一面「のみ」及び容量素子の長さ方向他面「のみ」であることを限定し、「第1被覆層」及び「第2被覆層」について、それぞれ「誘電体セラミックスから成る」ものであることを限定するものであるから、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項6は、訂正前の請求項4の「第1被覆層の容量素子側に延びた部分」及び「第2被覆層の容量素子側に延びた部分」との記載が、訂正前の請求項1における特定事項(第1被覆層及び第2被覆層が矩形状である旨の特定)との関係で明瞭でなかったところ、これを明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正前の本件特許明細書において、積層セラミックコンデンサを容量素子111の第6面f6、第3面f3及び第5面f5から見た図を表す図1ないし3には、第1外部電極120及び第2外部電極130が高さ方向一面の第5面f5のみに設けられ、第1導体層112及び第2導体層113が、それぞれ容量素子111の長さ方向で向き合う第1面f1及び第2面f2のみに設けられることが示されている。
そして、訂正前の本件特許明細書の段落【0017】には、「第1被覆層114には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載され、段落【0018】には、「第2被覆層115には、・・・(中略)・・・誘電体セラミックス、好ましくは比誘電率が1000以上の高誘電率系誘電体セラミックス、より好ましくは容
量素子111の第1内部電極層111aと第2内部電極層111bを除く部分の主成分と同じ主成分の誘電体セラミックスが使用できる。」と記載されている。また、段落【0047】及び【0048】にも、「第1被覆層214」及び「第2被覆層215」について同様の記載がある。
さらに、訂正前の本件特許明細書の段落【0039】及び図6において、「第1被覆層114の容量素子111側に延びた部分114a」及び「第2被覆層115の容量素子111側に延びた部分115a」は、それぞれ、第1被覆層114における第1面f1に形成された部分(これが訂正後の「第1被覆層」に対応)から容量素子側に延びた部分、及び、第2被覆層における第2面f2に形成された部分(これが訂正後の「第2被覆層」に対応)から容量素子側に延びた部分であることは自明である。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項6は上述のとおり、訂正前の請求項3及び4に係る発明について特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
キ.訂正事項7について
訂正事項7は、訂正事項4-6に係る特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項7は明細書の記載を訂正するものであるところ、本件訂正は特許請求の範囲に記載された全ての請求項を対象とするものであるから、明細書の訂正に係る全ての請求項について訂正請求がなされている。したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1ないし6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面のみに矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、
前記コンデンサ本体は、(1)誘電体層を介して交互に配された矩形状の複数の第1内部電極層と矩形状の複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子と、(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層と、(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層と、を備えており、
前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され、前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されており、
前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面のみに矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、
前記コンデンサ本体は、(1)誘電体層を介して交互に配された矩形状の複数の第1内部電極層と矩形状の複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子と、(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層と、(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層と、を備えており、
前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され、前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されており、
前記第1導体層の前記第1外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第1被覆層から前記容量素子側に延びた部分によって覆われており、
前記第2導体層の前記第2外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第2被覆層から前記容量素子側に延びた部分によって覆われている、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面のみに矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、
前記コンデンサ本体は、(1)誘電体層を介して交互に配された矩形状の複数の第1内部電極層と矩形状の複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子と、(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層と、(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層と、を備えており、
前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され、前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されており、
前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されており、
前記第1導体層の前記第1外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第1被覆層から前記容量素子側に延びた部分によって覆われており、
前記第2導体層の前記第2外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第2被覆層から前記容量素子側に延びた部分によって覆われている、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記第1導体層と前記第2導体層それぞれの厚さは、前記複数の第1内部電極層と前記複数の第2内部電極層それぞれの厚さの1~5倍の範囲内で設定されている、
請求項3~5に記載の積層セラミックコンデンサ。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.当審が令和2年7月22日に特許権者に通知した取消理由について
(1)取消理由の要旨は、次のとおりである。
(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
・請求項4
請求項4には「(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層と、を備えており・・・前記第1導体層の前記第1外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第1被覆層から前記容量素子側に延びた部分によって覆われており、前記第2導体層の前記第2外部電極に接続された一端縁を除く周縁は、前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分によって覆われている」と記載されている。
