特許異議申立
2024-701203
ワイヤレス給電システム
- 審判番号
- 2024-701203
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-045425
- 登録番号
- 7499586
- 請求日
- 2024年12月16日
- 審決日
- 2025年02月12日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】及川 周
- 【権利者代理人】川渕 健一
- 【権利者代理人】松本 将尚
- 【異議申立人】秋山 良文
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.121-Y (H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7499586号発明「ワイヤレス給電システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7499586号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7499586号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、令和2年3月16日の出願であって、令和6年6月6日にその特許権の設定登録がされ、同年6月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1に係る特許に対し、令和6年12月16日に特許異議申立人 秋山 良文(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
前記特許異議の申立てのために提出された特許異議申立書を、以下では単に「申立書」という。
第2 本件の特許請求の範囲と本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その請求項に記載されたとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のために、本件発明について、以下に示すように分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A トイレ空間内に設けられるトイレ装置と、前記トイレ装置からの電波により給電される遠隔制御装置と、を有するワイヤレス給電システムであって、
B 前記トイレ装置の前方の領域の人の存在を検知する人体検知センサと、
C 前記遠隔制御装置に対して電波を送信することで前記遠隔制御装置に対して第1電力量をワイヤレス給電する給電部と、を備え、
D1 前記給電部は、人が前記トイレ装置の前方の領域以外に存在し、前記人体検知センサが前記トイレ空間内の人の存在を検知しない場合であって、
D2 前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対する人の行為によって前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかにおける所定の機能が作動した場合と、前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対して所定の操作が行われた場合と、の少なくともいずれかの場合には、
D3 前記第1電力量未満の第2電力量以下でのワイヤレス給電を実行する、又は、前記遠隔制御装置に対するワイヤレス給電を停止し、
E 前記所定の機能が作動した場合とは、前記トイレ装置が前記トイレ装置に設けられた便座及び便蓋の少なくともいずれかを開閉する開閉機能と、前記トイレ装置が前記便座への着座を検知する着座検知機能と、前記トイレ装置における人体の局部を洗浄する局部洗浄機能と、前記トイレ装置の便器に対して水を吐水する便器洗浄機能と、の少なくともいずれかの機能が作動した場合であり、
F 前記所定の操作が行われた場合とは、前記遠隔制御装置の操作部が操作された場合と、前記トイレ装置に設けられた便座及び便蓋の少なくともいずれかが人の操作により操作された場合と、の少なくともいずれかの場合である、
G ワイヤレス給電システム。
第3 証拠方法及び申立理由
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ「甲1」及び「甲2」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、本件発明に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1 特開2010-53536号公報
甲2 特許第5061251号公報
2 申立理由
申立書に記載された申立理由は、概略、以下のとおりである。
本件発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
第4 申立理由についての判断
以下では、本件発明の甲1に記載された発明に対する進歩性の有無を判断する。
1 甲号証の記載
以下に各甲号証の記載を摘記する。
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は後述の甲1発明の認定に使用する箇所を示すために当審で付した。
