特許異議申立
2023-701241
包装材料用積層体および包装材料
- 審判番号
- 2023-701241
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-163979
- 登録番号
- 7282300
- 請求日
- 2023年11月27日
- 審決日
- 2024年10月03日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】後藤 麻衣子
- 【異議申立人】赤松 智信
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.55 -YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7282300号発明「包装材料用積層体および包装材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7282300号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7282300号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7282300号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成30年8月31日の出願であって、令和5年5月19日にその特許権の設定登録がされ、令和5年5月29日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年11月27日 :特許異議申立人後藤麻衣子(以下「申立人1」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て(以下「申立1」という。)
令和5年11月28日 :特許異議申立人赤松智信(以下「申立人2」という。)による本件特許に対する2件の特許異議の申立て(2件の申立のうち、特開2004-216565号公報を甲第1号証とするものを以下「申立2」といい、他方を「申立3」という。)
令和6年 4月15日付け:取消理由通知書
令和6年 6月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年 7月24日 :申立人2による2件の意見書の提出
令和6年 8月 2日 :申立人1による意見書の提出
第2 本件訂正請求
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7282300号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
本件訂正前の請求項1に記載された
「基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層と、を少なくとも備える包装材料用積層
体であって、
前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてなり、
前記基材および前記ガスバリア性積層体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを備え、
前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリオレフィンにより構成され、前記包装材料用積層体全体における前記ポリオレフィンの含有量が、80質量%以上であり、
前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さいことを特徴とする、包装材料用積層体。」を、
「基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層と、を少なくとも備える包装材料用積層
体であって、
前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてなり、
前記基材および前記ガスバリア性積層体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを備え、
前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリエチレンにより構成され、前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレンの含有量が、80質量%以上であり、
前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さいことを特徴とする、包装材料用積層体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正は、本件訂正前の請求項1の「前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層」を構成する「ポリオレフィン」を「ポリエチレン」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件訂正は、本件特許の明細書の【0031】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、本件訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~8を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~8の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層と、を少なくとも備える包装材料用積層
体であって、
前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてなり、