ここで、「(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層」と記載されているので、「第2被覆層」は「矩形状」である旨特定されている。
一方、「前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分」の記載より、「容量素子側に延びた部分」は「第2被覆層」の一部であると認められる。
そうすると、容量素子側に延びた部分を含む「第2被覆層」は「矩形状」とはいえず、「第2被覆層」は「矩形状」である旨の特定と矛盾している。
したがって、請求項4の上記記載は不明確である。
・請求項5
請求項5の記載も同様に不明確である。
(2)当審の判断
訂正事項4及び5により、請求項4及び5に記載された「前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分」を、「前記第2被覆層から前記容量素子側に延びた部分」と訂正することによって、請求項4及び5に係る発明は明確になった。
したがって、令和2年7月22日に通知した取消理由によって、請求項4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
2.当審が令和2年2月3日に特許権者に通知した取消理由(決定の予告)について
(1)取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項1
・刊行物 甲第1号証
・請求項2
・刊行物 甲第1号証、甲第3号証
(3)当審の判断
請求項1及び2に係る特許は、訂正により削除されたため、当該取消理由(決定の予告)はもはや存在しない。
3.当審が令和1年7月25日に特許権者に通知した取消理由について
(1)取消理由の要旨は、次のとおりである。
1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
●理由1(明確性)について
・請求項4に係る発明について
請求項4には、「前記第1被覆層の前記容量素子側に延びた部分」と記載されていることから、「容量素子側に延びた部分」は「第1被覆層」の一部であると認められる。
しかし、「第1被覆層」は、請求項4が従属する請求項1において「矩形状」である旨特定されているところ、容量素子側に延びた部分を有していると「矩形状」とはいえないから、請求項4に記載された事項は、請求項4が従属する請求項1に記載された事項との対応関係が不明確である。
また、「第2被覆層」についても、これと同様の不備が認められる。
よって、請求項4に係る発明は明確でない。
●理由2(サポート要件)について
・請求項1ないし4に係る発明について
「第1被覆層」及び「第2被覆層」について、本件特許明細書においては誘電体セラミックスを用いることしか記載されていない。それにもかかわらず、請求項1ないし4においては、「第1被覆層」及び「第2被覆層」の材料が何であるのか特定されておらず、誘電体セラミックス以外の材料も含んでいる。
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)当審の判断
ア.理由1について
訂正事項4により、請求項4に記載された「前記第1被覆層の前記容量素子側に延びた部分」及び「前記第2被覆層の前記容量素子側に延びた部分」を、「前記第1被覆層から前記容量素子側に延びた部分」及び「前記第2被覆層から前記容量素子側に延びた部分」と訂正することによって、請求項4に係る発明は明確になった。
イ.理由2について
訂正事項3及び4により、「第1被覆層」及び「第2被覆層」はいずれも「誘電体セラミックスから成る」ことが特定されたため、請求項3及び4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
なお、請求項1及び2は、訂正により削除されている。
したがって、令和1年7月25日に通知した取消理由によって、請求項3及び4に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由等について
1.特許法第36条第6項第2号
特許異議申立人は、特許異議申立書及び令和1年11月27日付け意見書において、請求項1の「前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されている」との記載が、第1外部電極(又は第2導体層)と第1導体層(又は第2外部電極)とが接続された結果として一体化された状態であるのか、それとも、別部材であり接続箇所が分かるのかが不明確であるから発明が明確でない旨主張している。
しかしながら、当該記載は、訂正前の請求項1を含んだ請求項3ないし6において、第1外部電極(又は第2外部電極)と第1導体層(又は第2導体層)とが一体化されているか別部材であるのかにかかわらず、接続された状態であることを特定しているのであって明確である。
よって、上記主張は採用できない。
2.特許法第36条第6項第1号
特許異議申立人は、特許異議申立書及び同意見書において、請求項1で特定されている第1導体層に対する第1内部電極層の接続、第2導体層に対する第2内部電極層の接続、第1外部電極に対する第1導体層の接続、及び第2外部電極に対する第2導体層の接続が、各々「同等の接続幅」にてなされることが反映されてない点で、接続が不安定になるという課題に対する解決手段が反映されていない旨主張しているので、これについて検討する。
まず、本件発明3ないし6の課題について検討する。本件特許明細書の段落【0002】ないし【0004】を参酌すると、従来、コンデンサ本体の高さ方向一面に設けられた外部電極に対して略垂直となる向きで配された内部電極層が、コンデンサ本体の高さ方向一面にいたる引出部を有し、この引出部の端縁によって外部電極への接続を行っていたことにより、この引出部の端縁の幅寸法は、内部電極層の高さ方向寸法に比べて小さいものとなっていた。このため、外部電極に対する内部電極層の接続が不安定になっていたのが本件発明3ないし6の課題と認められる。
次に本件発明3ないし6において課題解決手段が反映されているか検討するに、本件発明3ないし6では、矩形状の第1内部電極層(又は第2内部電極層)による矩形状の第1導体層(又は第2導体層)への接続、矩形状の第1導体層(又は第2導体層)による矩形状の第1外部電極(又は第2外部電極)への接続が行われることから、従来の内部電極層の引出部を用いた外部電極への接続よりも接続幅を広くできると認められる。
したがって、本件発明3ないし6では、課題解決手段が反映されているといえる。
よって、上記主張は採用できない。
3.特許法第29条2項
特許異議申立人は、特許異議申立書において、請求項3に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものであると主張している。
そこで、以下検討する。
(1)引用文献の記載、引用発明
ア.甲第1号証(特開2015-228506号公報)について
甲第1号証には、「積層セラミックコンデンサ」に関し、以下の事項が記載されている。下線は当審で付与したものである。
「【0017】
図2に示したように、積層セラミックコンデンサ10-1(以下、単にコンデンサ10-1と言う)は、誘電体セラミックスから成る略直方体形状の誘電体チップ11の長さ方向の端部(誘電体チップ11の相対する端部)それぞれに外部電極12を有しており、全体として長さ>幅=高さ、或いは、長さ>幅>高さの基準寸法を有する略直方体形状を成している。
【0018】
図3に示したように、誘電体チップ11は複数(図3では計20)の内部電極層11aを相互非接触で内蔵しており、該複数の内部電極層11aの一部(上から奇数番目)の端は一方(左側)の外部電極12に接続され他部(上から偶数番目)の端は他方(右側)の外部電極12に接続されている。図3には、図示の便宜上、内部電極層11aの総数を20としてあるが、実際の総数は100以上である。誘電体チップ11は・・・(中略)・・・誘電体セラミックスから成り、内部電極層11aの間それぞれに存在する層状部分は略同じ厚さを有している。各内部電極層11aは・・・(中略)・・・金属から成り、略同じ厚さ及び上面視形状(略矩形)を有している。
【0019】
