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特許異議申立

2024-701081

口栓付きスタンディングパウチ

審判番号
2024-701081
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-071558
登録番号
7484363
請求日
2024年11月06日
審決日
2025年05月30日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【権利者代理人】▲高▼木 太尊
  • 【異議申立人】伊藤 直宏
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 神山 茂樹
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.121-Y (B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7484363号発明「口栓付きスタンディングパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7484363号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7484363号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、令和2年4月13日に出願され、令和6年5月8日に特許権の設定登録がされ、令和6年5月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年11月 6日 :特許異議申立人伊藤直宏(以下「申立人A」という。)による請求項1に係る特許に対する特許異議の申立て 令和6年11月12日 :特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人B」という。)による請求項1に係る特許に対する特許異議の申立て 令和7年 3月 4日付け:取消理由通知書 令和7年 4月30日 :特許権者による意見書の提出 第2 本件発明 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 2枚の側壁用積層体と1枚の2つ折りした底用積層体からなり、周縁がシールされているスタンディングパウチの、パウチ本体部の上辺にスパウトとキャップからなる口栓を設けた口栓付きスタンディングパウチであって、前記側壁用積層体および前記底用積層体とが、 少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層されてなり、前記バリアフィルム層が、密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからなり、 前記口栓が、密度0.96g/cm3以下、MFR5g/10min以上の高密度ポリエチレンからなることを特徴とする口栓付きスタンディングパウチ。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [引用文献一覧](申立人Aが提出した甲第○号証を以下「甲A○」という。) 甲A1:特開2001-301764号公報 甲A2:特開2001-225428号公報 甲A3:特開2018-167860号公報 2 引用文献に記載された事項、発明 (1)甲A1について ア 甲A1の記載 甲A1には以下の記載がある。なお、下線は当審において付した。以下同様。 「【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の酸素バリア性パウチの一例を示す概略図である。このパウチは、食品や飲料、医薬品の錠剤等を収容するパウチ本体2と該食品等を取り出すための口栓(スパウト)1とで構成されている。口栓1は、内容物の取り出し口1a、蓋(キャップ)1b、及びパウチ本体2と接合するための接合部1cとで構成されている。・・・ 【0008】口栓1の材料としては、用途に応じて適宜選択でき、例えば、ポリエチレン、・・・などが使用できる。・・・これらの中でも、パウチ本体2との接合性、シール強度などの点から、プラスチック、特に熱融着性に優れた線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好ましい。」 「【0011】パウチ本体2は、前面、背面を形成する2枚のフィルムと底面を形成するために折り込まれた1枚のフィルムからなり、これらのフィルムは、少なくとも透明ガスバリア性層と該層の内側に設けられた透明酸素吸収性フィルム層とを含む積層体で形成されている。 【0012】図2は本発明の酸素バリア性パウチのパウチ本体2を形成する積層体の一例を示す断面図である。この積層体においては、外側から、透明な基材フィルム層3、透明ガスバリア性層4、透明酸素吸収性フィルム層5及び熱融着性樹脂層6が、この順に積層されている。 