特許異議申立
2024-700859
撥水性布帛および繊維製品
- 審判番号
- 2024-700859
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-516988
- 登録番号
- 7448640
- 請求日
- 2024年09月10日
- 審決日
- 2025年09月02日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】帝人フロンティア株式会社
- 【権利者代理人】為山 太郎
- 【異議申立人】村上 兄
- 【異議申立人】中村 絵美
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 神山 茂樹
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-ZAA(D03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7448640号発明「撥水性布帛および繊維製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7448640号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7448640号の請求項1~10に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7448640号の請求項1~10に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)4月14日(優先権主張 令和2年4月21日)を国際出願日とする出願であって、令和6年3月4日にその特許権の設定登録がされ、令和6年3月12日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 9月10日 :特許異議申立人村上兄(以下「申立人1」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 9月12日 :特許異議申立人中村絵美(以下「申立人2」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年11月15日付け:取消理由通知
令和6年12月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 1月22日 :申立人2による意見書の提出
令和7年 1月23日 :申立人1による意見書の提出
令和7年 4月15日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和7年 6月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 6月23日 :特許権者による訂正請求書を対象とする手続補正書の提出(以下、手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和7年 7月31日 :申立人1による意見書の提出
令和7年 8月 5日 :申立人2による意見書の提出
なお、令和6年12月13日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み」を、
「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み」に訂正し、
同じく、「前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり」を、
「前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8、10も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2を独立形式に改めたうえで、
本件訂正前の請求項1に記載された「撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み」を、
「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み」に訂正し、
本件訂正前の請求項2に記載された「布帛が、カバーファクターCFが1000以上の織物である」を、
「布帛が、カバーファクターCFが1000以上の織物であり、前記極細繊維が非捲縮繊維であり、前記複合糸が経糸および緯糸に配されてなる」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8、10も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項9に、「請求項1~7のいずれかに記載の撥水性布帛」とあるうち、請求項1、2、5~7を引用するものを独立形式に改めたうえで、
本件訂正前の請求項1に記載された「撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み」を、
「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み」に訂正し、
本件訂正前の請求項9に記載された「JIS L1096-2010 8.17 D法により測定した、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上である」を、
「かつJIS L1096-2010 8.17 D法により測定した、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上である」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~10〕について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1について、「撥水性布帛」に施される「撥水加工」、及び「伸縮性繊維」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1のうち、「撥水性布帛」に施される「撥水加工」を限定する点は、本件特許の明細書の【0041】、【0056】、【0061】、【0066】の記載に基づくものであり、「伸縮性繊維」を限定する点は、本件特許の明細書の【0022】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2について、請求項間の引用関係を解消して独立形式に改めた上で、「撥水性布帛」に施される「撥水加工」、「極細繊維」及び「複合糸」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項2のうち、「撥水性布帛」に施される「撥水加工」を限定する点は、本件特許の明細書の【0041】、【0056】、【0061】、【0066】の記載に基づくものであり、「極細繊維」について限定する点は、本件特許の明細書の【0012】の記載に基づくものであり、「複合糸」について限定する点は、本件特許の明細書の【0055】、【0060】、【0065】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
訂正事項2は、請求項の引用を解消しつつ、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項9について、請求項1、2、5~7を引用するものに限定し、独立形式に改めた上で、「撥水性布帛」に施される「撥水加工」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
訂正事項3のうち、「撥水性布帛」に施される「撥水加工」を限定する点は、本件特許の明細書の【0041】、【0056】、【0061】、【0066】の記載に基づくものである。
訂正事項3は、請求項の引用を解消しつつ、本件訂正前の請求項9に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~10を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~10の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)であることを特徴とする撥水性布帛。
【請求項2】
非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)であり、
布帛が、カバーファクターCFが1000以上の織物であり、前記極細繊維が非捲縮繊維であり、前記複合糸が経糸および緯糸に配されてなることを特徴とする撥水性布帛。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項3】