各外部電極12は、誘電体チップ11に密着した下地層(図示省略)と該下地層の表面に形成された表面層(図示省略)との2層構造、或いは、下地層と表面層との間に少なくとも1つの中間層(図示省略)を有する多層構造を有している。下地層はニッケル、銅、パラジウム、白金、銀、金、これらの合金等の金属から成り、表面層はスズ、パラジウム、金、亜鉛等の金属から成り、中間層は白金、パラジウム、金、銅、ニッケル等の金属から成る。
【0020】
また、各外部電極12は、図3に示した破線を境として3つの区域、即ち、誘電体チップ11の端面を覆う略矩形状の端面部12aと、誘電体チップ11の4側面の一部を覆う略4角筒状の側面部12bと、端面部12aと側面部12bとの間に介在する断面略円弧状の曲面部12cを有している。補足すれば、端面部12aは誘電体チップ11の長さを規定する面を覆う部分を指し、側面部12bは所謂回り込み部と称される部分を指し、曲面部12cは端面部12a及び側面部12bに該当しない部分で表面が曲面から成る部分を指す。」
【0021】
符号13-1はハンダが付着しない材料から成るハンダ非付着膜であり、各外部電極12の端面部12aの表面全体と曲面部12cの表面全体を連続して覆うように設けられている。図3には端面部12a上の部分の厚さが略一定で、且つ、曲面部12c上の部分の厚さがその端に向かって徐々に薄くなる態様のハンダ非付着膜13-1を示してあるが、後述する該ハンダ非付着膜13-1の役割からして、端面部12a上の部分の厚さは略一定でなくても良いし、曲面部12c上の部分の厚さはその端に向かって徐々に薄くなっていなくても良い。」
【0022】
前記のハンダが付着しない材料としては、(1)周知のソルダレジスト、(2)エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性プラスチック、又は(3)二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機絶縁材、即ち、金属成分を含まない絶縁材料が好適に使用できる。
・・・(中略)・・・
【0024】
図2及び図3に示したコンデンサ10-1を基板21に実装するときには、図4に示したように、基板21のパッド22上に塗布されたクリームハンダに各外部電極12の側面部12bの一面(略矩形状の被接続面)が接するようにコンデンサ10-1を搭載した後、リフローハンダ付け法等の熱処理によってクリームハンダを一旦溶融してから硬化させ、各外部電極12をハンダ31を介してパッド22に接合する。因みに、基板21のパッド22は、各外部電極12の被接続面よりも僅かに大きな略矩形状輪郭を有している。」
・段落【0017】によれば、甲第1号証には、全体として略直方体形状を成している積層セラミックコンデンサであって、略直方体形状の誘電体チップ11の長さ方向の端部それぞれに外部電極12を有するものが記載されている。
・段落【0020】によれば、各外部電極12は、誘電体チップ11の端面を覆う略矩形状の端面部12a、誘電体チップ11の4側面の一部を覆う略4角筒状の側面部12b、及び、端面部12aと側面部12bとの間に介在する断面略円弧状の曲面部12cを有している。そして、その内の端面部12aは、外部電極12を3つの区域に分けたうちの一つであり、誘電体チップ11の端面のみを覆うものであることは自明である。
・段落【0024】に記載されている「側面部12bの一面(略矩形状の被接続面)」は、図4によれば、側面部12bのうちの誘電体チップ11の底面を覆う部分である。したがって、段落【0024】によれば、側面部12bのうちの誘電体チップ11の底面を覆う部分は、略矩形状の被接続面を成し、積層セラミックコンデンサを搭載する基板21のパッド22上に塗布されたクリームハンダに接する。
・段落【0018】には内部電極層11aが外部電極12に接続される旨記載されている。そして、図3、4によれば、内部電極層11aが接続されるのは外部電極12のうち端面部12aである。すなわち、段落【0018】によれば、誘電体チップ11は上面視形状が略矩形の内部電極層11aを複数内蔵し、上から奇数番目の内部電極層11aの端は一方の端面部12aに接続され、上から偶数番目の内部電極層11aの端は他方の端面部12aに接続されている。
・段落【0018】によれば、誘電体チップ11は誘電体セラミックスからなり、内部電極層11aの間それぞれに存在する層状部分を有している。
・段落【0021】によれば、端面部12aの表面全体と曲面部12cの表面全体を連続して覆うように設けられたハンダ非付着膜13-1を有する。
・段落【0022】によれば、ハンダ非付着膜は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機絶縁材料である。
以上の摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「全体として略直方体形状を成している積層セラミックコンデンサであって、
略直方体形状の誘電体チップ11の長さ方向の端部それぞれに外部電極12を有し、
各外部電極12は、誘電体チップ11の端面のみを覆う略矩形状の端面部12a、誘電体チップ11の4側面の一部を覆う略4角筒状の側面部12b、及び、端面部12aと側面部12bとの間に介在する断面略円弧状の曲面部12cを有し、該側面部12bのうちの誘電体チップ11の底面を覆う部分は、略矩形状の被接続面を成し、積層セラミックコンデンサを搭載する基板21のパッド22上に塗布されたクリームハンダに接するものであり、
前記誘電体チップ11は上面視形状が略矩形の内部電極層11aを複数内蔵し、上から奇数番目の内部電極層11aの端は一方の端面部12aに接続され、上から偶数番目の内部電極層11aの端は他方の端面部12aに接続されており、
誘電体チップ11は誘電体セラミックスからなり、内部電極層11aの間それぞれに存在する層状部分を有し、
端面部12aの表面全体と曲面部12cの表面全体を連続して覆うように設けられたハンダ非付着膜13-1であって、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機絶縁材料からなるハンダ非付着膜を有する、
積層セラミックコンデンサ。」
イ.甲第2号証(特開平6-84687号公報)について
甲第2号証には、「積層セラミックチップコンデンサ」に関し、以下の事項が記載されている。下線は当審で付与したものである。
「【0010】図1は、本発明に係わる積層セラミックチップコンデンサ(以下、単にチップコンデンサと称す)の一形態を示す断面図である。チップコンデンサ11は、略直方体を横置きにした形状をなすと共に、セラミックからなる誘電体12を主体とする。前記略直方体において実装時に回路基板と対向する面(下面)、0.2~3.0mm2 の面積を有する。複数の内部電極13は、前記誘電体12内にその上下面に平行にかつ一端が前記誘電体12の対向する側面に交互に露出するように設けられている。外部電極14a、14bは、前記内部電極13が露出する前記誘電体12の対向する側面およびそれら側面全面と交わる前記上下面を含む4つの面における前記側面近傍に亘って形成されている。絶縁層15a、15bは、前記誘電体11の前記内部電極12が露出する側面に対応する前記外部電極14a、14b部分に被覆されている。このような絶縁層15a、15bが被覆された前記外部電極13a、13bにおいて、実装時に回路基板と対向する面である前記誘電体11の下面または上面に位置する部分が電極部16a、16b、16a´、16b´として機能する。
【0011】前述したチップコンデンサ11の実装構造は、図2に示すようにセラミック基材17および前記基材17表面に形成されたランド18等の回路パターンとからなる回路基板19の前記ランド18に、前記チップコンデンサ11の下面側の電極部16a、16bをはんだ20を介して接続、固定した構造になっている。
・・・(中略)・・・
【0014】前記絶縁層は、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、ガラスペースト等の絶縁材料から形成され、また前記チップコンデンサの主体となる誘電体を同一材料を用いることかもできる。」
「【0028】
【作用】本発明に係わるセラミックチップ部品、より具体的には図1に示す構成のチップコンデンサ11によれば、前述した図2のように回路基板19のランド18に前記チップコンデンサ11の電極部16a、16bをはんだ20を介して接続、固定する際、前記電極部16a、16bの配列方向と直交する辺から立ち上がる側面に絶縁層15a、15bが形成されているため、前記はんだ20がその表面張力により前記側面に付着するのを防止できる。」
