特許異議申立
2024-700869
周波数選択反射板および反射構造体
- 審判番号
- 2024-700869
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-195031
- 登録番号
- 7448083
- 請求日
- 2024年09月11日
- 審決日
- 2024年10月29日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 上田 翔太
- 分類
- P1652.121-Y (H01Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7448083号発明「周波数選択反射板および反射構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7448083号の請求項1、4、7、11ないし16に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7448083号(以下「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)3月4日(優先権主張 令和3年3月4日、同年6月14日)を国際出願日とする出願である特願2023-503976号の一部を令和5年11月16日に新たな特許出願としたものであって、令和6年3月4日にその特許権の設定登録がされ、同年3月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1、4、7及び11~16に係る特許に対し、令和6年9月11日に特許異議申立人 金澤 毅(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
前記特許異議の申立てのために提出された特許異議申立書を、以下では単に「申立書」という。
第2 本件の特許請求の範囲と本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1、4、7及び11~16に係る発明(以下では請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、他の請求項に係る発明についても同様とし、本件発明1、4、7及び11~16を総称して「本件発明」という。)は、その請求項に記載されたとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のために、本件発明を以下のように分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。
【請求項1】
1A1 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板と、
1A2 前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材と、
1A を有する反射構造体であって、
1B 前記保護部材の厚さが、前記保護部材内を伝搬する前記電磁波の実効波長の1/4未満であり、
1C 前記保護部材は、保護シートを有し、
1D 前記保護シートは、表面保護層を有し、
1E 前記表面保護層の表面における水との接触角が90°以上である、
1F 反射構造体。
【請求項4】
4A1 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板と、
4A2 前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材と、
4A を有する反射構造体であって、
4B 前記保護部材の厚さが、前記保護部材内を伝搬する前記電磁波の実効波長の1/4未満であり、
4C 前記保護部材は、保護シートを有し、
4D 前記保護シートは、樹脂層を有し、
4E 前記樹脂層の表面における水との接触角が90°以上である、
4F 反射構造体。
【請求項7】
7A 前記樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、
7B 請求項3から請求項5までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項11】
11A1 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板と、
11A2 前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材と、
11A を有する反射構造体であって、
11B 前記保護部材の厚さが、前記保護部材内を伝搬する前記電磁波の実効波長の1/4未満であり、
11C 前記保護部材は、保護シートを有し、
11D 前記保護シートは、樹脂を含有し、紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する、
11E 反射構造体。
【請求項12】
12A1 特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板と、
12A2 前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材と、
12A を有する反射構造体であって、
12B 前記保護部材の厚さが、前記保護部材内を伝搬する前記電磁波の実効波長の1/4未満であり、
12C 前記周波数選択反射板の外周の全部に支持部材が配置されており、前記保護部材が、前記支持部材に接している、
12D 反射構造体。
【請求項13】
13A 前記支持部材の材料は、非導電性材料である、
13B 請求項12に記載の反射構造体。
【請求項14】
14A 前記電磁波の周波数帯に対する前記保護シートの誘電正接は、0.05以下である、
14B 請求項1から請求項11までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項15】
15A 前記周波数選択反射板が、前記保護部材側から順に、
15A1 所定の方向に厚さが増加する厚さ分布を有する単位構造が複数配置された凹凸構造を有し、前記電磁波を透過する誘電体層と、
15A2 前記電磁波を反射する反射部材と、
15A3 を有する、
15B 請求項1から請求項14までのいずれかに記載の反射構造体。
【請求項16】
16A 前記周波数選択反射板が、前記電磁波を反射する反射部材を有し、
16B 前記反射部材は、誘電体基板と、前記誘電体基板の前記電磁波の入射側の面に配列された複数の反射素子とを有する、
16C 請求項1から請求項14までのいずれかに記載の反射構造体。
第3 証拠方法及び申立理由
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、請求項1、4、7及び11~16に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1 国際公開第2021/030492号
甲2 特開平10-163729号公報
甲3 特表2017-531099号公報
甲4 特開2016-121334号公報
甲5 特開平4-134908号公報
2 申立理由
申立書に記載された申立理由は、概略、以下のとおりである。
本件発明1、4、7、11及び16は、甲1に記載された発明、甲2に示される周知技術及び甲3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条1項2号)