ア 「【0021】
本実施形態の便器システム1は、本体2に人体検知センサ16を設け、その人体検知センサ16により人体が非検知である場合に、本体2からリモコン装置3への電波による電力送信を行い、リモコン装置3の充電を行うものである。
【0022】
図1(a)に示すように、本体2は、主に、床面(図示せず)に設置されると共に上部(矢印Z方向上側の面)に略楕円形の開口(図示せず)が形成される便器10と、その便器10の上面(矢印Z方向上側の面)に配置されると共に便器10の開口より小さい略楕円形の開口(図示せず)が中央に形成される便座11と、その便座11の上面(矢印Z方向上側の面)に配置されると共に便器10及び便座11の開口を閉鎖する便蓋12と、便器10の後方(矢印Y方向左側)に配置されるケース13とを備えている。なお、便座11及び便蓋12は、便器10の後端(矢印Y方向左側の端部)に軸着され、便器10に対してそれぞれ揺動可能に構成されている。
【0023】
便蓋12の内部には、その便蓋12の外縁に沿った形状に形成される電力送信用アンテナ14が設けられいる。また、ケース13の内部には、電力送信用アンテナ14に対して電力を供給してリモコン装置3に対して電力送信などを行う制御ユニット15と、その制御ユニット15に接続されると共に本体2の近くにいる人を検知する人体検知センサ16と、制御ユニット15に接続されると共にリモコン装置3から送信される制御信号(後述する指示信号や過充電信号、充電許可信号など)を受光窓17を介して受信する受光素子18とが設けられている。」
イ 「【0033】
図3(a)に示す電力送信処理が実行されると、まず、人体検知センサ16により人が検知されたか否かを確認し(S1)、人体検知センサ16により人が検知されていれば(S3:Yes)、本体2の近くに人がいるので、本体2からリモコン装置3への電力送信用アンテナ14及び電力受信用アンテナ23を介した電波による電力送信を停止して(S2)、S5の処理へ移行する。
【0034】
一方、S1の処理で確認した結果、人体検知センサ16により人が検知されていなければ(S1:No)、リモコン装置3が過充電の状態か充電可能な状態かを確認する(S3)。S3の処理では、リモコン装置3から送信された信号が、過充電信号であるか充電許可信号であるか否かを確認する処理である。
【0035】
S3の処理で確認した結果、リモコン装置3から過充電信号を受信していれば(S3:Yes)、電力送信を停止するために、S2の処理に移行する。また、リモコン装置3から充電許可信号を受信していれば(S3:No)、リモコン装置3が充電可能な状態なので、本体2からリモコン装置3への電力送信用アンテナ14及び電力受信用アンテナ23を介した電波による電力送信を開始し(S4)、S5の処理へ移行する。」
ウ 図1(a)
[図:0001420375000001.jpg]
(2)甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。なお、下線は後述の甲2技術の認定に使用する箇所を示すために当審で付した。
ア 「【0007】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。」
イ 「【0019】
衛生洗浄装置100は、便座本体200とは別体にトイレ室に設けられ、トイレ室への入室及び退室を検出する人体検出器600aを有している。人体検出器600aは、トイレ室の入口等に取り付けられており、電池駆動されることによりトイレ室への使用者の存否を検出する。より具体的には、人体検出器600aは、内蔵電池601で駆動される第1遠隔器600(本発明に係る遠隔器に相当する)に設けられている。人体検出器600aは、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、人体検出器600aが人体で反射された赤外線を検知することにより、使用者がトイレ室に存在することを検出し、赤外線が反射されなくなったことを検知することにより、使用者が存在しなくなったことを検出する。人体検出器600aは、予め設定された時間間隔でトイレ室内における人体の存否を検出するように構成されている。なお、人体検出器600aは、これに限られず、例えば、赤外線焦電センサでもよいし、トイレ室の入口付近に投光器と受光器とを有し、受光器への投光が1回遮られた場合に入室を検出し、再度光が遮られた場合に退室を検出する光電管式の検出器としてもよい。また、トイレ室からの退室を、後述する着座センサ610による離座の検出に基づいて検出してもよく、あるいは、衛生洗浄装置100が使用されなくなったことを示す第2遠隔器300における所定の操作に基づいて検出してもよい。」
ウ 「【0025】
なお、本実施形態における衛生洗浄装置100は、便座温度の設定や洗浄開始又は停止等の各種操作を行う第2遠隔器300を有している。第2遠隔器300は、内蔵電池(図示せず)で駆動される。便座本体200の受信部403は、第2遠隔器300からの信号も受信可能となっている。」
エ 「【0059】