【0013】基材フィルム層3を構成する基材フィルムとしては、透明で且つ自己支持性を有するものであればよく、例えば、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのフィルム)、ポリオレフィン系フィルム(例えば、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂などのフィルム)、ポリスチレン系フィルム、ポリアミドフィルムなどのプラスチックフィルム又はこれらの積層体などが挙げられる。・・・基材フィルム層3の厚みは、基材としての強度等を損なわない範囲で適宜選択でき、例えば6~70μm、好ましくは6~30μm程度である。」 「【0023】熱融着性樹脂層6を構成する熱融着性樹脂としては、・・・代表的な例として、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒法ポリエチレンなど)、・・・などが挙げられる。なお、口栓1との熱融着による接合性を高めるため、熱融着性樹脂層6を構成する樹脂と口栓1を構成する材料とを同一又は同種のものに設定するのが好ましい。例えば、本発明の好ましい態様では、口栓1と熱融着性樹脂層6を共に、熱融着性に優れしかも成形性に優れた線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン・・・で形成する。 【0024】熱融着性樹脂層6の厚みは、熱融着性等を損なわない範囲で選択でき、例えば10~200μm程度、好ましくは30~150μm程度である。・・・」 「【0026】パウチ本体2は、上記積層体を適宜の形状及び大きさに裁断し、底面用フィルムを折り込んだ後、熱融着性樹脂層6の熱融着性を利用して、袋状となるように端部を熱バーにより熱シールしたり、上記積層体を2枚重ね合わせて三方の端部を熱シールすることにより形成できる。・・・パウチ本体2の形状も特に制限されず、スタンディングパウチ、非スタンディングパウチ等の何れであってもよい。」 「【図1】 [図:0001424603000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001424603000002.jpg] 」 イ 甲A1に記載された発明 上記アの記載を参照すると、甲A1には以下の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されている。 「パウチ本体2と口栓1とで構成されるスタンディングパウチであって、口栓1は、内容物の取り出し口1a、蓋1b、及びパウチ本体2と接合するための接合部1cとで構成されており、(【0007】、【0026】) 口栓1は、パウチ本体2との接合性、シール強度などの点から、熱融着性に優れたポリエチレンで形成されており、(【0008】) パウチ本体2は、前面、背面を形成する2枚のフィルムと底面を形成するために折り込まれた1枚のフィルムからなる積層体で形成されており、(【0011】) この積層体においては、外側から、透明な基材フィルム層3、透明ガスバリア性層4、透明酸素吸収性フィルム層5及び熱融着性樹脂層6が、この順に積層されており、(【0012】) 基材フィルム層3を構成する基材フィルムは、ポリオレフィン系フィルムであり、基材フィルム層3の厚みは6~30μmであり、(【0013】) 熱融着性樹脂層6を構成する熱融着性樹脂は、口栓1との熱融着による接合性を高めるため、口栓1と熱融着性樹脂層6を共にポリエチレンで形成されており、(【0023】) 熱融着性樹脂層6の厚みは30~150μmである、(【0024】) スタンディングパウチ。」 (2)甲A2について ア 甲A2の記載 甲A2には以下の記載がある。 「【請求項1】 密度が0.94g/cm3以上の高密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(i)からなる第I層と、密度0.94g/cm3未満の線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層とを有することを特徴とする積層シート。 ・・・ 【請求項5】 さらに、バリヤー層(IV)を有することを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の積層シート。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はポリエチレン系樹脂を主体とする積層シートに関し、透明性、柔軟性、耐熱性、耐ピンホール性、ヒートシール性、耐ESCR性、非水蒸気透過性、保香性、低臭性、衛生性等に優れ、リサイクル性を有し、食品、飲料、洗剤、薬剤、医療用輸液、化粧品、入浴剤などの容器・包装材に適用される積層シート、その製造方法、およびその積層シートを用いた容器に関する。」 「【0069】第II層と第I層との間に、その他の層を介在させてもよい。その他の層としては、第II層と第I層とをより強固に結合するための接着性樹脂層などが挙げられる。」 