本件発明12及び13は、甲1に記載された発明、甲2に示される周知技術及び甲1又は甲4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条1項2号)
本件発明14は、甲1に記載された発明、甲2に示される周知技術、甲3に示される周知技術及び甲4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条1項2号)
本件発明15は、甲1に記載された発明、甲2に示される周知技術、甲3に示される周知技術及び甲5に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(特許法113条1項2号)
第4 申立理由についての判断
上記申立理由について判断する。
1 甲1の記載内容
以下の(1)に甲1の記載を摘記し、以下の(2)で甲1発明を認定する。
(1)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。当審訳は、甲1の日本語ファミリである特表2022-544080号公報を参考に当審で作成した。なお、当審訳の段落番号は日本語ファミリに従う。
下線は強調のために当審で付した(以下同様)。
ア 「BACKGROUND
[0002] New generation wireless networks are increasingly becoming a necessity to accommodate user demands. Mobile data traffic continues to grow every year, challenging the wireless networks to provide greater speed, connect more devices, have lower latency, and transmit more and more data at once. Users now expect instant wireless connectivity regardless of the environment and circumstances, whether it is in an office building, a public space, an open preserve, or a vehicle. In response to these demands, new wireless standards have been designed for deployment in the near future. A large development in wireless technology is the fifth generation of cellular communications (“5G”) which encompasses more than the current Long- Term Evolution (“LTE”) capabilities of the Fourth Generation (“4G”) and promises to deliver high-speed Internet via mobile, fixed wireless and so forth. The 5G standards extend operations to millimeter wave bands, which cover frequencies beyond 6 GHz, and to planned 24 GHz, 26 GHz, 28 GHz, and 39 GHz up to 300 GHz, all over the world, and enable the wide bandwidths needed for high speed data communications.」
(当審訳:
【背景技術】
【0002】
新世代のワイヤレスネットワークは、ユーザの要求に対応するためにますます必要になっている。モバイルデータトラフィックは毎年増加し続けており、ワイヤレスネットワークがより高速で、より多くのデバイスを接続し、より低遅延になり、かつますます多くのデータを一度に送信することを求めている。現在、ユーザは、オフィスビル、公共スペース、開放領域、または車両のいずれであっても、環境および状況に関係なく、即時のワイヤレス接続を期待している。これらの要求に応えて、近い将来に展開するための新しいワイヤレス規格が設計された。ワイヤレス技術の大きな発展は、第4世代(「4G」)の現在のロングタームエボリューション(「LTE」)機能以上のものを網羅し、移動体、固定ワイヤレスなどを介して高速インターネットを配信することを約束する、第5世代のセルラー通信(「5G」)である。5G規格は、6GHzを超える周波数をカバーするミリ波帯域、および世界中の計画されている24GHz、26GHz、28GHz、39GHz~最大300GHzに動作を拡張し、高速データ通信に必要な広い帯域幅を可能にする。)
イ 「DETAILED DESCRIPTION
[0038] Meta-Structure based reflectarrays for enhanced 5G applications are disclosed, which are applicable to a variety of wireless systems and specifically to directed beam system where the transmitters are beamforming units. The beamforming transmitters operate to transmit narrow beams in specific directions, and are often range limited due to the high frequency and or gain requirements. The reflectarrays are suitable for many different 5G applications and can be deployed in a variety of environments and configurations. In various examples, the reflectarrays are arrays of cells having meta-structure reflector elements that reflect incident radio frequency (“RF”) signals in specific directions. In some embodiments the reflectarray includes at least one metamaterial cell. An incident wave 110 from BS 100 is illustrated as directed to Reflectarray 106. A meta-structure, as generally defined herein, is an engineered, non- or semi-periodic structure that is