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特許異議申立

2023-700769

含油スラッジの処理方法、及び廃水の処理方法

審判番号
2023-700769
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-222115
登録番号
7212506
請求日
2023年07月25日
審決日
2024年01月11日
公報発行日
2024年02月22日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日鉄環境株式会社
  • 【権利者代理人】近藤 利英子
  • 【権利者代理人】菅野 重慶
  • 【権利者代理人】竹山 圭太
  • 【権利者代理人】岡田 薫
  • 【異議申立人】松山 徳子
審判長/審判官
  • 審判長 日比野 隆治
  • 審判官 原 賢一
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.113-Y (C02F) / P1651.121-Y (C02F) / P1651.536-Y (C02F) / P1651.537-Y (C02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7212506号発明「含油スラッジの処理方法、及び廃水の処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7212506号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7212506号の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成30年11月28日(優先権主張 平成29年12月7日)を出願日とする出願であり、令和5年1月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月25日に、その請求項1~13に係る特許を対象として特許異議申立人松山徳子(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、同年9月26日付けで特許権者に対して審尋が通知され、その指定期間内である同年10月23日に特許権者より回答書の提出がなされたものである。 第2 本件発明 請求項1~13に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおり特定されるものである。 「【請求項1】 鉄鋼製造工程における、連続鋳造工程、熱間圧延工程、又は冷間圧延工程で生じる廃水から固液分離により回収される、水分;鉄分を含む懸濁物質;及び油分を含有するスラッジに、 (メタ)アクリル酸及びその塩、並びに(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加し、混合する処理工程を含み、 前記スラッジ中の前記油分の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であり、 前記処理工程は、前記スラッジへの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉することで前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程である、含油スラッジの処理方法。 【請求項2】 前記水溶性重合体は、粉末状の形態で、前記スラッジに添加される請求項1に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項3】 前記水溶性重合体は、エマルジョン状の形態で、前記スラッジに添加される請求項1に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項4】 前記水溶性重合体は、前記水溶性重合体の含有量が0.1~2質量%である希薄液の形態で、前記スラッジに添加される請求項1に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項5】 前記希薄液は、前記水溶性重合体を溶質として含有する水溶液、又は前記水溶性重合体を分散媒として含有する水中油滴型エマルジョンである請求項4に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項6】 前記水溶性重合体として、前記水溶性重合体と、その分散媒である硫酸塩水溶液とを含有する水性分散液を用いる請求項1に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項7】 前記スラッジ100質量部当たり、前記水溶性重合体を0.001~1質量部添加する請求項1~6のいずれか1項に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項8】 前記水溶性重合体は、(メタ)アクリル酸及びその塩の少なくともいずれかに由来する構造単位と、(メタ)アクリルアミドに由来する構造単位とを含む、(メタ)アクリル酸(塩)-(メタ)アクリルアミド系共重合体である請求項1~7のいずれか1項に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項9】 前記水溶性重合体の重量平均分子量は、500万~3000万である請求項1~8のいずれか1項に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項10】 前記処理工程において、前記スラッジが貯留されている槽に直接、前記水溶性重合体を添加し、その槽において、前記スラッジと前記水溶性重合体とをショベル又はバケットで混合する請求項1~9のいずれか1項に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項11】 前記スラッジ中の前記水分が、前記鉄鋼製造工程における製造過程にある鋼材又はその製造に使用される設備の冷却又は洗浄に使用された水に由来するものである請求項1~10のいずれか1項に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項12】 前記スラッジ中の前記懸濁物質の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、30~90質量%である請求項1~11のいずれか1項に記載の含油スラッジの処理方法。 【請求項13】 鉄鋼製造工程における、連続鋳造工程、熱間圧延工程、又は冷間圧延工程で生じる廃水を固液分離して、水分;鉄分を含む懸濁物質;及び油分を含有するスラッジを回収する工程と、 回収された前記スラッジに、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加し、混合する処理工程を含み、 前記スラッジ中の前記油分の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であり、 前記処理工程は、前記スラッジへの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉することで前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程である、廃水の処理方法。」 第3 異議申立人による特許異議の申立理由の概要 1 特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由1」とする。) 本件発明1~13は、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、本件発明1~13は、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 甲第1号証:特開平7-256298号公報 甲第2号証:特開2002-136998号公報 甲第3号証:特開昭51-107654号公報 甲第4号証:特開2015-44152号公報 甲第5号証:特開2012-214292号公報 甲第6号証:特開2008-6382号公報 甲第7号証:特開2005-125215号公報 2 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由2」とする。) 本件特許は、請求項1~13の記載が後記第4の2(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)(以下、「申立理由3」とする。) 本件特許は、請求項1~13の記載が後記第4の3(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)(以下、「申立理由4」とする。) 