特許拒絶査定不服審判
2020-004104
ボトルキャップ開けホルダー
- 審判番号
- 2020-004104
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-086601外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年03月09日
- 審決日
- 2020年10月27日
- 公報発行日
- 2021年02月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】森園 利春
- 分類
- P18 .121-Z (B67B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2019- 86601「ボトルキャップ開けホルダー」拒絶査定不服審判事件〔令和2年10月22日出願公開、特開2020-172330、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、令和元年4月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 8月16日付け :拒絶理由通知書
令和元年 8月30日(受付日):意見書及び手続補正書の提出
令和元年11月11日付け :拒絶理由通知書
令和元年11月22日(受付日):意見書の提出
令和2年 2月20日付け :拒絶査定
令和2年 3月10日(受付日):審判請求書の提出、同時に手続補正書
の提出
第2.令和2年3月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は補正箇所である。なお、削除された文字の前後1文字に下線を付した。)
「【請求項1】
キザミ溝を連続して設けた長さのある二本の部材を基板にV字状に一体構造として設け、キザミ溝を介しキャップを挟みキャップの回転を止め押さえボトルを片手で回転させるだけでキャップが緩み開けることができるコンパクトな構造としたことを特徴とするボトルキャップ開けホルダー。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和元年8月30日にされた手続補正(以下「本件補正2」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
キザミ溝を連続して設けた長さのある二本の部材を基板にV字状に一体構造として設け、基板を冷蔵庫等の壁面に両面テープ等を介し固定、キザミ溝を介しキャップを挟みキャップの回転を止め押さえボトルを片手で回転させるだけでキャップが緩み開けることができる構造としたことを特徴とするボトルキャップ開けホルダー。」
2.補正の適否について
(1)本件補正の概要
本件補正は、ボトルキャップ開けホルダーの基板について、本件補正前の請求項1から「基板を冷蔵庫等の壁面に両面テープ等を介し固定、」という発明特定事項を削除する(以下「補正事項1」という。)とともに、ボトルキャップ開けホルダーの構造について、本件補正前の請求項1の「構造」を、「コンパクトな構造」と限定を付加する(以下「補正事項2」という。)ものである。
(2)補正の目的について
本件補正が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
補正事項1は、発明特定事項を削除するものであるところ、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当しない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
(3)独立特許要件について
上記(2)で述べたように、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないものであるが、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
ア.本件補正発明
本件補正による請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。
イ.引用文献の記載事項
(ア)米国特許出願公開第2016/0304330号明細書
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された米国特許出願公開第2016/0304330号明細書(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
a.「[0004]To provide for a a fixed V-shaped jar and bottle lid opener that allows a user to hold the jar or bottle firmly with both hands while twisting open.」
(当審訳:[0004]固定されたV字型の瓶とボトルの蓋オープナーを提供することにより、ユーザーは、瓶またはボトルを両手でしっかりと握り、ねじって開けることができる。)
b.「[0005]It is another advantage of this invention that the V-shaped lid opener be affixed via screws under a cabinet, bar counter, overhang wall or similar」
