特許異議申立
2024-701072
建築物用構造体
- 審判番号
- 2024-701072
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-082617
- 登録番号
- 7515298
- 請求日
- 2024年11月01日
- 審決日
- 2025年03月14日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】チヨダ加工センター株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 藤脇 沙絵
- 審判官 土屋 真理子
- 分類
- P1651.121-Y (E04B) / P1651.537-Y (E04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7515298号発明「建築物用構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7515298号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7515298号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和2年5月8日に出願され、令和6年7月4日にその特許権の設定登録がされ、同月12日に特許掲載公報が発行された。その後の異議の申立ての手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年11月 1日 特許異議申立人 金澤 毅(以下「申立人」とい
う)による、本件特許の請求項1~5に係る特許
に対する特許異議の申立て
同年12月 9日 手続補正書(方式)の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~5の特許に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも2つの板部分を備え、前記2つの板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体と、
前記2つの板部分を連結する少なくとも1つの連結部材と、を備え、
前記2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し、
前記連結部材は石膏ボードで形成され、直方体状の連結部材石膏ボード芯材部と、前記連結部材石膏ボード芯材部において角部を形成するように隣り合う2つの面のうちの一方の面に設けられた一側石膏ボード用原紙と、前記2つの面の他方の面に設けられた他側石膏ボード用原紙と、を有し、
前記連結部材は、前記一側石膏ボード用原紙を、折曲げ形状をなす前記2つの板部分のうちの一方の入隅側に設けられた前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して接着するとともに、前記他側石膏ボード用原紙を、折曲げ形状をなす前記2つの板部分のうちの他方の入隅側に設けられた前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して接着する、建築物用構造体。
【請求項2】
複数の板部分を備え、前記複数の板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体と、
前記複数の板部分のうちの2つの板部分を連結する少なくとも1つの連結部材と、を備え、
前記板部分複合体は、1枚の石膏ボードに複数の折曲げ溝を形成し、当該石膏ボードを前記複数の折曲げ溝を起点に折り曲げることで、内部空間を有するボックス形状をなすように形成され、
前記連結部材によって連結される前記2つの板部分は、互いに直接的には連結されない状態で前記内部空間を介して互いに向き合っており、
前記連結部材は1枚の石膏ボードから形成され、直方体状の連結部材石膏ボード芯材部と、前記連結部材石膏ボード芯材部において互いに対向するように位置する2つの面のうちの一方の面に設けられた一側石膏ボード用原紙と、前記2つの面のうちの他方に設けられた他側石膏ボード用原紙と、を有し、
前記連結部材は、前記一側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの一方の前記石膏ボード用原紙に、接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着するとともに、前記他側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの他方の前記石膏ボード用原紙に、接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着し、前記一側石膏ボード用原紙及び前記他側石膏ボード用原紙が設けられる面を除く他の全ての面を、前記板部分複合体に接着せず、
前記連結部材は、前記2つの板部分それぞれの外縁よりも内側の位置で、前記2つの板部分を連結している、建築物用構造体。
【請求項3】
複数の前記連結部材が、前記入隅が連続する方向に間隔を空けて設けられる、請求項1に記載の建築物用構造体。
【請求項4】
複数の前記連結部材が、互いに向き合う前記2つの板部分の間に間隔を空けて配列されている、請求項2に記載の建築物用構造体。
【請求項5】
間接照明用の照明器具ボックス、カーテンボックス、又はブラインドボックスである、
請求項1乃至4のいずれかに記載の建築物用構造体。」
