特許異議申立
2017-700992
大容量体系対応油圧システム
- 審判番号
- 2017-700992
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-020626
- 登録番号
- 特許第6117956号(P6117956)
- 請求日
- 2017年10月17日
- 審決日
- 2018年06月28日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】油研工業株式会社
- 【権利者代理人】花村 太
- 【異議申立人】豊興工業 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 竜一
- 審判官 藤井 昇
- 審判官 山村 和人
- 分類
- P1651.121-YAA(F15B) / P1651.852-YAA(F15B) / P1651.853-YAA(F15B) / P1651.841-YAA(F15B) / P1651.854-YAA(F15B) / P1651.855-YAA(F15B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6117956号発明「大容量体系対応油圧システム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6117956号の明細書,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第6117956号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第6117956号の請求項1に係る特許についての出願は,平成28年 2月 5日の特許出願であって,平成29年 3月31日にその特許権の設定登録がされた。その特許について,平成29年10月16日付けで特許異議申立人 豊興工業株式会社により特許異議の申立てがされ,同年12月13日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である平成30年 2月19日付けで特許権者により意見書の提出及び訂正の請求がされ,同年 5月29日付けで異議申立人により意見書の提出があったものである。
第2.訂正の適否
1.訂正の内容
平成30年 2月19日付けの訂正請求(以下,「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1~6のとおりである(下線部は,訂正箇所を示し,当審で付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「負荷側の母機装置へ送る合流油路」とあるのを「負荷側の複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機へ送る合流油路」に訂正する。以降,請求項1に「母機装置」とあるのを「タイヤ加硫機」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「運転プログラムに対応する必要圧油流量」とあるのを「各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラムに対応する必要圧油流量」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記制御装置は,全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものである」とあるのを「前記制御装置は,油圧ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものであり,前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えている」と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の段落【0014】に「負荷側の母機装置へ送る合流油路」とあるのを「負荷側の複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機へ送る合流油路」に訂正する。以降,段落【0014】に「母機装置」とあるのを「夕イヤ加硫機」と訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0014】に「運転プログラムに対応する必要圧油流量」とあるのを「各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラムに対応する必要圧油流量」と訂正する。
(6)訂正事項6
明細書の段落【0014】に「前記制御装置は,全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものである」とあるのを「前記制御装置は,油圧ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものであり,前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えている」と訂正する。
2.訂正要件についての判断
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では,「負荷側の母機装置」として,「各油圧ポンプ装置の吐出口から該油圧ポンプ装置側への逆流を阻止する逆止弁を介して吐出される作動油を合流させて」送られる装置がいかなるものか特定されていない。