(当審訳:[0005]本発明の別の利点は、V字型の蓋オープナーが、キャビネット、バーカウンター、張り出し壁または同様のものの下にねじを介して取り付けられることである。)
c.「[0006]It is a further advantage of this invention that the invention is able to open lids of various sizes from 4 inches in diameter to smaller and is coated in a gripping material such as neoprene, rubber, silicone or similar to provide a firm grip on lids while opening.」
(当審訳:[0006]本発明のさらなる利点は、本発明が直径4インチからそれ以下までの様々なサイズの蓋を開けることができ、ネオプレン、ゴム、シリコーンなどの把持材料でコーティングされ、蓋を開ける際にしっかりと把持することができることである。)
d.「[0022]A lid opener (10) comprising of a V-shaped plate (12) having a gripping surface (14) on the inside of the V-shaped opening (11), a drop down blade (16) for opening plastic packaging (not shown), a bottle opener (18) and a provision (20) for attaching a can opener (not shown) provided on its bottom side (13). The top side (15) is affixed to an underside portion of a cabinet (22) via mechanical fasteners (24), such as screws, for example, and can be pushed up into place and pulled down when needed. A jar (21) is inserted firmly into the V-shaped opening (11) and the jar (21) is twisted in a clockwise direction to open its lid (23). Similarly jars (21) and bottles (not shown) of varying sizes can be inserted into the V-shaped opening (11) until it is gripped firmly by the gripping surface (14) provided, and then twisted to open the jar (21) or bottle (not shown).」
(当審訳:[0022]V字型開口部(11)の内側に把持面(14)を備えたV字型プレート(12)、プラスチックパッケージ(図示せず)を開くためのドロップダウンブレード(16)、栓抜き(18)、および下面(13)に設けられた缶切り(図示せず)を取り付けるための設備(20)を備える蓋オープナー(10)。上面(15)は、例えばねじなどの機械的締結具(24)を介してキャビネット(22)の下側部分に取り付けられ、必要に応じて所定の位置に押し上げたり、引き下げたりすることができる。瓶(21)がV字型開口部(11)にしっかりと挿入され、瓶(21)が時計回り方向にねじられてその蓋(23)を開く。同様に、さまざまなサイズの瓶(21)やボトル(図示せず)を、提供された把持面(14)によりしっかりと把持されるまでV字型開口部(11)に挿入し、続いてねじることで瓶(21)やボトル(図示せず)を開けることができる。)
e.「[0023]The V-Shaped plate (12) is about 1/2 inch thick, each arm of the V are approximately 2 inches wide and an opening that is 9 inches wide at the ends of the V, 3 1/4 inches at the beginning of the V and 10 inches in length. The inside of the “V” is provided with a coating, such as neoprene tape, silicone, rubber or other suitable material having good gripping characteristics.」
(当審訳:[0023]V字型プレート(12)の厚さは約1/2インチ、V字の各アームの幅は約2インチ、開口部の幅はV字の終端部で9インチ、V字の始端部で3と1/4インチ、V字の長さは10インチである。「V」字の内側には、ネオプレンテープ、シリコーン、ゴム、その他良好な把持特性を持つ適切な材料のコーティングが施されている。)
