特許異議申立
2022-700120
携帯機器用のマイクロブレーカ及び携帯機器用のマイクロブレーカの製造方法
- 審判番号
- 2022-700120
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-523297
- 登録番号
- 6918298
- 請求日
- 2022年02月10日
- 審決日
- 2022年09月30日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大塚テクノ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人豊栖特許事務所
- 【権利者代理人】豊栖 康司
- 【権利者代理人】豊栖 康弘
- 【異議申立人】ボーンズ 株式会社
- 【異議申立人代理人】住友 慎太郎
- 【異議申立人代理人】浦 重剛
- 【異議申立人代理人】苗村 潤
- 【異議申立人代理人】石原 幸信
- 審判長/審判官
- 審判長 平田 信勝
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 段 吉享
- 分類
- P1652.121-YAA(H01H) / P1652.16 -YAA(H01H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6918298号発明「携帯機器用のマイクロブレーカ及び携帯機器用のマイクロブレーカの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6918298号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔10~14、16~18〕について訂正することを認める。
特許第6918298号の請求項15に係る特許を維持する。
特許第6918298号の請求項10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6918298号の請求項1~22に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)2月3日(優先権主張2016年(平成28年)6月14日)を国際出願日として出願され、令和3年7月27日にその特許権の設定登録がされ、令和3年8月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和4年2月10日に特許異議申立人ボーンズ株式会社(以後、「異議申立人」という。)により請求項10及び15に係る特許について特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年5月16日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和4年7月21日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行ったものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりのものである(下線は訂正箇所)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11に「請求項10に記載される携帯機器用のマイクロブレーカであって、」と記載されているのを、「電池と直列に接続される携帯機器用のマイクロブレーカであって、弾性アームの先端に可動接点を設けてなる可動接点板と、前記可動接点との対向位置に固定接点を設けてなる固定接点板と、設定温度において前記可動接点を前記固定接点から離してオフ状態とするバイメタルと、前記固定接点板と前記可動接点板とに接続してなる瞬断防止用のPTCと、前記可動接点板と前記固定接点板を固定しているケースを備え、前記瞬断防止用のPTCが前記ケースの外部に配置されており、」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項14、16~18も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12に「請求項10又は11に記載されている携帯機器用のマイクロブレーカであって、」と記載されているのを、「電池と直列に接続される携帯機器用のマイクロブレーカであって、弾性アームの先端に可動接点を設けてなる可動接点板と、前記可動接点との対向位置に固定接点を設けてなる固定接点板と、設定温度において前記可動接点を前記固定接点から離してオフ状態とするバイメタルと、前記固定接点板と前記可動接点板とに接続してなる瞬断防止用のPTCと、前記可動接点板と前記固定接点板を固定しているケースを備え、前記瞬断防止用のPTCが前記ケースの外部に配置されており、」に訂正する(請求項12の記載を引用する請求項13、14、16~18も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1ないし13のいずれかに記載される携帯機器用のマイクロブレーカであって、」と記載されているのを、「請求項1ないし9、又は11ないし13のいずれかに記載される携帯機器用のマイクロブレーカであって、」に訂正する(請求項14の記載を引用する請求項16~18も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項16に「請求項1ないし15のいずれかに記載される携帯機器用のマイクロブレーカであって、」と記載されているのを、「請求項1ないし9、又は11ないし15のいずれかに記載される携帯機器用のマイクロブレーカであって、」に訂正する(請求項16の記載を引用する請求項17、18も同様に訂正する。)。
