特許異議申立
2023-700443
油圧装置及び油圧作動油組成物
- 審判番号
- 2023-700443
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-186717
- 登録番号
- 7168403
- 請求日
- 2023年04月28日
- 審決日
- 2024年03月25日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ENEOS株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】吉住 和之
- 【権利者代理人】平野 裕之
- 【異議申立人】笠原 ケイ子
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 柿崎 拓
- 審判官 八木 敬太
- 分類
- P1651.121-YAA(F15B) / P1651.113-YAA(F15B) / P1651.537-YAA(F15B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7168403号発明「油圧装置及び油圧作動油組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7168403号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正することを認める。
特許第7168403号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7168403号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年10月1日の出願であって、令和4年10月31日にその特許権の設定登録がされ、令和4年11月9日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 5年 4月28日 : 特許異議申立人笠原ケイ子(以下「特許異議申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 5年 7月26日付け: 取消理由通知
令和 5年 9月 8日 : 特許権者ENEOS株式会社(以下「特許権者」という。)による意見書及び訂正請求書の提出
令和 5年10月 2日付け: 通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和 5年11月 2日 : 特許異議申立人による意見書の提出
令和 6年 1月12日付け: 取消理由通知(決定の予告)
令和 6年 2月16日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和5年9月8日にされた訂正の請求(以下、この訂正請求による訂正を「先の訂正」という。)は、その後、令和6年2月16日に訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年2月16日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるというものである。
本件訂正請求で請求された訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「ジ-イソブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリデシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン及びポリブテニルアミンから選ばれる少なくとも一種の脂肪族アミン」とあるのを、
「ポリブテニルアミンである脂肪族アミン」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「含有する」とあるのを、
「含有し、
前記フェノール系酸化防止剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001411288000001.jpg]
[式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【化2】
[図:0001411288000002.jpg]
(式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化3】
[図:0001411288000003.jpg]
(式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。)]
で表される化合物である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「油圧装置」とあるのを、
「油圧装置(但し、油圧作動油組成物が炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有するものを除く)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「ジ-イソブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリデシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン及びポリブテニルアミンから選ばれる少なくとも一種の脂肪族アミン」とあるのを、
「ポリブテニルアミンである脂肪族アミン」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「含有する」とあるのを、
「含有し、
前記フェノール系酸化防止剤が、下記式(1)
【化4】
[図:0001411288000004.jpg]
[式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【化5】
[図:0001411288000005.jpg]
(式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化6】
[図:0001411288000006.jpg]
(式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。)]
で表される化合物である」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「油圧作動油組成物」とあるのを、
「油圧作動油組成物(但し、油圧作動油組成物が炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有するものを除く)」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された脂肪族アミンについて、ジ-イソブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリデシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン及びポリブテニルアミンから選ばれる少なくとも一種とされていたものを、ポリブテニルアミンに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、前記したとおり、本件訂正前の請求項1に記載された脂肪族アミンの選択肢の一つであるポリブテニルアミンに限定するものであるから、本件特許の特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に記載された「フェノール系酸化防止剤」について、式(1)で表される化合物であるという限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
特許明細書等には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下、同様である。)。
(ア)「【0024】
次に油圧装置に用いられる油圧作動油組成物について説明する。油圧作動油組成物は、潤滑油基油と、フェノール系酸化防止剤と、炭素数が8以上であり構成元素として酸素を含まない1級又は2級脂肪族アミンと、を含有する。」
(イ)「【0037】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化1】
[図:0001411288000007.jpg]
【0039】
式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【0040】
【化2】
[図:0001411288000008.jpg]
【0041】
式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。
【0042】
【化3】
[図:0001411288000009.jpg]
【0043】
式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。」
すると、特許明細書等には、油圧作動油組成物に含有するフェノール系酸化防止剤として、訂正事項2に係る式(1)と同じ式で表される化合物を用いることが記載されているから、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、前記アに示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1に記載された「油圧作動油組成物」について、「炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有するものを除く」ものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1に記載された事項から、令和5年7月26日付け取消理由通知で引用された引用文献1(特開2001-172660号公報(甲第1号証))に記載された事項と重複する部分を除外しようとするためのものと解され、該重複する部分を除外することによって、特許明細書等から導かれる技術的事項に何らかの変更を生じさせるものではない。
