特許無効審判
2024-800166
エアロゾル発生物品内でセグメントとして使用するためのエアロゾル発生物品および低抵抗支持要素
- 審判番号
- 2024-800166
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2018-511758
- 登録番号
- 6784754
- 請求日
- 2024年11月29日
- 審決日
- 2026年07月15日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Future Technology 株式会社
- 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】山崎 一夫
- 【被請求人代理人】近藤 直樹
- 【被請求人代理人】那須 威夫
- 【被請求人代理人】鈴木 信彦
- 【被請求人代理人】岩上 健
- 審判長/審判官
- 審判長 大山 健
- 審判官 山本 崇昭
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P1123.121-Y (A24F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6784754号発明「エアロゾル発生物品内でセグメントとして使用するためのエアロゾル発生物品および低抵抗支持要素」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6784754号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本審判の請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。
との審決を求める。
第2 手続の経緯
(1)特許第6784754号(以下「本件特許」という。)の出願から設定登録までの経緯
本件特許の出願から設定登録までの手続の経緯は、大略次のとおりである。
2016年(平成28年)9月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年9月3日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願
令和2年 9月15日付け 特許査定
令和2年 10月27日 設定登録
(2)本無効審判事件の手続の経緯
本無効審判事件の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年 11月29日 審判請求書の提出
令和7年 2月 3日 手続補正書の提出(請求人)
令和7年 4月 3日 手続補正書の提出(請求人)
令和7年 7月31日 審判事件答弁書の提出
令和8年 3月 9日付け 審理事項通知
令和8年 4月 9日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和8年 5月13日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
令和8年 6月17日 口頭審理(無効2025-800050と併 合審理)
第3 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ロッドの形態に組み立てられる複数のセグメントを備えるエアロゾル発生物品であって、前記複数のセグメントが、エアロゾル形成基体および前記ロッド内の前記エアロゾル形成基体から下流に位置するマウスピースフィルターを含み、前記エアロゾル発生物品がさらに、前記ロッド内に前記エアロゾル形成基体と前記マウスピースフィルターとの間に配置された0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭とを含み、
前記活性炭が糸の形態での細長い炭素支持要素に結合されている、エアロゾル発生物品。」
第4 両当事者の主張
1 請求人の主張及び証拠方法
(1)無効理由の概要
審判請求書、令和7年2月3日及び令和7年4月3日に提出された手続補正書並びに令和8年4月9日に提出された口頭審理陳述要領書によれば、請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。
本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)証拠方法
甲第1号証:国際公開第2015/075804号
甲第2号証:国際公開第2015/103021号
2 被請求人の主張及び証拠方法
審判事件答弁書及び令和8年5月13日に提出された口頭審理陳述要領書によれば、被請求人の無効理由に対する主張は以下のとおりである。
本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
第5 当審の判断
1 甲第1号証の記載事項等
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、次の記載事項及び図示事項がある。なお、下線は、当審において付した。以下同様。
(1)「[0032]
参考形態の第1態様および第2態様において、フィルタープラグ17は、通常のフィルター付シガレットと同様、アセテートトウの濾材により構成され得る。フィルタープラグ17は、濾材のみから構成されていてもよいし、濾材とその周囲に巻かれたプラグ巻取紙とから構成されていてもよい。フィルター15が複数のフィルタープラグ17を含む場合、たばこ刻側のフィルタープラグ17と吸口側のフィルタープラグ17は、同じ素材および構造を有していてもよいし、異なる素材および構造を有していてもよい。
[0033]
アセテートトウは、たとえば、単糸繊度1.9~12.0(g/9000m)、総繊度10000~44000(g/9000m)、繊維本数830~23500(本)、通気抵抗100~600(mmH2O/120mm)とすることができる。・・・