f.「[0024]A recessed opening (20) can accommodate a can opener with a magnet (not shown) for opening metal cans. The lid opener (10) can be attached directly to a cabinet (22) or alternatively using a base plate (28) between the cabinet (22) and lid opener (10) such that the cabinet (22) is not scratched or worn with use.」
(当審訳:[0024]窪んだ開口部(20)は、金属缶を開くための、磁石(図示せず)を備えた缶切りを収容することができる。蓋オープナー(10)はキャビネット(22)に直接取り付けるか、キャビネット(22)と蓋オープナー(10)の間にベースプレート(28)を使用して、キャビネット(22)に傷がついたり摩耗したりしないようにすることができる。)
g.「[0025]With respect to the above description then, it is to be realized that the optimum dimensional relationships for the parts of the invention, to include variations in size, materials, shape, form, function and manner of operation, assembly and use, are deemed readily apparent and obvious to one skilled in the art, and all equivalent relationships to those illustrated in the drawings and described in the specification are intended to be encompassed by the present invention.」
(当審訳:[0025]上記の説明に関して、サイズ、材料、形状、形態、機能、操作方法、組立方法、および使用方法におけるバリエーションを含む本発明の部品の最適な寸法関係が、当業者にとって容易に明らかであり自明のことと理解されるべきであり、図面及び明細書に記載されたものと同等の関係のものは、全て本発明に含まれるものとする。)
h.「
」
i.「
」
j.「
」
k.「
」
l.上記h.のFIG.1、上記j.のFIG.5a、上記k.のFIG.5bに図示されているものから、V字型プレート(12)のV字型開口部(11)の内側の把持面(14)が連続した波状の構造を有し、波状の構造を介して蓋(23)を把持することが看取できる。
また、上記d.の段落[0022]の「上面(15)は、例えばねじなどの機械的締結具(24)を介してキャビネット(22)の下側部分に取り付けられ」との記載、上記f.の「蓋オープナー(10)はキャビネット(22)に直接取り付けるか、キャビネット(22)と蓋オープナー(10)の間にベースプレート(28)を使用して、キャビネット(22)に傷がついたり摩耗したりしないようにすることができる。」との記載に基けば、上記i.のFIG.4に図示されているものから、ベースプレート(28)とV字型プレート12は、機械的締結具(24)を介して一体化されていることが看取できる。
m.以上を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「V字型開口部(11)の内側の把持面(14)に連続した波状の構造を有するV字型プレート(12)と、ベースプレート(28)とを、機械的締結具(24)を介して一体化して設け、キャビネット、バーカウンター、張り出し壁または同様のものにねじを介して取り付け、さまざまなサイズの瓶(21)やボトルを、把持面(14)の波状の構造を介して蓋(23)をしっかりと把持されるまでV字型開口部(11)に挿入し、両手でねじることで、直径4インチからそれ以下までの様々なサイズの蓋(23)を開けることができる、蓋オープナー(10)。」
(イ)米国特許4085632号明細書
本願の出願日前に頒布された米国特許4085632号明細書(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