これに対して,訂正後の請求項1に係る発明では,当該母機装置が,「複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機」であることを限定し,且つ,訂正前の請求項1に記載された「母機装置」を引用する「前記母機装置」との記載を同様に「前記タイヤ加硫機」と限定することで,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項1による訂正は,特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
母機装置として大容量体系対応油圧システムにおいて各油圧ポンプ装置からの作動油が送られるものについて,願書に添付した明細書の段落【0028】に「本発明の一実施例による大容量体系対応油圧システムとして,負荷側の複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機に対して,容量の異なる複数種の油圧ポンプ装置から吐出される作動油を合流させて供給する・・・」と記載されているから,当該訂正事項1による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように,訂正事項1による訂正は,発明特定事項を上位概念から下位概念に変更するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア.訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では,制御装置が,「前記母機装置の運転プログラムに対応する必要圧油流量の経時的変化に応じて,・・・(略)・・・油圧ポンプ装置を選択し,各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止の切換制御を行うものである」が,「運転プログラム」がいかなるものであるかについては何ら特定されていない。
これに対して,訂正後の請求項1に係る発明では,当該「運転プログラム」が「各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラム」であることを限定することで,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項2による訂正は,特許法第120条の5第2項第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
運転プログラムについて,願書に添付した明細書の段落【0032】に「タイヤ加硫機100全体の運転プログラムは,このような各加硫機の運転サイクルが互いに適宜ずらされるように設定されている。したがってこの運転プログラムに沿ってタイヤ加硫機100の運転駆動に必要とされる全圧油流量は経時的に変化する。」と記載されていることから,当該訂正事項2による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように,訂正事項2による訂正は「運転プログラム」を「各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラム」と構成要素を直列的に付加するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア.訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では,制御装置が,「全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものである」ことを特定している。
これに対して,訂正後の請求項1に係る発明では,「前記制御装置は,油圧ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものであり,前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えている」として,制御装置を限定して特許請求の範囲を減縮しようとするものであるため,当該訂正事項3による訂正は,特許法第120条の5第2項書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
当該「制御装置」に係る説明として,願書に添付した明細書の段落【0039】には,「制御装置50には,油圧システム1のポンプ稼働情報を蓄積する記憶部53を設け,各油圧ポンプ装置の起動回数および稼働時間のデータを該記憶部53に蓄積する構成とすることが望ましい。」と記載され,また願書に添付した明細書の段落【0041】には,「ポンプ選択器52は,限られた油圧ポンプ装置に対して駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように,所定期間内で全油圧ポンプ装置の駆動・停止回数が平均化するように選択する設定が望ましい。この時,記憶部53にポンプ稼働情報として蓄積された各油圧ポンプ装置の起動回数や稼働時間のデータを平均化制御のためのフィードバックに利用することができる。」と記載され,また,願書に添付した明細書の段落【0027】には,「制御装置の記憶部に各油圧ポンプ装置の駆動回数や駆動時間等のデータを蓄積させ,平均化のフィードバック制御にこれらデータを利用することができる。」と記載されていることから,当該訂正事項3による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記ア.の理由から明らかなように,訂正事項3による訂正は,構成要素を直列的に付加するものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア.訂正の目的について
