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特許異議申立

2024-700883

化成処理めっき鋼板の製造方法及び製造設備

審判番号
2024-700883
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-196129
登録番号
7452945
請求日
2024年09月13日
審決日
2025年02月14日
公報発行日
2025年03月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本製鉄株式会社
  • 【権利者代理人】アクシス国際弁理士法人
  • 【異議申立人】小林 喜一
審判長/審判官
  • 審判長 粟野 正明
  • 審判官 相澤 啓祐
  • 審判官 池渕 立
分類
P1651.121-Y (C23C) / P1651.536-Y (C23C) / P1651.537-Y (C23C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7452945号発明「化成処理めっき鋼板の製造方法及び製造設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7452945号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7452945号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、平成30年10月17日を出願日とする特許出願(特願2018-196129号)に係るものであって、令和 6年 3月11日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和 6年 3月19日である。)。 その後、令和 6年 9月13日に、本件特許の請求項1~6(全請求項)に係る特許に対して、特許異議申立人である小林 喜一(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。なお、令和 6年10月21日に特許異議申立書を対象とする手続補正書(方式)が提出されている。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」という。また、本件特許に係る特許出願の願書に添付した明細書及び図面をそれぞれ「本件明細書」及び「本件図面」という。)。 【請求項1】 ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを有するロールコータにより、クロムフリー化成処理液をめっき鋼板に塗布する化成処理工程と、 前記ロールコータに進入する際の前記めっき鋼板の表面温度を30℃以下とする温度調整工程と を含み、 前記めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板であり、 前記温度調整工程では、前記めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う、 化成処理めっき鋼板の製造方法。 【請求項2】 前記ロールコータに進入する際の前記めっき鋼板の表面温度は前記クロムフリー化成処理液の凝固温度より高い、 請求項1記載の化成処理めっき鋼板の製造方法。 【請求項3】 前記クロムフリー化成処理液は、リン酸、フッ酸及びそれらの塩の少なくとも1種を含む、 請求項1又は請求項2に記載の化成処理めっき鋼板の製造方法。 【請求項4】 前記温度調整工程では、前記空冷により前記めっき鋼板の表面温度を105℃未満とする、 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の化成処理めっき鋼板の製造方法。 【請求項5】 ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを有し、クロムフリー化成処理液をめっき鋼板に塗布するロールコータと、 前記ロールコータに進入する際の前記めっき鋼板の表面温度を30℃以下とする温度調整設備と を備え、 前記めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板であり、 前記温度調整設備では、前記めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う、 クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造設備。 【請求項6】 前記温度調整設備では、前記空冷により前記めっき鋼板の表面温度を105℃未満とする、 請求項5に記載のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造設備。 第3 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第4号証(以下、単に「甲1」等という。以下の5を参照。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 なお、特許異議申立書の第24ページには「(イ)甲2発明との対比(申立ての理由 1)」と記載されているが、同第21ページには「(ア)甲1発明との対比(申立ての理由 1)」と記載されており、同第27ページには「エ サポート要件違反、実施可能要件違反(申立ての理由 3、4)」と記載されていることを踏まえると、上記「(イ)甲2発明との対比(申立ての理由 1)」との記載は誤記であり、「(イ)甲2発明との対比(申立ての理由 2)」との記載が正しいと認められるため、以下のとおり各申立理由を認定した。 1 申立理由1(進歩性) 本件発明1~6は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~6は、甲2に記載された発明、甲4に記載された技術及び甲1に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(サポート要件) 本件発明1~6については、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 4 申立理由4(実施可能要件) 本件発明1~6については、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 5 証拠方法 (1)甲1:特開2002-226958号公報 (2)甲2:特開2017-43818号公報 (3)甲3:特開2017-205768号公報 (4)甲4:特開2004-269921号公報 第4 当審における判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1(進歩性) (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載事項 甲1には、「光沢保持性の良好な溶融Zn基めっき鋼板およびその製造法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を表し、下線は当合議体が付したものである。以下同様。 (ア)「【請求項1】 Zn浴中に4.0~15質量%のAlおよび1.0~4.0質量%のMgを含有した溶融Zn基めっき浴に鋼帯を連続的に浸漬して引き上げたあと,凝固完了後のめっき層表面を水流と接触させながら水冷するウォータクエンチ帯域に連続的に通板すること,そのさい,該ウォータクエンチ帯域への入側材料温度を105℃未満に制御してめっき層表面の光沢劣化を抑制することを特徴とする光沢保持性の良好な溶融Zn基めっき鋼板の製造法。 ・・・ 【請求項5】 ウォータクエンチ帯域を通板したあと,さらに化成処理帯域に通板させる請求項1ないし4のいずれかに記載の光沢保持性の良好な溶融Zn基めっき鋼板の製造法。」 (イ)「【0004】ここで「めっき層の表面光沢劣化」とは,製造直後のめっき表面は美麗な金属光沢を有していても,時間を経るにつれて(最も早い場合は2~3日後,場合によっては4~7日後に)やや黒っぽい緩衝色に似た色に変色することを指し,この極表層の変色の程度(一種の黒化現象)は「明度」を測定することによって定量化できる。例えば,製造直後のめっき表面の明度(L値)がL=82付近であったものが,7日後にはL=72付近にまで低下するといった具合である。