前記基材および前記ガスバリア性積層体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを備え、
前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリエチレンにより構成され、前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレンの含有量が、80質量%以上であり、
前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さいことを特徴とする、包装材料用積層体。
【請求項2】
前記基材と前記ガスバリア性積層体との間、および前記ガスバリア性積層体と前記ヒートシール層との間の少なくとも一方に、蒸着膜を備える、請求項1に記載の包装材料用積層体。
【請求項3】
前記基材と前記蒸着膜との間、および前記ガスバリア性積層体と前記蒸着膜との間に、接着層を備える、請求項2に記載の包装材料用積層体。
【請求項4】
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記接着層が、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物とを含む樹脂組成物の硬化物を含む、請求項3に記載の包装材料用積層体。
【請求項5】
前記ガスバリア性積層体が、前記ガスバリア性樹脂層と前記ポリオレフィン樹脂層との間に、接着性樹脂層を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材料用積層体。
【請求項6】
前記ガスバリア性積層体が、共押出製膜してなる延伸樹脂フィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装材料用積層体。
【請求項7】
前記基材と、前記接着層と、前記ガスバリア性樹脂層と、前記ポリオレフィン樹脂層と、
前記ヒートシール層と、をこの順に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装材料用積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の包装材料用積層体から構成される、包装材料。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、請求項1~8に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1~8に係る発明は、課題解決手段のうち、基材を構成する樹脂、ポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂及びヒートシール層を構成する樹脂を同一のポリオレフィンとする発明特定事項を有しておらず、当業者は本件課題を解決できることは認識できないから、請求項1~8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、下記甲1Aに記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(新規性、進歩性)
本件特許の請求項1、2、6~8に係る発明は、下記甲1Bに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、6~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件特許の請求項1~8に係る発明は、下記甲1Bに記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由4(進歩性)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、下記甲1Cに記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1A 特表2014-531341号公報(申立人1が提出した甲第1号証)
甲1B 特開2004-216565号公報(申立人2が申立2と共に提出した甲第1号証)
甲1C Gerald Rebitzer, Amcor、“Packaging Sustainability Facts vs. Fiction”、PEPP 2018 Conference Dusseldorf、2018年6月28日、1~20ページ(申立人2が申立3と共に提出した甲第1号証)
第5 取消理由通知についての当審の判断
1 取消理由1(サポート要件)について
本件特許の発明の詳細な説明の【0007】の記載によると、本件発明の解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「包装材料としての強度やバリア性を備えながらリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる包装材料用積層体を提供すること」である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】、【0027】、【0028】、【0031】、【0050】、【0059】、【0066】の記載を参照すると、「包装材料用積層体」を、基材及びガスバリア性積層体が延伸フィルムであり、基材を構成する樹脂、ポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂およびヒートシール層を構成する樹脂を同一のポリオレフィンとすることにより、本件課題が解決できることが理解できる。
本件訂正により、本件発明は、基材を構成する樹脂、ポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂及びヒートシール層を構成する樹脂を同一のポリオレフィンであるポリエチレンに限定されたことにより、当業者は本件課題を解決できることが認識できる。
