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特許異議申立

2025-700523

樹脂フィルム、積層体及び包装製品

審判番号
2025-700523
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-131571
登録番号
7584021
請求日
2025年05月14日
審決日
2026年03月10日
公報発行日
2026年06月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】宮嶋 学
  • 【権利者代理人】浅野 真理
  • 【権利者代理人】高田 泰彦
  • 【権利者代理人】柏 延之
  • 【権利者代理人】鈴木 孝典
  • 【異議申立人】山田 彰彦
審判長/審判官
  • 審判長 辰己 雅夫
  • 審判官 ▲吉▼澤 英一
  • 審判官 浅野 裕之
分類
P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7584021号発明「樹脂フィルム、積層体及び包装製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7584021号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第7584021号の請求項1、2、4~6に係る特許を維持する。 特許第7584021号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7584021号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成31年3月28日を出願日とする特願2019-64666号の一部を、令和5年8月10日に新たな特許出願(特願2023-131571号)としたものであって、令和6年11月7日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月15日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、令和7年5月14日に特許異議申立人 山田 彰彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~6)がされたものである。 特許異議の申立てにおける手続の経緯は、次のとおりである。 令和7年 8月26日付け:取消理由通知書 同年10月23日 :意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年11月28日付け:通知書(申立人宛て) なお、上記通知書に対する申立人の応答はなかった。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 上記訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「前記樹脂フィルムの厚さが、20μm以上200μm以下である、樹脂フィルム。」との記載を、「前記樹脂フィルムの厚さが、20μm以上200μm以下であり、分散度が4.5以下である、樹脂フィルム。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4における「請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂フィルムと、」との記載を、「請求項1又は2に記載の樹脂フィルムと、」に訂正する。 なお、本件訂正は、訂正前の請求項1~6について、請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 本件訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1で規定する樹脂フィルムを、「分散度が4.5以下」のものに限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0054】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲が減縮されているから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項3を削除することに伴い、訂正前の請求項4において、引用先の請求項のうち請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、訂正前の請求項4において、引用先の請求項のうち請求項3を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲が減縮されているから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 よって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 単層の樹脂フィルムであって、 前記樹脂フィルムが、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとからなり、 前記直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、 前記低密度ポリエチレンが、エチレン単独重合体であり、 前記樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、かつ、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず、 前記樹脂フィルムの厚さが、20μm以上200μm以下であり、 分散度が4.5以下である、樹脂フィルム。 【請求項2】 バイオマス度が5%以上である、請求項1に記載の樹脂フィルム。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 請求項1又は2に記載の樹脂フィルムと、基材層とを含む、積層体。 【請求項5】 請求項4に記載の積層体を含む、包装製品。 【請求項6】 前記樹脂フィルムが、前記包装製品の最内面に位置する、請求項5に記載の包装製品。」 第4 証拠方法、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立の理由の概要及び取消理由の概要 1 証拠方法 (1)申立書に添付した証拠方法 ・甲第1号証:特開2018-172151号公報 ・甲第2号証:特開2002-88168号公報 ・甲第3号証:「I'm greenTM Polyethylene-Low Density Safety Data Sheet」、ブラスケム社、2020年12月18日、1~7頁、及びその訳文 ・甲第4号証:本件特許発明の樹脂フィルムを用いた包装体の開口性評価 以下、「甲第1号証」~「甲第4号証」を「甲1」~「甲4」という。 (2)当審において職権により引用する証拠方法 ・参考文献1:エポリュー(R)(当審注:「(R)」は○囲みのRである。以下同様。)、株式会社プライムポリマー、https://www.primepolymer.co.jp/jp/product/pe/evolue/index.html ・参考文献2:エポリュー(R)(キャストフィルム)銘柄物性表、株式会社プライムポリマー、 https://www.primepolymer.co.jp/content/dam/mitsuichemicals/sites/primepolymer/documents/common/product/pe/evolue-fc_20240718.pdf 以下、「参考文献1」及び「参考文献2」を「参1」及び「参2」という。 2 申立書に記載した申立の理由の概要 申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(甲2を主引例とする進歩性) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 本件発明1では分散度を規定しておらず、あらゆる分散度のものを含んでいる。本件特許の実施例で課題を解決できることが示されているのは、分散度が3.5~4.2の厚みが不明の樹脂フィルムのみである。しかし甲4に示すように、分散度が4.7であって、厚みが薄い樹脂フィルムは課題を解決することができない。よって、発明の詳細な説明の記載を本件発明1の全範囲まで拡張することはできない。 3 取消理由の概要 当審において令和7年8月26日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、2及び4~6に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 本件発明1は、分散度を規定しておらず、あらゆる分散度のものを含んでいるところ、甲4の記載からみて、本件発明1に包含される分散度が4.7である樹脂フィルムは上記課題を解決することができると解することができない。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、分散度が4.7である樹脂フィルムの場合を含む本件発明1について、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。 第5 当審の判断 以下に述べるように、取消理由通知の取消理由及び申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1、2、4~6に係る特許を取り消すことはできない。 そして、本件特許の請求項3は、上記訂正請求書による訂正の請求により削除され、この請求項に係る特許に対する申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 1 取消理由1及び申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)について 上記第4の3(1)の取消理由1及び上記第4の2(1)の申立理由1は、いずれも甲1を主引例とする新規性及び進歩性についてのものであるので、まとめて検討する。 (1)甲1に記載された発明 甲1には、「[実施例1] <積層体1の作製> 基材層として2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm、東洋紡(株)製、T4102)を準備し、該ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にグラビア印刷により印刷層を形成し、続いて、MWOPニス(DICグラフィックス(株)製)を印刷層の一部分にコーティングして、熱軟化性樹脂層を形成した。また、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(密度:0.923g/cm3、MFR:3.5g/10分、バイオマス度:0%)80質量部と、ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)20質量部とを溶融混練して、樹組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成膜して、シーラント層用のポリエチレンフィルム1(厚さ30μm、バイオマス度:19%)を得た。次に、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの熱軟化性樹脂層面と、シーラント層用のポリエチレンフィルム1とを2液硬化型接着剤(ロックペイント(株)製、RU-40/H-5)を用いて貼り合わせて、基材層、印刷層、熱軟化性樹脂層、接着剤層、およびシーラント層が順に積層された積層体1を得た。」(【0056】)と記載され、「[比較例1] <積層体3の作製> シーラント層用のポリエチレンフィルム1の化石燃料由来の低密度ポリエチレンをC6-LLDPE(密度:0.929g/cm3、MFR:2.6g/10分)に変更した以外は実施例1と同様にして、積層体3を得た。なお、C6-LLDPEは、コモノマーにヘキセン-1を用いたものである。」(【0058】)と記載されている。 上記記載を基に、比較例1のシーラント層用のポリエチレンフィルムに着目すると、以下の発明が記載されている。 「化石燃料由来のC6-LLDPE(密度:0.929g/cm3、MFR:2.6g/10分)80質量部と、ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)20質量部とを溶融混練して、樹脂組成物を得、次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成膜して得られた、シーラント層用のポリエチレンフィルム(厚さ30μm、バイオマス度:19%)。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「シーラント層用のポリエチレンフィルム(厚さ30μm、バイオマス度:19%)」は、1種類の樹脂組成物を上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成膜しており、得られるフィルムが単層であることは明らかであるから、本件発明1の「単層の樹脂フィルム」に相当する。 (イ)甲1発明の「化石燃料由来のC6-LLDPE(密度:0.929g/cm3、MFR:2.6g/10分)」は、本件明細書の【0020】には、「直鎖状低密度ポリエチレンとは、・・・エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。いずれも、密度が930kg/m3未満のものを指す。直鎖状低密度ポリエチレンのコモノマーとなるα-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-ノネン、4-メチルペンテン等、及びこれらの混合物が挙げられる。」