第3 特許異議申立理由及び証拠方法
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として以下に示す各甲号証を提出している。
(1)理由1(進歩性欠如)
本件発明2、4及び5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2、4及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)理由2(サポート要件違反)
本件発明1、3及び5は、サポート要件を充足しておらず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1、3及び5に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)理由3(明確性要件違反)
本件発明1、3及び5は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件発明1、3及び5に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠
(1) 甲第1号証:登録実用新案第3152953号公報
(2) 甲第2号証:挿入式 耐火防火構造・材料等便覧No.462、32-399~32-403頁
第4 当審の判断
事案に鑑み、特許異議申立理由について、理由3(明確性要件違反)、理由2(サポート要件違反)、理由1(進歩性欠如)の順に検討する。
1 理由3(明確性要件違反)について
(1)申立人の具体的主張
申立人は明確性要件違反について、概略次の主張をしている。
本件発明1では、「少なくとも2つの板部分を備え、前記2つの板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体」の「2つの板部分」について、「前記2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し、」と記載されており、2つの板部分が、完全に縁が切れた2つの石膏ボードにより形成される形態を含み得る構成要件となっている。2つの板部分が、完全に縁が切れた2つの石膏ボードであるとした場合に、これらは相互に折曲げられる関係にはないことから、「2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し」の内容が明らかでなく、不明確である。本件発明1に従属する本件発明3及び5も不明確である。(申立書19頁14~22行)
(2)判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(3)判断
ア 一般に、「折り曲げる」とは「折って曲げる」ことを意味し、「折る」とは「直線状または平面であるはずのものに力を加えて急角度にまげる意」を意味する(いずれも岩波書店発行 広辞苑第3版)。
イ 本件発明1は、2つの板部材について「折曲げ形状をなすように連結」していると特定する。本件発明1において「折曲げ」は、上記アの一般の意味として、平面であるはずのものに力を加えて急角度に曲げることであると理解することができ、「折曲げ形状」は、平面であった2つの板部材に力を加えて曲げることによりなった形状であると理解することができる。
ウ 「折曲げ形状」は上記イのとおり理解することができ、「2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し」の意味は明確であり、本件発明1は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確なものではない。
エ そして、申立人の主張は、本件発明1について、2つの板部分が、完全に縁が切れた2つの石膏ボードにより形成される形態を含み得る構成であることを前提とし、2つの板部分が、完全に縁が切れた2つの石膏ボードであるとした場合には、これらは相互に折曲げられる関係にはないことから、「2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し」の内容が明らかでない旨をいうものである。しかしながら、当該主張は、その前提となる「2つの板部分が、完全に縁が切れた2つの石膏ボードにより形成される形態を含み得る」構成であるとする点において採用することができないものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は明確である。本件発明1を引用する本件発明3及び5も明確である。
2 理由2(サポート要件違反)について
(1) 申立人の具体的主張
申立人はサポート要件違反について、概略次の主張をしている。
本件発明1では、「少なくとも2つの板部分を備え、前記2つの板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体」の「2つの板部分」について、「前記2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し、」と記載されており、2つの板部分が、完全に縁が切れた2つの石膏ボードにより形成される形態を含み得る構成要件となっている。
一方、本願明細書には、完全に縁が切れた複数の石膏ボードからなる板部分を用いて板部分複合体を作成する旨の記載は一切ない。