訂正事項4による訂正は,上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,訂正事項4による訂正は特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4による訂正は,上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,上記(1)訂正事項1の上記イ.と同様の理由により,訂正事項4による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4による訂正は,上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,上記(1)訂正事項1の上記ウ.と同様の理由により,訂正事項4による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア.訂正の目的について
訂正事項5による訂正は,上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,訂正事項5は特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5による訂正は,上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,上記(2)訂正事項2の上記イ.と同様の理由により,訂正事項5による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5による訂正は,上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,上記(2)訂正事項2の上記ウ.と同様の理由により,訂正事項5による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア.訂正の目的について
訂正事項6による訂正は,上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,訂正事項6による訂正は特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ.願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6による訂正は,上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,上記(3)訂正事項3の上記イ.と同様の理由により,訂正事項6による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ.実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6による訂正は,上記訂正事項3に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから,上記(3)訂正事項3の上記ウ.と同様の理由により,訂正事項6による訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項,第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項1について訂正を認める。
第3.特許異議の申立てについて
1.本件特許発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1に係る発明(以下,「本件特許発明」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
「各々オンオフ制御可能なモータによって駆動される複数台の油圧ポンプ装置と,
各油圧ポンプ装置の吐出口から該油圧ポンプ装置側への逆流を阻止する逆止弁を介して吐出される作動油を合流させて負荷側の複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機へ送る合流油路と,
各油圧ポンプ装置から吐出される作動油の合算供給流量が,前記タイヤ加硫機の駆動に必要な全圧油流量相当となるように各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止制御を行う制御装置と,を備え,
前記複数台の油圧ポンプ装置は,各油圧ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記タイヤ加硫機の駆動における必要最大圧油流量を越える容量と台数の組み合わせで備えられ,
前記制御装置は,前記タイヤ加硫機の各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラムに対応する必要圧油流量の経時的変化に応じて,全油圧ポンプ装置から前記必要圧油流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせの油圧ポンプ装置を選択し,各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止の切換制御を行うものであって,
前記複数台の油圧ポンプ装置は,互いに容量の同じ定容量ポンプ装置であり,
前記制御装置は,油圧ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものであり,前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えていることを特徴とする大容量体系対応油圧システム。」
2.取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成29年12月13日付けで特許権者に通知した取消理由は,要旨次のとおりである。
「本件特許の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.引用刊行物
引用例1:特開2002-14704号公報(特許異議申立人が提出した甲第3号証)
引用例2:特開昭63-13903号公報(特許異議申立人が提出した甲第2号証)
引用例3:実願平2-128178号(実開平4-83729号)のマイクロフィルム(特許異議申立人が提出した甲第1号証)」