したがって、訂正事項3は、新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、前記アに示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項2と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正事項3と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げられる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、2について、請求項2は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1、2は、一群の請求項1、2を構成している。
また、本件訂正前の請求項3、4について、請求項4は、請求項3を引用しているものであって、訂正事項4~6によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項3、4は、一群の請求項3、4を構成している。
そして、本件訂正請求は、訂正事項1~3により、本件訂正前の請求項1、2の記載を訂正しようとするとともに、訂正事項4~6により、本件訂正前の請求項3、4の記載を訂正しようとするものであり、一群の請求項1、2、及び一群の請求項3、4に対して請求されているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
4 まとめ
前記のとおり、訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。なお、本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下、請求項順に「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部と、
前記油圧作動油組成物を圧送する圧送部と、
前記圧送された油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部と、
前記制御された油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部と、を備える油圧装置であって、
前記油圧作動油組成物が、潤滑油基油と、フェノール系酸化防止剤と、ポリブテニルアミンである脂肪族アミンと、を含有し、
前記フェノール系酸化防止剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001411288000010.jpg]
[式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【化2】
[図:0001411288000011.jpg]
(式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化3】
[図:0001411288000012.jpg]
(式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。)]
で表される化合物である、油圧装置(但し、油圧作動油組成物が炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有するものを除く)。
【請求項2】
前記脂肪族アミンの含有量が、油圧作動油組成物全量を基準として、0.01~5.0質量%である、請求項1に記載の油圧装置。
【請求項3】
潤滑油基油と、
フェノール系酸化防止剤と、
ポリブテニルアミンである脂肪族アミンと、を含有し、
前記フェノール系酸化防止剤が、下記式(1)
【化4】
[図:0001411288000013.jpg]
[式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【化5】
[図:0001411288000014.jpg]
(式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化6】
[図:0001411288000015.jpg]
(式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。)]
で表される化合物である、油圧作動油組成物(但し、油圧作動油組成物が炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有するものを除く)。
【請求項4】
前記脂肪族アミンの含有量が、油圧作動油組成物全量を基準として、0.01~5.0質量%である、請求項3に記載の油圧作動油組成物。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
先の訂正後の請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和6年1月12日付けで特許権者に決定の予告として通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)先の訂正後の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第2号証:特開2005-60526号公報
2 当審の判断
(1)甲第2号証の記載及び引用発明
ア 甲第2号証の記載
特許異議申立人が提出し、令和6年1月12日付け取消理由通知(決定の予告)で引用した甲第2号証(以下「甲2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0005】
しかしながら、このように高性能化された油圧作動システムに従来の油圧作動油を使用すると、錆やスラッジの発生や油圧作動油が劣化などの現象が起こり、その結果、油圧作動システム本体や制御弁の作動不良を招く場合がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、スプール弁やサーボバルブなどの高速化・高精密化により高性能化された油圧作動システムに用いる場合であっても、錆やスラッジの発生及び油圧作動油の劣化を防止して油圧作動システムを安定的に作動させることが可能な油圧作動油組成物及び油圧作動システムの作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、スプール弁やサーボバルブなどの制御弁を高速化・高精密化すると、これらの制御弁で油圧作動油に非常に大きなせん断応力が加わり、その結果、ギ酸や酢酸などの有機酸が発生しやすくなることを見出した。上述の錆及びスラッジの発生は有機酸金属塩の形成によるものであり、また、油圧作動油が劣化する原因の一つと考えられる。」
(イ)「【0017】
本発明の油圧作動油組成物においては、鉱油、油脂及び合成油の中から選ばれる少なくとも1種を基油として用いる。」
(ウ)「【0029】
本発明で用いられる無灰系防錆剤としては、
(A-1)アミン化合物
(A-2)アミド化合物
(A-3)カルボン酸アミン塩及び/又はスルフォン酸アミン塩
等が挙げられる。
【0030】
(A-1)アミン化合物としては、モノアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられるが、これらの中でも、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、モノアミンが好ましい。
【0031】
モノアミンとしては、具体的には例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン(全ての異性体を含む)、ジプロピルアミン(全ての異性体を含む)、トリプロピルアミン(全ての異性体を含む)、モノブチルアミン(全ての異性体を含む)、ジブチルアミン(全ての異性体を含む)、トリブチルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンチルアミン(全ての異性体を含む)、ジペンチルアミン(全ての異性体を含む)、トリペンチルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプチルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクチルアミン(全ての異性体を含む)、ジオクチルアミン(全ての異性体を含む)、モノノニルアミン(全ての異性体を含む)、モノデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデシル(全ての異性体を含む)、モノドデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノノナデシルアミン(全ての異性体を含む)、モノイコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘンイコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノドコシルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリコシルアミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(エチル)アミン、ジメチル(プロピル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ブチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクチル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(デシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ウンデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ドデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(テトラデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキサデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクタデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノナデシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(イコシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘンイコシル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリコシル)アミン(全ての異性体を含む)等のアルキルアミン;
