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特許無効審判

2024-800047

缶蓋切除器具

審判番号
2024-800047
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2023-522840外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7325883
請求日
2024年03月27日
審決日
2025年12月18日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1123.113-YAA(B67B) / P1123.121-YAA(B67B) / P1123.536-YAA(B67B) / P1123.537-YAA(B67B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第7325883号発明「缶蓋切除器具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第7325883号の特許請求の範囲を、令和6年8月16日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3〕、〔4~6〕について、訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 (1)特許7325883号の請求項3及び4に係る発明についての特許を無効とする。 (2)審判費用は、被請求人の負担とする。 との審決を求める。 2 答弁の趣旨 (1)本件無効審判請求は成り立たない。 (2)審判費用は、請求人の負担とする。 との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 本件特許の出願から設定登録までの経緯 本件無効審判の請求に係る特許第7325883号に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年10月28日 :出願(優先権主張 令和4年1月31日) 令和5年 7月 5日付け:特許査定 令和5年 8月 4日 :設定登録 2 本件無効審判の手続の経緯 きびだんご株式会社(以下「請求人」という。)から、特許権者である株式会社346を被請求人とする、本件特許の請求項3、4に係る発明の特許についての本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和6年 3月27日 :審判請求書(以下「請求書」という。)の提出 令和6年 8月16日 :審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)、訂正請求書の提出 令和6年10月24日 :弁駁書の提出 令和7年 4月15日付け:審理事項通知 令和7年 6月27日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 令和7年 6月27日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 令和7年 7月11日 :第1回口頭審理 令和7年 7月25日 :上申書(以下「請求人上申書」という。)の提出(請求人) 第3 訂正請求について 1 訂正請求の趣旨 令和6年8月16日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、特許第7325883号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3~6に訂正することを求めるものである。 2 訂正の内容 (1)本件訂正前後の特許請求の範囲の請求項3~6 ア 本件訂正前の記載 「【請求項3】 缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、 前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、 前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、 前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、 前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、 を備え、 前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部を有する、 缶蓋切除器具。 【請求項4】 缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、 前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、 前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、 前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、 前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、 を備え、 前記刃体は、前記立ち上がり部の内周を切除するものであって、 前記操作部は、前記本体部に対して前記凹部に近づく向きと前記凹部から離れる向きとに移動するように設けられ、前記操作部が前記本体部に向けて移動すると、前記刃体が前記凹部の外側に向かって進出するように構成されている、 缶蓋切除器具。 【請求項5】 前記本体部は、 前記本体部が前記缶に装着された状態で、前記立ち上がり部を間に置いて前記刃体の反対側となる位置に設けられ、前記立ち上がり部の外周面を押さえる摺動部材を有する、 請求項4に記載の缶蓋切除器具。 【請求項6】 前記摺動部材の断面形状は、 前記刃体が前記立ち上がり部に押し付けられた際に、前記立ち上がり部の巻締め部の下方に当接する突出部を含んでいる、 請求項5に記載の缶蓋切除器具。」 イ 本件訂正後の記載(下線は、訂正箇所であって、当審が付した。以下同様。) 「【請求項3】 缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、 前記立ち上がり部の全体を受け入れる凹部を有する本体部と、 前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、 前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、 前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、 を備え、 前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において、前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部であって、当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部を有する、 缶蓋切除器具。 【請求項4】 缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、 前記立ち上がり部の全体を受け入れる凹部を有する本体部と、 前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、 前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、 前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部であって、当該プルタブ保持部は、前記プルタブの開口に前記蓋側から上方に向かって挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、前記保持突起部の両側に設けられ前記プルタブを受け入れるプルタブ保持凹部とを有するプルタブ保持部と、 を備え、 前記刃体は、前記立ち上がり部の内周を切除するものであって、 前記操作部は、前記本体部に対して前記凹部に近づく向きと前記凹部から離れる向きとに移動するように設けられ、前記操作部が前記本体部に向けて移動すると、前記刃体が前記凹部の外側に向かって進出するように構成されている、 缶蓋切除器具。 【請求項5】 前記本体部は、 前記本体部が前記缶に装着された状態で、前記立ち上がり部を間に置いて前記刃体の反対側となる位置に設けられ、前記立ち上がり部の外周面を押さえる摺動部材を有する、 請求項4に記載の缶蓋切除器具。 【請求項6】 前記摺動部材の断面形状は、 前記刃体が前記立ち上がり部に押し付けられた際に、前記立ち上がり部の巻締め部の下方に当接する突出部を含んでいる、 請求項5に記載の缶蓋切除器具。」 (2)本件訂正の内容 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3の「前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、」との記載を、 「前記立ち上がり部の全体を受け入れる凹部を有する本体部と、」に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3の「前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部を有する、」との記載を、 「前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において、前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部であって、当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部を有する、」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4の「前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、」との記載を、 「前記立ち上がり部の全体を受け入れる凹部を有する本体部と、」に訂正する。 請求項4を引用する請求項5、6についても同様に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4の「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、」との記載を、 「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部であって、当該プルタブ保持部は、前記プルタブの開口に前記蓋側から上方に向かって挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、前記保持突起部の両側に設けられ前記プルタブを受け入れるプルタブ保持凹部とを有するプルタブ保持部と、」に訂正する。 請求項4を引用する請求項5、6についても同様に訂正する。 オ 一群の請求項 訂正前の請求項3、4は、それぞれ独立請求項であり、また、請求項5、6は、請求項4を引用するものである。そして、その他に訂正前の請求項3、4を引用する請求項は存在しない。してみれば、訂正前の請求項3~6は、一群の請求項〔3〕、〔4~6〕を構成するものであり、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、「本体部」が有する「凹部」について、「前記立ち上がり部を受け入れる」とされていたのを「前記立ち上がり部の全体を受け入れる」と限定するものであるから、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること まず、本件特許の「立ち上がり部」は、請求項3の「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断する」及び「前記立ち上がり部を切断するための刃体」の記載から、缶の上端外周に位置し、円筒状であり、刃体により切断される部分を意味するものと解される。この点、本件明細書の「缶本体201の上部に形成された円筒状の立ち上がり部205」(【0024】)の記載、「刃体20が缶200の立ち上がり部205の内周を切断」(【0027】)と記載されていることからみても、このように理解することが整合的である。 そして、当該理解に立脚した上で、本件明細書の「本体部10の下面には、図2及び図4に示すように、缶200の立ち上がり部205を受け入れる円形に形成された円形凹部11が設けられている。円形凹部11の直径は、立ち上がり部205の直径よりもやや大きく形成されている。」(【0030】)という記載や缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す断面図(【図15】)において缶の立ち上がり部205が本体部10の円形凹部11の内側にあることをみれば、「凹部」が「前記立ち上がり部の全体を受け入れる」ものであることが記載されているものといえる。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 なお、請求人は、令和6年10月24日提出の弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、立ち上がり部205が以下の丸部分を含むとして、凹部が立ち上がり部の全体を受け入れるものではない旨の主張をする(弁駁書3ページ~5ページ、以下「主張1」という。)。 [図:0001433827000001.jpg] (弁駁書5頁上段に示されたものであって、請求人が、本件特許の【図15】にハイライト等を付した図。) しかしながら、この点は上記で検討したとおりであり、凹部が立ち上がり部の全体を受け入れるといえるので、上記主張1は採用できない。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書等の記載の範囲で本体部の凹部が立ち上がり部全体を受け入れることを特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 そうすると、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たしている。