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特許異議申立

2024-700332

板状建築資材、積層板、および板状建築資材の製造方法

審判番号
2024-700332
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-200278
登録番号
7360136
請求日
2024年04月11日
審決日
2025年03月17日
公報発行日
2025年07月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】公立大学法人北九州市立大学
  • 【権利者代理人】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】猪股 純子
審判長/審判官
  • 審判長 古屋野 浩志
  • 審判官 太田 恒明
  • 審判官 ▲高▼橋 祐介
分類
P1651.121-YAA(E04B) / P1651.537-YAA(E04B) / P1651.851-YAA(E04B) / P1651.852-YAA(E04B) / P1651.853-YAA(E04B) / P1651.857-YAA(E04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
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事件の表示

特許第7360136号発明「板状建築資材、積層板、および板状建築資材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7360136号の明細書、特許請求の範囲、図面を訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲、図面のとおり訂正後の請求項〔1-3〕、〔4、5〕について訂正することを認める。 特許第7360136号の請求項2、3、5に係る特許を維持する。 特許第7360136号の請求項1、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7360136号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和4年12月15日(国内優先権主張 令和3年12月15日)に特許出願されたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 令和 5年10月 3日 :特許権の設定登録 令和 5年10月12日 :特許掲載公報発行 令和 6年 4月11日 :特許異議申立人猪俣 純子(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1~5に対する特許異議の申立て 令和 6年 7月 4日付け:取消理由通知書 令和 6年 9月 6日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和 6年10月21日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知) 令和 6年11月21日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 令和6年9月6日付けの訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲および図面を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲および図面のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める、というものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなる。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1) 請求項1~3に係る訂正 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項2における「請求項1に記載の板状建築資材であって、前記バインダー剤は石膏からなり、ホウ酸に対する石膏の重量比が60部以上84部以下であることを特徴とする板状建築資材。」とあるのを、「板状建築資材であって、ホウ酸が主成分であり、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤が含有され、比重が0.70以上0.95以下であり、前記バインダー剤は石膏からなり、ホウ酸に対する石膏の重量比が70.87部以上79.08部以下であることを特徴とする板状建築資材。」に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3における「請求項1または2に記載の板状建築資材と、板状に成形され、且つ前記板状建築資材に積層された石膏を主成分とする建築資材とを含むことを特徴とする積層板。」とあるのを、「請求項2に記載の板状建築資材と、板状に成形され、且つ前記板状建築資材に積層された石膏を主成分とする建築資材とを含むことを特徴とする積層板。」に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 エ 訂正事項4 明細書の段落【0006】における「本発明に係る板状建築資材は、ホウ酸が主成分であり、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤として石膏、しっくい、水ガラス、またはセラミックの少なくとも1つが含有され、比重が0.70以上0.95以下であることを特徴とする。」とあるのを、「本発明に係る板状建築資材は、ホウ酸が主成分であり、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤が含有され、比重が0.70以上0.95以下であり、前記バインダー剤は石膏からなり、ホウ酸に対する石膏の重量比が70.87部以上79.08部以下であることを特徴とすることを特徴とする。」に訂正する。 オ 訂正事項5 図面の図5における「No.04に係る上張り、および下張りの石膏の配合割合」について「79.08」とあるのを、「70.87」に訂正する。 (2) 請求項4及び5に係る訂正 ア 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に「請求項4に記載の板状建築資材の製造方法であって、前記第1工程で攪拌されたホウ酸、および焼石膏に所定の液剤を投入して攪拌させる第2工程と、前記第2工程の後に、内部に空気泡を導入するための泡剤を投入して攪拌させる第3工程とをさらに有することを特徴とする板状建築資材の製造方法。」とあるのを、「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法であって、石膏の原材料となる焼石膏をホウ酸と攪拌させる第1工程と、前記第1工程で攪拌されたホウ酸、および焼石膏に水、および化学混和剤を投入して攪拌させる第2工程と、前記第2工程の後に、内部に空気泡を導入するための泡剤を投入して攪拌させる第3工程と、を有し、ホウ酸と攪拌させる焼石膏のホウ酸に対する重量比が50部以上70部以下であることを特徴とする板状建築資材の製造方法。」に訂正する。 イ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (3) 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2及び3はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~3に対応する本件訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 同様に、本件訂正前の請求項5は請求項4を引用しているものであって、訂正事項7よって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項4及び5に対応する本件訂正後の請求項4及び5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 よって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項ごとにされたものである。 2 訂正の適否 (1) 一群の請求項1~3について ア 訂正事項5 事案に鑑み、訂正事項5から検討する。 願書に最初に添付した図4を、以下に示す。 [図:0001424573000001.jpg] また、願書に最初に添付した、本件訂正前の図5を、以下に示す。 [図:0001424573000002.jpg] そして、訂正事項5に係る、本件訂正後の図5は以下のとおりである。 [図:0001424573000003.jpg] 願書に最初に添付した明細書の【0037】に基づくと、上記図4は、製作石膏ボード、およびホウ酸ボードの製造過程で用いられた各原材料の重量、ならびにホウ酸の重量を100部としたときの各原材料の重量の割合(配合割合)を示し、本件訂正前の図5は製作石膏ボード、およびホウ酸ボードに含まれるホウ酸の重量を100部としたときの石膏の重量の割合(配合割合)、ならびに製作石膏ボード、およびホウ酸ボードの比重を示していると理解できる。 