このL値が低下したとしても,製品の耐食性は特に劣化するものではなく,当該めっき鋼板の物理的および化学的価値は何ら損なわれないが,表面外観の点から好ましいことではない。とくに,めっき表面一様に表面光沢が劣化するのではなく,ところどころが変色するのは美観を損なうことになる。 【0005】この表面光沢の劣化は,AlとMgの含有量が比較的多い前記のような溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板特有のものであると考えられる。この劣化は,おそらく,めっきの極表層に濃化したMgの酸化の程度や表層Alの酸化状態が複雑に関与して起きるものと推察される。これまで,このような溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板に発生する当該表面光沢の劣化機構やその抑制法についての報告例はない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】したがって,本発明は,溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板特有に現れる前記の表面光沢の劣化を抑制できるような手段を見いだすことを課題としたものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】前記の課題を解決すべく,本発明者らは種々の試験研究を重ねた結果,この溶融めっき鋼板の表面光沢劣化は,めっき後の冷却過程で水冷するときのめっき層表面と水との反応挙動にその原因があることを突き止めることができ,表面光沢赤化を防止するには,ひとつには,めっき層凝固後の水冷過程における「めっき層と水流との接触温度」の制御,ひいては「水流と接触するときの材料温度」の制御を適切にすること,さらには,適切な「易酸化性の元素」をめっき浴に微量配合しておくことによってめっき表層のAlとMgの酸化状態を安定化させることが,有効に機能することを見い出した。ここで,水流と接触するときの材料温度とは,めっき層凝固完了後の冷却過程でめっき層表面に水膜を形成しながら冷却される場合の材料温度を意味し,より具体的には,凝固完了しためっき層に水流を当てて,めっき層の表面に水膜が形成されるような状態でめっき層が冷却されるときのめっき層温度を意味する。 【0008】すなわち,前述のような溶融Zn-Al-Mg系めっき浴に鋼帯を連続的に浸漬して引き上げたあと,凝固完了後のめっき層表面を水流と接触させながら(めっき層表面に一時的に水膜が形成されるような量の水をめっき層表面に供給しながら)水冷するウォータクエンチ帯域に連続的に通板するさいに,該ウォータクエンチ帯域への入側材料温度を105℃未満に制御すれば,前述のようなめっき層の表面光沢の劣化を抑制できることが判明した。」 (ウ)「【0013】 【発明の実施の形態】本明細書において,溶融めっきラインでの説明では原則として「鋼帯」の用語を用い,成品としての説明では「鋼板」の用語を使用するが,特性的には鋼帯も鋼板も同一である。 【0014】図1に溶融Zn基めっき鋼板の製造設備の概略を示した。炉1を通過して所定温度に維持された鋼帯2は,めっき浴3に連続的に送り込まれ,このめっき浴3を出たあと,ワイピングノズル4で付着量が調整され,エアジエットクーラー5を通過する間にめっき層の凝固が完了する。次いで,気水冷却帯域6aや6bと気体冷却帯域(エアージェットクーラー)14との複合または単独を稼働し,または稼働せずに,ウォータクエンチ帯域7を通過させたあとスキンパスミル8で調質圧延され,テンションレベラ9を経たあと,検査工程を経てテンションリール10で巻き取られる。化成処理例えばクロメート処理する場合には,テンションレベラ9を経たあと,ロールコータ11で処理され,乾燥帯域12,エア冷却帯域13を経てテンションリール10aに巻き取られる。 【0015】先述のようにAlとMgを比較的多量に含有する溶融Zn-Al-Mgめっき鋼板(以下「含Mg溶融Znめっき鋼板」と略称する)を製造する場合,表面性状の点からめっき層凝固完了までの冷却速度や凝固完了位置の適正な制御が肝要であり,このために通板速度や板厚に応じてエアジエットクーラー5を通過する時点の材料温度が厳密にコントロールされねばならない。そのあとは,スキンパス8での調質圧延が適切に実施できるように,気水冷却帯域6(さらには気体冷却帯域14)やウォータクエンチ帯域7での冷却によって,スキンパス入側の材料温度を所定温度以下(例えば70℃以下)とする必要がある。これらの冷却帯域での冷却負荷は通板速度と板厚に関連して変動する。一般に気水冷却帯域では水や水溶液の噴霧,気体冷却帯域ではエアージャット,ウォータクエンチ帯域ではめっき層表面に一時的に水膜が生成するに十分な水流が供給される。したがって,後者のウォータクエンチ帯域ではめっき層表面が水流と接触することによって前者より大きな冷却速度を確保できるから,冷却負荷の変動に拘わらずウォータクエンチ帯域で冷却操作を行うのは,効率がよい。気水冷却帯域6においても水や水溶液が空気流に同伴させて噴霧されるが,めっき層表面に水膜が形成される程の水量が供給される訳ではなく,蒸発潜熱による抜熱が主である。したがってウォータクエンチ帯域のような水流との接触による抜熱とは抜熱形態が異なり冷却速度も相違する。 【0016】ところが,このウォータクエンチ帯域への入側材料温度の如何によってめっき表面の光沢維持性能が異なることがわかった。該温度が105℃未満の場合に,前述の表面光沢が劣化する現象が起きやすいのである。その原因については必ずしも明らかではないが,ウォータクエンチ帯域に入るときの材料温度が100℃以上であるとめっき層表面に水膜が形成している間はある種の沸騰現象が起きてめっき層表面が反応性に富むようになること,大気圧下での水の存在下でのAlの挙動は,約110℃を境として,それ以上では Al2O3・H2O ( または AlOOH) 化合物が安定であるが,それ以下では Al2O3・3H2O (または Al(OH)3) 化合物が安定であることから,該入側材料温度によってウォータクエンチ帯域のめっき層表面で生成するAl化合物が異なること,などが関与しているのではないかと推察される。」 (エ)「【0029】図1の下方に示すように,含Mg溶融Znめっき鋼板の製造ラインの後段において,ロールコーター11などで化成処理を施す場合,例えばクロメート皮膜,非クロム酸系皮膜,クロム酸含有有機樹脂皮膜,クロム酸含有シリケート皮膜などを形成する場合も,前述の表面光沢劣化の問題は同様に発生することがわかった。化成処理皮膜を有しているめっき製品でも,数日すると明度が低下して表面光沢が劣化する現象が,化成処理しない場合と全く同じように,その製造条件によって,発生したりしなかったりするのである。そして,この問題は,本発明によれば,前述したウォータクエンチ帯域への材料温度の管理と,易酸化性元素のめっき浴への添加によって,同様に回避できることがわかった。」 (オ)「【0032】 【実施例】〔実施例1〕 図1に示すような設備で,A1:ほぼ6質量%,Mg:ほぼ3質量%,Ti:ほぼ0.05質量%,B:ほぼ0.01質量%を亜鉛中に含有する溶融Zn基めっき浴を建浴し,めっき層の金属組織が〔Al/Zn/Zn2Mgの三元共晶組織〕の素地中に〔初晶Al相〕更には〔Zn単相〕が混在した組織をもつ含Mg溶融Znめっき鋼板(板厚0.8~1.0mm)を製造した。そのさい,エアジエットクーラー5の出側の材料温度を335℃以下として,該クーラー内でめっき層の凝固を完了させ,気水冷却帯域6a,6b,エアージェットクーラー14およびウォータクエンチ帯域7での冷却条件および通板速度をほぼ一定として,ウォータクエンチ帯域7への入側材料温度を100℃以下とし,スキンパスミルに約70℃以下で通板するようにした。得られた含Mg溶融Znめっき鋼板は,表面光沢が良好でその劣化は生じるような現象は生じなかった。 ・・・ 【0035】〔実施例2〕 前例の経験をもとに,条件を種々変化させた試験でめっき層の表面光沢の劣化の程度を調べた。表面光沢は,分光光度計を用いてLab法のL値で測定した明度(L)で評価した。 【0036】まず,下記の「めっき条件」で溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板を製造するさい,めっき層の凝固完了から材料温度が約30℃まで下記の「冷却条件」でめっき層に気水冷却(ミスト吹付け)とウォータクエンチ(水流照射)を行った。