特許異議申立
2022-700913
薬剤カセットおよび薬剤供給装置
- 審判番号
- 2022-700913
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-043045
- 登録番号
- 7045054
- 請求日
- 2022年09月15日
- 審決日
- 2023年06月14日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社タカゾノ
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】前田 雅史
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 内田 博之
- 審判官 久島 弘太郎
- 分類
- P1652.121-Y (B65G) / P1652.536-Y (B65G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7045054号発明「薬剤カセットおよび薬剤供給装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7045054号の請求項1~4、6及び7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7045054号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年3月9日に出願され、令和4年3月23日にその特許権の設定がされ、令和4年3月31日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 9月15日 :特許異議申立人前田雅史(以下、「異議申立人」という。)による請求項1~4、6~7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年12月 7日付け:取消理由通知書
令和5年 2月 3日 :特許権者による意見書の提出
令和5年 3月13日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 4月24日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
特許第7045054号の請求項1~7の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
薬剤が充填されたチューブ容器を、複数の前記チューブ容器が前後方向に並ぶように収納する、収納部と、
前記チューブ容器を前方に送り、前記チューブ容器の後方への移動を阻止する送り部とを備える、薬剤カセットであって、
前記チューブ容器は、筒状の筒形状部と、前記チューブ容器の末端に設けられた扁平な底部とを有し、
前記送り部は、前記筒形状部のうち最大径部分に当接する当接部を有し、
前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を後方から前方へ押すことで、前記チューブ容器を前方に送る、薬剤カセット。
【請求項2】
前記当接部は、左右方向における複数の位置に設置可能である、請求項1に記載の薬剤カセット。
【請求項3】
前記最大径部分の移動経路を上から覆って前記最大径部分の上方への移動を規制する規制部をさらに備える、請求項1または2に記載の薬剤カセット。
【請求項4】
前記底部の移動経路は、前記規制部で覆われない、請求項3に記載の薬剤カセット。
【請求項5】
前記収納部における前方寄りの部分に設けられ、前記収納部から、複数の前記チューブ容器のうち先頭のチューブ容器を下方に放出できるように、下方に開口する開口部と、
前記開口部を閉塞し、前記開口部に対して後方に相対移動を行なうことで前記開口部を開放する閉塞部と、
前記閉塞部の前端部よりも上方に突起し、前記閉塞部の前端部と一体に前記相対移動を行なう突起部と、
前記最大径部分の移動経路を上から覆って前記最大径部分の上方への移動を規制する規制部とをさらに備え、
前記規制部は、前記先頭のチューブ容器の上方への移動を許容し、複数の前記チューブ容器のうち先頭から2番目以降のチューブ容器の上方への移動を規制する、請求項1または2に記載の薬剤カセット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の薬剤カセットを複数備え、
さらに、複数の前記チューブ容器のうち先頭のチューブ容器を前記収納部から取り出す容器取出部を備える、薬剤供給装置。
【請求項7】
薬剤が充填されたチューブ容器を、複数の前記チューブ容器が前後方向に並ぶように収納する、収納部と、
前記チューブ容器を前方に送り、前記チューブ容器の後方への移動を阻止する送り部と、
複数の前記チューブ容器のうち先頭のチューブ容器を前記収納部から取り出す容器取出部とを備え、
前記チューブ容器は、筒状の筒形状部と、前記チューブ容器の末端に設けられた扁平な底部とを有し、
前記送り部は、前記筒形状部のうち最大径部分に当接する当接部を有し、
前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を後方から前方へ押すことで、前記チューブ容器を前方に送る、薬剤供給装置。」
第3 取消理由の概要
令和5年3月13日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項7に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項7に係る特許は取り消すべきものである。
引用文献:特開2005-237712号公報(異議申立人の提出した甲第3号証)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献の記載事項
取消理由通知において引用した引用文献(特開2005-237712号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1)「【0001】
この発明は、病院薬局等における調剤業務を支援するための薬品払出装置に関する。詳しくは、種々の薬品類を予め多数のカセットに分けて収納しておき必要に応じて自動的に払い出す薬品払出装置に関し、さらに、薬品類の収納に加えて、収納薬品類の個数をカセット毎に把握しうる薬品払出装置に関する。