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、「前記缶に装着された状態において前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部」について、「開口部」が「前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる」こと(以下「訂正事項2-1」という。)を特定するとともに、「当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能」であること(以下「訂正事項2-2」という。)を特定するものであり、「開口部」の形状及び機能をより具体的に特定するものであるから、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 訂正事項2のうち、訂正事項2-1について、本件明細書には「固定ピン220は蓋202の中心に位置しており」(【0026】)と記載され、缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す断面図(【図15】)や斜視図(【図9】)において、固定ピン220とプルタブ210が、開口部10hに対向する位置にあり、本体部10の部材によって覆われることなく、露出している状態が示されていることが分かる。 また、訂正事項2のうち、訂正事項2-2について、本件明細書等には、「開口部10hの直径は、より具体的には、缶200の蓋202の直径の50%以上90%以下である。開口部10hがこのような大きさに形成されている場合、缶蓋切除器具100の使用時に、ユーザが、開口部10hを通じて蓋202の切除状況及びプルタブ210の保持状況などを確認しやすいという利点がある。」(【0029】)、「また、本体部10には開口部10hが形成されているので、缶蓋切除器具100の使用時に、ユーザは、開口部10hを介して蓋202の切断状況等を確認することができる。」(【0077】)と記載されており、開口部を通じて蓋の切除状況及びプルタブの保持状況を確認することが記載されている。さらに、缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す断面図(【図15】)や斜視図(【図9】)からも、開口部10hを介してこれらが確認可能であると理解される。 よって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 なお、請求人は、弁駁書にて、(固定ピンが位置する)蓋の中心が固定ピンの背後に存在するから露出しない、プルタブは蓋の上面に接して存在する等を根拠として、訂正事項2-1の事項が本件明細書等に記載されていない旨の主張(弁駁書5ページ~7ページ、以下「主張2」という。)をするとともに、刃体が缶の立ち上がり部を切断する場面を確認することができないから、訂正事項2-2のうち「開口部を通じて前記蓋の切除状況」「を確認可能な開口部」は本件明細書等に記載されたものではない旨の主張(弁駁書8ページ、以下「主張3」という。)をする。 しかし、上記主張2は、技術内容を曲解したものであって、そのように解釈することは不自然極まりない。 上記主張3に関しても、本件訂正により訂正された各請求項に係る発明は、刃体そのものを視認することは特定しておらず、クレームを正解した主張とはいえないものである。 したがって、上記主張2、3は採用できない。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書等の記載の範囲で「開口部」の形状及び機能をより具体的に特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 そうすると、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たしている。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、「本体部」が有する「凹部」について、「前記立ち上がり部を受け入れる」とされていたのを「前記立ち上がり部の全体を受け入れる」と限定するものであるから、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 上記(1)イで検討したとおり、本件明細書等の【0030】、【図15】等から、「凹部」が「前記立ち上がり部の全体を受け入れる」ものであることが記載されているものといえる。 よって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 なお、請求人の主張1は、上記(1)イで検討したとおり、採用できない。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書等の記載の範囲で本体部の凹部が立ち上がり部全体を受け入れることを特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 そうすると、訂正事項3に係る訂正は、訂正要件を満たしている。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、「プルタブ保持部」について、「当該プルタブ保持部は、前記プルタブの開口に前記蓋側から上方に向かって挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、前記保持突起部の両側に設けられ前記プルタブを受け入れるプルタブ保持凹部とを有する」との特定を追加するものであり、プルタブ保持部の構造をより具体的に特定するものであるから、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること 訂正事項4は、「先端部41は、プルタブ210の開口部210h(図9参照)に挿入される保持突起部41aと、保持突起部41aの両側に形成された一対のプルタブ保持凹部41bとを含む。」(【0050】)、「保持突起部41aは、プルタブ保持凹部41bの底部から上方に向かって延在している。」(【0051】)、「プルタブ保持凹部41bは、プルタブ210を受け入れる部分である。」(【0053】)、「保持突起部41a及びプルタブ保持凹部41bが上記のように構成されていることにより、ユーザが缶蓋切除器具100を回転させたときに、プルタブ210がプルタブ保持部40から外れにくいという作用効果が奏される。」(【0054】)、「次いで、ユーザは、プルタブ保持部40の先端部41の保持突起部41aをプルタブ210の開口部210hに対して、プルタブ210の下側から挿入させる。」(【0065】)との記載に基づくものである。 よって、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、上記アで検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書等の記載の範囲でプルタブ保持部の構造をより具体的に特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 エ 小括 そうすると、訂正事項4に係る訂正は、訂正要件を満たしている。 (5)独立特許要件について 請求項5、6は本件無効審判請求の対象ではないものの、請求項4の訂正に伴い訂正の請求がされており、それらの訂正は、上記(3)ア及び(4)アで示したように特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、訂正後における請求項5、6に記載されている事項により特定される発明が、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(独立特許要件)を満たすか否かについて検討する必要がある。 そこで、この点について検討するに、後述第7のとおり、訂正後の請求項4は、各証拠からこれを無効とすべき理由を見いだせない。そうすると、これを引用し、さらに限定が付された訂正後の請求項5も同様である。さらに、その他、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。 そして、請求項6は、請求項5を直接的に引用するものであり、請求項5の発明特定事項を全て有した上でさらに限定する発明である。 よって、訂正後の請求項5、6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものといえる。 4 訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正1~4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5~7項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3〕、〔4~6〕について訂正することを認める。 第4 本件発明 上記第3のとおり本件訂正の請求による請求項3~6の訂正は認められるから、本件特許の請求項3、4に係る発明は、それぞれ訂正後の特許請求の範囲の請求項3、4に記載された事項(上記第3の2(1)イ参照)により特定されるとおりのものである(以下、訂正後の本件特許の請求項3に係る発明を「本件訂正発明1」、訂正後の本件特許の請求項4に係る発明を「本件訂正発明2」という。また、本件訂正発明1、2を総称して「本件訂正発明」ということもある。)。 第5 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、審判請求書に添付して甲第1号証~甲第12号証を、弁駁書に添付して甲第13号証~甲24号証を、口頭審理陳述要領書に添付して甲第25号証~甲第29号証を、令和7年7月25日提出の上申書とともに甲第30号証~甲第37号証を、それぞれ証拠方法として提出し、以下の無効理由を主張している(審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を参照)。 以下、甲第1号証等を「甲1」等と略記する。 【無効理由1】 本件訂正発明1は、本件優先日前に頒布された刊行物である甲1に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 【無効理由2】 本件訂正発明1は、甲1に記載の発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 【無効理由3】 本件訂正発明1は、甲1に記載の発明及び周知技術又は本件優先日前に頒布された刊行物である甲24に記載された事項に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 【無効理由4】 本件訂正発明1は、甲24に記載の発明及び周知技術に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 【無効理由5】 本件訂正発明2は、甲1に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 【無効理由6】 本件訂正発明2は、甲1に記載の発明に基づいて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 【無効理由7】 本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は、以下の点で第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を充足せず、この特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (1)訂正後の請求項3、4には、「立ち上がり部の全体を受け入れる凹部」と記載されているが、当該凹部にどのような構成が含まれるのか不明である。 (2)訂正後の請求項3には、「固定ピンが位置する前記蓋の中心・・・を少なくとも露出させる開口部」、「プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部」、及び「開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部」と記載されているが、これらに記載されている開口部にどのような構成が含まれるのか不明である。 【無効理由8】 本件訂正発明の特許請求の範囲の記載は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を充足しないことから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 訂正後の特許請求の範囲の請求項3及び4には、それぞれ、「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と」を備えるとの発明特定事項が記載されているところ、「前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」について、機能による表現形式が用いられており、構成をもって特定されていない。 【無効理由9】 本件訂正発明は、以下の点で特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を充足しないことから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 訂正後の特許請求の範囲の請求項3及び4には、それぞれ、「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と」を備えるとの発明特定事項が記載されているところ、「前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」について、機能による表現形式が用いられており、構成をもって特定されていない。そして、本件明細書において、「前記蓋のプルタブを保持する」という機能を発揮するために「プルタブ保持部」がどのような構成であれば実施できるのかが記載されておらず、本件明細書の記載によっても、発明の課題が解決できることを当業者が認識できる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。 