(6)一群の請求項について
訂正前の請求項10~14、16~18について、訂正前の請求項11~14及び16~18は請求項10を直接的又は間接的に引用しているものであり、訂正前の請求項12~14及び16~18は請求項11を直接的又は間接的に引用しているものであり、訂正前の請求項13、14及び16~18は請求項12を直接的又は間接的に引用しているものであり、訂正前の請求項17及び18は請求項16を直接的又は間接的に引用しているものであり、訂正前の請求項16~18は請求項14を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~5によって訂正される請求項10~12、14及び16に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項10~14及び16~18に対応する訂正後の請求項10~14及び16~18は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求による訂正は一群の請求項10~14、16~18に対してされたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項10を削除するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項1は、請求項10を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項11が請求項10の記載を引用する記載であったものを、訂正事項1によって請求項10が削除されたことにともない、引用関係を解消し請求項10の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるといえる。
また、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項12が請求項10又は11の記載を引用する記載であったものを、訂正事項1によって請求項10が削除されたことにともない、引用関係を解消し請求項10の記載を引用していたものを独立形式請求項へ改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものといえる。また、訂正事項3は、訂正前の請求項12が請求項10、11を引用していたものを請求項10のみを引用するものに減縮したともいえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
そして、訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項14が「請求項1ないし13のいずれかに記載される携帯機器用のマイクロブレーカであって」と規定したところ、訂正事項1によって請求項10が削除されたことにともない、訂正後の請求項14では削除された請求項10に従属しないように改めるための訂正であって、不明瞭な記載の釈明を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項4は、請求項14を訂正事項1によって削除された請求項10に従属しないように改めるための訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項16が「請求項1ないし15のいずれかに記載される携帯機器用のマイクロブレーカであって」と規定したところ、訂正事項1によって請求項10が削除されたことにともない、訂正後の請求項16では削除された請求項10に従属しないように改めるための訂正であって、不明瞭な記載の釈明を目的とするものであるといえる。
また、訂正事項5は、請求項16を訂正事項1によって削除された請求項10に従属しないように改めるための訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおり、訂正事項1~5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とする訂正事項3により訂正される請求項12については、特許異議の申立てがされていない請求項であることから特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件が課せられるが、訂正後の請求項12について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項10~14、16~18について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