と記載されているところ、甲1の【0058】には、「C6-LLDPEは、コモノマーにヘキセン-1を用いたものである。」と記載されていることから、本件発明1の「直鎖状低密度ポリエチレン」に相当し、本件発明1の「前記直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり」との特定事項を満たす。 (ウ)甲1発明の「ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)」は、本件発明1の「低密度ポリエチレン」に相当する。 (エ)甲1発明は、「バイオマス由来の低密度ポリエチレン」を含み、かつ、「直鎖状低密度ポリエチレン」に相当する「C6-LLDPE」が化石燃料由来のものであり、バイオマス由来のものを含んでいないことが明らかであるから、本件発明1の「前記樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、かつ、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず」との特定事項を満たす。 (オ)甲1発明は、「シーラント層用のポリエチレンフィルム」の厚さが30μmであるから、本件発明1の「前記樹脂フィルムの厚さが、20μm以上200μm以下である」との特定事項を満たす。 そうすると、両者は次の点で一致する。 「単層の樹脂フィルムであって、 前記樹脂フィルムが、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとからなり、 前記直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、 前記樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、かつ、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず、 前記樹脂フィルムの厚さが、20μm以上200μm以下である、樹脂フィルム。」 そして、両者は次の点で相違する。 ・相違点1-1 低密度ポリエチレンに関して、本件発明1は「エチレン単独重合体」であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点 ・相違点1-2 樹脂フィルムに関して、本件発明1は「分散度が4.5以下」であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。 甲1発明は、シーラント層用のポリエチレンフィルムの分散度が不明であり、また、当該ポリエチレンフィルムの成分である「化石燃料由来のC6-LLDPE(密度:0.929g/cm3、MFR:2.6g/10分)」及び「低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)」の分散度も不明であるから、当該ポリエチレンフィルムの分散度が4.5以下である蓋然性が高いともいえない。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点である。 また、甲1は、「バイオマス度を向上させながら、電子レンジ加熱の際に包装袋の内圧を低下させることができる電子レンジ用包装袋および積層体を提供すること」(【0007】)が発明が解決しようとする課題であるところ、甲1発明である比較例1は、上記課題を解決しないものであり(【0058】~【0061】)、甲1及び他の証拠の記載を考慮しても、比較例1に基づいて、シーラント層用のポリエチレンフィルムに何らかの改変を行う動機付けがあるとはいえないから、甲1発明において、シーラント層用のポリエチレンフィルムの分散度を「4.5以下」とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 そして、本件発明1は、実施例1,2及び比較例1,2(本件明細書の【0074】~【0083】)の結果から、「二酸化炭素の排出を削減しつつ、包装製品の開口性に優れる樹脂フィルムを提供できる。」(同【0016】)という効果を奏するものである。 ウ 本件発明1についてのまとめ 上記ア及びイのとおりであるから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)本件発明2及び4~6について 本件発明2及び4~6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により、本件発明2及び4~6は甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)取消理由1及び申立理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由1及び申立理由1はその理由がない。 2 取消理由2及び申立理由3(サポート要件)について 上記第4の3(2)の取消理由2及び上記第4の2(3)の申立理由3は、いずれもサポート要件についてのものであるので、まとめて検討する。 (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って判断する。 (2)サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 本件明細書の【0009】によると、本件発明が解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、「化石燃料の使用量を削減することにより、二酸化炭素の排出を削減しつつ、包装製品の開口性に優れる樹脂フィルムを提供すること」である。 そして、本件明細書の【0020】には、「低密度ポリエチレンとは、高圧法エチレン単独重合体であり、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができる。直鎖状低密度ポリエチレンとは、チーグラーナッタ触媒に代表されるマルチサイト触媒又はメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を使用して重合した、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。」と記載され、同【0053】には、「別の実施形態において、樹脂フィルムは、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まない。これにより、包装製品の開口性を向上することができる。更に、樹脂フィルムは、・・・バイオマス由来の低密度ポリエチレンと化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンとからなることがより好ましい。これにより、包装製品の開口性をより向上することができる。」と記載されて、同【0054】には、「樹脂フィルムの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましく、4.0以下であることが更に好ましい。