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特許異議申立

2024-700923

化粧シート及び化粧材

審判番号
2024-700923
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-034792
登録番号
7457047
請求日
2024年09月24日
審決日
2026年01月15日
公報発行日
2026年03月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人日栄国際特許事務所
  • 【権利者代理人】廣瀬 一
  • 【権利者代理人】宮坂 徹
  • 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
  • 【異議申立人】上田 精一
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 西田 秀彦
  • 審判官 土屋 真理子
分類
P1651.537-ZB (B32B) / P1651.55 -ZB (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第113条、特許法第126条、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7457047号発明「化粧シート及び化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7457047号の請求項1~9に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7457047号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和4年3月7日に出願され、令和6年3月18日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、同年9月24日に、特許異議申立人 上田精一(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、本件特許の請求項1~9に係る特許について、特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立て以降の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和6年12月16日付け:取消理由通知 令和7年 2月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 4月17日 :申立人による意見書の提出 同年 5月29日付け:訂正拒絶理由通知 同年 7月 3日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出 同年 8月 4日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年10月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同月31日付け:訂正拒絶理由通知 同年12月10日 :特許権者による意見書の提出 なお、令和7年2月5日提出の訂正請求書による訂正の請求は、同年10月3日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。 第2 訂正の適否についての判断 特許権者は、令和7年10月3日に訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めた。 その後、当審からの令和7年10月31日付け訂正拒絶理由通知(以下単に「訂正拒絶理由通知」という。)に対して、特許権者は同年12月10日に意見書(以下、単に「意見書」という。)を提出した。 1 訂正の内容 本件訂正請求書による訂正の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求めるものであって、その内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「着色基材層と、 前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、 前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、を混合した樹脂組成物を用いて形成され、 前記透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、 前記着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.12g/cm3以下の範囲内であり、 前記透明樹脂層を形成する前記樹脂組成物には、核剤が添加され、 前記透明樹脂層を形成する前記樹脂組成物は、前記透明樹脂層の100質量%のうち60質量%以上で透明樹脂層に含有され、 前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、 前記透明樹脂層の密度をd1とし、前記着色基材層の密度をd2とした場合、d2>d1を満たす化粧シート。」と記載されているのを、 「着色基材層と、 前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、 前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、を混合した樹脂組成物を用いて形成され、 前記透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、 前記着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.12g/cm3以下の範囲内であり、 前記透明樹脂層を形成する前記樹脂組成物には、核剤が添加され、 前記透明樹脂層を形成する前記樹脂組成物は、前記透明樹脂層の100質量%のうち60質量%以上で透明樹脂層に含有され、 前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されており、 前記透明樹脂層の密度をd1とし、前記着色基材層の密度をd2とした場合、d2>d1を満たす化粧シート。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する)。 (2)訂正単位について 訂正前の請求項1~9について、請求項2~9はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正拒絶理由通知の概要 訂正拒絶理由通知の概要は、以下のとおりである。 訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであって、同条9項で準用する126条6項に適合するものではないから、訂正事項1に係る訂正は認められない。 3 訂正についての当審の判断 (1)訂正の目的について 特許権者は、訂正の目的は明瞭でない記載の釈明であると主張しているので、まず、特許権者が主張する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるか(特許法120条の5第2項ただし書き3号)について検討し、次に、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであるか(同項ただし書き2号)について検討し、その後、特許請求の範囲の減縮(同項ただし書1号)及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(同項ただし書き4号)を目的とするものであるかについて、順に検討する。 ア 明瞭でない記載の釈明(特許法120条の5第2項ただし書3号)を目的とするものであるか (ア)明瞭でない記載の釈明について 「明瞭でない記載の釈明」とは、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいう。明瞭でない記載の釈明が認められるためには、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面に明瞭でない記載が存在することが必要である(審判便覧38-03)。 (イ)訂正事項1に係る訂正が「明瞭でない記載の釈明」に該当するか否かの判断 a 訂正前の請求項1に係る発明(以下、「訂正前発明」)という。)では、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、」と特定されている。 