特許訂正審判
2025-390045
符号化/復号の方法および装置、ならびに通信システム
- 審判番号
- 2025-390045
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2021-516487
- 登録番号
- 7662514
- 請求日
- 2025年04月17日
- 審決日
- 2025年09月12日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オッポ広東移動通信有限公司
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】関根 毅
- 【請求人代理人】吉田 昌司
- 【請求人代理人】出口 智也
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 宮下 誠
- 審判官 坂東 大五郎
- 分類
- P141 .851-Z (H04N) / P141 .852-Z (H04N) / P141 .853-Z (H04N) / P141 .854-Z (H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7662514号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第7662514号(以下、「本件特許」という。)は、2020年(令和2年)9月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年10月4日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和7年4月7日に特許権の設定登録がなされ、令和7年4月17日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
そして、令和7年5月9日付けで手続補正指令(方式)がなされ、令和7年5月20日付けで審判請求書の手続補正がなされ、その後、当審において、令和7年6月9日付け(発送日:令和7年6月13日)で訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何ら応答がなかった。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、令和7年5月20日付け手続補正書における補正のとおり、「特許第7662514号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項12、13について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
第3 訂正事項
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の訂正事項は以下のとおりである。
(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項12に記載された「予測モード」を「予測パラメータ」に訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する)。
第4 訂正拒絶理由の概要
令和7年6月9日付けで当審において通知した訂正拒絶理由の概要は以下のとおりである。
訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
また、訂正事項は、特許法第126条第6項の規定に適合しない。
第5 当審の判断
1 訂正の目的について
(1)誤記の訂正について
請求人は、審判請求書の6(3)イaにおいて、訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものであると述べているので、以下、検討する。
ア 誤記の訂正の要件
「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。
また、誤記の訂正が認められるためには、設定登録時の明細書等中の記載に誤記が存在することが必要である。
さらに、請求項中の記載が、それ自体で、又は設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書等の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まるときにおいて、その誤りを正しい記載にする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
そこで、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項12(以下、「訂正前の請求項12」という。)の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載の中に誤記が存在するかについて検討する。
イ 訂正前の記載それ自体について
まず、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載が、それ自体で誤りであることが明らかであるかについて検討する。
訂正前の請求項12の記載は以下のとおりである。なお、下線は、強調のために当審で付したものである。
【請求項12】
画像を復号する復号装置であって、
ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部と、
イントラ予測部であって、
前記カレントブロックの隣接サンプルおよび前記カレントブロックの予測パラメータに基づいて前記カレントブロックのマトリクスベースのイントラ予測(MIP)入力サンプルを決定し、