a.「Referring to FIG. 1 of the drawings, reference numeral 10 indicates the screw cap opener of this invention as mounted underneath a conventional-type kitchen cabinet. As shown, a user is about to open the jar 12 having a screw cap 14 thereon. The base of the cabinet 16 is clearly shown together with the front panel of the cabinet 17 and a door 18 for the cabinet. The opener structure is formed of extruded PVC type plastic material and has side triangular portions 20 integral with a flat main body portion 22. Common-type wood screws 19 normally are used to fasten the holder to the base of the cabinet. The portions 20 of the holder are quite close together at the rear of the device while providing a relatively large opening at the front thereof.」
(第2欄第39~52行。当審訳:図面の図1を参照すると、参照番号10は、従来型のキッチンキャビネットの下に取り付けられた本発明のねじキャップオープナーを示している。図示されているように、ユーザーはねじキャップ14を有する瓶12を開けようとしている。キャビネット16のベースは、キャビネットのためのキャビネット17のフロントパネルおよびキャビネット用のドア18と共に明示されている。オープナーの構造は、押出し成形されたPVCタイプのプラスチック材料から形成され、平坦な本体部分22と一体の側部三角形状部20を有している。一般的な木ネジ19によって、ホルダーをキャビネットのベースに固定する。ホルダー部分20は、装置の前方において比較的大きな開口部を提供し、装置の後方で非常に接近している。)
b.「The left blade, as viewed from the front in FIG. 2, is normally provided with sawteeth or a serrated edge thereon. The right blade 32 is normally provided with a smooth flat edge 34. It has been discovered that this arrangement is far superior to using two flat edged blades which have a tendency to slip and fail to completely and firmly hold the screw cap, while if both blades are provided with teeth, it is not possible to wedge the cap into the V as far and as well as it is with just one blade having teeth and the other one being of smooth edge. Also, the teeth of blade 31 slant toward the rear of the device for better gripping and holding action. In normal operation a user will insert the screw cap lid into the V as far as it will easily go, and then with a slight twist and an additional push, the cap can be wedged in a little more with the smooth edged blade permitting this additional movement of the cap relative to the overall device which would not be possible if the smooth blade was replaced by a toothed one. Once the cap is firmly wedged between the V positioned blades, then the user may twist the body of the jar and easily unscrew same from the cap.」
(第2欄第60行~第3欄13行。当審訳:図2の正面から見た左側のブレードは、通常、鋸歯または鋸歯状の縁部がその上に設けられている。右側のブレード32には、通常、滑らかで平坦な縁部34が設けられている。この構成は、滑りやすく、ねじキャップを完全にしっかりと保持できない平坦な縁部のブレードを2つ使用するよりもはるかに優れており、もし両方の縁部に歯が付いている場合は、一方のブレードに歯があり、もう一方のブレードが平坦な縁部となっている場合と同じくらいの位置までV字内に差し込むことができないことがわかっている。また、ブレード31の歯は、より良好な把持および保持動作のために、装置の後方に向かって傾斜している。通常の操作では、ユーザーはねじキャップの蓋をV字内に簡単に移動できる範囲で挿入し、次に少しひねってさらに押し込むと、キャップは、平坦な縁部のブレードにより、平坦な縁部のブレードを歯付きのブレードに交換した場合は不可能である装置全体に対するキャップの追加の移動が可能となり、差し込まれる。キャップがV字に配置されたブレードの間にしっかりと差し込まれると、ユーザーは瓶の本体をひねって、キャップから簡単に外すことができる。)