従って、本件発明1は、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない事項を含んでおり、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に記載された内容を本件発明1の範囲まで拡張ないし一般化することはできない。本件発明1に従属する本件発明3及び5も同様である。(申立書17頁下から11行~19頁12行)
(2) 判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(3)本件明細書等の記載
本件特許の明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲、図面とあわせて「本件明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードからなる少なくとも二つの板部分で特定形状を形成する建築物用構造体であって、間接照明用の照明器具ボックスや、カーテンボックス、ブラインドボックス、ニッチ等の建築物の一部を構成し得る建築物用構造体に関する。」
イ 「【0010】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであり、石膏ボードからなる少なくとも二つの板部分で特定形状を形成して建築物の一部を構成する構造体であって、作製に手間をかけることなく、耐衝撃性、耐久性及び耐候性を向上でき、さらには廃棄にも手間がかからない建築物用構造体を提供することを目的とする。」
ウ 「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる建築物用構造体は、
少なくとも2つの板部分を備え、前記2つの板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体と、
前記2つの板部分を連結する少なくとも1つの連結部材と、を備え、
前記連結部材は、前記2つの板部分それぞれの前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して接着され、
前記連結部材は、石膏ボード、石膏、木材、紙、珪酸カルシウム又は繊維強化セメントから形成される、建築物用構造体である。
・・・
【0013】
前記2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し、前記連結部材は、折曲げ形状をなす前記2つの板部分それぞれの入隅側に設けられた前記石膏ボード用原紙に接着されてもよい。」
エ 「【0024】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる建築物用構造体1の断面図である。図1に示す建築物用構造体1は一例として間接照明用の照明器具ボックスとして構成されている。
【0025】
建築物用構造体1は、石膏ボードから形成される複数の板部分11~15を有する板部分複合体10と、板部分複合体10を構成する複数の板部分11~15のうちの2つの板部分の組みの一つ又は複数において板部分間を連結する連結部材20と、を備えている。
【0026】
板部分複合体10は、複数の板部分として第1~第5板部分11~15を有する。板部分複合体10は照明器具ボックスの主要部分を構成する部材であり、ボックス形状(多角形)が形成されるように、第1板部分11と、第2板部分12と、第3板部分13と、第4板部分14と、第5板部分15とをこの順で連結させ、ボックス形状内部に各板部分(11、12、13、14、15)により囲まれる内部空間Sを形成している。
【0027】
詳細は図2を用いて後述するが、板部分複合体10は、1枚の石膏ボードBに、平面方向で同じ方向に延び且つ厚み方向で先細りとなる複数の折曲げ溝G1~G4を形成し、各折曲げ溝G1~G4を起点に石膏ボードBを複数箇所で折り曲げ、折曲げ溝G1~G4の対向する側面同士を接着することにより形成される。この際、板部分複合体10を構成する各板部分(11、12、13、14、15)は、折曲げ溝G1~G4によって区分けされ、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分(例えば第1板部分11と第2板部分12等)は両者間に位置する折曲げ溝の対向する側面同士を接着することにより連結されることになる。
・・・
【0032】
各板部分(11、12、13、14、15)の四辺には石膏ボード用原紙が接合されておらず、各板部分(11、12、13、14、15)の四辺は石膏ボード芯材部によって形成されることになる。したがって、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分は、それぞれの石膏ボード芯材部で形成される四辺のうちの1つの辺同士を接着させている。
【0033】
ここで本実施の形態においては、上記互いに隣り合う板部分において互いに連結される辺同士がシリコーン変性ポリマー系弾性接着剤からなる接着層を介して接着されている。この場合、シリコーン変性ポリマー系弾性接着剤が結合強度の観点で石膏ボード、詳しくは石膏ボード芯材部と相性が良いことで、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分の間の結合強度を向上できる。また、シリコーン変性ポリマー系弾性接着剤からなる接着層は弾性部材として機能し得ることで、折曲げ形状をなす板部間の境界に適度な柔軟性が付与され、耐久性も向上させ得る。」
オ 「【0035】
以下、図2を参照しつつ板部分複合体10の作製手順を説明する。図2は板部分複合体10を形成する石膏ボードBを示す図であり、ボックス形状に形成される前の平板状の石膏ボードBを示す。石膏ボードBは、石膏ボード芯材部BAと、内側石膏ボード用原紙BBと、外側石膏ボード用原紙BCと、を有する。