2 証拠方法 請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。 甲1:米国特許第10519016号公報(抄訳添付) 甲2:特開平11-91874号公報 甲3の1:「OXO Locking Can Opener with Lid Catch」と題するYouTube動画のウェブページの印刷物、令和6年3月26日印刷 甲3の2:「OXO Locking Can Opener with Lid Catch」と題するYouTube動画のウェブページの印刷物、令和6年3月26日印刷 甲4:報告書(令和6年3月22日、請求人代理人作成) 甲5:実公昭46-32874号公報 甲6:報告書(令和6年3月22日、請求人代理人作成) 甲7:「OXO(オクソー)缶切り カンオープナー リッドキャッチ付き」と題するAmazonのウェブページの印刷物、令和6年3月21日印刷 甲8:「TOP, CAN OPENER」と題する設計図、平成24年7月31日 甲9:「BOTTOM, CAN OPENER」と題する設計図、平成24年7月27日 甲10:Pack Listと題され、Rapid Sheet Metal 社からArmand J. Ferranti に送られた資料、平成24年8月7日 甲11:容器開封器具(缶蓋切除器具)の試作品を写した写真 甲12:「Draft Top - Kickstarter Video」と題するYoutube動画のウェブページを印刷した画面、令和6年3月26日印刷 甲13:特開2008-81167号公報 甲14:特開平9-99945号公報 甲15:実用新案登録第3200551号公報 甲16:特開2004-155480号公報 甲17:実願平4-21043号(実開平5-68830号)のCD-ROM 甲18:特開2007-62830号公報 甲19:実願平4-4729号(実開平5-65829号)のCD-ROM 甲20:報告書(令和6年10月24日、請求人代理人作成) 甲21:撮影日が平成27年2月15日の電子ファイルのプロパティ(甲11の写真について) 甲22:報告書(令和6年10月24日、請求人代理人作成) 甲23:特開平9-255091号公報 甲24:実用新案登録第3189534号公報 甲25:Witness Statement(令和6年3月11日、Armand Ferranti作成) 甲26:実用新案登録第3069857号公報 甲27:特開2017-7673号公報 甲28:CanPull Tin Openerのショップのウェブページの印刷物、令和7年6月16日印刷 甲29の1:3D Printable Ring Pull Can Opener by Luca Parmegianiと題したウェブページの印刷物、令和7年6月16日印刷 甲29の2:3D Printable Ring Pull Can Opener by Luca Parmegianiと題したウェブページの印刷物、令和7年6月16日印刷 甲29の3:3D Printable Ring Pull Can Opener by Luca Parmegianiと題したウェブページの印刷物、令和7年6月16日印刷 甲30:動画(令和7年7月14日、請求人代理人作成) 甲31:報告書(令和7年7月25日、請求人代理人作成) 甲32:Armand J. FerrantiからRapid Sheet Metal 社に送付されたEメール「RE: 33779 Rapid Quote-KM EXPEDITE」、平成24年8月1日 甲33:報告書(令和7年7月25日、請求人代理人作成) 甲34:Draft Top - Turning beer cans into pint glasses by Armand Ferranti-Kickstarterのショップのウェブページの印刷物、令和7年7月23日印刷 甲35:ローンチ後にプロジェクトを編集することはできますか? ― ヘルプセンターと題したウェブページの印刷物、令和7年7月23日印刷 甲36:Draft Top(ドラフトトップ)2.0 日本規格ビールの缶オープナー(By Draft Top事務局)― Kibidango(きびだんご):「半歩先の未来をお届け」するcrowdfunding型ECのショップのウェブページの印刷物、令和7年7月22日印刷 甲37:報告書(令和7年7月25日、請求人代理人作成) 第6 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、口頭審理陳述要領書に添付して乙第1号証~乙第3号証を証拠方法として提出し、請求人の主張する無効理由はいずれも理由がない旨主張している(答弁書、及び口頭審理陳述要領書を参照)。 以下、乙第1号証等を「乙1」等と略記する。 2 証拠方法 被請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。 乙1:「缶のふたの歴史-容器を学ぼう!」と題するウェブページ(https://www.tskg-hd.com/kids/when_can_history.html) 乙2:飲料缶の仕様に関する報告書(令和7年6月27日、被請求人代理人作成) 乙3:甲1に記載の発明の動作を示すアニメーション動画が記録されたDVD(令和7年6月25日、被請求人代理人作成) 第7 当審の判断 1 提出された文書の記載内容等 (1)甲1 ア 甲1の記載 甲1には、以下の記載がある(翻訳は当審によるものである。また、下線は当審が付した。以下同様。)。 (ア)2欄51行~4欄4行「 [図:0001433827000002.jpg] [図:0001433827000003.jpg] [図:0001433827000004.jpg] [図:0001433827000005.jpg] (翻訳)『【図1】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の容器開封器具の上面図である。 【図2】本発明の主題のある実施形態による、開位置にある状態の図1の装置の上面図である。 【図3】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の図1の装置の下面図である。 【図4】ある実施形態による、開位置にある状態の図1の装置の下面図である。 【図5】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の容器開封器具の上面図である。 【図6】本発明の主題のある実施形態による、開位置にある状態の図5の装置の下面図である。 【図7】本開示のある実施形態による、開位置にある状態の図5の装置の上面透視図である。 【図8】ある実施形態による、閉位置にある状態の図5の装置の下面透視図である。 【図9】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の容器開封器具の上面図である。 【図10】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の図9の装置の下面図である。 【図11】ある実施形態による、閉位置にある状態の図9の装置の上面透視図である。 【図12】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の図9の装置の下面透視図である。 【図13】本発明の主題のある実施形態による容器開封器具からのブレードの透視図である。 【図14】本開示のある実施形態による容器開封器具の捕捉機構部分の透視図である。 【図15】ある実施形態による缶の透視図である。 【図16】本開示のある実施形態による、容器の上部面の上にある、開位置にある状態の図5の容器開封器具の上面透視図である。 【図17】本開示のある実施形態による、上面が除去された容器の透視図である。 【図18】本開示のある実施形態による、内周縁の一部への単一のブレードの配置を示す、容器の上面の透視図である。 【図19】食品容器の透視図である。 【図20】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の容器開封器具の上面図である。 【図21】本開示のある実施形態による、開位置にある状態の図20の装置の上面図である。 【図22】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の図20の装置の下面図である。 【図23】本開示のある実施形態による、開位置にある状態の図20の装置の下面図である。 【図24】本発明の主題のある実施形態による、閉位置にある状態の容器開封器具の上面図である。 【図25】本開示のある実施形態による、容器の上部面の上にある、開位置にある状態の図24の装置の上面透視図である。 【図26】本開示のある実施形態による、カバーが開位置にある状態の図24の装置の下面透視図である。 【図27】本開示のある実施形態による、容器の表面を除去する方法のフローチャートである。 【図28】容器開封器具の一実施形態の上面図である。 【図29】開位置にある状態の図28の容器開封器具の上面図である。 【図30】開位置にある状態の図28の容器開封器具の下面図である。 【図31】閉位置にある状態の図28の容器開封器具の下面図である。』 (イ)5欄13行~15行「 [図:0001433827000006.jpg] 」 (翻訳)『図1は、各種の実施形態による、閉位置にある状態のケースの付いていない容器開封器具10の上面図である。』 (ウ)5欄29行~33行「 [図:0001433827000007.jpg] 」 (翻訳)『各種の実施形態において、プラットフォーム又は基部16の互いに反対側の表面の一方は、缶(例えば、150、図15、200、図19)の上面(例えば、152、図15、202図19)の外周縁160の上に載置されるように構成される。』 (エ)5欄34行~57行「 [図:0001433827000008.jpg] 」 (翻訳)『図3は、閉位置にある状態のケースが付いていない装置10の下面図である。図4は、開位置にある状態のケースの付いていない装置の下面図である。ある実施形態では、装置10は缶切りであってもよい。各種の実施形態において、複数のアーム20、22、24、26が、プラットフォーム又は基部16の表面に動作可能に結合される。ある実施形態では、基部又はプラットフォーム16の裏面に、プラットフォーム16の四隅の各々から内側に突出する4本のアームが動作可能に結合され、すなわち、第一アーム20、第二アーム22、第三アーム24、及び第四アーム26である。各種の実施形態において、複数のアーム20、22、24、26の各々は、それぞれのアームのそれぞれの部分に動作可能に結合されたそれぞれのブレード28、30、32、34を有する。ある実施形態では、各アーム20、22、24、26のほぼ端部に、ブレード28、30、32、34が動作可能に結合される。各種の実施形態において、アーム20は第一ブレード28を保持し、アーム22は第二ブレード30を保持し、アーム24は第三ブレード32を保持し、アーム26は第四ブレード34を保持する。各種の実施形態において、レバー14は、レバー14のハンドル12側への移動が複数のアーム20、22、24、26の各々を回転させて、それぞれのブレード28、30、32、34をプラットフォーム又は基部16の中心から外側に延ばすように、プラットフォーム又は基部16と、複数のアーム20、22、24、26の各々とに操作可能に結合される。』 (オ)6欄44行~7欄25行「 [図:0001433827000009.jpg] [図:0001433827000010.jpg] 」 (翻訳)『図5は、閉位置にある状態のケース付き容器開封器具の一実施形態の上面図である。図6は、ケースを開位置にした状態の装置10の上面図である。ある実施形態では、装置10は缶切りであってもよい。ある実施形態では、装置10は、缶150又は200の上面152又は202に取り付けられたときに、飲料缶150又は標準食品缶200の縁部(例えば、円周縁部)の上に載るのに十分な幅の基部又はプラットフォーム16を有する。ある実施形態では、装置10はまた、ハンドル12及びレバー14を備える。各種の実施形態において、レバー14の一部は、複数の溝(図5)を含む。ある実施形態では、レバー14は、ハンドグリップ56を有する。ある実施形態において、レバー14の一部に含まれる複数の溝は、ハンドグリップを形成する。各種の実施形態において、装置10は、複数のアーム20、22、24、26を含む。各種の実施形態において、アーム20、22、24、26の各々は、1つのそれぞれの端部において基部又はプラットフォーム16の表面に回転可能に結合され、それぞれの反対側の端部に配置されたそれぞれのブレード28、30、32、34を含む。各種の実施形態において、レバー14は、レバー14が開位置にあるとき、複数のアーム20、22、24、26のそれぞれの反対側の端部が基部又はプラットフォーム16の中心に近接し、レバー14が閉位置に向かって操作されるとき、複数のアーム20、22、24、26のそれぞれの反対側の端部が基部又はプラットフォーム16の中心から外側に旋回されるように、基部又はプラットフォーム16及び複数のアーム20、22、24、26のそれぞれの反対側の端部に操作可能に結合される。各種の実施形態において、レバー14が閉位置に向かって操作され、基部又はプラットフォーム16の表面が容器の上面(例えば、152、202)の外周縁160上に載置されるとき、それぞれのブレード28、30、32、34は、容器(例えば、飲料缶150又は標準食品缶200)の内周縁154のそれぞれの部分に係合するように構成される。ある実施形態では、レバー14のハンドル12側への移動は、レバー14が解放された後にレバー14が開始位置に戻るようにばね125を圧縮する。 各種の実施形態において、装置10は、レバー14と、複数のアーム20、22、24、26のそれぞれの端部とに動作可能に結合されたギア18を含み、ギア18は、レバー14が閉位置に向かって操作されたときに回転するように構成される。各種の実施形態において、レバー14のハンドグリップ56がハンドル12に向かって引かれると、ギア18が所定の角度(例えば、約30度(例えば、25度から35度の間))回転し、これにより、各ブレード28、30、32、34が容器(例えば、飲料缶150又は標準食品缶200)の内縁154(例えば、内周縁)を穿刺するまで、アーム20、22、24、26が揺動する。』 (カ)7欄40行~46行「 [図:0001433827000011.jpg] 」 (翻訳)『ある実施形態において、装置10は、ハンドル12に隣接するレバー14を維持しながら、ブレード28、30、32、34が容器(例えば、飲料缶150又は標準食品缶200)の内縁154(例えば、内周縁)を切断するように、容器(例えば、飲料缶150又は標準食品缶200)に対して、約90度回転される。』 (キ)7欄55行~61行「 [図:0001433827000012.jpg] 」 (翻訳)『図13は、ある実施形態に係る容器開封器具のブレードの透視図である。図14は、ある実施形態による容器開封器具の捕捉機構部分の透視図である。各種の実施形態において、捕捉機構54は、容器(例えば、缶150、200)の上面(例えば、152、202)との係合を維持するように構成される。各種の実施形態において、例えば、フック又は磁石などの捕捉機構54は、容器(例えば、缶150、200)の上面(例えば、152、156、202)との係合を維持するために、プラットフォーム又は基部16の表面に動作可能に結合される。』 (ク)8欄1行~6行「 [図:0001433827000013.jpg] 」 (翻訳)『このようにして、ブレード28、30、32、34が内縁154に沿って切断を終えると、缶150の上面152が除去され、捕捉機構又はフック54は、缶150のタブ156によって切断された上面152を保持し、その時点で露出した缶150の内容物158の中に落下するのを防止することができる。』 (ケ)11欄45行~12欄15行「 [図:0001433827000014.jpg] [図:0001433827000015.jpg] 」 (翻訳)『図28から図31は、上述の装置204と同様の容器開封器具304の別の実施形態を示す。容器開封器具304はレバー328を備えている。レバー328は、レバー328の支点として作用するボルト306によってプラットフォーム326と基部354との間の所定の位置に保持されている第一アーム332に連結されている。レバー328は、アーム332を介してギア348に引っ掛けられるか、又は取り付けられている。レバー328が開位置から閉位置に握り込まれると、ギア348は約30度回転する。レバー328の先端には、プラットフォーム326と基部354の間を摺動するガイド358を有するパンチ356がある。プラットフォーム326と基部354の間には、プラットフォーム326の四隅のそれぞれから内側に突出する4本のアーム、すなわち第一アーム332、第二アーム334、第三アーム336、第四アーム338が取り付けられている。各アーム332、334、336、338のほぼ端部には、それぞれのブレード340、342、344、346が接続されている。各ブレード340、342、344、346は、基部354(図30及び図31に示す)の開放部355内に配置されている。開放部355は内周面355aを画定する。アーム332は第一ブレード340を保持し、アーム334は第二ブレード342を保持し、アーム336は第三ブレード344を保持し、アーム338は第四ブレード346を保持する。各ブレード340、342、344、346の上部にはクリップ316、318、320、322が接続され、ブレードを所定の位置に保持するが、各ブレード340、342、344、346が360度回転できるようになっている。すなわち、第一ブレード340は第一クリップ316に、第二ブレード342は第二クリップ318に、第三ブレード344は第三クリップ320に、第四ブレード346は第四クリップ322にそれぞれ接続されている。プラットフォーム326の各隅に向かって、ボルト306、308、310、312があり、これらはアーム332、334、336、338を所定の位置に保持するが、アーム332、334、336、338の回転を可能にする。すなわち、その基部において、アーム332はボルト306に連結され、アーム334はボルト308に連結され、アーム336はボルト310に連結され、アーム338はボルト312に連結されている。ベース354の一端には栓抜き330が取り付けられ、基部354の他端にはクリップホルダー352が取り付けられている。』 (コ)図5「 [図:0001433827000016.jpg] 」 (サ)図6「 [図:0001433827000017.jpg] 」 (シ)図8「 [図:0001433827000018.jpg] 」 (ス)図14「 [図:0001433827000019.jpg] 」 (セ)図17「 [図:0001433827000020.jpg] 」 (ソ)図18「 [図:0001433827000021.jpg] 」 (タ)図28「 [図:0001433827000022.jpg] 」 (チ)図29「 [図:0001433827000023.jpg] 」 (ツ)図30「 [図:0001433827000024.jpg] 」 (テ)図31「 [図:0001433827000025.jpg] 」 イ 甲1の記載から認定できる事項 (ア)2欄51行~4欄4行の「【図5】本開示のある実施形態による、閉位置にある状態の容器開封器具の上面図である。【図6】本発明の主題のある実施形態による、開位置にある状態の図5の装置の下面図である。【図7】本開示のある実施形態による、開位置にある状態の図5の装置の上面透視図である。【図8】ある実施形態による、閉位置にある状態の図5の装置の下面透視図である。」との記載(上記ア(ア))のとおり、図5~図8には、容器開封器具の一つの実施形態が示されている。そして、上記ア(ウ)とともに図6、図8をみるに、当該実施形態において、プラットフォーム又は基部16は、缶150の外周縁160を受け入れる窪みを有する形状であることが看取される。 (イ)8欄1行~6行の記載(上記ア(ク))、図6及び図8から、当該実施形態において、捕捉機構又はフック54は、前記窪みの内部に設けられるこが看取される。 (ウ)6欄44行~7欄25行(上記ア(オ))の「各ブレード28、30、32、34が容器(例えば、飲料缶150又は標準食品缶200)の内縁154(例えば、内周縁)を穿刺する」という記載を踏まえて、図6、図8、図18をみるに、当該実施形態において、ブレード28、30、32、34は、缶150の立ち上がり部を切断することが看取される。 (エ)6欄44行~7欄25行(上記ア(オ))の「レバー14のハンドグリップ56がハンドル12に向かって引かれると、ギア18が所定の角度(例えば、約30度(例えば、25度から35度の間))回転し、これにより、各ブレード28、30、32、34が容器(例えば、飲料缶150又は標準食品缶200)の内縁154(例えば、内周縁)を穿刺するまで、アーム20、22、24、26が揺動する。」との記載及び図5~図8から、当該実施形態において、プラットフォーム又は基部16における缶150の上面152の中心に対向する位置には、レバー14のギア18の回転中心が設けられることが分かる。 (オ)8欄1行~6行の記載(上記ア(ク))、図5、図6及び図14をみるに、前記捕捉機構又はフック54の一端は、前記プラットフォーム又は基部16の上面側の中心位置に固定され、前記捕捉機構又はフック54の他端は、前記プラットフォーム又は基部16にある貫通孔を通して、前記プラットフォーム又は基部16の下面側に延在し、前記缶150のタブ156を保持するものと解される。 また、図5及び図6からは、当該貫通孔は、前記缶150のタブ156を保持するよう、前記レバー14の回転中心から円周方向に離れた位置に設けられていることが看取される。 (カ)2欄51行~4欄4行の「【図28】容器開封器具の一実施形態の上面図である。【図29】開位置にある状態の図28の容器開封器具の上面図である。【図30】開位置にある状態の図28の容器開封器具の下面図である。【図31】閉位置にある状態の図28の容器開封器具の下面図である。」との記載(上記ア(ア))のとおり、図28~図31には、容器開封器具の別の実施形態が示されている。そして、上記ア(ケ)とともに、容器開封器具が開位置にある状態を示す図30、閉位置にある状態を示す図31をみると、当該実施形態において、レバー328は、基部354及び前記プラットフォーム326に対して開放部355に近づいた閉位置と前記開放部355から離れた開位置に移動するように設けられ、前記レバー328が前記開位置から前記閉位置に握り込まれると、前記前記ブレード340、342、344、346が前記開放部355の外側に向かって進出するように構成されていることが分かる。 (キ)11欄45行~12欄15行には、「各ブレード340、342、344、346は、基部354(図30及び図31に示す)の開放部355内に配置されている。」と記載されており(上記ア(ケ))、缶150の立ち上がり部を切断する際に、缶150の外周縁160は基部354の開放部355に載置されるものであるといえる。 ウ 甲1発明1 上記ア及びイを総合的に勘案し、特に図5~図8に示す実施形態に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されている。 [甲1発明1] 「缶150の立ち上がり部を切断し、前記缶150の上面152を除去する容器開封器具10であって、(5欄13行~15行、7欄40行~46行、8欄1行~6行、図17、図18) 前記缶150の外周縁160を受け入れる窪みを有するプラットフォーム又は基部16と、(5欄29行~33行、図6、図8) 前記プラットフォーム又は基部16に動作可能に結合された複数のアーム20、22、24、26を介して結合され、前記立ち上がり部を切断するブレード28、30、32、34と、(5欄34行~57行、7欄40行~46行) 前記プラットフォーム又は基部16の表面が前記外周縁160に載置される状態において前記ブレード28、30、32、34が前記立ち上がり部を穿刺するまで前記アーム20、22、24、26を揺動させるレバー14と、(6欄44行~7欄25行) 前記窪みの内部に設けられ、前記プラットフォーム又は基部16が前記缶152の上面に設置されたタブ156を把持する捕捉機構又はフック54と、(7欄55行~61行、図6、図8) を備え、 前記プラットフォーム又は基部16は、前記捕捉機構又はフック54を前記プラットフォーム又は基部16の上面側から下面側に通過させ、前記レバー14のギア18の回転中心から円周方向に離れた位置にある貫通孔を有する、(8欄1行~6行、図5、図6、図14) 容器開封器具10。」 エ 甲1発明2 上記ア及びイを総合的に勘案し、特に図28~図31に示す実施形態に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されている。 [甲1発明2] 「缶150の立ち上がり部を切断し、前記缶150の上面152を除去する容器開封器具304であって、(11欄45行~12欄15行、図28~図31) 開放部355を有する基部354及びプラットフォーム326と、(11欄45行~12欄15行、図30、図31) 前記基部354及び前記プラットフォーム326との間に取り付けられた第一アーム332、第二アーム334、第三アーム336及び第四アーム338の端部に接続される、前記立ち上がり部を切断するブレード340、342、344、346と、(11欄45行~12欄15行、図30、図31) 前記基部354の開放部355が前記缶150の外周縁160に載置される状態において前記ブレード340、342、344、346が前記缶150の内縁154を穿刺するまで前記第一アーム332、前記第二アーム334、前記第三アーム336及び前記第四アーム338を揺動させるレバー328と、(6欄44行~7欄25行、11欄45行~12欄15行、図30、図31) を備え、 前記ブレード340、342、344、346は、前記立ち上がり部を切断するものであって、 前記レバー328は、前記基部354及び前記プラットフォーム326に対して前記開放部355に近づいた閉位置と前記開放部355から離れた開位置に移動するように設けられ、前記レバー328が前記開位置から前記閉位置に握り込まれると、前記前記ブレード340、342、344、346が前記開放部355の外側に向かって進出するように構成されている、(図30、図31) 容器開封器具304。」 (2)甲2 甲2には、以下の記載がある。 「【0008】 【実施例】図に示す実施例は、棒状支持体1の前半の個所に前側縦軸2および後側の縦軸3を回転自在として設け、前側縦軸2において支持体1の上側に突出した個所に固定側歯車4と操作ハンドル5を同じく下側に突出した個所に回転切刃体6をそれぞれ回転不能に固定し、また後側縦軸3において支持体1の上側に突出した個所に可動側歯車7を同じく下側に突出した個所に回転溝型受刃体8をそれぞれ回転不能に固定すると共に上記後側縦軸3の軸孔9を前後に僅かに長い長孔となして当該後側縦軸3を前後に移動可能とし、更に長孔形軸孔9の前側壁に凹窩10を穿設して当該凹窩10に後側縦軸3を後方に向って押圧するバネ11を内蔵し、また同長孔形軸孔9の後側壁に支持体1の後端壁部に連通するネジ孔12を穿設し、このネジ孔12に調整ハンドル13付きのネジ棒14を螺入して当該ネジ棒14の先端を後側縦軸3の側面に当接させると共に支持体1の後端部上面に目印15を、調整ハンドル13に当該目印15に対応させて指標16をそれぞれ設け、更に支持体1の先端に缶17に予め装備されているプルトップ18の孔に引っ掛けるフック部19および手指による仮押支え部20を設けたものである。 【0009】上記実施例に係る缶蓋切除具を使用するには、先ず調整ハンドル13をゆるめてバネ11の作用力により後側縦軸3、可動側歯車7および回転溝型受刃体8を後退させ、この後退の状態においてフック部19をプルトップ18の孔に引っ掛け且つ回転切刃体6の刃先と回転溝型受刃体8の受刃溝との間に缶17の蓋部23のハゼ締め縁部22を位置させ、この位置を維持し乍ら調整ハンドル13を回し締めて後側縦軸3、可動側歯車および回転溝型受刃体8を前進させることによって受刃体8の受刃溝内にハゼ締め縁部22を臨入させ且つ回転切刃体6の刃先を缶17の蓋部23の外周立上縁壁部24の内面に圧接させ且つ可動側歯車7を固定側歯車4に噛合させると共に調整ハンドル13を更に僅かだけ回し締めて切刃体6の刃先を立上縁壁部24に僅かだけ喰い込せた状態(くの字状に折れ出た状態)とする。この喰い込せた状態のときには回転切刃体6および回転溝型受刃体8によるハゼ締め縁部22および立上縁壁部24の挟み着けとフック部19のプルトップ18への引っ掛けとにより手放しが可能となる。