・段落【0010】によれば、セラミックからなる誘電体12を主体とする略直方体の積層セラミックチップコンデンサであって、前記誘電体12内にその上下面に平行にかつ一端が前記誘電体12の対向する側面に交互に露出するように設けられた複数の内部電極13と、前記内部電極13が露出する前記誘電体12の対向する側面およびそれら側面全面と交わる前記上下面を含む4つの面における前記側面近傍に亘って形成されている外部電極14a、14bと、前記誘電体11の前記内部電極12が露出する側面に対応する前記外部電極14a、14b部分に被覆されている絶縁層15a、15bと、を備え、前記外部電極14a、14bのうち、実装時に回路基板と対向する面である前記誘電体11の下面または上面に位置する部分が電極16a、16b、16a´、16b´として機能する、積層セラミックチップコンデンサが記載されている。
ただし、段落【0010】には「このような絶縁層15a、15bが被覆された前記外部電極13a、13bにおいて、・・・」とあり、外部電極の参照番号が13a、13bとなっているが、他の箇所では14a、14bが用いられていること、図1では13a、13bでなく14a、14bが使用されていることから、上記記載は「このような絶縁層15a、15bが被覆された前記外部電極14a、14bにおいて、・・・」の誤記と認めた。
・段落【0010】によれば、積層セラミックチップコンデンサは略直方体であるから、積層セラミックチップコンデンサから外部電極14a、14bの「4つの面」に設けられた部分を除いたもの、すなわち、誘電体12、外部電極14a、14bのうち前記誘電体12の対向する側面に設けられた部分、絶縁層15a、15bの集合体(以下、「コンデンサ本体」という)も略直方体であると認められる。
・段落【0011】によれば、電極部16a、16b、16a´、16b´のうち下面側の電極部16a、16bが、回路基板19のランド18に、接続、固定されている。
・段落【0014】によれば、絶縁層15a、15bに対して、チップコンデンサの主体となる誘電体と同一材料を用いることが記載されている。
なお、「誘電体を同一材料を用いることかもできる」との記載は、「誘電体と同一材料を用いることもできる」の誤記と認められる。
上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第2号証には以下の発明(引用発明2)が記載されていると認められる。
「セラミックからなる誘電体12を主体とする略直方体の積層セラミックチップコンデンサであって、
前記誘電体12内にその上下面に平行にかつ一端が前記誘電体12の対向する側面に交互に露出するように設けられた複数の内部電極13と、
前記内部電極13が露出する前記誘電体12の対向する側面およびそれら側面全面と交わる前記上下面を含む4つの面における前記側面近傍に亘って形成されている外部電極14a、14bと、前記誘電体11の前記内部電極12が露出する側面に対応する前記外部電極14a、14b部分に被覆されている絶縁層15a、15bと、を備え、
前記外部電極14a、14bのうち、実装時に回路基板と対向する面である前記誘電体11の下面または上面に位置する部分が電極16a、16b、16a´、16b´として機能し、当該電極16a、16b、16a´、16b´のうち下面側の電極部16a、16bが、回路基板19のランド18に、接続、固定され、
前記絶縁層15a、15bに対して、前記誘電体12と同一材料を用い、
誘電体12、外部電極14a、14bのうち前記誘電体12の対向する側面に設けられた部分、絶縁層15a、15bからなる略直方体のコンデンサ本体を有する、
積層セラミックチップコンデンサ。」
ウ.甲第3号証(特開2008-283170号公報)について
甲第3号証には、「積層セラミックコンデンサ」について、以下の事項が記載されている。
(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1ないし図5を参照して、この発明の第1の実施形態による積層型電子部品1およびその製造方法について説明する。図示した積層型電子部品1は、積層セラミックコンデンサを構成している。
【0038】
まず、図1に示すように、積層型電子部品1は、部品本体となる積層体2を備えている。積層体2は、相対向する第1および第2の主面3および4とこれら第1および第2の主面3および4間を連結する第1および第2の端面5および6ならびに第1および第2の側面(図1では図示されない。)とを有する直方体状をなしている。
【0039】
積層体2は、上記主面3および4とたとえば平行に延びながら積層された複数の絶縁体層7と、絶縁体層7間の界面に沿って形成された複数の内部電極8および9とを備えている。積層型電子部品1が、前述のように、積層セラミックコンデンサを構成するとき、絶縁体層7は、誘電体セラミックから構成される。積層体5の第1および第2の端面5および6には、それぞれ、上述した複数の内部電極8および複数の内部電極9の各端部が互いに絶縁された状態で露出している。
【0040】
積層型電子部品1は、積層体2の第1および第2の端面5および6上にそれぞれ形成される第1および第2の外部電極10および11を備えている。第1の外部電極10は、第1の端面5に露出した複数の内部電極8の各端部を互いに電気的に接続し、第2の外部電極11は、第2の端面6に露出した複数の内部電極9の各端部を互いに電気的に接続している。外部電極10および11の各々は、実質的にめっき析出物から構成される。
【0041】
外部電極10および11は、互いに電気的に絶縁された状態にある各々複数の内部電極8および9を互いに電気的に接続するとともに、はんだ接合時のはんだ食われを防止する役割を果たすことが求められるため、NiまたはCu等を主成分とすることが好ましい。
【0042】
外部電極10および11は、通電処理を行なう電解めっきにより形成されたものであっても、通電処理を行なわない無電解めっきで形成されたものであってもよい。なお、無電解Niめっきの場合、リン酸系やホウ素系の還元剤を用いた場合、めっき析出物中にリンやホウ素が混入しているが、電解Niめっきの場合は、リンやホウ素は実質的に混入していない。
【0043】
積層型電子部品1は、さらに、積層体2の第1および第2の主面3および4ならびに第1および第2の側面の各々における、第1および第2の端面5および6に隣接する各端縁部に第1および第2の外部電極10および11とそれぞれ導通するように形成された、第1および第2の端縁厚膜電極14および15を備えている。これら端縁厚膜電極14および15は、後述する製造方法の説明から明らかになるように、金属粉末とガラスフリットとを含む焼結体から構成される。
【0044】
次に、図1に示した積層型電子部品1の製造方法について、外部電極10および11ならびに端縁厚膜電極14および15の形成方法を中心に説明する。外部電極10および11を形成した後に、端縁厚膜電極14および15を形成するので、まず、外部電極10および11の形成方法について、図2ないし図5を参照しながら説明する。
【0045】
図2は、図1に示した積層体2の、内部電極8が露出する第1の端面5付近を拡大して示す図である。図2には、外部電極10を形成する前の状態が示されている。多数存在する内部電極8のうち、図示した領域に位置する2つの内部電極を抽出して、それぞれに参照符号「8a」および「8b」を付している。図2は、内部電極8が露出する端面5の近傍を任意に抽出して示したものであり、内部電極8の特定のものを示すものではない。そして、内部電極8aおよび8bに代表される複数の内部電極8は、この時点では互いに電気的に絶縁された状態にある。
【0046】
なお、第2の端面6およびそこに露出する内部電極9については、上述した第1の端面5および内部電極8の場合と実質的に同様であるので、図示および説明を省略する。」
(イ)「【0091】
以上のように、外部電極10および11を形成した後、これら外部電極10および11にそれぞれ導通されるように、端縁厚膜電極14および15が形成される。
・・・(中略)・・・
【0097】
なお、外部電極10および11をめっきにより形成した段階で、主面3および4ならびに側面の各々の一部にも回り込んで、めっき膜が多少析出することもあり得るが、十分な厚みがなく、また均質性に欠けるので、端縁厚膜電極14および15を形成しないと、はんだによる実装時に不具合が生じることがある。」
(ウ)「【0098】
図8は、この発明の第4の実施形態を説明するための図1に相当する図である。図8において、図1に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0099】