よって、本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載したものである。
2 取消理由2(進歩性)について
(1)甲1Aに記載された発明
甲1A(【0090】、【0094】、【0103】、【0111】、【0112】)には、特に実施例8に着目すると、次の発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されている。
「ポリプロピレンのベース層と、ベース層の第1側に隣接する、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンの相溶化タイ層と、前記タイ層に隣接するEVOH層と、ベース層の第2側上の、90重量%のポリプロピレン及び10重量%のエチレンプロピレンプラストマーの混合物で作られた第2側のポリプロピレン層と、を含む、ポリマー層のキャスト共押出によって製造されたフィルムにおいて、フィルムの第2側のポリプロピレン層に隣接して、94重量%の中密度ポリエチレン及び6重量%のターポリマーキャリアにおけるアンチブロックマスターバッチの混合物で作られたシーリング層又はラミネーション層が存在し(【0090】)、
フィルムが、それが縦方向(MD)にその元の長さの6倍、横方向(TD)にその元の幅の7.8倍、同時延伸された配向フィルムにおいて、配向フィルムは、延伸の後、ベース層及び第2側のポリプロピレン層の厚さはともに略9.3μmであり、一方で、配向されたEVOH層の厚さは略0.6μmであり、タイ層の厚さは略1.3μmであり(【0094】)、
配向フィルムに、ライン速度:略300m/min、光学密度セットポイント:略2.0、アルミニウムワイヤ速度:略72cm/min、プラズマ出力(アルゴン):3kWの金属化条件で、EVOH層に金属化コーティングが提供されて、金属被覆及び配向フィルムとされ(【0103】)、
金属被覆及び配向フィルムが使用された、装飾層/板紙/接着層/金属被覆及び配向フィルム/ヒートシーリング層という構造のパッケージングラミネートであって(【0111】)、
装飾層そして接着層としてLDPEが使用され、追加の接着剤としてエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)が金属とLDPEとの間に使用され、ヒートシーリング層は、メタロセン触媒鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)であり、LDPE/板紙/LDPE/EMAA/金属被覆及び配向フィルム/LDPE/mLLDPEである、パッケージングラミネート(【0112】)。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1A発明を対比する。
甲1A発明の「板紙」は本件発明1の「基材」に相当し、以下同様に、「メタロセン触媒鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)であ」る「ヒートシーリング層」は「ポリエチレンにより構成され」た「ヒートシール層」に、「パッケージングラミネート」は「包装材料用積層体」に相当する。
甲1A発明の「無水マレイン酸グラフトポリプロピレンの相溶化タイ層」、「ポリプロピレン」の「ベース層」と「第2側のポリプロピレン層」を合わせたものと、本件発明1の「ポリエチレンにより構成され」た「ポリオレフィン樹脂層」は、ポリオレフィンにより構成されたポリオレフィン樹脂層の限りで一致する。
甲1Aの【0028】等の記載によると「EVOH」の層はガスバリア層であるから、甲1A発明の「EVOH層」は本件発明1の「ガスバリア性樹脂層」に相当し、甲1A発明の「配向フィルム」は本件発明1の「延伸樹脂フィルムであ」る「ガスバリア性積層体」に相当する。
甲1A発明の「板紙」と「金属被覆及び配向フィルム」の間の「接着層として」使用される「LDPE」、「追加の接着剤」として使用される「エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)」は本件発明1の「接着層」に相当する。
甲1A発明の「EVOH層の厚さは略0.6μm」で「ベース層及び第2側のポリプロピレン層の厚さはともに略9.3μmであり」、「タイ層の厚さは略1.3μmであ」ることは、本件発明1の「前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さいこと」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1A発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層と、を少なくとも備える包装材料用積層体であって、
前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてなり、
前記ガスバリア性積層体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを備え、
前記ポリオレフィン樹脂層が、ポリオレフィンにより構成され、
前記ヒートシール層が、ポリエチレンにより構成され、
前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さい、包装材料用積層体。」
[相違点1-1]
本件発明1は「基材」が「延伸樹脂フィルムであ」り、「ポリエチレンにより構成され」るのに対して、甲1A発明は「板紙」である点。
[相違点1-2]
ポリオレフィンにより構成されたポリオレフィン樹脂層に関して、本件発明1は「ポリエチレンにより構成され」た「ポリオレフィン樹脂層」であるのに対して、甲1A発明は「無水マレイン酸グラフトポリプロピレンの相溶化タイ層」、「ポリプロピレン」の「ベース層」と「第2側のポリプロピレン層」を合わせたものである点。
[相違点1-3]