spatially distributed to meet a specific phase and frequency distribution. A meta structure reflector element is designed to be very small relative to the wavelength of the reflected RF signals. A reflected electromagnetic (EM) wave 112 is illustrated from reflectarray 106 toward NLOS 114. The reflectarrays are able to operate at the higher frequencies required for 5G and at relatively short distances. Their design and configuration are driven by geometrical and link budget considerations for a given application or deployment, whether indoors or outdoors.」
(当審訳:
【発明を実施するための形態】
【0005】
強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイが開示されており、これは、様々なワイヤレスシステム、特に、送信機がビームフォーミングユニットである指向性ビームシステムに適用できる。ビームフォーミング送信機は、特定の方向に狭いビームを送信するように動作し、高周波および、またはゲインの要件のために範囲が制限されることがよくある。リフレクトアレイは多くの異なる5Gアプリケーションに適しており、様々な環境および構成で展開できる。様々な例において、リフレクトアレイは、特定の方向に入射無線周波数(「RF」)信号を反射するメタ構造反射素子を有するセルのアレイである。いくつかの実施形態では、リフレクトアレイは、少なくとも1つのメタマテリアルセルを含む。BS100からの入射波110は、リフレクトアレイ106に向けられたものとして示されている。本明細書で全体的に定義されるメタ構造は、特定の位相および周波数分布を満たすように空間的に分布される、操作された非周期的または半周期的構造である。メタ構造反射素子は、反射したRF信号の波長に比べて非常に小さくなるように設計されている。反射された電磁(EM)波112は、リフレクトアレイ106からNLOS114に向かって示されている。リフレクトアレイは、5Gに必要なより高い周波数、かつ比較的短い距離で動作することができる。それらの設計と構成は、屋内か屋外かにかかわらず、所与のアプリケーションまたは展開の幾何学的およびリンクバジェットの考慮事項によって決定される。)
ウ 「[0051] FIG. 7 illustrates a Reflectarray 700 having a variety of cell sizes and shapes, which are organized in an asymmetric configuration. For example, cell 702 is a first size, cell 704 is a second size and cell 706 is a third size. The cells are configured on a surface of the reflectarray 700 structure which may be built on a variety of materials, such as a PCB substrate.」
(当審訳:
【0018】
図7は、非対称構成で編成された、様々なセルのサイズおよび形状を有するリフレクトアレイ700を示している。例えば、セル702は第1のサイズであり、セル704は第2のサイズであり、セル706は第3のサイズである。セルは、PCB基板などの様々な材料上に構築され得るリフレクトアレイ700構造の表面上に構成される。)
エ 「[0053] There are a variety of configurations that may be implemented, such as to incorporate a reflectarray panel into a pre-sized mounting on the wall of a building. In FIG. 32, a wall 3200 has an insert 3203 for placement of a reflectarray 3204, having multiple layers and an optional cover 3206, such as for advertising. In this position, the radio 3210 transmit beams that are incident on reflectarray 3204, as incident wave 3212. The reflectarray redirects the incident wave 3212 as reflections 3214. While the cover 3206 sits on the front of reflectarray 3204 it does not interfere with the reflective behavior of the reflectarray 3204.」
(当審訳:
【0020】
リフレクトアレイパネルを建物の壁上に事前にサイズ設定された取り付け台に組み込むなど、様々な構成が実装され得る。図32では、壁3200は、リフレクトアレイ3204を配置するためのインサート3203を有し、リフレクトアレイ3204は、複数の層及び広告などのためのオプションのカバー3206を有する。この位置において、無線機3210は、入射波3212として、リフレクトアレイ3204上に入射するビームを送信する。リフレクトアレイは、入射波3212を反射3214として向け直す。カバー3206は、リフレクトアレイ3204の前面に置かれているが、リフレクトアレイ3204の反射挙動を妨害しない。)