訂正前の請求項10に係る特許に対して当審が令和4年5月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(拡大先願)本件特許の請求項10に係る発明は、本件特許の優先権主張の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた次の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項10に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
・先願1:特願2016-18490号(特開2017-139104号公報)(異議申立人の提出した甲第1号証)
第4 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正請求によって請求項10が削除されたことにより、取消理由通知に記載した取消理由はその対象が存在しないものとなった。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)請求項15に係る発明
本件特許の請求項15に係る発明は、特許請求の範囲の請求項15に記載された次のとおりものである(以下、「本件発明15」という。なお、特許請求の範囲の請求項15は、本件訂正請求による訂正の対象に含まれていない。)。
[本件発明15]
「電池と直列に接続される携帯機器用のマイクロブレーカであって、
弾性アームの先端に可動接点を設けてなる可動接点板と、
前記可動接点との対向位置に固定接点を設けてなる固定接点板と、
設定温度において前記可動接点を前記固定接点から離してオフ状態とするバイメタルと、
前記固定接点板と前記可動接点板とに接続してなる瞬断防止用のPTCと、
前記瞬断防止用のPTCを前記可動接点板と前記固定接点板に接続するリードワイヤーを備え、
前記リードワイヤーは、両端をハンダ付け、溶接、接着の何れか前記瞬断防止用のPTCと前記可動接点板と前記固定接点板とに接続されてなることを特徴とする携帯機器用のマイクロブレーカ。」
(2) 甲第2号証に記載の事項及び発明
ア 異議申立人は、本件発明15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると主張し、その証拠として提出した甲第2号証(特開昭62-222529号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
本発明は温度過昇防止のためのサーモスイッチ、殊にいったん動作して回路を開いた後は電源をオフしない限り自動復帰しない自己保持機能を有しているサーモスイッチに関するものである。」(第1頁右下欄第4~8行)
(イ)「【背景技術】
ヘアードライヤー等の発熱機器において、ヒータ等の負荷が異常発熱を起こした場合、通常サーモスイッチが切れるようになっているのであるが、異常発熱の原因が解除されていないのにサーモスイッチが復帰すると、再度異常発熱を起こすことになるために、いったん作動して切れると、電源スィッチを切らない限り復帰しないようにした自己保持型のサーモスイッチが特開昭54-140977号公報に開示されている。
これは第23図以下に示すように、一対の端子1,2と、端子1によって基端が支持されている可動接点板3と、端子2に固着されて可動接点板3の可動接点30に接触する固定接点20と、両端が可動接点板3における一対の垂下片37,38で支持されたバイメタル4、そして正特性サーミスタにて形成されているとともに両端子1,2に接続されている抵抗発熱体5とからなるもので、常時は可動接点板3が両端子1,2間を短絡しているものの、異常発熱があった場合にはバイメタル4がこの熱を受けて反転して可動接点板3を駆動し、固定接点20と可動接点30とを切り離す。そしてこれ以後は負荷に比して十分大きな抵抗値を有している抵抗発熱体5を通じて負荷に微弱電流が流れるものとして、全体の発熱量を抑えると共に、バイメタル4の近傍に位置している抵抗発熱体5の熱によって、バイメタル4の復帰、つまりは可動接点板3の復帰を妨げるものである。」(第1頁右下欄第9行~第2頁左上欄第16行)
(ウ)「以下本発明を図示の実施例に基づいて詳述すると、第1図乃至第6図は一実施例を示すもので、このサーモスイッチは、一対の端子1,2と、可動接点板3、バイメタル4、正特性サーミスタにて形成されている抵抗発熱体5、そして絶縁基台6とから構成されている。
端子1はその上面に一対の突起12,13を有するとともに、両突起12,13間に開口14を備え、更に両側縁からは下方に固定片15,15を延出したものであり、端子2はその上面一端に固定接点20が固着されるとともに、両側縁から下方に固定片25,25を延出したものである。そしてここにおける固定片25,25はその先端から更に接触片26,26が一体に延出されたものとなっている。