一方、上記図4に記載の「ホウ酸の重量を100部としたときの各原材料の重量の割合(配合割合)」は、同図に記載の「製作石膏ボード、およびホウ酸ボードの製造過程で用いられた各原材料の重量」に基づいて算出することができるものであり、また、本件訂正前の図5に記載の「製作石膏ボード、およびホウ酸ボードに含まれるホウ酸の重量を100部としたときの石膏の重量の割合(配合割合)」は、上記図4に記載の「ホウ酸の重量を100部としたときの焼石膏の重量の割合(配合割合)」に基づいて算出し得るものである。 ここで、試験体10の種類のうち、No.04のものの上張り、および下張りの焼石膏、およびホウ酸の原材料重量(g)からホウ酸の重量を100部としたときの焼石膏の重量の割合(配合割合)を算出する(焼石膏の原材料重量をホウ酸の原材料重量で除算して100を乗算する)と、「59.75部」との値となり、「配合割合」として上記図4に示された値と一致する。同様に、No.06~No.09のものの上張り、および下張りについても算出する(焼石膏の原材料重量をホウ酸の原材料重量で除算して100を乗算する)と「66.67部」となり同様のことがいえる。 したがって、上記図4に記載の試験体10の種類のうち、少なくとも、No.04のものとNo.06~No.09のものに係る「ホウ酸の重量を100部としたときの焼石膏の重量の割合(配合割合)」の値は、「原材料重量」欄の値に対応するものであると認められる。 これに対して、願書に最初に添付した明細書の【0012】には、下記の式(式1)が示されている。 [図:0001424573000004.jpg] そして、上記式1に示される反応により、製造過程において焼石膏が石膏へとなることによって、石膏ボードとして成形されたものにおいて、ホウ酸と石膏との重量比が原料におけるものから変化すると解される。 ここで、上記式1及びこれに示された焼石膏及び石膏のモル質量を踏まえ演算すると、No.06~No.09のものの「石膏の重量の割合(配合割合)」は、上記図4に記載のホウ酸に対する焼石膏の配合割合から、66.67×(172.17/145.15)=79.08(部)となり、本件訂正前の図5に記載のホウ酸と石膏との配合割合の値を充足するが、原材料における焼石膏の重量が異なるNo.04のものにおいても、同図には同じ値が示されており、上記と同様の演算(59.75×(172.17/145.15))により、上張りについて求められる「70.87(部)」との値と、下張りについて求められる「70.87(部)」との値のいずれとも一致していない。 したがって、本件訂正前の図5に記載のNo.04のものに係る石膏の重量の割合(配合割合)の算出過程に誤りがあったか、転記時等において、何らかの錯誤があったと推認され、かつ、訂正後のNo.04のものに係る石膏の重量の割合(配合割合)の「70.87(部)」との値は、上記演算により求められた値と一致するものである。 してみると、本件訂正前の図5に記載された、No.04の石膏の配合割合の数値を、79.07から70.87に修正し、以下に示すように訂正することは、誤記の訂正を目的とする訂正であると認められる。 そして、訂正事項5は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 さらに、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 また、前記目的に加え、この訂正は、請求項1を引用しないものとし独立形式請求項へ改める際に、訂正前の請求項2に「前記バインダー剤は石膏からな」ることが特定されていたことから、訂正前の請求項2が引用する請求項1に記載されたバインダー剤の材料について「バインダー剤として石膏、しっくい、水ガラス、またはセラミックの少なくとも1つが含有され」の記載から「として石膏、しっくい、水ガラス、またはセラミックの少なくとも1つ」を削除することにより、バインダー剤の材料が「石膏」であることを明確にするものであるといえる。してみると、この訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 さらに、この訂正は、訂正事項5により訂正される本件特許明細書等の図5に基づいて、ホウ酸に対する石膏の重量比を「60部以上84部以下」から「70.87部以上79.08部以下」と数値範囲を減縮することによって特許請求の範囲を減縮するものである。 以上のことから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 そして、訂正事項1は、本件特許の明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項1は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 ウ 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項3において「請求項1または2に記載の板状建築資材」と記載されていたのを、訂正前の請求項1との引用関係を解消するために、引用する請求項1を削除して「請求項2に記載の板状建築資材」に訂正するものである。 したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項2は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 エ 訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、当該訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項4 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項2と整合させるために行う明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 一群の請求項4及び5について ア 訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項4を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項4を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 また、前記目的に加え、この訂正は、本件訂正前の請求項5に記載された「所定の液剤」を、本件特許明細書等の【0010】、【0022】等の記載に基づいて、「水、および化学混和剤」に下位概念化することによって特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 そして、訂正事項6は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項6は、カテゴリー、対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項7 訂正事項7は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、当該訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~5について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1~5に係る訂正事項1~7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 小括 上記1から3のとおりであるから、訂正事項5は誤記の訂正を目的とし、訂正事項1~4は特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、訂正事項6及び7は、特許請求の範囲の減縮、及び、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、訂正事項5は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、訂正事項1~4、6、7は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、訂正事項1~7は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 5 本件訂正についてのまとめ 以上のことから、本件訂正請求による訂正事項1~7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法であり、明細書、特許請求の範囲、図面を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲、図面のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、〔4、5〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、2A等の記号は、分説するために当審合議体が付与した。 【請求項1】(削除) 【請求項2】 2A 板状建築資材であって、 2B ホウ酸が主成分であり、 2C ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤が含有され、 2D 比重が0.70以上0.95以下であり、 2E 前記バインダー剤は石膏からなり、 2F ホウ酸に対する石膏の重量比が70.87部以上79.08部以下である 2G ことを特徴とする板状建築資材。 【請求項3】 3A 請求項2に記載の板状建築資材と、板状に成形され、且つ前記板状建築資材に積層された石膏を主成分とする建築資材とを含む 3B ことを特徴とする積層板。