オ 「[0055] In various examples, a removable cover may be placed on top of the reflectarray as desired by the application. This cover or overlay may provide additional revenue for a user or may provide additional functions or features, such as to have a QR code to purchase sodas at a sports arena or to purchase tickets at a play. There are a variety of aspects to this formation. As shown in FIG. 9, reflectarray 900 has a removable cover 902 that may be positioned on top of the reflectarray by various means, such as by glue, silk screening, or other such means. During the design process of the reflectarray 900 various cover materials may be used that will not interfere with the directivity performance of the reflected RF signals. For example, a fiberglass or other such material may be used to avoid modification or interference with performance. In various examples, the reflectarray 900 may be designed and simulated with the removable cover 902 to ensure that the reflectarray cells and their reflector elements will provide the desired performance. The removable cover 902 may serve a dual purpose to protect the reflectarray 900 from environmental or other damage to its surface and to enable 5G providers, emergency response systems, and others to show messages, advertisements or promotions in the reflectarray 900 that are viewable by UE within its vicinity. There may be various configurations of cover 902 that enable ads and messages to be relayed from the reflectarray 900 mounted to a surface via back mount 906.」
(当審訳:
【0022】
様々な例において、取り外し可能なカバーが、用途によって要望に応じて、リフレクトアレイの上部に配置され得る。このカバーまたはオーバーレイは、ユーザに追加の収益を提供してもよく、またはスポーツアリーナでソーダを購入したり、演劇でチケットを購入したりするためのQRコードを有するなどの追加の機能もしくは特徴を提供してもよい。この形成には様々な態様がある。図9に示すように、リフレクトアレイ900は、接着剤、シルクスクリーン、または他のそのような手段などの様々な手段によって、リフレクトアレイの上部に位置決めされ得る、取り外し可能なカバー902を有する。リフレクトアレイ900の設計プロセス中に、反射したRF信号の指向性能を妨害しない様々なカバー材料が使用され得る。例えば、ガラス繊維または他のそのような材料を使用して、性能の変更または妨害を回避することができる。様々な例において、リフレクトアレイ900は、取り外し可能なカバー902を用いて設計およびシミュレーションされ、リフレクトアレイセルおよびそれらの反射素子が、所望の性能を提供することを確実にすることができる。取り外し可能なカバー902は、リフレクトアレイ900を環境からまたはその表面への他の損傷から保護し、かつ5Gプロバイダ、緊急応答システムなどが、リフレクトアレイ900中に、その近傍内のUEによって見ることができるメッセージ、広告、または宣伝を表示できるようにする、という2つの目的を果たし得る。後部取り付け台906を介して表面に取り付けられたリフレクトアレイ900から広告およびメッセージがリレーされるのを可能にするカバー902の様々な構成が存在し得る。)
カ 「[0061] Attention is now directed to FIG. 16, which shows a flowchart for a design process 1600 for a reflectarray according to the various examples disclosed herein. The first step in the design process is to determine the geometry setup for the desired 5G application (1601). This involves determining the position of the BS or wireless radio that provides the incident RF signals to be reflected off the reflectarray, including its distance from the reflectarray, and the orientation and position of the reflectarray itself. The geometry setup can be seen in FIG. 17, which shows a wireless radio (“WR”) 1702 located at IX) from a Cartesian (x, y, z) coordinate system positioned in the center of the reflectarray 1700. The reflectarray 1700 is positioned along the x-axis with the y-axis indicating its boresight. The WR 1702 has an elevation angle θ0 and an azimuth angle φ0. Note that determining the geometry setup is a simple procedure involving simple geometrical tools such as, for example, a laser distance measurer and an angles measurer. This highlights the ease of setup of reflectarray 1700 and further incentivizes its use when its significant wireless coverage and performance improvements are achieved at low cost with a highly manufacturable reflectarray that can be easily deployed in any 5G environment, whether indoors or outdoors.」
(当審訳:
【0028】