「【0071】本発明の積層シートは、さらにバリヤー層(IV)を有していてもよい。・・・」 「【0081】前記容器は、内層が前記(A)線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層であることが望ましい。・・・ 【0082】前記容器の他の態様としてはスタンドパウチ、バッグインボックス用内袋が挙げられる。また、他の態様としては、医療用容器が挙げられる。バッグインボックス用内袋または医療用容器においては、該内袋または容器の少なくとも内層がヒートシール性を有する第II層であることが望ましい。また、ハロゲンを含まない(A)線状低密度ポリエチレンを用いた樹脂材料(ii)や外部に溶出してしまうような添加剤が含まれていない樹脂材料(ii)からなる第II層が該内袋または容器の内層であれば、クリーンな内袋または容器となる。該バッグインボックス用内袋または医療用容器は、2層または3層以上の積層シートや、(A)線状低密度ポリエチレン/接着剤/バリヤー性樹脂/接着剤/高密度ポリエチレン等のバリヤー性樹脂などを使用した上記の積層シートの適当な態様から形成される。」 「【0088】実施例および比較例に用いた各種成分は以下の通りである。 (1)高密度ポリエチレン エチレン・1-ブテン共重合体(HDPE-1) MFR=1.0g/10分、密度=0.956g/cm3、日本ポリオレフィン(株)製 (2)高密度ポリエチレン エチレン・1-ブテン共重合体(HDPE-2) MFR=1.5g/10分、密度=0.951g/cm3、日本ポリオレフィン(株)製」 「【0094】 【表1】 [図:0001424603000003.jpg] 」 「【0097】 【表2】 [図:0001424603000004.jpg] 」 「【0098】 【表3】 [図:0001424603000005.jpg] 」 「【0103】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の積層シートは、密度が0.94g/cm3以上の高密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(i)からなる第I層と、密度0.94g/cm3未満の線状低密度ポリエチレンを主成分とする樹脂材料(ii)からなる第II層とを有しているので、透明性、柔軟性、耐熱性、耐ピンホール性、ヒートシール性、耐ESCR性、非水蒸気透過性、保香性に優れる。」 イ 甲A2に記載された事項 上記アの記載を参酌し、特に実施例6について着目し、HDPE及びLLDPEの密度について【0088】及び【0094】【表1】を参照すると、甲A2には以下の事項(以下「甲A2記載事項」という。)が記載されている。 「スタンドパウチに用いられる積層シートの層構成を、 高密度ポリエチレンからなる層(I)/接着剤層/バリヤー層(IV)/接着剤層/線状低密度ポリエチレンからなる層(II)とし 層(I)の厚みを40μm、層(II)の厚みを120μmとし、 前記高密度ポリエチレンの密度を0.956g/cm3、前記線状低密度ポリエチレンの密度を0.905g/cm3とすること。」 (3)甲A3について ア 甲A3の記載 甲A3には以下の記載がある。 「【請求項1】 注出口部を有する頭部と、前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体、および 前記チューブ容器本体の注出口部に着脱可能に装着して、注出口部を閉鎖するキャップ、 を備えたチューブ容器において、 少なくとも、前記チューブ容器本体の注出口部およびキャップが、主成分としてポリエチレンを含み、 前記注出口部を構成するポリエチレンが高密度ポリエチレンであり、 前記キャップを構成するポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、および直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、チューブ容器。」 「【0001】 本発明は、チューブ容器に関し、より詳細には、注出口部を有する頭部と前記頭部と連接した胴部とを備えたチューブ容器本体および前記チューブ容器本体の注出口部に装着して注出口部を閉鎖するキャップを備えたチューブ容器に関する。」 「【0030】 また、低温環境下における落下強度を高める観点から、キャップ20を構成する樹脂は高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。・・・」 「【0062】 <チューブ容器の作製> ・・・ 【0064】 (3)頭部 筒状胴部をラミネートチューブ容器成形用のマンドレルに装着し、次に筒状胴部の一方の端部に、円錐台形状の肩部とそれに連続する筒状の注出口部からなる頭部を、下記表1に示す組成のポリエチレンを使用し、温度230℃において射出成形法にて成形して、図1に示すようなチューブ容器本体を作製した。表1中の数値は質量部を表す。