c.「
」
d.「
」
e.上記d.のFig.2に図示されたものから、ねじキャップオープナー10が、長さのある二本のブレード31及び32を平坦な本体部分22と一体の側部三角形状部20にV字状に一体構造として設けたものであることが看取できる。
また、上記b.の記載と上記c.のFig.1に図示されたものから、ねじキャップオープナー10が、二本のブレード31及び32でねじキャップ14を挟みねじキャップ14の回転を止め押さえ瓶を片手で回転させるだけでねじキャップ14が緩み開けることができる構造であることがわかる。
f.以上を総合すると、引用文献2には、以下の引用文献2記載事項が記載されている。
「長さのある二本のブレードを基板に本体部分に一体構造として設けたねじキャップオープナーを、二本のブレードでねじキャップを挟みねじキャップの回転を止め押さえ瓶を片手で回転させるだけでねじキャップが緩み開けることができる構造とした点。」
(ウ)登録実用新案第3008404号公報
本願の出願日前に頒布された登録実用新案第3008404号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
a.「【0021】
瓶蓋開放具3は、平面視すると概略三角形状を呈しており、所定の厚みの主体部3aを有している。基板3aは、木材であっても、プラスチックであっても、また金属製であってもよい。この主体部3aの下面側には、凹窩部6が穿設されている。この凹窩部6は、約60度の挟角を成す立壁(放射状に対向する二側壁面)7及び8を有している。この立壁7及び8は、瓶蓋9の外周面に当接してこれを挟持し得る挟持面部とされている。
【0022】
一方の立壁7には、上下2列の鋸歯状の挟持突体10が、埋め込み、ビス止め、接着等の適宜の方法で取り付けられている。また挟持突体10の鋭角な歯面(起立端面)は、立壁7及び8が交叉する部分(隅角)へなびくように設定されている。
【0023】
次に、上述の如く構成された瓶蓋開放具3の使用態様を説明する。先ず、図1の図(a)及び図(d)示すように、瓶蓋開放具3を引き出し2の前板4から取り出す。そして、図3に示すように、瓶本体12を片方の手で把持し、瓶蓋9を瓶蓋開放具3の凹窩部6に形成した立壁7及び8の間に挿入して瓶蓋9の外周面が両立壁7及び8と接合するようにする。これは瓶蓋9を両立壁7及び8の交叉する部位(隅角)の方へ移動させるだけで簡単に行うことが可能である。
【0024】
然る後は、瓶本体12を上から見て時計回りに回動させる。このとき、瓶蓋9は、鋸歯状の挟持突体10と立壁8とに挟持されて回動が規制されている。そのため、瓶本体12のみが回動し、結果として瓶蓋9が開放される。
【0025】
この瓶蓋9の開放は、従来の方法では、片方の手で瓶本体12を把持し、残りの手で瓶蓋9を握ってひねる必要があり、瓶蓋開放のための力の集中が行われ難く、瓶蓋9が固着しているような場合は、尚更のことであった。然しながら、本実施例にあっては、前述した通り、瓶本体12を片方の手で把持して瓶蓋9を開放することが可能である。
【0026】
また瓶蓋9が固着した場合は、両方の手で瓶本体12を把持して回動させることができ、瓶蓋9の開放のために両方の手を使用できるので、大きな力を得ることができ、容易に開放することができる。
更に、通常は、瓶本体12の方が瓶蓋9の装着される注ぎ口の部分よりかなり大きく設定されているので、小さな力でも大きな瓶蓋開放のための回動力を得ることができ、腕力の乏しい婦女子や老人、子供であっても容易に固着した瓶蓋9を開けることが可能である。」
b.「【図3】
」
c.上記b.の【図3】に図示されたものから、瓶蓋解放具3が、長さのある二つの立壁7及び8を基板3aにV字状に一体構造として設けたものであることが看取できる。
また、上記a.段落【0023】~【0026】の記載と、上記b.の【図3】に図示されたものから、瓶蓋解放具3が、二本の立壁7及び8で瓶蓋9を挟み瓶蓋9の回転を止め押さえ瓶を片方の手または両方の手で回転させるだけで瓶蓋9が緩み開けることができる構造であることがわかる。
d.以上を総合すると、引用文献3には、以下の引用文献3記載事項が記載されている。
「長さのある二つの立壁を基板にV字状に一体構造として設けた瓶蓋解放具を、二つの立壁で瓶蓋を挟み瓶蓋の回転を止め押さえ瓶を片方の手または両方の手で回転させるだけで瓶蓋が緩み開けることができる構造とした点。」
(エ)特開平8-324690号公報
本願の出願日前に頒布された特開平8-324690号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