なお、薬品類には、アンプル・バイアル・造影剤等の容器入り注射薬の他、筒箱・ボトル等に収容された錠剤・散剤・軟膏・目薬等の医薬品や、その他の補助薬品等も、カセットに整列収納可能ならば、該当する。」
(2)「【実施例1】
【0022】
本発明の薬品払出装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)及び(b)が装置全体の外観正面図、(c)が一組の計数ユニット及びカセットの正面図、(d)がその縦断面図、(e)がセンサ基板の下面図、(f)が一組の計数ユニット及びカセットの右側面図、(g)がその縦断面図、(h)がカセットの平面図である。また、図2は、(a)が扉や前面パネルを外して露見させた装置内部の正面図、(b)がカセット支持棚とそこに設けられた払出駆動機構の側面図、(c)がその正面図、(d)がそこにカセットを装着したところである。さらに、図3(a)~(c)は、何れも払出駆動機構の斜視図であって、カセット支持棚へのカセット装着に随伴して支持棚側払出駆動機構とカセット側払出駆動機構とが係合するところを順に示している。また、図3(d)~(f)は、何れもカセット先頭の薬品類排出口のところの縦断右側面図であって、(d)が説明のため可動蓋を取り外したところ、(e)が可動蓋を取り付けたところ、(f)が可動蓋を多少回したところである。
【0023】
この薬品払出装置10は(図1(a)及び(b)と図2(a)を参照)、透明な扉11の奥に設けられ(図では中央から左側へ亘り)装置の大半を占める薬品庫部分(12+13)と、その横に隣接して(図では右側に)設けられ前面が開放されている搬器並置機構(14+15)と、その上端位置など見易くて操作もし易いところに設置された操作入力部材兼表示部材としてのタッチパネル16と、それらの上方に確保され常態では前面パネルに隠れている電装スペース(17+18)とを具えたものである。薬品庫部分については、手前に即ち扉11寄りに、払出搬送機構13が設けられ、その後方には、多段のカセット支持棚12からなるカセット支持機構が設けられている。」
(3)「【0029】
計数ユニット20の下板・底板には、センサ22の列と並走するスリットが形成されており、その中に付勢子24が遊挿されている。付勢子24は、上端部を計数ユニット20内に納め、下端部を計数ユニット20から外へ突き出しており、計数ユニット20の下板を上下から挟む転動輪によって、スリット内を円滑に走行移動しうるようになっている。付勢子24の上端には小片の磁石23が付設されており、これにセンサ22が感応するので、付勢子24の位置を検出して薬品類収納個数を得ることができる。また、付勢子24の中には、ゼンマイ25が納められており、その弾撥力を利用して、付勢子24がスリットの何処にあっても概ね一定の前進力が付勢子24に生じるようになっている。そして、このような計数ユニット20は、計数手段要部と付勢機構とを支持機構に対して一緒に着脱しるよう又は移動しうるように纏めたものとなっている。
【0030】
カセット30は(図1(c)~(h)参照)、後述するアンプル入り注射薬などの薬品類60を整列収納するため箱体で出来ている。アンプル等の丸物を横にして前後一列に並べておけるように、内部の収納空間のサイズが決められている。後背板には、付勢子24を通過可能な後端切欠33が形成され、天板部分すなわち上面は、付勢子24の前進と後退の移動を可能にするため、少なくとも後端切欠33から前方の先端へ至る中央の直線部分を含む範囲(図示の例では半分以上)が開放されているが、運搬時や着脱時に収納薬品類60が乱れたり飛び出したりしないよう押さえ蓋35が付けられている。補充時等に薬品類60を収納するため、薬品類60より大きな後尾補充口34も形成されている。
【0031】
このようなカセット30をカセット支持棚12に装着して計数ユニット20の直下に置くと、付勢子24の下端部が後端切欠33からカセット30内に進入し、カセット30内に薬品類60が収納されていれば、その収納薬品類の最後尾に付勢子24が直接作用して、収納薬品類60を前方へ向けて推すようになっている(図1(a)~(d)では紙面を貫いて手前へ、また、図1(e)~(h)では右から左へ、付勢がなされる)。その付勢の先にあるカセット30の前端には、前板に代えて可動蓋32が設けられている。可動蓋32は、半円筒の軸回転可能な部材で、カセット30前端の横に突き出た傘歯車31と連結されており、傘歯車31を回転させると可動蓋32が軸線を中心にして回転する即ち軸回転するようになっている。
【0032】
カセット30には(図1(h)参照)、傘歯車31の回転駆動のために払出駆動機構70が付設されている。カセット側の払出駆動機構70は、傘歯車31を介して可動蓋32を軸回転させることにより、カセット30前端の薬品類排出口36(図3(d)も参照)から収納薬品類60を排出させるものであるが、カセット30への動力源等の装備を避けるために、回転伝動と係合とに要する傘歯車71とブラケット72とスプリング73と係合子74とを具えていて、後述するカセット支持棚(支持機構)側の払出駆動機構80と係合した状態で、可動蓋32の軸回転駆動を行うようになっている。
【0033】
傘歯車71は、傘歯車31と噛合して回転軸の向きをカセット引出方向・着脱方向に変えるものであり、係合子74は、一端部に回転軸が突出して設けられ他端部に係合溝75が形成されたものであり、ブラケット72は、カセット30の側板に植設されていて傘歯車71及び係合子74の回転軸を軸支するものであり、スプリング73は、係合子74を係合溝75形成端部方向へ付勢するものであり、傘歯車71の回転軸と係合子74の回転軸は、回転伝動可能かつ軸方向摺動可能に嵌合しており、傘歯車71は軸方向に移動しないよう軸支されているが、係合子74は軸方向に移動可能な状態で軸支されている。
【0034】
払出搬送機構13は(図2(a)参照)、水平に(図では左右に)延びた本体部の中に水平搬送機構13bを組み込んだものであり、これを昇降機構13dで上下に移動させて、多段のカセット支持棚12の総てをカバーするようになっている。水平搬送機構13bは、カセット30から取り出された薬品類を、所定の位置に搬送するためのものであり、具体的には搬器棚14の搬器50へ送り込むもので、そのために例えばベルトコンベア等からなり、本体部のほぼ全長に亘る水平な搬送路を構成している。水平搬送機構13bの終端(図では右側)は搬器棚14の薬品類投入口(図では左側)まで及んでおり、その終端近傍には、一時貯留等のため搬送路を開閉するシャッタ13cが設けられている。このような水平搬送機構13bは、多段の搬器棚14のうち所望する任意の棚の薬品類投入口へ昇降移動することで、複数の搬器に対する仕分け収納を行えるものとなっている。」