本件特許は、請求項1~13に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載が後記第4の4(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第4 当審の判断 1 申立理由1について (1)甲1~甲7に記載された事項 ア 甲1に記載された事項 (ア)「【請求項1】 汚泥に第1の凝集剤を添加して攪拌し、次いで、第2の凝集剤を添加して攪拌した後、又は、第2の凝集剤と共に、濾過部を有した造粒濃縮槽にこの汚泥を導入し、該濾過部から濾液を取り出し、この造粒濃縮槽内で汚泥を濃縮するとともに造粒し、次いでこの造粒物を含む液を脱水機に導入して脱水する方法において、 前記第2の凝集剤と同一の凝集剤を前記造粒濃縮槽又は造粒濃縮槽から流出する前記造粒物を含む液に注入することを特徴とする汚泥の造粒濃縮による脱水方法。」 (イ)「【0011】なお、従来、上記問題を軽減する改良方法として、有機性汚泥に第1のカチオンポリマーを添加、混合し、生成したフロック又はペレットを部分的に脱水し、得られた脱水生成物に第1のカチオンポリマーよりもカチオン強度の高い第2のカチオンポリマーを添加・混合し機械脱水することが知られている(特公平1-17760号公報)。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記方法においては、異なるカチオンポリマーを添加するため、ポリマー注入設備が複数必要となり、設備費がかさむとともに、ポリマー添加量も多く、処理コストも高くなるという問題がある。 【0013】本発明は上記従来の問題点を解決し、汚泥に第1の凝集剤を添加して攪拌し、次いで、第2の凝集剤を添加して攪拌した後、又は、第2の凝集剤と共に、汚泥を濾過部を有する造粒濃縮槽に導入し、該濾過部から濾液を取り出すことによって汚泥を濃縮するとともに造粒し、この造粒物を脱水機で脱水する方法において、凝集剤添加量の低減を図ると共に、脱水機の安定運転を可能とする汚泥の造粒濃縮による脱水方法を提供することを目的とする。」 (ウ)「【0020】 【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。 【0021】図1は本発明の汚泥の造粒濃縮による脱水方法の一実施例方法を示すフローチャートである。なお、図1において、9は攪拌機9aを備えるポリマー反応槽、15aはポンプ、10A,10B,10C,15,15A,15Bは配管、V1,V2,V3,V4,V5はバルブであり、その他図2に示す部材と同一機能を奏する部材には同一符号が付してある。 【0022】図示の装置により有機系汚泥の処理を行なう場合には、バルブV1とバルブV3,V4又はV5を開とし、ポリマー溶解槽8のポリマーを配管15,15Aを経てポリマー反応槽9に添加すると共に、一部を配管10,10A,10B又は10Cを経て造粒濃縮槽7の高さ方向の中間部、底部又は配管12に分割注入する。 【0023】即ち、本実施例において、汚泥は原汚泥貯留槽1に投入され、貯留される。この貯留槽1内の汚泥は、ポンプ2a及び配管2を経て助剤反応槽3の底部に導入され、攪拌される。この助剤反応槽3へは助剤希釈タンク4内の無機凝集剤が助剤注入ポンプ5a及び配管5を介して注入されており、汚泥はこの無機凝集剤と十分に混合される。この無機凝集剤の添加により、汚泥の荷電中和とフロック核の増強が行なわれる。 【0024】無機凝集剤が混和された汚泥は、次いで配管6Aを経てポリマー反応槽9に導入され、配管15,15Aから注入されるポリマーと共に十分に混合され、フロックのより一層の増強がなされる。ポリマー反応槽9からの流出汚泥は配管6Bを経て造粒濃縮槽7に導入され、攪拌機7aの回転により液が旋回されることにより汚泥が造粒されて造粒物(ペレット)となり、造粒濃縮槽7内でペレット化しなかった液体は、濾過部7bを通過し、分離液として配管11を経て初沈槽(図示せず)へ送られ、一方、造粒物は、少量の液と共に汚泥引き抜きポンプ12a及び配管(移送管)12を経てベルトプレス13等の機械脱水機へ送られる。 【0025】本実施例においては、この造粒濃縮又は造粒物の移送に当り、造粒濃縮槽7の高さ方向の中間部、底部又は移送用配管12にポリマー溶解槽8内のポリマーが配管10,10A,配管10,10B又は配管10,10Cを経て分割注入される。 ・・・ 【0028】また、造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液を脱水機に移送する配管に分注を行なう場合には次のような効果が奏される。 [1](当審注:原文は丸数字、以下、甲1では、丸数字は、[ ]による数字として表す。) 脱水機の重力濾過性が大幅に改善され、運転が容易となる。 [2] 造粒濃縮槽運転状態との連動性を断ち、造粒濃縮槽の運転状態が悪い場合でも、常に脱水機の安定運転が可能であり、即効性に優れる。 [3] ポリマー添加量の低減が可能で、従来法に比べて5~30%の低減が図れる。 [4] 脱水機運転状態の改善により、SSリークが低下し、固形分の回収率が向上する。 ・・・ 【0041】なお、図1に示す装置は、本発明の実施に好適な装置の一実施例であって、本発明は何ら図示のものに限定されるものではない。例えば、ポリマー反応槽は必ずしも必要とされず、助剤反応槽3から造粒濃縮槽7への供給管に直接ポリマーを注入しても良い。また、第2の凝集剤の造粒濃縮槽7への分注箇所も、造粒濃縮槽の底部近傍とすることもできる。機械脱水機としては、図示のベルトプレスの他、遠心脱水機、真空脱水機、スクリュープレス又はフィルタプレス等の従来より使用されている脱水機をいずれも使用可能である。 【0042】以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。 【0043】なお、使用した高分子凝集剤は表2,3に示す通りである。 【0044】 【表2】 [図:0001406713000001.jpg] 【0045】 【表3】 [図:0001406713000002.jpg] ・・・ 【0046】実施例1,比較例1-1,1-2 図1において、V1,V3を開、V2,V4,V5を閉として行なった。食品工場排水の活性汚泥処理における余剰汚泥(VSS85.9%)に塩化第二鉄溶液をFeCl3として対SS2.3%添加して攪拌した後、表2に記載の記号AC-1の両性有機高分子凝集剤を対SS0.9%添加して攪拌し、造粒濃縮槽に導入し、更に造粒濃縮槽の中間部に前記AC-1を対SS0.2%添加し、濾過部から濾液を取り出すことによって汚泥を造粒濃縮し、ベルトプレス型脱水機(機種:栗田工業(株)製、「ハイドプレスPA750」)で、濾布面積負荷90kg-DS/m・hr濾布走行速度0.8m/minの条件にて脱水した。脱水ケーキの含水率は82.2%であった(実施例1)。 ・・・ 【0050】実施例4,比較例4 図1において、V1,V5を開、V2,V3,V4を閉として行なった。化学工場の総合排水の余剰汚泥と凝集沈殿汚泥との混合汚泥(VSS44.2%)にC-1のカチオン性有機高分子凝集剤を対SS0.24%添加して攪拌した後、A-1のアニオン性有機高分子凝集剤を対SS0.16%添加して攪拌し、次いで、造粒濃縮槽に導入し、更に造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液を脱水機へ移送する配管中に前記A-1を対SS0.05%添加し、実施例1と同様にベルトプレス型脱水機で脱水した。結果を表4に示した(実施例4)。比較のため、分割注入を行なわない場合の結果も表4に記載した(比較例4)。 ・・・ 【0052】実施例6,比較例6 圧延工場排水の酸化鉄汚泥(VSS8.8%)を実施例4、比較例4と同様に処理した。ただし、用いた凝集剤、その添加量は表4の通りとした。結果を表4に示す。 【0053】表4より、本発明の方法によれば、少ないポリマー添加量にて含水率の低い脱水ケーキを得ることができることが明らかである。 【0054】 【表4】 [図:0001406713000003.jpg] 」 (エ)「【図1】 [図:0001406713000004.jpg] 」 イ 甲2に記載された事項 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、製鉄業の還元、精錬、圧延加工、酸洗工程などから発生する酸化鉄を含むスラリーを脱水する方法に関するものである。特に、粒径の小さい粉体で構成されるスラリーの脱水を容易にする技術に関する。」 (イ)「【0005】これらの鉄スラリー中には、粉体の粒径が特に小さいもの(つまり、粒径が40ミクロン以下のもの)がある。これらは、特に、脱水後も汚泥状になりやすく、一般的に脱水が困難である。この種ものには、高炉ガスダストの湿式集塵分ダスト(高炉二次灰)、転炉ガスダストの内の微粒分ダスト(転炉微粒ダスト)、鋼板の酸洗工程の鉄イオンを含んだ廃液の中和沈殿物(酸洗中和スラジ)、メッキ廃液の沈殿物(メッキスラジ)、熱間圧延のスケールの貯留ピットの沈殿物(圧延スラジ)、その他がある。これらは平均粒径が1.5~40ミクロンのものである。 【0006】これらの鉄スラリーの脱水処理には、スラリーの粉体濃度や粉体粒径等の物理的な条件に合わせた脱水機の機種を選定して処理を行っている。例えば、高炉二次灰や転炉微粒ダストを湿式で集塵したものをシックナーで凝集させたスラリーの脱水には、プレス式の脱水機を用いている。これらの場合では、水分が70~80%のスラリーを含有水分が25~30%まで脱水している。