可動接点板3はその基端が端子1の上面に溶接固着されるもので、突起13のための逃げ孔32を備えているとともに、下方に突出する半球状の突部31を備え、先端下面には可動接点30が固着されている。
バイメタル4は、両端が可動接点板3に支持されていた前記従来例と異なり、端子1の突起12,13にて両端が支持されて可動接点板3と端子1との間に配設されたものとなっており、更に常時は端子1の開口14内に中央部が入ることで、端子1上面から可動接点板3までの高さを低くすることができるようにされている。
正特性サーミスタからなる抵抗発熱体5であるが、これは絶縁基台6を介して両端子1,2に取り付けられている。すなわち、絶縁基台6は上下に貫通した凹所60を備えるとともに、両端の側面に位置決め及びずれ止め用の切欠61,61を備えたものとなっており、絶縁基台6よりやや薄い厚みを有するとともに上下両面が電極50,50とされている抵抗発熱体5を凹所60に収容した状態で、両端子1,2における固定片15,25を各切欠61,61位置においてかしめれば、両端子1,2が絶縁基台6を介して機械的に連結されるものであり、また固定片25から延出されている接触片26が抵抗発熱体5の下面の電極50に接するとともに、その弾性によって端子1の下面に抵抗発熱体5の上面の電極50を押し付ける。両端子1,2の機械的連結と同時に、両端子1,2と抵抗発熱体5との電気的接続がなされるわけである。
しかしてこのサーモスイッチにおいては、前述のように、通常時はバイメタル4が下方に湾曲した状態にあって開口14内に入り込み、可動接点30と固定接点20との接触を許しているが、負荷の温度過昇があった場合には、第6図に示すように、熱を受けて反転して上方へと湾曲したものとなるバイメタル4が、可動接点板3の突部31を押してこれを押し上げ、可動接点30と固定接点20とを切り離す。そしてこれ以後は、抵抗発熱体5を通じて両端子1,2開に電流が流れるとともに、抵抗発熱体5からの熱によってバイメタル4はその反転状態を維持し、可動接点板3の復帰を妨げる。
第7図乃至第9図に示す実施例は、正特性サーミスタからなる抵抗発熱体5と、両端子1,2との電気的接続に関する構成が上記実施例と異なっているものであって、ここでは端子2の固定接点20側の端縁から接触片26を垂下するとともに、端子1の開口14の開口縁から接触片16を垂下し、絶縁基台6の上方にのみ開口している凹所60内に、両端面が電極50,50とされている抵抗発熱体5と共に入れられる上記両接触片16,26が、抵抗発熱体5の両電極50,50に接触するようにしている。
また第10図乃至第13図に示す実施例では、正特性サーミスタからなる抵抗発熱体5の両側面を電極50,50とし、各端子1,2には絶縁基台6の凹所60内において両電極50,50に夫々接触する接触片16,26を設けている。」(第2頁左下欄第8行~第3頁左下欄第1行)
(エ)「更に第19図乃至第22図に示す実施例では、抵抗発熱体5として、両端からリード52,52が導出されている固定抵抗を用い、絶縁基台6に形成された上下に貫通する凹所60に抵抗発熱体5を収容するとともに、各端子1,2の固定片15,25をかしめる際に、両リード52,52を固定片15,25に接触させている。」(第3頁左下欄第17行~右下欄第3行)
「第19図
[図:0001393098000001.jpg]
」
「第20図
[図:0001393098000002.jpg]
」
「第21図
[図:0001393098000003.jpg]
」
「第22図
[図:0001393098000004.jpg]
」
イ 上記甲第2号証に記載の事項より、甲第2号証には第19図~22図に示された実施例として、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
[甲2発明]
「一対の端子1,2と、可動接点版3、バイメタル4、両端からリード52,52が導出されている固定抵抗からなる抵抗発熱体5、絶縁基台6とから構成され、負荷が異常発熱を起こした場合切れるようになっているサーモスイッチであって、
端子1は、上面に一対の突起12,13を有するとともに、両側縁から下方に固定片15,15を延出したものであり、
端子2は、上面の一端に固定接点20が固着されるとともに、両側縁から下方に固定片25,25を延出したものであり、
可動接点板3は、基端が端子1の上面に溶接固着され、先端下面には可動接点30が固着されたものであり、
絶縁基台6は、上下に貫通した凹所60を備えるとともに、両端の側面に位置決め及びずれ止め用の切欠61,61を備えたものであり、両端子1,2における固定片15,25を各切欠61,61位置においてかしめることにより、両端子1,2が絶縁基台6を介して機械的に連結され、
両端からリード52,52が導出されている固定抵抗からなる抵抗発熱体5を絶縁基台6の凹所60に収容するとともに、各端子1,2の固定片15,25をかしめる際に、両リード52,52を固定片15,25に接触させ、
バイメタル4は、端子1の突起12,13にて両端が支持されて可動接点板3と端子1との間に配設されるものであり、負荷の温度過昇があった場合には、バイメタル4が熱を受けて反転して上方へと湾曲し、可動接点板3を押し上げ、可動接点30と固定接点20とを切り離すことにより切れるようになっているサーモスイッチ。」