前記予測パラメータに基づいて前記カレントブロックのMIP重み付けマトリクスを決定し、
前記MIP重み付けマトリクス、前記MIP入力サンプル、オフセットシフト用パラメータ(fO)、および数値シフト用パラメータ(sW)に基づいて前記カレントブロックのMIP予測サンプルを決定し、任意のMIPモード識別子と任意のサイズ識別子を有するブロックにおいて、前記数値シフト用パラメータの値はいずれも第1固定値であり、任意のMIPモード識別子と任意のサイズ識別子を有するブロックにおいて、前記オフセットシフト用パラメータの値はいずれも第2固定値であり、
前記カレントブロックのイントラ予測サンプルを生成するために前記MIP予測サンプルに対してアップサンプリングプロセスを行う、
ように構成されているイントラ予測部と、
を含む、復号装置。
訂正前の請求項12に係る発明は、「画像を復号する復号装置」であって、「構文解析部」と「イントラ予測部」を含む「復号装置」である。
そして、一般に、「構文解析部」と「イントラ予測部」を含む「復号装置」において、「構文解析部」が、ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定する、ということは一般的に行われていることであり、この点に格別不合理な点はない。
よって、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載は、それ自体で誤りであることが明らかであるとはいえない。
ウ 設定登録時の明細書の記載との関係について
次に、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載が、設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることが明らかであるかについて検討する。
(ア)設定登録時の明細書には以下の記載がある。なお、下線は、強調のために当審で付したものである。
【0079】
復号システム400は、入力ビットストリーム40を解析してそのシンタックス要素の値を得るように構成されている構文解析部401を含む。また、構文解析部401はシンタックス要素の二進表現を数値(すなわち、復号ブロック42)へ変換して、(例えば、復号のために)この数値を予測部402へ送る。一部の実施形態では、構文解析部401は、数値を復号するための1つまたは複数の変数および/もしくはパラメータを予測部402へ送ることもできる。
【0080】
予測部402は、復号ブロック42(例えば、CUまたは変換ブロックなどのCUの一部分の予測ブロック43)を決定するように構成される。復号ブロック42を復号するのにインター符号化モードが使用されたと示される場合、予測部402のMC(動き補償)部403は、関連するパラメータを構文解析部401から受信し、それに応じてインター符号化モードで復号を行うことができる。復号ブロック42を復号するのにイントラ予測モード(例えば、MIPモード)が使用されると示される場合、予測部402のイントラ予測部404は、関連するパラメータを構文解析部401から受信し、それに応じてイントラ符号化モードで復号を行うことができる。一部の実施形態では、イントラ予測モード(例えば、MIPモード)は、入力ビットストリーム40内に埋め込まれている特定のフラグ(例えば、MIPフラグ)により識別することができる。
【0118】
図9は、本開示の一実施形態に係るデコーダ900の模式図である。示されるように、デコーダ900は、分析部901、第2演算部902、第2予測部903、第2予測部904、および第2調査部905を含む。分析部901は、カレントブロックの予測パラメータを得るためにビットストリームを解析するように構成される。第2決定部902はカレントブロックの適切な予測パラメータを設定し、MIP入力サンプル(例えば、配列「p[x]」内の値)を決定する。一部の実施形態では、MIP入力サンプルは隣接サンプルに基づいて決定することができる。予測パラメータは、どの予測モデル(例えば、MIPモデル)が使用されたか、および対応するパラメータ(例えば、サイズ識別子)を示すパラメータを含む。また、第2決定部903はMIP計量マトリクスを決定することもできる。第2演算部904は、数値シフト用パラメータ(例えば、「sW」)およびオフセットシフト用パラメータ(例えば、「fO」)に基づいてオフセット値(例えば、「oW」)を算出するように構成される。第2予測部904は、MIP計量マトリクス、オフセット値、数値シフト用パラメータ、およびオフセットシフト用パラメータに基づいてカレントブロックのMIP予測を生成する。
(イ)設定登録時の明細書の段落0079の記載によれば、「構文解析部」は、入力ビットストリーム40を解析してそのシンタックス要素の値を得るように構成されており、シンタックス要素の二進表現を数値(すなわち、復号ブロック42)へ変換して、(例えば、復号のために)この数値を予測部402へ送るといえる。
また、設定登録時の明細書の段落0080の記載によれば、復号ブロック42を復号するのにイントラ予測モード(例えば、MIPモード)が使用されると示される場合、予測部402のイントラ予測部404は、関連するパラメータを構文解析部401から受信し、それに応じてイントラ符号化モードで復号を行うことができ、一部の実施形態では、イントラ予測モード(例えば、MIPモード)は、入力ビットストリーム40内に埋め込まれている特定のフラグ(例えば、MIPフラグ)により識別することができるといえる。
そして、一般に、復号ブロック42のイントラ予測モードを識別するための特定のフラグ(例えばMIPフラグ)とは、入力ビットストリーム40内に、シンタックス要素として埋め込まれているものであるから、「構文解析部」は、入力ビットストリーム40を解析して、シンタックス要素の値を得ることにより、復号ブロック42のイントラ予測モードを決定しているといえる。