・・・」 「【0069】 【表1】 [図:0001424603000006.jpg] 」 「【図1】 [図:0001424603000007.jpg] 」 イ 甲A3に記載された事項 上記アの記載を参照し、特に実施例2(特に【表1】と、【表1】下部注釈における化石HDPEの物性値)について着目すると、甲A3には以下の事項(以下「甲A3記載事項」という。)が記載されている。 「チューブ容器の注出口部14を有する頭部11及びキャップ20を、密度0.951g/cm3、MFR5.5g/10分の高密度ポリエチレンから構成することで落下強度を高めること。」 3 当審における判断 (1)対比 本件発明と甲A1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比する。 甲A1発明の「パウチ本体2」、「取り出し口1a」と「接合部1c」と「蓋1b」からなる「口栓1」、「パウチ本体2と口栓1とで構成されるスタンディングパウチ」、「前面、背面を形成する2枚のフィルム」、「底面を形成するために折り込まれた1枚のフィルム」はそれぞれ、 本件発明の「パウチ本体部」、「スパウトとキャップからなる口栓」、「口栓付きスタンディングパウチ」、「2枚の側壁用積層体」、「1枚の2つ折りした底用積層体」に相当する。 <全体構造について> スタンディングパウチにおいて、口栓が上部にあること及び周縁がシールされていることは技術常識であることを踏まえると、甲A1発明の「パウチ本体2と口栓1とで構成されるスタンディングパウチであって、」「パウチ本体2は、前面、背面を形成する2枚のフィルムと底面を形成するために折り込まれた1枚のフィルムからなる積層体で形成されて」いることは、本件発明の「2枚の側壁用積層体と1枚の2つ折りした底用積層体からなり、周縁がシールされているスタンディングパウチの、パウチ本体部の上辺にスパウトとキャップからなる口栓を設けた口栓付きスタンディングパウチであ」ることに相当する。 <層構成について> 甲A1発明の「透明な基材フィルム層3」と「透明ガスバリア性層4」とからなるフィルムは本件発明の「フィルム」と「前記フィルム上に形成されたバリア層」とからなる「バリアフィルム層」に相当し、同様に、「熱融着性樹脂層6」は「シーラント層」に相当する。 そうすると、甲A1発明の「この積層体においては、外側から、透明な基材フィルム層3、透明ガスバリア性層4、透明酸素吸収性フィルム層5及び熱融着性樹脂層6が、この順に積層されて」いる層構成と、本件発明の「前記側壁用積層体および前記底用積層体とが、少なくともバリアフィルム層、接着剤層、シーラント層とがこの順に積層されてな」る層構成は、「前記側壁用積層体および前記底用積層体とが、少なくともバリアフィルム層、シーラント層とがこの順に積層されてな」る層構成である限りにおいて一致する。 <基材としてのフィルムについて> 甲A1発明の「基材フィルム層3を構成する基材フィルムは、ポリオレフィン系フィルムであり、基材フィルム層3の厚みは6~30μmであ」ることと、本件発明の「密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルム」であることは、「ポリオレフィンからなる厚さの数値範囲に20~30μmを含むフィルム」である限りにおいて一致する。 <シーラント層について> 甲A1発明の「融着性樹脂層6を構成する熱融着性樹脂は、口栓1との熱融着による接合性を高めるため、口栓1と熱融着性樹脂層6を共にポリエチレンで形成されており、熱融着性樹脂層6の厚みは30~150μmである」ことと、本件発明の「前記シーラント層が、密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからな」ることは、「前記シーラント層が、ポリエチレンからなる厚さの数値範囲に100~150μmを含むフィルムからな」る限りにおいて一致する。 <口栓の材料について> 甲A1発明の「口栓1は、パウチ本体2との接合性、シール強度などの点から、熱融着性に優れたポリエチレンで形成されて」いることと、本件発明の「前記口栓が、密度0.96g/cm3以下、MFR5g/10min以上の高密度ポリエチレンからなる」ことは、「口栓が、ポリエチレンからなる」限りにおいて一致する。 以上を総合すると、本件発明と甲A1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「2枚の側壁用積層体と1枚の2つ折りした底用積層体からなり、周縁がシールされているスタンディングパウチの、パウチ本体部の上辺にスパウトとキャップからなる口栓を設けた口栓付きスタンディングパウチであって、前記側壁用積層体および前記底用積層体とが、 少なくともバリアフィルム層、シーラント層とがこの順に積層されてなり、 前記バリアフィルム層が、ポリオレフィンからなる厚さの数値範囲に20~30μmを含むフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなり、 前記シーラント層が、ポリエチレンからなる厚さの数値範囲に100~150μmを含むフィルムからなり、 前記口栓が、ポリエチレンからなる口栓付きスタンディングパウチ。」 [相違点1](接着剤層) 「少なくともバリアフィルム層、シーラント層とがこの順に積層されてな」る層構成について、 本件発明では、「バリアフィルム層」と「シーラント層」の間に「接着剤層」が介在するのに対し、 甲A1発明では、「透明な基材フィルム層3、透明ガスバリア性層4」と「熱融着性樹脂層6」の間に接着剤層があるか不明な点。 [相違点2](基材としてのフィルム) 「ポリオレフィンからなる厚さの数値範囲に20~30μmを含むフィルム」について、 本件発明では、フィルムが「密度0.940~0.980g/cm3の高密度ポリエチレンからなる厚さ20~40μmのフィルム」であるのに対し、 甲A1発明では、基材フィルム3が「ポリオレフィン系フィルムであり、」「厚みは6~30μm」であって、ポリオレフィンの種別や密度が不明である点。 [相違点3](シーラント層) 「前記シーラント層が、ポリエチレンからなる厚さの数値範囲に100~150μmを含むフィルムからな」る点について、 本件発明では、シーラント層が「密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ100~150μmのフィルムからな」るのに対し、 甲A1発明では、熱融着性樹脂層6が「口栓1との熱融着による接合性を高めるため」「ポリエチレンで形成されており、」「厚みは30~150μmであ」って、ポリエチレンの種別や密度が不明である点。 [相違点4](口栓の材料) 「口栓が、ポリエチレンからなる」点について、 本件発明では、「密度0.96g/cm3以下、MFR5g/10min以上の高密度ポリエチレンからなる」のに対し、 甲A1発明では、「ポリエチレンで形成されて」いるものの、その種別や密度やMFRが不明である点。 (2)判断 相違点1~3について検討する。 ア まず、基材とシーラント層の厚みについて検討するに、甲A1の「基材フィルム層3の厚みは、基材としての強度等を損なわない範囲で適宜選択でき、例えば6~70μm、好ましくは6~30μm程度である。」(【0013】)との記載、及び「熱融着性樹脂層6の厚みは、熱融着性等を損なわない範囲で選択でき、例えば10~200μm程度、好ましくは30~150μm程度である。」(【0024】)との記載を踏まえ、積層体に求められる強度、コシや柔らかさ、熱融着性等に応じて適宜選択することで、基材フィルム層3と熱融着性樹脂層6の厚みを、相違点2、3に係る本件発明の厚みとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。 イ 次に、相違点1~3のその余の点について検討する。 甲A2記載事項の「スタンドパウチ」、「積層シート」、「線状低密度ポリエチレンからなる層(II)」、「接着剤層」、「高密度ポリエチレンからなる層(I)/接着剤層/バリヤー層(IV)」はそれぞれ、本件発明の「スタンディングパウチ」、「積層体」、「直鎖状低密度ポリエチレンからなる」「シーラント層」、「接着剤層」、「高密度ポリエチレンからなる」「フィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからな」る「バリアフィルム層」に相当する。 そうすると、甲A2記載事項は、本件発明の表現に倣えば、「スタンディングパウチに用いられる積層体の層構成を、密度0.905g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなるシーラント層/接着剤層/密度0.956g/cm3の高密度ポリエチレンからなるフィルムと前記フィルム上に形成されたバリア層とからなるバリアフィルム層とすること。」と言い換えることができる。 そして、甲A1発明と甲A2記載事項は、スタンディングパウチの層構成に関するものである点で共通する。 そうすると、甲A1発明の積層体の層構成及び各層の材料として、甲A2記載事項を適用することは当業者が容易であるものの、そのようにした場合における熱融着性樹脂層を構成する線状低密度ポリエチレンの密度は0.905g/cm3であるから、相違点1~3に係る本件発明の構成のうち、シーラント層が「密度0.910~0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなる」構成には至らない。また、相違点1~3に係る構成は他の証拠にも記載されておらず、本件出願前における周知技術でもない。 ウ したがって、甲A1発明において、相違点1~3に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (3)申立人Aの主張について 申立人Aは、甲A1に記載された発明において、甲A2の実施例2、8に記載されている、第I層を密度0.956g/cm3のHDPEとし、第II層を密度0.918g(又は0.910g)/cm3のLLDPEとする事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである旨主張している(特許異議申立書の12ページ下から8行~9ページ6行)。 