3.引用刊行物の記載事項
(1)引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる(特に,段落【0001】~【0004】,【0012】~【0039】,図1~図3を参照のこと。)。
「B台のポンプとしての機器2と,
前記B台の機器2によって実際に送り出されている流体の流量M・Zがプラントの運転時の流体の要求量x[t/h]相当となるように各機器2の起動停止制御を行う制御方法であって,
前記制御方法は,プロセス要求が増減している前記プラントの流体の要求量x[t/h]と前記B台の機器2によって実際に送り出されている流量M・Zとの比較を行い,流体の要求量x[t/h]よりも前記B台の機器2によって実際に送り出される流量M・Zが大きくなるように運転中の機器2の台数Mを増減させるように,各機器2の起動停止制御を行うものであって,
前記B台の機器2は,互いに機器容量Z[t/h]の同じ定容量ポンプ装置であり,
前記制御方法は,機器2の起動・停止順序を独立させて制御を行い,全機器No.1~No.Bに対して起動・停止回数が略均等化する,プラントの制御方法。」
(2)引用例2には,以下の事項が記載されていると認められる(特に,特許請求の範囲の記載,〔産業上の利用分野〕,〔実施例〕,〔効果〕の記載,第1図を参照のこと。)。
「電動機2a~2cによって駆動される複数台の液圧ポンプ1a~1cと,
各液圧ポンプ1a~1cの吐出された作動液を集めて負荷側のアクチュエータの入口に接続する液路7及び供給液路10と,
各液圧ポンプ1a~1cから吐出される作動液を集めた流量が,前記アクチュエータ側で消費する流量相当となるように各液圧ポンプ1a~1cの液圧ポンプの台数が制御される液圧源と,を備え
前記複数台の液圧ポンプ1a~1cは,互いに容量の同じ定容量形液圧ポンプ1a~1cである,比較的大形の一定圧力液圧源。」
(3)引用例3には,以下の事項が記載されていると認められる(特に,「実施例」,図1,図4を参照のこと。)。
「独立して駆動される複数個の電動機34~36によって個別に接続される複数個のポンプ31~33と,
各ポンプ31~33を電磁切換弁41に接続する,該ポンプ31~33側への逆流を阻止する逆止弁37~39を有する管路が合流してなる1つの管路と,前記電磁切換弁41は射出シリンダ21に接続され,
各ポンプ31~33から吐出され合流した作動油の吐出量が,前記射出シリンダ21の駆動に必要な射出速度に対応した吐出量となるように各ポンプ31~33の各電動機34~36の組み合わせを選択し,選択された結果に基づいて各電動機34~36に駆動信号を発信する電動機制御回路52と,を備え,
前記複数個のポンプ31~33は,各ポンプ31~33から吐出され合流した吐出量が前記射出シリンダ21の射出速度における最大射出速度に対応する吐出量になる容量と台数の組み合わせで備えられ,
前記電動機制御回路52は,前記必要な射出速度を得るのに必要な最小限の油量を射出シリンダ21に供給するために必要な必要最小限の電動機のみを駆動するように,各ポンプ31~33の電動機34~36の組み合わせを選択し,選択された結果に基づいて各電動機34~36に駆動信号を発信する,射出成形機の油圧制御装置。」
4.異議申立人が平成30年5月29日付け意見書とともに提出した参考資料の記載事項
(1)参考資料1(特開昭59-148902号公報)には,以下の事項が記載されている。
「〔発明の利用分野〕
本発明は,複数台の圧縮機や冷凍機等の機器を制御する台数制御装置に係り,特に複数台の機器の均一運転に好適な台数制御装置に関する。
〔従来技術〕
複数台の圧縮機や冷凍機等の機器を制御する台数制御装置には,次の3つのタイプがある。
(1)台数制御下におかれた複数台の機器の運転時間,起動回数などの運転状況をメモリに記録し,台数制御装置の電源を遮断した場合でも,これらの運転状況を保持するようにしたもの。
(2)前記(1)と同様,運転状況をメモリに記録するが,台数制御装置の電源を切ると,これらの記録された運転状況がクリアされてしまうもの。
(3)台数制御下におかれた機器の運転状況を記録しないもの。」(公報1ページ左下欄下から2行~右下欄14行)
(2)参考資料2(特開2001-58324号公報)には,以下の事項が記載されていると認められる。
「オンオフ可能なモータによって駆動される2台の小容量可変ポンプ14,15と,各小容量可変ポンプ14,15の吐出口から該小容量可変ポンプ14,15への逆流を阻止する逆止弁16,17を介して吐出される作動油を合流させて負荷側の複数の加硫機9~13から構成されるタイヤ加硫機へ送る合流油路と,主アキュムレータ回路3と,
前記2台の小容量可変ポンプ14,15は互いに容量の同じ小容量可変ポンプ14,15であり,2台の小容量可変ポンプ14,15は合流油路の圧油が所定値に達すると運転を停止する,
タイヤ加硫プレス用油圧システム。」(特に,段落【0013】~【0023】,図1を参照のこと。)
5.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア.特許法第29条第2項について
本件特許発明と引用発明とを対比すると,後者の「B台」は前者の「複数台」に相当し,以下同様に,「運転」は「駆動」に,「送り出される」態様は「吐出される」態様に,「機器容量Z[t/h]」は「最大吐出量」または「容量」に,それぞれ相当する。
後者の「ポンプとしての機器2」または「機器2」と前者の「油圧ポンプ装置」は「ポンプ装置」である点で共通し,後者の「流体」と前者の「作動油」とは「流体」である点で共通し,後者の「プラント」は前者の「複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機」または「タイヤ加硫機」とは「装置」である点で共通し,後者は,「制御方法」を実行するための装置を有することが明らかであるから,後者の当該装置は前者の「制御装置」に相当する。