次に、本明細書に開示されている様々な例による、リフレクトアレイの設計プロセス1600のフローチャートを示している、図16に注目する。設計プロセスの最初のステップは、所望の5Gアプリケーションの幾何学的設定を決定することである(1601)。これには、リフレクトアレイからのその距離を含む、リフレクトアレイで反射される入射RF信号を提供するBSまたはワイヤレス無線機の位置、およびリフレクトアレイ自体の向きおよび位置を決定することを伴う。幾何学的設定は、リフレクトアレイ1700の中心に位置決めされたデカルト(x,y,z)座標系からD0に位置するワイヤレス無線機(「WR」)1702を示している、図17に見ることができる。リフレクトアレイ1700は、x軸に沿って位置決めされており、y軸は、そのボアサイトを示している。WR1702は仰角θ0、および方位角φ0を有する。幾何学的設定を決定することは、例えば、レーザ距離計および角度計などの単純な幾何学的ツールを伴う単純な手順であることに留意されたい。これは、リフレクトアレイ1700の設定の容易さを強調し、屋内または屋外を問わず、あらゆる5G環境に簡単に展開できる高度に製造可能なリフレクトアレイを使用して、そのワイヤレスカバレッジおよび性能の大幅な改善が低コストで達成される場合に、その使用をさらに奨励する。)
キ 「[0062] The reflectarray 1700 can be used to reflect RF waves from WR 1702 into UE within the 5G network served by WR 1702, such as, for example, UE 1704 located at a distance D1 from the reflectarray 1700 with θ1 elevation and φ1 azimuth angles. FIG. 18 illustrates a far field radiation pattern 1806 that is generated from reflectarray 1800 having a metal ground plane, a dielectric substrate and a patterned metal layer with the reflectarray cells having reflector elements, e.g., MTS reflector elements. As illustrated, BS 1802 sends RF signals to reflectarray 1800 from a distance d to cell 1804. Those RF signals are then reflected from each cell in reflectarray 1800 with RF beams. The constructive behavior of the RF beams from all cells in reflectarray 1800 is effectively an antenna gain that results in significant improvements in wireless coverage and performance to UE receiving the radiation pattern 1806.」
(当審訳:
【0029】
リフレクトアレイ1700は、例えば、θ1の仰角およびφ1の方位角を有する、リフレクトアレイ1700から距離D1に位置するUE1704などの、WR1702によって提供される5Gネットワーク内のUEに、WR1702からのRF波を反射するために使用することができる。図18は、金属接地面、誘電体基板、および反射素子、例えば、MTS反射素子を有するリフレクトアレイセルを備えたパターン化された金属層を有する、リフレクトアレイ1800から生成される遠方界放射パターン1806を示している。図示のように、BS1802は、距離dからi番目のセル1804まで、RF信号をリフレクトアレイ1800に送信する。次に、これらのRF信号は、RFビームで、リフレクトアレイ1800内の各セルから反射される。リフレクトアレイ1800内のすべてのセルからのRFビームの建設的な挙動は、事実上、放射パターン1806を受信するUEに対してワイヤレスカバレッジおよび性能の大幅な改善をもたらす、アンテナゲインである。)
ク 「[0082] In order to improve and increase the degraded coverages area of the BS 2400, a MTS reflectarray 2406 is mounted onto an exterior side of building 2402. The MTS reflectarray 2406 operates as a relay between the BS 2400 and a receiving device(s) (e.g., user equipment (“UE”)) to increase the coverage area. The MTS reflectarray 2406 is designed such that the MTS reflectarray 2406 will radiate a plurality of RF beams (i.e. reflected EM waves) in different directions from one another. The radiating of the RF beams in the different directions provides for a spreading of the RF signal, which increases and improves the coverage area of the BS 2400.」
(当審訳:
【0049】
BS2400の低下したカバレッジエリアを改善および拡大するために、MTSリフレクトアレイ2406が建物2402の外側上に取り付けられている。MTSリフレクトアレイ2406は、BS2400と受信デバイス(例えば、ユーザ機器(「UE」))の間のリレーとして動作し、カバレッジエリアを拡大する。MTSリフレクトアレイ2406は、MTSリフレクトアレイ2406が互いに異なる方向に複数のRFビーム(すなわち、反射されたEM波)を放射するように設計されている。異なる方向へのRFビームの放射は、RF信号の広がりを提供し、それによりBS2400のカバレッジエリアを拡大および改善する。)
ケ 「[00101] Next, at step 3112, the passive reflectarray antenna is fabricated based on the design parameters determined at step 3110. Subsequently, at step 3114, a screen with content (e.g., advertisements) can be installed or mounted onto an outer surface of the passive reflectarray antenna using fasteners or adhesive material. For example, the telecommunication service provider can monetize with the advertisement screen installed on the passive reflectarray. In some aspects, the screen may be fabricated with a film that is compatible with high-frequencies such that it does not interfere with the performance of the passive reflectarray antenna. The screen may serve as a protective shield for the antenna layer on the passive reflectarray antenna.」