【0036】
石膏ボードBには基本的には内側及び外側の概念はないが、この例では、内側石膏ボード用原紙BBが板部分(11、12、13、14、15)の各内側石膏ボード用原紙を構成し、外側石膏ボード用原紙BCが板部分(11、12、13、14、15)の各外側石膏ボード用原紙を構成する。よって、本実施の形態では、説明の便宜のために石膏ボードBの表裏の石膏ボード用原紙の名称を「内側石膏ボード用原紙BB」及び「外側石膏ボード用原紙BC」と称している。
【0037】
本実施の形態では、先ず、石膏ボードBに、内側石膏ボード用原紙BBから外側石膏ボード用原紙BCに向けて先細りとなる第1折曲げ溝G1、第2折曲げ溝G2及び第3折曲げ溝G3と、外側石膏ボード用原紙BCから内側石膏ボード用原紙BBに向けて先細りとなる第4折曲げ溝G4とを形成する。これにより、折曲げ溝G1~G4によって区分けされた第1板部分11~第5板部分15が形成される。
【0038】
また、各折曲げ溝G1~G4を形成する際、本実施の形態では第1折曲げ溝G1、第2折曲げ溝G2及び第3折曲げ溝G3は、内側石膏ボード用原紙BBを分断するが、外側石膏ボード用原紙BCには到達せず、外側石膏ボード用原紙BCは分断しない状態にする。一方、第4折曲げ溝G4は、外側石膏ボード用原紙BCを分断するが、内側石膏ボード用原紙BBには到達せず、内側石膏ボード用原紙BBは分断しない状態にする。これにより、第1板部分11、第2板部分12、第3板部分13及び第4板部分14は外側石膏ボード用原紙BCによって繋がった状態になり、第4板部分14及び第5板部分15は内側石膏ボード用原紙BBによって繋がった状態になる。
【0039】
次いで、各折曲げ溝G1~G4にシリコーン変性ポリマー系弾性接着剤が塗布される。その後、折曲げ溝G1~G4を起点に石膏ボードBを複数箇所で折り曲げ、折曲げ溝G1~G4の対向する側面同士をシリコーン変性ポリマー系弾性接着剤で接着することにより、隣り合う板部分が折曲り形状をなすように連結し、そして図1に示すボックス形状の板部分複合体10が形成される。」
カ 「【0045】
第1連結部材21は石膏ボードから形成され、一例として直方体状の石膏ボード芯材部21Aと、石膏ボード芯材部21Aにおいて角部を形成するように隣り合う2つの面のそれぞれに設けられた一側石膏ボード用原紙21B及び他側石膏ボード用原紙21Cと、を有する。図1には第1連結部材21と第4板部分14及び第5板部分15との連結部分の拡大図が示されている。第1連結部材21は、その一側石膏ボード用原紙21Bを第4板部分14の外側石膏ボード用原紙14Cに接着層30を介して接着するとともに、その他側石膏ボード用原紙21Cを第5板部分15の外側石膏ボード用原紙14Cに接着層30を介して接着している。
【0046】
接着層30は酢酸ビニル樹脂系接着剤を硬化してなる。酢酸ビニル樹脂系接着剤は結合強度の観点で石膏ボード用原紙と相性が良いため、酢酸ビニル樹脂系接着剤を用いる場合には、第1連結部材21と板部分14,15との間の結合強度を向上できる。また、図3は図1の矢印IIIの方向に建築物用構造体1を見た図である。図3に示すように、第1連結部材21は第4板部分14と第5板部分15とが形成する入隅が連続する方向に、言い換えると第4板部分14と第5板部分15との境界が各板部分の平面方向に平行に延びる方向に複数(本例では2つ)設けられている。」
(4) 判断
ア 第1の実施の形態(上記(3)エ~カ)に、第4板部分14と、第5板部分15を含む複数の板部分11~15を有する板部分複合体10と、第1連結部材21と、を備えた、一例として間接照明用の照明器具ボックスとして構成されている建築物用構造体1が示されており、第1の実施の形態は本件発明1、3及び5の具体例であると認められるから、本件発明1、3及び5は、発明の詳細な説明に記載されている。
イ(ア)本件発明の課題は、「石膏ボードからなる少なくとも二つの板部分で特定形状を形成して建築物の一部を構成する構造体であって、作製に手間をかけることなく、耐衝撃性、耐久性及び耐候性を向上でき、さらには廃棄にも手間がかからない建築物用構造体を提供すること」(上記(3)イ【0010】)であると認められる。
(イ)一方、本件発明1、3及び5は、上記第2の請求項1、3及び5に記載したとおりのものである。
(ウ)そして、本件発明1、3及び5は、その構成を有することにより、連結部材を用いない場合より外部から力が加わった場合の耐衝撃性や耐久性が向上し、また、連結部材が板部分複合体と同様に石膏ボードであるため作成及び廃棄に手間がかからないものと理解されるから、上記課題を解決できると認識できるものである。
ウ そして、上記(1)の申立人の主張について、上記1において説示したとおり、「前記2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し、」との記載は、2つの板部分が、完全に縁が切れた2つの石膏ボードにより形成される形態を含み得るといえるものではないから、申立人が申立てる点において本件発明1、3及び5が発明の詳細な説明に記載されていないものではない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件発明1、3及び5は、発明の詳細な説明に記載された発明である。
3 進歩性について
(1)証拠の記載
ア 甲第1号証
(ア)甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様)。