図6に示すように、まず、制御部90は、第1室温検知器602に異常がないか否かを判定する(ステップSA1)。具体的には、制御部90は、入室信号を受信した際、入室信号に含まれる第1室温検知器602で検知された周囲の温度T1に関する温度情報を読み出し、当該周囲の温度T1が所定の温度範囲内にあるか否かを判定する。ここで、所定の温度範囲は、通常想定され得る温度範囲を意味し、当該所定温度範囲を外れることは第1室温検知器602が故障したことを意味する。第1室温検知器602に異常がない場合には(ステップSA1でNo)、制御部90は、人体検出器600a以外で入室検出が行われたか否かを判定する(ステップSA2)。すなわち、人体検出器600aに異常がないか否かを判定する。具体的には、人体検出器600aからの入室信号を受信する前に、着座センサ610が便座400への着座を検出したり、洗浄装置や乾燥装置のオン又はオフ操作等の各種操作入力が行われたりした場合は、制御部90は、人体検出器600a以外で入室が検出されたものと判定する。さらに、人体検出器600aに異常がない場合には(ステップSA2でNo)、制御部90は、第1室温検知器602が電池切れ状態となっていないか否かを判定する(ステップSA3)。具体的には、第1遠隔器600は、内蔵電池601の電圧Vが所定の電圧値V1未満となるか否かを監視し、所定の電圧値V1未満となった場合、電池切れ状態になったものとして送信器603に電池切れ状態を示す電池切れ信号を送信するよう制御する。制御部90は、このような電池切れ信号を受信したか否かを判定し、受信していない場合には(ステップSA3でYes)、室温制御が可能であると判定し、図4及び図5の制御を行う(ステップSA4)。すなわち、ステップSA1からステップSA3の判定においてすべてNoとなった場合、制御部90は、室温制御を行う。一方、ステップSA1からステップSA3の何れかの判定において、Yesとなった場合、制御部90は、室温制御が不能であると判定し、図4及び図5の制御は行わない(ステップSA5)。このとき、制御部90は、ヒータ温度検知部401aで検知された便座400の温度のみに基づいて便座ヒータ450への通電量を制御する。このような室温制御可否判定において、制御部90は、所定の期間ごとに、その期間内で第1室温検知器602の異常が生じたか否か、人体検出器600aの異常が生じたか否か及び第1室温検知器602が電池切れ状態となったか否かを判定し、何れかに該当した場合に、それ以降の期間では室温制御を行わないこととすることが好ましい。
【0060】
このように、第1室温検知器602又は人体検出器600aが異常である場合には、これらから送られてくる信号に基づいて室温制御が行われないため、便座400の温度が実際の室温とは異なる温度に基づいて制御されることを防止し、使用者に不快感を与えることを防止することができる。」
オ 図6
[図:0001420375000002.jpg]
2 甲1発明の認定
前記1(1)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を以下のa~gに分説し、「構成a」のようにして参照する。
a 本体2からリモコン装置3への電波による電力送信を行い、リモコン装置3の充電を行う便器システム1であって、(【0021】)
b 本体2は、便器10と、便座11と、便蓋12と、ケース13とを備え、(【0022】)
c 便蓋12の内部には、電力送信用アンテナ14が設けられ、(【0023】)
d ケース13の内部には、人体検知センサ16が設けられ、(【0023】)
e 人体検知センサ16により人が検知されていれば、本体2の近くに人がいるので、本体2からリモコン装置3への電力送信を停止し、(【0033】)
f 人体検知センサ16により人が検知されていなければ、本体2からリモコン装置3への電力送信を開始する、(【0034】、【0035】)
g 便器システム1。
3 本件発明と甲1発明との対比
本件発明と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。
(1)発明特定事項A及びGについて
発明特定事項Aは「トイレ空間内に設けられるトイレ装置と、前記トイレ装置からの電波により給電される遠隔制御装置と、を有するワイヤレス給電システムであって、」というものであり、発明特定事項Gは「ワイヤレス給電システム。」というものである。
甲1発明の「本体2」は、「便器10と、便座11と、便蓋12と、ケース13とを備え」ている(構成b)から、トイレ装置であり、「便器10」を含む「本体2」がトイレ空間内に設けられることは社会通念上当然であるから、甲1発明の「本体2」は、本件発明の「トイレ空間内に設けられるトイレ装置」に相当する。
甲1発明の「リモコン装置3」(構成a)は、本件発明の「遠隔制御装置」に相当する。
甲1発明の「便器システム1」は、「本体2からリモコン装置3への電波による電力送信を行」うもの(構成a)であるから、本体2からの電波により給電されるリモコン装置3を有するワイヤレス給電便器システムである。
以上によれば、本件発明と甲1発明とは、「トイレ空間内に設けられるトイレ装置と、前記トイレ装置からの電波により給電される遠隔制御装置と、を有するワイヤレス給電システムであ」る点で一致する。
(2)発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「前記トイレ装置の前方の領域の人の存在を検知する人体検知センサと、」というものである。