本件発明1は「前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレンの含有量が、80質量%以上であ」るのに対して、甲1A発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
相違点1-1~相違点1-3について検討する。
甲1A発明の「ポリプロピレン」の「ベース層」である「ポリオレフィンコア層」に関して、甲1Aには、「ポリオレフィンコア層は、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンコポリマー、プロピレン-エチレン-ブチレンターポリマーを含む、他のアルファオレフィンとのプロピレンコポリマー、LLDPE、MDPE及びHDPEポリマーなどを含む、0.930より高い、好ましくは0.940より高い密度(圧縮されたサンプルを使用したISO1183Dによって決定される)を有するポリエチレンホモポリマー及びコポリマー、並びに2以上の前記ポリオレフィンの混合物からなる群から選択される二軸配向ポリオレフィンを含む。」(【0031】)と記載されており、甲1A発明の「無水マレイン酸グラフトポリプロピレンの相溶化タイ層」である「変性ポリオレフィンの二軸配向タイ層」に関して、甲1Aには、「フィルムはさらに、ポリオレフィンコア層とEVOHバリア表面層との間に、・・・変性ポリオレフィンの二軸配向タイ層(tielayer)を含む。タイ層は故に、ポリオレフィンコア層とバリア表面層とを互いに結合する。適切なこのような変性ポリオレフィンの良好に機能する例は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(MAH-PP)である。・・・前記結合層は代わりに、グラフト重合又は共重合によって変性されたポリエチレンベースのポリマーから構成され得る。」(【0036】)と記載されている。
すなわち、甲1Aにおける「ポリオレフィンコア層」、「変性ポリオレフィンの二軸配向タイ層」として選択される樹脂はそれぞれ複数挙げられている。
しかしながら、甲1A発明の「パッケージングラミネート」は、基材として板紙が用いられ、樹脂層には、ポリエチレンとポリプロピレンの両方が用いられていることに加え、数多くの層が積層されて構成されているところ、このような複雑な層構成としているのは、使用目的に合った物性を得るために、必要な物性を有する複数の層を組み合わせたためと解される。上述のように甲1Aの段落【0031】、【0036】には、それらの層の材質として種々の選択肢が記載され、また、列挙された選択肢の一つとしてポリエチレン(あるいはポリエチレンベース)とすることが示されてはいるものの、使用目的に合った物性を得るために必要な物性を有する複数の層を組み合わせたものと解される甲1A発明の「板紙」、「ポリプロピレン」の「ベース層」及び「第2のポリプロピレン層」、「無水マレイン酸グラフトポリプロピレンの相溶化タイ層」等を、積層体全体のポリエチレンの量を80質量%以上とするまでポリエチレンに置き換えることは示されていないし、甲1A発明の「パッケージングラミネート」の物性を損なわずに、そのような置き換えを行うことを示す証拠も挙げられていない。
そうすると、甲1A発明において、相違点1-1~1-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得たこととはいえない。
ウ 小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、甲1A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由3(新規性、進歩性)について
(1)甲1Bに記載された発明
甲1B(【請求項1】、【請求項7】~【請求項10】、【0022】~【0024】)には、特に実施例1に着目し、特許請求の範囲の記載に沿って整理すると、次の発明(以下「甲1B発明」という。)が記載されている。
「ポリプロピレンホモポリマー90重量%とナイロン6/66共重合体10重量%からなるポリオレフィンを主成分とした層Aに、エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーを主成分とした層Bが直接積層されたポリオレフィン複合フィルムであって(【請求項1】、【0022】)、
層A表面に、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ポリマーからなるヒートシール可能な樹脂層Cが複合されており(【請求項7】、【0022】)、
層C、層A、層Bは、それぞれの原料を押出機から流動してきた層状の融体を積層したものであり(【0022】)、
得られた3層シートは二軸方向に延伸・熱処理され(【請求項8】、【0023】)、
かくして得られる3層フィルムの厚さは30μm(層C/層A/層B=2/27/1)であり(【0024】)、
層B表面に真空蒸着で厚さ50nmの金属アルミニウム層Dが積層され(【請求項9】、【0024】)、
層D表面に、低密度ポリエチレン樹脂からなる厚さ15μmの層Eを介して、あらかじめ印刷処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる厚さ18μmのプリント層Fの印刷面を溶融押出ラミネートした(【請求項10】、【0024】)、
包装材料であるポリオレフィン複合フィルム。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1B発明を対比する。
甲1B発明の「ポリプロピレンホモポリマー90重量%とナイロン6/66共重合体10重量%からなるポリオレフィンを主成分とした層A」と、本件発明1の「ポリエチレンにより構成され」た「ポリオレフィン樹脂層」は、ポリオレフィンにより構成されたポリオレフィン樹脂層の限りで一致する。