また、酸洗中和スラジの脱水には、デカンタと呼ばれる横置き型の遠心脱水装置を用いることが多い。この脱水処理で、水分が約90%のスラリーを含有水分が約50%の状態まで脱水している。このように、従来技術では、鉄スラリーを脱水するために、プレス式の脱水機、横置き型の遠心脱水装置、真空脱水機などを用いている。 【0007】これらの鉄スラジは、脱水後も水分が25~50%あるため、その後の処理に手間がかかることから、脱水後に他の乾燥ダストを混合して、産業廃棄物処分場で最終処分することが多い。ただし、一部のものは更に乾燥した後に、還元工程にリサイクルされることもある。」 (ウ)「【0049】鉄鋼業で発生する油を含んだ鉄スラリーを脱水する際にも、図2に記載された様な本発明の圧搾ロールで搾る脱水方式は有効である。しかし、時間とともに、濾布8が油で汚れることから、濾布を界面活性剤で洗浄することが有効である。本発明では、圧搾脱水を完了した濾布を第一段の洗浄で濾布の油を界面活性剤で縣濁した後に、第二段の洗浄で洗い流すことにより、総質量の1%程度までの油が混在した鉄スラリーも長期間安定して脱水できる。対象となる鉄スラリーは、高炉二次灰、転炉微粒ダスト、酸洗中和スラジ、メッキスラジ、圧延スラジ、および、その他の粉体の鉄スラリーである。」 (エ)「【0055】油を1%含む、平均粒径が26ミクロンの鋼材圧延工程で発生したスラジを処理した例を実施例5に示す。脱水機4での洗浄ノズル13から界面活性剤を含んだ水を吹き付けて、粉体を落とすとともに、油分を乳化して落として脱水処理を行った。この結果、脱水後の水分は18%と低く、また、1ヶ月間の連続脱水でも、濾布が油で目詰まりすることはなかった。」 ウ 甲3に記載された事項 (ア)「製鉄所においては、各工場で使用した排水を戻水場(浄水場)で浮遊物質、廃油等の汚濁物質を除去した後、再び工場に送水して使用している。 戻水場で汚濁物質を除去処理する場合、機械油、グリス、圧延油等の廃油が付着した酸化鉄を主成分とするスラッジ(以下酸化鉄系含油戻水スラッジと称する)(当審注:原文で「ッ」は大文字で記載されているが、通常の表現に合わせ以下、小文字で記載する。)が回収される。このスラッジには、スラッジ固体分に対して廃油が5~30%、鉄分が30~60%程度含まれているので回収したスラッジは製鉄原料として十分使用する事ができる。」(1頁左下欄16行~右下欄5行) (イ)「そこで、本発明は製鉄所の各工場から発生する含油戻水スラッジのスラリーに親油性物質と動植物油及び又はアルカリ塩を添加して、脱水処理する際の脱水率を大幅に向上させる方法である。 次に、本発明の特長について詳述する。 含油戻水スラッジを脱水する場合、脱水後のケーキの含水率が高い原因となるのは、スラッジの粒度が非常に細かく、また廃油が約5~30%と大量に含んでいるためである。 そこで、含油戻水スラッジの脱水性を向上させる方法として、スラッジの粒度を大きくし、また廃油が脱水する際ろ(当審注:原文は、さんずいに戸)布などに滲み出ないように組成的に防止しなければならない。」(2頁左上欄14行~右上欄6行) エ 甲4に記載された事項 (ア)「【請求項1】 汚泥に脱水処理を施して脱水汚泥(脱水ケーキ)を得る汚泥の脱水方法であって、 前記汚泥に脱水処理を施すに際し、 高分子凝集剤として、下記一般式1,2又は3で表わされる構造単位を繰り返し単位として合計で10~100モル%有するとともに、2,000,000以上の分子量を有するカチオン性又は両性高分子凝集剤を、前記汚泥中に、有効成分として、前記汚泥の固形分に対して、0.1~3.0質量%の添加割合で添加し、かつ シクロデキストリンを、前記汚泥中に、0.25~75mg/Lの添加濃度で添加して、含水率の低減した脱水汚泥(脱水ケーキ)を得ることを特徴とする汚泥の脱水方法。 【化1】 [図:0001406713000005.jpg] (上記式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表わし、R2は炭素数1~5のアルキレン基を表わし、R3、R4、R5はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基、ベンジル基及び水素原子からなる群から選ばれる官能基を表わす。AはO又はNHを表わし、Z-は塩形成性アニオンを表わす。) 【化2】 [図:0001406713000006.jpg] 【化3】 [図:0001406713000007.jpg] (上記式(2)及び(3)中、R6及びR7は各々独立に水素原子又はメチル基を表わし、X-は塩形成性アニオンを表わす。)」 (イ)「【0056】 (実施例1) 千葉県K処理場の生汚泥(汚泥固形物濃度=11,000mg/L)と余剰汚泥(汚泥固形物濃度=11,000mg/L)を固形物量ベースで1:1となるように混合したもの(生/余剰混合汚泥)を供試汚泥とした。供試汚泥に、表2に示すように、高分子凝集剤として、DAM10%を、その有効成分として、供試汚泥固形分に対して、0.6質量%の添加割合で、添加した後、シクロデキストリンとして、β-シクロデキストリン(和光純薬工業社製)を、供試汚泥中に、6.6mg/Lの添加濃度で、添加して、撹拌した。得られた凝集フロックを、60メッシュの篩を用いてスクリーン濾過したのち、ナイロン60メッシュのろ布上においた。これを、取り外し可能な金網部分を持つ遠沈管の金網上に置き、3,000rpm、10分間の遠心を行うことで、脱水ケーキを得た。得られた脱水ケーキの重量を測定し、その後、110℃で12時間以上乾燥させ、乾燥脱水ケーキの重量を測定し、乾燥前後のケーキの重量の差から、脱水ケーキ含水率を算出した。表2に示すように、含水率は、76.1%であった。」 オ 甲5に記載された事項 (ア)「【請求項1】 石炭及び/又は鉄鉱石スラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合することを特徴とする、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの改質方法。」 (イ)「【0015】 前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリーとして、上述のとおり、鉱山の現場ヤード;破粉砕等の処理施設;野積み等の貯蔵保管場;ベルトコンベア、船、貨車等の搬送手段;製鉄所等の使用施設等において、鉄鉱石等が水を含むことにより発生するもの等が挙げられる。 例えば、屋外ヤードに野積みされた原料への降雨や粉塵目的の散水等にて、石炭や鉄鉱石、コークス、スラグ等の原料が流出し、排水溝に堆積したもの;原料を搬送するベルトコンベアを洗浄する水を貯留するピットや生産ラインから流出した原料を雨水等によって流れ込ませる沈殿池(ポンド)に堆積したもの;湿式集塵プラントからの回収した堆積物やヤードでの堆積物;屋外ヤードに野積みされた原料をベルトコンベアで搬送する際に粉塵防止目的で散水されて水を含んだもの;乾式集塵プラントからの回収物に水が流されてスラリー化したもの;運搬手段、処理施設、貯蔵管理場所等で管理保管の目的で散水されて水を含んだもの;船内で貯蔵保管目的で水浸させたウェット状態なもの;搬送手段等を水で洗浄し、回収したもの等が挙げられる。 微細な石炭や鉄鉱石等の原料がスラリーとなり易いが、この原料の大きさとして、例えば粒径(最大長径)5mm以下のものが挙げられる。」 (ウ)「【0019】 前記合成水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等の共重合物又はその塩等が挙げられる。この塩としては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。」 (エ)「【0038】 本技術の改質の機構について述べる。 前記石炭及び/又は鉄鉱石、並びにそのスラリーに、本技術の水溶性高分子(好適にはエマルジョン状態)を添加した後に(油分を含むスラリーの場合、好適には添加後放置した後に)、混合・攪拌すると、調湿石炭及び/又は鉄鉱石並びにこのスラリーに含まれる水分を含みながら水溶性高分子物質が、水分の存在下で石炭及び/又は鉄鉱石並びにこのスラリー中に分散する。 この前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリー等の前記対象物には、石炭や鉄鉱石を高濃度に含有しているものの、その後、水の存在下で、水溶性高分子化合物と石炭及び/又は鉄鉱石と架橋し、造粒化が可能である。造粒することで、この粒子中に水分を拘束し、スラリーの流動性が抑制されるようになる。しかも、改質された物はスラリーの塑性流動性の改善によって症状の改質がみられるようになる。スラリーになる前の石炭及び/又は鉄鉱石でも、本技術の水溶性高分子(好適にはエマルジョン状態)を水の存在下で使用することにより、これらの改質ができる。よって、改質された鉄鉱石等は、その後水と接触してもスラリー化が抑制されるので、取り扱いが容易である。 更に、本技術の水溶性高分子化合物の他、無機金属塩を添加攪拌することで、造粒物の自立性を促進させることができる。これにより、より安定的な造粒物となる。」 