この手放し可能状態としたところで操作ハンドル5に回し操作を加え、すると当該操作ハンドル5の回転によって固定側歯車4と可動側歯車7が噛合状態で回転切刃体6と回転溝型受刃体8を反対方向に回転し、そして回転し乍ら立上縁壁部24およびハゼ締め縁部22を案内レールとして沿い進むことによって上記喰い込み状態部25を立上縁壁部24に連続する線状として形成する。この形成が一周を過ぎた時点で上記操作ハンドル5への回し操作を止め、この止めたのちに再び調整ハンドル13を1回転(場合によっては2回転以上でも可)させて上記喰い込みを更に深くし、このより深くした状態で上記操作ハンドル5の回転操作を行って当該更に深くした喰い込みの連続線状部を得る。そして、この段階的に徐々に深くして行う喰い込みの連続線状部を得る作業を数回まで行うと立上縁壁部24がついに切り離れて蓋部23が缶17の中に落ちる。この落ちたことを目視で確認した時点(尚、確認後喰い込みの連続線状部を得る作業を更に続けるとハゼ締め縁部22までも切り落してしまうので注意が必要である。)で喰い込みの連続線状部を得る作業をストップする。このストップ後に調整ハンドル13をゆるめて全体を缶17より外し、切り落した蓋部を上記フック部19の引っ掛けを利用して缶17より抜き取って作業を完了する。 【0010】尚、上記実施例は、固定側歯車4と可動側歯車7との歯数を異なる数とするか回転切刃体6と回転溝型受刃体8の半径を異なる寸法とするか或はこれ等刃数、寸法の両方を異なる構成とするかする等して、回転切刃体6と回転溝型受刃体8との操作ハンドル5の操作による回転量を異なるようにすることが可能である。このようにした場合には、回転切刃体6が立上縁壁部24上で僅かにスリップし乍ら同部24を押し切るような動き(つまり、包丁を引きずらし乍ら刺身を切るような動き)と呈して切れ味をアップする。 【0011】因に、上記実施例の缶蓋切除具を用いてアルミ缶の蓋を切除したときの様子を工程順に拡大断面で示すと図3~図5の通りであった。すなわち、図3は、受刃体8の受刃溝内にハゼ締め縁部22を臨入させ且つ回転切刃体6の刃先を缶17の蓋部23の外周立上縁壁部24の内面に圧接させ且つ可動側歯車7を固定側歯車4に噛合させた状態を示しており、図4は回転切刃体6の刃先を喰い込ませて操作ハンドル5の回転操作を行うことによって喰い込みの連続線状部を得たときの状態を示しており、図5は連続線状部を段階的に深くして行うことによって蓋部23が切り離れ落ちた瞬間を示しているものである。 【0012】尚、図6はコップとして再利用している状態を示し、両端に挿止ピン部29を連続してもリング28を挿止管部30をもつ維持金具31を用いて取付けたものである。」 「 [図:0001433827000026.jpg] 」 「 [図:0001433827000027.jpg] 」 「 [図:0001433827000028.jpg] 」 「 [図:0001433827000029.jpg] 」 「 [図:0001433827000030.jpg] 」 (3)甲4 甲4には、甲1に係る特許権の特許権者であるドラフトトップ社が、甲1に関連した容器開封器具を試作したもの(以下「甲4製品」という。)の構成について、以下の写真が記載されている。 「 [図:0001433827000031.jpg] 」 「 [図:0001433827000032.jpg] 」 「 [図:0001433827000033.jpg] 」 (4)甲8 甲8には、甲4製品に関連して、以下の記載がある。 「 [図:0001433827000034.jpg] 」 (5)甲9 甲9には、甲4製品に関連して、以下の記載がある。 「 [図:0001433827000035.jpg] 」 (6)甲10 甲10には、甲4製品に関連して、以下の記載がある。 「 [図:0001433827000036.jpg] 」 (7)甲11 甲11には、甲4製品に関連して、以下の記載がある。 「 [図:0001433827000037.jpg] 」 (8)甲12 甲12には、甲4製品に関連して、以下の記載がある。 「 [図:0001433827000038.jpg] 」 (9)甲20 甲20には、甲1に係る特許権の特許権者であるドラフトトップ社が、甲1に関連した容器開封器具を試作したものの(以下、一方を「甲20-1製品」といい、他方を「甲20-2製品」という。)の構成について、以下の写真が記載されている。 ア 甲20-1製品について 「 [図:0001433827000039.jpg] 」 「 [図:0001433827000040.jpg] 」 イ 甲20-2製品について 「 [図:0001433827000041.jpg] 」 「 [図:0001433827000042.jpg] 」 (10)甲21 甲21には以下の記載がある。 「 [図:0001433827000043.jpg] 」 (11)甲24 ア 甲24の記載 甲24には、以下の記載がある。 「【解決手段】プルトップ付き飲料缶のプルトップのついた上蓋を、上蓋の内周に沿って円形状に正確に切り取る機構を備え、その機構が、上部から底部に向かって末広がりの形状を有する金属製の円筒kを外側に、底部先端部に複数の切り刃gを設けた上部と底部の直径が同じ金属製の円筒を内側iに配して、これらふたつの円筒k,iを2mm程度の隙間jをあけて上部接合部で接合した構造を有する。プルトップに開いている穴に差し込むことにより、切り取った上蓋が飲料の中に落下するのを防止するための、上蓋落下防止用突起eをふたつの円筒k,iの上部接合部に設ける。」 「【請求項1】 プルトップ付き飲料缶のプルトップのついた上蓋を、上蓋の内周に沿って円形状に正確に切り取る機構を備えた円筒形の缶切りであって、その機構が、上部から底部に向かって末広がりの形状を有する金属製の円筒を外側に、上部と底部の直径が同じ金属製の円筒を内側に配して、これらふたつの円筒を2mm程度の間隔をあけて上部で接合した構造を有することを特徴とする円筒形缶切り。」 「【0010】 以下、添付図面に従って一実施例を説明する。本考案の円筒形缶切りは、上部から底部に向かって末広がりの形状を持つ外側の円筒kと、上部と底部の直径が同じ内側の円筒iのふたつの円筒を2mm程度の間隔をあけて上部接合部dで同心円上に接合した構造を有し、ふたつの円筒の上部接合部dには、切り取った上蓋が飲料の中に落下するのを防止するための上蓋落下防止用突起eが設けられ、内側の円筒iの底部先端には長さ3mm程度の複数の切り刃gが設けられている。なお、外側の円筒kの高さは、切り刃gによる怪我防止と切り刃gの保護のために、切り刃gを含む内側の円筒iの高さよりも5mm程度長い。また、外側の円筒kの外周面aには滑り止めのための溝hが設けられている。 本考案の円筒形缶切りで、プルトップ付き飲料缶の上蓋を飲料の中に落下させることなく円形状に切り取るための手順は、最初にプルトップを押し上げて開缶し、続いてプルトップに空いている穴に上蓋落下防止用突起eの先端部分fを差し込んだ後、すべての切り刃gが上蓋に貫通するまで上から押し込み、すべての切り刃gが上蓋に貫通後は、切り刃gの数に応じて、例えば、切り刃gが3枚であれば3分の1回転、実施例では切り刃gが6枚設けられているので6分の1回転させて、最後に飲料缶本体から完全に切り離された上蓋を、上蓋落下防止用突起eに引っ掛けた状態で飲料缶本体から切り離すことで完了する。」 「【0011】 本考案は、プルトップ付き飲料缶の上蓋を、飲料の中に落下させることなく円形状に正確に切り取る円筒形缶切りに有用である。また、本考案は、プルトップ付き飲料缶用の円筒形缶切りとして広い用途があり、あらゆる円筒形缶切りへの活用が可能である。 さらに、飲料を飲み終わった飲料缶はコップとしてばかりではなく、文房具等の収納缶、花差し、植木鉢、その他多くの用途への再利用が可能となり、その結果、缶入り飲料の消費が拡大することで産業上の利用価値が高い。 また、簡易な構造のために生産コストの低減が可能で、さらに、切り刃によるケガを防止するための安全性に十分配慮した構造になっている。」 「 [図:0001433827000044.jpg] 」 「 [図:0001433827000045.jpg] 」 「 [図:0001433827000046.jpg] 」 イ 甲24の記載から認定できる事項 (ア)図1~図3から、円筒形缶切りの本体部は、中央部に大きな開口部を有していることは明らかであり、当該開口部は、その構造から、前記本体部を飲料缶に装着した状態において、前記飲料缶の上蓋の中心及び前記上蓋の中央部付近を露出させるものであって、前記飲料缶の切除状況及び前記飲料缶のプルトップの保持状況を確認可能であると認められる。 (イ)【請求項1】には「プルトップ付き飲料缶のプルトップのついた上蓋を、上蓋の内周に沿って円形状に正確に切り取る機構を備えた円筒形の缶切り」と記載されているところ、図3の構造からみて、外側の円筒kは飲料缶の立ち上がり部より外周にあり、内側の円筒iは当該立ち上がり部より内周にある必要があることは明らかである。そうすると、図1も考慮すると、当該立ち上がり部は、外側の円筒kと内側の円筒iの隙間jにその全体が受け入れられるものと解される。 ウ 甲24発明 上記ア及びイを総合的に勘案すると、甲24には、次の発明(以下「甲24発明」という。)が記載されている。 [甲24発明] 「プルトップ付き飲料缶の上蓋を内周に沿って円形状に切り取ることで飲料缶本体から前記上蓋を切り離す円筒形缶切りであって、(【請求項1】、【0010】) 缶の立ち上がり部の全体を受け入れる、外側の円筒kと内側の円筒iの隙間jを有する本体部と、(【解決手段】、【0010】、図3) 前記本体部の前記円筒iの底部先端に設けられ、前記上蓋を切り取る切り刃gと、(【0010】、図1) 前記本体部の上部接合部dに設けられ、前記本体部を前記飲料缶に装着した状態で前記プルトップに空いている穴に差し込む上蓋落下防止用突起eと、(【0010】、図1)を備え、 前記本体部は、前記本体部を前記飲料缶に装着した状態において、前記飲料缶の上蓋の中心及び前記上蓋の中央部付近を露出させる開口部であって、前記飲料缶の切除状況及び前記飲料缶のプルトップの保持状況を確認可能な開口部を有する、(図2) 円筒形缶切り。」 (12)甲25 甲25には、甲1の発明者が、甲1のFIG.1~4に対応する実施例の試作品を挙げて、貫通孔の技術的意義を陳述しており、以下の記載がある。 (4ページ下から9行~5ページ末行)「 [図:0001433827000047.jpg] [図:0001433827000048.jpg] 」 (翻訳4ページ8行~5ページ2行)『3 捕捉機構及び貫通孔の技術的意義 Kelly氏と私は、本件実施例について、(i)簡単に捕捉機構をタブに引っかけられるようにするため、(ii)タブと蓋の両方の状態を確認できるようにするため、(iii)様々なタブの高さに対応するため、という主に3つの目的から、容器開封器具につき、貫通孔を設けた上で、捕捉機構を、貫通孔を通じて表面から裏面側に伸びるような構成をとることにしました。 本件実施例においては、捕捉機構のT字状の末端を缶の蓋のタブに引っかけてから、容器開封装置で缶の蓋の切断を開始することになります。捕捉機構をタブに引っかける際に、貫通孔があることにより、容器開封器具の表面側から、裏面側にある捕捉機構のT字状の末端とタブの状態を確認でき、簡単に捕捉機構をタブに引っかけることができます。これが上記(i)の目的です。 上記(ii)の目的については、次の2つの場面を想定しています。まず、この貫通孔により、捕捉機構をタブに引っかけて容器 開封器具を取り付けた後も、捕捉機構とタブが係合している状態を確認できるようになっています。 また、貫通孔からタブと缶の蓋の状態を視認することで、缶の蓋が切断されているかどうかも確認することができるようになっています。すなわち、蓋が完全に切断されていない状態でタブを回転させると、蓋は缶に接合しているので、蓋が回転することはなく、タブだけが回転することになります。他方、蓋が完全に切断された状態でタブを回転させると、タブだけではなく、タブが取り付けられた蓋ごと回転することになります。このように、缶の蓋が完全に切断れているときと、切断されていないときとで、タブや蓋がどのように回転するかは異なります。貫通孔か らそれらの状況を視認することで、缶の蓋が完全に切断されているかどうかを確認することができるのです。 上記(iii)の目的に関しては、捕捉機構を、貫通孔を通して容器開封器具の表面か裏面側に伸びる構造とすることにより、捕捉機構が下方から力を加えられた際に捕捉機構の末端の位置が上方に可動するようになっています。そのため、容器開封装置を缶に載置したときに、タブが高い位置にあった場合でも、捕捉機構が押し上げられることによって高さが調整され、捕捉機構の末端をタブに引っかけて容器開封器具を使用することができます。 私は、本件試作品を用いて何度も缶を開けたことがありますが、本件試作品における貫通孔の構成により、上記3つの目的が十分達成されることを確認しています。これらの目的及びその達成手段として貫通孔を設けることは、いずれも、特に目新しいものではないため、貫通孔の存在 自体は特許性を認めるための要素とはならないと理解しています。しかし、貫通孔は缶に載置する容器開封器具の実用面で有意なものです。』 (13)甲26 甲26には、以下の記載がある。 「【請求項1】 環状部と、環状部の内周面に周設したネジ付き蓋のローレットへの係合用小突起と、環状部の外周に突設した同環状部の廻し用指掛レバー部と、指掛レバー部の先端個所を箆先状として形成したプルトップ起し用部と、プルトップ起し用部の側面に設けたプルトップ引掛上げ用突起と、を備えたことを特徴するネジ付き蓋およびプルトップ付き蓋両用開け具。」 「 [図:0001433827000049.jpg] 」 (14)甲27 甲27には、以下の記載がある。 「【請求項1】 缶蓋板に止着されたプルタブの裏面側に滑り込ませるための略平面状部材と,前記略平面状部材に連結された把持部材と,を備え, 前記略平面状部材の表面に,前記プルタブの裏面側からプルタブ孔に遊嵌される突起状部材が形成されていることを特徴とするタブオープナー。」 「 [図:0001433827000050.jpg] 」 (15)甲30、31 甲30は、甲11の写真のデータのプロパティ画面が甲21であることを動画にて説明し、甲31は、甲30の動画内容を報告書でまとめている。 (16)周知技術 ア 周知技術1 甲1の5欄13行~15行、7欄40行~46行、8欄1行~6行、図17、図18、甲2の【0009】~【0011】、図1~図5から、以下は周知技術(以下「周知技術1」という。)