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 5A 比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法であって、 5B 石膏の原材料となる焼石膏をホウ酸と攪拌させる第1工程と、 5C 前記第1工程で攪拌されたホウ酸、および焼石膏に水、および化学混和剤を投入して攪拌させる第2工程と、 5D 前記第2工程の後に、内部に空気泡を導入するための泡剤を投入して攪拌させる第3工程と、 を有し、 5E ホウ酸と攪拌させる焼石膏のホウ酸に対する重量比が50部以上70部以下である 5F ことを特徴とする板状建築資材の製造方法。 第4 特許異議の申立てについて 1 特許異議の申立ての概要 (1) 申立理由の概要及び証拠方法 申立人は、証拠方法として以下の甲第1~7号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の申立理由1~3を主張している。 ア 証拠方法 甲1:特許第6322359号公報 甲2:一般社団法人 石膏ボード工業会のHPの抜粋,「種類と規格」,インターネット,[online],公知日不明,インターネット,<URL:https://www.gypsumboard-a.or.jp/type/regular.html> 甲3:国際公開第2020/054838号 甲4:特公昭58-6704号公報 甲5:特許第5729995号公報 甲6:特開2018-155050号公報 甲7:国際公開第2021/241707号 イ 申立理由1(進歩性) 本件訂正前の請求項1~5に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、甲1~7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 ウ 申立理由2(明確性) 本件特許発明1~5は、明確ではないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1~5に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 エ 申立理由3(サポート要件) 本件特許発明1~5は、発明の詳細な説明に記載したものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1~5に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 令和6年7月4日付け取消理由通知の概要 本件特許発明1~5に係る特許に対して、当審合議体が令和6年7月4日付けで特許権者に通知した取消理由1及び2の概要は、以下のとおりである。 (1) 取消理由1(明確性) 本件特許発明1、3~5は、明確ではないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1、3~5に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2) 取消理由2(サポート要件) 本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1~4に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 当審合議体の判断 1 取消理由通知について (1) 取消理由1について ア 取消理由1の詳細 取消理由1の詳細は以下のとおりである。 (ア) 本件特許発明1は、「ホウ酸が主成分であ」る点が特定されているが、ここにおける「主成分」の定義が明確でない。 本件特許発明1を引用し、ホウ酸に対する石膏の重量比が特定されていない本件特許発明3の構成も、同様に明確でない。 (イ) 本件特許発明4は、「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法」の発明であるが、製造方法に用いられるいずれの材料も比重が1よりも大きいものであることが当業者にとって明らかであるから、「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法」の発明としての本件特許発明4が明確に把握できない。 (ウ) 本件特許発明5における「所定の液剤」がどのようなものであるか不明であり、本件特許発明5の構成が明確に特定できない。 イ 取消理由1についての判断 (ア) 取消理由1(ア)について 本件訂正により、本件特許の請求項1~5に係る発明は、上記第3に記載した本件訂正発明1~5に訂正された。そして、取消理由1(ア)の対象であった請求項1は削除されるとともに、本件訂正発明3は請求項1を引用しないものとなったため、取消理由1(ア)は解消された。 (イ) 取消理由1(イ)について 本件訂正により、取消理由1(イ)の対象であった請求項4は削除されたため、取消理由1(イ)は解消された。 (ウ) 取消理由1(ウ)について 本件訂正により、本件特許発明5における「所定の液剤」は、本件訂正発明5における「水、および化学混和剤」に訂正された。 よって、本件特許発明5における「所定の液剤」が何であるかが明確になり、取消理由1(ウ)は解消された。 (2) 取消理由2について ア 取消理由2の詳細 取消理由2の詳細は以下のとおりである。 (ア) バインダー剤について 本件特許発明1には「ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤として石膏、しっくい、水ガラス、またはセラミックの少なくとも1つが含有され」る点が特定されているが、本件特許明細書等には、バインダー剤として石膏を用いた例のみが記載されており、本件特許明細書等に記載された内容を、本件特許発明1に特定された範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。 本件特許発明1を引用する本件特許発明3についても同様である。 (イ) ホウ酸に対する石膏の重量比について a 本件特許発明1において、「ホウ酸が主成分であ」ることが、ホウ酸が「最も多い成分」である場合であるとすると、バインダー剤として石膏を採用した場合において、ホウ酸に対する石膏の重量比が100部未満である場合が、本件特許発明1に含まれることになるが、そのような例は本件特許明細書等に記載されていないことから、本件特許発明1に特定された範囲まで、本件特許の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 本件特許発明1を引用する本件特許発明3についても同様である。 b 本件特許明細書等においてサポートされているホウ酸100部に対する石膏の配合割合は79.07部~79.08部であり、その数値範囲の範囲外のものは、本件特許明細書等において、何も示されておらず、ホウ酸に対する石膏の重量比に関して、本件特許発明2に特定された範囲まで、本件特許明細書等に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 本件特許発明2を引用する本件特許発明3についても同様である。 (ウ) 板状建築資材の比重について 本件特許発明4は「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法」の発明であるが、「焼石膏」と「ホウ酸」は、いずれも比重が1よりも大きいものであることが当業者にとって明らかであるが、本件特許発明4には、板状建築資材の比重が0.70以上0.95以下とするための工程が特定されていないことから、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものを含むものである。 イ 取消理由2についての判断 (ア) 取消理由2(ア)について 本件訂正により、取消理由2(ア)の対象であった請求項1は削除されたため、取消理由2(ア)は解消された。 (イ) 取消理由2(イ)aについて 本件訂正により、取消理由2(イ)aの対象であった請求項1は削除されたため、取消理由2(イ)aは解消された。 (ウ) 取消理由2(イ)bについて 本件訂正により、本件特許発明2において特定された「ホウ酸に対する石膏の重量比」の数値範囲に関して、「60部以上84部以下」であったものが、「70.87部以上79.08部以下」に限定された。 そして、「70.87部以上79.08部以下」の数値範囲は本件特許明細書等に記載に裏付けられたものであると認められることから、取消理由2(イ)bは解消された。 (エ) 取消理由2(ウ)について 本件訂正により、取消理由2(ウ)の対象であった請求項4は削除されたため、取消理由2(ウ)は解消された。 (3) 取消理由通知のまとめ 以上のことから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。 2 申立理由について (1) 申立理由の具体的内容 申立理由の具体的内容は、以下のとおりである。 ア 申立理由1(進歩性) (ア) 本件特許発明1は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到したものである。 (イ) 本件特許発明1は、甲4に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された周知技術、及び、甲5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到したものである。 (ウ) 本件特許発明2は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到したものである。 (エ) 本件特許発明2は、甲4に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された周知技術、及び、甲5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到したものである。 (オ) 本件特許発明3は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された周知技術、及び、甲6に記載された周知技術に基づいて、又は、甲4に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された周知技術、甲5に記載された周知技術、及び、甲6に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到したものである。 (カ) 本件特許発明4は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された周知技術、及び、甲7に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到したものである。 (キ) 本件特許発明5は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、甲3に記載された周知技術、及び、甲7に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到したものである。 イ 申立理由2(明確性) (ア) 本件特許発明1における「主成分」の技術的意味が不明であり、本件特許発明1は明確でない。 本件特許発明1を引用する本件特許発明3も同様に明確でない。 (イ) 本件特許発明2における「重量比」の基準が不明であり、本件特許発明2は明確でない。 本件特許発明2を引用する本件特許発明3も同様に明確でない。 (ウ) 本件特許発明4は、その構成に、「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材を製造する」のに必要になる要件が全く規定されておらず、明確でない。 (エ) 本件特許発明5における「所定の液剤」の「所定」がどのようなものであるか不明であり、本件特許発明5の構成が明確に特定できない。 ウ 申立理由3(サポート要件) (ア) 本件特許発明1は「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材」に関するが、本件特許発明1には、ホウ酸とバインダー剤類が規定されているのみであり、それらの比重は大きいことから、これらの成分のみで「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材」の範囲まで発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化することはできない。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び本件特許発明3についても同様である。 (イ) 本件特許発明1には「ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤として石膏、しっくい、水ガラス、またはセラミックの少なくとも1つが含有され」と特定されているが、本件特許明細書等には、バインダー剤が「石膏」であるもののみが記載されており、この点においても、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化することはできない。 本件特許発明1を引用する本件特許発明2及び本件特許発明3についても同様である。 (ウ) 本件特許発明4は、「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法」に関し、「焼石膏をホウ酸と攪拌させる第1工程」と「ホウ酸と攪拌させる焼石膏のホウ酸に対する重量比が50部以上70部以下であること」のみが規定されている。 しかしながら、本件特許明細書等の【0010】には「板状建築資材1は、ホウ酸に、バインダー剤、水、分散作用により流動性を改善するための化学混和剤、および接着剤に係る原材料を混入して攪拌し、泡剤に係る原材料を添加して製造されている。」との断定がされている。 また、本件特許明細書の段落【0023】では、「第1工程、および第2工程が行われた後の工程として、第1工程で攪拌された構成粉剤と、第2工程で攪拌された構成液剤とを混ぜ合わせる第3工程(混和工程)を有する。」との断定がされている。 してみると、原材料及び工程に関して、本件特許発明4の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化することはできない。 本件特許発明4を引用する本件特許発明5についても同様である。 (2) 取消理由通知に採用した申立理由について ア 申立理由2(ア)、(ウ)及び(エ)について 取消理由1(ア)は申立理由2(ア)を包含するものであり、取消理由1(イ)は申立理由2(ウ)を包含するものであり、取消理由1(ウ)は申立理由2(エ)を包含するものである。 そして、取消理由1についての判断は、上記1(1)イにおいて検討したとおりである。 イ 申立理由3(イ)及び(ウ)について 取消理由2(ア)は申立理由3(イ)を包含するものであり、取消理由2(ウ)は申立理由3(ウ)を包含するものである。 そして、取消理由2についての判断は、上記1(2)イにおいて検討したとおりである。 (3) 取消理由通知に採用しなかった申立理由について ア 申立理由1について (ア) 各甲号証 a 甲1 (a) 甲1に記載された事項 甲1には、以下の記載がある(下線は、当審合議体が付与。以下同様。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、放射線遮蔽壁に関する。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明の放射線遮蔽壁は、乾式石膏ブロックが積み重ねられて構築された放射線遮蔽壁であり、前記乾式石膏ブロックは、石膏及び水のみからなる放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(a)、水と石膏とホウ素、ホウ素化合物、ガドリニウム、カドミウム、及びリチウムからなる群より選択される元素又はその同位体の少なくとも1種とを含有する放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(b)、及び水と石膏と鉛、タングステン、ビスマス、鉄、酸化鉄、鉄鉱石、磁鉄鉱、赤鉄鉱、重晶石、バリウム、及びバリウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種の粒子と、を含有する放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(c)の少なくとも2種を含み、前記壁の厚み方向へ、前記乾式石膏ブロック(a)、前記乾式石膏ブロック(b)及び前記乾式石膏ブロック(c)から選ばれた、互いに放射線遮蔽効果が異なる2種以上の前記乾式石膏ブロックで構築された壁を複数配列した放射線遮蔽壁である。 〔乾式石膏ブロック〕 本発明の放射線遮蔽壁〔以下、適宜、「遮蔽壁」と称する〕に使用される乾式石膏ブロック〔以下、適宜、単に「石膏ブロック」と称する〕は、水と石膏とを含む放射線遮蔽材組成物により成形されてなり、好ましくは、壁を正面から見たとき、乾式石膏ブロック同士の合せ面は、壁の表面から裏面に亘って直線面ではない形状を有する。 なお、本明細書では、遮蔽壁10の放射線が入射する側の面を遮蔽壁の「表面」と、放射線の入射する面とは反対側の面を「裏面」と、それぞれ称することがある。 図1(A)本発明の放射線遮蔽壁10に使用される石膏ブロック12の一態様を表す斜視図及び側面図であり、図1(B)は、図1(A)に示す石膏ブロック12の側面図、及び、石膏ブロック12と組み合わせて使用される、遮蔽壁10の端面に用いるための1/2サイズの変型石膏ブロック14を示す側面図である。 図1(A)に示す石膏ブロック12は、側面図に記載された矢印方向からの放射線を遮蔽する目的で使用され、該石膏ブロック12の上面、下面は直線面を有しないために、石膏ブロック12、14を積み重ねて構築された遮蔽壁10では、上下面における目地部分(継ぎ目部分)を放射線が貫通することがない。 【0016】 図2(A)は、図1(A)、(B)に示す石膏ブロック12、14を積み重ねて構築された遮蔽壁10の斜視図であり、図2(B)は該遮蔽壁10の側面図である。 図2(B)に示されるように、側面図に明らかなように、石膏ブロック12、14の上下の接合面では継ぎ目において放射線が貫通しない態様となっており、図2(A)に示されるように、壁の厚み方向へ複数の乾式石膏ブロックを積んで形成される場合には、壁の表面側の乾式石膏ブロック12端面の裏面側に、2列目の乾式石膏ブロック12の表面が位置するように配置することで、石膏ブロック12の側面の目地からの放射線の貫通を防止することができる。」 「【0021】 〔放射線遮蔽材組成物〕 乾式石膏ブロック12を構成する放射線遮蔽材組成物は、少なくとも水と石膏とを含む。 即ち、放射線、特に遮蔽が困難とされる中性子線は、弾性散乱によるエネルギー吸収により遮蔽することが有効であるために、水素密度の高い材料を用いることが好ましく、そのような観点から、石膏を選択したものである。なお、汎用のコンクリートも含水率は高いものの、成形性、硬化速度が、本発明に係る石膏を主剤とする組成物に比較して劣り、得られたブロックの重量が同じ形状においてはより大きくなり、構築や移動が困難であるため、本発明においては石膏を主剤とする組成物を用いる。 放射線遮蔽材組成物に用いる石膏は、公知の硫酸カルシウムを含有する石膏材料であって、水を含んで速やかに硬化しうる材料であれば、任意に選択して用いることができる。