カ 甲6に記載された事項 (ア)「【請求項1】 含油廃水を無機凝集剤で処理するにあたり、無機凝集剤と同時にまたは別々にカチオン系ディスパージョン型(共)重合体を添加し、次いで凝集沈澱処理および脱水処理に付すことを特徴とする含油廃水の処理方法。 【請求項2】 カチオン系ディスパージョン型(共)重合体が、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドおよび(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロリドから選択されるカチオン性単量体、または前記カチオン性単量体と、アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N、N-ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミドおよび2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-トから選択されるノニオン性単量体とを、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶なイオン性高分子からなる分散剤の共存下で攪拌しながら重合して製造された、粒径5~100μmの高分子微粒子の分散液である請求項1に記載の含油廃水の処理方法。」 (イ)「【0006】 本発明は、効率よく油分および懸濁物質の濃度を低減でき、かつ無機凝集剤の使用量を抑えることができる含油廃水の処理方法を提供することを課題とする。」 キ 甲7に記載された事項 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、含油有機汚泥の脱水方法に関し、詳しくはベントナイト等の粘土と特定の構造単位を有する架橋型イオン性高分子凝集剤とを組み合わせることを特徴とする含油有機汚泥の脱水方法に関する。」 (イ)「【0011】 水溶性高分子は、架橋することによって水中における分子の広がりが抑制される。そのためにより「密度の詰まった」分子形態として存在する。通常高分子凝集剤として使用されるのは、前記の「密度の詰まった」分子形態である場合が効率的とされる。架橋型高分子凝集剤が汚泥中に添加されると懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こる。この時「密度の詰まった」分子形態であるため粒子表面と多点で結合し、より締った強度の高いフロックを形成すると推定される。」 (2)甲1に記載された発明 甲1の上記(1)ア(ア)の【請求項1】の末尾の記載によれば、甲1に記載される技術は、「汚泥の造粒濃縮による脱水方法」に関するものであるところ、同(ウ)の【0052】には、その態様である実施例6として、「圧延工場排水の酸化鉄汚泥(VSS8.8%)を実施例4、比較例4と同様に処理した。ただし、用いた凝集剤、その添加量は表4の通りとした。」との記載がある。ここで、実施例6で用いた凝集剤について、同(ウ)の【0054】の表4によれば、第1の凝集剤がN-1であり、第2の凝集剤がAC-1であり、このN-1とは、同(ウ)の【0045】の表3によれば「AAm」である高分子凝集剤であり、上記AC-1とは、同(ウ)の【0044】の表2によれば「DAM/DAA/AA/AAm」である両性有機高分子凝集剤である。 そして、上記実施例6が引用している実施例4は、同(ウ)の【0050】に「化学工場の総合排水の余剰汚泥と凝集沈殿汚泥との混合汚泥(VSS44.2%)にC-1のカチオン性有機高分子凝集剤を対SS0.24%添加して攪拌した後、A-1のアニオン性有機高分子凝集剤を対SS0.16%添加して攪拌し、次いで、造粒濃縮槽に導入し、更に造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液を脱水機へ移送する配管中に前記A-1を対SS0.05%添加し、実施例1と同様にベルトプレス型脱水機で脱水した。」と記載されるものである。 また、上記実施例4では、「実施例1と同様にベルトプレス型脱水機で脱水した」とあるが、同(ウ)の【0046】の実施例1の「ベルトプレス型脱水機(機種:栗田工業(株)製、「ハイドプレスPA750」)で、濾布面積負荷90kg-DS/m・hr濾布走行速度0.8m/minの条件にて脱水した。脱水ケーキの含水率は82.2%であった」との記載によれば、上記実施例4で、ベルトプレス型脱水機で脱水した後に得られるものは、「脱水ケーキ」である。 さらに、上記実施例4では、化学工場の総合排水の余剰汚泥から最終的に脱水ケーキが得られるのであるから、上記実施例4は、脱水ケーキに着目すれば、「脱水ケーキの製造方法」としてとらえることができる。 以上を踏まえ、上記実施例6を、実施例6が引用している上記実施例4の記載を参照しながら、「脱水ケーキの製造方法」としてとらえると、甲1には、上記実施例6に基づく以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「圧延工場排水の酸化鉄汚泥(VSS8.8%)にN-1のAAmである有機高分子凝集剤を添加して攪拌した後、AC-1のDAM/DAA/AA/AAmである両性有機高分子凝集剤を添加して攪拌し、次いで、造粒濃縮槽に導入し、更に造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液を脱水機へ移送する配管中に前記AC-1を添加し、ベルトプレス型脱水機で脱水する脱水ケーキの製造方法。」 (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)甲1発明の「圧延」とは、酸化鉄汚泥が生じていることから、鉄鋼製造工程における圧延であると共に、熱間圧延か冷間圧延のどちらかであるといえる。 そうすると、甲1発明の「圧延工場排水」は、本件発明1の「鉄鋼製造工程における、連続鋳造工程、熱間圧延工程、又は冷間圧延工程で生じる廃水」に相当する。 (イ)本件発明1における「廃水から固液分離により回収される」「油分を含有する(含油)スラッジ」が、甲1発明における「圧延工場排水の酸化鉄汚泥(VSS8.8%)」から「脱水ケーキ」に至るまでの状態の中で、どの段階のものに対応するのかについて、以下、検討する。 a 本件発明1の特定によれば、本件発明1の「含油スラッジ」は、「固液分離により回収され」たものである。すなわち、液体が既に分離されたものであるといえる。 b 本件明細書の【0007】の「一般的に、含油スラッジは、製鉄所における沈殿池や濃縮槽等の槽に一時的に貯留されている。含油スラッジが、廃棄のために処理される際や製鉄原料としての再利用のために処理される際には、上述の槽から、ショベル、ポンプ、又はバケット等を用いた浚渫により、含油スラッジが取り出され、ベルトコンベア及びトラック等の輸送手段に積まれて、処理施設へ運搬される。」との記載によれば、本件発明1の「含油スラッジ」は、ショベル、バケット等を用いた浚渫により取り出すことができ、ベルトコンベア等で処理施設に運搬することができ、処理施設における処理対象となるものであるから、その扱いの容易性から、流動性が低い状態のものであるといえる。 c 本件明細書の【0019】の「含油スラッジが廃水から回収される際の固液分離の手法は、特に限定されない。例えば、凝集・沈殿処理、膜分離・ろ過処理、浮上分離処理、及び遠心分離処理等を挙げることができる。」との記載によれば、本件発明1の「含油スラッジ」は、膜分離・ろ過処理、遠心分離処理等の工程を経たものである。 d 本件発明1の実施例における<試験例B>に関する本件明細書の【0073】の「まず、製鉄所における一時的な置場としての沈殿池に貯留されている含油スラッジを処理対象とした。この含油スラッジは、試験例Aで処理対象とした含油スラッジと同様、製鉄所における熱延工程で生じた廃水から、沈降分離等の固液分離により、回収されたものである。この含油スラッジが回収された廃水は、熱延工程において、製造過程にある鋼材及び製造に使用された設備の冷却や洗浄等に使用された水に由来する、直接冷却廃水及び洗浄廃水等を含む廃水である。含油スラッジの含水率を、試験例Aで述べた算出方法と同様に求めた結果、含油スラッジの水分量(含水率)は、35.0質量%であった。」との記載によれば、本件発明1の「含油スラッジ」の含水率は、35.0質量%程度であることが分かる。 e 本件発明1の実施例における(流動性確認試験)の内容に関する本件明細書の【0089】の「(流動性確認試験) 試験例C1~C6で得られた処理物について、流動性を確認する試験を行った。具体的には、各試験例において、プラスチックカップ(上端開口部の内径が80mm、下端底部の内径が50mm、及び高さが90mmの円錐台状)に、含油スラッジと水溶性重合体の混合物(処理物)をすりきりに(高さ90mmまで)入れ、その上(上記上端開口部)に平板を置いて蓋をした。プラスチックカップの上端開口部を平板で蓋をした状態のまま逆さにして平板側を水平な試験台上に置き、プラスチックカップを上方に引き抜いた。そして、試験台(平板)上に残った処理物について、前述と同様のy値(mm)及びx値(mm)を測定した。