である。 「缶蓋切除器具において、缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除すること、及び当該缶蓋切除器具に、前記缶蓋切除器具の本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部とを設けること。」 イ 周知技術2 甲26の【請求項1】、図1、甲27の【請求項1】、図1から、以下は周知技術(以下「周知技術2」という。)である。 「缶のプルタブを開封する器具において、プルタブの開口に蓋側から上方に向かって挿入する突起部と、前記突起部の両側に位置する凹部とを設けること。」 2 無効理由1(甲1発明1を主引用発明とする本件訂正発明1の新規性欠如)、無効理由2、3(甲1発明1を主引用発明とする本件訂正発明1の進歩性欠如)について (1)対比 ア 本件訂正発明1と甲1発明1を対比する。 甲1発明1の「缶150の立ち上がり部」、「切断」、「上面152」、「除去」は、本件訂正発明1の「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部」、「切断」、「蓋」、「切除」にそれぞれ相当する。そうすると、甲1発明1の「缶150の立ち上がり部を切断し、前記缶150の上面152を除去する容器開封器具10」は本件訂正発明1の「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具」に相当する。 甲1発明1の「窪み」、「プラットフォーム又は基部16」は、本件訂正発明1の「凹部」、「本体部」にそれぞれ相当するので、甲1発明1の「前記缶150の外周縁160を受け入れる窪みを有するプラットフォーム又は基部16」は、本件訂正発明1の「前記立ち上がり部の全体を受け入れる凹部を有する本体部」と、本件訂正発明1の「前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部」という限りにおいて一致する。 甲1発明1の「ブレード28、30、32、34」は本件訂正発明1の「刃体」に相当する。その上で、当該「ブレード28、30、32、34」は、「前記プラットフォーム又は基部16に動作可能に結合された複数のアーム20、22、24、26を介して結合され、前記立ち上がり部を切断する」ものであるところ、複数のアーム20、22、24、26を介して前記プラットフォーム又は基部16に設けられているという構造、及び立ち上がり部を切断するという機能に照らせば、本件訂正発明1の「前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体」に相当する。 甲1発明1の「レバー14」は本件訂正発明1の「操作部」に相当する。また、甲1発明1の「前記プラットフォーム又は基部16の表面が前記外周縁160に載置される状態」は、その構造からみて、本件訂正発明1の「前記本体部が前記缶に装着された状態」に相当する。そして、甲1発明1の「前記ブレード28、30、32、34が前記立ち上がり部を穿刺するまで前記アーム20、22、24、26を揺動させる」ことは、当該立ち上がり部を穿刺するものであるから、その立ち上がり部に向け歯を押し付けるものであることは当然であるといえ、本件訂正発明1の「前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付ける」に相当する。そうすると、甲1発明1の「前記プラットフォーム又は基部16の表面が前記外周縁160に載置される状態において前記ブレード28、30、32、34が前記立ち上がり部を穿刺するまで前記アーム20、22、24、26を揺動させるレバー14」は本件訂正発明1の「前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部」に相当する。 甲1発明1の「捕捉機構又はフック54」は「タブ156を把持する」ものであるから本件訂正発明1の「プルタブ保持部」に相当する。そうすると、甲1発明1の「前記窪みの内部に設けられ、前記プラットフォーム又は基部16が前記缶152の上面に設置されたタブ156を把持する捕捉機構又はフック54」は本件訂正発明1の「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」に相当する。 甲1発明1の「貫通孔」は、「前記捕捉機構又はフック54を前記プラットフォーム又は基部16の上面側から下面側に通過させ」るために設けられているところ、その孔の大きさや形状、機能等はさておき、ひとまず開口部であるということができる。そうすると、甲1発明1において「前記プラットフォーム又は基部16は、前記捕捉機構又はフック54を前記プラットフォーム又は基部16の上面側から下面側に通過させ、前記レバー14のギア18の回転中心から円周方向に離れた位置にある貫通孔を有」することは、本件訂正発明1の「前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において、前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部であって、当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部を有する」ことと、「前記本体部は、開口部を有する」という限りで一致する。 イ そうすると、本件訂正発明1と甲1発明1とは、以下の点で一致し、少なくとも以下の相違点を含むものである。 <一致点> 「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、 前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、 前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、 前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、 前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、 を備え、 前記本体部は、開口部を有する、 缶蓋切除器具。」 <相違点1-1> 開口部に関して、本件訂正発明1は、「前記本体部が前記缶に装着された状態において、前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部であって、当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部」であるのに対し、甲1発明1の貫通孔は、上記のようなものであるか不明である点。 (2)判断 上記相違点1-1について検討する。 ア 相違点1-1が実質的なものであるかについて 甲1には、プラットフォーム又は基部16の貫通孔について詳述されていないところ、上記1(1)イ(オ)に示したとおり、甲1発明1の貫通孔は、捕捉機構又はフック54をプラットフォーム又は基部16の上面側から下面側に通過させるために設けられたものである。 してみると、甲1発明1の貫通孔は、少なくとも前記蓋の切除状況及びプルタブの保持状況を確認するためのものではないし、そのようなことができる構造であるとも理解できないから、上記相違点1-1は実質的な相違点である。 イ 相違点1-1に係る容易想到性について 甲1発明1の貫通孔は、上記アのとおり、捕捉機構又はフック54をプラットフォーム又は基部16の上面側から下面側に通過させるために設けられているところ、その機能を満たす限りにおいて、貫通孔を大きくすることは当業者であれば適宜設計できる事項である。 しかしながら、甲1には、甲1発明1の貫通孔を「前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる」範囲まで大きく設定することによって、「当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能」にすることは記載も示唆もなく、捕捉機構又はフック54をプラットフォーム又は基部16の上面側から下面側に通過させるために設けられている当該貫通孔をそのような開口として設けることは、当業者であっても容易に想到し得た事項ではない。 また、甲24に記載の事項、周知技術等のその他証拠からそのような開口部を有する円筒形缶切りが読み取れたとしても、甲1において、プラットフォーム又は基部16における缶150の上面152の中心に対向する位置には、レバー14のギア18の回転中心が設けられるとともに(上記1(1)イ(ウ))、捕捉機構又はフック54の一端は前記プラットフォーム又は基部16の上面側の中心位置に固定されているから(上記1(1)イ(エ))、甲1発明1において、当該位置を露出させるほどの大きさの貫通孔を設けることには阻害要因があるといえる。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明1及び周知技術又は甲24に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3)請求人の意見 ア 請求人は、口頭審理陳述要領書(6ページ下から6行~9ページ1行)において、以下の主張をする(当審注:「○1」は丸囲いした数字の1を示す場合がある。以下同様。)。 「(2)審理事項通知書・第5に関する陳述 (2-1)本件訂正発明1と甲1発明○1について 審理事項通知書4頁には「甲1は、図5~図8に示す実施形態に着目すると、次の発明(「甲1発明1」)が記載されている。」とされているが、請求人は、無効審判請求書・7(6-3)ア(26頁~31頁)に引用した甲1公報の各記載に基づき甲1発明○1を特定している。特に、「本明細書には多くの具体的事項が記載されているが、これらは、いかなる発明の範囲又は請求され得る事項の制限として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の発明の特定の実施形態に特有であり得る特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている一定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴も、複数の実施形態において別々に、又は任意の適切な部分的組み合わせで実施され得る。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上述され、当初はそのように特許請求されることさえあるが、特許請求される組み合わせからの1つ又は複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除されることがあり、そして、特許請求される組み合わせは、部分的組み合わせ又は部分的組み合わせのバリエーションを対象とし得る。」(原文39頁第12段43行目~58行目、訳文13頁[赤枠○11部分])としている点が重要である。また、甲1公報には「上記で説明された実施形態は、実装の可能な例に過ぎず、本開示の原理の明確な理解を述べたに過ぎないことが強調され得る。本開示の趣旨及び原理から実質的に逸脱することなく、多くの変形及び変更が、上記で説明された本開示の実施形態になされてよい。すべてのそのような変形及び変更は、本開示の範囲に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。」(原文39頁第12段25行目~34行目、訳文13頁[赤枠○10部分])とも記載されている。これらの記載も踏まえれば、甲1公報には、図5~図8に示す実施形態に限定されない甲1発明○1が開示されていることは明らかである。そして、このように特定された甲1発明○1は、本件訂正発明1における開口部の構成を備えており、本件訂正発明1と甲1発明○1に相違点はない。」(以下「主張4」という。) 「甲1公報の図面上、プラットフォームの上面から下面を貫通する穴が明記されていることから、甲1発明○1が貫通孔の構成を備えていることは明らかである。そして、甲1公報上、甲1発明○1の捕捉機構は、プラットフォームの上面側から下面側に貫通孔を通るように取り付けられ、また缶蓋に取り付けられているプルタブに係合させるものであるから、貫通孔は、当然、少なくともプルタブが位置する部分周辺を露出させるものである。 加えて、甲1公報上、貫通孔の大きさ、位置等を制限する明示的な記載はないことから、その大きさや位置等について限定的に理解する理由はないのであって、甲1発明○1については、缶蓋の中心及び中央部付近を露出させる大きさ、位置等による貫通孔の構成も当然含まれている。 ところで、甲1発明者が甲1発明○1の貫通孔を設けた目的は、○1捕捉機構をプルタブに係合させることを容易にすること、○2プルタブと缶蓋の状態を確認できるようにすること等にある(甲25)。このことは、甲1発明者が制作した他の缶蓋切除器具の例からも明らかである。すなわち、甲1発明者は、甲1公報に係る発明をしたのと同時期又はそれ以前に、甲1発明とは別の構成の缶蓋切除器具を複数制作している(甲4、甲20)。これらの製品は、(仮に固定ピンが蓋の中心に存在する構成の缶と組み合わせる場合には)いずれもプルタブを固定する固定ピンが位置する蓋の中心及び固定ピンによって蓋に取り付けられているプルタブが位置する蓋の中央部付近を露出させる開口部の構成を備えているが、そのうち甲4製品はプルタブを保持する部位の構成を有している一方、甲20-1製品及び甲20-2製品はプルタブを保持する部位の構成を有していない。このように、プルタブを保持する部位の構成の有無にかかわらず、甲1発明者が、缶の上部に載置する形状の容器開封器具(缶蓋切除器具)において、蓋の中心及び中央部付近を露出させる開口部を設けていることからすると、甲1発明者は、缶蓋切除器具を缶に載置することで覆い隠される缶蓋の状況(プルタブの保持状況を含む。)等を確認する意図・目的の下、缶蓋切除器具に開口部(貫通孔)を設けていたことが理解できる。 以上のことからすれば、甲1公報中には貫通孔の位置や大きさなどが明記されていないとしても、甲1発明○1には、缶蓋の状況等を確認する目的で貫通孔が設けられたといえる。そうすると、甲1発明○1の貫通孔は、缶蓋の状況等を確認できるものであることが想定されており、その貫通孔の構成について、缶蓋の中心及び中央部付近を露出させる構成が除外されるものではない。」