甲1発明の「人体検知センサ16」は、「本体2の近くに人がいる」ことを検知するもの(構成e)である。
そうすると、本件発明と甲1発明とは、「人の存在を検知する人体検知センサ」を備える点で共通するが、本件発明の「人体検知センサ」の検知領域は「前記トイレ装置の前方の領域」であるのに対し、甲1発明の「人体検知センサ16」の検知領域は「本体2の近く」である点で相違する。
(3)発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、「前記遠隔制御装置に対して電波を送信することで前記遠隔制御装置に対して第1電力量をワイヤレス給電する給電部と、を備え、」というものである。
甲1発明の「電力送信用アンテナ14」(構成c)は、「本体2からリモコン装置3への電波による電力送信を行」う(構成a)ためのものであると解されるから、本件発明の「前記遠隔制御装置に対して電波を送信することで前記遠隔制御装置に対して」「ワイヤレス給電する給電部」に相当する。
ここで、甲1発明の「電力送信用アンテナ14」によって送信される電力量を「第1電力量」と呼ぶことは任意である。
よって、本件発明と甲1発明とは、「前記遠隔制御装置に対して電波を送信することで前記遠隔制御装置に対して第1電力量をワイヤレス給電する給電部と、を備え」る点で一致する。
(4)発明特定事項D1~D3について
発明特定事項D1は、「前記給電部は、人が前記トイレ装置の前方の領域以外に存在し、前記人体検知センサが前記トイレ空間内の人の存在を検知しない場合であって、」というものである。
発明特定事項D2は、「前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対する人の行為によって前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかにおける所定の機能が作動した場合と、前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対して所定の操作が行われた場合と、の少なくともいずれかの場合には、」というものである。
発明特定事項D3は、「前記第1電力量未満の第2電力量以下でのワイヤレス給電を実行する、又は、前記遠隔制御装置に対するワイヤレス給電を停止し、」というものである。
ア 発明特定事項D3について
先に発明特定事項D3について対比する。
甲1発明の「本体2からリモコン装置3への電力送信を停止」する(構成e)という動作(以下「甲1停止動作」という。)は、本件発明の「前記遠隔制御装置に対するワイヤレス給電を停止」するという動作(以下「本件停止動作」という。)に相当する。
よって、本件発明と甲1発明とは、「前記遠隔制御装置に対するワイヤレス給電を停止」する点で一致し、発明特定事項D3は択一記載となっていることから、「前記第1電力量未満の第2電力量以下でのワイヤレス給電を実行する、又は、前記遠隔制御装置に対するワイヤレス給電を停止」する点でも一致する。
イ 発明特定事項D1について
甲1停止動作は、「人体検知センサ16により人が検知されてい」ることを条件に実行されるものである(構成e)。これは、発明特定事項D1と異なる。
他方、甲1発明は、「人体検知センサ16により人が検知されていな」い場合(構成f)が想定されているが、該場合の動作は「本体2からリモコン装置3への電力送信を開始する」(構成f)というものであって、甲1停止動作とはならないから、前記場合を本件発明1との一致点とするのは不適当である。
よって、本件発明は「前記給電部は、人が前記トイレ装置の前方の領域以外に存在し、前記人体検知センサが前記トイレ空間内の人の存在を検知しない場合」に本件停止動作をするのに対し、甲1発明は「人体検知センサ16により人が検知されてい」る場合に甲1停止動作をする点で相違する。
ウ 発明特定事項D2について
本件発明は「前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対する人の行為によって前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかにおける所定の機能が作動した場合と、前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対して所定の操作が行われた場合と、の少なくともいずれかの場合」に本件停止動作を行うのに対し、甲1発明は、人の行為や操作を検出して充電の停止を行うものではなく、甲1発明はあくまで「人体検知センサ16により人が検知されてい」る場合に甲1停止動作をする点で相違する。
(5)発明特定事項Eについて
発明特定事項Eは、「前記所定の機能が作動した場合とは、前記トイレ装置が前記トイレ装置に設けられた便座及び便蓋の少なくともいずれかを開閉する開閉機能と、前記トイレ装置が前記便座への着座を検知する着座検知機能と、前記トイレ装置における人体の局部を洗浄する局部洗浄機能と、前記トイレ装置の便器に対して水を吐水する便器洗浄機能と、の少なくともいずれかの機能が作動した場合であり、」というものである。
発明特定事項Eは、発明特定事項D2における「所定の機能が作動した場合」をさらに限定するものであるから、「所定の機能が作動した場合」に対応する構成を備えない甲1発明には、当然、発明特定事項Eに対応する構成も存在しない。