処理物が団粒状又は団塊状等の形態のように固まった状態に形成されているほど、形状を維持できることから、y値は高い値(90mmにより近い値)をとり、x値は小さい値(80mmにより近い値)をとる。なお、各試験例では、相対評価のために全て同じ条件で試験を行った。また、比較のために、ブランクとして、処理前の含油スラッジについても同様の試験を行った。試験の結果を表3に示す。」との記載、そして、同【0091】で、「ブランク、及び試験例C1~C6において、上記流動性確認試験の際に試験台上に載置された処理物の状態を上面側及び側面側から撮影した写真を、対比表の形式で表した」ものとされる【図3】の「 [図:0001406713000008.jpg] 」 によれば、本件発明1における「含油スラッジ」(本件発明1における「処理工程」を行う前のもの)に対応する「含油スラッジ(ブランク)」では、液体の漏出はなく、多少の流動性はあるものの固体状態であることが分かる。 f 上記a~eの観点について、本件発明1の「含油スラッジ」が、甲1発明における「圧延工場排水の酸化鉄汚泥(VSS8.8%)」から「脱水ケーキ」に至るまでの状態の中で、どの段階のものに対応するのかについて、以下、検討する。 (a)上記aの観点に関し、最終的に固液分離により回収されたものは、ベルトプレス型脱水機で脱水された脱水ケーキである。 (b)上記bの観点に関し、甲1の例えば上記(1)ア(エ)の【図1】において、ベルトプレス13で脱水を経た流動性の低い脱水ケーキが、一連の工程における最終生成物であり、処理施設において処理される場合には、この脱水ケーキが処理対象物になるといえる。 (c)上記cの観点に関し、甲1発明におけるベルトプレス型脱水機は、本件明細書の【0019】に記載される、含油スラッジが廃水から回収される際の固液分離の手法における「膜分離・ろ過処理」に対応するものといえる。また、甲1の上記(1)ア(ウ)の【0041】の「機械脱水機としては、図示のベルトプレスの他、遠心脱水機、真空脱水機、スクリュープレス又はフィルタプレス等の従来より使用されている脱水機をいずれも使用可能である。」との記載によれば、甲1発明において、ベルトプレス型脱水機による脱水は、遠心脱水機による脱水でもよく、これは、本件発明1における、「含油スラッジ」を得る際の固液分離の手法の「遠心分離処理」に対応している。 そうすると、甲1発明において、本件発明1における固液分離に対応する脱水で得られているものは、「脱水ケーキ」である。 (d)上記dの観点に関し、本件発明1の「含油スラッジ」の含水率は、35.0質量%程度であるところ、甲1発明の「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液を脱水機へ移送する配管中に前記AC-1を添加し、ベルトプレス型脱水機で脱水」して「脱水ケーキ」を得る段階の中では、ベルトプレス型脱水機で脱水する前のものは造粒物を含むものの「液」とされているのに対し、脱水後の脱水ケーキでは、上記(1)ア(ウ)の【0052】に記載される甲1発明に対応する実施例6においては、含水率が21.5%(【0054】【表4】)とされている。 これによれば、含水率の点から、甲1発明において、本件発明1の「含油スラッジ」に対応するのは、脱水後の「脱水ケーキ」であるといえる。 (e)上記eの観点に関し、甲1発明において、本件発明1のように、液体の漏出はなく、固体状態であるといえるものは、脱水後の「脱水ケーキ」であるといえる。 g 上記fでの(a)~(e)の観点での判断を総合すると、本件発明1の「含油スラッジ」に対応するのは、甲1発明の「脱水ケーキ」であるといえる。 そして、甲1発明の「脱水ケーキ」と本件発明1の「含油スラッジ」は、「スラッジ」の点で共通し、甲1発明の「ベルトプレス型脱水機で脱水する」は、本件発明1の「固液分離」に相当する。 また、甲1発明に対応する、上記(1)ア(ウ)の【0052】に記載される実施例6において、第1の凝集剤(有機高分子凝集剤)、第2の凝集剤(両性有機高分子凝集剤)の添加量が「対SS%」とされ(【0054】【表4】)、ここで「SS」とは、Suspended Solid、すなわち、水中に懸濁状で存在する非溶解性の物質を意味するから、圧延工場排水の酸化鉄汚泥から製造される脱水ケーキは、少なくとも、鉄分を含む懸濁物質に由来する物質を含んでいるといえる。 さらに、甲1発明に対応する実施例6では、上記f(d)で述べたように、脱水ケーキの含水率が21.5%(【0054】【表4】)とされているように、脱水ケーキは、水分を含むものである。 そうすると、甲1発明の「ベルトプレス型脱水機で脱水する脱水ケーキ」は、本件発明1の「固液分離により回収される、水分;鉄分を含む懸濁物質;及び油分を含有するスラッジ」と、「固液分離により回収される、水分;鉄分を含む懸濁物質を含有するスラッジ」の点で共通する。 (ウ)甲1発明は、「脱水ケーキの製造方法」であるところ、本件発明1は、「スラッジに、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加し、混合する処理工程を含み、」「前記処理工程は、前記スラッジへの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉することで前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程である、含油スラッジの処理方法」であり、両者は、「スラッジに関する方法」程度でしか共通していない。 (エ)以上によれば、本件発明1と甲1発明は、「鉄鋼製造工程における、連続鋳造工程、熱間圧延工程、又は冷間圧延工程で生じる廃水から固液分離により回収される、水分;鉄分を含む懸濁物質を含有するスラッジに関する方法。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> スラッジが、本件発明1では、水分;鉄分を含む懸濁物質の他に、油分を含有する含油スラッジであり、前記スラッジ中の前記油分の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であるのに対し、甲1発明では、このようなものであるのか明らかでない点。 <相違点2> スラッジに関する方法について、本件発明1では、スラッジに、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加し、混合する処理工程を含み、前記処理工程は、前記スラッジへの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉することで前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程である、含油スラッジの処理方法であるのに対し、甲1発明では、このような方法であるのか明らかでない点。 イ 相違点に対する判断 事案にかんがみ上記相違点2について、以下検討する。 (ア)甲1には、圧延工場排水の酸化鉄汚泥から脱水ケーキが得られた後、この脱水ケーキに何らかの処理をすることは何ら記載されておらず、ましてや、脱水ケーキに、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加及び混合することにより、前記水溶性重合体が前記脱水ケーキ中の懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記脱水ケーキ中の水を捕捉することで前記脱水ケーキの流動性を低下させた処理物を得ることについては、何の記載もないから、上記相違点2は、実質的な相違点である。 (イ)甲1の上記(1)ア(イ)の【0013】の「本発明は上記従来の問題点を解決し、汚泥に第1の凝集剤を添加して攪拌し、次いで、第2の凝集剤を添加して攪拌した後、又は、第2の凝集剤と共に、汚泥を濾過部を有する造粒濃縮槽に導入し、該濾過部から濾液を取り出すことによって汚泥を濃縮するとともに造粒し、この造粒物を脱水機で脱水する方法において、凝集剤添加量の低減を図ると共に、脱水機の安定運転を可能とする汚泥の造粒濃縮による脱水方法を提供することを目的とする。」との記載によれば、甲1発明は、脱水ケーキを得る前(脱水を行う前)の、汚泥を濃縮するとともに造粒を行う段階における凝集剤の添加量の低減を図ると共に、脱水機の安定運転を可能とする汚泥の造粒濃縮を行うことに着目するものであり、脱水ケーキが得られた後のことには何ら着目するものではないから、甲1発明には、脱水ケーキが得られた後に、さらに何らかの処理を行う動機付けはない。 (ウ)上記(イ)で述べたとおり、甲1発明には、上記相違点2に係る本件発明1の構成を採用しようとする動機付けがないのであるから、甲2~甲7に記載される事項の内容如何にかかわらず、上記相違点2に係る本件発明1の構成を容易に想到し得るとはいえないが、念のため甲2~甲7の記載事項について、以下、検討する。 甲5の上記(1)オ(ア)には、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合する、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの改質方法が記載され、同(エ)には、この改質の機構が、水の存在下で、水溶性高分子化合物と石炭及び/又は鉄鉱石が架橋し、造粒化することで、この粒子中に水分を拘束し、スラリーの流動性が抑制されることであることが記載されている。