後者の「前記B台の機器2によって実際に送り出されている流体の流量M・Zがプラントの運転時の流体の要求量x[t/h]相当となるように各機器2の起動停止制御を行う制御方法」と,前者の「各油圧ポンプ装置から吐出される作動油の合算供給流量が,前記タイヤ加硫機の駆動に必要な全圧油流量相当となるように各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止制御を行う制御装置」とは,「各ポンプ装置から吐出される流体の合算供給流量が,装置の駆動に必要な全流量相当となるように各ポンプ装置の駆動・停止制御を行う制御装置」において共通する。
プラントに流体を送り出すポンプとしての機器2を設置するにあたり,該機器2により送り出される流体の流量の最大値を該プラントの運転時の流体の要求量の最大値をまかなうことができる大きさに設定することは,当業者が当然に考慮する事項であって,後者において,前記B台の機器容量Z[t/h]の合計B・Zはプラント運転時の流体の要求量をx[t/h]の最大値よりも大きくされていると認められ,この点は,前者の「前記複数台の油圧ポンプ装置は,各油圧ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記タイヤ加硫機の駆動における必要最大圧油流量を越える容量と台数の組み合わせで備えられ」ることに相当する。
後者の「前記制御方法は,プロセス要求が増減している前記プラントの流体の要求量x[t/h]と前記B台の機器2によって実際に送り出されている流量M・Zとの比較を行い,流体の要求量x[t/h]よりも前記B台の機器2によって実際に送り出される流量M・Zが大きくなるように運転中の機器2の台数Mを増減させるように,各機器2の起動停止制御を行う」ことと,前者の「前記制御装置は,前記タイヤ加硫機の各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラムに対応する必要圧油流量の経時的変化に応じて,全油圧ポンプ装置から前記必要圧油流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせの油圧ポンプ装置を選択し,各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止の切換制御を行う」こととは,「前記制御装置は,前記装置の必要流量の経時的変化に応じて,全ポンプ装置から前記必要流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせのポンプ装置を選択し,各ポンプ装置の駆動・停止の切換制御を行う」ことにおいて共通する。
後者の「前記B台の機器2は,互いに機器容量Z[t/h]の同じ定容量ポンプ装置であ」ることと,前者の「前記複数台の油圧ポンプ装置は,互いに容量の同じ定容量ポンプ装置であ」ることとは,「前記複数台のポンプ装置は,互いに容量の同じ定容量ポンプ装置であ」ることで共通する。
後者の「前記制御方法は,機器2の起動・停止順序を独立させて制御を行い,全機器No.1~No.Bに対して起動・停止回数が略均等化する」ことと,前者の「前記制御装置は,油圧ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものであり,前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えていること」とは,「前記制御装置は,ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全ポンプ装置に対して駆動・停止の回数の平均化制御を行う」ことにおいて共通する。
後者の「プラントの制御方法」は,B台のポンプとしての機器2を制御するシステムに関するものであるから,前者の「大容量体系対応油圧システム」と対比すると,「大容量体系対応システム」で共通する。
そうすると,両者は,
「複数台のポンプ装置と,
各ポンプ装置から吐出される流体の合算供給流量が,装置の駆動に必要な全流量相当となるように各ポンプ装置の駆動・停止制御を行う制御装置であって,
前記複数台のポンプ装置は,各ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記装置の駆動における必要最大流量を越える容量と台数の組み合わせで備えられ,
前記制御装置は,前記装置の必要流量の経時的変化に応じて,全ポンプ装置から前記必要流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせのポンプ装置を選択し,各ポンプ装置の駆動停止の切換制御を行うものであって,
前記複数台のポンプ装置は,互いに容量の同じ定容量ポンプ装置であり,
前記制御装置は,ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全ポンプ装置に対して駆動・停止の回数の平均化制御を行うものである,大容量体系対応システム。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
複数台のポンプ装置に関して,当該ポンプ装置が,本件特許発明では,「各々オンオフ制御可能なモータによって駆動される」「油圧ポンプ装置」であるのに対して,引用発明では,そのような特定がなされていない点。
<相違点2>
本件特許発明では,「各油圧ポンプ装置の吐出口から該油圧ポンプ装置側への逆流を阻止する逆止弁を介して吐出される作動油を合流させて負荷側の複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機へ送る合流油路」を備えるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点3>