図8に示した積層型電子部品1aでは、外部電極10および11ならびに端縁厚膜電極14および15を形成した後、これらの上に、めっきを施すことによって、それぞれ、めっき膜17および18をさらに形成することを特徴としている。
【0100】
仮に、外部電極10および11ならびに端縁厚膜電極14および15のはんだ濡れ性が不十分な場合には、めっき膜17および18において、はんだ濡れ性の良好な材料を用いることにより、はんだ付けによる実装時の接合信頼性を確実に高めることができる。はんだ濡れ性の良好な材料としては、たとえばSn、Auなどが挙げられる。」
「【0109】
まず、被めっき物として、長さ3.1mm、幅1.55mmおよび厚み1.55mmの積層セラミックコンデンサ用積層体であって、絶縁体層がチタン酸バリウム系誘電体材料からなり、内部電極がNiを主成分とするものを用意した。そして、隣り合う内部電極間の間隔「s」(図2または図6参照)については、最も大きい箇所で測定して、表1に示すように、10μmのものと13μmのものとの2種類を用意した。なお、内部電極の平均厚みは1.0μmであった。」
「【0112】
次に、上記積層体を、容積300ccの回転バレル中に投入し、それに加えて、直径0.6mmの金属メディアを投入した。そして、回転バレルを、pHを4.2に調整した浴温60℃のNiめっき用ワット浴に浸漬させ、回転数60r.p.m.にて回転させながら、電流密度0.04A/dm2にて300分間通電した。このようにして、内部電極の露出する積層体の両端面に、厚み4.0μmのNiめっきによる外部電極を形成した。」
a.段落【0038】によれば、相対向する第1の主面3及び第2の主面4とこれら第1の主面3及び第2の主面4間を連結する第1の端面5及び第2の端面6並びに第1の側面及び第2の側面とを有する直方体状の積層体2が記載されている。
b.【0039】によれば、積層体2は、誘電体セラミックから構成される積層された複数の絶縁体層7と、絶縁体層7間の界面に沿って形成された複数の内部電極8及び内部電極9とを備えている。また、図1によれば、内部電極及び内部電極9は交互に形成されている。
c.段落【0038】によれば、第1の端面5及び第2の端面6は、直方体を構成する面であるから、矩形である。そして、段落【0043】及び図1の記載から、第1の外部電極10及び第2の外部電極11は、第1の端面5及び第2の端面6の全面に至って覆っていることから、第1の端面5及び第2の端面6と同じく矩形であり、また、図1によれば、第1の端面5及び第2の端面6のみに設けられていると認められる。
そうすると、積層セラミックコンデンサは、第1の端面5のみに形成された矩形状の第1の外部電極10、及び、積層体2の第2の端面6のみに形成された矩形状の第2の外部電極11を備えている。
d.段落【0040】によれば、第1の外部電極10には、第1の端面5に露出した複数の内部電極8の各端部が接続され、第2の外部電極11には、第2の端面6に露出した複数の内部電極9の各端部が接続される。
e.段落【0098】及び【0099】によれば、第4の実施形態では、第1の実施形態に対して、外部電極10及び外部電極11並びに端縁厚膜電極14及び端縁厚膜電極15の上に、さらにめっき膜17及びめっき膜18を形成することが記載されている。
そして、上述のとおり、段落【0038】によれば、第1の端面5及び第2の端面6は直方体を構成する面であり、矩形であるから、めっき膜17及びめっき膜18における、第1の端面5及び第2の端面6に設けられた部分(以下、それぞれ、「第1の端面めっき部」、「第2の端面めっき部」と称する。)は、第1の端面5及び第2の端面6と同様の矩形状と認められる。
したがって、甲第3号証には、第1の外部電極10を覆う矩形状の第1の端面めっき膜、及び、第2の外部電極12を覆う矩形状の第2の端面めっき膜が記載されている。
f.段落【0043】及び【0099】並びに図1及び8によれば、第1の外部電極10及び第2の外部電極11並びにめっき膜17及びめっき膜18は、積層体2に沿って設けられたものである。
そして、積層体2は直方体をなしているから、積層体2、第1の外部電極11、第2の外部電極12、第1の端面めっき部、及び第2の端面めっき部の集合体(以下、「コンデンサ本体」という。)の全体形状は直方体状と認められる。
g.段落【0043】によれば、第1の端縁厚膜電極14及び第2の端縁厚膜電極15は、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面に設けられているが、4つの面のいずれか一つに設けられた部分が配線基板11に接続される。そして、段落【0098】及び【0099】に記載された第4の実施形態においては、第1の端縁厚膜電極14の上にめっき膜17が設けられ、第2の端縁厚膜電極15の上にめっき膜18が設けられる。
ここで、配線基板11に搭載する側の面に垂直な方向を「高さ方向」と定義すれば、第1の端縁厚膜電極14及びその上のめっき膜17、並びに、第2の端縁厚膜電極15及びその上のめっき膜18は、それぞれ、コンデンサ本体の高さ方向一面に設けられている(以下、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第1の端縁厚膜電極14及びめっき膜17との積層体のうち、コンデンサ本体の高さ方向一面に設けられている部分を「第1の被接続電極」といい、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第2の端縁厚膜電極15及びめっき膜18との積層体のうち、コンデンサ本体の高さ方向一面に設けられている部分を「第2の被接続電極」という。)。
したがって、甲第3号証には、直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に第1の被接続電極と第2の被接続電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、第1の被接続電極は、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第1の端縁厚膜電極14及びめっき膜17との積層体の一部であり、第2の被接続電極は、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第2の端縁厚膜電極15及びめっき膜18との積層体の一部であるものが記載されている。
h.上述のとおり、外部電極10及び11は第1の端面5及び第2の端面6に設けられ、端縁厚膜電極14及び15は第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面に設けられているところ、段落【0091】によれば、端縁厚膜電極14及び15が外部電極10及び11に導通されるのであるから、端縁厚膜電極14及び15には外部電極10及び11の端縁が接続されると認められる。
そうすると、端縁厚膜電極14を含む第1の被接続電極には第1の外部電極10の高さ方向一端縁が接続され、端縁厚膜電極15を含む第2の端縁被接続電極には、第2の外部電極11の高さ方向一端縁が接続されているといえる。
上記摘示事項及び図面を総合勘案すると、甲第3号証の第4の実施形態について、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に第1の被接続電極と第2の被接続電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、
コンデンサ本体は、
相対向する第1の主面3及び第2の主面4とこれら第1の主面3及び第2の主面4間を連結する第1の端面5及び第2の端面6並びに第1の側面及び第2の側面とを有する直方体状の積層体2であって、誘電体セラミックから構成される積層された複数の絶縁体層7と、絶縁体層7間の界面に沿って交互に形成された複数の内部電極8及び内部電極9とを備えた直方体状の積層体2と、
第1の端面5のみに形成された矩形状の第1の外部電極10、及び第2の端面6のみに形成された矩形状の第2の外部電極11と、
第1の外部電極10を覆う矩形状の第1の端面めっき膜、及び、第2の外部電極12を覆う矩形状の第2の端面めっき膜と、を備えており、
第1の外部電極10には、第1の端面5に露出した複数の内部電極8の各端部が接続され、第2の外部電極11には、第2の端面6に露出した複数の内部電極9の各端部が接続され、
第1の被接続電極には、第1の外部電極10の高さ方向一端縁が接続され、
第2の被接続電極には、第2の外部電極11の高さ方向一端縁が接続され、