a.「【0014】次に、本発明の第一実施例の使用方法を説明する。まず、一方の手で開栓板1を保持するとともに、他方の手で容器本体3を保持する。そして、図6に示すように容器本体3の口部31を被包するように捩じ込まれた蓋32を、開栓板1の切欠き部11に挿入する。切欠き部11に形成された蓋挾持部13a、13bにより、蓋32が挾持される位置まで容器本体3を挿入し、確実に挾持されたら容器本体3を矢印の方向に捩じる。蓋32は、蓋挾持部13a、13bにより確実に挾持されているので、片手で容器本体3を捩じるだけで蓋32に形成された切り離し予定部32bを捩じ切ることができる。そして、容器本体3から蓋32を開栓したら容器本体3を下方へ移動することで、容器本体3に収容された内容物を飲むことができる。」
b.「【0019】次に、本発明の第二実施例について図面を参照して説明する。図9は本発明の第二実施例に係る容器の開栓装置の平面図である。図10は同装置の正面図である。図11は同装置の側面図である。図12は図9のB-B断面図である。図13は同装置の斜視図である。図14は自動販売機の斜視図である。なお、第一実施例と同一の符号番号については同一の部材を示している。図9に示すように、第二実施例の容器の開栓装置は、開栓板1と開栓装置本体5とから構成されている。」
c.「【0023】次に、本発明の第二実施例の使用方法を説明する。まず、自動販売機6の見本棚63から希望の商品を選択し、商品受取口69から商品を受け取る。開栓板1が開栓装置本体5に折り畳まれている場合には、開栓板1の角部23を押し、開栓板1を開栓装置本体5から突出させる。そして、一方の手で容器本体3を保持し、容器本体3の口部31を被包するように捩じ込まれた蓋32を、開栓板1の切欠き部11に挿入し、蓋挾持部13a、13bにより確実に挾持されたら容器本体3を矢印の方向に捩じる。なお、特に開けにくい容器については両方の手を用いて容器本体3を捩じることができる。
【0024】開栓装置本体5は前面扉62に固定されているので、片方の手を用いて容器本体3を捩じるだけで蓋32に形成された切り離し予定部32bを捩じ切ることができる。そして、容器本体3から蓋32を開栓したら容器本体3を下方へ移動することで、容器本体3に収容された内容物を飲むことができる。なお、開栓装置本体5の下方に、図14において二点鎖線で示すような開栓された蓋を収容する回収ボックス70を設けることもできる。例えば、自動販売機6の底部に設けた足踏みペダルを踏むことで、この回収ボックス70を前面扉62から突出させることで、蓋挾持部13aと13bとにより挾持され、開栓板1側に保持された開栓済の蓋32を回収ボックス70に回収することができる。また、開栓済の蓋32が脱落し、自動販売機6近辺の環境を汚すのを防止することもできる。一方、缶容器4の上面41に形成されたタブ42を起こす際には、まず一方の手で保持した缶容器4の上面41とタブ42との間に爪部22を差し込み、タブ42を徐々に起き上げることができる。また、プルトップ44を引き剥がす際には、プルトップ44の孔44aに爪部22を差し込み、プルトップ44を引き剥がすことができる。」
d.「【図6】
」
e.「【図13】
」
f.上記e.の図13に図示されたものから、長さのある二つの蓋挾持部13a、13bをV字状に有する開栓板1を開栓装置本体5に設けたものであることが看取できる。
また、上記a.の段落【0014】の記載、上記c.の段落【0023】、【0024】の記載と、上記d.のFig.1に図示されたものから、開栓装置本体5が、二つの蓋挾持部13a、13bで蓋32を挟み蓋32の回転を止め押さえ瓶を片手または両方の手で回転させるだけで蓋32が緩み開けることができる構造であることがわかる。
以上を総合すると、引用文献4には、以下の引用文献4記載事項が記載されている。
「二つの蓋挾持部をV字状に有する開栓板を設けた開栓装置本体を、二つの蓋挾持部をで蓋を挟み蓋の回転を止め押さえ瓶を片手または両方の手で回転させるだけで蓋が緩み開けることができる構造とした点。」
ウ.引用発明との対比
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「蓋」は本件補正発明の「キャップ」に相当し、引用発明の「V字型プレート(12)」の「V字型開口部(11)の内側の把持面(14)」にある「連続した波状の構造」は、当該「連続した波状の構造」を介して「蓋(23)をしっかりと把持」するものであるから、本件補正発明の「キザミ溝を介してキャップを挟」む際の「キザミ溝」に相当する。
したがって、引用発明の「V字型開口部(11)の内側の把持面(14)に連続した波状の構造を有するV字型プレート(12)」は、本件補正発明の「キザミ溝を連続して設けた長さのある二本の部材を」「V字状に一体構造として設け」たものに相当し、引用発明の「V字型プレート(12)」と「機械的締結具(24)を介して一体化して設け」られる「ベースプレート(12)」は、本件補正発明の「キザミ溝を連続して設けた長さのある二本の部材を」「V字状に一体構造として設け」られる「基板」に相当する。
また、引用発明において、「蓋(23)をしっかりと把持されるまでV字型開口部(11)に挿入し、両手でねじる」際は、蓋の回転が止め押さえられていることが明らかであり、「両手でねじることで、直径4インチからそれ以下までの様々なサイズの蓋(23)を開けることができる」ためには、「蓋(23)」が緩むことが必要であることは明らかである。