a 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本考案が解決しようとする課題は、構造が簡単であり、したがってそれだけ安価であって、ボックスの組立て及び下地材への取付けを特には熟練を要することなく短時間で行なうことができるボックス構造を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決する本考案は、石膏ボードに片面の石膏ボード用原紙を残してV字形の折曲げ溝を複数本並設し、該折曲げ溝には接着剤を塗布して、該石膏ボードを該折曲げ溝に沿い折曲げて接着することによりボックスを形成し、該ボックスを天井面、壁面又は柱面からの下地材に取付けて成ることを特徴とするボックス構造に係る。
【0006】
本考案に係るボックス構造は、石膏ボードから形成したボックスを、建物の天井面、壁面又は柱面からの木製や鋼製等の下地材に、例えばかかる下地材の野縁として使用されるM形断面のMバーに、釘、ビス、スクリュー等の留付け具で取付けた構造となっている。
【0007】
本考案に係るボックス構造においてボックスは、石膏ボードに片面の石膏ボード用原紙を残してV字形の折曲げ溝を複数本並設し、該折曲げ溝には接着剤を塗布して、該石膏ボードを該折曲げ溝に沿い折曲げて接着することにより形成したものである。
【0008】
石膏ボードは石膏板を石膏ボード用原紙で被覆した構造となっているので、石膏ボードの片面、例えば表面に縦断面で見てV字型の折曲げ溝を例えばカッターで開設する場合には裏面の石膏ボード用原紙を残すようにし、また石膏ボードの裏面に縦断面で見てV字形の折曲げ溝を例えばカッターで開設する場合には表面の石膏ボード用原紙を残すようにする。かくして石膏ボードに片面の石膏ボード用原紙を残してV字形の折曲げ溝を複数本並設し、かかる折曲げ溝の表面に必要に応じてプライマー処理を施した後、例えばウレタン系の接着剤を塗布して、該石膏ボードを該折曲げ溝に沿い折曲げて接着することによりボックスを形成する。
【0009】
石膏ボードに並設する複数のV字形の折曲げ溝の位置や各折曲げ溝の開き角度等によって、ボックスはほぼ任意の形状に形成できるが、形成したボックスを間接照明用の照明器具ボックス、カーテンボックス、ブラインドボックス、ニッチ等に適用する場合には、石膏ボードの両面に折曲げ溝を両面合計で3本以上並設するのが好ましい。この場合、石膏ボードには4面以上が形成されることになるが、このうちの3面以上でボックスを形成しつつ、残りの1面又は2面以上は形成したボックスを天井面、壁面又は柱面からの下地材に取付けるときの補強用に使用することができる。
【0010】
本考案に係るボックス構造において、形成したボックスの好適例は、これを間接照明用の照明器具ボックスとする場合である。この場合、ボックスは、間接照明用の照明器具の載置面、該載置面から立ち上げた該照明器具からの直射光を遮る遮光面、該遮光面から折返し面への接続面及び折返し面を備えるものとし、折返し面を前記したような補強用に使用して、かかる載置面及び折返し面を天井面又は壁面からの下地材に取付けた構造とする。
【発明の効果】
【0011】
本考案に係るボックス構造によると、構造が簡単であり、したがってそれだけ安価であって、ボックスの組立て及び下地材への取付けを特には熟練を要することなく短時間で行なうことができる。」
b 「【0015】
図5は本考案に係る更に他のボックス構造において形成したボックスを示しており、図5のボックスも間接照明用の照明器具のボックスを示しているが、図5のボックスは二つのボックス部から成っている。図5において、図示しない石膏ボードの表面に裏面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43a,43bを、また裏面に表面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43c,43dを縦断面で見て所定間隔で並設し、これらの折曲げ溝43a~43dの各表面に、プライマー処理を施した後、接着剤を塗布して、石膏ボードを各V字形の折曲げ溝43a~43dに沿い折曲げて接着することにより、図5では左側に位置するボックス部53aを形成する。同様に、別の図示しない石膏ボードの表面に裏面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43e,43fを、また裏面に表面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43g,43hを縦断面で見て所定間隔で並設し、これらの折曲げ溝43e~43hの各表面に、プライマー処理を施した後、接着剤を塗布して、石膏ボードを各V字形の折曲げ溝43e~43hに沿い折曲げて接着することにより、図5では右側に位置するボックス部53bを形成する。そしてボックス部53aとボックス部53bとを天面端部53cで接合することによりボックス53を形成する。ボックス53は、図示しない照明器具の載置面63a又は取付け面63b、該照明器具からの直射光を遮る遮光面63c、天面63d,63e、接続面63f~63g及び折返し面63i,63jを備えている。以上のように形成したボックス53の天面63d,63e及び折返し面63i,63jを、天井面や壁面から延設した下地材に取付けボックス構造とする。」
c 図5
「
[図:0001421387000001.jpg]
」
d 上記bの記載を踏まえると、上記cの【図5】からは、V字形の折曲げ溝43a,43bで区画される面63bに隣接する載置面63aと天面63eとは、互いに直接的には連結されない状態でボックス部53aの内部空間を介して互いに向き合っていることが看取される。