(4)「【0042】
カセット30への薬品類60の新規収納や追加補充は(図4(c)~(e)参照)、薬品類60が図示のようなアンプル容器入りの場合、太い部分が押さえ蓋35の下になるよう横にして後尾補充口34からカセット30の中へ入れ、順に前端の可動蓋32側へ送りこめば良い。
そして、薬品類60を整列収納したカセット30は、対応する計数ユニット20の直ぐ下のところへ持って行き、後端をカセット支持棚12の上に乗せ、後方へ押し込んで、カセット支持棚12にセットする。」
(5)「【0045】
それから(図5(b)参照)、払出搬送機構13が、適宜昇降して、調剤指示で指定された薬品類60を収納しているカセット30のところへ行き、それから、そこの払出駆動機構70+80による可動蓋32の回転駆動が行われる。そうすると、そこの可動蓋32の内壁・内周部分に納まっていた先頭の薬品類60が(図5(c)参照)、可動蓋32の回転によって排出される(図5(d)参照)。そのとき、落下する薬品類60によって反射面13aからの反射光が遮られ、それに移載検出センサ13eが感応するので、薬品類60の排出が確認される。また、次の薬品類60は、可動蓋32の外壁・外周部分によって前進を阻まれ、カセット30内にとどまる。」
(6)「【0055】
また(図6(c)参照)、付勢子24が「I」形から「L」形になったことに伴い、それを通過させるため、後端切欠33も「L」形になっている。このような形状変更により、アンプル等の薬品類60が小径部分より大径部分の短いようなものであったとしても、傾き難い大径部分が押されることから、薬品類60の整列状態を損うおそれがないので、付勢を安定な状態で行うことができる。」
(7)「【0058】
[その他]
なお、上記の各実施例では、薬品類60がアンプル入り注射薬の場合を述べたが、薬品類60は、それに限られるものでなく、他の形状の容器や箱に入ったものでも良く、カセット30に整列収納できるものであれば容器等に入っていなくても良い。その場合、薬品類60の形状に適合するよう、カセット30のサイズや可動蓋32の形状が、適宜設計変更される。(省略)」
2 引用発明
上記1(1)~(7)の記載事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「薬品類60の容器を、複数の薬品類60の容器が前後一列に並ぶように収納するカセット30の内部の収納空間と、
薬品類60の容器を前方に向けて推す付勢子24が遊挿されている計数ユニット20と、
複数の薬品類60の容器のうち先頭の薬品類60の容器をカセット30の内部の収納空間から取り出す可動蓋32及び払出搬送機構13とを備え、
前記計数ユニット20は、薬品類60の容器の大径部分を推す付勢子24を遊挿しており、
前記計数ユニット20は、前記付勢子24によって、薬品類60の容器の大径部を前方に向けて推すことで、薬品類60の容器を前進させる、薬品払出装置10。」
第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した、請求項7(進歩性)の取消理由について
(1)対比
本件発明7と引用発明とを対比する。
引用発明の「薬品類60の容器」と、本件発明7の「薬剤が充填されたチューブ容器」とは、「薬剤が充填された容器」の限りで共通する。
そして、引用発明の「前後一列に並ぶ」ことは、本件発明7の「前後方向に並ぶ」ことに相当し、以下同様に、
「カセット30の内部の収納空間」は「収納部」に、
「前方に向けて推す」ことは「前方に送り、」「後方への移動を阻止する」ことに、
「付勢子24が遊挿されている計数ユニット20」は「送り部」に、
「可動蓋32及び払出搬送機構13」は「容器取出部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「前記薬品類60の容器の大径部分を推す付勢子24を遊挿しており」という事項と、本件発明7の「前記筒形状部のうち最大径部分に当接する当接部を有し」という事項は、「前記薬品が充填された容器の最大径部分に当接する当接部を有し」との限りで共通する。
さらに、引用発明の「薬品類60の容器の大径部を前方に向けて推すこと」は本件発明7の「前記最大径部分を後方から前方へ押すこと」に、
「前進させる」ことは「前方に送る」ことに、
「薬品払出装置10」は「薬剤供給装置」に、それぞれ相当する。
したがって、本件発明7と引用発明とは、以下の一致点1で一致し、相違点1で相違する。
[一致点1]
「薬剤が充填された容器を、複数の前記薬剤が充填された容器が前後方向に並ぶように収納する、収納部と、
前記薬剤が充填された容器を前方に送り、前記薬剤が充填された容器の後方への移動を阻止する送り部と、
複数の前記薬剤が充填された容器のうち先頭の薬剤が充填された容器を前記収納部から取り出す容器取出部とを備え、
前記送り部は、前記薬剤が充填された容器の最大径部分に当接する当接部を有し、
前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を後方から前方へ押すことで、前記薬剤が充填された容器を前方に送る、薬剤供給装置。」
[相違点1]
薬剤が充填された容器に関し、本件発明7は、薬剤が充填された「チューブ」容器であって、「前記チューブ容器は、筒状の筒形状部と、前記チューブ容器の末端に設けられた扁平な底部とを有し」ており、送り部が有する当接部は、「前記筒形状部のうち」最大径部分に当接するのに対し、引用発明の薬品類60の容器の形状及び付勢子24が押す部分については、このような特定がない点。
(2)相違点1の検討
以下、相違点1について検討する。
引用文献には、「薬品類には、アンプル・バイアル・造影剤等の容器入り注射薬の他、筒箱・ボトル等に収容された錠剤・散剤・軟膏・目薬等の医薬品や、その他の補助薬品等も、カセットに整列収納可能ならば、該当する。」(段落【0001】参照。)と記載されており、軟膏は、一般的に筒状の容器又はチューブ状の容器によって提供されるといえども、引用文献にはチューブ状の容器が、カセットに整列収納可能なものとして具体的に記載されているわけではない。