これにより、包装製品の開口性をより向上することができる。」と記載されており、「樹脂フィルムが、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとからなり、前記直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、前記低密度ポリエチレンが、エチレン単独重合体であり、前記樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、かつ、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含ま」ないこと、及び、「分散度が4.5以下である」ことの技術的意味が具体的に記載されている。 さらに、本件明細書の【0074】~【0084】及び【図4】には、バイオマス由来の低密度ポリエチレン及び化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンからなり、分散度が3.5である実施例1及び分散度が4.2である実施例2の単層の樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含むとともに、開口性評価が「◎」又は「○」であり、発明の課題を解決するのに対し、バイオマス由来の低密度ポリエチレン及びバイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンからなり、分散度が6.0である比較例1の単層の樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含むものの、開口性評価が「×」であり、発明の課題を解決せず、化石燃料由来の低密度ポリエチレン及び化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンからなる比較例2の単層の樹脂フィルムが、開口性評価が「◎」であるものの、バイオマス由来のポリエチレンを含まず、発明の課題を解決しないことを確認できる記載もある。 そうすると、当業者は、「樹脂フィルムが、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとからなり、前記直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、前記低密度ポリエチレンが、エチレン単独重合体であり、前記樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、かつ、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず、」「分散度が4.5以下である」樹脂フィルムにより、発明の課題を解決できると認識でき、本件発明1及び2は上記樹脂フィルムとして、本件発明4は上記樹脂フィルムを含む積層体として、本件発明5及び6は上記樹脂フィルムを含む包装製品として、さらに限定したものである。 よって、本件発明1、2及び4~6は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1、2及び4~6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3)取消理由2及び申立理由3についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由2及び申立理由3はその理由がない。 3 申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)について (1)甲2に記載された発明 甲2には、「高圧法低密度ポリエチレン(A)と直鎖状低密度ポリエチレン(B)との密度0.910~0.935g/cm3の組成物(C)からなることを特徴とするプロピレン重合体用熱融着フィルム。」(請求項1)と記載され、「実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。 (1)エチレン重合体-1(高圧法低密度ポリエチレン):三井化学社製(商品名;ミラソン、銘柄名;M12P)密度0.927(g/cm3)、MFR3.0(g/10分)融点114℃ (2)エチレン重合体-2(シングルサイト触媒重合直鎖状低密度ポリエチレン):三井化学社製(商品名;エボリュー、銘柄名;SP1540)密度0.915(g/cm3)、MFR4(g/10分)、融点113℃」(【0020】)と記載され、「実施例1 シール層となる熱融着フィルムの原料であるエチレン重合体-1:40重量%とエチレン重合体-2:60重量%をドライブレンドした組成物(C)と、補強層-1の原料であるエチレン重合体-3:30重量%とエチレン重合体-4:70重量%をドライブレンドした組成物と、補強層-2の原料であるエチレン共重合体-4:100重量%を夫々別々の押出機に供給し、Tダイ法によってシール層/補強層-1/補強層-2なる構成の3層共押出フイルムを得た。フィルムの総厚は30μmで、各槽の厚みはシール層:補強層:補強層=5:19:6μmであった。」(【0021】)と記載されている。 上記記載を基に、実施例1のシール層となる熱融着フィルムの原料である組成物(C)に着目し、請求項1のプロピレン重合体用熱融着フィルムに沿って認定すると、以下の発明が記載されている。 「高圧法低密度ポリエチレン(A)と直鎖状低密度ポリエチレン(B)との密度0.910~0.935g/cm3の組成物(C)からなるプロピレン重合体用熱融着フィルムであって、 高圧法低密度ポリエチレン(A)であるエチレン重合体-1(三井化学社製(商品名;ミラソン、銘柄名;M12P)密度0.927(g/cm3)、MFR3.0(g/10分)融点114℃):40重量%と、直鎖状低密度ポリエチレン(B)であるエチレン重合体-2(三井化学社製(商品名;エボリュー、銘柄名;SP1540)密度0.915(g/cm3)、MFR4(g/10分)、融点113℃):60重量%をドライブレンドした組成物(C)からなる、プロピレン重合体用熱融着フィルム。」(以下「甲2発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)甲2発明の「プロピレン重合体用熱融着フィルム」は、樹脂フィルムであることは明らかであるから、本件発明1の「単層の樹脂フィルム」と、「樹脂フィルム」である限りにおいて一致する。 (イ)甲2発明の「直鎖状低密度ポリエチレン(B)であるエチレン重合体-2(三井化学社製(商品名;エボリュー、銘柄名;SP1540)密度0.915(g/cm3)、MFR4(g/10分)、融点113℃)」は、本件明細書の【0020】には、「直鎖状低密度ポリエチレンとは、・・・エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。いずれも、密度が930kg/m3未満のものを指す。