(3)対比
本件発明15と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「負荷が異常発熱を起こした場合切れるようになっているサーモスイッチ」は、サーキットブレーカであるから、本件発明15の「電池と直列に接続される携帯機器用のマイクロブレーカ」との対比において、「ブレーカ」の限度で一致する。
甲2発明の「可動接点板3」は、「基端が端子1の上面に溶接固着され」「バイメタル4が熱を受けて反転して上方へと湾曲し、可動接点板3を押し上げ」るように構成されるから、弾性を持つアーム状のものであり、また、「先端下面には可動接点30が固着され」るものであるから、先端に本件発明15の「可動接点」に相当する「可動接点30」を設けているものといえる。
したがって、甲2発明の「基端が端子1の上面に溶接固着され、先端下面には可動接点30が固着された」「可動接点板3」は、本件発明15の「弾性アームの先端に可動接点を設けてなる可動接点板」に相当する。
甲2発明の「固定接点20」は、本件発明15の「固定接点」に相当する。また、甲2発明の「固定接点20」は、「端子2」において「可動接点30と」「切り離す」ような可動接点30との対向する位置に「固着される」ものであるといえる。
したがって、甲2発明の「上面の一端に固定接点20が固着されるとともに、両側縁から下方に固定片25,25を延出した」「端子2」は、本件発明15の「前記可動接点との対向位置に固定接点を設けてなる固定接点板」に相当する。
甲2発明の「バイメタル4」が、「負荷の温度過昇があった場合には、」「熱を受けて反転して上方へと湾曲し、可動接点板3を押し上げ、可動接点30と固定接点20とを切り離す」ことは、本件発明15の「バイメタル」が、「設定温度において前記可動接点を前記固定接点から離してオフ状態とする」ことに相当する。
甲2発明の「固定抵抗からなる抵抗発熱体5」は、本件発明15の「瞬断防止用のPTC」との対比において「発熱抵抗体」との限度で一致する。また、甲2発明の「リード52,52」は、本件発明15の「リードワイヤー」に相当する。
甲2発明の「抵抗発熱体5」の「両リード52,52を固定片15,25に接触させ」ることは、固定片15は可動接点30が固着された可動接点板3が溶接固着された端子1の一部であり、固定片25は固定接点2が固着された端子2の一部であることから、本件発明15の「瞬断防止用のPTC」を「前記固定接点板と前記可動接点板とに接続してなる」こと、及び、「前記瞬断防止用のPTCを前記可動接点板と前記固定接点板に接続するリードワイヤーを備え」ることの対比において、「発熱抵抗体」を「前記固定接点板と前記可動接点板とに接続してなる」こと、及び、「発熱抵抗体」を「前記可動接点板と前記固定接点板に接続するリードワイヤーを備え」ることの限度で一致し、また、本件発明15の「前記リードワイヤーは、両端をハンダ付け、溶接、接着の何れか前記瞬断防止用のPTCと前記可動接点板と前記固定接点板とに接続されてなる」こととの対比において、「前記リードワイヤーは、両端を発熱抵抗体と前記可動接点板と前記固定接点板とに接続されてなる」ことの限度で一致する。
以上のとおりであるから、本件発明15と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点]
「ブレーカであって、
弾性アームの先端に可動接点を設けてなる可動接点板と、
前記可動接点との対向位置に固定接点を設けてなる固定接点板と、
設定温度において前記可動接点を前記固定接点から離してオフ状態とするバイメタルと、
前記固定接点板と前記可動接点板とに接続してなる発熱抵抗体と、
前記発熱抵抗体を前記可動接点板と前記固定接点板に接続するリードワイヤーを備え、
前記リードワイヤーは、両端を発熱抵抗体と前記可動接点板と前記固定接点板とに接続されてなる
ブレーカ。」
[相違点1]
ブレーカについて、本件発明15は、「電池と直列に接続される携帯機器用のマイクロブレーカ」であるのに対し、甲2発明は、「負荷が異常発熱を起こした場合切れるようになっているサーモスイッチ」である点。
[相違点2]
本件発明15は、発熱抵抗体が「瞬断防止用のPTC」であり、リードワイヤーが「両端をハンダ付け、溶接、接着の何れか前記瞬断防止用のPTCと前記可動接点板と前記固定接点板とに接続されてなる」のに対し、甲2発明は、発熱抵抗体が「固定抵抗からなる抵抗発熱体5」であり、「リード52,52」が「各端子1,2の固定片15,25をかしめる際に、両リード52,52を固定片15,25に接触させ」るものである、すなわち、固定抵抗からなる抵抗発熱体5のリード52,52の一方のリード52の一端が固定抵抗からなる抵抗発熱体5に接続され、他端が端子1の固定片15と接触することにより接続されるとともに、他方のリード52の一端が固定抵抗からなる抵抗発熱体5に接続され、他端が端子2の固定片25と接触することにより接続されているものである点。
(4)判断
ア 相違点1について