(イ)甲1発明
上記(ア)より、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
石膏ボードの表面に裏面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43a,43bを、また裏面に表面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43c,43dを縦断面で見て所定間隔で並設し、これらの折曲げ溝43a~43dの各表面に、プライマー処理を施した後、接着剤を塗布して、石膏ボードを各V字形の折曲げ溝43a~43dに沿い折曲げて接着することにより、ボックス部53aを形成し、
V字形の折曲げ溝43a,43bで区画される面63bに隣接する載置面63aと天面63eとは、互いに直接的には連結されない状態でボックス部53aの内部空間を介して互いに向き合っている、
間接照明用の照明器具のボックス。
イ 甲第2号証
(ア)甲第2号証の記載
甲第2号証には、以下の記載がある。なお、記載には、申立人が付与した四角囲い及び下線も含む。
a 追録番号表
「
[図:0001421387000002.jpg]
」
b 32-399
「
[図:0001421387000003.jpg]
」
c 32-400下部
「
[図:0001421387000004.jpg]
」
d 32-401中段
「
[図:0001421387000005.jpg]
」
(イ)甲第2号証の記載から認定できる事項
a 上記(ア)b 32-399の「耐火四六二号」との記載及び、上記(ア)a 追録番号表において「追録番号」「-No.467」が「発行年月日」「平10・3・26」と示されていることから、商品名「吉野耐火ウォールA90」についての「耐火462号」は、平成10年3月26日に発行されたものと認められる。
b そして、「吉野耐火ウォールA90」の「ガラス繊維入り石膏ボード」の「主構成材料」について、「材料名」「石膏」、「標準配合割合」「97.7%」である「芯材」と「石膏ボード用原紙」が記載されていることを踏まえ、「(2)ガラス繊維入り石膏ボード積層パネル」(上記d)に着目すると、以下のことが理解できる。
(a)「(2)ガラス繊維入り石膏ボード積層パネル」の下に「4-1-(1)ガラス繊維入り石膏ボードを切断貼合せ又は折曲げ加工したもの。」と記載されている。そして、「(イ)パネルの形状」のうち、下部に記載された図は、左右端に斜めの接合部があることから「ガラス繊維入り石膏ボードを切断貼合せ又は折曲げ加工したもの。」のうち、「ガラス繊維入り石膏ボードを折曲げ加工したもの」である。
(b)ガラス繊維入り石膏ボード積層パネルは三層のガラス繊維入り石膏ボードが積層されたものである。
(c)下部に記載された「ガラス繊維入り石膏ボードを折曲げ加工した」ガラス繊維入り石膏ボード積層パネルは、1枚のガラス繊維入り石膏ボードの4カ所に折曲げ溝が設けられ、ガラス繊維入り石膏ボードが、<1>1層目のガラス繊維入り石膏ボード、<2>1層目と3層目のガラス繊維入り石膏ボードの間において第1の端部を形成する断面台形状の第1の端部ガラス繊維入り石膏ボード、<3>3層目のガラス繊維入り石膏ボード、<4>3層目と2層目のガラス繊維入り石膏ボードの間において端部を形成する断面三角形状の第2の端部ガラス繊維入り石膏ボード、<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボード、の5つの部分に分割され、折り曲げ加工されて1層目と3層目のガラス繊維入り石膏ボードの間に、2層目のガラス繊維入り石膏ボードが挟まれたものとされ、少なくとも<1>1層目のガラス繊維入り石膏ボードと<2>断面台形状の第1の端部ガラス繊維入り石膏ボード、<1>1層目のガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボード、<3>3層目のガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボード、<4>断面三角形状の第2の端部ガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボード、の4カ所において接着剤によって接着され、<2>断面台形状の第1の端部ガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボードの端部の間には、中空部が形成されたものであると理解できる。
(ウ)甲2記載技術
上記(ア)及び(イ)より、以下の事項(以下「甲2記載技術」という。)が、本件特許の出願日前である平成10年3月26日に刊行物である甲第2号証により公知となったものと認められる。
(甲2記載技術)
三層のガラス繊維入り石膏ボードが積層されたガラス繊維入り石膏ボード積層パネルを、ガラス繊維入り石膏ボードを折曲げ加工して得る技術であって、