甲1B発明の「エチレン・プロピレン・ブテン共重合ポリマーからなるヒートシール可能な樹脂層C」と、本件発明1の「ポリエチレンにより構成され」た「ヒートシール層」は、ポリオレフィンにより構成されたヒートシール層の限りで一致する。
甲1B発明の「あらかじめ印刷処理された二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる」「プリント層F」と、本件発明1の「延伸樹脂フィルムであ」り、「ポリエチレンにより構成され」た「基材」は、延伸樹脂フィルムであり、ポリオレフィンにより構成された基材の限りで一致する。
「包装材料である」「ポリオレフィン複合フィルム」は「包装材料用積層体」に相当する。
甲1Bの【0002】、【0018】の記載によると、甲1B発明の「エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーを主成分とした層B」は、ガスバリア性を有する層であるから、本件発明1の「ガスバリア性樹脂層」に相当する。
甲1B発明の「層Aに、エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーを主成分とした層Bが直接積層された」ものは、「樹脂層C」が複合され、「得られた3層シートは二軸方向に延伸・熱処理され」るから、本件発明1の「延伸樹脂フィルムであ」る「ガスバリア性積層体」に相当する。
甲1B発明の「溶融押出ラミネート」に用いられる「低密度ポリエチレン樹脂からなる」「層E」は、本件発明1の「接着層」に相当する。
甲1B発明において「層A」の厚さが「27μm」で「層B」の厚さが「1μm」であることは、本件発明1において「前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さいこと」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層と、を少なくとも備える包装材料用積層体であって、
前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてなり、
前記基材および前記ガスバリア性積層体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを備え、
前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリオレフィンにより構成され、
前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さい、包装材料用積層体。」
[相違点2-1]
基材、ポリオレフィン樹脂層およびヒートシール層について、本件発明1は「前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリエチレンにより構成され」るのに対して、甲1B発明は、「ポリオレフィンを主成分とした層A」、「樹脂層C」、「プリント層F」が、それぞれポリエチレンにより構成されていない点。
[相違点2-2]
本件発明1は「前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレンの含有量が、80質量%以上であ」るのに対して、甲1B発明はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
相違点2-1及び2-2について検討する。
甲1B発明の「ポリオレフィンを主成分とした層A」における「ポリオレフィン」に関して、甲1Bには、「本発明で言うポリオレフィンとは、炭素と水素とから原則構成されいるポリマーであり、代表的なポリマーとしては、ポリエチレンPE、ポリプロピレンPP、エチレンプロピレン共重合体EPC、ポリメチルペンテンPMP、ポリブテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー(エチレンアクリル酸系ポリマー塩や、スチレンスルフォン酸塩など)樹脂、ポリスチレンPSt、ポリシクロオレフィンCOP、およびそれらの共重合体や、マレイン酸などによる変性体などが挙げられるが、本発明の場合、耐熱性、取り扱い性、結晶性、価格などから特にポリプロピレンPPが好ましい。」(【0009】;下線部は当審で付与。)と記載されており、甲1B発明の「樹脂層C」に関して、甲1Bには、「熱接着性層Cとなるポリオレフィンコポリマー、例えばエチレン(0~15モル%)・プロピレン(60~99モル%)・ブテン(0~15モル%)ターポリマー(3元共重合体)や2元共重合体などが代表的なポリマーであるが、」(【0017】)と記載されており、甲1B発明の「プリント層F」に関して、甲1Bには、「プリント層Fには、OPPフィルムやPETフィルムが好ましく用いられ」(【0021】)と記載されている。
すなわち、甲1Bにおける「樹脂層C」、「プリント層F」に用いられる樹脂としてポリエチレンを用いることは記載も示唆もされていないし、「樹脂層A」についても積極的にポリエチレンを用いるものではない。そうすると、甲1Bは、甲1B発明における「ポリオレフィンを主成分とした層A」、「樹脂層C」、「プリント層F」を、積層体全体のポリエチレンの量を80質量%以上とするまでポリエチレンに置き換えることを教示するものではない。
また、甲1B発明は、「ガスバリア性に優れ、クッション性のある、遮光性のある白色フィルム」(【0001】)に関するものであるところ、このような性能を備える甲1B発明の「ポリオレフィン複合フィルム」において、「ポリオレフィンを主成分とした層A」、「樹脂層C」、「プリント層F」の各層を、積層体全体のポリエチレンの量を80質量%以上とするまでポリエチレンに置き換えることを示す証拠も挙げられていない。
したがって、甲1B発明において、相違点2-1、2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得たこととはいえない。
ウ 意見書における申立人2の主張について