(以下「主張5」という。) イ 主張4、5についての判断 甲1の39ページ25行~34行及び43行~58行には、甲1発明1に関して実施形態における設計変更が可能である旨が記載されているに留まり、本件訂正発明1の相違点1-1に係る構成について、甲1には記載も示唆もないだけではなく、むしろ阻害事由があることは、上記(2)イのとおりである。 そうすると、上記主張4、5は失当である。 ウ よって、請求人の主張は採用できない。 (4)無効理由1~3のまとめ よって、本件訂正発明1は、甲1発明1ではないから、請求人が主張する無効理由1によって無効とすることはできない。 また、本件訂正発明1は、甲1発明1に基づいて容易になし得たものでもないから、請求人が主張する無効理由2、3によって無効とすることはできない。 3 無効理由4(甲24発明を主引用発明とする本件訂正発明1の進歩性欠如)について (1)対比 ア 本件訂正発明1と甲24発明を対比する。 甲24発明の「プルトップ付き飲料缶」、「上蓋」、「切り取る」、「円筒形缶切り」は、本件訂正発明1の「缶」、「蓋」、「切除」、「缶蓋切除器具」にそれぞれ相当する。そうすると、甲24発明の「プルトップ付き飲料缶の上蓋を内周に沿って円形状に切り取ることで飲料缶本体から前記上蓋を切り離す円筒形缶切り」は、本件訂正発明1の「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具」と、「缶の上部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具」という限りで一致する。 甲24発明の「外側の円筒kと内側の円筒iの隙間j」は、「缶の立ち上がり部の全体を受け入れる」ものであるから、本件訂正発明1の「前記立ち上がり部の全体を受け入れる凹部」に相当する。また、甲24発明において当該「隙間j」を有する「本体部」は、本件訂正発明1の「凹部を有する本体部」に相当する、 甲24発明の「切り刃g」は本件訂正発明1の「刃体」に相当する。また、甲24発明の「切り刃g」は、「前記本体部の前記円筒iの底部先端に設けられ、前記上蓋を切り取る」ものであるから、これは、本件訂正発明1の「前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体」と、「前記本体部に設けられた、前記缶の上部を切断するための刃体」という限りで一致する。 甲24発明の「上蓋落下防止用突起e」は、その機能に鑑みれば、本件訂正発明1の「プルタブ保持部」に対応する。そうすると、甲24発明の「前記本体部の上部接合部dに設けられ、前記本体部を前記飲料缶に装着した状態で前記プルトップに空いている穴に差し込む上蓋落下防止用突起e」は、本件訂正発明1の「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」と、「前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」という限りで一致する。 甲24発明の「前記本体部は、前記本体部を前記飲料缶に装着した状態において、前記飲料缶の上蓋の中心及び前記上蓋の中央部付近を露出させる開口部であって、前記飲料缶の切除状況及び前記飲料缶のプルトップの保持状況を確認可能な開口部を有する」ことは、技術常識に鑑みれば、本件訂正発明1の「前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において、前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部であって、当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部を有する」ことに相当する。 イ そうすると、本件訂正発明1と甲24発明とは、以下の点で一致し、少なくとも以下の相違点を含むものである。 <一致点> 「缶の上部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、 前記缶の立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、 前記本体部に設けられた、前記缶の上部を切断するための刃体と、 前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、 を備え、 前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において、前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部であって、当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部を有する、 缶蓋切除器具。」 <相違点2-1> 本件訂正発明1の缶切切除器具は、「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断する」ものであって、「刃体」が「前記立ち上がり部を切断するための」ものであるのに対し、甲24発明の円筒形缶切りは、「切り刃g」によって「飲料缶の上蓋を内周に沿って円形状に切り取る」ものであって、立ち上がり部を切断するものではない点。 <相違点2-2> 操作部に関して、本件訂正発明1の缶切切除器具は、「前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部」を備えるのに対し、甲24発明の円筒形缶切りは、そのような操作部を有していない点。 (2)判断 上記相違点2-1及び相違点2-2は、技術的に関連するので併せて検討する。 甲24発明は、「円筒iの底部先端に設けられ、前記上蓋を切り取る切り刃g」を有するものであるところ、当該「切り刃g」は、上蓋を貫通するまで上から押し込まれ、回転させることで上蓋を切り取るものである(上記1(11)ア、【0010】参照)。そうすると、缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することはできないし、その構造上、そのような設計変更を加えることは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 この点、上記1(16)アの周知技術1で示したとおり、「缶蓋切除器具において、缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除すること、及び当該缶蓋切除器具に、前記缶蓋切除器具の本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部とを設けること」が周知技術であったとしても同様であり、甲24発明に対し、構造が大きく異なる当該周知技術1の適用は当業者であっても困難であるし、また、適用する動機づけも見いだせない。 加えて言えば、甲24には、上記1(11)ア、【0011】に記載されているとおり、簡易な構造で生産コストの低減が可能としており、上記のような設計変更ないし周知技術1の適用は、これを没却するものである。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲24発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (4)無効理由4のまとめ よって、本件訂正発明1は、甲24発明及び周知技術1に基づいて容易になし得たものでもないから、請求人が主張する無効理由4によって無効とすることはできない。 4 無効理由5(甲1発明2を主引用発明とする本件訂正発明2の新規性欠如)、無効理由6(甲1発明2を主引用発明とする本件訂正発明2の進歩性欠如)について (1)対比 ア 本件訂正発明2と甲1発明2を対比する。 甲1発明2の「缶150の立ち上がり部」、「切断」、「上面152」、「除去」は、本件訂正発明1の「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部」、「切断」、「蓋」、「切除」にそれぞれ相当する。そうすると、甲1発明2の「缶150の立ち上がり部を切断し、前記缶150の上面152を除去する容器開封器具304」は、本件訂正発明2の「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具」に相当する。 甲1発明2の「開放部355」、「基部354及びプラットフォーム326」は、本件訂正発明2の「凹部」、「本体部」にそれぞれ相当する。そうすると、甲1発明2の「開放部355を有する基部354及びプラットフォーム326」は、本件訂正発明2の「前記立ち上がり部の全体を受け入れる凹部を有する本体部」と、「凹部を有する本体部」という限りで一致する。 甲1発明2の「ブレード340、342、344、346」は、「立ち上がり部を切断する」ものであるから、本件訂正発明2の「刃体」ないし「立ち上がり部を切断するための刃体」に相当する。また、甲1発明2の当該「ブレード340、342、344、346」は、「前記基部354及び前記プラットフォーム326との間に取り付けられた第一アーム332、第二アーム334、第三アーム336及び第四アーム338の端部に接続される」ものであるから、これらをまとめると、本件訂正発明2の「前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体」に相当する。 甲1発明2の「レバー328」は本件訂正発明2の「操作部」に相当する。また、甲1発明2における当該「レバー328」は、「前記基部354の開放部355が前記缶150の外周縁160に載置される状態において前記ブレード340、342、344、346が前記缶150の内縁154を穿刺するまで前記第一アーム332、前記第二アーム334、前記第三アーム336及び前記第四アーム338を揺動させる」ものであるから、その構造ないし機能に鑑みれば、本件訂正発明2の「前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部」に相当する。 甲1発明2の「ブレード340、342、344、346」は、「缶150の内縁154を穿刺」して「前記立ち上がり部を切断する」ものであるから、これは、本件訂正発明2の「前記刃体は、前記立ち上がり部の内周を切除するもの」に相当する。 甲1発明2の「レバー328は、前記基部354及び前記プラットフォーム326に対して前記開放部355に近づいた閉位置と前記開放部355から離れた開位置に移動するように設けられ、前記レバー328が前記開位置から前記閉位置に握り込まれると、前記前記ブレード340、342、344、346が前記開放部355の外側に向かって進出するように構成されている」ことは、本件訂正発明2の「前記操作部は、前記本体部に対して前記凹部に近づく向きと前記凹部から離れる向きとに移動するように設けられ、前記操作部が前記本体部に向けて移動すると、前記刃体が前記凹部の外側に向かって進出するように構成されている」ことに相当する。 イ そうすると、本件訂正発明2と甲1発明2とは、以下の点で一致し、少なくとも以下の相違点を含むものである。 <一致点> 「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、 凹部を有する本体部と、 前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、 前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、 を備え、 前記刃体は、前記立ち上がり部の内周を切除するものであって、 前記操作部は、前記本体部に対して前記凹部に近づく向きと前記凹部から離れる向きとに移動するように設けられ、前記操作部が前記本体部に向けて移動すると、前記刃体が前記凹部の外側に向かって進出するように構成されている、 缶蓋切除器具。」 <相違点3-1> 本件訂正発明2は、「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部であって、当該プルタブ保持部は、前記プルタブの開口に前記蓋側から上方に向かって挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、前記保持突起部の両側に設けられ前記プルタブを受け入れるプルタブ保持凹部とを有するプルタブ保持部」を備えているのに対し、甲1発明2は、プルタブ保持部を有していない点。 (2)判断 上記相違点3-1について検討する。 ア 相違点3-1が実質的なものであるかについて 甲1発明2の容器開封器具304は、プルタブ保持部を有しておらず、ましてや、保持突起部とプルタブ保持凹部とを有するなど、プルタブ保持部の具体的な構成について記載も示唆もないから、上記相違点3-1は実質的な相違点である。 イ 相違点3-1に係る容易想到性について 甲1には、図1~図16に係る実施形態において、プルタブ保持部を設ける例が記載されている。しかし、その形状は、本件訂正発明2のような「当該プルタブ保持部は、前記プルタブの開口に前記蓋側から上方に向かって挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、前記保持突起部の両側に設けられ前記プルタブを受け入れるプルタブ保持凹部とを有する」ようなものではなく、逆に、プルタブの開口に上部から下方に向かって挿入されるものであり、まったく異なるものである。そして、甲1において、当該相違点3-1に係るプルタブ保持部の形状とするような記載ないし示唆はない。 また、上記1(16)イで周知技術2として示したとおり、「缶のプルタブを開封する器具において、プルタブの開口に蓋側から上方に向かって挿入する突起部と、前記突起部の両側に位置する凹部とを設けること」は周知技術であるが、これは、プルタブを開封する、すなわち、プルタブを上に持ち上げるためにこのような形状としているものであって、切除した缶蓋を保持するためのものではないし、そのような機能も想定されない。そして、求められる機能や構造も大きく異なる周知技術2を甲1発明2に適用する動機付けもない。 また、本件訂正発明2のプルタブ保持部は上記形状を採用することで、プルタブを安定的に保持することができるという、甲1発明2に対して有利な効果を奏するものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明2に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (3)請求人の意見 請求人は、口頭審理陳述要領書(6ページ下から6行~9ページ1行)において、以下の主張をする。 