構成材料として石膏を標準配合割合で97.7%含む芯材と石膏ボード用原紙とを有する1枚のガラス繊維入り石膏ボードの4カ所に折曲げ溝が設けられて、ガラス繊維入り石膏ボードが、<1>1層目のガラス繊維入り石膏ボード、<2>1層目と3層目のガラス繊維入り石膏ボードの間において第1の端部を形成する断面台形状の第1の端部ガラス繊維入り石膏ボード、<3>3層目のガラス繊維入り石膏ボード、<4>3層目と2層目のガラス繊維入り石膏ボードの間において端部を形成する断面三角形状の第2の端部ガラス繊維入り石膏ボード、<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボードの5つの部分に分割され、折り曲げ加工されて1層目と3層目のガラス繊維入り石膏ボードの間に、2層目のガラス繊維入り石膏ボードが挟まれたものとされ、少なくとも<1>1層目のガラス繊維入り石膏ボードと<2>断面台形状の第1の端部ガラス繊維入り石膏ボード、<1>1層目のガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボード、<3>3層目のガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボード、<4>断面三角形状の第2の端部ガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボード、の4カ所において接着剤によって接着され、<2>断面台形状の第1の端部ガラス繊維入り石膏ボードと<5>2層目のガラス繊維入り石膏ボードの端部の間には、中空部が形成されたものとする技術。
(2)本件発明2
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア) a 甲1発明の「石膏ボードの表面に裏面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43a,43bを、また裏面に表面の石膏ボード用原紙を残して合計2本のV字形の折曲げ溝43c,43dを縦断面で見て所定間隔で並設し」た「石膏ボード」の、「V字形の折曲げ溝43a,43b」及び「V字形の折曲げ溝43c,43d」で区分されたそれぞれの部分は、本件発明2の「複数の板部分」に相当する。
b これら部分は「表面」及び「裏面」に「石膏ボード用原紙」が存在する「石膏ボード」であるから、甲1発明も、本件発明2の「前記複数の板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する」に相当する構成を備える。
c 上記aおよびbの対比を踏まえると、甲1発明の「V字形の折曲げ溝43a,43b」及び「V字形の折曲げ溝43c,43d」を「縦断面で見て所定間隔で並設し」た「石膏ボード」は、本件発明2の「複数の板部分を備え、前記複数の板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体」に相当する。
(イ) a 上記(ア)の対比を踏まえると、甲1発明の「V字形の折曲げ溝43a,43b」及び「V字形の折曲げ溝43c,43d」は、本件発明2の「1枚の石膏ボード」に「形成し」た「複数の折曲げ溝」に相当する。
b 甲1発明の「石膏ボードを各V字形の折曲げ溝43a~43dに沿い折曲げて接着することにより、ボックス部53aを形成」することは、本件発明2の「当該石膏ボードを前記複数の折曲げ溝を起点に折り曲げることで、内部空間を有するボックス形状をなすように形成」されることに相当する。
c 上記aおよびbの対比を踏まえると、甲1発明は、本件発明2の「前記板部分複合体は、1枚の石膏ボードに複数の折曲げ溝を形成し、当該石膏ボードを前記複数の折曲げ溝を起点に折り曲げることで、内部空間を有するボックス形状をなすように形成され」ることに相当する構成を備える。
(ウ)本件発明2の「前記連結部材によって連結される前記2つの板部分は、互いに直接的には連結されない状態で前記内部空間を介して互いに向き合って」いることと、甲1発明の「V字形の折曲げ溝43a,43bで区画される面63bに隣接する載置面63aと天面63eとは、互いに直接的には連結されない状態でボックス部53aの内部空間を介して互いに向き合って」いることとは、「2つの板部分は、互いに直接的には連結されない状態で前記内部空間を介して互いに向き合って」いることで共通する。
(エ)甲1発明の「間接照明用の照明器具のボックス」は、本件発明2の「建築物用構造体」に相当する。
(オ)上記(ア)~(エ)より、本件発明2と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
複数の板部分を備え、前記複数の板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体、を備え、
前記板部分複合体は、1枚の石膏ボードに複数の折曲げ溝を形成し、当該石膏ボードを前記複数の折曲げ溝を起点に折り曲げることで、内部空間を有するボックス形状をなすように形成され、2つの板部分は、互いに直接的には連結されない状態で前記内部空間を介して互いに向き合っている、建築物用構造体。
(相違点)
本件発明2は、「前記複数の板部分」のうちの「互いに直接的には連結されない状態で前記内部空間を介して互いに向き合って」いる「2つの板部分を連結する少なくとも1つの連結部材」を備え、
「前記連結部材は1枚の石膏ボードから形成され、直方体状の連結部材石膏ボード芯材部と、前記連結部材石膏ボード芯材部において互いに対向するように位置する2つの面のうちの一方の面に設けられた一側石膏ボード用原紙と、前記2つの面のうちの他方に設けられた他側石膏ボード用原紙と、を有し、
前記連結部材は、前記一側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの一方の前記石膏ボード用原紙に、接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着するとともに、前記他側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの他方の前記石膏ボード用原紙に、接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着し、前記一側石膏ボード用原紙及び前記他側石膏ボード用原紙が設けられる面を除く他の全ての面を、前記板部分複合体に接着せず、