第1の被接続電極は、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第1の端縁厚膜電極14及びめっき膜17との積層体の一部であり、第2の被接続電極は、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第2の端縁厚膜電極15及びめっき膜18との積層体の一部である、
積層セラミックコンデンサ」
(2)対比・判断
ア.甲第1号証を主引用文献とする場合
本件発明3と、引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「積層セラミックコンデンサ」は、本件発明3の「積層セラミックコンデンサ」に相当する。
(イ)引用発明1の「上から奇数番目の内部電極層11a」及び「上から偶数番目の内部電極層11a」は、それぞれ本件発明1の「第1内部電極層」及び「第2内部電極層」に相当する。
そして、引用発明1の「略直方体形状の誘電体チップ11」は、「上面視形状が略矩形の内部電極層11aを複数内蔵し、上から奇数番目の内部電極層11aの端は一方の端面部12aに接続され、上から偶数番目の内部電極層11aの端は他方の端面部12aに接続されて」いること、及び「誘電体セラミックスからなり、内部電極層11aの間それぞれに存在する層状部分を有」することから、本件発明3の「(1)誘電体層を介して交互に配された矩形状の複数の第1内部電極層と矩形状の複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子」に相当する。
(ウ)引用発明1において「誘電体チップ11の端面のみを覆う略矩形状の端面部12a」は、外部電極12の一部であるから導体と認められ、本件発明3の「(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層」及び「(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層」に相当する。
(エ)引用発明1の「端面部12aの表面全体と曲面部12cの表面全体を連続して覆うように設けられたハンダ非付着膜」は、端面部12aに沿った曲面部12cの外縁の形状に対応するから、端面部12aと同様に略矩形状であると認められる。また、引用発明1の「ハンダ非付着膜」は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機絶縁材料であるから、誘電体セラミックスである。
したがって、引用発明1の「ハンダ非付着膜」は、本件発明3の「(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層」及び「(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層」に相当する。
(オ)引用発明1における「略直方体形状の誘電体チップ11」、「誘電体チップ11の端面のみを覆う略矩形状の端面部12a」及び「端面部12aの表面全体と曲面部12cの表面全体を連続して覆うように設けられたハンダ非付着膜」は、全体として「直方体状のコンデンサ本体」に相当する。
(カ)引用発明1の「側面部12bのうちの誘電体チップ11の底面を覆う部分は、略矩形状の被接続面を成して、積層セラミックコンデンサを搭載する基板21のパッド22上に塗布されたクリームハンダに接するもの」であることは、「高さ方向一面」「に矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた」ことに相当する。
ただし、引用発明1において「側面部12b」は、「誘電体チップ11の底面を覆う部分」以外の部分も、ハンダ非付着膜に覆われておらず外部に露出しているからクリームハンダ等による実装面となることが可能である。
すなわち、本件発明3では、第1外部電極及び第2外部電極が直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面「のみ」に設けられているのに対し、引用発明1では他の面にも「第1外部電極」及び「第2外部電極」に相当する部分を有する。
(キ)引用発明1の「上から奇数番目の内部電極層11aの端は一方の端面部12aに接続され、上から偶数番目の内部電極層11aの端は他方の端面部12aに接続されて」いることは、本件発明3の「前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され」ていることに相当する。
(ク)引用発明1の「側面部12bのうちの誘電体チップ11の底面を覆う部分」は、曲面部12cを介して端面部12aに接続されているから、本件発明3と同様に、「前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されている」といえる。
(ケ)引用発明1の「ハンダ非付着膜13-1」は、本件発明3の「第1被覆層」及び「第2被覆層」に相当し、引用発明1の内部電極層11aの間それぞれに存在する「層状部分」は、本件発明3の「誘電体層」に相当する。
ただし、本件発明3では、「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている」のに対して、引用発明1では、その旨特定されてない点で相違する。
(コ)以上の通りであるから、本件発明3と引用発明1とは、
「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に矩形状の第1外部電極と矩形状の第2外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、
前記コンデンサ本体は、(1)誘電体層を介して交互に配された矩形状の複数の第1内部電極層と矩形状の複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子と、(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層と、(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層と、を備えており、
前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され、前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されている、
積層セラミックコンデンサ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明3では、第1外部電極及び第2外部電極が直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面「のみ」に設けられているのに対し、引用発明では他の面にも「第1外部電極」及び「第2外部電極」に相当する部分を有する点。
[相違点2]
本件発明3では、「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている」のに対して、引用発明1では、その旨特定されてない点。
まず、相違点2について検討する。
引用発明1には、誘電体チップ11の内部電極層11aの間に存在する「層状部分」、及び誘電体チップ11の端面部12aを覆う「ハンダ非付着膜13-1」について厚さは特定されていない。また、「層状部分」と「ハンダ非付着膜13-1」の厚さの関係についての特定もない。
そして、引用発明1において、誘電体チップ11の内でコンデンサの電気的特性等に関係する「層状部分」と、誘電体チップ11の外でハンダの付着を防止する「ハンダ非付着膜13-1」の厚さは技術的に関連がなく、「ハンダ非付着膜13-1」と「層状部分」の厚さ比を設定する理由はない。
また、甲第2号証及び甲第3号証にも、第1被覆層と第2被覆層それぞれの厚さと、容量素子の誘電体層の厚さの関係は記載されていない。
そうすると、引用発明1において、「ハンダ非付着膜13-1」の厚を「層状部分」の厚さの1~10倍の範囲内で設定し、上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明3は、相違点1について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものではない。
イ.甲第2号証を主引用文献とする場合
本件発明3と、引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2の「積層セラミックチップコンデンサ」及び「略直方体のコンデンサ本体」は、各々本件発明3の「積層セラミックコンデンサ」及び「直方体状のコンデンサ本体」に相当する。