各ポンプ装置から吐出される流体の合算供給流量が装置の駆動に必要な全流量相当となるように各ポンプ装置の駆動・停止制御を行う制御装置,及び,前記複数台のポンプ装置は,各ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記装置の駆動における必要最大流量を越える容量と台数の組み合わせで備えられ,前記制御装置は,前記装置の必要流量の経時的変化に応じて,全ポンプ装置から前記必要流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせのポンプ装置を選択し,各ポンプ装置の駆動・停止の切換制御を行うことに関して,本件特許発明では,各ポンプ装置,全ポンプ装置等のポンプ装置が「油圧ポンプ装置」であり,流体が「作動油」であり,全流量相当が「全圧油流量相当」であり,必要流量が「必要圧油流量」であり,必要最大流量が「必要最大圧油流量」であり,装置が「タイヤ加硫機」であり,駆動・停止制御及び駆動・停止の切換制御が「モータの駆動・停止制御」及び「モータの駆動停止の切換制御」であるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点4>
制御装置は,前記装置の必要流量の経時的変化に関して,本件特許発明では,必要流量の経時的変化が「前記タイヤ加硫機の各加硫機の運転サイクルが互いずらされる運転プログラムに対応する」ものであるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
<相違点5>
制御装置は,駆動・停止の回数の平均化制御を行うことに関して,本件特許発明では,「予め定められた期間内での」平均化制御を行うものであり,「前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えている」のに対して,引用発明では,機器2(ポンプ装置)の起動・停止順序を独立させて制御を行い,全機器No.1~No.Bに対して起動・停止回数が略均等化するものである点。
<相違点6>
大容量体系対応システムに関し,本件特許発明では,大容量体系対応「油圧」システムであるのに対して,引用発明では,そのような特定はなされていない点。
上記相違点5について検討する。
ここで,引用例2及び引用例3には,複数台の各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止制御に関する記載はあるものの,各油圧ポンプ装置の駆動・停止の回数の平均化制御に関する記載はない。
さらに,引用例1には,「【0004】ここで,複数台の機器2のうち特定の機器2の運転時間が長くなると,その寿命が短くなってしまう虞れがあるため,従来においては,各機器2の運転時間を操作員が管理して略均等となるように起動・停止すべき機器2を決めるようにしたり,或いは,ユニット計算機を設置し,機器2の運転時間を積算し,プログラム制御により,どの機器2も運転時間が等しくなるように起動・停止の指令を出力したりすることが行われていた。
【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,前述の如く,各機器2の運転時間を操作員が管理するのでは,操作員の負担が大きくなると共に,誤操作してしまう可能性もあり,あまり好ましくなく,又,ユニット計算機によるプログラム制御を行うのでは,制御ロジックが複雑となり,プログラムを組むのが非常に面倒で時間と費用がかかるという欠点を有していた。
【0006】本発明は,斯かる実情に鑑み,単純なロジックで各機器の運転時間を略均等化し得,特定の機器の寿命が短くなってしまうようなことを防止し得る機器の起動停止制御方法を提供しようとするものである。」,
「【0036】このように,単純なロジックではあるが,機器2の起動・停止順序を独立させて制御すると,長時間運転すれば,必ず機器2の起動・停止回数は略均等化されて行く形となる。
【0037】こうして,単純なロジックで各機器2の運転時間を略均等化し得,特定の機器2の寿命が短くなってしまうようなことを防止し得る。」
と記載されており,引用発明は,機器2の運転時間を積算し,プログラム制御により,各機器2の運転時間が等しくなるように各機器2を起動・停止することに伴う課題を解決するために,機器2の起動・停止順序を独立させて制御し,単純なロジックで各機器2の運転時間を略均等化するものである。
一方,上記相違点5に係る,本件特許発明を特定する発明である「前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えている」ことは,各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積するものであって,そのデータをフィードバック利用するにあたっては,必然的にそのための制御プログラムが必要になるから,引用発明において,平均化制御にフィードバック利用できる各機器(ポンプ装置)の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えるようにすることには阻害事由があるといえる。
そうすると,異議申立人が提出した参考資料1には,従来技術として「複数台の機器の均一運転に好適な台数制御装置に関して,台数制御下におかれた複数台の機器の運転時間,起動回数などの運転状況をメモリに記録し,台数制御装置の電源を遮断した場合でも,これらの運転状況を保持するようにしたもの。」が開示されているとしても,この従来技術を阻害事由のある引用発明に適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって,他の相違点を検討するまでもなく,本件特許発明は,引用発明に,引用例2に記載された事項,引用例3に記載された事項,参考資料1及び参考資料2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.特許異議申立人の意見について
異議申立人は,平成30年5月29日付け意見書において,