前記連結部材は、前記2つの板部分それぞれの外縁よりも内側の位置で、前記2つの板部分を連結している」のに対し、甲1発明は、「連結部材」を備えておらず、当然、本件発明2の有する連結部材の取付けに関する構成を備えない点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)甲2記載技術は、三層のガラス繊維入り石膏ボードが積層されたガラス繊維入り石膏ボード積層パネルを、ガラス繊維入り石膏ボードを折曲げ加工して得る技術であって、上記相違点に係る「連結部材」を開示するものではない。
(イ)したがって、甲1発明に甲2記載技術を適用して相違点に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張
(ア) a 申立人は、甲第2号証の2層目のガラス繊維入り石膏ボードが、1層目と3層目のガラス繊維入り石膏ボードを接続していることから本件発明2の「複数の板部材のうちの2つの板部材を連結する少なくとも1つの連結部材」に相当する旨主張する。
b しかし、上記イにおいて判断したとおり、甲2記載技術は、三層のガラス繊維入り石膏ボードが積層されたガラス繊維入り石膏ボード積層パネルを、ガラス繊維入り石膏ボードを折曲げ加工して得る技術であって、3の同じ性質のガラス繊維入り石膏ボードが積層により積層パネルとされるものであるから、甲1発明における「ボックス部53aの内部空間を介して互いに向き合っている」ものとされる2枚の石膏ボードの間に適用できるような「連結部材」が開示されるものではない。
(イ) a 申立人は、また、甲第2号証の32-401の「(2)ガラス繊維入り石膏ボード積層パネル」の「(イ)パネルの形状」に示された2の図はいずれも本件発明2の「前記連結部材は1枚の石膏ボードから形成され、直方体状の連結部材石膏ボード芯材部と、前記連結部材石膏ボード芯材部において互いに対向するように位置する2つの面のうちの一方の面に設けられた一側石膏ボード用原紙と、前記2つの面のうちの他方に設けられた他側石膏ボード用原紙と、を有し、
前記連結部材は、前記一側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの一方の前記石膏ボード用原紙に、接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着するとともに、前記他側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの他方の前記石膏ボード用原紙に、接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着し、前記一側石膏ボード用原紙及び前記他側石膏ボード用原紙が設けられる面を除く他の全ての面を、前記板部分複合体に接着せず、
前記連結部材は、前記2つの板部分それぞれの外縁よりも内側の位置で、前記2つの板部分を連結している」との構成(以下「構成要件(D)」という。)を充足すると主張する。
b しかし、甲第2号証の「(イ)パネルの形状」に示された2の図のうち上部に記載された図は、「ガラス繊維入り石膏ボードを切断貼合せ」たものであり、「連結部材」によって「連結される」べき「互いに直接的には連結されない状態で前記内部空間を介して互いに向き合って」いる「2つの板部分」が存在しない。
また、甲第2号証の「(イ)パネルの形状」に示された2の図のうち下部に記載された図は、甲2記載技術として認定した「ガラス繊維入り石膏ボードを折曲げ加工したもの」であり、石膏ボードの5つの部分に分割され、折り曲げ加工されて形成されたものであることから、位置関係から「連結部材」に相当すべき「2層目のガラス繊維入り石膏ボード」は、「石膏ボードの5つの部分に分割され」た石膏ボードの一部であり、「断面三角形状の第2の端部ガラス繊維入り石膏ボード」と「接着剤によって接着され」るものであるから、「1枚の石膏ボードから形成され、直方体状」のボード芯材部を備えるものではなく、「当該接着層とは異なる部分を介在させることなく」接着したものでもなく、「2つの板部分それぞれの外縁よりも内側の位置で、前記2つの板部分を連結している」ものでもない。
以上のように、上記(ア)に示したように甲第2号証から相違点に係る「連結部材」を認識できないことに加え、「(イ)パネルの形状」に示された2の図をみても、本件発明2の構成要件(D)に相当する構成を備えるといえるものではないから、申立人の意見を検討しても、甲1発明と甲第2号証に記載された事項を組み合わせて相違点に係る本件発明2の構成とすることが当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
エ 本件発明2は、甲1発明及び甲2記載技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明4及び5
本件発明4及び5は、本件発明2に対して、さらに技術的事項を追加したものであるから、少なくとも上記(2)アの相違点において相違し、上記(2)イに示した理由と同様の理由により、甲1発明及び甲2記載技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-701072