よって、設定登録時の明細書には、「構文解析部」が、入力ビットストリーム40を解析して、復号ブロック42のイントラ予測モードを決定することが記載されているといえる。
(ウ)次に、設定登録時の明細書の段落0118の記載によれば、分析部901は、カレントブロックの予測パラメータを得るためにビットストリームを解析するように構成されるといえる。
そして、設定登録時の明細書の段落0118の「分析部」は、ビットストリームを解析するものであるから、設定登録時の明細書の段落0079の「構文解析部」に対応するものといえる。
よって、設定登録時の明細書には、「構文解析部」が、カレントブロックの予測パラメータを得るためにビットストリームを解析することが記載されているといえる。
(エ)以上によれば、設定登録時の明細書には、「構文解析部」が、入力ビットストリーム40を解析して、復号ブロック42のイントラ予測モードを決定することと、「構文解析部」が、カレントブロックの予測パラメータを得るためにビットストリームを解析することの両方が記載されているといえる。
そして、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載は、これらのうちの前者に対応するものといえる。
(オ)よって、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載は、設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りがあることが明らかであるとはいえない。
オ まとめ
以上によれば、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載の中に誤記が存在するとはいえない。
よって、訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものであるとはいえず、特許法第126条第1項ただし書第2号の誤記の訂正を目的とするものとはいえない。
(2)誤訳の訂正について
ア 誤訳の訂正の要件
「誤訳の訂正」とは、翻訳により国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「国際出願明細書等」という。)における意味とは異なる意味を有するものとなった記載(誤訳)を、国際出願明細書等における意味を表す記載に訂正することをいう。
そして、誤訳の訂正が認められるためには、設定登録時の明細書等の記載の意味が、国際出願明細書等における意味と異なることが必要である。
よって、以下、設定登録時の明細書等の記載の意味が、国際出願明細書等における意味と異なるかについて検討する。
イ 国際出願明細書等について
訂正前の請求項12は、本件特許に対応する国際出願明細書等の特許請求の範囲の請求項18に対応するものである。
そして、当該請求項18には、「a parsing unit configured to parse a bitstream to determine a prediction mode of a coding block」と記載されており、当該記載に対応する日本語の翻訳文は、「ビットストリームを解析して符号化ブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」である。
ここで、当該翻訳文における「符号化ブロック」は、訂正前の請求項12の「カレントブロック」に対応するものであるから、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載の意味は、国際出願明細書等における記載の意味と異なるとはいえない。
ウ まとめ
以上によれば、設定登録時の明細書等の記載の意味は、国際出願明細書等における意味と異なるとはいえない。
よって、訂正事項は、誤訳の訂正を目的とするものであるとはいえず、特許法第126条第1項ただし書第2号の誤訳の訂正を目的とするものとはいえない。
(3)特許請求の範囲の減縮について
次に、訂正前の請求項12の「予測モード」を「予測パラメータ」に訂正することが、特許請求の範囲の減縮に該当するかについて検討する。
ア 「予測モード」という用語について
まず、訂正前の請求項12の「予測モード」という用語の意味について検討する。
設定登録時の明細書等には、以下の記載がある。なお、下線は、強調のために当審で付したものである。
【0003】
Versatile Video Coding (VVC)は、High Efficiency Video Coding規格(H.265/HEVC)などの現在の規格を置き換えるのに使用される、次世代のビデオ圧縮規格である。VVC符号化規格は、現在の規格よりも高い符号化品質を与える。この目標を達成するため、様々なイントラ予測モードおよびインター予測モードが検討される。これらの予測モードを使用する場合、ビットストリーム(バイナリ形式)で送信されるデータが削減できるようにビデオを圧縮することができる。マトリクスベースのイントラ予測(MIP)はこうしたモードの一つである。MIPはイントラ予測モードである。MIPモードで実行する場合、エンコーダまたはデコーダは、現在の符号化ブロック(例えば、ユニットとして送信される、共に符号化および/または復号されうるビットまたは桁の集まり)に基づいてイントラ予測ブロックを導出することができる。しかし、そのような予測ブロックの導出にはかなりの量の計算リソースおよび追加の記憶空間が必要になりうる。それゆえ、この問題に対処する改良された方法は有益で望ましい。
【0023】