b 訂正前発明は、上記記載の、主語「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」及び述語「含み」の関係から、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むことを特定したものであると理解されるところ、「低密度ポリエチレン」が「高密度ポリエチレン」を「含む」という関係について、どのように整合するのかが不明瞭であった。 c そして、訂正前発明において、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている」との語句により特定される対象は、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレン」という記載からみて、「高密度ポリエチレン」であると理解される。 d 一方、訂正後の請求項1に係る発明(以下、「訂正後発明」)という。)は、訂正前の請求項1の「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、」との記載から「高密度ポリエチレンを含」む旨との記載を削除して、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されており、」とされたものである。 e そして、訂正後発明において、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いるのは、「前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されており、」という記載からみて、「低密度ポリエチレン」であると理解される。 f 当該訂正により、 (a)「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いる対象が、訂正前発明においては、「高密度ポリエチレン」であったものが、訂正後発明においては、「低密度ポリエチレン」となっており、その対象が変更されている。 (b)「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」は、訂正前発明においては、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むものであったものが、訂正後発明においては、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いることが特定されたものとなったものであり、訂正後発明は、訂正事項1に係る訂正により訂正前発明から意味内容が変更されたものとなった。 g 上記(ア)に示したように、特許請求の範囲についての「明瞭でない記載の釈明」とは、設定登録時の特許請求の範囲の記載で不明瞭となっている記載について、記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることであるところ、訂正前発明を訂正後発明とする訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「低密度ポリエチレン」が「高密度ポリエチレン」を「含む」という関係について訂正するのと同時に、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いる対象を、訂正前の「高密度ポリエチレン」から、訂正後の「低密度ポリエチレン」へと変更するものである。そして、訂正前発明において、「低密度ポリエチレン」と「高密度ポリエチレン」とについて上記(イ)bで指摘した点が不明瞭であったとしても、訂正前発明の本来の意について、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いる対象が、訂正前の「高密度ポリエチレン」ではなく、訂正後の「低密度ポリエチレン」であったとはいえないから、訂正事項1に係る訂正が、「特許請求の範囲」中のそれ自体意味の不明瞭な記載について、記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにしたものとはいえない。 h 特許権者は、意見書において、当業者にとっては、「低密度ポリエチレンが高密度ポリエチレンを含むこと」が技術的にあり得ないことは明白であるため、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含む」が不明瞭な文章であることは、言うまでもなく当然の事象」であり、明細書【0067】には、訂正事項1の訂正の根拠である「着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンは、着色基材層2の100質量%のうち、5質量%以上30質量%以下の範囲内で、着色基材層2に含有されている。」との記載がある一方、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含む」という構成に関しては、あり得ない内容であるため、明細書内には一切記載されていないことから、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1において生じていた記載上の不備(技術的に間違った、あり得ない内容の構成が記載されていること)を訂正してその本来の意味を明らかにした訂正であると言えるため、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当すると言える旨主張する(意見書2頁最下行~4頁22行)。 i しかし、「明瞭でない記載の釈明」は、記載上の不備を訂正することで、その本来の意を明らかにすることである。訂正前発明を訂正後発明とする訂正事項1に係る訂正は、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている」対象が、訂正前発明においては、「高密度ポリエチレン」であったものが、訂正後発明においては、「低密度ポリエチレン」とされ、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、訂正前発明においては、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むものであったものが、訂正後発明においては、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いることが特定されたものとなって、その意味内容が変更されたものであるから、記載上の不備を訂正することで、訂正前発明の本来の意を明らかにしたものであるとはいえない。 また、特許権者の主張について、明細書【0067】に「着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンは、着色基材層2の100質量%のうち、5質量%以上30質量%以下の範囲内で、着色基材層2に含有されている。」と記載されているとしても、明細書【0067】は、第3実施形態における一例において「着色基材層2を形成する低密度ポリエチレンは、着色基材層2の100質量%のうち、5質量%以上30質量%以下の範囲内で、着色基材層2に含有されている。」ことを示すに過ぎず、訂正前発明の「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、」の本来の意が「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されており、」であったことを示すものではない。 以上のとおりであるから、意見書における特許権者の主張を考慮しても、訂正事項1に係る訂正が明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとはいえない。 イ 誤記又は誤訳の訂正(特許法120条の5第2項ただし書2号)を目的とするものであるか (ア)本件特許に係る出願は、外国語書面出願ではなく、訂正事項1に係る訂正が「誤訳の訂正」ではないことは明らかであるから、訂正事項1に係る訂正が、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものとなるのは、訂正事項1に係る訂正の目的が、「誤記の訂正」である場合となる。 (イ)「誤記の訂正」について 「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。また、特許請求の範囲における誤記の訂正は、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと当業者その他一般第三者が理解する場合に限って許され、発明の詳細な説明の項の記載は、この点の判断の資料となる限度においてのみ斟酌されねばならない。 そして、誤記の訂正が認められるためには、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載に誤記が存在することが必要である(審判便覧38-03)。 (ウ)訂正事項1に係る訂正が「誤記の訂正」に該当するか否かの判断 a 訂正前発明では、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」について、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むものと特定されている。 b 一方、訂正後の請求項1に係る発明では、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」は、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いることが特定されたものである。 c そして、上記(イ)のとおり、「誤記の訂正」においては「訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるもの」でなければならないところ、訂正前発明の上記aの記載について、上記ア(イ)でも指摘したとおり、当然に訂正後発明の上記bの記載と同一の意味を表示するということはできない。 (エ)以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものとは認められない。 ウ 特許請求の範囲の減縮(特許法120条の5第2項ただし書1号)を目的とするものであるか 訂正事項1に係る訂正は、訂正前発明の「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、」との記載から「高密度ポリエチレンを含」む旨の記載を削除して、訂正後発明の「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されており、」と訂正するものである。 この訂正は、訂正前発明においては「低密度ポリエチレン」が「高密度ポリエチレンを含」むという関係が特定されていたところ、訂正後発明においては「低密度ポリエチレン」と「高密度ポリエチレン」との関係を特定しないものとしている点で、訂正前の請求項1の記載事項を限定するものではない。 また、この訂正は、訂正前発明においては「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で前記着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むことが特定されていたものを、訂正後発明においては「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いるとするものであり、すなわち、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている」対象が、訂正前発明においては、「高密度ポリエチレン」であったものが、訂正後発明においては、「低密度ポリエチレン」となってその対象が変更されているものであるから、請求項1の記載事項の内容を変更するものであって、請求項1の記載事項を限定するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当しない。 エ 請求項間の引用関係の解消(特許法120条の5第2項ただし書4号)を目的とするものであるか 訂正事項1に係る訂正が、請求項間の引用関係の解消を目的とするものに該当しないことは明らかである。 オ 小括 したがって、訂正事項1に係る訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書き各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 (2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないものか ア 訂正事項1に係る訂正は、上記(1)ア(イ)dにおいて指摘したように、訂正前の請求項1の「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、」との記載から「高密度ポリエチレンを含」む旨との記載を削除して、訂正後発明において、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されており、」とするものである。 イ 訂正事項1に係る訂正により、上記(1)ア(イ)a~fにおいて指摘したように、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」は、訂正前発明においては、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むものであったものが、訂正後の請求項1に係る発明においては、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されて」いることが特定されたものとなったものであり、その意味内容が変更されている。 ウ また、上記(1)ア(イ)a~fにおいて指摘したように、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている」対象が、訂正前発明においては、「高密度ポリエチレン」であったものが、訂正後発明においては、「低密度ポリエチレン」となっており、訂正事項1に係る訂正によって、意味内容が変更されている。 エ そうすると、訂正前発明を訂正後発明とする、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであって、同条9項で準用する126条6項に適合するものではない。 オ 特許権者は、意見書中において、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むことは、技術的にあり得ない構成であるため、「訂正前の請求項1においては「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、所定の質量範囲の「高密度ポリエチレンを含」むことが特定されていたものである」と言うことはできない旨主張し、また、訂正前の請求項1が技術的に正しい内容で特定できないことを前提として、技術的な内容を無視した文言通りの解釈に基づいて「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである」と言うことはできないため、訂正事項1について、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、所定の質量範囲の「高密度ポリエチレンを含」むことが特定されていたものを、「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、所定の質量範囲で「着色基材層に含有され」るものとするものであることが、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであると言うことはできない旨主張する。(意見書2頁最下行~4頁22行) カ 上記主張について検討する。特許法126条6項は、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなると、第三者にとって不測の不利益が生ずるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保するための規定であり、訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。 特許権者は、訂正前の請求項1が技術的に正しい内容で特定できないものであることから、技術的な内容を無視した文言通りの解釈に基づいて「実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである」と言うことはできず、訂正事項1に係る訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであると言うことはできない旨主張するが、上述のとおり、特許法126条6項は、第三者にとって不測の不利益が生ずることを防ぐ観点から、訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものであってはならないことを規定するものである。 そして、上記イ及びウに示したとおり、訂正事項1に係る訂正の前後において、訂正後発明は訂正前発明から意味内容が変更されているから、特許権者(出願人)による手続補正が適正でなく、訂正前の請求項1において「低密度ポリエチレン」と「高密度ポリエチレン」との関係について不明確な点があったからといって、そのことを理由に、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更することが許されるものではない。 