「しかしながら,訂正により新たに生じた相違点1「各油圧ポンプ装置のモータに対する平均化制御にフィードバック利用可能なデータとして油圧ポンプ装置の駆動回転数だけでなく駆動時間のデータも蓄積される記憶部を制御装置に備える構成」については,参考資料1(特開昭59-148902号公報)に「台数制御下におかれる複数台の機器の累積運転時間,累積起動回数等を均一化でき,従って複数台の機器の寿命を平均化し得る」台数制御装置が記載されているとおり周知の技術であり,引用発明に記載の発明が,複数台のポンプの起動・停止回数を略均等化し得,特定のポンプの寿命が短くなってしまうようなことを防止し得る機器の起動停止制御方法であるように,当該周知の技術の適用の動機付けがある。」旨主張する。
しかしながら,前述したように,引用発明においては,平均化制御にフィードバック利用できる各機器(ポンプ装置)の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えるようにすることには,阻害事由があるため,異議申立人の上記主張は採用することができない。
(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
異議申立人は,特許異議申立書において,本件特許発明は,甲第1号証に記載された発明,甲2記載事項及び甲3記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができた旨主張しているので,以下において検討する。
甲第1号証に記載された発明は,先に記載した引用例3に記載された事項のとおりであるが,以下,甲1発明ということにする。
本件特許発明と甲1発明とを対比すると,後者の「電動機34~36」は前者の「モータ」に相当し,以下同様に,「複数個」は「複数台」に,「ポンプ31~33」は作動油を吐出するものであるから「油圧ポンプ装置」に,「電動機制御回路52」は「制御装置」に,「射出成形機の油圧制御装置」は「大容量体系対応油圧システム」に,それぞれ相当する。
後者の「射出シリンダ21」と前者の「複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機」または「タイヤ加硫機」とは「母機装置」である点で共通する。
後者の「独立して駆動される複数個の電動機34~36によって個別に接続される複数個のポンプ31~33」は前者の「各々オンオフ制御可能なモータによって駆動される複数台の油圧ポンプ装置」に相当する。
後者の「各ポンプ31~33を電磁切換弁41に接続する,該ポンプ31~33側への逆流を阻止する逆止弁37~39を有する管路が合流してなる1つの管路と,前記電磁切換弁41は射出シリンダ21に接続され」ることと,前者の「各油圧ポンプ装置の吐出口から該油圧ポンプ装置側への逆流を阻止する逆止弁を介して吐出される作動油を合流させて負荷側の複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機へ送る合流油路」とは,「各油圧ポンプ装置の吐出口から該油圧ポンプ装置側への逆流を阻止する逆止弁を介して吐出される作動油を合流させて負荷側の母機装置へ送る合流油路」において共通する。
後者の「各ポンプ31~33から吐出され合流した作動油の吐出量が,前記射出シリンダ21の駆動に必要な射出速度に対応した吐出量となるように各ポンプ31~33の各電動機34~36の組み合わせを選択し,選択された結果に基づいて各電動機34~36に駆動信号を発信する電動機制御回路52」と,前者の「各油圧ポンプ装置から吐出される作動油の合算供給流量が,前記タイヤ加硫機の駆動に必要な全圧油流量相当となるように各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止制御を行う制御装置」とは,「各油圧ポンプ装置から吐出される作動油の合算供給流量が,前記母機装置の駆動に必要な全圧油流量相当となるように各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止制御を行う制御装置」において共通する。
後者の「前記複数個のポンプ31~33は,各ポンプ31~33から吐出され合流した吐出量が前記射出シリンダ21の射出速度における最大射出速度に対応する吐出量になる容量と台数の組み合わせで備えられ」ることと,前者の「前記複数台の油圧ポンプ装置は,各油圧ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記タイヤ加硫機の駆動における必要最大圧油流量を越える容量と台数の組み合わせで備えられ」ることとは,「前記複数台の油圧ポンプ装置は,各油圧ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記母機装置の駆動における必要最大圧油流量となる容量と台数の組み合わせで備えられ」ることにおいて共通する。
後者の「前記電動機制御回路52は,前記必要な射出速度を得るのに必要な最小限の油量を射出シリンダ21に供給するために必要な必要最小限の電動機のみを駆動するように,各ポンプ31~33の電動機34~36の組み合わせを選択し,選択された結果に基づいて各電動機34~36に駆動信号を発信する」ことと,前者の「前記制御装置は,前記タイヤ加硫機の各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラムに対応する必要圧油流量の経時的変化に応じて,全油圧ポンプ装置から前記必要圧油流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせの油圧ポンプ装置を選択し,各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止の切換制御を行う」こととは,「前記制御装置は,前記母機装置の必要圧油流量の経時的変化に応じて,全油圧ポンプ装置から前記必要圧油流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせの油圧ポンプ装置を選択し,各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止の切換制御を行う」ことにおいて共通する。