さらに、同(イ)には、対象となる「石炭及び/又は鉄鉱石スラリー」が、例えば、屋外ヤードに野積みされた原料への降雨や粉塵目的の散水等にて、石炭や鉄鉱石、コークス、スラグ等の原料が流出し、排水溝に堆積したもの;原料を搬送するベルトコンベアを洗浄する水を貯留するピットや生産ラインから流出した原料を雨水等によって流れ込ませる沈殿池(ポンド)に堆積したもの等であることが記載されている。一方、本件発明1の含油スラッジは、実施例においては沈殿池に貯留されていたものである(本件明細書の【0074】)ことから、甲5において、改質の対象となる石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの状態は、本件発明1の「含油スラッジ」に類似し、スラリーの流動性を抑制する機構も、「造粒化することで、この粒子中に水分を拘束し、スラリーの流動性が抑制される」点で、本件発明1の含油スラッジの流動性を低下させる機構に類似している。しかしながら、甲5に記載される事項は、あくまで、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーを対象とするもので、本件発明1の「鉄鋼製造工程における、連続鋳造工程、熱間圧延工程、又は冷間圧延工程で生じる廃水から固液分離により回収される、水分;鉄分を含む懸濁物質;及び油分を含有するスラッジ」を対象とするものではないから、甲5に記載の事項は、上記相違点2に係る本件発明1の構成を充足するものとはならない。 また、甲2~甲4、甲6、甲7には、上記(1)イ~エ、カ、キに記載の事項が記載されているが、上記相違点2に係る本件発明1の構成に関係する事項は記載されていない。 ウ 小括 上記イで述べたように、上記相違点2は、実質的な相違点であるとともに、上記相違点2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~甲7に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 なお、仮に、甲1発明において、「脱水機へ移送する配管中」で「前記AC-1」(DAM/DAA/AA/AAm:(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含む水溶性重合体ではある。)が添加される「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液」が、本件発明1の「含油スラッジ」に対応するものとして、本件発明1と対比したとしても、少なくとも、甲1発明の「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液」が、本件発明1の「含油スラッジ」といえるのか否か、甲1発明において、「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液を脱水機へ移送する配管中に前記AC-1を添加」する工程が、本件発明1の「スラッジに、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加し、混合する処理工程を含み、前記処理工程は、前記スラッジへの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉することで前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程」であるか否かの少なくとも2つの点で相違することになる。 前者については、甲2の上記(1)イ(エ)の【0055】に「油を1%含む、平均粒径が26ミクロンの鋼材圧延工程で発生したスラジ」との記載や、甲3の上記(1)ウ(ア)の「戻水場で汚濁物質を除去処理する場合、機械油、グリス、圧延油等の廃油が付層した酸化鉄を主成分とするスラッジ(以下酸化鉄系含油戻水スラッジと称する)が回収される。このスラッジには、スラッジ固体分に対して廃油が5~30%、鉄分が30~60%程度含まれている」との記載を参照したとしても、造粒濃縮槽で分離液が除かれている(油分はかなりの割合で分離液側に除かれていると考えることができる。)甲1発明において、「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液」に油分が含まれているのか否か、仮に含まれていたとしてもどの程度含まれているのかは、甲2、甲3を参照したとしても不明である。 後者については、甲1発明で、「前記AC-1を添加」した「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液」は、その後、「ベルトプレス型脱水機で脱水」されるのであるから、甲1発明の、「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液を脱水機へ移送する配管中に前記AC-1を添加」する工程は、本件発明1の「前記スラッジへの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉することで前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程」であるとはいえない。 以上によれば、仮に、甲1発明において、「脱水機へ移送する配管中」で「前記AC-1」が添加される「造粒濃縮槽から流出する造粒物を含む液」が、本件発明1の「含油スラッジ」に対応するものとしたとしても、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとすることはできない。 (4)本件発明2~12について 本件発明2~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、少なくとも本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~甲7に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (5)本件発明13について 本件発明13は、「廃水の処理方法」であるところ、この「廃水の処理方法」における「スラッジ」及び「処理工程」は、それぞれ、本件発明1の「スラッジ」及び「処理工程」と同じものであり、少なくとも本件発明1の構成をすべて具備するものである。 そうすると、本件発明13は、本件発明1と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2~甲7に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (6)申立理由1に関するまとめ 以上のとおり、本件特許1~13は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1には、理由がない。 2 申立理由2(サポート要件違反)について (1)申立理由2の内容 申立理由2の内容は、以下のとおりである。 ア 「含油スラッジの全乾燥質量」について 本件発明1には、「前記スラッジ中の前記油分の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であり、」との規定がある。 しかしながら、本件明細書の段落【0022】には含油スラッジの全乾燥質量に関する記載について、「乾燥後(水分除去後)の含油スラッジ中の油分の含有量は、含油スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であることが好ましく」とあるものの、「含油スラッジの全乾燥質量」とは、含油スラッジの固体分を意味するのか、また、含油スラッジを乾燥した際の質量を意味するのか不明である。 また、例えば、「含油スラッジの全乾燥質量」が、含油スラッジを乾燥した際の質量を意味する場合、全乾燥質量を求める際の、含油スラッジの乾燥条件が不明であり、乾燥後の含油スラッジに水分が含まれているのか、また、水分が全て除去され、水分量が「0」であるのかも不明である。 すなわち、本件明細書の全体を確認しても、本件発明1に規定されている「前記スラッジ中の前記油分の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であり、」の「全乾燥質量」が具体的に何を意味するものであるのか不明であるため、本件発明1における含油スラッジの処理方法の対象となる「含油スラッジ」がどのようなものであるか不明である。 よって、本件発明1は、「スラッジの全乾燥質量」の用語が何を意味するのか不明であり、本件明細書の全体を確認しても、発明の課題が解決できると当業者が認識できるように記載されていないため、サポート要件不備である。本件発明1を引用する本件発2~12及び本件発明1と同じ規定のある本件発明13も同様にサポート要件を満たしていない。 イ 「スラッジの流動性の低下」について 本件発明1には、「前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程」との規定がある。 