・・・
[0035]
フィルター15は、たとえば、約14~26mmの円周を有し、長さは、通常のフィルターと同様、例えば17~31mmであり得る。第1態様のフィルター15において、中空部24の長さは、香料カプセル23のサイズ以上であればよく、たとえば3~7mmであり、各フィルタープラグ17の長さは、5~20mmであり得る。
・・・
[0037]
本参考形態の態様において、たばこロッド14は、通常のシガレット11と同様、たばこ充填材12とその周囲を巻装するたばこ巻紙13からなり、例えば、約14~26mmの円周および53~67mmの長さを有することができる。」
(2)「[0058]
図12に示すように、第3態様に係るシガレット11は、たばこ充填材12(刻み葉、煙草)および該たばこ充填材12の周囲を巻いた巻紙13を含むたばこロッド14と、たばこロッド14に隣接して設けられたフィルター15と、たばこロッド14およびフィルター15に跨ってこれらを連結するようにたばこロッド14およびフィルター15上に巻かれたチップペーパー16と、を含んでいる。
・・・
[0061]
図13に示すように、第4態様に係るシガレット11は、たばこ充填材12およびたばこ充填材12の周囲に巻かれた巻紙13を含むたばこロッド14と、フィルター15と、たばこロッド14およびフィルター15に跨ってこれらを接続するようにたばこロッド14およびフィルター15上に巻かれたチップペーパー16と、を有する。
[0062]
フィルター15は、互いに離間し中空部24を介して配置された2個のフィルタープラグ17と、2個のフィルタープラグ17に跨りフィルタープラグ17間に中空部24を形成するように2個のフィルタープラグ17の周囲に巻かれた1個の第1フィルター包装紙21Aと、第1フィルター包装紙21Aの上側に巻かれた1個の第2フィルター包装紙21Bと、中空部24内に位置し皮膜22内に香料を含む内容液25を保持する香料カプセル23とを、含んでいる。
・・・
[0064]
第3態様と第4態様のシガレット11は、概ね同じ断面形状を有する。図14に図12および図13中のF14-F14線に沿った断面図を示す。以下は、特に明示しない限り、上述の2つの態様についての説明である。
[0065]
2個のフィルタープラグ17は、アセテートトウの濾材により構成されるが、互いに同じ性質を持たせてもよいし、或いは互いに異なる性質を持たせてもよい。2個のフィルタープラグ17の性質を異ならせる場合には、例えば、一方のフィルタープラグ17を通常のアセテートトウの濾材で構成し、他方のフィルタープラグ17を活性炭入りのアセテートトウの濾材で構成することができる。」
(3)「
[図:0001438842000001.jpg]
」(図13)
(4)甲第1号証の記載から理解できる事項
ア 上記記載事項(2)及び(3)から、たばこロッド14とフィルター15はそれぞれシガレット11のセグメントを構成するものと理解される。
イ 上記記載事項(1)及び(3)から、たばこロッド14及びフィルター15は円周と長さを有するのだから、ロッドの形態であると理解される。
ウ 上記記載事項(2)及び(3)から、たばこロッド14及びフィルター15に跨ってこれらを接続するようにたばこロッド14及びフィルター15上に巻かれたチップペーパー16を有するのだから、チップペーパー16が巻かれることで、タバコロッド14及びフィルター15はロッドの形態に組み立てられると理解される。
エ 上記記載事項(2)から、たばこロッド14はたばこ充填材12(刻み葉、煙草)を含むのだから、喫煙時にエアロゾルを発生すると理解される。
オ 上記記載事項(1)及び(3)から、複数のフィルタープラグ17を含むフィルター15が、たばこロッド14の吸口側にあるのだから、たばこロッド14の下流にフィルター15が位置するものと理解される。
(5)甲1発明
以上を踏まえると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「ロッドの形態に組み立てられる複数のセグメントを備えるシガレット11であって、
複数のセグメントが、たばこロッド14及びたばこロッド14から下流に位置するフィルター15を含み、前記フィルター15は、互いに離間し中空部24を介して配置された2個のフィルタープラグ17を含み、一方の前記フィルタープラグ17を通常のアセテートトウの濾材で構成し、他方の前記フィルタープラグ17を活性炭入りのアセテートトウの濾材で構成した、シガレット11。」
2 甲第2号証の記載事項等
甲第2号証(以下「甲2」という。)には、次の記載事項がある。なお、甲2の訳として、特表2017-501691号公報の記載及び段落番号を参照する。
(1)甲2の記載事項
ア 「Filters containing activated carbon tend to suffer from particle breakthrough, which occurs when particles of activated carbon are released from the filter and enter the smoker's mouth as a smoker draws on the mouth end of a smoking article. Activated carbon for use in filters of smoking articles is typically derived from coconut shells, which can be activated to varying degrees to control adsorption efficiency. More highly activated carbon is generally more efficient