石膏の種類については「石膏石灰ハンドブック 技報堂(1972年刊)」に詳細に記載されており、ここに記載の硬化性石膏であればいずれも使用しうる。 石膏の種類としては、水で硬化する半水石膏(CaSO4・1/2H2O:三方晶)を好ましく用いることができる。半水石膏としては結晶系の相違により、一般的にはα型半水石膏(α石膏)とβ型半水石膏(β石膏)に分類され、いずれも用いることができる。なかでも、比重が大きく、迅速に硬化し、且つ、硬化物の密度や圧縮強度がより高いという点ではα石膏が好ましい。一方、β石膏は標準混水量が90%と、α石膏の35%に対してより高いために、強度を必要としない箇所に使用する場合には、高い中性子線遮蔽効果を有する石膏ブロックとすることが期待できる。強度を必要としない箇所としては、例えば、比較的荷重の掛らない当該放射線遮蔽壁の上部に存する壁などが挙げられ、そのような箇所に好適に使用される。」 「【0023】 本発明に係る放射線遮蔽材組成物には、石膏に加えてさらに、各種放射線に対する放射線遮蔽性を向上させる目的で、以下に述べる如き放射線遮蔽能を有する成分を併用することも好ましい態様である。 前記放射線遮蔽材組成物に、さらに、ホウ素、ホウ素化合物、ガドリニウム、カドミウム、及びリチウムからなる群より選択される元素又はその同位体の少なくとも1種の熱中性子吸収断面の大きな元素を含有することで、得られる石膏ブロックの中性子線、特に、熱中性子以下のエネルギーを有する中性子線の遮蔽効率をより向上させることができる。同位体としては、例えば、ホウ素であれば、11B、10Bなどが挙げられる。ここで、熱中性子吸収断面の大きな元素とは、「放射線物理と加速器安全の工学 第2版」(中村尚司 著)地人書館、155ページ、図3.45に記載されている水素の弾性散乱H(n,n)Hよりも大きい断面積を持つものをいう。代表的には、10B、6Li、Cd、Gdなどが挙げられる。 なかでも、効果が高く、入手が容易であることから、ホウ素又はその同位体或いは、コレマナイト、硼酸、無水硼酸、B4Cなどから選ばれるホウ素化合物が好ましい。 また、熱中性子以上のエネルギーの中性子(例えば、速中性子など)に対しては、弾性散乱によるエネルギー吸収がより有効であるため、水素密度の高い材料、例えば、ポリエチレン、パラフィン、コンクリートなどを添加することが好ましい。これらはいずれも、添加後に硬化するものであれば、流動状態、例えば、粘性の高い液状成分として放射線遮蔽材組成物に添加してもよく、粒子、骨材、ゲル状物などの固形分として放射線遮蔽材組成物に添加してもよい。 本発明に使用される石膏は既述のように含水率が高いため、弾性散乱による中性子の遮蔽材として適している。また、放射線遮蔽材組成物における水に代えて、或いは、水に加えて、より水素密度の高い「重水」を添加することも中性子線遮蔽効果の観点からは好ましい。 上記中性子線遮蔽効果向上のために用いられる各化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 化合物の添加量としては、石膏100質量部に対し、150質量部~10質量部の範囲であることが効果の観点から好ましく、100質量部~25質量部の範囲であることがより好ましい。」 【図1】 「 [図:0001424573000005.jpg] 」 【図2】 「 [図:0001424573000006.jpg] 」 (b) 甲1発明 上記(a)より、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。 「乾式石膏ブロックが積み重ねられて構築された放射線遮蔽壁であり、 前記乾式石膏ブロックは、石膏を主剤としており、 石膏及び水のみからなる放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(a)、 水と石膏とホウ素、ホウ素化合物、ガドリニウム、カドミウム、及びリチウムからなる群より選択される元素又はその同位体の少なくとも1種とを含有する放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(b)、 及び水と石膏と鉛、タングステン、ビスマス、鉄、酸化鉄、鉄鉱石、磁鉄鉱、赤鉄鉱、重晶石、バリウム、及びバリウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種の粒子と、を含有する放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(c) の少なくとも2種を含み、 前記壁の厚み方向へ、前記乾式石膏ブロック(a)、前記乾式石膏ブロック(b)及び前記乾式石膏ブロック(c)から選ばれた、互いに放射線遮蔽効果が異なる2種以上の前記乾式石膏ブロックで構築された壁を複数配列した 放射線遮蔽壁。」(以下「甲1発明」という。) (c) 甲1に記載された事項 また、上記(a)に示した【0023】の記載事項より、甲1には以下の事項が記載されていると認められる。 「放射線遮蔽材組成物に、各種放射線に対する放射線遮蔽性を向上させる目的で、ホウ素又はその同位体或いは、コレマナイト、硼酸、無水硼酸、B4Cなどから選ばれるホウ素化合物を石膏100質量部に対し、150質量部~10質量部の範囲で添加する点。」 (以下「甲1記載事項」という。) b 甲4 (a) 甲4に記載された事項 甲4には、以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 1 クーナコバイト(2MgO・3B2O3・13H2O)、メーヤーホツフエライト(2CaO・3B2O3・7H2O)、コレマナイト(2CaO・3B2O3・5H2O)等の結晶水を含有するボレート骨材と、半水せつこう、カルシウムアルミネート系セメント等の無機接着材を水と混練成型した硬化成形体であって、該硬化成形体中にボロンBを5%以上含有することを特徴とする中性子線遮蔽材。」 (b) 甲4発明 上記(a)より、甲4には以下の発明が記載されていると認められる。 「クーナコバイト(2MgO・3B2O3・13H2O)、メーヤーホツフエライト(2CaO・3B2O3・7H2O)、コレマナイト(2CaO・3B2O3・5H2O)等の結晶水を含有するボレート骨材と、半水せつこう、カルシウムアルミネート系セメント等の無機接着材を水と混練成型した硬化成形体であって、 該硬化成形体中にボロンBを5%以上含有する 中性子線遮蔽材。」(以下「甲4発明」という。) c 甲2 甲2には、石膏ボード製品に関するJIS規格が記載されており、JIS A 6901に定められている基準に基づくと、石膏ボードの比重は、0.65~0.90であることが記載されている。 d 甲3 甲3の【0001】、【0007】、【0014】~【0024】、【0030】等の記載を参照すると、ホウ酸を用いて不燃性を確保できる不燃材及び該不燃材の製造方法が記載されている。 e 甲5 甲5の【0007】等の記載を参照すると、天然のホウ素含有鉱物としては、コレマナイトやクルナコバイトなどが知られている点が記載されており、コレマナイト等を原料に利用することで、中性子吸収体が、ホウ酸を含む形態のものになることが記載されている。 f 甲6 甲6の【0023】には、「厚さ9.5mmの石こうボードと厚さ15mmの石こうボードを2枚重ねにした壁面材が用いられている。」と記載されており、異なる構成の板状建築資材を積層して機能性を高めることについての記載がある。 g 甲7 (a) 甲7に記載された事項 甲7には、以下の記載がある。 「[0001] 本発明は、中性子線遮蔽石膏系建築用ボード、中性子線遮蔽石膏系建築用ボードの製造方法に関するものである。」 「[0023] 本実施形態の建築用ボードは、ホウ素を例えばホウ素含有材料として含有できる。ホウ素含有材料は、ホウ素を含有する材料であれば特に限定されないが、ホウ酸カルシウム、炭化ホウ素、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム、硼化カルシウムから選択された1種類以上を含むことが好ましい。」 「[0048] 本実施形態の中性子線遮蔽石膏系建築用ボードの製造方法(以下、「建築用ボードの製造方法」とも記載する)は以下の工程を有することができる。 [0049] 少なくとも焼石膏、ホウ素含有材料、減水剤、および水を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程。 石膏スラリーを成形する成形工程。 成形工程で得られた成形体を硬化させる硬化工程。 [0050] 原料は、ホウ素含有材料を、二水石膏100質量部に対して、含有するホウ素の量が1.0質量部以上120質量部以下となる割合で含有できる。」 「[0053] 硬化工程後に得られる建築用ボードの乾燥比重は、0.65以上1.6以下であることが好ましい。 (1)製造工程について 以下、各工程について説明する。 (1-1)混練工程 混練工程では、焼石膏、ホウ素含有材料、減水剤、および水を含有する原料を混練できる。各原料について説明する。 (1-1-1)原料について (A)焼石膏 焼石膏は硫酸カルシウム・1/2水和物ともいい、水硬性を有する無機組成物である。本実施形態の建築用ボードの製造方法で用いる焼石膏としては、天然石膏、副産石膏および排煙脱硫石膏等の単独若しくは混合した石膏を大気中、または水中(蒸気中を含む)で焼成して得られるα型、β型焼石膏のいずれかを単独で、もしくは両者の混合品を使用できる。本実施形態の石膏板の製造方法で用いる焼石膏は、焼石膏を得る際に微量に生成するIII型無水石膏を含んでいても問題ない。」 「[0070] 例えば、石膏スラリーを形成する際には泡を添加することもできる。泡の添加量を調整することにより得られる建築用ボードの比重を所望の範囲とすることができる。」 