そして,得られた各めっき鋼板の試験片についてめっき直後のL値を測定すると共に,60℃で相対湿度90%に維持した恒温恒湿槽にめっき直後から装入し槽内に20時間保持する処理を行い,この恒温恒湿試験後のL値を測定することによって表面光沢の劣化程度を評価した。 ・・・ 【0039】上記の条件で,水流投射開始温時の材料温度(ウォータクエンチへの入側材料温度)を変えた場合に得られた各めっき鋼板のめっき直後のL値と前記の20時間の恒温恒湿試験後のL値の測定結果を表1に示した。また,各めっき鋼板のめっき層断面の顕微鏡観察からめっき層の金属組織を調べたが,いずれの鋼板も,〔Al/Zn/Zn2Mgの三元共晶組織〕の素地中に〔初晶Al相〕と場合によってはさらに〔Zn単相〕が混在した金属組織(以下,「Zn2Mg系」の金属組織と言う)を有するものであった。 ・・・ 【0042】〔実施例3〕 下記のめっき条件と,めっき層凝固完了後の冷却条件で実施例2と同様にして含Mg溶融Znめっき鋼板を得たときの表面光沢劣化状況を調べ,表2の結果を得た。 【0043】「めっき条件」 処理鋼帯:板厚3.2mmの熱延鋼帯 めっき浴組成:A1=6.3質量%,Mg=3.2質量%,Ti=0.008質量%,B=0.002重量%,残部=Zn めつき浴温:390℃ 目付量:120g/m2 通板速度:表2に示したように変化させた。 【0044】「冷却条件」 (1) 気体冷却(エアージェットクーラーだけで冷却) 使用ノズル:スリット幅5mmの板状ノズル 使用気体:空気(風圧=4kPa) 風量:表2に表示 気体冷却開始材料温度:表2に表示 気体冷却終了材料温度:表2に表示 (2) ウォータクエンチ 水流投射装置:フラットスプレーノズルを板幅方向に150mm間隔で10本配置したヘッダーを7列設置 使用流体:水(水圧=2.2kgf/cm2 ) 水量:表2に表示 水流投射開始時の材料温度:表2に表示 水流投射終了時の材料温度:表2に表示 【0045】 【表2】 [図:0001420345000001.jpg] 【0046】表2の結果から,本例においても実施例2と同様に,ウォータクエンチへの入側材料温度が105℃以上の時には,その温度が高くなるに従って,めっき後の明度L値の低下傾向が大きくなるが,該温度が105℃未満の時には,めっき直後の明度が恒温恒湿試験20時間後もそのまま維持されていることがわかる。また,各めっき鋼板のめっき層断面の顕微鏡観察からめっき層の金属組織を調べたが,いずれの鋼板も安定して「Zn2Mg系」系の金属組織が得られた。 【0047】〔実施例4〕 実施例3のNo.B-2~No.B-5について,ウォータクエンチ後のめっき表面に下記の条件で化成処理し,実施例2と同様にして,処理直後と恒温恒湿試験20時間後の明度を調べ,その結果を表3に示した。 ・・・ 【0050】〔化成処理条件C〕 塗布方法:ロールコーター方式 処理液:リン酸マグネシウム50g/L,フッ化チタンカリウム10g/L,有機酸3g/Lを主成分とする水溶液 金属成分付着量:50mg/m2 ・・・ 【0052】【表3】 [図:0001420345000002.jpg] 【0053】表3の結果に見られるように,いずれの化成処理でも,ウォータクエンチへの入側材料温度が105℃以上の時には,めっき後の経時変化によって明度L値が低下するが,該温度が105℃未満の時には,めっき直後の明度が時間を経過してもそのまま維持されていることがわかる。 ・・・ 【0060】 【発明の効果】以上説明したように,本発明によると,含Mg溶融Znめっき鋼板特有の表面光沢劣化の現象が効果的に防止できる。したがって,耐食性が良好で且つ表面光沢保持性に優れた含Mg溶融Znめっき鋼板を提供できる。」 (カ)「【図1】 [図:0001420345000003.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 上記ア(ア)~(カ)に摘記した甲1の記載事項を総合勘案し、特に実施例3のNo.B-3について化成処理条件Cで化成処理した実施例4による本発明例に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「めっき浴組成:Al=6.3質量%、Mg=3.2質量%、Ti=0.008質量%、B=0.002質量%、残部=Znの含Mg溶融Zn基めっき浴3に板厚3.2mmの熱延鋼帯2を連続的に浸漬して引き上げたあと、エアジェットクーラー5による凝固完了後のめっき層表面を水流と接触させながら水冷するウォータクエンチ帯域7に連続的に通板するさい、冷却開始材料温度が185℃、冷却終了材料温度が140℃の気体冷却を行ったあと、水流投射開始時の材料温度が102℃、水流投射終了時の材料温度が30℃のウォータクエンチを行ってめっき層表面の光沢劣化を抑制し、ウォータクエンチ帯域7を通板したあと、さらに化成処理帯域に通板させ、リン酸マグネシウム50g/L、フッ化チタンカリウム10g/L、有機酸3g/Lを主成分とする水溶液である処理液をロールコーター11を用いたロールコーター方式により塗布する、含Mg溶融Znめっき鋼板の製造法。」(以下、「甲1製法発明」という。) 「甲1製法発明を実施するための製造設備。」(以下、「甲1設備発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1製法発明とを対比する。 (ア)甲1製法発明における、「化成処理帯域」で使用される「リン酸マグネシウム50g/L、フッ化チタンカリウム10g/L、有機酸3g/Lを主成分とする水溶液である処理液」は、リン酸塩及びフッ酸塩を使用するものであり、クロム酸塩を使用するものではないから、本件発明1における「クロムフリー化成処理液」に相当する。 (イ)上記(ア)を踏まえると、甲1製法発明における「含Mg溶融Zn基めっき浴に板厚3.2mmの熱延鋼帯を連続的に浸漬して引き上げたあと、凝固完了後のめっき層表面を水流と接触させながら水冷するウォータクエンチ帯域」「を通板したあと、さらに化成処理帯域に通板させ、リン酸マグネシウム50g/L、フッ化チタンカリウム10g/L、有機酸3g/Lを主成分とする水溶液である処理液をロールコーター11を用いたロールコーター方式により塗布する」工程は、本件発明1における「ロールコータにより、クロムフリー化成処理液をめっき鋼板に塗布する化成処理工程」に相当する。 (ウ)上記(1)ア(オ)に摘記した【0015】には、「AlとMgを比較的多量に含有する溶融Zn-Al-Mgめっき鋼板(以下「含Mg溶融Znめっき鋼板」と略称する)」と記載されているから、甲1製法発明における「含Mg溶融Znめっき鋼板」は、本件発明1における「Zn-Al-Mg系めっき鋼板」に相当する。 (エ)本件発明1における「ロールコータに進入する際の前記めっき鋼板の表面温度を30℃以下とする温度調整工程」「では、前記めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う」ことと、甲1製法発明における「含Mg溶融Zn基めっき浴3に板厚3.2mmの熱延鋼帯2を連続的に浸漬して引き上げたあと、エアジェットクーラー5による凝固完了後のめっき層表面を水流と接触させながら水冷するウォータクエンチ帯域7に連続的に通板するさい、冷却開始材料温度が185℃、冷却終了材料温度が140℃の気体冷却を行ったあと、水流投射開始時の材料温度が102℃、水流投射終了時の材料温度が30℃のウォータクエンチを行」うこととは、「ロールコータに進入する」前の「めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う」限りにおいて共通する。 (オ)甲1製法発明における「さらに化成処理帯域に通板させ、リン酸マグネシウム50g/L、フッ化チタンカリウム10g/L、有機酸3g/Lを主成分とする水溶液である処理液をロールコーター11を用いたロールコーター方式により塗布する、含Mg溶融Znめっき鋼板の製造法」は、本件発明1における「化成処理めっき鋼板の製造方法」に相当する。 (カ)そうすると、本件発明1と甲1製法発明とは、 「ロールコータにより、クロムフリー化成処理液をめっき鋼板に塗布する化成処理工程 を含み、 前記めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板であり、 前記ロールコータに進入する前の前記めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う、 化成処理めっき鋼板の製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件発明1における「ロールコータ」は、「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを有する」のに対し、甲1製法発明における「ロールコーター11」は、上記アプリケータロールを有するのか不明である点。 <相違点1-2> 本件発明1に係る「製造方法」は、「ロールコータに進入する際の前記めっき鋼板の表面温度を30℃以下とする温度調整工程」「を含」むものであるのに対し、甲1製法発明に係る「製造法」では、「水流投射終了時の材料温度が30℃のウォータクエンチを行」うものの、「ウォータクエンチ帯域7を通板したあと、さらに化成処理帯域に通板させ、」「処理液をロールコーター11を用いたロールコーター方式により塗布する」際のめっき鋼板の表面温度が30℃以下であるのか不明である点。 イ 相違点についての判断 (ア)上記相違点1-1について検討すると、甲1に「ロールコーター11」の詳細は何ら記載されていないし、「ロールコーター」とは「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを有する」ものであるとの技術常識も存在しないから、上記相違点1-1は実質的な相違点である。 (イ)次に、上記相違点1-1の容易想到性について検討すると、上記(ア)で述べたとおり、甲1に「ロールコーター11」の詳細は何ら記載されていないところ、たとえ「ロールコーター」とは「アプリケータロールを有する」ものであるとの技術常識が存在していたとしても、当該アプリケータロールについて「ウレタンゴムを表層の主成分とする」ことは甲1に記載も示唆もされておらず、また、ロールコーターのアプリケータロールの材料としてウレタンゴムを用いることが好ましいとの技術常識も存在しないから、甲1製法発明において、上記相違点1-1に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)一方、申立人は、特許異議申立書の第22ページにおいて、以下のとおり主張している。 「「化成処理液等を鋼鈑に塗布するために使用されるロールコータのアプリケータロールの材料として、ウレタンゴムを用いること」は、当業者にとって一般的で且つ周知な技術であるといえる(必要であれば、甲第3号証の特許請求の範囲、「0005」に、「一般的なアプリケータロールでは、ライニングゴムとしてポリエステル系およびポリエーテル系などのポリウレタンゴムが使用されていること」や、その他数多くの文献(例えば、特開平6-106109号公報、特開平7-241517号公報、特開2006-167626号公報、特開2013-99708号公報、特開2013-126655号公報、特開2015-217374号公報、特開2017-43818号公報、その他多くの文献)にウレタンゴムをアプリケータロールに使用していること等を参照。)。」(「(ii)相違点の検討」) (エ)ここで、申立人が主張するように、「「化成処理液等を鋼鈑に塗布するために使用されるロールコータのアプリケータロールの材料として、ウレタンゴムを用いること」は、当業者にとって一般的で且つ周知な技術である」ことが事実であると仮定して、甲1製法発明において、上記相違点1-1に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるといえても、本件明細書の【0008】に記載の「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを用いる場合でも、アプリケータロールの表層の腐食を抑え、その腐食により化成処理めっき鋼板に白色ムラが生じることを抑えることができる」との効果は、甲1はもちろんのこと、甲3を始めとする上記(ウ)で挙げられた文献のいずれにも記載されていないため、当業者であっても予測し得ない顕著なものであると認められる。 (オ)そうすると、上記相違点1-2について検討するまでもなく、上記(エ)の効果の点からしても、本件発明1は、甲1製法発明及び甲3等に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲3等に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明2~4も同様に、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明5について ア 対比 本件発明5と甲1設備発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点1-1’> 本件発明5における「ロールコータ」は、「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを有」するのに対し、甲1設備発明における「ロールコーター11」は、上記アプリケータロールを有するのか不明である点。 イ 相違点についての判断 (ア)上記相違点1-1’について検討すると、上記相違点1-1’は上記(2)ア(カ)に示した相違点1-1と実質的に同じである。 (イ)そうすると、上記(2)イで検討したのと同様の理由により、本件発明5は、甲1設備発明及び甲3等に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明5は、甲1に記載された発明及び甲3等に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件発明6について 本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(4)ウのとおり、本件発明5が、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明6も同様に、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由1についてのまとめ したがって、本件発明1~6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由1によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(進歩性) (1)甲2の記載事項及び甲2に記載された発明 ア 甲2の記載事項 甲2には、「クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置及び製造方法」(発明の名称)に関して、次の記載がある。 (ア)「【請求項1】 めっき鋼板にクロムフリー化成処理液を塗布するアプリケータロールを備えるクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置であって、 前記アプリケータロールが耐酸性を有し、 前記アプリケータロールに接触可能なブレードを更に備えており、且つ前記ブレードが、前記めっき鋼板のめっき成分とクロムフリー化成処理液との反応による生成物を除去することを特徴とするクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置。 【請求項2】 前記アプリケータロールは、前記クロムフリー化成処理液と接触させた際に、硬度、重量、引張強度及び引張伸びの変化率が、ウレタンゴムを主成分として含む表層を有するロールと同等以下であることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置。 【請求項3】 前記アプリケータロールは、エチレンプロピレンジエンゴムを主成分として含む表層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置。 ・・・ 【請求項5】 前記クロムフリー化成処理液は、リン酸、フッ酸及びそれらの塩の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置。 【請求項6】 前記めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置。 ・・・ 【請求項8】 めっき鋼板にクロムフリー化成処理を行う前に、請求項1~7のいずれか一項に記載の化成処理めっき鋼板の製造装置を用い、前記アプリケータロールの表面に前記ブレードを接触させることにより、前記めっき鋼板のめっき成分と前記クロムフリー化成処理液との反応による生成物を除去することを特徴とするクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造方法。」 (イ)「【0003】 また、化成処理めっき鋼板の実際の製造ラインでは、クロム化成処理用の塗布装置とクロムフリー化成処理用の塗布装置とがそれぞれ設けられ、これらの塗布装置をめっき鋼板の通板時に選択して使用することにより、クロム化成処理及びクロムフリー化成処理が繰り返し連続的に行われている。このような製造ラインにおいて、めっき鋼板にクロム化成処理を行う場合、クロムフリー化成処理用の塗布装置は待機状態となる。待機状態では、アプリケータロールがめっき鋼板から離れた位置で保持されており、コーターパンとアプリケータロールとの間をクロムフリー化成処理液が循環した状態となる。クロム化成処理からクロムフリー化成処理に切り替える場合、クロム化成処理用の塗布装置を待機状態とし、クロムフリー化成処理用の塗布装置のアプリケータロールをめっき鋼板と接触させる。 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上記のような製造ラインにおいて、クロム化成処理からクロムフリー化成処理に切り替える場合、切り替え直後のめっき鋼板の全体にわたって白色ムラが生じ、品質の劣化及び歩留の低下が起こることがある。この白色ムラの原因を調査したところ、めっき鋼板のめっき成分とクロムフリー化成処理液との反応による生成物、及びアプリケータロールの腐食分解物が、アプリケータロールを介してめっき鋼板の表面に付着することが主な原因であることがわかった。 白色ムラは、クロム化成処理からクロムフリー化成処理に切り替える場合に主に起こるため、クロム化成処理及びクロムフリー化成処理をそれぞれ集約し、クロム化成処理からクロムフリー化成処理への切り替えを少なくすれば良いと考えられる。しかしながら、この方法では、幅及び/又は厚さが同一でないめっき鋼板を、繋ぎ板を介して溶接にて接続する必要がある。そのため、ラインの生産能率が低下すると共に、汚れも付着し易くなり、製品品質が低下することもある。 【0006】 本発明は、前記のような問題を解決するためになされたものであり、めっき鋼板のクロムフリー化成処理時に生じる白色ムラを抑制することができるクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、耐酸性を有するアプリケータロールを用いることでアプリケータロールの腐食を抑制すると共に、めっき鋼板のめっき成分とクロムフリー化成処理液との反応による生成物を除去するブレードをアプリケータロールに設けることにより、白色ムラの発生を低減し得ることを見出した。」 (ウ)「【0013】 本発明のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置は、めっき鋼板にクロムフリー化成処理液を塗布するアプリケータロールを備える。 図1は、本発明の一実施形態として、めっき鋼板1の上面及び下面にクロムフリー化成処理液を塗布するためのクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置を示す。めっき鋼板1の上面側には、めっき鋼板1にクロムフリー化成処理液を転写するアプリケータロール2と、コーターパン5に溜められたクロムフリー化成処理液を汲み上げるピックアップロール3と、アプリケータロール2とピックアップロール3との間に設けられ、ピックアップロール3で汲み上げたクロムフリー化成処理液をアプリケータロール2に転写するトランスファロール4とを備える3段ロールコータが設けられている。他方、めっき鋼板1の下面側には、鋼板1にクロムフリー化成処理液を転写するアプリケータロール2と、コーターパン5に溜められたクロムフリー化成処理液を汲み上げてアプリケータロール2に転写するピックアップロール3とを備える2段ロールコータが設けられている。そして、上面側及び下面側の各ロールコータは、めっき鋼板1を介して対向するように設けられている。なお、図1では、めっき鋼板1の上面側に3段ロールコータ、めっき鋼板1の下面側に2段ロールコータを用いた例を示したが、上面側及び下面側に用いられるロールコータの種類は当該組み合わせに限定されるものではない。 【0014】 アプリケータロール2は、耐酸性を有していれば特に限定されない。ここで、本明細書において「耐酸性を有するアプリケータロール2」とは、アプリケータロール2をクロムフリー化成処理液に40℃で7日間接触させた場合に、表面に分解物が目視にて確認されないものを意味する。耐酸性を有するアプリケータロール2を用いることにより、クロムフリー化成処理液との接触によるアプリケータロール2の腐食抑制効果を高めることができるため、めっき鋼板1のクロムフリー化成処理時に生じる白色ムラを抑制することができる。 【0015】 本発明に用いるのに好ましいアプリケータロール2としては、クロムフリー化成処理液と接触させた際(例えば、クロムフリー化成処理液に40℃で7日間接触させた際)に、硬度、重量、引張強度及び引張伸びの変化率が、ウレタンゴムを主成分として含む表層を有するロールと同等以下であるものが好ましい。このような特性を有するアプリケータロール2としては、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などを主成分として含む表層を有するロールが挙げられる。ここで、本明細書において「主成分」とは、成分全体に占める割合が50質量%を超える成分のことを意味する。 【0016】 ここで、各種ロールをクロムフリー化成処理液に40℃で7日間接触させた際の硬度、重量、引張強度及び引張伸びの変化率、並びに分解物の発生の有無の結果を下記の表1に示す。表1中、硬度、重量、引張強度及び引張伸びの変化率の結果は、ウレタンゴムを主成分として含む表層を有するロールAに対する相対評価であり、◎は変化率がロールAよりも小さいこと、○は変化率がロールAと同等であること、△は変化率がロールAよりも大きいことを意味する。 【0017】 【表1】 [図:0001420345000004.jpg] 【0018】 上記の評価において、硬度(ショア硬さ)は、JIS K6253-3に準拠し、タイプAデュロメータを用い、全ての試験片の寸法(試験片の厚さを6.0mm以上)及び測定温度等を同じにして測定した。重量は重量計によって測定した。引張強度及び引張伸びは、JIS K6251に準拠し、引張試験機を用い、全ての試験片の寸法及び測定温度等を同じにして測定した。分解物の発生の有無は目視にて確認した。 【0019】 表1に示されているように、EPDMを主成分として含む表層を有するロールB、フッ素ゴムを主成分として含む表層を有するロールC、又は合成ゴムを主成分として含む表層を有するロールDが耐酸性を有する。その中でも、EPDMを主成分として含む表層を有するロールB又はフッ素ゴムを主成分として含む表層を有するロールCが耐酸性に優れるため好ましく、EPDMを主成分として含む表層を有するロールBがコスト面にも優れるためより好ましい。 【0020】 また、アプリケータロール2には、アプリケータロール2に接触可能なブレード6が更に設けられている。ブレード6は、アプリケータロール2の表面に付着した、めっき鋼板1のめっき成分とクロムフリー化成処理液との反応による生成物を除去する機能を有する。ブレード6は、ドクターブレード又はドクターナイフとも呼ばれ、回転中のアプリケータロール2と接触させることにより、アプリケータロール2の表面に付着した生成物を除去する。 【0021】 ブレード6としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。その中でもブレード6は、先端(刃先)が、フェルト、不織布又はスポンジであることが好ましい。このような先端を有するブレード6であれば、吸水性が高く且つ適度な柔軟性を有するため、アプリケータロール2の表面に付着した生成物の除去能力が高くなる。不織布としてはナイロン製の不織布、スポンジとしてはPTFE、PFA、FEP製のスポンジなどが特に好ましい。 【0022】 ブレード6は、アーム等の支持部材(図示していない)により、アプリケータロール2の表面に押し付けられ、ブレード6の先端(刃先)がアプリケータロール2の表面に適当な角度で接触するように支持される。 また、ブレード6は、アプリケータロール2の軸方向の全体にわたる幅を有していてもよいが、幅狭のものをアプリケータロール2の軸方向に移動可能としてもよい。