しかしながら、本件明細書の全体を確認しても「スラッジの流動性の低下」を判断する基準は何ら示されていない。 よって、本件発明1において、「スラッジの流動性の低下」が、どの程度スラッジの流動性を低下できていれば発明の課題を解決することができるのか、当業者が認識できるように記載されていないため、サポート要件を満たしていない。本件発明1を引用する本件発明2~12及び本件発明1と同じ規定のある本件発明13も同様にサポート要件を満たしていない。 (2)申立理由2についての検討 ア 上記(1)アの理由について 本件発明において、油分の含有量の基準となる「スラッジの全乾燥質量」について、以下、検討する。 この「スラッジの全乾燥質量」とは、乾燥後の含油スラッジの質量を意味していると解されるが、本件明細書の【0022】には、請求項1と同様の「乾燥後(水分除去後)の含油スラッジ中の油分の含有量は、含油スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であることが好ましく」との記載があり、「乾燥後(水分除去後)の含油スラッジ」とされている。 ここで、乾燥後の含油スラッジ関し、【0060】に、「採取した直後の含油スラッジの質量(乾燥前質量)と、乾燥後の含油スラッジの質量(乾燥後質量)を測定し、含油スラッジの水分量(含水率)を、含水率(%)=[乾燥前質量-乾燥後質量]/乾燥前質量×100の式により、算出した。その結果、含油スラッジの水分量(含水率)は、48.2質量%であった。なお、含油スラッジの乾燥条件は、含油スラッジを110±5℃の恒温槽で24時間置くことにより水分を除去する条件である。」との記載があり、少なくとも、含油スラッジの水分量(含水率)の測定の際の「乾燥後の含油スラッジ」とは、「含油スラッジを110±5℃の恒温槽で24時間置くことにより水分を除去する条件」で得られたものであることが記載されている。 そして、この【0060】に続く、【0061】に「参考として、乾燥後の含油スラッジについて、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)装置(商品名「Quantax70」、ブルカー社製)を用いて、組成分析を行った。・・・溶剤としてヘキサンを用いたソックスレー抽出法により測定した、乾燥後の含油スラッジ中の油分は8質量%であった。」との記載がある。 これらの本件明細書の記載からは、【0022】での「乾燥後(水分除去後)の含油スラッジ」の「水分」が、【0060】での「含油スラッジの水分量(含水率)」であるとの理解が可能であることや、【0060】での「含油スラッジの水分量(含水率)」に関する記載に続けて、同段落の「乾燥後の含油スラッジ」に、何らかの説明等を加えることなく、続く【0061】の「溶剤としてヘキサンを用いたソックスレー抽出法により測定した、乾燥後の含油スラッジ中の油分は8質量%であった。」との記載で、「乾燥後の含油スラッジ」との用語を使用していることから、【0061】における「乾燥後の含油スラッジ」は、【0060】における「乾燥後の含油スラッジ」と同じ意味で使用されているとの理解が可能である。 そうすると、請求項1における、油分の含有量の基準となる「スラッジの全乾燥質量」(乾燥後の含油スラッジの質量)は、含油スラッジから、【0060】で定義している「含油スラッジの水分量(含水率)」が除去されたものの質量、具体的には、「含油スラッジを110±5℃の恒温槽で24時間置くことにより水分を除去する条件」で得られたものの質量であると理解することができる。 なお、本件明細書の記載から理解できる、上述の「スラッジの全乾燥質量」の内容に対し、令和5年9月26日付け審尋に対する同年10月23日に提出された回答書において、特許権者も上述の理解で正しい旨を回答している。 以上のとおりであるから、請求項1における「スラッジの全乾燥質量」という用語が不明確であるということはなく、「スラッジの全乾燥質量」が不明確であることに起因して含油スラッジの処理方法の対象となる「含油スラッジ」という記載が不明確になるということもない。 イ 上記(1)イの理由について 本件明細書で【発明が解決しようとする課題】に続く【0007】に、「一般的に、含油スラッジは、製鉄所における沈殿池や濃縮槽等の槽に一時的に貯留されている。含油スラッジが、廃棄のために処理される際や製鉄原料としての再利用のために処理される際には、上述の槽から、ショベル、ポンプ、又はバケット等を用いた浚渫により、含油スラッジが取り出され、ベルトコンベア及びトラック等の輸送手段に積まれて、処理施設へ運搬される。この際、含油スラッジは、含水率が比較的高く、流動しやすい(流動性が高い)ものである場合が多く、さらには油分を含有することから、運搬時において含油スラッジ、及びそれに含まれる油分が流出することが懸念される。」という問題が記載され、これに対し、本件発明は、同【0008】に記載されるように、「含油スラッジを運搬しやすい処理物にすることが可能な含油スラッジの処理方法を提供しようとするもの」である。 以上によれば、本件発明は、含油スラッジが流動しやすい(流動性が高い)ことによる問題点を解決するものであるから、本件発明1における「前記スラッジの流動性を低下させた」とは、従来、「含油スラッジは、含水率が比較的高く、流動しやすい(流動性が高い)」ことによって生じていた問題が生じない程度に流動性が低下すること、すなわち、運搬時において含油スラッジ、及びそれに含まれる油分が流出することがない程度に流動性が低下することであると理解できる。 より具体的には、本件明細書の【0057】以降に記載される【実施例】に関する【0067】には、「(流動性確認試験) 試験例A1~A5で得られた処理物について、流動性を確認する試験を行った。具体的には、各試験例において、プラスチックカップ(上端開口部の内径が80mm、下端底部の内径が50mm、及び高さが90mmの円錐台状)に、含油スラッジと水溶性重合体の混合物(処理物)を高さ50mmまで入れ、その上(上記上端開口部)に平板を置いて蓋をした。プラスチックカップの上端開口部を平板で蓋をした状態のまま逆さにして平板側を水平な試験台上に置き、プラスチックカップを上方に引き抜いた。そして、試験台(平板)上に残った処理物について、y値(mm)及びx値(mm)を測定した。y値はプラスチックカップを引き抜いた後に試験台上に残った処理物の高さ(試験台に垂直方向の高さ)を表し、x値はその処理物の長さ(試験台に水平方向に拡がった長さ)を表す。処理物が団粒状又は団塊状等の形態のように固まった状態に形成されているほど、形状を維持できることから、y値は高い値(50mmにより近い値)をとり、x値は小さい値(80mmにより近い値)をとる。なお、各試験例では、相対評価のために全て同じ条件で試験を行った。また、比較のために、ブランクとして、処理前の含油スラッジについても同様の試験を行った。試験の結果を表1に示す。」との記載があり、【0070】には、上記流動性確認試験の結果が以下のように記載されている。 [図:0001406713000009.jpg] 以上によれば、x値は小さい値(80mmにより近い値)で、y値は高い値(50mmにより近い値)であれば、より含油スラッジの流動性が低いところ、少なくとも、処理前の含油スラッジ(ブランク)におけるx値である88mmよりx値が小さく、y値である11mmよりy値が高く、試験例の中では、最もブランクの値に近い試験例A1のX値ほどは小さくなくとも、y値ほどは高くなくとも、これらに近い値であれば、本件発明における「スラッジの流動性を低下させた」状態であると理解できる。 本件明細書の【0089】に記載される(流動性確認試験)によっても、処理前の含油スラッジとの比較で、本件発明の態様について、含油スラッジの流動性を、【0067】に記載される流動性確認試験と同様に、x値及びy値で評価しており、これによっても、含油スラッジにおいて、「流動性を低下させた」とは、どのような状態であるのかを理解することができる。 そうすると、本件発明において、「スラッジの流動性の低下」が、どの程度スラッジの流動性を低下できていれば発明の課題を解決することができるのかは、本件明細書の記載から当業者であれば十分理解できるといえる。 ウ 上記ア及びイのとおり、特許異議申立てにおいて、本件発明に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たしていないとする理由は、いずれも妥当なものではないから、本件発明(本件発明1、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~12、本件発明1と同じ特定のある本件発明13)に係る特許請求の範囲の記載が、サポート要件を満たしていないとすることはできない。 (3)申立理由2に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由2には、理由がない。 3 申立理由3(明確性要件違反)について (1)申立理由3の内容 申立理由3の内容は、以下のとおりである。 ア 上記2(1)アに記載の通り、本件発明1における「前記スラッジ中の前記油分の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であり、」の「全乾燥質量」が具体的に何を意味するものであるのか不明であり、本件明細書の全体を確認しても、「全乾燥質量」が何を意味するのか何ら説明がない。 