(当審訳:
【0068】
次に、ステップ3112で、受動型リフレクトアレイアンテナが、ステップ3110で決定された設計パラメータに基づいて製作される。続いて、ステップ3114で、コンテンツ(例えば、広告)を備えたスクリーンを、留め具または接着剤を使用して、受動型リフレクトアレイアンテナの外面上に設置または取り付けることができる。例えば、電気通信サービスプロバイダは、受動型リフレクトアレイに設置された広告スクリーンにより収益化できる。いくつかの態様では、スクリーンは、受動型リフレクトアレイアンテナの性能を妨害しないように、高周波と相性が良いフィルムで製作され得る。スクリーンは、受動型リフレクトアレイアンテナのアンテナ層の保護シールドとして機能し得る。)
コ FIG.7(図7)
[図:0001416536000001.jpg]
サ FIG.17(図17)
[図:0001416536000002.jpg]
シ FIG.32(図32)
[図:0001416536000003.jpg]
図32によれば、カバー3206は、リフレクトアレイ3204を基準として反射波が向かう方向に位置していると解される。
(2)甲1発明の認定
前記(1)の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明をa1~hに分説し、「構成a1」のように参照する。
a1 強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイであって、(訳【0005】)
a2 リフレクトアレイは、特定の方向に入射無線周波数(「RF」)信号を反射するメタ構造反射素子を有するセルのアレイであり、(訳【0005】)
a3 メタ構造は、特定の位相および周波数分布を満たすように空間的に分布される、操作された非周期的または半周期的構造であり、(訳【0005】)
b セルは、PCB基板上に構築され得るリフレクトアレイ700構造の表面上に構成され、(訳【0018】)
c1 リフレクトアレイ3204は、壁3200のインサート3203に配置され、リフレクトアレイ3204は、広告用などのためのオプションのカバー3206を有し、(訳【0020】)
c2 カバー3206は、リフレクトアレイ3204を基準として反射波が向かう方向に位置しており、(図32)
d1 リフレクトアレイ900は、リフレクトアレイの上部に位置決めされ得る、取り外し可能なカバー902を有し、(訳【0022】)
d2 反射したRF信号の指向性能を妨害しないカバー材料として、ガラス繊維または他のそのような材料が使用され、(訳【0022】)
d3 取り外し可能なカバー902は、リフレクトアレイ900を環境からまたはその表面への他の損傷から保護し、(訳【0022】)
e 広告を備えたスクリーンは、受動型リフレクトアレイアンテナの性能を妨害しないように、高周波と相性が良いフィルムで製作され、(訳【0068】)
f リフレクトアレイ1700は、θ1の仰角およびφ1の方位角を有するUEに、仰角θ0、および方位角φ0を有するWR1702からのRF波を反射するために使用され、(訳【0028】、訳【0029】)
g MTSリフレクトアレイ2406が互いに異なる方向に複数のRFビームを放射する、(訳【0049】)
h リフレクトアレイ。
2 甲2の記載内容
以下の(1)に甲2の記載を摘記し、以下の(2)で甲2技術を認定する。
(1)甲2の記載
甲2には以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーダーアンテナやその他の同様な構造を持つ宇宙通信アンテナなどを収容するのに用いられるメタルスペースフレームレードーム(metalspace frame radome)用の膜材に関し、さらに詳しくは、例えば、40GHzを越えるような高周波数レーダーを対象とすることができるメタルスペースフレームレードーム用膜材に関する。
【0002】
【従来の技術】レーダーアンテナなどの無線アンテナを、電磁気的に透明に保持しながら、日光や雨、雪、風などの天候、湿気、埃などに対して被覆し、保護するために、無線周波数電磁放射に対して透明な誘電体で作られた強固な薄い殻、すなわちレードームが使用されている。レーダーアンテナなどが自由に移動または回転できるように、レーダーアンテナ等から間隔をおいて配置させる被覆構造体として、メタルスペースフレームレードームがある。このメタルスペースフレームレードームは、金属製の幾何学的形状を有する多数のセグメントがほぼ球形のドームを形成するように結合され、かつ、これらのセグメントが無線周波数電磁放射に対して透明な膜で覆われた構造を有している。
【0003】40GHzを越えるような高周波数レーダーを対象とするメタルスペースフレームレードーム用膜材には、電波透過損失を少なくするため、小さい比誘電率と誘電損失を持ち、かつ、波長の約1/10以下の膜厚を持つことが要求される。したがって、高周波透過特性の観点からは、該膜材は、できるだけ薄いことが望ましい。一方、該膜材には、長期間にわたって、乾燥空気による内圧と、外部からの雨、埃、紫外線などに晒されても破損せず、気密を保ち続けるため、引張強さ、引裂強さ、及び気密性に優れていることが要求される。これらの要求性能を満たすためには、高周波透過特性からの要求に相反して、膜材の厚みは大きい方が望ましい。」
(2)甲2技術の認定
前記(1)の記載によれば、甲2には次の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。
電波透過損失を少なくするため、小さい比誘電率と誘電損失を持ち、かつ、波長の約1/10以下の膜厚を持つ、40GHzを超えるような高周波数を対象とするレーダーアンテナや宇宙通信アンテナなどを収容するのに用いられるメタルスペースフレームレードーム用膜材。(【0001】、【0003】)
3 本件発明1と甲1発明との対比
甲1全体の文脈から、甲1発明の「リフレクトアレイ」(構成a1~a3、h)、「リフレクトアレイ700」(構成b)、「リフレクトアレイ3204」(構成c1、c2)、「リフレクトアレイ900」(構成d1、d3)、「受動型リフレクトアレイアンテナ」(構成e)、「リフレクトアレイ1700」(構成f)及び「MTSリフレクトアレイ2406」(構成g)は、同一のものと解される。
以下において、本件発明1と甲1発明とを対比する。
(1)発明特定事項1A1について
発明特定事項1A1は、「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板と、」というものである。
甲1発明の「メタ構造反射素子を有するセルのアレイ」は、「特定の方向に入射無線周波数(「RF」)信号を反射する」ものである(構成a2)から、電磁波を反射する物と解される。