申立人2は、令和6年7月24日に提出した意見書において、参考文献1(実願昭54-110159号(実開昭56-27928号)のマイクロフィルム)には、包装材料用の積層体全体におけるポリエチレンの含有量に関し、積層体を構成する各層における金属バリア層を除き樹脂材料はすべてポリエチレンであるものが記載されている旨を述べている。
しかしながら、甲1B発明は、「ガスバリア性に優れ、クッション性のある、遮光性のある白色フィルム」(【0001】)に関するものであって、「ポリオレフィンを主成分とした層A」は、「エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーを主成分とした層B」を積層するための層であり、また、「ナイロン6/66」を含有させることで「ポリオレフィンの海マトリックス中にポリアミドが島状に微分散された状態にすることにより、延伸でポリアミド粒子周りに小さなマイクロクラックが発生でき、その結果、クッション性に富んだ、白色性に優れた」(【0016】)ものとしているところ、参考文献1には、「エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーを主成分とした層B」を積層する層については記載されていないし、クッション性があり、遮光性のある白色フィルムとすることを前提として積層体全体のポリエチレンの量を80質量%以上とするまでポリエチレンにすることを示唆するものでもない。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。
エ 小括
よって、本件発明1は、甲1B発明ではなく、また、甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、本件発明2、6~8は、甲1B発明ではなく、また、本件発明2~8は、甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 取消理由4(進歩性)について
(1)甲1Cに記載された事項及び発明
ア 甲1Cの記載
(ア)スライド11ページ
「
[図:0001418222000001.jpg]
」
(イ)スライド15ページ
「
[図:0001418222000002.jpg]
」
(ウ)スライド18ページ
「
[図:0001418222000003.jpg]
」
イ 甲1Cの記載から認定される事項
上記ア(ア)の記載において、中央と右側の「フレキシブル包装」はその下側に記載された積層体により作成されたものといえる。そして、「PP」がポリプロピレンを意味することが明らかであること、及び基材、バリア層及びヒートシール層を有する包装資材は、当業者の技術常識であることを踏まえると、右側の「リサイクル可能なフレキシブル包装」の積層体の上側の「PP」はポリプロピレンである基材であり、「Amcorのバリアコーティングを備えるPP」はAmorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層であり、下側の「PP」はポリプロピレンであるヒートシール層である。
ウ 甲1Cに記載された発明
上記ア、イの事項を参照し、特に、上記ア(ア)の右側の「リサイクル可能なフレキシブル包装」の積層体に着目すると、甲1Cには次の発明(以下「甲1C発明」という。)が記載されている。
「ポリプロピレンである基材、Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層、ポリプロピレンであるヒートシール層からなるリサイクル可能なフレキシブル包装の積層体。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1C発明を対比する。
甲1C発明の「ポリプロピレンである基材」と、本件発明1の「ポリエチレンにより構成され」た「基材」は、ポリオレフィンにより構成された基材の限りで一致する。
甲1C発明の「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」における「ポリプロピレン」と、本件発明1の「ポリエチレンにより構成され」た「ポリオレフィン樹脂層」は、ポリオレフィンにより構成されたポリオレフィン樹脂層の限りで一致する。
甲1C発明の「Amcorのバリアコーティング」と本件発明1の「ガスバリア性樹脂層」とは、ガスバリア性層の限りで一致し、甲1C発明の「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」と本件発明1の「ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層とを備え」た「ガスバリア性積層体」は、ガスバリア性層と、ポリオレフィン樹脂層とを備えたガスバリア性積層体の限りで一致する。
甲1C発明の「ポリプロピレンであるヒートシール層」と、本件発明1の「ポリエチレンにより構成され」た「ヒートシール層」は、ポリオレフィンにより構成されたヒートシール層の限りで一致する。
甲1C発明の「リサイクル可能なフレキシブル包装の積層体」は、本件発明1の「包装材料用積層体」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1C発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3]
「基材と、ガスバリア性積層体と、ヒートシール層と、を少なくとも備える包装材料用積層体であって、
前記ガスバリア性積層体が、ガスバリア性層と、ポリオレフィン樹脂層とを備え、
前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリオレフィンにより構成された、包装材料用積層体。」
[相違点3-1]
本件発明1は「前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてな」るのに対して、甲1C発明は「ポリプロピレンである基材」と「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」との間に接着層が設けられているか不明である点。