「[0079] ミキサー22は、搬送ラインと関連する所定の位置、例えば、搬送ラインの上方または横に配置することができる。そして、単一のミキサー22において、石膏スラリーの原料である焼石膏と、ホウ素含有材料と、減水剤と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造できる。 [0080] なお、既述のように、焼石膏等の固体は予め混合撹拌して混合物である石膏組成物としてからミキサー22に供給することもできる。 [0081] また、必要に応じて泡を石膏スラリーの分取口221、222、223より添加し、泡の添加量を調整することにより任意の密度の石膏スラリーとすることもできる。例えば泡の添加量を調整することで、密度の異なる第1の石膏スラリー23と、第2の石膏スラリー24とを調製することができる。泡は分取口ではなく、ミキサー22に石膏スラリーの他の原料とともに供給することもできる。」 (b) 甲7の記載から認定できる事項 [0023]における「ホウ素含有材料」として「ホウ酸」が選択され得る点の記載、[0049]における「少なくとも焼石膏、ホウ素含有材料、減水剤、および水を含有する原料を混練し、石膏スラリーを形成する混練工程」との記載、[0079]における「単一のミキサー22において、石膏スラリーの原料である焼石膏と、ホウ素含有材料と、減水剤と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造できる。」との記載と、[0080]における「焼石膏等の固体は予め混合撹拌して混合物である石膏組成物としてからミキサー22に供給することもできる。」の記載より、以下の事項が認定できる。 「固体である焼石膏及びホウ酸を予め混合撹拌して混合物である石膏組成物としてからミキサー22に供給し、ミキサー22において、石膏組成物と、減水剤と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造する点。」 (c) 甲7発明 上記(a)及び(b)より、甲7には、以下の発明が記載されている。 「固体である焼石膏及びホウ酸を予め混合撹拌して混合物である石膏組成物としてからミキサー22に供給し、ミキサー22において、石膏組成物と、減水剤と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造する混練工程、 石膏スラリーを成形する成形工程、 成形工程で得られた成形体を硬化させる硬化工程 を備え、 石膏スラリーを形成する際には泡を添加することもでき、泡を石膏スラリーに添加し、泡の添加量を調整することにより任意の密度の石膏スラリーとし、 原料は、ホウ素含有材料を、二水石膏100質量部に対して、含有するホウ素の量が1.0質量部以上120質量部以下となる割合で含有でき、 乾燥比重は、0.65以上1.6以下である中性子線遮蔽石膏系建築用ボードの製造方法。」 (以下「甲7発明」という。) (イ) 本件訂正発明2について a 甲1発明に基づく容易性に関して (a) 対比 本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「乾式石膏ブロック」と、本件訂正発明2の「板状建築資材」とは、建築資材である点で一致する。 甲1発明の「水と石膏とホウ素、ホウ素化合物、ガドリニウム、カドミウム、及びリチウムからなる群より選択される元素又はその同位体の少なくとも1種とを含有する放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(b)、及び水と石膏と鉛、タングステン、ビスマス、鉄、酸化鉄、鉄鉱石、磁鉄鉱、赤鉄鉱、重晶石、バリウム、及びバリウム化合物からなる群より選択される少なくとも1種の粒子と、を含有する放射線遮蔽材組成物により形成された乾式石膏ブロック(c)の少なくとも2種を含」むことと、本件訂正発明2の「ホウ酸が主成分であり、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤が含有され、比重が0.70以上0.95以下であり、前記バインダー剤は石膏からなり、ホウ酸に対する石膏の重量比が70.87部以上79.08部以下である」ことは、ホウ酸はホウ素化合物といえるから、ホウ素化合物と石膏とを含む点で一致する。 (b) 一致点及び相違点 上記(a)より、本件訂正発明2と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「建築資材であって、 ホウ素化合物と、 石膏を含む 建築資材。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点1> 建築資材の形状に関して、本件訂正発明2は、建築資材が板状であるのに対して、甲1発明は、ブロックである点。 <相違点2> ホウ素化合物に関して、本件訂正発明2は、ホウ素化合物がホウ酸であるとともに、ホウ酸が主成分であるのに対して、甲1発明は、その点が特定されていない点。 <相違点3> 石膏に関して、本件訂正発明2は、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤として、石膏が含有されるのに対して、甲1発明は、その点が特定されていない点。 <相違点4> 比重に関して、本件訂正発明2は、比重が0.70以上0.95以下であるのに対して、甲1発明は、比重が不明である点。 <相違点5> ホウ素化合物に対する石膏の重量比に関して、本件訂正発明2は、ホウ酸に対する石膏の重量比が70.87部以上79.08部以下であるのに対して、甲1発明は、その点が不明である点。 (c) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点2、3及び5について検討する。なお、相違点2、3及び5は、いずれもホウ素化合物と石膏に関する特定事項であるので、まとめて検討する。 甲2及び甲3には、上記(ア)c及び(ア)dに記載した事項が記載されており、甲2には石膏ボードについての言及が、甲3には「ホウ酸」についての言及があることが確認できる。 しかしながら、甲2及び甲3には、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤として石膏を含有させた点については記載も示唆もされていない。 また、甲1発明は、石膏とホウ素化合物を含むものであるが、石膏を主剤とするものであるから、甲1発明に、甲3に記載された事項を適用することによってホウ酸を主成分とする構成を導き出すことはできない。 さらに、甲1発明は、放射線の遮蔽を目的とする「放射線遮蔽壁」の発明であるから、甲1発明のホウ素化合物として、不燃性の確保のためにホウ酸を用いた甲3に記載された事項を採用してホウ酸を用いることの動機付けが存在するとは認められない。 してみると、相違点2、3及び5に係る本件訂正発明2の構成は、甲1発明に、甲2に記載された事項、及び、甲3に記載された事項を適用することによって、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 さらに、上記の点に関しては、甲4~7においても、記載も示唆もされていない。 (d) 小括 よって、他の相違点に係る本件訂正発明2の構成について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明、甲2に記載された事項、及び、甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件訂正発明2は、甲1発明、及び、甲2~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 b 甲4発明に基づく容易性に関して (a) 対比 本件訂正発明2と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「中性子線遮蔽材」と、本件訂正発明2の「板状建築資材」とは、部材である点で一致する。 甲4発明の「クーナコバイト(2MgO・3B2O3・13H2O)、メーヤーホツフエライト(2CaO・3B2O3・7H2O)、コレマナイト(2CaO・3B2O3・5H2O)等の結晶水を含有するボレート骨材と、半水せつこう、カルシウムアルミネート系セメント等の無機接着材を水と混練成型した硬化成形体であって、該硬化成形体中にボロンBを5%以上含有する」ことと、本件訂正発明2の「ホウ酸が主成分であり、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤が含有され、比重が0.70以上0.95以下であり、前記バインダー剤は石膏からなり、ホウ酸に対する石膏の重量比が70.87部以上79.08部以下である」ことは、ホウ素化合物と石膏とを含む点で一致する。 (b) 一致点及び相違点 上記(a)より、本件訂正発明2と甲4発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「ホウ素化合物と、 石膏を含む 部材。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点6> 部材の形状及び用途に関して、本件訂正発明2は、部材が板状建築資材であるのに対して、甲4発明は、中性子線遮蔽材であり、形状が特定されていない点。 <相違点7> ホウ素化合物に関して、本件訂正発明2は、ホウ素化合物がホウ酸であるのに対して、甲4発明は、クーナコバイト(2MgO・3B2O3・13H2O)、メーヤーホツフエライト(2CaO・3B2O3・7H2O)、コレマナイト(2CaO・3B2O3・5H2O)等の結晶水を含有するボレート骨材である点。 <相違点8> 石膏に関して、本件訂正発明2は、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤が含有され、前記バインダー剤は石膏からなるものであるのに対して、甲4発明は、石膏を含有するが、つなぐものとしての機能を備えるか否か明らかでない点。 <相違点9> 比重に関して、本件訂正発明2は、比重が0.70以上0.95以下であるのに対して、甲4発明は、比重が不明である点。 <相違点10> ホウ素化合物に対する石膏の重量比に関して、本件訂正発明2は、ホウ酸に対する石膏の重量比が70.87部以上79.08部以下であるのに対して、甲4発明は、その点が不明である点。 (c) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点7、8及び10について検討する。なお、相違点7、8及び10は、いずれもホウ素化合物と石膏に関する特定事項であるので、まとめて検討する。 甲2、甲3及び甲5には、上記(ア)c、(ア)d及び(ア)eに記載した事項が記載されており、甲2には石膏ボードについての言及が、甲3及び甲5には「ホウ酸」についての言及があることが確認できる。 しかしながら、甲4発明は、中性子線の遮蔽を目的とする「中性子線遮蔽材」の発明であるから、甲4発明のボレート骨材に代えて、不燃性の確保のためにホウ酸を用いた甲3に記載された事項を採用してホウ酸を用いることの動機付けが存在するとは認められない。 さらに、仮に、甲4発明に甲3に記載された事項を適用し得たとしても、石膏をボレート骨材という鉱物内のものどうしをつなぐようになすことを当業者が容易に想到し得たとは認められない。 してみると、相違点7、8及び10に係る本件訂正発明2の構成は、甲4発明に、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項、及び、甲5に記載された事項を適用することによって、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 さらに、上記の点に関しては、甲1、甲6及び甲7においても、記載も示唆もされていない。 (d) 小括 よって、他の相違点に係る本件訂正発明2の構成について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲4発明、甲2に記載された事項、甲3に記載された事項、甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本件訂正発明2は、甲4発明、甲1~3に記載された事項、及び、甲5~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 c 本件訂正発明2についてのまとめ 以上のことから、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲2~7に記載された事項、又は、甲4発明、甲1~3に記載された事項、及び、甲5~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ) 本件訂正発明3について 本件訂正発明3は本件訂正発明2を引用するものであり、上記相違点2、3及び5又は上記相違点7、8及び10に係る本件訂正発明2の構成を備えるものであるから、本件訂正発明2と同じ理由により、甲1発明及び甲2~7に記載された事項、又は、甲4発明、甲1~3に記載された事項、及び、甲5~7に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (エ) 本件訂正発明5について 申立人は、本件特許発明4及び本件特許発明5に関して、甲1発明に甲2、甲3及び甲7に記載された事項を適用することによって当業者が容易に想到し得るものであり、進歩性を有しない旨を主張しているが、本件訂正発明5は製造方法の発明であり、製造方法に特徴がある甲7発明を主引用発明として対比するほうが相違点が少なくなると認められることから、甲7発明を主引用発明とし、以下検討する。 a 対比 本件訂正発明5と甲7発明とを対比する。 甲7発明の「乾燥比重は、0.65以上1.6以下である中性子線遮蔽石膏系建築用ボードの製造方法」と、本件訂正発明5の「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法」とは、「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法」である点で一致する。 甲7発明の「焼石膏」、「ホウ酸」は、それぞれ、本件訂正発明5の「焼石膏」、「ホウ酸」に相当する。 甲7発明の「減水剤」は本件訂正発明5の「化学混和剤」に含まれると認められるから、両者は「化学混和剤」が投入される点で一致する。 甲7発明の「固体である焼石膏及びホウ酸を予め混合撹拌して混合物である石膏組成物としてからミキサー22に供給し、ミキサー22において、石膏組成物と、減水剤と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造する混練工程」のうち、「固体である焼石膏及びホウ酸を予め混合撹拌して混合物である石膏組成物と」することは、本件訂正発明5の「石膏の原材料となる焼石膏をホウ酸と攪拌させる第1工程に相当する。 甲7発明の上記「石膏スラリーを製造する混練工程」のうち、「石膏組成物と、減水剤と、水と、場合によってはさらに各種添加剤とを混練し、石膏スラリーを製造する」ことは、本件訂正発明5の「前記第1工程で攪拌されたホウ酸、および焼石膏に水、および化学混和剤を投入して攪拌させる第2工程」に相当する。 甲7発明の「泡を石膏スラリーに添加し、泡の添加量を調整することにより任意の密度の石膏スラリーとする」ことは、本件訂正発明5の「前記第2工程の後に、内部に空気泡を導入するための泡剤を投入して攪拌させる第3工程」に相当する。 b 一致点及び相違点 上記aより、本件訂正発明5と甲7発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「比重が0.70以上0.95以下である板状建築資材の製造方法であって、 石膏の原材料となる焼石膏をホウ酸と攪拌させる第1工程と、 前記第1工程で攪拌されたホウ酸、および焼石膏に水、および化学混和剤を投入して攪拌させる第2工程と、 前記第2工程の後に、内部に空気泡を導入するための泡剤を投入して攪拌させる第3工程と、 を有する 板状建築資材の製造方法。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点11> 製造される板状建築資材に関して、本件訂正発明5は、板状建築資材の製造方法であるのに対して、甲7発明は、中性子線遮蔽石膏系建築用ボードの製造方法である点。 <相違点12> ホウ酸と攪拌させる焼石膏のホウ酸に対する重量比に関して、本件訂正発明5は、「ホウ酸と攪拌させる焼石膏のホウ酸に対する重量比が50部以上70部以下である」のに対して、甲7発明は、ホウ素含有材料を、二水石膏100質量部に対して、含有するホウ素の量が1.0質量部以上120質量部以下となる割合で含有できる点は特定されているが、ホウ素含有材料としてホウ酸を用いた場合の適正な二水石膏又は焼石膏とホウ酸の重量比は不明である点。 c 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点12について検討する。 甲1、甲2及び甲3には、上記(ア)a、(ア)c及び(ア)dに記載した事項が記載されており、甲1の記載より、上記(ア)cに示した甲1記載事項が認定でき、石膏100質量部に対するホウ素化合物の添加量の数値範囲は記載されているが、ホウ酸を用いた場合の石膏100質量部に対する添加量は示されていない。 そして、甲1記載事項は、各種放射線に対する放射線遮蔽性を向上させる目的で放射線遮蔽材組成物にホウ素化合物を添加する場合の添加量を特定するものであるから、放射線遮蔽性を向上させる目的でホウ素化合物を添加する甲1発明に、不燃性の確保のためにホウ酸を用いた甲3に記載された事項を適用することに動機付けが存在しない。 してみると、甲1発明に甲3に記載された事項を適用してホウ素化合物としてホウ酸を選択し、その上で甲1記載事項に基づいて石膏のホウ酸に対する重量比を算出した上で数値範囲を特定することは、甲3に記載された事項の適用の動機付けの観点から、当業者が容易になし得ることとは認められない。 したがって、相違点12に係る本件訂正発明5の構成は、甲7発明に、甲1~3に記載された事項を適用することによって、当業者が容易に想到することできたものであるとはいえない。 d 小括 よって、他の相違点に係る本件訂正発明5の構成について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲7発明、及び、甲1~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 申立理由2(イ)について 申立理由2(イ)は、「本件特許発明2における「重量比」の基準が不明であり、本件特許発明2は明確でない」というものであるが、「ホウ酸に対する石膏の重量比が60部以上84部以下」という場合には、ホウ酸100部に対する石膏の重量比のことであり、質量比の基準が「ホウ酸100部」であることが明らかであるから、申立理由2(イ)に関しては、本件特許発明2が明確でないとまではいえない。 そして、本件訂正発明2についても明確でないとまではいえない。 よって、申立理由2(イ)において主張された「重量比」の基準が不明であるという点のみによっては、本件訂正発明2に係る本件特許を取り消すことはできない。 本件訂正発明2を引用する本件訂正発明3についても同様であり、申立理由2(ウ)によって、本件訂正発明3に係る本件特許を取り消すことはできない。 