モノビニルアミン、ジビニルアミン、トリビニルアミン、モノプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、ジプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、トリプロペニルアミン(全ての異性体を含む)、モノブテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジブテニルアミン(全ての異性体を含む)、トリブテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、トリペンテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキセニルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘキセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジヘプテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクテニルアミン(全ての異性体を含む)、ジオクテニルアミン(全ての異性体を含む)、モノノネニルアミン(全ての異性体を含む)、モノデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノウンデセニル(全ての異性体を含む)、モノドデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノテトラデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノペンタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘキサデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘプタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノオクタデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノノナデセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノイコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノヘンイコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノドコセニルアミン(全ての異性体を含む)、モノトリコセニルアミン(全ての異性体を含む)等のアルケニルアミン;
ジメチル(ビニル)アミン、ジメチル(プロペニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ブテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクテニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノネニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(デセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ウンデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ドデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(テトラデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ペンタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘキサデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘプタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(オクタデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ノナデセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(イコセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(ヘンイコセニル)アミン(全ての異性体を含む)、ジメチル(トリコセニル)アミン(全ての異性体を含む)等のアルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン;
モノベンジルアミン、(1-フェニルチル)アミン、(2-フェニルエチル)アミン(別名:モノフェネチルアミン)、ジベンジルアミン、ビス(1-フェニエチル)アミン、ビス(2-フェニルエチレン)アミン(別名:ジフェネチルアミン)等の芳香族置換アルキルアミン;
モノシクロペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノシクロヘプチルアミン、ジシクロヘプチルアミン等の炭素数5~16のシクロアルキルアミン;
ジメチル(シクロペンチル)アミン、ジメチル(シクロヘキシル)アミン、ジメチル(シクロヘプチル)アミン等のアルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン;
(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロペンチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(エチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘキシル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、ビス(メチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジメチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(エチルシクロヘプチルアミン(全ての置換異性体を含む)、(メチルエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)、(ジエチルシクロヘプチル)アミン(全ての置換異性体を含む)等のアルキルシクロアルキルアミン;等が挙げられる。また、前記モノアミンには牛脂アミン等の、油脂から誘導されるモノアミンも含まれる。」
(エ)「【0032】
上記したモノアミンの中でも、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、特にアルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミン、アルキル基及びシクロアルキル基を有するモノアミン、シクロアルキルアミン並びにアルキルシクロアルキルアミンが好ましく、アルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミンがより好ましい。
【0033】
モノアミンの炭素数については特に制限は無いが、防錆性の点から8以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。また、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、24以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0034】
さらに、モノアミンにおいて窒素原子に結合する炭化水素基の数についても特に制限はないが、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、1~2個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。」
(オ)「【0047】
本発明においては、よりさび止め性、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果に優れることから、(A)成分として(A-1)アミン化合物、(A-3)カルボン酸アミン塩及び/又はスルフォン酸アミン塩が好ましく、(A-1)アミン化合物がより好ましい。」
(カ)「【0048】