そして、チューブ状の容器は、先端の蓋を取り付ける部分と、中央の大径の筒状の部分と、末端の扁平な部分とが存在するが、一般に中央の大径の筒状の部分の直径より、末端の扁平な部分の幅が大きいこと、引用文献の【図4(e)】から可動蓋32の軸方向長さがカセット30の幅方向と略同一である点が看取されることから、引用発明の可動蓋32の凹み形状を、チューブ状の容器における中央の大径の筒状の部分の直径に合わせた形状とした場合は、可動蓋32を払い出しのために回転させた際に、カセット30の底と可動蓋32の凹み形状のエッジとの間に、チューブ状の容器における末端の扁平な部分の一部を噛み込んでしまい、チューブ状の容器を円滑に排出できないことが予測される。また、可動蓋32の凹み形状を、チューブ状の容器における末端の扁平な部分の幅に合わせた形状とした場合は、可動蓋32の凹み形状がチューブ状の容器における中央の大径の部分より大きくなるため、可動蓋32を払い出しのために回転させた際に、カセット30の底と可動蓋32の凹み形状のエッジとの間に、今回払い出されるチューブ状の容器に加えて、次に払い出されるチューブ状の容器における中央部分の一部が噛み込んでしまい、チューブ状の容器を円滑に排出できないことが予測される。
また、引用文献には、「薬品類60の形状に適合するよう、カセット30のサイズや可動蓋32の形状が、適宜設計変更される。」(段落【0058】参照。)と記載されているものの、カセット30のサイズや、可動蓋32の形状を、どのように設計変更すれば、可動蓋32をチューブ状の容器の払い出しのために回転させた際に、チューブ状の容器における末端の扁平な部分の一部や、次に払い出されるチューブ状の容器の一部を噛み込むことがなくなるのか、当業者といえども、容易に想到することはできない。
そうであれば、引用発明の薬品類60の容器をチューブ状の容器とし、上記相違点1に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明7は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由に採用しなかった異議申立人の主張について(進歩性)
(1)異議申立人の主張の概要
異議申立人は、証拠として以下の甲第1~4号証(以下、「甲1」~「甲4」という)を提出し、特許異議申立書の3(4)ウ(ア)~(カ)(第11~19ページ)において、
ア 本件発明1、2、6、7は、甲1に記載された発明及び甲2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
イ 本件発明3、4は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
ウ 本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
本件発明1~4、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものであるから、取り消すべき旨主張する。
甲1:特開2005-102749号公報
甲2:特開2000-255651号公報
甲3:特開2005-237712号公報(上記引用文献)
甲4:特開2006-116179号公報
(2)甲1の記載事項等
ア 甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0029】
図1から図3を参照すると、本発明の実施形態に係るハイブリッド型の薬剤払出し装置10は、一つの筐体(装置本体11)内に、整列収容型薬剤払出し装置(第1の薬剤払出し部)12、ランダム収容型薬剤払出し装置(第2の薬剤払出し部)13、及び特殊薬剤用薬剤払出し装置(第3の薬剤払出し部)14A,14Bを備えている。また、薬剤払出し装置10は、整列型、ランダム型、及び特殊型の薬剤払出し装置12,13,14A,14Bから払い出された薬剤をストッカ(薬剤蓄積部)15に搬送するための搬送部16を備えている。さらに、空のトレー17をストッカ15と対向する位置に搬送し、ストッカ15から薬剤を供給済みのトレー17を装置外に搬送するトレー搬送部18を備えている。」
(イ)「【0031】
図4から図12をさらに参照して整列収容型薬剤払出し装置12について説明する。装置本体11には水平方向に延びる棚20が上下方向に複数段設けられている。各棚20毎に複数個の薬剤カセット(第1の容器)21が着脱可能に装着されている。
【0032】
図6に示すように、各薬剤カセット21には本例ではアンプルである薬剤(第1の薬剤)22Aが一列に並んで整列されている。図4に示すように、棚20の薬剤カセット21が装着される位置では装置本体1の背面側に、回転軸の一端部に設けた従動ギア23を介して後述するロータ駆動機構46により回転駆動されるロータ(第1の払出し機構)25が設けられている。ロータ25は、切除されることにより形成された円弧面25aで、薬剤カセット21からの薬剤22Aを受け止めて回転することにより、次の薬剤22Aを外周面25bで支持し、円弧面5aで受け止めた薬剤を一つずつ取り出して払い出す。
【0033】
図5及び図6を参照すると、薬剤カセット21は縦長の箱状で、上面が支軸26を中心として回転自在に設けた蓋体27によって閉塞されている。蓋体27には、中央部に長手方向に延びる押え部27aが形成され、収容した薬剤22Aに当接して所望の整列状態を得ることができるようになっている。また、図11に示すように、薬剤カセット21の前面側の端面には、薬剤カセット番号、収容される薬剤の名称、及び収容量を記載した表示部28が設けられている。図6に示すように、薬剤カセット21の前面側には棚20に対して薬剤カセット21を閉鎖状態に維持するための係止部29が形成されている。一方、薬剤カセット21の背面側の端部近傍には、薬剤カセット21を棚20から取り外すと突出位置となって薬剤の脱落を防止、薬剤カセット21を棚に対して正しく装着すると引き込み位置となって薬剤22Aの払出しを可能とするストッパ30が設けられている。
【0034】