than less highly activated carbon. However, resistance to attrition decreases, and higher amounts of particle breakthrough can result when coconut shell-derived activated carbon is activated to a higher degree. In addition, coconut shell-derived activated carbon that is activated to a high degree may generate a substantial amount of dust during the filter making process, which can contaminate filter making machinery.」(明細書1ページ13~23行)
(訳)「【0003】
活性炭を含むフィルターは、喫煙者が喫煙物品の口側の端を吸い込む時に、活性炭の粒子がフィルターから放出されて喫煙者の口に入る時に発生する粒子破過による損害を受ける傾向にある。喫煙物品のフィルターで使用するための活性炭は一般に、ココナッツの殻に由来するが、これは吸着の効率を制御するために様々な度合いに活性化されうる。活性度が高めの活性炭は一般的に、活性度が低めの活性炭よりも効率が高い。ところが、摩耗に対する抵抗力が低下すると、ココナッツの殻由来の活性炭が高い度合いで活性化される時に、粒子破過の発生量が増加しうる。さらに、高い度合いで活性化されたココナッツの殻由来の活性炭では、フィルター製造プロセス中に相当量の粉塵が発生することがあり、これがフィルター製造機械を汚染しかねない。」
イ 「To test whether a filter or smoking article has activated carbon of the present invention, activated carbon may be removed from the filter or smoking article and placed in a test article. Preferably, the test article is one that produces a particle breakthrough of about 580 with reference coconut shell-derived activated carbon. Activated carbon may be removed from a filter or smoking article in any suitable manner. For example, if the filter is a plug-space-plug filter, activated carbon may be physically removed from the filter. By way of further example, if the filter is a cellulose acetate carbon-on-tow filter, the filter material may be dissolved, for example in acetone, leaving activated carbon which may be dried and incorporated into a test article.」(明細書8ページ6~15行)
(訳)「【0032】
フィルターまたは喫煙物品が本発明の活性炭を有するかどうかを試験するために、活性炭をフィルターまたは喫煙物品から外して、試験物品内に配置してもよい。試験物品は、基準のココナッツの殻由来の活性炭で粒子破過が約580となるものであることが好ましい。活性炭は、適切な任意の方法でフィルターまたは喫煙物品から除去されてもよい。例えば、フィルターがプラグ-スペース-プラグフィルターである場合、活性炭はフィルターから物理的に除去されうる。さらなる例として、フィルターが酢酸セルロースカーボンオントウフィルターである場合、フィルター材料を、例えばアセトン中で溶解し、乾燥させて試験物品に組み込みうる活性炭を残してもよい。」
ウ 「Activated carbon may be placed in a filter for a smoking article in any suitable manner. For example, activated carbon can be intermingled with fibrous filter material, placed in a void space in the filter, or in a combination intermingled with fibrous filter material and in a void space in the filter.」(明細書10ページ11~14行)
(訳)「【0039】
活性炭は、喫煙物品用のフィルター内に適切な任意の方法で配置されうる。例えば、活性炭は、繊維質のフィルター材料と混ぜる方法、フィルター内の空隙内に入れる方法、または繊維質のフィルター材料と混ぜる方法とフィルター内の空隙内に入れる方法の組み合わせとすることができる。