そのため、本件発明1における「前記スラッジ中の前記油分の含有量は、前記スラッジの全乾燥質量を基準として、2~20質量%であり、」との規定において、基準となる「スラッジの全乾燥質量」が水分がすべて除去され水分量が「0」である場合のスラッジと、水分がある程度乾燥され水分量を含む場合のスラッジとではその質量が変わり、基準となる「スラッジの全乾燥質量」を一律に決定できない。 よって、請求項1の記載自体が不明確であり、発明の範囲が不明確であり、明確性要件に違反している。請求項1を引用する請求項2~12及び請求項13の記載も同様に明確性要件を満たしていない。 イ 本件発明1では「前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程」との規定がある。 しかしながら、本件明細書の全体を確認しても「スラッジの流動性の低下」を判断する基準は何ら示されていない。 よって、本件発明1の「スラッジの流動性の低下」は、どの程度スラッジの流動性が低下されると本件発明1の範囲に含まれるのか不明確であり、明確性要件に違反している。請求項1を引用する請求項2~12及び請求項13の記載も同様に明確性要件を満たしていない。 (2)申立理由3についての検討 ア 上記(1)アの理由について 上記2(2)アで述べたように、請求項1における、油分の含有量の基準となる「スラッジの全乾燥質量」(乾燥後の含油スラッジの質量)は、含油スラッジから、【0060】で定義している「含油スラッジの水分量(含水率)」が除去されたものの質量、具体的には、「含油スラッジを110±5℃の恒温槽で24時間置くことにより水分を除去する条件」で得られたものの質量であると理解することができる。 そうすると、請求項1における「全乾燥質量」が具体的に何を意味するものであるのか不明であるということはなく、スラッジ中の油分の含有量の基準となる「スラッジの全乾燥質量」を一律に決定できないということはない。 イ 上記(1)イの理由について 上記2(2)イで述べたように、請求項1における「スラッジの流動性の低下」を判断する基準が、本件明細書に記載されていないということはなく、当業者であれば、それを判断する基準は、十分理解可能であるから、請求項1における「スラッジの流動性の低下」の技術的範囲が不明確であるということはない。 ウ 上記ア及びイのとおり、特許異議申立てにおいて、本件発明に係る特許請求の範囲の記載が明確性要件を満たしていないとする理由は、いずれも妥当なものではないから、本件発明(本件発明1、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~12、本件発明1と同じ特定のある本件発明13)に係る特許請求の範囲の記載が、明確性要件を満たしていないとすることはできない。 (3)申立理由3に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由3には、理由がない。 4 申立理由4(実施可能要件違反)について (1)申立理由4の内容 申立理由4の内容は、以下のとおりである。 ア 本件発明1では、「前記処理工程は、前記スラッジヘの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉することで前記スラッジの流動性を低下させた処理物を得る工程である」と規定されている。 しかしながら、本件明細書を確認しても、「前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉すること」がどのように確認されるのかは何ら記載されていない。 イ また、含油スラッジに含まれる懸濁物質について、例えば、どのくらいの割合の懸濁物質が水溶性重合体により結合され、また、結合懸濁物質のうち、どのくらいの割合の結合懸濁物質に水が捕捉されると、前記スラッジの流動性が低下するのかについても何ら示されておらず、当業者であっても本件発明1における上記の規定が満たすべき状態であるのかどうか判断することが困難である。 よって、本件発明1は、当業者が実施できる程度に記載された発明に該当せず、本件発明1に対応する発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たさない。本件発明1を引用する本件発明2~12及び本件発明1と同じ規定のある本件発明13に対応する発明の詳細な説明の記載も同様に実施可能要件を満たしていない。 (2)申立理由4についての検討 ア 上記(1)アの理由について 本件明細書の【0071】には、「表1及び図1に示す試験例A1~A5の結果から、含油スラッジに、アクリル酸ナトリウム及びアクリルアミドに由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加し、混合することにより、見かけ上含水率が低下したような外観の団粒状又は団塊状の処理物が得られたことが確認された。また、この処理物は、処理前の含油スラッジに比べて、流動性確認試験によるy値が高く、x値が低い結果となり、流動性が低下していることが確認され、運搬しやすい処理物であることが認められた。」との記載があり、含油スラッジに、アクリル酸ナトリウム及びアクリルアミドに由来する構造単位を含む水溶性重合体を添加し、混合することにより、外観が団粒状又は団塊状である処理物が得られることを確認している。そして、水溶性重合体を添加することにより、懸濁物質が外観が団粒状又は団塊状である処理物に変化したのであるから、水溶性重合体は、この変化の原因となるもの、すなわち、懸濁物質同士を結合して、処理物を団粒状又は団塊状のものに変化させているものと理解できる。また、懸濁物質同士が結合して、団粒状又は団塊状のものに変化する場合、含油スラッジに存在していた水は、団粒状又は団塊状の間隙に存在していると考えることが自然である。 そうすると、本件発明における「前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉すること」は、本件発明における処理工程を経た含油スラッジの前後での外観の変化を通じて確認することができるといえる。 イ 上記(1)イの理由について 本件発明で特定される「前記スラッジヘの前記水溶性重合体の添加及び混合により、前記水溶性重合体が前記スラッジ中の前記懸濁物質に吸着して前記懸濁物質どうしを結合させ、その結合に伴って生じる間隙に前記スラッジ中の水を捕捉すること」が起これば、スラッジ中の水の捕捉の程度を応じて、上記2(2)イで述べた流動性試験における含油スラッジの流動性が低下し、x値がより小さく、y値がより高く測定されることが理解できる。 そうすると、本件発明を実施できているか否かは、本件発明における流動性試験によって必要な流動性の低下がなされているか否かで判断すればよく、また、含油スラッジにおける流動性の低下が実際なされていることは、上記2(2)イで述べた流動性試験で確認しているとおりである。 以上によれば、本件発明の実施にあたって、「含油スラッジに含まれる懸濁物質について、例えば、どのくらいの割合の懸濁物質が水溶性重合体により結合され、また、結合懸濁物質のうち、どのくらいの割合の結合懸濁物質に水が捕捉されると、前記スラッジの流動性が低下するのか」を明らかにしなければならないということはない。 ウ 上記ア及びイのとおり、特許異議申立てにおいて、本件発明に対応する発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしていないとする理由は、いずれも妥当なものであるとはいいがたいから、本件発明(本件発明1、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~12、本件発明1と同じ特定のある本件発明13)に対応する発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件を満たしていないとすることはできない。 (3)申立理由4に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由4には、理由がない。 第5 むすび 上記第4で検討したとおり、本件特許1~13は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第4項第1号並びに同法同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記申立理由1~4では、本件特許1~13を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~13を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700769

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    共通の審決分類: 113・C02F、121・C02F、536・C02F、537・C02F

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