上記主張について検討する。 申立人Aが主張する実施例2、9はいずれも、層(I)及び層(II)の厚みが80μmであるところ、上記第2の2(1)イで示した甲A1発明は、基材フィルム層3の厚みは6~30μmであり、熱融着性樹脂層6の厚みは30~150μmである。 そして、積層体の技術分野において、基材層やシーラント層等の各層の厚みや密度が積層体の引張強度やシール強度等の各種特性に影響することは技術常識であることを踏まえると、甲A1発明における基材フィルムと熱融着性樹脂層の材料として、甲A2の各実施例として記載された事項を適用しようとする場合、甲A1発明と各層の厚みが共通する実施例6を採用することが自然であり、甲A1発明と各層の厚みが共通しない他の実施例を採用する動機付けはない。 したがって、申立人Aの主張は採用できない。 (4)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、甲A1発明、甲A2記載事項及び甲A3記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 申立人Bが主張する申立理由の概要は以下のとおりである。 理由(進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [引用文献一覧](申立人Bが提出した甲第○号証を以下「甲B○」という。) 甲B1:特開2001-225428号公報 甲B2:特開2015-202873号公報 甲B3:特開2019-147381号公報 甲B4:特開2008-80509号公報 甲B5:特開2012-1247号公報 甲B6:特開2007-261608号公報 甲B7:特開2000-203620号公報 2 引用文献に記載された事項、発明 (1)甲B1について 甲B1の請求項1、5、【0001】、【0069】、【0071】、【0081】~【0082】、【0088】、【0094】【表1】、【0097】【表2】、【0098】【表3】、【0103】を参照し、特に実施例2、9について着目すると、甲B1には以下の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されている。 「高密度ポリエチレンからなる層(I)/接着剤層/バリヤー層(IV)/接着剤層/線状低密度ポリエチレンからなる層(II)とし 層(I)の厚みを80μm、層(II)の厚みを80μmとし、 前記高密度ポリエチレンの密度が0.956g/cm3、前記線状低密度ポリエチレンの密度が0.910g/cm3又は0.918g/cm3である層構成を有する積層シートを用いたスタンドパウチ。」 (2)甲B7について 甲B7の【0001】、【0028】~【0031】【表1】、【0034】【表2】、図1を参照し、特に比較例1について着目すると、甲B7には以下の事項(以下「甲B7記載事項」という。)が記載されている。 「密度0.956g/cm3、メルトフローレートが9.0g/10分のHDPEからなる閉鎖膜付チューブ用のキャップ。」 3 当審における判断 本件発明と甲B1発明を対比すると、少なくとも、スタンディングパウチについて、本件発明では、「パウチ本体部の上辺にスパウトとキャップからなる口栓を設けた」ものであり、「前記口栓が、密度0.96g/cm3以下、MFR5g/10min以上の高密度ポリエチレンからなる」のに対し、引用発明では、スタンドパウチが口栓を有するか不明な点で相違する。 上記相違点について検討する。 まず、スタンドパウチにおいて、スパウトとキャップからなる口栓を設けたものは文献を挙げるまでもなく本件出願前における周知技術であるから、甲B1発明を、スパウトとキャップからなる口栓付きスタンドパウチとすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、そのような口栓付きスタンドパウチに、甲B7記載事項を適用することについて検討するに、甲B7記載事項は、閉鎖膜付チューブ用のキャップに関するものであるから、甲B1発明に基づく口栓付きスタンドパウチに適用する動機付けはないし、仮に適用できたとしても、口栓を構成するスパウトとキャップのうちキャップ側に適用することになり、スパウト側に適用する動機付けはない。 そして、積層体のバリアフィルム層のフィルム及びシーラント層がポリエチレンからなる本件発明は、本件特許明細書の【0033】を踏まえると、スパウトとキャップからなる口栓を、密度が0.96/cm3以下の高密度ポリエチレンとすることにより、包装体全体の再利用性及びヒートシール性を向上するという作用効果を有するものである。 したがって、申立人Bの主張する特許異議申立理由によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701081

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