エ 「Any suitable smoking article may include a filter having activated carbon as described in this disclosure, where the filter is disposed downstream of a smokable material. The term "smoking article" includes cigarettes, cigars, cigarillos and other articles in which a smokable material, such as a tobacco, is lit and combusted to produce smoke. The term "smoking article" also includes articles in which smokable material is not combusted, such as but not limited to smoking articles that heat a smoking composition directly or indirectly, or smoking articles that use air flow or a chemical reaction, with or without a heat source, to deliver nicotine or other materials from the smokable material.」(明細書10ページ23~31行)
(訳)「【0041】
適切な任意の喫煙物品には、本開示に記載した活性炭を有するフィルターを含みうるが、ここでフィルターは喫煙可能材料の下流に配置される。「喫煙物品」という用語は、紙巻たばこ、葉巻たばこ、シガリロおよびたばこなどの喫煙可能材料が点火され、燃焼されて煙を生成するその他の物品を含む。「喫煙物品」という用語はまた、直接的または間接的に喫煙用組成物を加熱する喫煙物品、または熱源の有無にかかわらず、空気の流れまたは化学反応を使用して、喫煙可能材料からニコチンまたはその他の材料を送達する喫煙物品などであるがこれに限定されない、喫煙可能材料が燃焼しない物品を含む。」
オ 「Particle breakthrough and smoke constituent adsorption experiments were performed on filters of cigarettes, where the filters contained activated carbon. Activated carbon was incorporated into a void space of a filter in a plug-space-plug configuration or incorporated into a filter in a carbon on tow configuration. For the carbon on tow configuration, the filter contained a 7 mm mouth end section of white cellulose acetate tow abutted by a 20 mm cellulose acetate tow section into which 60 mg of activated carbon was incorporated. For the plug-space-plug configuration, the filter contained a 11 mm mouth end section of cellulose acetate tow and a 11 mm rod end section of cellulose acetate tow. The mouth end section and the rod end section were separated by a gap of 5 mm into the void space of which 110 mg of activated carbon was placed.」(明細書13ページ24行~14ページ8行)
(訳)「【0060】
粒子破過および煙成分吸着の実験は、紙巻たばこのフィルター上で実施されたが、ここでフィルターは活性炭を含んでいた。活性炭は、プラグ-スペース-プラグ構成のフィルターの空隙に組み込まれたか、またはカーボンオントウ構成のフィルター内に組み込まれた。カーボンオントウ構成では、フィルターは、60mgの活性炭が組み込まれた20mmの酢酸セルローストウセクションが隣接する白色の酢酸セルローストウの7mmの口側の端セクションを含むものであった。プラグ-スペース-プラグ構成では、フィルターは、酢酸セルローストウの11mmの口側の端セクションおよび酢酸セルローストウの11mmのロッド端セクションを含むものであった。口側の端セクションおよびロッド端セクションは5mmのギャップによって空隙内に分離され、この空隙内に110mgの活性炭が配置された。」
(2)上記(1)より、甲2には、以下の技術事項(以下「甲2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
〔甲2に記載された技術事項〕
「喫煙物品用のフィルターに関して、フィルターが活性炭を含む場合、活性炭を繊維質のフィルター材料と混ぜる方法により、活性炭がフィルターに組み込まれうること。」
3 本件発明と甲1発明との対比
本件発明と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「シガレット11」は、喫煙のためのものであるから、本件発明の「エアロゾル発生物品」に相当する。
甲1発明の「たばこロッド14」は、喫煙時にエアロゾルを発生すると理解されるから、本件発明の「エアロゾル形成基体」に相当し、同様に「フィルター15」は「マウスピースフィルター」に相当する。
そうすると、甲1発明の「複数のセグメントが、たばこロッド14及びたばこロッド14から下流に位置するフィルター15を含」むことは、本件発明の「前記複数のセグメントが、エアロゾル形成基体および前記ロッド内の前記エアロゾル形成基体から下流に位置するマウスピースフィルターを含」むことに相当する。