図5及び図6を参照すると、薬剤カセット2の内部底面には、長手方向に延びる係止ラック32が形成されている。この係止ラック32は、長手方向に所定ピッチで設けた複数の縦長の凹部32aで構成されている。この係止ラック32上に付勢ユニット(付勢機構)33が配置されている。この付勢ユニット33は定荷重ばね34により背面側へ付勢されている。また、下端側に図示しないピニオン部を有し、上端側に操作部35aを有する回転可能な係止部材35を備えている。蓋体27を開放した状態では係止部材35のピニオン部が係止ラック32に噛み合うことにより付勢ユニット33の移動が阻止されるが、蓋体27を閉鎖すると操作部35aが押し下げられることでピニオン部と係止ラック32の係合が解除される。その結果、付勢ユニット33を介して作用する定荷重の付勢力により薬剤カセット21内の薬剤は前面側から背面側に向けて付勢される。」
(ウ)「【0037】
ここで図2及び図3を参照して搬送部16の一部であるリフター41について説明する。装置本体11内の整列収容型薬剤払出し装置12及びランダム収容型薬剤払出し装置13よりも背面側には上下方向に延びるガイドロッド42が配設されており、リフター41は概略的に示す駆動機構43(例えばタイミングベルト、プーリ、及び駆動用モータからなる)によりガイドロッド42に沿って上昇可能である。ストッカ15は水平方向(X方向)に延びる細長い箱状であり、前面側に整列収容型薬剤払出し装置12及びランダム収容型薬剤払出し装置13から薬剤を投入するための開口44が設けられる。また、リフター41の底板45は概略的に示す駆動機構46により開閉駆動可能であり、底板45を開放することで内部の薬剤が排出される。ストッカ15の幅ないしはX方向の寸法は整列収容型薬剤払出し装置12の棚20の幅以上に設定されており、同一棚段の薬剤カセット21であればストッカ15を昇降移動させることなく薬剤を払い出すことができる。」
イ 甲1の【図6】には、付勢ユニット33と、薬剤カセット21の背面側の、薬剤22Aを払出す開口との間において、複数の薬剤22Aが前後方向に一列に並んで、薬剤カセット21の内部に収容されている構成と、アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分が、付勢ユニット33の背面側の面に当接している状態が見て取れる。
ウ 上記アの記載事項、及び上記イの図示内容から、甲1には、次の甲1発明1及び甲1発明2が記載されていると認められる。
[甲1発明1]
「アンプルの形態の薬剤22Aを、複数の薬剤22Aが前後方向に一列に並ぶように収容する、薬剤カセット21の内部と、
薬剤22Aを前面側から背面側へ付勢する付勢ユニット33とを備える薬剤カセット21であって、
付勢ユニット33は、アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分に当接する背面側の面を有し、
付勢ユニット33は、背面側の面によって、アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分に当接して、前面側から背面側へ付勢する、薬剤カセット21。」
[甲1発明2]
「アンプルの形態の薬剤22Aを、複数の薬剤22Aが前後方向に一列に並ぶように収容する、薬剤カセット21の内部と、
薬剤22Aを前面側から背面側へ付勢する付勢ユニット33と、
複数の薬剤22Aのうち背面側の薬剤22Aを薬剤カセット21の内部から払い出す開口とを備え、
複数の薬剤22Aのうち背面側の端の1つを前記内部から取り出すロータ25と、を備え、
付勢ユニット33の背面側の面は、アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分に当接して、前面側から背面側へ付勢する、薬剤払い出し装置10。」
(3)甲2の記載事項
ア「【0004】図8は、遮光性包装材によって包装された包装アンプルを示す。この包装アンプルAは、アンプル1の外周に遮光性を有する包装材2を巻付け、その包装材2の両端部を圧着して扁平部3を設けている。」
イ「【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記公報に記載された貯溜供給装置によって図8に示すような包装アンプルAを機械的に取り出ししようとすると、包装アンプルAは両端部に扁平部3を有しているため、アンプル収納容器内において包装アンプルAに詰まりが生じ、一本ずつ確実に払い出すことができない。」
ウ「【0027】いま、容器本体11内に包装アンプルAが単列状態に収納される状態において、ロータ20をその端部に接続したモータMによって図3の矢印で示す方向に回転すると、最下位の包装アンプルAはロータ20の収容溝21内に侵入し、その収容溝21内に侵入した包装アンプルAはロータ20の回転により払出し口19から排出されると共に、その包装アンプルAに続く包装アンプルAはロータ20の外周の円筒面23で受けられて落下するのが阻止される。
【0028】このため、容器本体11内に収納される包装アンプルAはロータ20の回転によって下部から一本ずつ払い出されることになる。」
エ「【0036】コンベヤベルト34は包装アンプルAの胴体部4を支持して払出し口36に向けて移送させるようになっており、上記胴体部4がコンベヤベルト34で支持される状態において、両端の扁平部3は収納空間35と非接触の状態に支持されるようになっている。」
(4)甲3発明
甲3には、上記第4の1(1)~(7)のとおりの事項が記載されている。
そして、上記甲3の記載事項から、甲3には、次の甲3発明が記載されていると認められる。
[甲3発明]
「薬品類60の容器を、複数の薬品類60の容器が前後一列に並ぶように収納するカセット30の内部の収納空間を備える、カセット30。」
(5)本件発明1について(甲1発明1・進歩性)
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「アンプルの形態の薬剤22A」と本件発明1の「薬剤が充填されたチューブ容器」とは「薬剤が充填された容器」の限りで共通する。
甲1発明1の「前後方向に一列に並ぶように収容する」ことは本件発明1の「前後方向に並ぶように収納する」ことに相当するから、甲1発明1の「薬剤カセット21の内部」は本件発明1の「収納部」に相当する。
甲1発明1の「薬剤22Aを前面側から背面側へ付勢する付勢ユニット33」と本件発明1の「前記チューブ容器を前方に送り、前記チューブ容器の後方への移動を阻止する送り部」とは、「前記容器を一方に送り、前記容器の他方への移動を阻止する送り部」の限りで共通する。
甲1発明1の「薬剤カセット21」は、本件発明1の「薬剤カセット」に相当する。