以上のとおりであるから、意見書における特許権者の主張を考慮しても、訂正事項1に係る訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるとの結論は左右されない。 キ 小括 したがって、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであって、特許法126条6項の規定に適合するものではない。 4 訂正の適否についての判断のむすび 以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもなく、また、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合するものでもない。 よって、一群の請求項〔1-9〕についてする本件訂正は、認めることができない。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められないから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1~9に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~9に記載された以下のとおりのものである。 【請求項1】 着色基材層と、 前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、 前記着色基材層は、植物由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンと、を混合した樹脂組成物を用いて形成され、 前記透明樹脂層は、植物由来の高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて形成され、 前記着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.12g/cm3以下の範囲内であり、 前記透明樹脂層を形成する前記樹脂組成物には、核剤が添加され、 前記透明樹脂層を形成する前記樹脂組成物は、前記透明樹脂層の100質量%のうち60質量%以上で透明樹脂層に含有され、 前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、 前記透明樹脂層の密度をd1とし、前記着色基材層の密度をd2とした場合、d2>d1を満たす化粧シート。 【請求項2】 前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、植物由来の低密度ポリエチレンである請求項1に記載した化粧シート。 【請求項3】 前記着色基材層における前記高密度ポリエチレンと前記低密度ポリエチレンとの混合比は、95:5~70:30の範囲内である請求項1または請求項2に記載した化粧シート。 【請求項4】 前記透明樹脂層は、前記植物由来の高密度ポリエチレンと、植物由来の低密度ポリエチレンと、を混合した樹脂組成物を用いて形成されている請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した化粧シート。 【請求項5】 前記透明樹脂層における前記高密度ポリエチレンと前記低密度ポリエチレンとの混合比は、80:20~60:40の範囲内である請求項4に記載した化粧シート。 【請求項6】 前記核剤は、前記高密度ポリエチレンの質量を基準として500ppm以上2000ppm以下の範囲内で添加されている請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シート。 【請求項7】 前記核剤は、前記高密度ポリエチレンの質量を基準として1500ppm以上2000ppm以下の範囲内で添加されている請求項6に記載した化粧シート。 【請求項8】 前記着色基材層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した化粧シート。 【請求項9】 基材と、 前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。 第4 先の取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消理由の概要 当審において令和7年8月4日付けの取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 本件発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、特許法113条1号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1 明確性 (1)本件発明1の「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含み、」という記載は、主語が「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」であり、この「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレン」が、「前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」むという記載の文意が不明である。 よって、本件特許の請求項1の記載は、明確ではない。また、上記請求項1の記載を引用する請求項2~9の記載も、明確ではない。 したがって、本件発明1~9に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 新規事項 (1)令和4年8月2日提出の手続補正書による請求項1の補正 令和4年8月2日提出の手続補正書により、請求項1は「前記着色基材層を形成する前記低密度ポリエチレンは、前記着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含」む化粧シートという発明特定事項を含むものとなった。 そして、上記発明特定事項は、本件発明1~9においても維持されている。 (2)新規事項の追加の検討 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、着色基材層を形成する低密度ポリエチレンが、着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含むことについて記載されていない。具体的には、「低密度ポリエチレン」が「高密度ポリエチレン」を含むという関係、及び、「着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている」ものが「高密度ポリエチレン」であるということについて、いずれも記載されていない。 また、着色基材層を形成する低密度ポリエチレンが、着色基材層の100質量%のうち5質量%以上30質量%以下の範囲内で着色基材層に含有されている高密度ポリエチレンを含むことが当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。 3 令和7年10月3日付け意見書における特許権者の主張について (1)特許権者の主張の概要 特許権者は、令和7年8月4日付け取消理由通知書(決定の予告)に対し、本件訂正請求書の提出と同日の令和7年10月3日に提出した意見書において、新規事項の追加として指摘された記載を削除し、着色基材層の構成を明確とする訂正を行ったため、明確性及び新規事項の取消理由は全て解消された旨主張する。 (2)特許権者の主張の検討 上記第2において判断したとおり、本件訂正請求書による訂正は認められないから、明確性及び新規事項の取消理由はいずれも解消されていない。 よって、特許権者の主張を考慮しても、上記1及び2の判断は左右されない。 4 小括 したがって、本件発明1~9に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 また、令和4年8月2日提出の手続補正書により補正された請求項1~9が有し、かつ本件発明1~9が有する上記2(1)の発明特定事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではない。そして、この手続補正により追加された構成は願書に添付した特許請求の範囲においても維持されているから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。 第6 まとめ 以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたものであるから、特許法113条1号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700923

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