よって、本件発明と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「ロッドの形態に組み立てられる複数のセグメントを備えるエアロゾル発生物品であって、
前記複数のセグメントが、エアロゾル形成基体および前記ロッド内のエアロゾル形成基体から下流に位置するマウスピースフィルターを含む、エアロゾル発生物品。」
〔相違点〕
本件発明は「前記エアロゾル発生物品がさらに、前記ロッド内に前記エアロゾル形成基体と前記マウスピースフィルターとの間に配置された0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭とを含み、前記活性炭が糸の形態での細長い炭素支持要素に結合されている」のに対して、甲1発明は、フィルター15が、互いに離間し中空部24を介して配置された2個のフィルタープラグ17を含み、一方の前記フィルタープラグ17を通常のアセテートトウの濾材で構成し、他方の前記フィルタープラグ17を活性炭入りのアセテートトウの濾材で構成している点。
4 相違点についての判断
(1)エアロゾル発生物品内での「活性炭」の「配置」について
本件発明では、エアロゾル発生物品内で、「エアロゾル形成基体とマウスピースフィルターとの間に」、活性炭を配置することが特定されている。
それに対し、甲1発明は、フィルター15に含まれる、一方のフィルタープラグ17を通常のアセテートトウの濾材で構成し、他方のフィルタープラグ17を活性炭入りのアセテートトウの濾材で構成している。そして、当該他方のフィルタープラグ17を活性炭入りとする理由は、甲1の明細書の段落[0065]に記載されているとおり、あくまで2個のフィルタープラグ17の性質を異ならせるためであり、甲1発明のフィルター15(フィルタープラグ17)が活性炭を含むことが前提であると認められる。
さらに、甲2に記載された技術事項は、喫煙物品用のフィルターに関して、フィルターが活性炭を含む場合、活性炭を繊維質のフィルター材料と混ぜる方法により、活性炭がフィルターに組み込まれうることを示すものであるところ、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用しても、活性炭はフィルター内に配置されるものとなり、活性炭を「エアロゾル形成基体とマウスピースフィルターとの間に」配置することにはならない。
加えて、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用した際に、活性炭を、「エアロゾル形成基体とマウスピースフィルターとの間」(たばこロッド14とフィルター15との間)に配置する動機付けも存在しない。
そして、本件発明は、活性炭が、「エアロゾル形成基体とマウスピースフィルターとの間」に配置されることにより、ユーザーに提供されるエアロゾルのニコチン含有量を著しく変化させずに、ユーザー向けに著しい新鮮味の効果を持たせ得る旨(本件特許の明細書の段落【0007】)、及び活性炭がマウスピースフィルター内にある場合よりも、形成されるエアロゾルが自由に活性炭を通過し得る旨(本件特許の明細書の段落【0012】)の顕著な効果を奏するものである。
(2)エアロゾル発生物品に含まれる「活性炭」の「量」について
本件発明では、エアロゾル発生物品が「0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭」を含むことが特定されている。
それに対し、甲1の段落[0065]には、フィルター15の2個のフィルタープラグ17について、それぞれのアセテートトウの濾材を互いに異なる性質とした場合、他方のフィルタープラグ17を活性炭入りのアセテートトウの濾材で構成する旨の記載があるものの、甲1には、その明細書全体を参酌しても、活性炭の量に係る記載がなく、甲1発明において、シガレット11に含まれる活性炭の量を「0.005ミリグラム~0.1ミリグラム」とする動機付けは存在しない。
そして、本件発明は、エアロゾル発生物品が「0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭」を含むことにより、活性炭は炭素支持要素上に位置付けられ、また物品内に位置付けられうるが、エアロゾル発生物品の別の要素又はセグメントに不注意に再配置することはできない旨(本件特許の明細書の段落【0014】)、及びユーザーに提供されるエアロゾルのニコチン含有量を著しく変化させずに、ユーザー向けに著しい新鮮味の効果を持たせ得る旨(本件特許の明細書の段落【0007】)の顕著な効果を奏するものである。
(3)「活性炭」が炭素支持要素に「結合」されていることについて
本件発明において、活性炭が炭素支持要素に「結合」されていることについて、本件特許の明細書の段落【0014】には「0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭が炭素支持要素と結合されうることが好ましい。これによって、活性炭は炭素支持要素上に位置付けられ、また物品内に位置付けられうるが、エアロゾル発生物品の別の要素またはセグメントに不注意に再配置することはできない。」と記載されているから、本件発明において、「活性炭」が炭素支持要素に「結合」されていることとは、0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭が炭素支持要素上の特定の位置に固定される(位置付けられる)ことで、エアロゾル発生物品の別の要素またはセグメントに再配置されないことを意味すると解される。
ここで、甲2に、喫煙物品用のフィルターに関して、フィルターが活性炭を含む場合、活性炭を繊維質のフィルター材料と混ぜる方法により、活性炭がフィルターに組み込まれうるとの技術事項が記載されているとしても、活性炭が、繊維質のフィルター材料(炭素支持要素)上の特定の位置に固定される(位置付けられる)ことで、エアロゾル発生物品の別の要素またはセグメントに再配置されないことまでを開示しているということはできない。