[相違点3-2]
本件発明1は「前記基材および前記ガスバリア性積層体が、延伸樹脂フィルムであ」るのに対して、甲1C発明は「ポリプロピレンである基材」と「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」が延伸樹脂フィルムであるか不明である点。
[相違点3-3]
ガスバリア性層に関して、本件発明1は「ガスバリア性樹脂層」であるのに対して、甲1C発明は「Amcorのバリアコーティング」であって、樹脂層であるか不明である点。
[相違点3-4]
基材、ポリオレフィン樹脂層およびヒートシール層が、それぞれポリオレフィンにより構成されることに関して、本件発明1は「前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリエチレンにより構成され」るのに対して、甲1B発明は、「基材」、「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」における「ポリプロピレン」、「ポリプロピレンであるヒートシール層」が、それぞれポリエチレンにより構成されていない点。
[相違点3-5]
本件発明1は「前記包装材料用積層体全体における前記ポリオレフィンの含有量が、80質量%以上であ」るのに対して、甲1C発明はそのようなものであるか不明である点。
[相違点3-6]
本件発明1は「前記ガスバリア性樹脂層の厚みが、前記ポリオレフィン樹脂層の厚みよりも小さい」のに対して、甲1C発明は「Amcorのバリアコーティング」の厚みが、「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレン」における「ポリプロピレン」の厚みよりも小さいか不明である点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3-4について検討する。
甲1Cのスライド18ページには、「リサイクルのため好ましい」ものとして、「モノポリエチレン又はモノポリプロピレン」と記載されている。
しかしながら、甲1Cの当該記載は、漠然とモノポリエチレン又はモノポリプロピレンがリサイクルのために好ましいことを示すにすぎず、甲1C発明の層構成の「フレキシブル包装の積層体」は既に各層がポリプロピレンであるところ、「ポリプロピレンである基材」、「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」、「ポリプロピレンであるヒートシール層」の各層のポリプロピレンをポリエチレンに替えることについては記載も示唆もされていない。
また、「フレキシブル包装の積層体」において、「ポリプロピレンである基材」、「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」、「ポリプロピレンであるヒートシール層」の各層をポリエチレンにより構成したものを示す証拠も挙げられていない。
したがって、甲1C発明において、「基材」、「Amcorのバリアコーティングを備えるポリプロピレンであるバリア層」における「ポリプロピレン」、「ポリプロピレンであるヒートシール層」の各層をポリエチレンにより構成することは、当業者が適宜なし得たこととはいえない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、甲1C発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、甲1C発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
(1)明確性(申立3)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1における「前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてなり」の記載について、「接着層」が「基材」や「ガスバリア性積層体」に接しているのか否かが明らかでないため、請求項1~8に係る発明が不明確である。
(2)新規事項(申立2)
令和4年12月27日に提出された手続補正書でした補正は、次の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1~8に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
令和4年12月27日に提出された手続補正書により、請求項1の「前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、同一のポリオレフィンにより構成され」の記載が、「前記基材、前記ポリオレフィン樹脂層および前記ヒートシール層が、それぞれポリオレフィンにより構成され」に補正されたが、当該事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。
2 上記1(1)についての当審の判断
請求項1における「前記基材と前記ガスバリア性積層体との間に、接着層が設けられてなり」の記載は、「基材」、「ガスバリア性積層体」「接着層」の位置関係を特定するものであって、「接着層」が「基材」や「ガスバリア性積層体」に接していることまでを特定するものではないことは明らかである。
よって、本件発明1~8は明確である。
3 上記1(2)についての当審の判断
本件訂正により、本件発明は、基材を構成する樹脂、ポリオレフィン樹脂層を構成する樹脂及びヒートシール層を構成する樹脂は同一のポリオレフィンであるポリエチレンに限定されたため、申立人2の当該主張は当たらないものとなった。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701241