そうすると,両者は,
「各々オンオフ制御可能なモータによって駆動される複数台の油圧ポンプ装置と,
各油圧ポンプ装置の吐出口から該油圧ポンプ装置側への逆流を阻止する逆止弁を介して吐出される作動油を合流させて負荷側の母機装置へ送る合流油路と,
各油圧ポンプ装置から吐出される作動油の合算供給流量が,前記母機装置の駆動に必要な全圧油流量相当となるように各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止制御を行う制御装置と,を備え,
前記複数台の油圧ポンプ装置は,各油圧ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記母機装置の駆動における必要最大圧油流量となる容量と台数の組み合わせで備えられ,
前記制御装置は,前記母機装置に対応する必要圧油流量に応じて,全油圧ポンプ装置から前記必要圧油流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせの油圧ポンプ装置を選択し,各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止の切換制御を行うものである,大容量体系対応油圧システム。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点1>
母機装置が,本件特許発明では,「複数の加硫機から構成されるタイヤ加硫機」または「タイヤ加硫機」であるのに対して,甲1発明では射出シリンダ21である点。
<相違点2>
制御装置は,前記母機装置に対応する必要圧油流量に応じて,全油圧ポンプ装置から前記必要圧油流量の供給を満たす合算供給流量となる組み合わせの油圧ポンプ装置を選択し,各油圧ポンプ装置のモータの駆動・停止の切換制御を行うものに関して,前記母機装置に対応する必要圧油流量に応じてについて,本件特許発明では,「前記タイヤ加硫機の各加硫機の運転サイクルが互いにずらされる運転プログラムに対応する必要圧油量の経時的変化に応じて」であるのに対して,甲1発明では,予め必要動力や射出速度がわかっている場合に,射出成形をするのに最小限の動力で各電動機34,35,36(モータ)で各電動機34,35,36を直接指定して対応するスイッチをオン・オフしている点。
<相違点3>
前記複数台の油圧ポンプ装置は,各油圧ポンプ装置による最大吐出量の合算供給流量が前記母機装置の駆動における必要最大圧油流量となる容量と台数の組み合わせで備えられることに関し,「必要最大圧油流となる容量と台数の組み合わせ」が本件特許発明では,必要最大圧油流量を「越える」容量と台数の組み合わせであるのに対して,甲1発明では.必要最大圧油流量(100%)となる容量と台数の組み合わせである点。
<相違点4>
本件特許発明では,「前記複数台の油圧ポンプ装置は,互いに容量の同じ定容量ポンプ装置であり,前記制御装置は,油圧ポンプ装置の駆動に偏りが生じて負担が他より増大することがないように全油圧ポンプ装置のモータに対して予め定められた期間内での駆動・停止の回数の平均化制御を行うものであり,前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えている」のに対して,甲1発明では,複数台の油圧ポンプ装置は,互いに「容量が異なる」定容量ポンプ装置であって,駆動・停止回数の平均化制御を行うものではない点。
上記相違点4について検討する。
引用例2(甲第2号証)には,「複数台の液圧ポンプ1a~1c(油圧ポンプ装置)は,互いに容量の同じ定容量形液圧ポンプ1a~1c(定容量ポンプ装置)である」ことは記載されているものの,各油圧ポンプ装置の駆動・停止の回数の平均化制御に関する記載はない。
また,引用例1(甲第3号証)には,「B台(複数台)の機器2(ポンプ装置)は,互いに機器容量Z[t/h](容量)の同じ定容量ポンプ装置であり,
前記制御方法(制御装置)は,(機器2(ポンプ装置)の運転(駆動)に偏りが生じて負担が他より増大することがないように)機器2(ポンプ装置)の起動・停止順序を独立させて制御を行い,全機器No.1~No.Bに対して起動・停止回数が略均等化する(駆動・停止回数の平均化制御を行う)」ものの,前記平均化制御にフィードバック利用できる各油圧ポンプ装置の駆動回数及び駆動時間のデータを蓄積する記憶部を備えるものではない。
それに対して,甲1発明は,各油圧ポンプ装置の吐出量の比率が略1:2:4となる「容量が異なる」ものであり,必要な動力レベルに応じて,駆動される油圧ポンプ装置の組み合わせが一意に決まるものであって,各油圧ポンプ装置の容量を同一にした上で,各ポンプ装置の駆動回数や駆動時間の平均化制御を行うようにする動機付けは生じ得ないから,甲1発明において,引用例1(甲第3号証)に記載された事項や参考文献1に記載された事項のような平均化制御を行うものを適用することはできない。
そうすると,上記相違点3における本件特許発明の発明特定事項とすることは,動機付けの生じない甲1発明に,引用例1(甲第3号証)に記載された事項や参考文献1に記載された事項を適用することができないから,当業者が容易に想到し得るものではない。
よって,他の相違点について検討するまでもなく,本件特許発明は,甲1発明に,甲2(引用例2)記載事項,甲3(引用例1)記載事項等を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第4.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700992