ウ 申立理由3(ア)について 申立理由3(ア)は、本件特許発明1における、「比重が大きい」成分のみが規定された特定では、「比重が0.70以上0.95以下」である板状建築資材の範囲まで発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化することができないというものであるが、発明の詳細な説明の記載を参照すると、本件特許発明1は、気泡の導入が前提となっており、原材料のうちの多くの部分を占めるものの比重が大きかったとしても、板状建築資材としてそのような範囲の比重のものは実現でき、そのことが記載されていると解することができることから、本件特許発明1が、発明の詳細な説明に記載された範囲外のものを含むものとは認められない。 そして、本件訂正により本件特許発明1は削除され、「比重が0.70以上0.95以下である」とした特定は、本件訂正発明2における特定とされたが、上記のとおり、申立理由3(ア)において主張された点のみによって、本件訂正発明2に係る本件特許を取り消すことはできない。 本件訂正発明2を引用する本件訂正発明3についても同様である。 エ 令和6年11月21日付け意見書(申立人)について (ア) 意見書(申立人)におけるの主張の概要 申立人は、上記意見書において、概ね以下の主張を行っている。 a 本件特許明細書にはNo.04に係る石膏の重量の割合(配合割合)について算出すると、59.75×(172.17/145.15)=70.87(部)となることについて記載がされておらず、また、上記算出の基礎となる図4に記載の原材料の焼石膏の配合が66.67部と同一の数値であるのに対して、No.05のホウ酸ボードの場合は79.07、No.06~No.09の場合は79.08であり同一の値ではなく、この点からも算出値であるとする合理的な根拠がない。 b 請求項3において、「石膏を主成分とする建築資材」における「建築資材」は明確でなく、また、本件特許明細書等には、板状以外の石膏を主成分とする建築資材は記載されていないことからサポート要件を満たしていない。 c 請求項5についてされた訂正事項6において、「焼石膏に水、および化学混和剤を投入して」とする訂正がされた。 訂正後に追加された「化学混和剤」に関し本件特許明細書に記載されていることは、濃度3%のポリカルボン酸型高分子界面活性剤水溶液(化学混和剤)が殆どである。また、 【0015】の記載も特定の機能性材料に関することのみであるのに対して訂正事項6で訂正された「化学混和剤」は極めて範囲が広いことは明白である。したがって、訂正後の請求項5に特定された範囲まで、本件特許明細書等に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 d 請求項5についてされた訂正事項6において、請求項5に「ホウ酸と撹拌させる焼石膏のホウ酸に耕する重量比が50部以上70部以下である」とする要件が追加された。上記で追加された数値範囲が合理的なものであることを客観的に根拠づける記載は何も示されていない。 e 甲1の【0023】に「ホウ素化合物として硼酸」が記載され、さらに「該化合物の添加量としては、石膏100部に対し、150質量部~10質量部の範囲であることが好ましく」とした記載がされている。上記した甲1に記載の範囲を、本件特許発明と同様に硼酸100部に対する石膏の添加量として示すと、「66.67部~1000部」となる。 本件特許発明を特徴づける、訂正後の請求項2で規定している「59.75部以上66.67部以下」の範囲、請求項5で規定している「50部以上70部以下」とする範囲のいずれについても、上記した甲1が開示している範囲と重なっている。 (イ) 申立人の主張についての検討 a 上記(ア)aに対して 申立人の主張のように、確かに本件特許明細書には、図5に記載の石膏の配合割合が上記算出値であることについての明確な記載は存在しないが、No.06~No.09に関して、図4に記載された数値に基づき、合理的な計算を行えば、図5に示された石膏の配合割合の数値は導き出せるものと認められる。 そしてNo.05の数値は、図4に記載の原材料のホウ酸100部に対する焼石膏の配合が66.67部とNo.06~No.09と同一の数値であるのに対して、図5に示された石膏の配合割合の数値は小数点以下2桁目が7か8かで異なるが、計算に用いられる各々の数値は有効数字が4桁であり、石膏の配合割合の数値の小数点以下2桁目は、4桁の数値の最小の桁であり、上記各々の数値の有効数字以下の桁の処理によって4桁の数値の最小の桁が繰り上がるか繰り下がるかは、計算上の誤差の問題といえ、図5に示された石膏の配合割合の数値が図4に記載された数値に基づかないものであることの根拠とはならないと認められる。 よって、申立人の主張は採用できない。 b 上記(ア)bに対して 本件訂正発明3は、「積層板」の発明であり、「板状に形成され」と特定されていることから、「建築資材」は板状のものであり、その記載は明確であるとともに、板状の「建築資材」は本件特許明細書等に記載されていることから、サポート要件を満たしており、申立人の主張は採用できない。 c 上記(ア)cに対して 本件特許明細書等の【0010】には、「板状建築資材1は、ホウ酸に、バインダー剤、水、分散作用により流動性を改善するための化学混和剤、および接着剤に係る原材料を混入して攪拌し、泡剤に係る原材料を添加して製造されている。」と記載されており、甲7に記載された減水剤が、一般に化学混和剤と称され用いられることは当業者の技術常識であるから、本件訂正発明5において、粉体の混合物である「攪拌されたホウ酸、および焼石膏」に対して「水、および化学混和剤」を投入する場合に、化学混和剤がどのような性質のものであるかは、当業者にとって明らかであり、本件訂正発明5における「化学混和剤」が、申立人が主張するような「極めて範囲が広い」ものとは認められない。 よって、この点においても申立人の主張は採用できない。 d 上記(ア)dに対して 「ホウ酸と撹拌させる焼石膏のホウ酸に対する重量比が50部以上70部以下である」とした数値範囲は、図5に示された59.75部の数値と66.67部の数値に基づくものであると認められるが、上記の数値範囲は、臨界的意義が求められるものではなく、製造上の原材料の混合割合の目安を規定したものであるから、その数値限定の内と外で作用効果上の顕著な差異が求められるものではなく、加えて、数値範囲を充足するものが本件特許明細書等において、実施例として記載されているとともに、上限値及び下限値をそれぞれ70部及び50部としたとしても、本件訂正発明2及び3の作用効果が損なわれると解するべき特段の事情も見当たらないから、技術常識を勘案しても、一般化ないし拡張ができないとは認められない。 よって、この点においても申立人の主張は採用できない。 e 上記(ア)eに対して 甲1~7には、ホウ酸同士をつなぐためのバインダー剤として石膏を含有させた点について記載も示唆もされていない。 また、甲1の記載に基づいて、ホウ素化合物100部に対する石膏の添加量の数値範囲からホウ酸100部に対する石膏の添加量の数値範囲が算出できたとしても、甲1には、ホウ素化合物としてホウ酸を選択した場合におけるホウ酸に対する石膏の質量部についての記載は存在せず、さらに、甲1に記載されたホウ素化合物から甲3の記載を参酌して不燃性の確保を目的としてホウ酸を選択し、その上で甲1の記載に基づいて、石膏とホウ素化合物の添加量の数値範囲からホウ酸を用いた場合を換算し、ホウ酸の質量部と石膏の質量部の関係を求めることは、ホウ素を放射線遮蔽性の向上を目的として添加した甲1発明に、不燃性の確保を目的とする甲3に記載された事項を適用することにそもそも動機付けが存在しないし、その上で、さらに甲1に記載された事項に戻り、ホウ酸の質量部と石膏の質量部の関係を特定することに合理性は見いだせない。 よって、申立人の主張を参酌しても、本件訂正発明2、3及び5についての進歩性を否定することはできない。 (ウ) 意見書(申立人)における主張についてのまとめ 上記(イ)のとおり、意見書における申立人の主張を参酌しても、本件訂正後の請求項2、3及び5に係る特許を取り消す根拠は見いだせない。 オ 取消理由及び申立理由についてのまとめ 以上のことから、取消理由及び申立理由によっては、本件訂正後の請求項2、3及び5に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項2、3及び5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項2、3及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項1及び4は、本件訂正により削除された。これにより、請求項1及び4に係る特許についての特許異議の申立ては、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、不適法な特許異議の申立てであって、その補正をすることができないものであるといえるから、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。

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2024-700332

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    共通の審決分類: 537・E04B、851・E04B、853・E04B
  • 2023-700133異議申立 / 2026-02-19 / 請求成立(取消)ノンダイアフラムブレース構造
    共通の審決分類: 121・E04B、537・E04B

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