イントラ予測部206は、MIPモードを含む様々なイントラ予測モードを使ってCU(またはCUの一部分)の(同じ時点での)イントラ予測ブロックを導出するように構成される。MIPモード(以降では「MIPプロセス」と呼ばれる)を使ったイントラ予測ブロックの導出の詳細は、図1Bおよび図3を参照して論じられる。MIPプロセスの間は、イントラ予測部206は、まずCUの隣接サンプルから1つまたは複数の参照サンプルを、例えば隣接サンプルを参照サンプルとして直接使う、または隣接サンプルをダウンサンプリングする、または隣接サンプルから直接抽出する(例えば、図3のステップ301)ことにより、導出する。
【0033】
ステップ301において、イントラ予測部は符号化ブロック300の幅および高さを決定し、それらをそれぞれ変数「cbWidth」と「cbHeight」で示す。一部の実施形態では、イントラ予測部206はレート歪み最適化されたモード決定プロセスを採用して、イントラ予測モード(例えば、MIPモードが使用されるかどうか)を決定することができる。そのような実施形態では、符号化ブロック300を1つまたは複数の変換ブロックへ分割することができて、その幅および高さはそれぞれ変数「nTbW」と「nTbH」で示される。MIPモードがイントラ予測モードとして使用される場合、イントラ予測部は、以下の条件A~Cに基づいてMIPサイズ識別子(変数「mipSizeId」で示される)を決定する。
[条件A]「nTbW」と「nTbH」がいずれも4である場合、「mipSizeId」を0に設定する。
[条件B]そうではなく、「cbWidth」または「cbHeight」が4である場合、「mipSizeId」を1に設定する。
[条件C]いずれでもなければ、「mipSizeId」を2に設定する。
【0080】
予測部402は、復号ブロック42(例えば、CUまたは変換ブロックなどのCUの一部分の予測ブロック43)を決定するように構成される。復号ブロック42を復号するのにインター符号化モードが使用されたと示される場合、予測部402のMC(動き補償)部403は、関連するパラメータを構文解析部401から受信し、それに応じてインター符号化モードで復号を行うことができる。復号ブロック42を復号するのにイントラ予測モード(例えば、MIPモード)が使用されると示される場合、予測部402のイントラ予測部404は、関連するパラメータを構文解析部401から受信し、それに応じてイントラ符号化モードで復号を行うことができる。一部の実施形態では、イントラ予測モード(例えば、MIPモード)は、入力ビットストリーム40内に埋め込まれている特定のフラグ(例えば、MIPフラグ)により識別することができる。
そして、以上の記載によれば、訂正前の請求項12の「予測モード」という用語は、インター予測モードやイントラ予測モード(例えば、MIPモード)を意味する用語であるといえる。
イ 「予測パラメータ」という用語について
次に、訂正事項における「予測パラメータ」という用語の意味について検討する。
設定登録時の明細書等には、以下の記載がある。なお、下線は、強調のために当審で付したものである。
【0014】
第1イントラ予測部103は、まずCU12の予測パラメータ(例えば、幅、高さ、サイズなど)を決定する。それに応じて、第1イントラ予測部103はCU12のMIPサイズ識別子を決定することができる。第1イントラ予測部103はさらに、CU12に対する参照サンプル群を(例えば、図3を参照して詳細に論じられる、上側隣接サンプルや左側隣接サンプルなどのCU12の隣接サンプルを使って)導出する。そして、第1イントラ予測部103は、参照サンプル群および対応するMIP重み付けマトリクスに基づいてCU12のMIP予測を導出する。第1イントラ予測部103は、MIP予測をCU12のイントラ予測14として使用することができる。そしてイントラ予測14およびイントラ予測14を導出するための予測パラメータが更なるプロセスのためにエントロピー符号化部105へ送信される。
【0017】
図1Bは、本開示の実施形態に係るMIPプロセスS100を示す模式図である。MIPプロセスは4つの主要なステップ、S101、S102、S103、およびS104を含む。ステップS101では、MIPプロセスS100に対する予測パラメータが決定される。予測パラメータは、カレントブロックの種類またはサイズ(例えば、「mipSizeId」などのMIPサイズ識別子により示される)、各境界内の参照サンプルの個数(例えば、「boundySize」)、MIP入力サンプルの個数(例えば、「inSize」)、および、マトリクス乗算により生成されたMIP予測ブロックの寸法(例えば、「predSize×predSize」)を含む。カレントブロックのサイズに基づき、MIPサイズ識別子は「0」、「1」、または「2」とすることができて、MIPサイズ識別子はパラメータ「mipSizeId」に記録される。異なるブロックは異なる予測パラメータを持ちうる。
【0092】
図5は、本開示の一実施形態に係る方法500を示すフローチャートである。方法500はブロック501でカレントブロックの予測パラメータを決定することで始まる。一部の実施形態では、予測パラメータは予測用のパラメータ(例えば、H.265標準で規定される「predModeIntra」)およびサイズ識別子(例えば、「mipSizeId」)を含む。ブロック502で、MIPモードが適用可能であることを予測パラメータが示す場合、方法500は隣接サンプルに基づいてMIP入力サンプル(例えば、配列「p[x]」内の値)の決定を続ける。一部の実施形態では、隣接サンプルは上側隣接サンプル、および/または、左側隣接サンプルを含むことができる。
【0105】
図6は、本開示の一実施形態に係る方法600を示すフローチャートである。方法600はブロック601でビットストリーム内のカレントブロックの予測パラメータを決定することで始まる。一部の実施形態では、予測パラメータは、H.265標準で規定される「predModeIntra」および「mipSizeId」を含むことができる。