甲2発明は、ヘアードライヤー等の発熱機器において、ヒータ等の負荷が異常発熱を起こした場合、通電を遮断するサーモスイッチにおいて、異常発熱の原因が解除されていないのにサーモスイッチが復帰することを防ぐために、いったん作動して切れると電源スイッチを切らない限り復帰しないようにした自己保持型のサーモスイッチに関する発明であり(上記(2)アの摘記事項(ア)及び(イ)を参照。)、適用機器はヘアードライヤー等の発熱機器であり、本件発明15の「携帯機器」とは対象が異なる。
また、本件発明15の「PTC」が発熱によるバイメタルの復帰を妨げるとともに、携帯機器を落下させる等の衝撃でマイクロブレーカの瞬断が発生しうるという、携帯機器用のマイクロブレーカであること特有の課題(小型で衝撃により瞬断を起こしやすい)を解決するものでもあるのに対し、甲2発明の「抵抗発熱体5」は、バイメタル4が異常発熱の熱を受けて固定接点20と可動接点30とを切り離した後、抵抗発熱体5に微弱電流が流れるものとして、全体の発熱量を抑えるとともに、抵抗発熱体5の熱によってバイメタル4の復帰を妨げることを目的としており、抵抗発熱体の用途も異なっている。
このように、甲2発明の「サーモスイッチ」と本件発明15の「マイクロブレーカ」は、適用対象及び用途が異なることから、甲2発明の「サーモスイッチ」を小型化し携帯機器用の「マイクロブレーカ」とすることは、当業者であっても容易に想到し得ないといえる。
イ 相違点2について
甲第2号証には、サーモスイッチの抵抗発熱体5を正特性サーミスタ(本件発明15のPTCに相当する。)とした実施例が記載されている(第1図~第13図に示されたもの)。
しかしながら、かかる甲第2号証に記載された抵抗発熱体5を正特性サーミスタとした実施例は、正特性サーミスタを直方体とし、直方体の上下面、両端面あるいは両側面を電極50,50とした上で、絶縁基台6の凹所60に抵抗発熱体5を収容した状態で、両端子1,2における固定片15,25を絶縁基台6の切欠61,61位置においてかしめることにより、両端子1,2が絶縁基台6を介して機械的に連結されると同時に、両端子1,2と抵抗発熱体5との電気的接続がなされるように、端子2の固定片25から下面の電極に接触する接触片26を延出し、端子1の下面を上面の電極50に接触する構成とし(第1図~第6図)、または、端子1,2のそれぞれに凹所60内で抵抗発熱体5の両端面あるいは両側面の電極50,50に接触する接触片16,26を設けた構成とした(第7図~第9図、第10図~第13図)ものである(摘記事項(2)ア(ウ))。
このように、甲第2号証に記載された抵抗発熱体5を正特性サーミスタとした実施例は、両端子1,2が絶縁基台6を介して機械的に連結されると同時に、両端子1,2と抵抗発熱体5との電気的接続がなされるための特有の構成を採用しているといえるから、抵抗発熱体5として採用した正特性サーミスタの両端子を端子1,2から延出して設けられた接触片16,26に代えて、絶縁基台6へカシメによる両端子1,2の機械的に連結することに加えて、さらにその後にリードワイヤーによって端子1,2に接続するという構成を想定しているとはいえず、甲2発明において、抵抗発熱体5を正特性サーミスタとした上で、正特性サーミスタの両端子50,50と端子1,2とをリードワイヤーによって接続する動機付けはない。
ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は特許異議申立書において、上記相違点2に関し、「相違点2: 本件特許発明2(当審注;本決定における本件発明15)では、N.前記リードワイヤーは、両端をハンダ付け、溶接、接着の何れか前記瞬断防止用PTCと前記可動接点板と前記固定接点板とに接続されてなるのに対して、甲2発明では、前記リード52の両端の接続手法が不明である点。」(第19頁第19~22行)とした上で、次のように主張する。
「リードの端部を他の部品と電気的に接続する手法として、ハンダ付け、溶接、接着は、通常用いられている周知な手法であって、甲2発明においてリード52の両端の接続にハンダ付け、溶接、接着の周知技術を適用するのは、通常なし得る事項である。」(第20頁第6~9行)
しかしながら、上記イで説示のとおり、そもそも甲2発明において、抵抗発熱体5を正特性サーミスタとした上で、正特性サーミスタの両端子50,50と端子1,2とをリードワイヤーによって接続する動機付けはないというべきであるから、異議申立人の上記主張は理由がない。
エ 小括
上記ア~ウのとおりであるから、本件発明15は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
上記「第4」のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件請求項10は、上記「第2」及び「第4 1」のとおり、訂正により削除された。これにより、異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項10に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700120