甲1発明においては「セルは、PCB基板上に構築され得るリフレクトアレイ700構造の表面上に構成され」る(構成b)から、リフレクトアレイ構造を成すセルはPCB基板上に構成されていると解され、よって、前記「メタ構造反射素子を有するセルのアレイ」は板状の物と解される。そうすると、甲1発明の「メタ構造反射素子を有するセルのアレイ」は、電磁波を反射する反射板であると解される。
甲1発明の「メタ構造」は、「特定の位相および周波数分布を満たすように空間的に分布される、操作された非周期的または半周期的構造であ」る(構成a3)から、「メタ構造」によって反射される電磁波は特定の周波数分布を満たすようになっていると解される。すなわち、「メタ構造」は、周波数選択性を有していると解される。そうすると、甲1発明の「メタ構造反射素子を有するセルのアレイ」は、特定の周波数帯の電磁波を反射する周波数選択反射板であると解される。
甲1発明の「リフレクトアレイ1700」は、仰角θ0、方位角φ0からのRF波を仰角θ1、方位角φ1へ反射する(構成f)ものであり、「互いに異なる方向に複数のRFビームを放射」できる(構成g)ことに鑑みると、甲1発明の「リフレクトアレイ」において電磁波を反射する「メタ構造反射素子を有するセルのアレイ」は、入射した電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射することができるものと解される。そうすると、甲1発明の「メタ構造反射素子を有するセルのアレイ」は、特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板であると解される。
以上によれば、甲1発明の「メタ構造反射素子を有するセルのアレイ」は、本件発明1の「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板」に相当する。
(2)発明特定事項1A2について
発明特定事項1A2は、「前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材と、」というものである。
甲1全体の文脈から、甲1発明の「カバー3206」(構成c1、c2)、「カバー902」(構成d1、d3)、「カバー」(構成d2)及び「スクリーン」(構成e)は、同じものであると解される。
ア 本件発明1における「上方」がいずれの方向であるのかは、請求項1の記載からは明らかではないが、保護部材による反射波の強度への影響を説明した本件明細書【0310】~【0312】及び図23を参照すると、保護部材によって反射波の強度が減少していることが理解できるから、保護部材が位置する「上方」は、反射波が向かう方向であると解される。
イ 甲1発明の「カバー902」は、「リフレクトアレイ900を環境からまたはその表面への他の損傷から保護」するものである(構成d3)から、本件発明1の「保護部材」に相当する。
甲1発明の「カバー3206」は、「リフレクトアレイ3204を基準として反射波が向かう方向に位置して」いる(構成c2)から、前記アの解釈によれば、本件発明1の「保護部材」と、甲1発明の「カバー3206」とは、「前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材」である点で一致する。
(3)発明特定事項1A及び1Fについて
発明特定事項1Aは、発明特定事項1A1と発明特定事項1A2と「を有する反射構造体であって、」というものである。
発明特定事項1Fは、「反射構造体。」というものである。
甲1発明における「リフレクトアレイ」は、「メタ構造反射素子を有するセルのアレイであり」(構成a2)、「カバー902を有」する(構成d1)ものであるから、本件発明1の「反射構造体」に相当する。
そうすると、前記(1)及び(2)によれば、本件発明1と甲1発明とは、「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板と、」「前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材と、」「を有する反射構造体であ」る点で一致する。
(4)発明特定事項1Bについて
甲1発明では、「カバー」の厚さについては特段の限定がない。
よって、本件発明1では「前記保護部材の厚さが、前記保護部材内を伝搬する前記電磁波の実効波長の1/4未満であ」るのに対し、甲1発明の「カバー」が電磁波の実効波長の1/4未満であるか否かは明らかではない点で相違する。
(5)発明特定事項1Cについて
甲1発明の「スクリーン」は、「フィルムで製作され」る(構成e)から、シートであると解される。
そして、甲1発明の「スクリーン」は「カバー」と同じものと解される(前記(2))から、甲1発明の「カバー」は、それ自体として「スクリーン」を有していると解される。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記保護部材は、保護シートを有」する点で一致する。
(6)発明特定事項1Dについて
甲1発明の「カバー902」は、「その表面への他の損傷から保護」するものである(構成d3)から、本件発明1の「表面保護層」に相当する。
そうすると、甲1発明の「スクリーン」は、「表面保護層」としての「カバー」をそれ自体として有していると解される。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記保護シートは、表面保護層を有」する点で一致する。
(7)発明特定事項1Eについて
甲1発明では、「カバー」の表面における水との接触角については、特段の限定がない。
よって、本件発明1では「前記表面保護層の表面における水との接触角が90°以上である」のに対し、甲1発明の「カバー」の表面における水との接触角が90°以上であるか否かは明らかでない点で相違する。
(8)一致点及び相違点
前記(1)~(7)によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「特定の周波数帯の電磁波を正反射方向とは異なる方向に反射する周波数選択反射板と、
前記周波数選択反射板の上方に配置された保護部材と、
を有する反射構造体であって、
前記保護部材は、保護シートを有し、
前記保護シートは、表面保護層を有する、反射構造体。」である点。
〈相違点1〉
本件発明1では「前記保護部材の厚さが、前記保護部材内を伝搬する前記電磁波の実効波長の1/4未満であ」るのに対し、甲1発明の「カバー」が電磁波の実効波長の1/4未満であるか否かは明らかではない点。(発明特定事項1B)
〈相違点2〉
本件発明1では「前記表面保護層の表面における水との接触角が90°以上である」のに対し、甲1発明の「カバー」の表面における水との接触角が90°以上であるか否かは明らかでない点。(発明特定事項1E)
4 相違点1についての判断
以下、相違点1の容易想到性について判断する。
(1)甲2技術は、40GHzを超えるような高周波を対象とするレーダーアンテナや宇宙通信アンテナなどを収容するのに用いられるメタルスペースフレームレードーム用の膜材であって、電波透過損失を少なくするために、その膜厚を波長の約1/10とする技術である(前記2(2))。