甲1発明1の「アンプルの形態の薬剤22A」と、本件発明1の「前記チューブ容器は、筒状の筒形状部と、前記チューブ容器の末端に設けられた扁平な底部とを有」する構成とは、「前記容器は、筒状の筒形状部を有」する構成の限りで共通する。
甲1発明1の「アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分に当接」する構成は、本件発明1の「前記筒形状部のうち最大径部分に当接」する構成に相当するから、甲1発明1の付勢ユニット33の「背面側の面」は、本件発明1の「当接部」に相当する。
甲1発明1の「付勢ユニット33は、背面側の面によって、アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分に当接して、前面側から背面側へ付勢する」ことと、本件発明1の「送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を後方から前方へ押すことで、前記チューブ容器を前方に送る」こととは、「送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を他方から一方へ押すことで、前記チューブ容器を一方に送る」ことの限りで共通する。
したがって、本件発明1と甲1発明1は、次の一致点2で一致し、相違点2及び3で相違する。
[一致点2]
「薬剤が充填された容器を、複数の前記容器が前後方向に並ぶように収納する、収納部と、
前記容器を一方に送り、前記容器の他方への移動を阻止する送り部とを備える薬剤カセットであって、
前記容器は、筒状の筒形状部を有し、
前記送り部は、前記筒形状部のうち最大径部分に当接する当接部を有し、
前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を他方から一方へ押すことで、前記容器を一方に送る、薬剤カセット。」
[相違点2]
本件発明1の薬剤が充填された容器は「チューブ容器」であって、「前記チューブ容器は、筒状の筒形状部と、前記チューブ容器の末端に設けられた扁平な底部とを有」するのに対し、
甲1発明1の薬剤が充填された容器は「アンプルの形態の薬剤22A」である点。
[相違点3]
本件発明1は、前記チューブ容器を「前方」に送り、前記チューブ容器の「後方」への移動を阻止する送り部を備え、前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を「後方」から前方へ押すことで、前記チューブ容器を「前方」に送る構成であるのに対し、
甲1発明1の付勢ユニット33は、薬剤22Aを「前面側から背面側」へ付勢する」構成である点。
以下、相違点2について検討する。
甲1発明1の薬剤カセット21は、アンプルの形態の薬剤22Aを、背面側のロータ25の円弧面5aで受け止めて一つずつ取り出して払い出す構成(甲1の段落【0032】参照)が前提となっており、想定される薬剤の容器として、扁平で幅広な部分を末端に持つチューブ容器は、想定されていない。したがって、甲1発明1において上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして、甲2には、扁平部3を有する包装アンプルの排出枠41が記載されているが、この包装アンプルは、チューブ容器ではない。また、甲3及び甲4にも、チューブ容器は記載されていない。仮に甲2の包装アンプルがチューブ容器に似ているとしても、甲2には、ロータ20が、チューブ容器に使用できる旨の記載も示唆もない。
したがって、本件発明の相違点2に係る発明特定事項は甲2~甲4に記載されておらず、甲1発明1及び甲2~甲4の記載事項に基いて、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
次に、相違点3について検討する。
甲1の薬剤カセット21は、薬剤22aを前面側から背面側へ付勢する付勢ユニット33を備えており、これは、薬剤カセット21から払い出された薬剤22aを搬送するための搬送部16が、装置本体内の背面側に配設されているからである(甲1の段落【0029】、【0032】、【0037】、【図2】、【図6】参照。)。そのため、薬剤カセット21の付勢方向のみを逆向きにすることはできない。また、薬剤カセット21の付勢方向を逆向きにするためには、搬送部16等の配設位置も変更するなど、装置全体の構成を変更することになるが、そのような変更を行わなければならない動機付けは無い。
したがって、甲3に薬品類60の容器を前方に向けて推す点が記載されていても、甲1発明1において上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲1発明1並びに甲2及び甲3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(6)本件発明2~4、6について
本件特許の請求項2~4、6は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び6は、甲1発明1並びに甲2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、本件発明3及び4は、甲1発明1明及び甲2~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(7)本件発明7について(甲1発明2・進歩性)
本件発明7と甲1発明2とを対比する。
甲1発明2の「アンプルの形態の薬剤22A」と本件発明7の「薬剤が充填されたチューブ容器」とは「薬剤が充填された容器」の限りで共通する。
甲1発明2の「前後方向に一列に並ぶように収容する」ことは本件発明7の「前後方向に並ぶように収納する」ことに相当するから、甲1発明2の「薬剤カセット21の内部」は本件発明1の「収納部」に相当する。
甲1発明2の「薬剤22Aを前面側から背面側へ付勢する」ことと、本件発明7の「前記チューブ容器を前方に送り、前記チューブ容器の後方への移動を阻止する」こととは、「前記容器を一方に送り、前記容器の他方への移動を阻止する」ことの限りで共通し、甲1発明2の「付勢ユニット33」は本件発明7の「送り部」に相当する。
甲1発明2の「数の薬剤22Aのうち背面側の端の1つを前記内部から取り出す」ことと、本件発明7の「複数の前記チューブ容器のうち先頭のチューブ容器を前記収納部から取り出す」こととは「複数の容器のうち先頭の容器を前記収納部から取り出す」ことの限りで共通し、甲1発明2の「ロータ25」は本件発明7の「容器取出部」に相当する。