(6)発明特定事項Fについて
発明特定事項Fは、「前記所定の操作が行われた場合とは、前記遠隔制御装置の操作部が操作された場合と、前記トイレ装置に設けられた便座及び便蓋の少なくともいずれかが人の操作により操作された場合と、の少なくともいずれかの場合である、」というものである。
発明特定事項Fは、発明特定事項D2における「所定の操作が行われた場合」をさらに限定するものであるから、「所定の操作が行われた場合」に対応する構成を備えない甲1発明には、当然、発明特定事項Fに対応する構成も存在しない。
(7)一致点及び相違点
前記(1)~(6)によれば、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「トイレ空間内に設けられるトイレ装置と、前記トイレ装置からの電波により給電される遠隔制御装置と、を有するワイヤレス給電システムであって、
人の存在を検知する人体検知センサと、
前記遠隔制御装置に対して電波を送信することで前記遠隔制御装置に対して第1電力量をワイヤレス給電する給電部と、を備え、
前記第1電力量未満の第2電力量以下でのワイヤレス給電を実行する、又は、前記遠隔制御装置に対するワイヤレス給電を停止する
ワイヤレス給電システム。」である点。
〈相違点1〉
本件発明の「人体検知センサ」の検知領域は「前記トイレ装置の前方の領域」であるのに対し、甲1発明の「人体検知センサ16」の検知領域は「本体2の近く」である点。(発明特定事項B)
〈相違点2〉
本件発明が本件停止動作を行うのは、「前記給電部は、人が前記トイレ装置の前方の領域以外に存在し、前記人体検知センサが前記トイレ空間内の人の存在を検知しない場合であって、」「前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対する人の行為によって前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかにおける所定の機能が作動した場合と、前記トイレ装置及び前記遠隔制御装置の少なくともいずれかに対して所定の操作が行われた場合と、の少なくともいずれかの場合」であるのに対し、甲1発明が甲1停止動作を行うのは、あくまで「人体検知センサ16により人が検知されてい」る場合であり、人の行為や操作を検出して充電の停止を行うものではない点。(発明特定事項D1、D2)
これに付随する相違点として、本件発明は、「前記所定の機能が作動した場合とは、前記トイレ装置が前記トイレ装置に設けられた便座及び便蓋の少なくともいずれかを開閉する開閉機能と、前記トイレ装置が前記便座への着座を検知する着座検知機能と、前記トイレ装置における人体の局部を洗浄する局部洗浄機能と、前記トイレ装置の便器に対して水を吐水する便器洗浄機能と、の少なくともいずれかの機能が作動した場合であ」ることが特定されているのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点(発明特定事項E)、及び、本件発明は、「前記所定の操作が行われた場合とは、前記遠隔制御装置の操作部が操作された場合と、前記トイレ装置に設けられた便座及び便蓋の少なくともいずれかが人の操作により操作された場合と、の少なくともいずれかの場合である」ことが特定されているのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点(発明特定事項F)。
4 相違点についての判断
本件停止動作が実行されるのは、発明特定事項D1により特定されるとおり、「人が前記トイレ装置の前方の領域以外に存在し、前記人体検知センサが前記トイレ空間内の人の存在を検知しない場合」であって、かつ、発明特定事項D2により特定されるとおり、「トイレ装置」若しくは「遠隔制御装置」に対する「人の行為によって」「所定の機能が作動した場合」、又は、「トイレ装置」若しくは「遠隔制御装置」に対して「所定の操作が行われた場合」である。
そして、本件発明の「人体検知センサ」は、発明特定事項Bにより特定されるとおり、「トイレ装置の前方の領域の人の存在を検知する」ものであることをも考慮すると、本件停止動作が実行されるのは、「人体検知センサ」による検知の対象となる「トイレ装置の前方の領域」には人が居らず(発明特定事項B、D1)、かつ、「トイレ装置」又は「遠隔制御装置」に所定の行為又は操作を行える位置に人が居る(発明特定事項D2)場合であると解され、「トイレ装置」又は「遠隔制御装置」に所定の行為又は操作が行える位置として本件発明が想定しているのは、「トイレ装置の前方の領域」ではないと理解される。
上記理解によれば、前述の想定される領域は、発明特定事項B、D1及びD2のそれぞれが独立に特定しているのではなく、これら発明特定事項により一体的に特定されていると解されるから、発明特定事項D1及びD2に係る相違点2を論じる際には、発明特定事項Bに係る相違点1をも同時に論じる必要がある。
(1)甲2技術の認定
本件発明と甲1発明との相違点である相違点1及び相違点2に係る構成が、甲2に開示されているかについて検討するために、まず、甲2技術を認定する。
前記1(2)の記載によれば、甲2には、次の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲2技術を以下の甲2a~甲2fに分説し、分説記号によって参照する。