(A)成分の含有量は、さび止め性の点から、含有量は0.01質量%であることが必要であり、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらにより好ましい。また、熱安定性、酸化防止寿命、耐摩耗性の点から、2質量%以下であることが必要であり、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましい。」
(キ)「【0050】
(B)酸化防止剤としては、各種公知のものを使用可能であるが、より具体的には、
(B-1)フェノール系酸化防止剤
(B-2)アミン系酸化防止剤
等が挙げられる。
【0051】
(B-1)フェノール系酸化防止剤としては、潤滑油の酸化防止剤として用いられる任意のアルキルフェノール系化合物が使用可能であるが、例えば、下記一般式(2)又は(4)(当審注:(4)は、(5)の誤記と認められる。)で表される化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のアルキルフェノール化合物が好ましいものとして挙げられる。
【0052】
【化2】
[図:0001411288000016.jpg]
[式(2)中、R2は炭素数1~4のアルキル基を示し、R3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、R4は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は下記一般式(3)、(4)で表される基を示す。
【0053】
【化3】
[図:0001411288000017.jpg]
(式(3)中、R5は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R6は炭素数1~24のアルキル基又は炭素数1~24のアルケニル基を示す。)
【0054】
【化4】
[図:0001411288000018.jpg]
(式(4)中、R7は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R8は炭素数1~4のアルキル基を示し、R9は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、nは0又は1の整数を示す。)]」
(ク)「【0068】
一般式(2)で表される化合物の中で好ましいものを列挙すれば、R4が炭素数1~4のアルキル基である場合の化合物として、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等;R6が一般式(i)で表される基である場合の化合物として、(3-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)酢酸n-ヘキシル、・・・(後略)・・・。」
(ケ)「【0153】
図1はサーボバルブを備える油圧作動システムの一例を示す模式断面図である。図1中、ハウジング1内には油圧ポンプ2及びシリンダ3が収容されており、これらはそれぞれ配管を介してサーボバルブ4と接続されている。また、ハウジング1内の空間には本発明の油圧作動油組成物100が充填されている。
【0154】
油圧ポンプ2は駆動源としての電動機5を備えている。また、油圧ポンプの前段(上流側)には吸入フィルタ6、油圧ポンプ2とサーボバルブ4との間には圧力ゲージ7を備えるフィルタ8がそれぞれ接続されている。油圧ポンプ2の駆動により、吸入フィルタ6から吸入された油圧作動油組成物100はフィルタ8を通ってサーボバルブ4に送られる。なお、油圧ポンプ2の駆動源として電動機5の代わりにエンジンを用いてもよい。
【0155】
サーボバルブ4は、油圧ポンプ2からシリンダ3に油圧作動油組成物100を供給する際に油圧作動油組成物100の流路の切替及び流量の制御を行うものである。サーボバルブ4内の作動については後述する。
【0156】
シリンダ3の内部にはピストンヘッド9及びロッド10で構成されるピストンが収容されており、このピストンはシリンダ3の長手方向に沿って移動可能となっている。また、シリンダ3の内部はピストンヘッド9によりシリンダポート11aとシリンダポート11bとに仕切られており、シリンダポート11a、11bにはそれぞれサーボバルブ4からの油圧作動油組成物100を各シリンダポートに供給するための配管が接続されている。なお、図1にはロッド10の他端側の構成を示していないが、当該他端側の構成は油圧機械の種類に応じて異なる。例えばロッド10の他端をクランク駆動部に連結してロッド10の往復運動を回転運動に変換することができる。また、加振機のようにロッド10の往復運動をそのまま利用して対象物を往復運動させることもできる。」
(コ)「【0169】
[実施例1~8、比較例1~5]
実施例1~8及び比較例1~5においては、それぞれ以下に示す基油、防錆剤、酸化防止剤、摩耗防止剤及びその他の添加剤を用いて表1又は2に示す組成を有する油圧作動油組成物を調製した。
【0170】
(基油)
基油1:パラフィン系高度溶剤精製基油(40℃における動粘度:46.1mm2/s、粘度指数:100)
基油2:パラフィン系水素化分解基油(40℃における動粘度:46.1mm2/s、粘度指数:125)。
【0171】
(防錆剤)
無灰系防錆剤A1:ドデセニルコハク酸ジエチレントリアミン塩(全塩基価:8mgKOH/g)
無灰系防錆剤A2:オレイルアミン(全塩基価:18mgKOH/g)
無灰系防錆剤A3:オレイン酸と者メチルアミンとのアミド(全塩基価:22mgKOH/g)
無灰系防錆剤A4:アルケニルコハク酸ハーフエステル系防錆剤(全塩基価0mgKOH/g)
無灰系防錆剤A5:ソルビタンモノオレエート(全塩基価:0mgKOH/g)
金属系防錆剤A6:Caジノニルナフタレンスルフォネート(全塩基価0mgKOH/g)。
【0172】
(酸化防止剤)
無灰系酸化防止剤B1:ジ-tertブチル-p-クレゾール
無灰系酸化防止剤B2:ジオクチルジフェニルアミン
金属系酸化防止剤B3:ジ-2-エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛。
【0173】
(摩耗防止剤)
無灰系摩耗防止剤C1:トリクレジルホスフェート
硫黄系摩耗防止剤C2:イソプロピルチオフォスフェート
(その他の添加剤)
流動点降下剤D1:ポリメタクリレート系流動点降下剤
消泡剤E1:シリコーン系消泡剤。」
(サ)「【0180】
【表1】
[図:0001411288000019.jpg]
【0181】
【表2】
[図:0001411288000020.jpg]
表1に示したように、実施例1~8の各油圧作動油組成物は、ギ酸発生条件での厳しい防錆試験であっても極めて良好な防錆性と熱安定性を有しており、さらに耐摩耗性にも優れていることが確認された。」
(シ)前記(ケ)によると、油圧作動システムは、ハウジング1、油圧ポンプ2、サーボバルブ4及びシリンダ3を備えているといえる。また、ハウジング1内の空間に油圧作動油組成物100が充填されているとの記載(段落【0153】)から、ハウジング1は、内部の空間に油圧作動油組成物100が充填されているといえ、油圧ポンプ2の駆動により、吸入フィルタ6から吸入された油圧作動油組成物100はフィルタ8を通ってサーボバルブ4に送られるとの記載(段落【0154】)から、油圧ポンプ2は、油圧作動油組成物100を送るものといえる。さらに、段落【0155】の記載も踏まえると、サーボバルブ4は、油圧ポンプ2から送られた油圧作動油組成物100の流路の切替及び流量の制御を行うものといえ、段落【0156】の記載を踏まえると、シリンダ3は、サーボバルブ4からシリンダポート11a、11bに油圧作動油組成物100が供給され、ロッド10を往復運動させるものといえる。
(ス)前記(ウ)によると、無灰系防錆剤として、(A-1)アミン化合物、(A-2)アミド化合物、(A-3)カルボン酸アミン塩及び/又はスルフォン酸アミン塩を用いることが記載されている。これらのうち、前記(オ)によると、さび止め性、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、(A-1)アミン化合物を用いることがより好ましいことが把握できる。
さらに、前記(ウ)によると、(A-1)アミン化合物のうち、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、モノアミンが好ましいことが把握でき、前記(エ)によると、モノアミンのうち、同じくギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、アルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミンがより好ましいことが把握できる。
同じく、前記(エ)によると、モノアミンの炭素数について、防錆性の点から8以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましいこと、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、24以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましいことが把握でき、モノアミンにおいて窒素原子に結合する炭化水素基の数について、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、1~2個であることが好ましく、1個であることがより好ましいことが把握できる。