甲1発明2の「アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分に当接」することと、本件発明7の「前記筒形状部のうち最大径部分に当接」することとは、「前記容器のうち最大径部分に当接」することの限りで共通し、甲1発明2の付勢ユニット33の「背面側の面」は、本件発明7の「当接部」に相当する。
甲1発明2の「アンプルの形態の薬剤22Aの底側の大径の部分に当接して、前面側から背面側へ付勢する」ことと、本件発明7の「前記最大径部分を後方から前方へ押すことで、前記チューブ容器を前方に送る」こととは、「前記最大径部分を他方から一方へ押すことで、前記チューブ容器を一方に送る」ことの限りで共通し、甲1発明2の「薬剤払い出し装置10」は本件発明7の「薬剤供給装置」に相当する。
したがって、本件発明7と甲1発明2は、次の一致点3で一致し、相違点4及び5で相違する。
[一致点3]
「薬剤が充填された容器を、複数の前記容器が前後方向に並ぶように収納する、収納部と、
前記容器を一方に送り、前記容器の他方への移動を阻止する送り部と、
複数の前記容器のうち先頭の容器を前記収納部から取り出す容器取出部とを備え、
前記送り部は、前記容器のうち最大径部分に当接する当接部を有し、前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を他方から一方へ押すことで、前記チューブ容器を一方に送る、薬剤供給装置。」
[相違点4]
本件発明7の薬剤が充填された容器は「チューブ容器」であって、「前記チューブ容器は、筒状の筒形状部と、前記チューブ容器の末端に設けられた扁平な底部とを有」するのに対し、
甲1発明2の薬剤が充填された容器は「アンプルの形態の薬剤22A」である点。
[相違点5]
本件発明7は、前記チューブ容器を「前方」に送り、前記チューブ容器の「後方」への移動を阻止する送り部を備え、前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を「後方から前方」へ押すことで、前記チューブ容器を前方に送る」構成を有するのに対し、
甲1発明2の付勢ユニット33は薬剤22Aを「前面側から背面側」へ付勢する」構成である点。
そして、相違点4及び5は、上記相違点2及び3と実質的に同じ内容であるから、上記(5)と同様の理由により、本件発明7は、甲1発明2並びに甲2及び3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(8)本件発明1について(甲3発明・進歩性)
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「薬品類60の容器」と本件発明1の「薬剤が充填されたチューブ容器」とは「薬剤が充填された容器」の限りで共通する。
甲3発明の「前後一列に並ぶように収納する」ことは本件発明1の「前後方向に並ぶように収納する」ことに相当するから、甲3発明の「カセット30の内部の収納空間」は本件発明1の「収納部」に相当する。
そして、甲3発明の「カセット30」は本件発明1の「薬剤カセット」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明は、次の一致点4で一致し、相違点6及び7で相違する。
[一致点4]
「薬剤が充填された容器を、複数の前記容器が前後方向に並ぶように収納する、収納部を備える、薬剤カセット。」
[相違点6]
薬剤が充填された容器に関し、本件発明1は、薬剤が充填された「チューブ容器」であって、「前記チューブ容器は、筒状の筒形状部と、前記チューブ容器の末端に設けられた扁平な底部とを有」するのに対し、甲3発明の薬品類60の容器は、このような特定がない点。
[相違点7]
本件発明1は「前記チューブ容器を前方に送り、前記チューブ容器の後方への移動を阻止する送り部」を備え、
「前記送り部は、前記筒形状部のうち最大径部分に当接する当接部を有し、前記送り部は、前記当接部によって、前記最大径部分を後方から前方へ押すことで、前記チューブ容器を前方に送る」構成であるのに対し、
甲3発明のカセット30は、薬品類60の容器を前方に向けて押し出すための機構を備えていない点。
以下、相違点6について検討する。
上記1(2)で検討したことと同様の理由により、甲3発明の薬品類60の容器をチューブ状の容器とし、上記相違点6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえず、また、甲1にチューブ容器に関する記載ないし示唆はないから、甲3発明及び甲1の記載事項に基いて、上記相違点6に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
次に、相違点7について検討する。
甲3には、「特に、カセットは、設置個数が多いうえ補充時等には引き出したり取り外したりされるので、信頼性確保のため、その簡素化は重要である。」(段落【0005】参照)、「また、カセットは、薬品類の形状に適合させて各種のものを用意しておくことが必要なため、その簡素化はコスト面からも重要である。そこで、薬品払出装置を多機能化・高機能化・複合化しても、その信頼性を損なうことの無いように、カセットを簡素な構造のものに改良することが、技術的な課題となる。」(段落【0006】参照)との記載があり、この技術的な課題を解決するために、薬品類60を動かすための付勢機構を、カセット30に装着することに代えて、カセット支持棚12に設けることが記載されている(段落【0003】、【0026】~【0029】参照)。そうすると、甲3発明において、薬品類60を動かすための付勢機構を、カセット30に設けることには阻害要因がある。したがって、カセット側に付勢機構を備える点が甲1に記載されていたとしても、それを甲3発明に適用することはできない。
よって、本件発明1は、甲3発明及び甲1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(9)小括
以上のとおり、本件発明1~4、6及び7に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものでないので、上記(1)の異議申立人の主張は採用できない。
3 取消理由に採用しなかった異議申立人の主張について(実施可能要件)
(1)異議申立人の主張の概要