甲2a 高精度に室温を検知して便座の温度制御を高精度に行うことにより、省エネルギーを達成することができる衛生洗浄装置であって、(【0007】)
甲2b 衛生洗浄装置100は、トイレ室への入室及び退室を検出する人体検出器600aを有し、人体検出器600aは、トイレ室への使用者の存否を検出し、(【0019】)
甲2c 人体検出器600aは、第1遠隔器600に設けられ、(【0019】)
甲2d 衛生洗浄装置100は、便座温度の設定や洗浄開始又は停止等の各種操作を行う第2遠隔器300を有し、(【0025】)
甲2e 人体検出器600aに異常がないか否かを判定し、具体的には、人体検出器600aからの入室信号を受信する前に、着座センサ610が便座400への着座を検出したり、洗浄装置や乾燥装置のオン又はオフ操作等の各種操作入力が行われたりした場合は、制御部90は、人体検出器600a以外で入室が検出されたものと判定し、(【0059】)
甲2f このとき、制御部90は、ヒータ温度検知部401aで検知された便座400の温度のみに基づいて便座ヒータ450への通電量を制御する技術。(【0059】)
(2)甲2技術における相違点1及び相違点2に係る構成の有無
甲2技術の「人体検出器600a」は、「トイレ室への使用者の存否を検出」する(甲2b)に過ぎず、「衛生洗浄装置100」の前方の領域のみに限定して人体の存否を検出するものではなく、ひいては、甲2技術が「人体検出器600a」に検知されないが「衛生洗浄装置100」に対して所定の行為又は操作を行える位置に人が居るか否かを検知するものでもない。
また、甲2技術においては、「人体検出器600aからの入室信号を受信する前に、着座センサ610が便座400への着座を検出したり、洗浄装置や乾燥装置のオン又はオフ操作等の各種操作入力が行われたりした場合は、制御部90は、人体検出器600a以外で入室が検出されたものと判定」する(甲2e)が、これは、「人体検出器600aに異常がないか否かを判定」するための動作である(甲2e)。したがって、「人体検出器600a」からの入室信号が得られない場合は、「人体検出器600a」に検知されない位置に人が居ることを想定するのではなく、「人体検出器600a」に異常があることを想定すると解される。
以上によれば、甲2技術は、「衛生洗浄装置100」の前方に人体が検出されておらず、かつ、「衛生洗浄装置100」等に所定の行為又は操作を行える位置に人が居ることを検知するものではないから、相違点1及び相違点2に係る構成を有するとは認められない。
(3)相違点1及び相違点2に係る構成の容易想到性
前記(2)のとおりであり、甲1発明の「人体検知センサ16」も「本体2」の前方の領域のみに限定して人体の検知を行うものではないから、仮に甲1発明に甲2技術を組み合わせたとしても、相違点1及び相違点2に係る構成には到達し得ない。
(4)申立人の主張についての判断
申立人は、相違点2について、次のように主張する。
相違点について検討するに、甲2によれば、「【請求項2】…使用者が前記便座に着座したことを検知する着座検知器と、使用者が前記衛生洗浄装置の操作を行う操作部と、を備え、前記退室検出器は前記トイレ室内の人体の存否を検出する人体検出器として機能し、前記制御部は、前記人体検出器では人体の存否が検出されず、前記着座検知器で着座が検知されたか、または前記操作部により所定の操作が行われれば、人体の入室が検出されたものと判定し、前記着座検知器で離座が検知されたか、または前記操作部により所定の操作が行われれば、人体の退室が検出されたものと判定することを特徴とする、請求項1に記載の衛生洗浄装置。」と記載されている(当審注:下線は強調のために当審で付した。)ので、発明特定事項D1及びD2の場合には、人がトイレ空間内に存在するとみなすことは、当業者が容易に想到し得るものである。(申立書8~9頁)
上記主張を検討するに、甲2の「前記人体検出器では人体の存否が検出されず、前記着座検知器で着座が検知されたか、または前記操作部により所定の操作が行われれば、人体の入室が検出されたものと判定」する(請求項2)との動作は、「人体検出器600aに異常がないか否かを判定」する動作(甲2e)のことであると解される。このことは、甲2の請求項2の記載が、人体検出器では人体の存在が検出されず、ではなく、「前記人体検出器では人体の存否が検出されず」となっていることとも整合する。つまり、甲2の請求項2の記載は、人体検出器で検出できる人体がなかったことを前提としたものではなく、人体検出器での検出動作ができなかったことを前提としたものであると解される。
そうすると、前記(2)のとおり、甲2技術は相違点1及び相違点2に係る構成を有しないから、甲1発明に甲2技術を組み合わせたとしても、前記(3)のとおり、相違点1及び相違点2に係る構成には到達し得ない。
よって、申立人の主張は採用できない。
5 申立理由についての判断の小括
前記4のとおりであるから、本件発明は、当業者が甲1発明及び甲2技術に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。
よって、申立人の主張する申立理由には理由がない。
第5 むすび
前記第4によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701203