以上を踏まえると、甲2には、無灰系防錆剤に用いられる化合物として、多くの選択肢や化合物が列挙されているものの、さび止め性、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、(A-1)アミン化合物のうちのモノアミン、特にそのうちのアルキルアミン、又はアルキル基及びアルケニル基を有するモノアミンを用いることがより好ましいことが把握できる。そして、列挙されたアルキルアミン、又はアルキル基及びアルケニル基を有するモノアミンのうち、炭素数が13、窒素原子に結合する炭化水素基の数が1であるモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)や、炭素数が16、窒素原子に結合する炭化水素基の数が2であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)は、上記した好ましい、あるいはより好ましいとされている、モノアミンの炭素数、及び窒素原子に結合する炭化水素基の数に合致するものであるから、前記(ア)から把握される、ギ酸等の有機酸の発生による錆やスラッジの発生及び油圧作動油の劣化を防止するという課題を解決するための化合物として選択することが可能である。すると、甲2の記載から、油圧作動油組成物100として、アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)を含有したものを用いることが把握できる。
(セ)前記(キ)によると、酸化防止剤として、各種公知のものを使用可能であることが記載されている。すると、甲2の記載から、油圧作動油組成物100として、各種公知の酸化防止剤を含有したものを用いることが把握できる。
イ 引用発明
前記ア(ア)~(セ)によると、甲2には、油圧作動システム及び油圧作動油組成物100について、それぞれ次の発明(以下「引用発明2-1」及び「引用発明2-2」という。)が記載されていると認められる。
引用発明2-1
「内部の空間に油圧作動油組成物100が充填されているハウジング1と、
前記油圧作動油組成物100を送る油圧ポンプ2と、
前記送られた油圧作動油組成物100の流路の切替及び流量の制御を行うサーボバルブ4と、
前記サーボバルブ4からシリンダポート11a、11bに油圧作動油組成物100が供給され、ロッド10を往復運動させるシリンダ3と、を備える油圧作動システムであって、
前記油圧作動油組成物100が、基油と、各種公知の酸化防止剤と、アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)と、を含有する、油圧作動システム。」
引用発明2-2
「基油と、
各種公知の酸化防止剤と、
アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)と、を含有する、油圧作動油組成物100。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明2-1とを対比すると、引用発明2-1の「油圧作動油組成物100」及び「ハウジング1」は、それぞれ本件特許発明1の「油圧作動油組成物」及び「油貯蔵部」に相当し、引用発明2-1の「内部の空間に油圧作動油組成物100が充填されているハウジング1」は、本件特許発明1の「油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部」に相当する。
引用発明2-1の「油圧ポンプ2」は、本件特許発明1の「圧送部」に相当し、引用発明2-1の「前記油圧作動油組成物100を送る油圧ポンプ2」は、本件特許発明1の「前記油圧作動油組成物を圧送する圧送部」に相当する。
引用発明2-1の「サーボバルブ4」は、本件特許発明1の「制御部」に相当し、引用発明2-1の「前記送られた油圧作動油組成物100の流路の切替及び流量の制御を行うサーボバルブ4」は、本件特許発明1の「前記圧送された油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部」に相当する。
引用発明2-1の「シリンダ3」は、サーボバルブ4からシリンダポート11a、11bに油圧作動油組成物100が供給され、ロッド10を往復運動させるものであり、油圧作動油組成物100の油圧をロッド10の往復運動に変換していることは明らかであるから、本件特許発明1の「変換部」に相当し、引用発明2-1の「前記サーボバルブ4からシリンダポート11a、11bに油圧作動油組成物100が供給され、ロッド10を往復運動させるシリンダ3」は、本件特許発明1の「前記制御された油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部」に相当する。
そして、引用発明2-1の「油圧作動システム」は、本件特許発明1の「油圧装置」に相当する。
また、引用発明2-1の「基油」は、本件特許発明1の「潤滑油基油」に相当し、引用発明2-1の「各種公知の酸化防止剤」と、本件特許発明1の「フェノール系酸化防止剤」とは、酸化防止剤である点において共通する。
さらに、引用発明2-1の「アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)」、及び「アミン化合物である」「モノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)」は、脂肪族アミンであるから、引用発明2-1の「アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)」を含有するという事項と、本件特許発明1の「ポリブテニルアミンである脂肪族アミン」を含有するという事項は、脂肪族アミンを含有する点において共通する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明2-1とは、
「油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部と、
前記油圧作動油組成物を圧送する圧送部と、
前記圧送された油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部と、
前記制御された油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部と、を備える油圧装置であって、
前記油圧作動油組成物が、潤滑油基油と、酸化防止剤と、脂肪族アミンと、を含有する、油圧装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-1>
酸化防止剤について、本件特許発明1は、「フェノール系酸化防止剤」であり、「前記フェノール系酸化防止剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001411288000021.jpg]
[式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【化2】
[図:0001411288000022.jpg]
(式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化3】
[図:0001411288000023.jpg]
(式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。)]
で表される化合物である」のに対し、引用発明2-1は、アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)とともに含有される酸化防止剤が、前記式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤であるか明らかでない点。
<相違点2-2>
脂肪族アミンについて、本件特許発明1は、「ポリブテニルアミン」であるのに対し、引用発明2-1は、「アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)」である点。
<相違点2-3>
油圧作動油組成物について、本件特許発明1は、「炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有するものを除く」のに対し、引用発明2-1は、油圧作動油組成物100に前記のようなアルキレンオキシド付加物が含有されないか明らかでない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-2から検討する。
甲2には、前記(1)ア(ス)に示したように、ギ酸等の有機酸の発生による錆やスラッジの発生及び油圧作動油の劣化を防止するという課題を解決するために、無灰系防錆剤として、(A-1)アミン化合物、(A-2)アミド化合物、(A-3)カルボン酸アミン塩及び/又はスルフォン酸アミン塩を用いることが記載されている。また、ギ酸鉄などに起因する制御弁などの作動不良抑制効果の点から、これらのうち、(A-1)アミン化合物を用いることがより好ましいこと、(A-1)アミン化合物のうち、モノアミンが好ましいこと、モノアミンのうち、アルキルアミン、アルキル基及びアルケニル基を有するモノアミンがより好ましいことが示され、さらに、モノアミンの炭素数について、8以上24以下であることが好ましく、12以上18以下であることがより好ましいこと、モノアミンにおいて窒素原子に結合する炭化水素基の数について、1~2個であることが好ましく、1個であることがより好ましいことが示されている。そして、引用発明2-1の「アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)」は、上記の点に合致するものである。
一方、甲2には、ポリブテニルアミンを含有させることについて、記載も示唆もされていないから、仮にポリブテニルアミン自体が、本件特許の出願前から周知の化合物であるとしても、引用発明2-1の「アミン化合物であるジオクチルアミン(全ての異性体を含む)又はモノトリデシルアミン(全ての異性体を含む)」に代えて、あるいは加えて、ポリブテニルアミンを含有させる動機付けはない。
そうすると、引用発明2-1において、本件特許発明1の前記相違点2-2に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
ウ まとめ