【0113】
図7は、本開示の一実施形態に係るエンコーダ700の模式図である。示されるように、エンコーダ700は第1決定部701、第1演算部702、および第1予測部703を含む。第1決定部701はカレントブロックの予測パラメータを設定し、MIP入力サンプル(例えば、配列「p[x]」内の値)を決定する。一部の実施形態では、MIP入力サンプルは隣接サンプルに基づいて決定することができる。予測パラメータは、どの予測モデル(例えば、MIPモデル)が使用されたか、および対応するパラメータ(例えば、サイズ識別子)を示すパラメータを含む。また、第1決定部701はMIP計量マトリクスを決定することもできる。第1演算部702は、数値シフト用パラメータ(例えば、「sW」)およびオフセットシフト用パラメータ(例えば、「fO」)に基づいてオフセット値(例えば、上述された「oW」)を算出するように構成される。第1予測部703は、MIP計量マトリクス、オフセット値、数値シフト用パラメータ、およびオフセットシフト用パラメータに基づいてカレントブロックのMIP予測を生成する。
上記段落0014によれば、「予測パラメータ」は、「例えば、幅、高さ、サイズなど」であるといえる。
また、上記段落0017によれば、「予測パラメータ」は、「カレントブロックの種類またはサイズ(例えば、「mipSizeId」などのMIPサイズ識別子により示される)、各境界内の参照サンプルの個数(例えば、「boundySize」)、MIP入力サンプルの個数(例えば、「inSize」)、および、マトリクス乗算により生成されたMIP予測ブロックの寸法(例えば、「predSize×predSize」)を含む」といえる。
また、上記段落0092によれば、「予測パラメータ」は、「予測用のパラメータ(例えば、H.265標準で規定される「predModeIntra」)およびサイズ識別子(例えば、「mipSizeId」)を含む」といえる。
また、上記段落0105によれば、「予測パラメータ」は、「H.265標準で規定される「predModeIntra」および「mipSizeId」を含むことができる」といえる。
また、上記段落0113によれば、「予測パラメータ」は、「どの予測モデル(例えば、MIPモデル)が使用されたか、および対応するパラメータ(例えば、サイズ識別子)を示すパラメータを含む」といえる。
ここで、動画像符号化の技術分野における技術常識を考慮すると、上記段落0092、0105の「predModeIntra」とは、イントラ予測モードを表すものである。
よって、「予測パラメータ」と言う用語は、「イントラ予測モード」を含む、様々なパラメータを意味する用語であり、「予測モード」という用語よりも上位の概念を表すものといえる。
ウ 訂正事項が特許請求の減縮に該当するかについて
上記ア、イによれば、訂正前の請求項12の「予測モード」を「予測パラメータ」に訂正することは、発明特定事項を下位概念から上位概念へ変更することであるといえる。
そして、発明特定事項を下位概念から上位概念へ変更することは、特許請求の範囲の減縮には該当しない。
エ まとめ
以上によれば、訂正前の請求項12の「予測モード」を「予測パラメータ」に訂正することは、特許請求の範囲の減縮には該当しない。
よって、訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
(4)明瞭でない記載の釈明について
ア 明瞭でない記載の釈明の要件
「明瞭でない記載の釈明」とは、設定登録時の明細書等中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、設定登録時の明細書等中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書等に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいう。
そして、「明瞭でない記載の釈明」が認められるためには、設定登録時の明細書等に明瞭でない記載が存在することが必要である。
そこで、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載中に、明瞭でない記載が存在するかについて検討する。
イ 訂正前の記載それ自体について
まず、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載中に、それ自体意味の不明瞭な記載があるかについて検討する。
上記(1)イで述べたとおり、「構文解析部」と「イントラ予測部」を含む「復号装置」において、「構文解析部」が、ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定する、ということは一般的に行われていることであり、この点に格別不合理な点はないから、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載は明瞭である。
よって、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載中に、それ自体意味の不明瞭な記載があるとはいえない。
ウ 設定登録時の明細書等中の他の記載との関係について
次に、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載が、設定登録時の明細書等中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっているかについて検討する。