したがって、甲1発明に、甲2に記載された技術事項を適用したとしても、本件発明の「前記活性炭が糸の形態での細長い炭素支持要素に結合されている」との構成を充足しない。
(4)相違点の小括
上記(1)ないし(3)に鑑みれば、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用しても、相違点に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。
5 請求人の主張について
請求人は、令和8年4月9日に提出された口頭審理陳述要領書において以下のように主張する。
(1)「甲1号証の段落0065は、2個のフィルタープラグ17について、アセテートトウ濾材の構成を「互いに同じ性質」または「互いに異なる性質」とすることが可能である旨が記載されている。
さらに、性質を異ならせる場合の具体例として、「一方のフィルタープラグ17を通常のアセテートトウ濾材で構成し、他方を活性炭入りのアセテートトウ濾材で構成する」ことが記載されている。
このように、甲1号証にはフィルター内の活性炭の配置や組み合について、当業者が実施し得る広範な選択が示唆されている。この示唆に基づき、活性炭の含有量を調整することは当業者の通常の創作範囲内であり、具体的な数値範囲を特定する為の過度の試行錯誤が必要とは認められない。
・・・
本件特許発明1で特定された「0.005ミリグラム~0.1ミリグラム」の活性炭の数値範囲は、甲1号証において記載された広い技術な示唆から当業者が通常の実験を用いて効果を得るために適宜した値の選択と考えられる。よって本件数値範囲は当業者が容易に想到し得る設計変更の範囲内である。さらに、本件明細書には、含まれる活性炭の重さの数値範囲に関する臨界的意義が記載されておらず、本件発明における活性炭の重さは望ましい数値範囲を記載しただけであり、技術的意義を有さないものと推察される。」(2ページ)
(2)「本件特許明細書と甲2とを比較する。まず、本件特許で記載されている「含む」や「組み込まれうる」という用語は、両方で重複して記載されている。
更に、甲2の段落0039と同0041では、活性炭について「適切な任意の方法をとることができる」旨が記載されている。これは特定の固着方法に限定されることなく、活性炭とフィルター材料とは技術的に様々な方法で配置することが可能なことを示唆している。この任意の方法(段落0039)の配置が示唆されていることから、活性炭をフィルター材料に「結合」も含まれると考えられる。
・・・
以上から、本件特許の「結合」という用語は、本件明細書の記載と甲2の記載される他用語の重複する点から実質的に同一の技術を指すものと考えられる。よって、本件の請求項1「結合」は、甲2の記載に基づき、本件特許の構成に想到することができる。」(5ページ)
上記(1)の主張について検討する。
上記4の(2)のとおり、甲1発明において、シガレット11に含まれる活性炭の量を「0.005ミリグラム~0.1ミリグラム」とすることの動機付けが存在しない上に、本件発明は、活性炭の量を上記のように限定したことにより、活性炭は炭素支持要素上に位置付けられ、また物品内に位置付けられうるが、エアロゾル発生物品の別の要素又はセグメントに不注意に再配置することはできない旨(本件特許の明細書の段落【0014】)、及びユーザーに提供されるエアロゾルのニコチン含有量を著しく変化させずに、ユーザー向けに著しい新鮮味の効果を持たせ得る旨(本件特許の明細書の段落【0007】)の顕著な効果を奏するものであるから、当該数値範囲とすることには技術的意義があると認められる。
よって、請求人の主張は採用できない。
上記(2)の主張について検討する。
上記4(3)のとおり、活性炭が炭素支持要素に「結合」されていることについて、本件特許の明細書の段落【0014】には「0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭が炭素支持要素と結合されうることが好ましい。これによって、活性炭は炭素支持要素上に位置付けられ、また物品内に位置付けられうるが、エアロゾル発生物品の別の要素またはセグメントに不注意に再配置することはできない。」と記載されているから、本件発明において、「活性炭」が炭素支持要素に「結合」されていることとは、0.005ミリグラム~0.1ミリグラムの活性炭が炭素支持要素上の特定の位置に固定される(位置付けられる)ことで、エアロゾル発生物品の別の要素またはセグメントに再配置されないことを意味すると解される。したがって、本件特許の明細書と甲2とが同じような用語(「含む」や「組み込まれうる」)を用いているとしても、甲2に記載された「活性炭を繊維質のフィルター材料と混ぜる」ことが、本件発明における、活性炭を炭素支持要素に「結合」することと、同義であるとはいえない。
そして、仮に、甲2に記載された「活性炭を繊維質のフィルター材料と混ぜる」ことが、本件発明の活性炭を炭素支持要素に「結合」することに相当し、甲1発明に甲2に記載された技術事項を適用することができたとしても、活性炭はフィルター内に配置されるものとなり、「エアロゾル形成基体とマウスピースフィルターとの間に」配置することにはならないから、やはり相違点に係る本件発明には至らないことは、上記4(1)のとおりである。
よって、請求人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由には理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、請求項1に係る特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-800166