したがって、相違点2-1及び相違点2-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2-1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明1の相違点2-2に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記(2)に示した理由と同様の理由により、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明3について
本件特許発明3と引用発明2-2とを対比すると、前記相違点2-1~相違点2-3と同様の点において相違し、その余の点で一致する。
そして、相違点2-2と同様の相違点については、前記(2)イに示した理由と同様の理由により、引用発明2-2において、当業者が容易に想到し得たものではない。
そうすると、本件特許発明3は、引用発明2-2及び甲2に記載された事項に基いて、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明3の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明3の相違点2-2と同様の相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記(4)に示した理由と同様の理由により、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立書において、特許異議申立人が申立てた、特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)甲第1号証に記載された発明に基づく新規性、進歩性について
本件特許発明1~4は、甲第1号証(特開2001-172660号公報、以下「甲1」という。)に記載された発明であるから新規性を有しているとはいえない。
また、本件特許発明1~4は、甲1に記載された発明に基づき容易になされたものであるから進歩性を有するとはいえない。
(2)甲2に記載された発明に基づく進歩性について
本件特許発明1~4は、甲2に記載された発明に基づき容易になされたものであるから進歩性を有するとはいえない。
(3)サポート要件について
ア 脂肪族アミン及びフェノール系酸化防止剤の含有量について
本件特許発明1~4は、その発明の解決しようとする課題を解決するためのフェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤の含有量に係る条件が十分に特定されていないことから、本件明細書に接した当業者は、本件特許発明1~4の全範囲にわたって本件特許発明1~4の効果を奏することを理解できない。したがって、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
イ フェノール系酸化防止剤の種類について
本件特許発明1~4は、その発明の解決しようとする課題を解決するためのフェノール系酸化防止剤の種類に係る条件が十分に特定されていないことから、本件明細書に接した当業者は、本件特許発明1~4の全範囲にわたって本件特許発明1~4の効果を奏することを理解できない。したがって、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
2 甲1に記載された発明に基づく新規性、進歩性について
(1)甲1の記載及び引用発明
ア 甲1の記載
特許異議申立人が提出した甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 潤滑油基油に対して、[1]炭素数12~20のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する酸性亜リン酸エステル、[2]炭素数3~8のアルキル基及び/若しくはアルケニル基を有する脂肪族アミン又はそのアルキレンオキシド付加物、[3]炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物、をそれぞれ含有してなり、かつ上記[1]成分と[2]成分とが上記[3]成分の不存在下で接触していることを特徴とする緩衝器用油圧作動油組成物。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は緩衝器用油圧作動油組成物に関し、詳しくは特に自動車の懸架装置(ショックアブソーバー、アクティブサスペンション、ステーダンパー、エンジンダンパー等)に適する緩衝器用油圧作動油組成物に関する。」
(ウ)「【0007】本発明における[2]成分は、炭素数3~8のアルキル基及び/若しくはアルケニル基を有する脂肪族アミン又はそのアルキレンオキシド付加物である。脂肪族アミンとしては、下記の一般式(5)で表される脂肪族第1級アミンや下記の一般式(6)で表される脂肪族第2級アミン及びこれらの混合物等が例示できる。
R4-NH2 (5)
【化5】
[図:0001411288000024.jpg]
上記(5)式及び(6)式中、R4、R5及びR6は、それぞれ個別に、直鎖状又は分枝状の、炭素数3~8好ましくは炭素数4~8のアルキル基又はアルケニル基を示している。R4、R5及びR6は、それぞれ個別に具体的には例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でも良い);ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でも良い);が例示できる。脂肪族アミンのうち好ましいものとしては、具体的には例えば、n-ブチルアミン、n-オクチルアミン(カプリルアミン)、2-エチルヘキシルアミン等の脂肪族第1級アミンやジ(2-エチルヘキシル)アミン等の脂肪族第2級アミン等が例示でき、また、これらの混合物も使用可能である。・・・(後略)・・・。」
(エ)「【0008】本発明の緩衝器用油圧作動油組成物における[3]成分は、炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物である。・・・(中略)・・・。[3]成分のうち好ましいものとしては、具体的には、n-ドデシルアミン(ラウリルアミン)、n-テトラデシルアミン(ミリスチルアミン)、n-ヘキサデシルアミン(パルミチルアミン)、n-オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、9-n-オクタデセニルアミン(オレイルアミン)、イソステアリルアミン等の脂肪族第1級アミンのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、ブチレンオキシド付加物や、ジ(n-ドデシル)アミン等の脂肪族第2級アミンのエチレンオキシド付加物、プロピレンオキシド付加物、ブチレンオキシド付加物等が例示でき、また、これらの混合物も使用可能である。本発明の緩衝器用油圧作動油組成物において、[3]成分の含有量は特に限定されず任意であるが、組成物全量基準で、その含有量の下限値は、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.02質量%であり、一方、その含有量の上限値は、好ましくは5.0質量%、より好ましくは2.0質量%であるのが望ましい。[3]成分の含有量が上記下限値未満の場合は、[3]成分含有による摩擦低減効果や摩耗防止効果の向上効果に乏しい虞があり、一方、[3]成分の含有量が上記上限値を超える場合は、低温時における貯蔵安定性に劣る虞がある。」
(オ)「【0012】
【実施例】以下、本発明の内容を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの内容に何ら限定されるものではない。
【0013】実施例1~3及び比較例1~3
表1に示すような組成の本発明に係る各種(実施例1~3)の緩衝器用油圧作動油組成物を調製した。この調製は、いずれもまず[1]成分及び[2]成分を基油に添加し、50℃で1時間、プロペラ撹拌機を用いて撹拌して接触を行い、その後、[3]成分を含有させて行った。これら調製した各組成物に対して以下に示す実験室貯蔵安定性試験及び実機耐久試験を実施し、低温時における貯蔵安定性、摩擦低減効果及び摩耗防止効果を評価した。その結果を表1に併記した。また、比較のため、上記の実施例1と組成割合が同一の比較例1~3を次の配合順序で調製した。
比較例1:[1]~[3]成分を全て同時に添加する。
比較例2:[1]成分と[3]成分とを先に添加し、その後に[3]成分を添加する。
比較例3:[2]成分と[3]成分とを先に添加し、その後に[1]成分を添加する。
このように調製した組成物に対しても上記と同様の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0014】<貯蔵安定性試験>表1に示す組成物100mlを蓋付きスクリュー管に入れ、-5℃で1カ月貯蔵した後、目視より析出物の有無を調べた。
<実機耐久試験>市販のストラット型ショックアブソーバーを用い、以下の試験条件で加振回数200万回の耐久試験を行った。
試験油温:80℃
試験油量:330ml
横荷重:200kgf
加振全振幅:50mm
加振速度:0.5m/s
摩擦低減効果
上記の実機耐久試験において、加振回数0回時(耐久試験初期)と加振回数200万回時(耐久試験終了時)におけるそれぞれのショックアブソーバーの摩擦面における摩擦係数を測定し、表1に示した。
摩耗防止効果
上記の実機耐久試験において、耐久試験終了後にショックアブソーバーを分解し、その摩擦面(シリンダー、ピストンロッド、ブッシュ、ピストンバンド、オイルシール)の表面を目視で評価し、その結果を表1に示した。なお摩耗防止効果の判定基準は0~5(最良:5)の6段階で表した。
【0015】
【表1】
[図:0001411288000025.jpg]