(イ)引用発明2の「誘電体12」は対向する側面及び上下面を含む4つの面を含むものであり、また、誘電体12にを主体とする積層セラミックチップコンデンサが略直方体であることから、誘電体12も直方体と認められる。
また、引用発明2は「前記誘電体12内にその上下面に平行にかつ一端が前記誘電体12の対向する側面に交互に露出するように設けられた複数の内部電極13」を備えている。
したがって、引用発明2の「誘電体12」と本件発明3の「容量素子」とは、「誘電体層を介して交互に配された複数の第1内部電極層と複数の第2内部電極層とを内包する直方体状」のものである点で一致する。
ただし、第1内部電極層及び第2内部電極層が、本件発明3では「矩形状」であるのに対し、引用発明ではその旨特定されていない。
(ウ)上記(イ)のとおり引用発明2の誘電体12が直方体と認められるから、誘電体12の「対向する側面」は矩形状といえる。また、内部電極は長さ方向端部に露出するように設けられるのが通常であるから、引用発明2において、誘電体12の「対向する側面」は長さ方向の一面及び他面と認められる。
したがって、引用発明2の「外部電極14a、14bのうち前記誘電体12の対向する側面に設けられた部分」は、本件発明3の「(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層と」に相当する。
(エ)引用発明2の「前記誘電体11の前記内部電極12が露出する側面に対応する前記外部電極14a、14b部分に被覆されている絶縁層15a、15b」は、「前記誘電体12と同一材料を用い」ているからセラミックからなる誘電体であり、本件発明3の「(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層」に相当する。
(オ)引用発明2の外部電極14a、14bのうち「側面全面と交わる前記上下面を含む4つの面」に設けられた部分は、絶縁層15a、15bに被覆されておらず、外部に露出していることから、本件発明3でいう「外部電極」に該当する。
そして、引用発明2の外部電極14a、14bのうち「側面全面と交わる前記上下面を含む4つの面」に設けられた部分は、そのうちの「下面側の電極部16a、16b」が、「コンデンサ本体の高さ方向一面」に設けられている。
したがって、引用発明2の「下面側の電極部16a、16b」は、本件発明1の「第1外部電極」及び「第2外部電極」に相当し、両者はコンデンサ本体の高さ方向一面に設けられている点で一致する。
ただし、本件発明3では第1外部電極及び第2外部電極が高さ方向一面「のみ」に設けられているのに対し、引用発明2では他の面にも第1外部電極及び第2外部電極に相当する部分が設けられている。
(カ)引用発明2の「外部電極14a、14bのうち前記誘電体12の対向する側面に設けられた部分」は、「前記誘電体12内にその上下面に平行にかつ一端が前記誘電体12の対向する側面に交互に露出するように設けられた複数の内部電極13」と接続されていると認められる。
したがって、引用発明2と本件発明3とは、「前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され」る点で一致する。
(キ)引用発明2の「下面側の電極部16a、16b」は、外部電極14a、14bの一部であるから、「外部電極14a、14bのうち前記誘電体12の対向する側面に設けられた部分」と接続されているのは自明である。
したがって、引用発明2と本件発明3とは、「前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されている」点で一致する。
(ク)引用発明2の「絶縁層15a」及び「絶縁層15b」は、本件発明3の「第1被覆層」及び「第2被覆層」に相当し、引用発明2の内部電極13間の「誘電体12」は、本件発明3の「誘電体層」に相当する。
ただし、本件発明3では、「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている」のに対して、引用発明2では、その旨特定されてない点で相違する。
(ケ)そうすると、本件発明3と引用発明2とは、
「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に第1外部電極と第2外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、
前記コンデンサ本体は、(1)誘電体層を介して交互に配された矩形状の複数の第1内部電極層と矩形状の複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子と、(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層と、(4)前記第1導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う誘電体セラミックスから成る矩形状の第2被覆層と、を備えており、
前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の他端縁それぞれが接続され、前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されている、
積層セラミックコンデンサ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点3]
本件発明3では第1外部電極及び第2外部電極が高さ方向一面「のみ」に設けられているのに対し、引用発明2では他の面にも第1外部電極及び第2外部電極に相当する部分が設けられている点。
[相違点4]
第1内部電極層及び第2内部電極層が、本件発明3では「矩形状」であるのに対し、引用発明2ではその旨特定されていない点。
[相違点5]
本件発明3では、「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている」のに対して、引用発明2ではその旨特定がない点で相違する。
まず、相違点5について検討する。
引用発明2に「前記誘電体12内にその上下面に平行にかつ一端が前記誘電体12の対向する側面に交互に露出するように設けられた複数の内部電極13」とあるが、「内部電極13」間の「誘電体12」の厚さは特定されていない。また、「絶縁層15a、15b」の厚さも特定されていない。
そして、「内部電極13」間の「誘電体12」の厚さと、「絶縁層15a、15b」の厚さの関係についての特定もない。
ここで、引用発明2において、誘電体12の中でコンデンサの電気的特性等に関係する「内部電極13」間の「誘電体12」と、誘電体12の外でハンダが付着するのを防止する(段落【0028】)「絶縁層15a、15b」の厚さは技術的に関連がなく、「内部電極13」間の「誘電体12」と「絶縁層15a、15b」の厚さ比を設定する理由はない。
また、甲第1号証及び甲第3号証にも、第1被覆層と第2被覆層それぞれの厚さと、容量素子の誘電体層の厚さの関係は記載されていない。
そうすると、引用発明2において、「絶縁層15a、15b」の厚さを「内部電極13」間の「誘電体12」の厚さの1~10倍の範囲内で設定し、上記相違点5に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明3は、相違点3及び4について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものでない。
ウ.甲第3号証を主引用文献とする場合
本件発明3と、引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3の「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に第1の被接続電極と第2の被接続電極が設けられた積層セラミックコンデンサ」が、本件発明3の「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面」「に第1外部電極と第2外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサ」に相当する。
ただし、引用発明3で第1の被接続電極は、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第1の端縁厚膜電極14及びめっき膜17との積層体の一部であり、第2の被接続電極は、積層体2の第1の主面、第2の主面、第1の側面及び第2の側面の4面に設けられた第2の端縁厚膜電極15及びめっき膜18との積層体の一部である。しかるところ、4面に設けられたこれらの積層体はいずれも外部に露出していて、「外部電極」といえる。すなわち、本件発明3では、第1外部電極及び第2外部電極が高さ方向一面「のみ」に設けられているのに対し、引用発明3では他の面にも第1外部電極及び第2外部電極に相当する部分が設けられている。