異議申立人は、特許異議申立書の3(4)エ(第19~20ページ)において、発明の詳細な説明には、送り部の可動部320、抵抗部360及び移動制限部380に関する具体的構成は何ら記載されていないので、明細書の段落【0074】における「カセット200がカセット支持部600に戻されるとき、カセット200とともに後方に移動しようとする可動部320には、抵抗部360によって抵抗が与えられる。そのため、可動部320は、カセット本体230に対して前方に移動しようとする。しかも、カセット本体230に対する可動部320の前方への移動は、移動制限部380によって許容されている。したがって、可動部320は、カセット本体230とともには移動せず、カセット本体230に対して前方に移動する。その結果、カセット200内に残っているチューブ容器1が前方に送られる。」との作用・機能を奏するように、実施できないから、本件特許の明細書の、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反しており、本件特許は、取り消すべき旨主張する。
(2)本件特許の明細書の記載について
本件特許の明細書には、本件発明1及び7の送り部(310)に関して次の記載がある。
「【0037】
カセット200は、送り部310を備える。送り部310は、複数のチューブ容器をカセット200内において前方向Frに送るとともに、複数のチューブ容器の後方向Rrへの移動を阻止する。送り部310が複数のチューブ容器をカセット200内において前方向Frに送ることによって、カセット200内において、複数のチューブ容器が前方に詰められる。
【0038】
送り部310は、可動部320と、抵抗部360と、移動制限部380と、を備える。可動部320は、カセット200に設けられ、詳しくはカセット本体230に設けられる。可動部320は、複数のチューブ容器のうち最後尾のチューブ容器の後方に位置する。可動部320は、カセット本体230に対して、前後方向に移動可能である。抵抗部360は、カセット200とともに前後方向に移動しようとする可動部320に抵抗を与える。
【0039】
移動制限部380は、カセット200に対する可動部の移動を制限する。移動制限部380は、可動部320がカセット本体230に対して前方に移動することを許容し、かつ、可動部320がカセット本体230に対して後方に移動することを阻止する。移動制限部380と可動部320との間には、前後方向の遊びが設けられる。」
「【0066】
送り部310を構成している可動部320は、カセット200とともに前方へ移動する。送り部310によって前方向Frへ送られるチューブ容器1は、閉塞部220および突起部224に対して、相対移動する。」
「【0074】
カセット200がカセット支持部600に戻されるとき、カセット200とともに後方に移動しようとする可動部320には、抵抗部360によって抵抗が与えられる。そのため、可動部320は、カセット本体230に対して前方に移動しようとする。しかも、カセット本体230に対する可動部320の前方への移動は、移動制限部380によって許容されている。したがって、可動部320は、カセット本体230とともには移動せず、カセット本体230に対して前方に移動する。その結果、カセット200内に残っているチューブ容器1が前方に送られる。」
これらの記載から、
ア 送り部310は、チューブ容器をカセット200内において前方向に送り後方向への移動を阻止するものであり、可動部320、抵抗部360及び移動制限部380から構成されること、
イ 可動部320は、カセット本体230に対して前方向に移動可能で、最後尾のチューブ容器の後方に位置すること、
ウ 移動制限部380は、可動部320がカセット本体230に対して前方に移動することを許容し、後方に移動することを阻止する機能を有すること、及び
エ 抵抗部360は、カセット200が後方に移動してカセット支持部600に戻されるとき、可動部320に抵抗を与えてカセット200とともに移動しないようにする機能を有することが、理解できる。
また、移動制限部380のように、一方向に動き、反対方向に動かないようにする機能は、爪と歯の噛み合わせを持つラチェット機構や、くさび機構等の、一般的に知られている簡易な機構によって具体化できることも当業者であれば理解できる。
そして、カセット200がカセット支持部600に戻されるときに、抵抗部360によって可動部320に抵抗を与えるための具体的な機構の記載はないものの、カセット200が後方に移動する際に、可動部320がカセット200とともに移動しないように抵抗部360が作用するためには、抵抗部360はカセット200の外部の構造体に対して抵抗力を発生するものであることは明らかであり、本件特許の【図3】、【図6】からは、カセット200から外側にはみ出る部分を備えた抵抗部360や、この外側にはみ出る部分が、カセット支持部600等に干渉し得る位置まで及んでいる状態が看取でき、抵抗部360のカセット200から外側にはみ出る部分とカセット支持部600等の間に摩擦力を発揮する機構を採用することで、「カセット200がカセット支持部600に戻されるとき、カセット200とともに後方に移動しようとする可動部320」に抵抗を与えて、「可動部320は、カセット本体230に対して前方に移動」する動作を実施可能であることは、当業者であれば理解できる。
したがって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1及び7の送り部310構成する、送り部310の可動部320、抵抗部360及び移動制限部380について、その発明の技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(3)小括
以上のとおり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反しないので、上記(1)の異議申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本件発明1~4、6及び7は、令和5年3月13日付け取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことができない。さらに、他に本件特許の請求項1~4、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700913