【0016】表1の実施例の結果から明らかなように、本発明に係る緩衝器用油圧作動油組成物(実施例1~3)はいずれも低温貯蔵安定性が良好であり、耐久初期における摩擦低減効果に優れているとともに、その経時変化が少ないという優れた性能を有している。また耐久終了後の摩擦面は摩耗が少なく、摩耗防止効果の面でも本発明の緩衝器用油圧作動油組成物は優れていることがわかる。これに対して、[1]成分と[2]成分との接触が[3]成分の不存在下で行われていない比較例1~3の組成物は、いずれも低温貯蔵安定性に問題がある。」
(カ)前記(オ)によると、実施例2の緩衝器用油圧作動油組成物は、溶剤精製鉱油と、2,6-ジ(t-ブチル)-p-クレゾールと、ジオレイルハイドロジェンホスファイトと、ジ(2-エチルヘキシル)アミンと、イソステアリルアミンのエチレンオキシド付加物と、ポリメタクリレートとを含有することが把握できる。
(キ)前記(イ)によると、緩衝器用油圧作動油組成物は、緩衝器に用いられるものといえ、緩衝器用油圧作動油組成物を用いる緩衝器について把握することができる。
イ 引用発明
前記ア(ア)~(キ)によると、甲1には、緩衝器用油圧作動油組成物を用いる緩衝器、及び緩衝器用油圧作動油組成物について、それぞれ次の発明(以下「引用発明1-1」及び「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。
引用発明1-1
「緩衝器用油圧作動油組成物を用いる緩衝器であって、
前記緩衝器用油圧作動油組成物が、溶剤精製鉱油と、2,6-ジ(t-ブチル)-p-クレゾールと、ジオレイルハイドロジェンホスファイトと、ジ(2-エチルヘキシル)アミンと、イソステアリルアミンのエチレンオキシド付加物と、ポリメタクリレートと、を含有する、緩衝器。」
引用発明1-2
「溶剤精製鉱油と、
2,6-ジ(t-ブチル)-p-クレゾールと、
ジオレイルハイドロジェンホスファイトと、
ジ(2-エチルヘキシル)アミンと、
イソステアリルアミンのエチレンオキシド付加物と、
ポリメタクリレートと、を含有する、緩衝器用油圧作動油組成物。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1-1とを対比すると、引用発明1-1の「緩衝器用油圧作動油組成物」は、本件特許発明1の「油圧作動油組成物」に相当する。また、引用発明1-1の「緩衝器」は、緩衝器用油圧作動油組成物の油圧により作動される装置といえるから、本件特許発明1の「油圧装置」に相当し、引用発明1-1の「緩衝器用油圧作動油組成物を用いる緩衝器」と、本件特許発明1の「油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部と、前記油圧作動油組成物を圧送する圧送部と、前記圧送された油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部と、前記制御された油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部と、を備える油圧装置」とは、油圧作動油組成物を用いる油圧装置である点において共通する。
また、引用発明1-1の「溶剤精製鉱油」は、本件特許発明1の「潤滑油基油」に相当し、引用発明1-1の「2,6-ジ(t-ブチル)-p-クレゾール」は、本件特許発明1の「下記式(1)
【化1】
[図:0001411288000026.jpg]
[式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【化2】
[図:0001411288000027.jpg]
(式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化3】
[図:0001411288000028.jpg]
(式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。)]
で表される化合物である」「フェノール系酸化防止剤」に相当する。
また、引用発明1-1の「ジ(2-エチルヘキシル)アミン」は、脂肪族アミンであるから、引用発明1-1の「ジ(2-エチルヘキシル)アミン」を含有するという事項と、本件特許発明1の「ポリブテニルアミンである脂肪族アミン」を含有するという事項は、脂肪族アミンを含有する点において共通する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明1-1とは、
「油圧作動油組成物を用いる油圧装置であって、
前記油圧作動油組成物が、潤滑油基油と、フェノール系酸化防止剤と、脂肪族アミンと、を含有し、
前記フェノール系酸化防止剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001411288000029.jpg]
[式(1)中、R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R3は水素原子、炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、下記式(2)で表される基又は下記式(3)で表される基を示す。
【化2】
[図:0001411288000030.jpg]
(式(2)中、R4は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R5は炭素数1~24のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【化3】
[図:0001411288000031.jpg]
(式(3)中、R6は炭素数1~6のアルキレン基を示し、R7は炭素数1~4のアルキル基を示し、R8は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、pは0又は1を示す。)]
で表される化合物である、油圧装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-1>
油圧作動油組成物を用いる油圧装置について、本件特許発明1は、「油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部と、前記油圧作動油組成物を圧送する圧送部と、前記圧送された油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部と、前記制御された油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部と、を備える」のに対し、引用発明1-1は、緩衝器がこれらを備えるか明らかでない点。
<相違点1-2>
脂肪族アミンについて、本件特許発明1は、「ポリブテニルアミン」であるのに対し、引用発明1-1は、「ジ(2-エチルヘキシル)アミン」である点。
<相違点1-3>
油圧作動油組成物について、本件特許発明1は、「炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物を含有するものを除く」のに対し、引用発明1-1は、イソステアリルアミンのエチレンオキシド付加物を含有する点。
イ 判断
(ア)相違点についての検討
事案に鑑み、相違点1-2から検討する。
a <相違点1-2>について
甲1には、前記(1)ア(ウ)によると、[2]成分として、炭素数3~8のアルキル基及び/若しくはアルケニル基を有する脂肪族アミンを含有させることが記載されており、該脂肪族アミンとして、脂肪族第1級アミンや脂肪族第2級アミンの具体的な化合物が例示されている。そして、引用発明1-1の「ジ(2-エチルヘキシル)アミン」は脂肪族第2級アミンとして例示されたものであり、また、実施例2として、試験、評価の結果が示されたものである(前記(1)ア(オ)参照。)。
一方、甲1には、ポリブテニルアミンを含有させることについて、記載も示唆もされていないから、仮にポリブテニルアミン自体が、本件特許の出願前から周知の化合物であるとしても、引用発明1-1の「ジ(2-エチルヘキシル)アミン」に代えて、あるいは加えて、ポリブテニルアミンを含有させる動機付けはない。
そうすると、前記相違点1-2は、実質的な相違点である。また、引用発明1-1において、本件特許発明1の前記相違点1-2に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
b <相違点1-3>について
引用発明1-1の「イソステアリルアミンのエチレンオキシド付加物」は、甲1の前記(1)ア(エ)及び(オ)によると、炭素数12~24のアルキル基及び/又はアルケニル基を有する脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物である[3]成分として含有されているものである。そして、甲1には、前記(1)ア(エ)によると、摩擦低減効果や摩耗防止効果の向上効果のために、[3]成分の含有量の下限値を、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.02質量%とすることが記載されているから、引用発明1-1において、[3]成分として含有されている「イソステアリルアミンのエチレンオキシド付加物」を含有しないようにすることの動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
そうすると、前記相違点1-3は、実質的な相違点である。また、引用発明1-1において、本件特許発明1の前記相違点1-3に係る発明特定事項とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たものではない。