直鎖状低密度ポリエチレンのコモノマーとなるα-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-ノネン、4-メチルペンテン等、及びこれらの混合物が挙げられる。」と記載されているところ、参1及び参2から「三井化学社製(商品名;エボリュー、銘柄名;SP1540)」が、エチレンとヘキセン-1を共重合した直鎖状低密度ポリエチレンであることは明らかであるから、本件発明1の「直鎖状低密度ポリエチレン」に相当し、本件発明1の「前記直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり」との特定事項を満たす。 (ウ)甲2発明の「高圧法低密度ポリエチレン(A)であるエチレン重合体-1(三井化学社製(商品名;ミラソン、銘柄名;M12P)密度0.927(g/cm3)、MFR3.0(g/10分)融点114℃)」は、本件発明1の「低密度ポリエチレン」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 「樹脂フィルムであって、 前記樹脂フィルムが、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとからなり、 前記直鎖状低密度ポリエチレンが、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である、樹脂フィルム。」 そして、両者は次の点で相違する。 ・相違点2-1 樹脂フィルムに関して、本件発明1は「単層」であるのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。 ・相違点2-2 低密度ポリエチレンに関して、本件発明1は「エチレン単独重合体」であるのに対し、甲2発明はそのような特定がない点 ・相違点2-3 本件発明1は、「前記樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、かつ、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず、」と特定しているのに対し、甲2発明はそのような特定がない点 ・相違点2-4 樹脂フィルムに関して、本件発明1は「厚さが、20μm以上200μm以下であり、分散度が4.5以下」であるのに対し、甲2発明はそのような特定がない点 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点2-3について検討する。 甲2には、【0007】に高圧法低密度ポリエチレン(A)についての記載があるが、高圧法低密度ポリエチレン(A)としてバイオマス由来のものを用いることについては記載も示唆もない。 一方、甲1は、「バイオマス度を向上させながら、電子レンジ加熱の際に包装袋の内圧を低下させることができる電子レンジ用包装袋および積層体を提供すること」(【0007】)が発明が解決しようとする課題であり、甲1の請求項1には、「少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を用いた、電子レンジ用包装袋であって、前記包装袋が、蒸気抜け機構を備え、前記シーラント層が、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとからなる、電子レンジ用包装袋。」と記載され、同【0026】には「本発明による積層体は、電子レンジ用包装袋を製造する際に内容物側となるシーラント層を備えるものである。シーラント層は、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとからなるものである。」と記載されている。 しかし、甲1の【0026】には、「シーラント層には、樹脂材料として直鎖状低密度ポリエチレンを用いないで低密度ポリエチレンのみを用いることで、電子レンジで加熱した際にシーラント層に部分的な破壊が起こり、熱軟化性樹脂層から蒸気が十分に抜け易くなる。」と記載されており、同【0058】~【0061】には、比較例1において、直鎖状低密度ポリエチレンである「化石燃料由来のC6-LLDPE(密度:0.929g/cm3、MFR:2.6g/10分)」を含有するシーラント層を有する積層体3が上記課題を解決しないことが記載されている、すなわち、甲1に開示される技術においては、直鎖状低密度ポリエチレンを含有させることは想定していないといえる。そうすると、甲1に記載の事項を直鎖状低密度ポリエチレンを含有する甲2発明に適用する動機付けがあるとはいえないし、むしろ、阻害要因があるといえる。 したがって、甲2発明において、「前記樹脂フィルムが、バイオマス由来のポリエチレンを含み、かつ、バイオマス由来の直鎖状低密度ポリエチレンを含まず」との特定事項を有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。 そして、本件発明1は、上記1(2)イで検討したとおり、「二酸化炭素の排出を削減しつつ、包装製品の開口性に優れる樹脂フィルムを提供できる。」(本件明細書の【0016】)という効果を奏するものである。 ウ 申立人の主張について 申立人は申立書において、「バイオマス由来の高圧法低密度ポリエチレンと化石燃料由来の高圧法低密度ポリエチレンの併用を開示する甲第1号証に接した当業者であれば、化石燃料由来の原料の一部をバイオマス由来のものに置き換える際(即ち、バイオマス度を高める際)に、甲2発明1において高圧法低密度ポリエチレン(A)の少なくとも一部をバイオマス由来のものに置き換えてみることは容易に想到し得たことである。」(34頁24行~35頁2行)と主張している。 しかしながら、上記イで検討したとおり、甲1に記載の事項を直鎖状低密度ポリエチレンを含有する甲2発明に適用する動機付けがあるとはいえないことから、上記主張は採用できない。 エ 本件発明1についてのまとめ 上記ア~ウのとおりであるから、相違点2-1、2-2及び2-4について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2及び4~6について 本件発明2及び4~6は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により、本件発明2及び4~6は甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由2はその理由がない。 第6 結語 本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1、2及び4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項3に係る特許に対する申立ては、本件訂正により請求項3が削除されたため却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700523

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