したがって、引用発明の「さまざまなサイズの瓶(21)やボトルを、把持面(14)の波状の構造を介して蓋(23)をしっかりと把持されるまでV字型開口部(11)に挿入し、両手でねじることで、直径4インチからそれ以下までの様々なサイズの蓋(23)を開けることができる」点は、「キザミ溝を介しキャップを挟みキャップの回転を止め押さえボトルを手で回転させるだけでキャップが緩み開けることができる構造とした」限りにおいて、本件補正発明の「キザミ溝を介しキャップを挟みキャップの回転を止め押さえボトルを片手で回転させるだけでキャップが緩み開けることができるコンパクトな構造とした」点に一致する。
そして、引用発明の「蓋オープナー(10)」は、本件補正発明の「ボトルキャップ開けホルダー」に相当する。
(イ)以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「キザミ溝を連続して設けた長さのある二本の部材を基板にV字状に一体構造として設け、キザミ溝を介しキャップを挟みキャップの回転を止め押さえボトルを手で回転させるだけでキャップが緩み開けることができる構造としたことを特徴とするボトルキャップ開けホルダー。」
<相違点1>
ボトルを手で回転させるだけでキャップが緩み開けることができることに関して、本件補正発明は「片手」であるのに対して、引用発明は「両手」である点。
<相違点2>
本件補正発明は、「ボトルキャップ開けホルダー」の「構造」が「コンパクトな」ものであるのに対して、引用発明は、蓋オープナー(10)の構造が「コンパクトな」ものであるか否か明らかでない点。
エ.判断
以下、相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用発明において、ボトルをV字型開口部(11)に挿入し両手でねじることで蓋(23)を開けるのに際し、ボトルを「片手」で回転させるだけでキャップが緩み開けることができるか、ボトルを「両手」で回転させることでキャップが緩み開けることができるかは、ボトルや蓋の大きさに依存するものであり、ボトルや蓋が大きければ「両手」で回転させることが必要である一方で、ボトルや蓋が小さければ「片手」で回転させるだけでキャップが緩み開けることができることは、技術的に明らかであるといえる。
なお、キャップ明けホルダーを用いてボトルを片手で回転させてキャップを開けることは、引用文献2記載事項~引用文献4記載事項にもあるように普通に行われることである。
(イ)相違点2について
「ボトルキャップ開けホルダー」の「構造」が「コンパクトな」ものである点について、発明の詳細な説明には明示的な記載はないが、令和2年3月9日に提出された手続補正書には、「[補正の根拠の明示]」として、「令和2年3月9日付けの手続き補正書における特許請求項1の補正事項は、当初出願の明細書[0005]冷蔵庫等に接着テープ等を使い固定、[図4]冷蔵庫にホルダーを装着した図の対比から小物と判断できる、に基づいている。」と記載され、上記手続補正書と同時に提出された審判請求書には、「3〔本願発明が特許されるべき理由〕」の「(1)本願発明の説明」の「〇B印の指摘について。」の欄において、「本案は片手だけで開けられます。冷蔵庫等にもシールを剥がし片手で装着できます。コンパクトなホルダー」(上記審判請求書の3(1)「〇B印の指摘について。」の欄の下から2行目~最終行)と記されているから、本件補正発明の「コンパクトな」とは、「冷蔵庫」と比較して「小物」であり、「片手」で装着できる程度の大きさを意味するものと解される。
一方、引用発明の蓋オープナー(10)のV字型プレート(12)について、引用文献1の段落[0023](上記イ.(ア)e.参照)には、V字の長さが10インチ(約25.4cm)である点が記載されているから、冷蔵庫と比較すれば小物であるといえる。
また、V字の長さが10インチのV字型プレート(12)を備えた蓋オープナー(10)が、仮に「片手」で装着できる程度のものよりは大きいものであるとしても、引用発明が「さまざまなサイズの瓶(21)やボトル」について「直径4インチからそれ以下までの様々なサイズの蓋(23)を開けることができる」ものであり、引用文献1の段落[0025](上記イ.(ア)g.参照)の記載に基づき、引用発明がサイズや形状のバリエーションについて最適化し得るものである点を考慮すれば、引用発明のボトル及び蓋として、直径4インチ(10.16cm)よりも小さい、ペットボトル及びそのキャップのようなものを対象とすることは、当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、当該ボトル及び蓋の大きさに合わせて蓋オープナー(10)を小型化することにも特段の困難性は認められない。
さらに、V字状に設けた2本の部材にキャップを挟みキャップの回転を止め押さえ、ボトルを手で回転させるだけでキャップが緩み開けることができるようにしたものにおいて、ボトルを「片手」で回転させるだけでキャップが緩み開けることができる構造とすることは、上記イ.(イ)~(エ)に示した引用文献2記載事項~引用文献4記載事項のように従来周知の技術であり、上記引用文献2記載事項~引用文献4記載事項のものは、「片手」で回転されるボトルのサイズと比較しても、「片手」で装着できる程度の大きさの「コンパクトな」ものであるといえる。
そうすると、引用発明の蓋オープナー(10)の構造を、上記周知技術に基づき、「片手」で装着できる程度に「コンパクトな」ものとすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