(イ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書の第9ページ第11行~第24行において、「このように、本件特許明細書の実施例は「ジ-2-エチルヘキシルアミン」以外の脂肪族アミンを用いた場合、甲2発明(当審注:「甲1発明」の誤記と認められる。)と同じ「ジ-2-エチルヘキシルアミン」を用いた場合と比較して、優れた効果が奏されないことを実証している。即ち、本件特許発明1-4は、例え「ジ-2-エチルヘキシルアミン」以外の脂肪族アミンを用いたとしても、「ジ-2-エチルヘキシルアミン」を用いた甲1発明と比較して優れた効果を有し得ない。また、当業者であれば、脂肪族アミンとして、ジ-イソブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリデシルアミン、ジ-n-オクチルアミン及びポリブテニルアミン等の周知の化合物を選択することは容易である。以上より、仮に本件特許発明1、3の「ジ-2-エチルヘキシルアミン」以外の脂肪族アミンが甲1発明に対する相違点であると認められたとしても、本件特許発明1、3(及びその引用発明である本件特許発明2、4)は、甲1発明に対して構成の困難性を有せず、また、顕著な効果を有するとはいえないことから、甲1発明に対して進歩性を有しない。」と主張している。
しかしながら、特許異議申立人が主張するように、仮に、「ジ(2-エチルヘキシル)アミン」(ジ-2-エチルヘキシルアミン)を含有する引用発明1-1と比較して、「ポリブテニルアミン」を含有する本件特許発明1の効果が優れたものでなく、ポリブテニルアミンが周知の化合物であるとしても、前記(ア)aに示したように、甲1には、ポリブテニルアミンを含有させることについて、記載も示唆もされていないから、引用発明1-1の「ジ(2-エチルヘキシル)アミン」に代えて、あるいは加えて、ポリブテニルアミンを含有させる動機付けはない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
ウ まとめ
そうすると、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、引用発明1-1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明1の相違点1-2、相違点1-3に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記(2)に示した理由と同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、引用発明1-1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件特許発明3について
本件特許発明3と引用発明1-2とを対比すると、前記相違点1-2、相違点1-3と同様の点において相違し、その余の点で一致する。
そして、相違点1-2、相違点1-3と同様の相違点は、前記(2)イ(ア)に示した理由と同様の理由により、実質的な相違点であり、また、引用発明1-2において、当業者が容易に想到し得たものではない。
そうすると、本件特許発明3は、甲1に記載された発明ではなく、また、引用発明1-2及び甲1に記載された事項に基いて、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明3の発明特定事項を全て含む発明であり、本件特許発明3の相違点1-2、相違点1-3と同様の相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、前記(4)に示した理由と同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、引用発明1-2及び甲1に記載された事項に基いて、当業者といえども、容易に発明をすることができたものではない。
3 甲2に記載された発明に基づく進歩性について
特許異議申立人は、特許異議申立書の第11ページ第11行~第27行において、「以上のように甲2発明に開示されているオレイルアミン等の脂肪族アミンと、フェノール系酸化防止剤とを組み合わせて用いることで得られる効果(ギ酸発生下での防錆試験及びスラッジ量の抑制に優れること)は、本件特許発明1-4の効果(低級脂肪酸及びスラッジの発生を抑制すること)と同様である。更に、本件特許明細書によれば、「オレイルアミン」以外の脂肪族アミンを用いた実施例(実施例1-5、11等)は、「オレイルアミン」を用いた実施例(実施例6、甲2発明に相当)と比較して同等或いはそれ以下の効果しか奏されないことが具体的に示されている。従って、本件特許発明1-4の効果が「当業者が容易に予期し得たことではありません。」との特許権者の主張は成立せず、本件特許発明1-4に係る効果は、甲2発明から予期し得たものである。また、当業者であれば、脂肪族アミンとして、ジ-イソブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリデシルアミン、ジ-n-オクチルアミン及びポリブテニルアミン等の周知の化合物を選択することは容易である。以上より、本件特許発明1-4は、甲2発明に対して構成の困難性を有せず、顕著な効果を有するとはいえないことから、本件特許発明1-4は、甲2発明に対して進歩性を有しない。」と主張している。
しかしながら、特許異議申立人が主張するように、仮に、「オレイルアミン」を含有するものと比較して、「ポリブテニルアミン」を含有する本件特許発明1の効果が同等或いはそれ以下であり、ポリブテニルアミンが周知の化合物であるとしても、前記第4 2(2)イに示したように、甲2には、ポリブテニルアミンを含有させることについて、記載も示唆もされていないから、甲2に記載された発明に基づいて、ポリブテニルアミンを含有させる動機付けはない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。
4 サポート要件について
(1)脂肪族アミン及びフェノール系酸化防止剤の含有量について
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「低級脂肪酸の発生を抑制しつつ、スラッジの発生も抑制できる油圧作動油組成物、及び、該油圧作動油組成物を用いた油圧装置を提供すること」(段落【0008】)を課題とし、該課題を解決するための手段として、油圧作動油組成物に、式(1)で表される化合物が例として挙げられるフェノール系酸化防止剤を含有させる(段落【0024】、【0037】~【0048】)とともに、ポリブテニルアミン等が例として挙げられる炭素数が8以上であり構成元素として酸素を含まない1級又は2級脂肪族アミンを含有させる(段落【0024】、【0049】~【0057】)ことが記載されている。
これらの発明の詳細な説明の記載によると、当業者は、油圧作動油組成物に、式(1)で表される化合物であるフェノール系酸化防止剤を含有させるとともに、ポリブテニルアミンを含有させることにより、前記の課題を解決できると認識できるものである。
そして、油圧作動油組成物の技術分野において、油圧作動油組成物の全量を基準として、基油の質量%が圧倒的に多く、例えば90%を超える一方、その他の添加剤の質量%は、それぞれ1%未満~数%程度であること(例えば、甲1の表1(前記2(1)ア(オ))、甲2の表1、表2(前記第4 2(1)ア(サ))参照)が技術常識であることを踏まえると、本件特許発明1~4において、式(1)で表される化合物であるフェノール系酸化防止剤の含有量が特定されておらず、本件特許発明1、3において、ポリブテニルアミンの含有量が特定されていないとしても、当業者であれば、これらのおおよその上限値は特定し得るものであり、本件特許発明1~4の前記した課題も踏まえると、これらのおおよその下限値についても特定し得るものである。
さらに、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、式(1)で表される化合物であるフェノール系酸化防止剤と、ポリブテニルアミンとを含有させた油圧作動油組成物の具体例として、表3の実施例11に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.1質量%、ポリブテニルアミンを2質量%含有したものが開示されているが、当業者であれば、このような含有量でなくても、式(1)で表される化合物であるフェノール系酸化防止剤と、ポリブテニルアミンとが含有されていれば、程度の差はあるにしても、前記課題を解決できると認識できるといえる。
以上によると、本件特許発明1~4において、式(1)で表される化合物であるフェノール系酸化防止剤、及びポリブテニルアミンの含有量が、発明の詳細な説明に記載された含有量に特定されていないとしても、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明の記載より当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(2)フェノール系酸化防止剤の種類について
前記(1)で示したように、本件特許の発明の詳細な説明の記載によると、当業者は、油圧作動油組成物に、式(1)で表される化合物であるフェノール系酸化防止剤を含有させるとともに、ポリブテニルアミンを含有させることにより、前記の課題を解決できると認識できるものである。
そうすると、本件特許発明1~4において、式(1)で表される化合物であるフェノール系酸化防止剤が、前記実施例11で含有している2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール以外のものを含むとしても、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明の記載より当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、本件特許発明1~4は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1~請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1~請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700443