また、第1外部電極及び第2外部電極が、本件発明3では「矩形状」であるのに対し、引用発明3ではその旨特定されていない。
(イ)引用発明3の「相対向する第1の主面3及び第2の主面4とこれら第1の主面3及び第2の主面4間を連結する第1の端面5及び第2の端面6並びに第1の側面及び第2の側面とを有する直方体状の積層体2であって、誘電体セラミックから構成される積層された複数の絶縁体層7と、絶縁体層7間の界面に沿って交互に形成された複数の内部電極8及び内部電極9とを備えた直方体状の積層体2」は、本件発明3の「誘電体層を介して交互に配された複数の第1内部電極層と複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子」に相当する。
ただし、第1内部電極及び第2内部電極が、本件発明3では「矩形状」であるのに対し、引用発明3ではその旨特定されていない。
(ウ)内部電極は長さ方向端部に露出するように設けられるのが通常であるから、引用発明3において第1の端面5及び第2の端面6が長さ方向一面であると認められる。
そうすると、引用発明3の「積層体2の第1の端面5のみに形成された矩形状の第1の外部電極10、及び第2の端面6のみに形成された矩形状の第2の外部電極11」は、本件発明3の「(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層」に相当する。
(エ)引用発明3の「第1の外部電極10を覆う矩形状の第1の端面めっき膜」は本件発明3の「第1被覆層」に相当し、両者は、「第1導体層の外面を覆う矩形状」のものである点で一致する。また、引用発明3の「第2の外部電極12を覆う矩形状の第2の端面めっき膜」は本件発明3の「第2被覆層」に相当し、両者は、「第2導体層の外面を覆う矩形状」のものである点で一致する。
ただし、「第1被覆層」及び「第2被覆層」が、それぞれ、本件発明3では「誘電体セラミックスから成る」のに対し、引用発明3ではめっき膜である。
(オ)引用発明3の「第1の外部電極10には、第1の端面5に露出した複数の内部電極8の各端部が接続され、第2の外部電極11には、第2の端面6に露出した複数の内部電極9の各端部が接続され」る点は、本件発明3の「前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され」る点に相当する。
(カ)引用発明3の「第1の被接続電極には、第1の外部電極10の高さ方向一端縁が接続され、第2の被接続電極には、第2の外部電極11の高さ方向一端縁が接続されている」点は、本件発明3の「前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されている」点に相当する。
(キ)引用発明3の「第1の端面めっき膜」及び「第2の端面めっき膜」は、本件発明3の「第1被覆層」及び「第2被覆層」に相当し、引用発明3の「絶縁体層7」は、本件発明3の「誘電体層」に相当する。
ただし、本件発明3では、「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている」のに対して、引用発明3では、その旨特定されてない点で相違する。
(ク)したがって、本件発明3と引用発明3とは、
「直方体状のコンデンサ本体の高さ方向一面に第1外部電極と第2外部電極が設けられた積層セラミックコンデンサであって、
前記コンデンサ本体は、(1)誘電体層を介して交互に配された複数の第1内部電極層と複数の第2内部電極層とを内包する直方体状の容量素子と、(2)前記容量素子の長さ方向一面のみを覆う矩形状の第1導体層と、(3)前記容量素子の長さ方向他面のみを覆う矩形状の第2導体層と、(4)前記第1導体層の外面を覆う矩形状の第1被覆層と、(5)前記第2導体層の外面を覆う矩形状の第2被覆層と、を備えており、
前記第1導体層には、前記複数の第1内部電極層の長さ方向一端縁それぞれが接続され、前記第2導体層には、前記複数の第2内部電極層の長さ方向他端縁それぞれが接続され、前記第1外部電極には、前記第1導体層の高さ方向一端縁が接続され、前記第2外部電極には、前記第2導体層の高さ方向一端縁が接続されている、
積層セラミックコンデンサ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点6]
本件発明3では、第1外部電極及び第2外部電極が高さ方向一面「のみ」に設けられているのに対し、引用発明3では他の面にも第1外部電極及び第2外部電極に相当する部分が設けられている点で相違する。
[相違点7]
第1外部電極及び第2外部電極が、本件発明3では「矩形状」であるのに対し、引用発明3ではその旨特定されていない点。
[相違点8]
第1内部電極及び第2内部電極が、本件発明3では「矩形状」であるのに対し、引用発明3ではその旨特定されていない点。
[相違点9]
第1被覆層及び第2被覆層が、それぞれ、本件発明3では「誘電体セラミックスから成る」のに対し、引用発明3ではめっき膜である点。
[相違点10]
本件発明3では、「前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている」のに対して、引用発明3ではその旨特定がない点で相違する。
まず、相違点10について検討する。
引用発明3には「絶縁体層7」、「第1の端面めっき膜」及び「第2の端面めっき膜」の厚さは特定されていない。また、「絶縁体層7」の厚さと、「第1の端面めっき膜」及び「第2の端面めっき膜」の厚さの関係についての特定もない。
そして、引用発明3において、積層体2の中でコンデンサの電気的特性等に関係する「絶縁体層7」と、積層体2の外ではんだ濡れ性を良好にする(段落【0100】)「第1の端面めっき膜」及び「第2の端面めっき膜」の厚さは技術的に関連がなく、「第1の端面めっき膜」及び「第2の端面めっき膜」と「絶縁体層7」の厚さ比を設定する理由はない。
また、甲第1号証及び甲第2号証にも、第1被覆層と第2被覆層それぞれの厚さと、容量素子の誘電体層の厚さの関係は記載されていない。
そうすると、引用発明3において、「第1の端面めっき膜」及び「第2の端面めっき膜」の厚さを「絶縁体層7」の厚さの1~10倍の範囲内で設定し、上記相違点10に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明3は、相違点6ないし9について検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものでない。
エ.小活
以上のとおり、特許異議申立人の主張を採用することができない。
(3)特許異議申立人の特許異議申立書における、甲第1号証ないし甲第3号証の記載に関する主張について
特許異議申立人は、次の主張をしている。
「甲第1~甲第3号証の図面を見る限り、全て、下記の構成要件を有している。・・・
『前記第1被覆層と前記第2被覆層それぞれの厚さは、前記容量素子の前記誘電体層の厚さの1~10倍の範囲内で設定されている』。」(第16頁)
上記主張について検討する。
甲第1号証~甲第3号証に記載された図面は、寸法までも忠実に再現した図面でなく省略された概念図であり、当該図面から「第1被覆層」及び「第2被覆層」と「誘電体層」の厚さの比を読み取ることはできない。
よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。
(4)まとめ
したがって、請求項3に係る特許は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものであるとの特許異議申立人の主張を採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項3ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項3ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1及び2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条に規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2019-700371