(ウ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(エ)なお、出願人は令和2年3月9日に提出された審判請求書において、〔拒絶査定についての意見〕の欄において、概ね以下の3点を主張している。
a.引用発明の把持面(14)に設けられた溝の間隔は、図全体で比較すると間隔が広くペットボトル等のキャップ開けが不可能なものである。
b.引用発明の把持面(14)にはシリコン、ゴム等のコーティングがされているものであるのに対し、「キザミ溝」にゴム系のコーティングを施した場合は、溝は埋まり平らとなる。
c.引用発明にはユーザーがボトルをしっかり保持しながら開くことを可能にすると明記されている(段落[0004])のに対し、本件補正発明は片手で回転させるだけで開けられるものであり、片手の不自由な方が片手だけで装着、使用できるようにしたものである。
(オ)上記主張について検討する。
a.上記(イ)で指摘したように、引用発明のボトル及び蓋として、比較的小さいものを対象とすることは当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、当該ボトル及び蓋の大きさに合わせて蓋オープナー(10)を小型化することにも特段の困難性は認められず、「把持面(14)に設けられた溝」の間隔についても、ボトル及び蓋の大きさに合わせたサイズとすることは当業者が適宜なし得る設計的事項であるから、上記(エ)a.の主張については採用できない。
b.また、引用文献1の上記イ(ア)a.の段落[0006]及びe.の段落[0023]の記載によれば、ネオプレン、ゴム、シリコーンによるコーティングは、把持特性を良好にするためのものであり、溝を埋めるためのものではなく、引用文献1の上記イ(ア)a.(FIG.1)~k.(FIG.5b)には、把持面(14)に連続した波状の構造(溝)を有することが図示されているから、上記(エ)b.の主張についても採用できない。
c.また、引用発明1において、蓋オープナー(10)を片手だけで使用できるようにすることは上記(ア)で指摘したとおりであり、蓋オープナー(10)を片手だけで装着できるようにすることは上記(イ)で指摘したとおりであるから、上記(エ)c.の主張についても採用できない。
(カ)したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、上記2.(2)で指摘したように、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に限定的減縮を目的としたものであるとしても、本件補正発明は、上記2.(3)で指摘したように、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3.本願発明について
1.本件補正前の特許請求の範囲
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和元年8月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2.[理由]1.(2)に記載したとおりのものである。
2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、あるいは、引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:米国特許出願公開第2016/0304330号明細書
3.引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記第2.[理由]2.(3)イ.(ア)に記載したとおりである。
4.対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明に対して、ボトルキャップ開けホルダーの構造について、「コンパクトな」という発明特定事項を削除するとともに、「基板を冷蔵庫等の壁面に両面テープ等を介し固定、」という発明特定事項を追加するものである。
また、本願発明の「基板を冷蔵庫等の壁面に両面テープ等を介し固定、」という構成以外の引用発明との対比については、上記第2.[理由]2.(3)ウ.(ア)に記載したとおりである。
そして、本願発明の「冷蔵庫等の壁面」における「冷蔵庫等」の記載や、「両面テープ等を介し固定」における「両面テープ等」の記載は、それぞれ「壁面」を構成する機器や「固定」する手段を単に例示したものに過ぎないから、引用発明において、「V字型プレート(12)と、ベースプレート(28)とを、機械的締結具(24)を介して一体化して設け、キャビネット、バーカウンター、張り出し壁または同様のものにねじを介して取り付け」る点は、「V字型プレート(12)」を「壁」に「取り付け」るものである点で、本願発明の、「基板を冷蔵庫等の壁面に両面テープ等を介し固定」する点に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2.[理由]2.(3)ウ.(イ)で指摘した相違点1で相違し、その他の点で一致するものであり、その相違点1についての判断は、上記第2.[理由]2.(3)エ.(ア)で示したとおりのものであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-004104