甲2技術が周知であったとしても、それは、40GHzを超えるような高周波を対象とするレーダーアンテナや宇宙通信アンテナなどを収容するのに用いられるメタルスペースフレームレードーム用の膜材が波長の約1/10以下であることが周知であるに過ぎず、甲1発明のように「強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイ」(構成a1)に用いられる「カバー」の厚さが約1/10以下であることが周知であるとは認められない。
加えて、甲1発明の「強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイ」の「カバー」に対して、甲2技術のような「40GHzを超えるような高周波を対象とするレーダーアンテナや宇宙通信アンテナなどを収容するのに用いられるメタルスペースフレームレードーム用の膜材」を適用することが周知であったことを示す証拠はない。
甲1において、「5G規格は、6GHzを超える周波数をカバーするミリ波帯域」を対象としていること(【0002】)が示されており、甲1発明である「強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイ」も6GHzを超える周波数で用いられると解される。6GHzを超える周波数は、一部が甲2技術における「40GHzを超えるような高周波」と重なるが、40GHz以下の周波数帯も含まれている。甲1発明が対象とする周波数帯には、甲2技術が対象としない周波数帯が含まれているから、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けは必ずしも存在しない。
また、甲1発明が「強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイ」の「カバー」、すなわち、携帯電話網用のリフレクトアレイのカバーであるのに対し、甲2技術は「レーダーアンテナや宇宙通信アンテナなどを収容するのに用いられるメタルスペースフレームレードーム用膜材」であり、その技術分野及び保護対象の形状が異なっているから、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けは存在しない。
甲3~甲5を参照しても、甲1発明の「強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイ」の「カバー」の厚さを実効波長の1/4未満とすることについて記載も示唆も存在しない。
以上によれば、相違点1に係る構成は、甲1~甲5を参照しても、当業者が甲1発明から容易に想到し得たものとは認められない。
(2)申立人の相違点1に関する主張について判断する。
申立人は、以下のアのように主張し、当該主張についての当審の判断は以下のイのとおりである。
ア 申立人は、次の主張をする。
アンテナレドーム等の保護部材はその厚みが小さいほど電波透過損失が少なくアンテナ特性に影響を与えないことは技術常識であり、例えば、甲第2号証には「電波透過損失を少なくするため、小さい比誘電率と誘電損失を持ち、かつ、波長の約1/10以下の膜厚を持つメタルスペースフレームレードーム用膜材」が記載されているし、どの程度の厚さにするかは当業者が必要に応じて適宜選択すべきものと認められる。
そうすると、本件特許発明1のように、甲1発明の「リフレクトアレイの反射挙動を妨害しない」し「受動型リフレクトアレイアンテナの性能を妨害しない」「保護部材」である「カバー」または「スクリーン」について、「厚みを実効波長の1/4未満」とすることは、甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
イ 申立人の上記主張について判断する。
甲2技術が周知であるか否かに関わらず、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けが存在しないことは、前記(1)に示したとおりである。
申立人は、アンテナレドーム等の保護部材はその厚みが小さいほど電波透過損失が少なくアンテナ特性に影響を与えないことが技術常識である旨を主張するが、それは、アンテナレドームの保護部材においての技術常識にとどまり、甲1発明のような「強化された5Gアプリケーション用のメタ構造ベースのリフレクトアレイ」の「カバー」においても技術常識であったと認めるに足る証拠は存在しない。また、5Gのような携帯電話網で使用されるリフレクトアレイにおいて、そのカバーの膜厚による電波透過損失が解決すべき課題であると認識されていたと認めるに足る証拠も事情も存在しない。
申立人は、甲1発明の「カバー」が「リフレクトアレイの反射挙動を妨害しない」こと(訳【0020】)及び「受動型リフレクトアレイアンテナの性能を妨害しない」こと(訳【0068】)を指摘するが、甲1発明における「反射挙動」や「性能」は、文脈から「反射したRF信号の指向性能」(構成d2、訳【0022】)と同じであると解され、カバーによる電波透過損失のこととは解されない。
また、甲1には「リフレクトアレイ1800内のすべてのセルからのRFビームの建設的な挙動は、事実上、放射パターン1806を受信するUEに対してワイヤレスカバレッジおよび性能の大幅な改善をもたらす、アンテナゲインである。」(訳【0029】)との記載があるが、当該「アンテナゲイン」は「放射パターン」におけるアンテナゲインのことであると解され、そのアンテナゲインにカバーによる電波透過損失の影響を考慮すべきと示唆するものではない。
以上によれば、申立人の主張は採用できない。
5 本件発明1の進歩性の有無の判断
前記4のとおり、甲1~甲5を参照しても相違点1に係る構成が甲1発明から容易に想到し得たものでない以上、相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、当業者といえども、甲1発明、甲2技術及び甲3~甲5に示される技術に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
6 本件発明4、11及び12の進歩性の有無の判断
本件発明4の発明特定事項4B、本件発明11の発明特定事項11B及び本件発明12の発明特定事項12Bは、いずれも、本件発明1の発明特定事項1Bと同じものである。
よって、本件発明4、11及び12と甲1発明とを対比すると、少なくとも前記3(8)に示した相違点1と同様の相違点が存在すると認められる。
そして、前記4のとおり、相違点1に係る構成は甲1発明から容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明4、11及び12は、当業者といえども、甲1発明、甲2技術及び甲3~甲5に示される技術に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
7 本件発明7及び13~16の進歩性の有無の判断
本件発明7及び13~16は、本件発明1、4、11及び12のいずれかの発明の発明特定事項を全て含み、さらに別の発明特定事項も含むため、本件発明7及び13~16と甲1発明との間には、少なくとも相違点1と同様の相違点が存在する。
したがって、本件発明7及び13~16は、当業者といえども、甲1発明、甲2技術及び甲3~甲5に示される技術に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
第5 むすび
前記第4によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700869