アプリケータロール2の軸方向に移動可能な幅狭のブレード6を用いることにより、アプリケータロール2の表面にブレード6を均一に接触させ易くなるため、アプリケータロール2の表面に付着した生成物の除去能力が高くなる。 【0023】 ブレード6は、クロム化成処理及びクロムフリー化成処理が繰り返し連続的に行われる製造ラインにおいて、クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置の待機状態の際にアプリケータロール2と接触させる。これにより、クロム化成処理からクロムフリー化成処理に切り替えた場合に、切り替え直後のめっき鋼板1の全体にわたって生じる白色ムラを低減することができる。 【0024】 ピックアップロール3及びトランスファロール4としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。例えば、クロムめっきなどの硬質めっきされたメタルロールをピックアップロール3及びトランスファロール4として用いることができる。 【0025】 本発明のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置に用いることが可能なクロムフリー化成処理液としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。クロムフリー化成処理液の例としては、リン酸、フッ酸及びそれらの塩の少なくとも1種を含む処理液が挙げられる。このような成分を含むクロムフリー化成処理液は、めっき鋼板1のめっき成分との反応生成物(例えば、リン酸アルミ、フッ化アルミ、リン酸マグネシウム等)を生じさせる恐れがあるものの、この反応生成物はブレード6によって除去することができる。 【0026】 本発明のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置に用いることが可能なめっき鋼板1としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。めっき鋼板1の例としては、Zn-Al系めっき鋼板、Zn-Mg系めっき鋼板、Zn-Ni系めっき、Zn-Al-Mg系めっき鋼板などの亜鉛系めっき鋼板が挙げられる。」 (エ)「【実施例】 【0027】 以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例に限定されるものではない。 (実施例1) アプリケータロール2としてEPDMを主成分として含む表層を有するロールB、ピックアップロール3及びトランスファロール4としてクロムめっきが施されたメタルロール、ブレード6としてフェルト(日本フェルト株式会社製CA-1)をそれぞれ用い、図1に示すクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置を作製した。 このクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置を、クロム化成処理及びクロムフリー化成処理が繰り返し連続的に行われる製造ラインに導入し、クロム化成処理を行った後に、クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置を用いてクロムフリー化成処理を行った。この製造ラインにおいて、クロム化成処理からクロムフリー化成処理への切り替えを少なくとも3回行った。また、クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置の待機状態の際にブレード6をアプリケータロール2と接触させた。ここで、クロムフリー化成処理液として、リン酸を含むクロムフリー化成処理液を用いた。また、めっき鋼板1として、Zn-Al-Mg系めっき鋼板を用いた。 【0028】 (比較例1) アプリケータロール2としてウレタンゴムを主成分として含む表層を有するロールAを用い、ブレード6を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の構成を有するクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置を作製し、実施例1と同様にしてクロムフリー化成処理を行った。 【0029】 (比較例2) ブレード6を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の構成を有するクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置を作製し、実施例1と同様にしてクロムフリー化成処理を行った。 【0030】 上記の実施例及び比較例において、クロム化成処理からクロムフリー化成処理に切り替えた際に、めっき鋼板1に生じる白色ムラの長さを目視にて評価した。白色ムラの長さは、各切り替え時の評価結果の平均値とした。 その結果、白色ムラの長さが、比較例1では27m、比較例2では6mであったのに対し、実施例1では3mと極めて短くなった。すなわち、耐酸性を有するアプリケータロール2とブレード6とを組み合わせて用いることにより、クロム化成処理からクロムフリー化成処理に切り替えた際の白色ムラの発生を低減することができた。 【0031】 以上の結果からわかるように、本発明によれば、めっき鋼板1のクロムフリー化成処理時に生じる白色ムラを抑制することができるクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置及び製造方法を提供することができる。」 (オ)「【図1】 [図:0001420345000005.jpg] 」 イ 甲2に記載された発明 上記ア(ア)~(オ)に摘記した甲2の記載事項を総合勘案し、特に、アプリケータロール2としてウレタンゴムを主成分として含む表層を有するロールAを用い、ブレード6を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の構成を有するように作製された比較例1のクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置に着目すると、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。 「Zn-Al-Mg系めっき鋼板1にクロムフリー化成処理液を塗布するアプリケータロール2を備えるクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置であって、 前記アプリケータロール2は、ウレタンゴムを主成分として含む表層を有し、 前記クロムフリー化成処理液は、リン酸を含むクロムフリー化成処理液を用いた、クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置。」(以下、「甲2装置発明」という。) 「甲2装置発明を利用してクロムフリー化成処理を行うクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造方法。」(以下、「甲2製法発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2製法発明とを対比する。 (ア)上記(1)ア(ウ)に摘記した【0013】によれば、甲2製法発明における「アプリケータロール2」は、ロールコータに備えられるものであると認められるから、甲2製法発明における「めっき鋼板1にクロムフリー化成処理液を塗布する」「ウレタンゴムを主成分として含む表層を有」する「アプリケータロール2を備えるクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置」「を利用してクロムフリー化成処理を行う」工程は、本件発明1における「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを有するロールコータにより、クロムフリー化成処理液をめっき鋼板に塗布する化成処理工程」に相当する。 (イ)甲2製法発明における「クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造方法」は、本件発明1における「化成処理めっき鋼板の製造方法」に相当する。 (ウ)そうすると、本件発明1と甲2製法発明とは、 「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを有するロールコータにより、クロムフリー化成処理液をめっき鋼板に塗布する化成処理工程 を含み、 前記めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板である、 化成処理めっき鋼板の製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点2> 本件発明1に係る「化成処理めっき鋼板の製造方法」は、「ロールコータに進入する際の前記めっき鋼板の表面温度を30℃以下とする温度調整工程」を含み、「前記温度調整工程では、前記めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う」のに対し、甲2製法発明に係る「クロムフリー化成処理を行うクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造方法」は、上記「温度調整工程」を有するのか不明である点。 イ 相違点についての判断 (ア)上記相違点2について検討すると、上記相違点2が実質的な相違点であることは明らかである。 (イ)次に、上記相違点2の容易想到性について検討すると、甲2製法発明の認定の基礎となった比較例1で用いられるロールAは、上記(1)ア(ウ)に摘記した【0016】、【0017】(【表1】)によれば、「クロムフリー化成処理液に40℃で7日間接触させた際の」「分解物の発生の有無の結果」が「有」のものであり、上記(1)ア(イ)に摘記した【0005】、【0006】に記載の課題(「めっき鋼板のクロムフリー化成処理時に生じる白色ムラを抑制することができるクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置及び製造方法を提供すること」)を解決できないものである。 (ウ)一方、上記(1)ア(イ)に摘記した【0007】には、上記(イ)の課題を解決するための手段として、「耐酸性を有するアプリケータロールを用いることでアプリケータロールの腐食を抑制すると共に、めっき鋼板のめっき成分とクロムフリー化成処理液との反応による生成物を除去するブレードをアプリケータロールに設けること」が記載されている。 (エ)そうすると、甲2に接した当業者が上記比較例1(甲2製法発明)に着目すること自体が通常考え難く、仮に着目したとしても、まず甲2製法発明における「ウレタンゴムを主成分として含む表層を有」する「アプリケータロール」を、「耐酸性を有するアプリケータロール」に変更した上で、「めっき鋼板のめっき成分とクロムフリー化成処理液との反応による生成物を除去するブレードをアプリケータロールに設けること」を考えるのが自然である(ただし、この場合、「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロール」を使用するか否かの点で新たに相違することとなる。)。 (オ)そして、甲2には、ロールコータに進入する際のめっき鋼板の表面温度やめっき鋼板に対する冷却について記載も示唆もされていないから、甲2製法発明において、上記(エ)に示した「変更」をすることなく、上記相違点2に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 (カ)a なお、申立人は、特許異議申立書の第24~25ページにおいて、「甲2発明では、「ウレタンゴムを主成分として含む表層を有するロールを、クロムフリー化成処理液に40℃で7日間接触させた場合、ロールに腐食分解物が生じること」が開示されている(明細書の[0014]、[0015]、[0017])。そのため、当業者は、アプリケータロールの腐食を抑制する観点からは、少なくとも40℃よりも低い温度で、クロメート処理液とアプリケータロールを接触させる必要があると考える動機が存在する。」(「(ii)相違点の検討」)と主張している。 b しかしながら、上記(1)ア(ウ)に摘記した【0014】には、「本明細書において「耐酸性を有するアプリケータロール2」とは、アプリケータロール2をクロムフリー化成処理液に40℃で7日間接触させた場合に、表面に分解物が目視にて確認されないものを意味する。」と記載されているのであり、「40℃」は「耐酸性」の定義に関する温度であるからこれを変更する理由はなく、「当業者は、アプリケータロールの腐食を抑制する観点からは、少なくとも40℃よりも低い温度で、クロメート処理液とアプリケータロールを接触させる必要があると考える動機が存在する」とは認められないため、上記aの主張を採用することはできない。 (キ)a また、申立人は、特許異議申立書の第24~25ページにおいて、「甲2発明の実施に際して、上記相違点(構成C及びE)(当審注:上記相違点2と同旨)に係る構成を採用することは、以下のとおり、甲第4号証又は甲第1号証を参照にすることで、当業者が容易に想到できたものである。」(「(ii)相違点の検討」)とも主張している。 b しかしながら、甲4に「めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う」ことは記載も示唆もされていない。 c また、上記1(1)イで認定したとおり、甲1には甲1製法発明が記載されており、甲1製法発明は「冷却開始材料温度が185℃、冷却終了材料温度が140℃の気体冷却を行ったあと、水流投射開始時の材料温度が102℃、水流投射終了時の材料温度が30℃のウォータクエンチを行」うものである。しかしながら、上記1(1)ア(イ)に摘記した【0004】、【0006】に記載のとおり、甲1に記載された発明は、「溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼板特有に現れる」「製造直後のめっき表面は美麗な金属光沢を有していても,時間を経るにつれて(最も早い場合は2~3日後,場合によっては4~7日後に)やや黒っぽい緩衝色に似た色に変色する」との「表面光沢の劣化を抑制できるような手段を見いだすことを課題としたものであ」り、上記(イ)に示した課題(「めっき鋼板のクロムフリー化成処理時に生じる白色ムラを抑制することができるクロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置及び製造方法を提供すること」)とは異なるから、甲2製法発明において、「めっき鋼板のクロムフリー化成処理時に生じる白色ムラを抑制する」に当たり、上記1(1)ア(ア)に摘記した【請求項1】と【請求項5】との関係から明らかなように、クロムフリー化成処理を行うことが必須ではない上に発明が解決しようとする課題も異なる甲1を参照する動機付けがあるとはいえない。 d したがって、上記aの主張を採用することはできない。 (ク)よって、甲2製法発明において、上記相違点2に係る発明特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明1が、甲2に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明2~4も同様に、甲2に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明5について ア 対比 本件発明5と甲2装置発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点2’> 本件発明5に係る「クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造設備」は、「ロールコータに進入する際の前記めっき鋼板の表面温度を30℃以下とする温度調整設備」を備え、「前記温度調整設備では、前記めっき鋼板に対して空冷を行った後に水冷を行う」のに対し、甲2装置発明に係る「クロムフリー化成処理めっき鋼板の製造装置」は、上記「温度調整設備」を有するのか不明である点。 イ 相違点についての判断 (ア)上記相違点2’について検討すると、上記相違点2’は上記(2)ア(ウ)に示した相違点2と実質的に同じである。 (イ)そうすると、上記(2)イで検討したのと同様の理由により、本件発明5は、甲2装置発明並びに甲4に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明5は、甲2に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件発明6について 本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものであるから、上記(4)ウのとおり、本件発明5が、甲2に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明6も同様に、甲2に記載された発明並びに甲4に記載された事項及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)申立理由2についてのまとめ したがって、本件発明1~6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由2によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(サポート要件) (1)課題 本件明細書の【0005】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを用いる場合でも、アプリケータロールの表層の腐食を抑え、その腐食により化成処理めっき鋼板に白色ムラが生じることを抑えることができる化成処理めっき鋼板の製造方法及び製造設備を提供すること」であると認められる。 (2)判断 ア 本件明細書の記載(特に【0008】、【0028】、【0029】、【0034】~【0036】)及び本件図面(【図1】~【図3】)によれば、化成処理めっき鋼板の製造方法及び製造設備において、「ロールコータに進入する際のめっき鋼板の表面温度を30℃以下とする」との要件を備えることにより、「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを用いる場合でも、アプリケータロールの表層の腐食を抑え、その腐食により化成処理めっき鋼板に白色ムラが生じることを抑えることができる」ため、上記(1)の課題を解決できることが理解できる。 イ そして、本件発明1、5は上記アの要件を備えるものであるから、上記(1)の課題を解決することができると認められる。 ウ また、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明2~4及び本件発明5の発明特定事項を全て含む本件発明6も、同様に上記(1)の課題を解決することができると認められる。 エ よって、本件特許の請求項1~6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由3によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書の第27ページにおいて、申立理由3(サポート要件)及び申立理由4(実施可能要件)について以下のとおり主張している。 「そして、本件特許発明1では、「アプリケータロールの表層の主成分がウレタンゴムである」こと、及び、「クロムフリー化成処理液により化成処理を行う」ことのみが規定されている。 しかしながら、本件特許発明1に規定の「ウレタンゴム」が使用できる全ての「クロムフリー化成処理液」に対して腐食する訳ではなく、実際にウレタンゴムの腐食が生じる「ウレタンゴムの種類」と「化成処理液の種類」の組み合わせが規定されなければ、本件特許の課題自体が存在しないことになる。さらに、これらの「ウレタンゴムの種類」と「化成処理液の種類」の組み合わせは、明細書の中でも記載、例示されておらず、当業者がめっき鋼板の冷却条件以外にどのような条件で「化成処理工程」を実施すればいいのか理解できない。 そのため、本件特許発明1~6は、本件特許発明の課題のない態様までも包含するものであり、本件特許発明の課題を確実に解決できるものとはいい難く、また、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1~6を実施できる程度に明確且つ十分に記載されたものではない。」 イ そこで、上記アの主張について検討すると、「ウレタンゴムの種類」と「化成処理液の種類」の組合せについては以下の3類型が考えられる。 類型1:ロールコータに進入する際のめっき鋼板の表面温度が「30℃超」であっても「30℃以下」であっても、アプリケータロールの表層の腐食を抑えられる組合せ 類型2:ロールコータに進入する際のめっき鋼板の表面温度が「30℃以下」であればアプリケータロールの表層の腐食を抑えられる一方、上記表面温度が「30℃超」であればアプリケータロールの表層の腐食を抑えられない組合せ 類型3:ロールコータに進入する際のめっき鋼板の表面温度が「30℃超」であっても「30℃以下」であっても、アプリケータロールの表層の腐食を抑えられない組合せ ウ(ア)上記類型1について、ロールコータに進入する際のめっき鋼板の表面温度が「30℃超」であるか「30℃以下」であるかによらず、アプリケータロールの表層の腐食を抑えられるのであれば、その腐食により化成処理めっき鋼板に白色ムラが生じることを抑えることができているといえるから、上記(1)の課題を解決できていると認められる。 (イ)そして、申立人が主張するのは専ら上記類型1についてであるため、申立理由3についての上記アの主張を採用することはできない。 エ(ア)なお、念のため、上記類型2、3についても以下検討する。 (イ)上記類型2について、上記(2)アに示したとおり、「ロールコータに進入する際のめっき鋼板の表面温度を30℃以下とする」との要件を備えることにより、「ウレタンゴムを表層の主成分とするアプリケータロールを用いる場合でも、アプリケータロールの表層の腐食を抑え、その腐食により化成処理めっき鋼板に白色ムラが生じることを抑えることができる」ため、上記(1)の課題を解決できる。 (ウ)一方、上記類型3について、申立人は、そのような組合せが実際に存在し、上記(1)の課題が解決されないのではないかとの疑義が生じる程度の具体的な根拠を提示していない。 (4)申立理由3についてのまとめ したがって、申立理由3によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4(実施可能要件) (1)判断 ア 本件明細書(特に【0011】~【0036】)及び本件図面(【図1】~【図3】)では、本件発明1~4に係る化成処理めっき鋼板の製造方法及び本件発明5、6に係る化成処理めっき鋼板の製造設備について具体的に説明がされているから、当業者が本件発明1~6を実施することに特段の困難性は認められない。 イ よって、本件発明1~6について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえ、特許法第36条第4項第1号に適合するものであるから、申立理由4によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、申立理由4についても上記3(3)アのとおり主張している。 イ そこで、上記アの主張について検討すると、申立人が主張するように、「「ウレタンゴムの種類」と「化成処理液の種類」の組み合わせは、明細書の中でも記載、例示されて」いないことは事実である。 ウ しかしながら、本件発明1、5において、「「アプリケータロールの表層の主成分がウレタンゴムである」こと、及び、「クロムフリー化成処理液により化成処理を行う」ことのみが規定されている」ということは、取りも直さず本件発明1、5が、「「ウレタンゴムの種類」と「化成処理液の種類」の組み合わせ」を問うものではないことを意味する。 エ そして、「ウレタンゴム」自体はありふれた材料であるから、当技術分野において周知のウレタンゴムを適宜使用すればよいといえるし、「化成処理液」については本件明細書の【0016】に「クロムフリー化成処理液の例としては、リン酸、フッ酸及びそれらの塩の少なくとも1種を含む処理液が挙げられる。」と記載されているから、少なくともこの条件を満たす化成処理液を使用すればよいといえる。 オ そうすると、上記3(3)イに示した類型1、2に該当する「「ウレタンゴムの種類」と「化成処理液の種類」の組み合わせ」を選択するために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるとは認められない。 カ よって、申立理由4についての上記アの主張を採用することはできない。 (3)申立理由4についてのまとめ したがって、申立理由4によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許異議の申立ての理由のいずれによっても取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700883

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