「(2-3-3)捕捉機構の形状等が、本件訂正発明2のプルタブ保持部と同一の構成を含むこと 甲1公報上、捕捉機構の形状は特に指定されていない。甲1公報の図面上は、先端をT字状とするフックの構成が開示されているところであるが、フックの先端をT字状とするのは、フックに係合したプルタブをフックから外れにくくする意図によるものであることは明らかである。同様の意図の下、フックの先端をW字状にして、その真ん中の突起部分をプルタブに引っ掛けることで、フックに係合したプルタブをフックから更に外れにくくすることは想定されているといえる。なお、フックの先端をW字状にして、フックに係合したものを外れにくくするという技術自体は、本件優先日時点で周知慣用であり、実例を挙げるまでもないが、例えば、登録実用新案公報や公開特許公報に限っても、平成12年7月4日発行の登録実用新案公報(実登3069857。甲26)記載の考案や平成29年1月12日公開の公開特許公報(特開2017-7673。甲27)などが存在する。 ・・・ このように、プルタブを保持するフックの形状について、突起部及びその両側に凹部を設ける構成(W字状の構成)にすることは、本件優先日のはるか以前から周知慣用の技術であったのである。そのため、甲1発明○2に設ける捕捉機構として、先端をW字状のフックとすることは、当然、甲1発明において想定されていた。 また、保持突起部がプルタブの開口に蓋側から上方に向かって挿入されることについても、甲1公報上、捕捉機構のうちフックの構成を取る場合に、プルタブの開口部にどのように挿入してプルタブと係合するのかは特に指定されていない。もっとも、フック状のものをリング状のものに係合するには、リング状のものの上からフックを通してそのものの外側にフックの先端を位置させる方法と、リング状の物の外側からリングの下を通ってリングの開口部に向かってフックを通し、フックの先端をリング状のものの上に位置させる方法の大きく二つしかないのであって、いずれについても甲1公報において想定されているといえる。」 しかしながら、この点は上記(2)で検討したとおりである。 (4)無効理由5、6のまとめ よって、本件訂正発明2は、甲1発明2ではないから、請求人が主張する無効理由5によって無効とすることはできない。 また、本件訂正発明2は、甲1発明2及び周知技術2に基づいて容易になし得たものでもないから、請求人が主張する無効理由6によって無効とすることはできない。 よって、本件訂正発明1は、甲1発明1ではないから、請求人が主張する無効理由1によって無効とすることはできない。 また、本件訂正発明1は、甲1発明1に基づいて容易になし得たものでもないから、請求人が主張する無効理由2、3によって無効とすることはできない。 5 無効理由7(明確性要件違反) 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、その技術的範囲に属するか否かの判断が困難となることにより第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきものである。 以下、この観点に立って、発明が明確であるか否かについて検討する。 (1)訂正後の請求項3、4における「立ち上がり部の全体を受け入れる凹部」について ア 上記第3の3(1)イで検討したとおり、本件特許の「立ち上がり部」は、缶の上端外周に位置し、円筒状であり、刃体により切断される部分を意味するものであるところ、「立ち上がり部の全体を受け入れる凹部」は、本件明細書の図15に示すように、缶の立ち上がり部の全てが本体部の凹部の内側にあるものを意味することは明らかである。 イ 請求人は、弁駁書(9ページ下から6行~10ページ末行)で、本件明細書の図22が示す実施例が「立ち上がり部の全体を受け入れる凹部」の構成を備えるものであるならば、当該記載の意味が判然としない旨の主張をする(以下「主張6」という。)。 しかしながら、上述したとおり、当該記載自体が明確であるし、図15等が示す実施例とも整合するところ、図22の実施例はそもそも「立ち上がり部の全体を受け入れる凹部」とする訂正の根拠となっていないし(上記第3の3(1)イ)、上記記載が図22の実施例と整合しないとしても、そのことをもって当該記載が不明確になるものでもない。 したがって、上記主張6は理由がない。 (2)訂正後の請求項3における「固定ピンが位置する前記蓋の中心・・・を少なくとも露出させる開口部」、「プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部」、及び「開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部」について ア 「固定ピンが位置する前記蓋の中心・・・を少なくとも露出させる開口部」について (ア)訂正後の請求項3には、「缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具」、及び「前記本体部が前記缶に装着された状態において」と記載されており、本件訂正発明1の缶蓋切除器具は、蓋が上面側から見て円形である缶に装着されるものであることが理解される。 そうすると、「固定ピンが位置する前記蓋の中心」とは、円形の蓋の中心を指すものであり、「固定ピンが位置する前記蓋の中心・・・を少なくとも露出させる開口部」とは、そのような蓋の中心を露出させるものであることが理解されるから、「固定ピンが位置する前記蓋の中心・・・を少なくとも露出させる開口部」との記載は明確といえる。 上記理解は、本件明細書の「固定ピン220は蓋202の中心に位置しており、プルタブ210は固定ピン220を中心として回転可能である。」(【0026】)との記載や、缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す断面図(【図15】)や斜視図(【図9】)において、固定ピン220が、開口部10hに対向する位置にあり、本体部10の部材によって覆われることなく、露出している状態が示されていることとも整合するものである。 (イ)請求人は、弁駁書(11ページ1行~15ページ8行)に、飲料缶などの缶について固定ピンが必ずしも蓋の中心に存在しないものもあることを理由に、「固定ピンが位置する前記蓋の中心」がどのような構成であるか不明確であり、そのため「固定ピンが位置する前記蓋の中心・・・を少なくとも露出させる開口部」も不明である旨の主張をする(以下「主張7」という。)。 しかしながら、上記(ア)のとおり、当該記載自体が明確であり、固定ピンが蓋の中心にない缶が存在したとしても、当該記載自体が不明確になることはない。 したがって、上記主張7は理由がない。 イ 「プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部」について (ア)訂正後の請求項3には、「前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近」と記載されているところ、「固定ピンが位置する前記蓋の中心」とは、円形の蓋の中心を指すものであることを踏まえると(上記ア(ア))、「プルタブが位置する前記蓋の中央部付近」とは、円形の蓋の中心を含む中央部の範囲であり、「プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部」とは、そのような蓋の中央部付近を露出させるものであることが理解されるから、「固定ピンが位置する前記蓋の中心・・・を少なくとも露出させる開口部」との記載は明確といえる。 上記理解は、本件明細書の「固定ピン220は蓋202の中心に位置しており、プルタブ210は固定ピン220を中心として回転可能である。」(【0026】)との記載や、缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す断面図(【図15】)や斜視図(【図9】)において、プルタブ210が、開口部10hに対向する位置にあり、本体部10の部材によって覆われることなく、露出している状態が示されていることとも整合するものである。 (イ)請求人は、弁駁書(15ページ10行~17ページ8行)に、飲料缶などの缶についてプルタブが蓋の端付近に存在するものもあることを理由に、「プルタブが位置する前記蓋の中央部付近」がどのような構成であるか不明確であり、そのため「プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部」も不明である旨の主張をする(以下「主張8」という。)。 しかしながら、上記(ア)のとおり、当該記載自体が明確であるし、当該記載から、本件訂正発明1の缶蓋切除器具はプルタブが蓋の中央部付近に位置する缶を対象とするのであるものと理解できるし、プルタブが蓋の端付近にある缶が存在したとしても、当該記載自体が不明確になることはない。 したがって、上記主張8は理由がない。 ウ 「開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部」について (ア)訂正後の請求項3には、「前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部であって、当該開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部」と記載されており、前段において、対象となる缶との関係で、開口部の具体的な位置、形状、大きさ等の構成が特定されており、後段において、その構成を有した開口部が、蓋の切除状況やプルタブの保持状況を確認可能であることが理解でき、当該記載が明確であることは明白である。 (イ)請求人は、弁駁書(17ページ10行~末行)に、「開口部を通じて前記蓋の切除状況及び前記プルタブの保持状況を確認可能な開口部」が機能的な記載であり、開口部の位置、形状、大きさ等の具体的な構成が特定されていないとして不明確である旨の主張をする(以下「主張9」という。)。 しかしながら、上記(ア)のとおり、当該記載自体が明確であるし、具体的な構成については「前記プルタブを固定する固定ピンが位置する前記蓋の中心及び前記固定ピンによって前記蓋に取り付けられている前記プルタブが位置する前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部」で特定されているところ、上記主張9は、請求項の記載を正解していない。 (3)無効理由7のまとめ よって、本件訂正発明は、第三者の利益が不当に害されるほど不明確ということはできず、本件訂正発明の記載を引用する請求項5、6も同様に明確であるから、請求項3~6についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しており、同法第36条第6項に規定する要件を満たしており、請求人が主張する無効理由7によって無効とすることはできない。 6 無効理由8(サポート要件違反) 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って、無効理由8について検討するに、本件訂正発明における「簡単な操作で缶の蓋を切除でき、かつ、切除された蓋が缶の中に落下することを防止できる缶蓋切除器具を提供する」(【0005】)という課題に対し、本件訂正発明は、「前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」という発明特定事項を有しており、本件明細書に記載の発明における課題を解決するための手段が特定されている。 そうすると、本件訂正発明は、本件特許の明細書の記載又はその示唆により当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件訂正発明は発明の詳細な説明に記載したものであるから、請求項3、4についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しており、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている。 7 無効理由9(実施可能要件違反) 物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要し、また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要するものである。 以下、この観点に立って、無効理由9について検討するに、本件明細書には、「前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」について、1本の線材を屈曲させて形成された「プルタブ保持部40」(【0049】、図11)、樹脂製又は金属製の部材である「プルタブ保持部140」(【0089】、図17)等が記載されているし、缶蓋切除器具に「蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部」を設けることが技術常識であり、種々の文献に開示されている(例えば、甲1の「捕捉機構又はフック54」、甲2の「フック部19」を参照)。 そうすると、当業者が、本件明細書の上記記載及び出願当時の上記技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるといえる。 よって、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件訂正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、請求項についての特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しており、同法第36条第4項に規定する要件を満たしている。 第8 むすび 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件訂正発明1、2である訂正後の請求項3、4に係る発明についての特許を無効にすることはできない。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800047

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