(ア)上記(1)ウで述べたとおり、設定登録時の明細書には、「構文解析部」が、入力ビットストリーム40を解析して、復号ブロック42のイントラ予測モードを決定することと、「構文解析部」が、カレントブロックの予測パラメータを得るためにビットストリームを解析することの両方が記載されているといえ、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載は、これらのうちの前者に対応するものといえる。
よって、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載が、設定登録時の明細書中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっているとはいえない。
(イ)次に、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載が、設定登録時の特許請求の範囲における他の請求項の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっているかについて検討する。
設定登録時の特許請求の範囲の請求項1には、以下の記載がある。なお、下線は、強調のために当審で付したものである。
【請求項1】
画像を予測する方法であって、
ビットストリーム内のカレントブロックの予測パラメータを決定することと、
前記カレントブロックの隣接サンプルおよび前記予測パラメータに基づいて前記カレントブロックのマトリクスベースのイントラ予測(MIP)入力サンプルを決定することと、
MIP重み付けマトリクス、前記MIP入力サンプル、オフセットシフト用パラメータ(fO)、および数値シフト用パラメータ(sW)に基づいて前記カレントブロックのMIP予測サンプル(predMip[x][y])を決定することであって、任意のMIPモード識別子と任意のサイズ識別子を有するブロックにおいて、前記数値シフト用パラメータの値はいずれも第1固定値であり、任意のMIPモード識別子と任意のサイズ識別子を有するブロックにおいて、前記オフセットシフト用パラメータの値はいずれも第2固定値である、ことと、
前記カレントブロックのイントラ予測サンプル(predSamples[x][y])を生成するために前記カレントブロックの前記MIP予測サンプルに対してアップサンプリングプロセスを行うことと、
を含む、方法。
当該請求項1には、「ビットストリーム内のカレントブロックの予測パラメータを決定することと」という記載がある。
しかしながら、訂正前の請求項12は「画像を復号する復号装置」であるのに対し、当該請求項1は「画像を予測する方法」であり、画像を復号することに限定されていない。
また、訂正前の請求項12は「前記予測パラメータに基づいて前記カレントブロックのMIP重み付けマトリクスを決定し」という構成を含んでいるのに対し、当該請求項1は、当該構成に対応する構成を含んでいない。
したがって、訂正前の請求項12に係る発明は、当該請求項1に係る発明と一対一に対応する構成を備えているものではないから、当該請求項1に係る発明に対応する装置の発明であるとはいえない。
そして、訂正前の請求項12に係る発明は、当該請求項1に係る発明に対応する装置の発明であるとはいえないから、当該請求項1に、「ビットストリーム内のカレントブロックの予測パラメータを決定することと」という記載があることをもって、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載が、当該請求項1の記載との関係で不合理を生じているとはいえない。
よって、訂正前の請求項12の「ビットストリームを解析(parse)してカレントブロックの予測モードを決定するように構成されている構文解析部」という記載は、設定登録時の特許請求の範囲における他の請求項の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっているとはいえない。
エ まとめ
以上によれば、設定登録時の明細書等に明瞭でない記載が存在するとはいえない。
よって、訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。
(5)請求項間の引用関係の解消について
訂正事項が請求項間の引用関係の解消を目的とするものに該当しないことは明らかである。
よって、訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第4号の請求項間の引用関係の解消を目的とするものとはいえない。
(6)まとめ
以上によれば、訂正事項は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明瞭でない記載の釈明、請求項間の引用関係の解消のいずれにも該当しないから、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
2 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて
上記1(3)で述べたとおり、訂正前の請求項12の「予測モード」を「予測パラメータ」に訂正することは、発明特定事項を下位概念から上位概念へ変更することであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当する。
よって、訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第126条第6項の規定に適合しない。
第6 むすび
以上のとおり、訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。
また、訂正事項は、特許法第126条第6項の規定に適合しない。
したがって、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-390045