前記極細繊維からなる微細繊維ループが布帛表面に形成されている、請求項1または請求項2に記載の撥水性布帛。
【請求項4】
布帛表面の撥水ころがり角度が15度以下である、請求項1~3のいずれかに記載の撥水性布帛。
【請求項5】
JIS L1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が4級以上である、請求項1~4のいずれかに記載の撥水性布帛。
【請求項6】
JIS L0217-1995に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が3級以上である、請求項1~5のいずれかに記載の撥水性布帛。
【請求項7】
JIS L1096-2010 8.16 B法により測定した、経方向または緯方向のストレッチ性が10%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の撥水性布帛。
【請求項8】
JIS L1096-2010 8.16 B-1法により測定した、経方向または緯方向のストレッチ性回復率が85%以上である、請求項1~7のいずれかに記載の撥水性布帛。
【請求項9】
非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)であり、
布帛が、カバーファクターCFが1000以上の織物であり、
JIS L1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が4級以上であり、
JIS L0217-1995に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が3級以上であり、
JIS L1096-2010 8.16 B法により測定した、経方向または緯方向のストレッチ性が10%以上であり、
かつJIS L1096-2010 8.17 D法により測定した、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上であることを特徴とする撥水性布帛。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の撥水性布帛を用いてなる繊維製品。」
第4 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要
当審において令和7年4月15日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項9、10に係る発明は、下記引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、下記引用文献8に記載された発明及び引用文献8に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開2008-50717号公報(申立人1が提出した甲第1号証)
引用文献2 特開平5-247757号公報(申立人1が提出した甲第2号証)
引用文献3 特開2008-156762号公報(申立人2が提出した甲第3号証)
引用文献4 特開2014-240532号公報(申立人2が提出した甲第9号証)
引用文献5 特開2004-131921号公報(当審において発見した文献)
引用文献6 特開2017-172101号公報(申立人2が提出した甲第14号証)
引用文献7 特開2018-172813号公報(申立人2が提出した甲第15号証)
引用文献8 特開2003-247136号公報(申立人2が提出した甲第13号証)
第5 当審の判断
1 引用文献の記載等
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付与し、「・・・」は省略を示す。以下同様。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル潜在捲縮糸と他のポリエステル糸とを複合混繊してなるポリエステル複合加工糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、潜在捲縮糸と他糸との複合加工糸が多数提案されている。
【0003】
潜在捲縮糸には、様々なタイプのものがあるが、いずれも製織編後に行う染色加工により捲縮を発現し、ストレッチ性やストレッチバック性などの特性を織編物に付与しうるものである。潜在捲縮糸の中でも特に溶融粘度の異なる2つのポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせたタイプのものが、捲縮発現が容易である観点から最も多く用いられている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単純に単糸繊度を細くしただけでは、織編物におけるストレッチ性やストレッチバック性などの伸縮特性が低減するという問題が発生する。
・・・
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、織編物に優れたストレッチ性と良好な品位とを付与できるポリエステル複合加工糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)単糸繊度が0.8~1.5dtexで、沸水30分処理後の伸縮伸長率が30~50%であるポリエステル潜在捲縮糸を用いて複合混繊してなることを特徴とするポリエステル複合加工糸。
・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステル複合加工糸は、単糸繊度が細いと共に特定の捲縮性能を有するポリエステル潜在捲縮糸を用いて得られているので、混繊性に優れると共に織編物に優れた伸縮特性と良好な品位とを付与することが可能となる。」
「【0036】
本発明における潜在捲縮糸は、通常の複合紡糸装置を用いて製造できる。製法の一例としては、まず、紡糸口金の背面で、2つのポリエステル成分をサイドバイサイド型になるように合流させ、同一紡糸孔から吐出し紡糸する。紡糸温度としては、通常、280℃~310℃の範囲が好ましい。その後、紡出された糸条に冷却風を吹き付けることで冷却固化し、紡糸油剤を付与して一旦引き取り、延伸機で熱延伸するか、あるいは引き取った糸条を紡糸に連続して熱延伸することにより、潜在捲縮糸を得ることができる。
【0037】
本発明のポリエステル複合加工糸は、上記のポリエステル潜在捲縮糸を用いて複合混繊してなるものである。つまり、ポリエステル潜在捲縮糸と、それ以外のポリエステル糸条とを混繊することで得られる複合加工糸である。この場合、上記ポリエステル糸条として、複数の糸条を用いてもよいが、通常は一種類のみ用いることが好ましい。
【0038】
本発明に用いる潜在捲縮糸以外のポリエステル糸条としては、特に限定されるものでなく、複数のフィラメントからなる、所謂ポリエステルマルチフィラメント糸条でありさえすればよい。」
「【0046】
(実施例1)
PETに2,2-ビス{4-(Β-ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン(BP-A/EOと略記する)を4.5モル%、イソフタル酸(IPAと略記する)を4.0モル%共重合したものであって、極限粘度が0.73のポリエステルを高溶融粘度ポリエステル成分とした。また、極限粘度が0.61のPETを低溶融粘度ポリエステル成分とした。
【0047】
上記の高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル成分とを、複合紡糸型溶融押出機に等量供給し、紡糸温度295℃で溶融し、紡糸孔を48個有する紡糸口金の背面で両成分を合流させ、サイドバイサイド型に接合して紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、油剤を付与しながら糸条を集束し、表面速度が3000m/分の引取ローラを介して捲取機で捲取った。次いで、得られた繊維を延伸機に供給し、表面温度85℃のローラと170℃のホットプレートを介して延伸倍率1.6倍で延伸して、56dtex48f(単糸繊度1.2dtex)のポリエステル潜在捲縮糸を得た。この潜在捲縮糸の特性を表1に示す。
【0048】
一方、極限粘度0.61のPETを用い、紡糸速度3000m/分により60dtex144fのポリエステル糸条を得た。
次に、上記で得られた2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレース圧が4.5kg/cm2に設定されたインターレースノズルへ2糸条を同時に糸速600m/分で導入して、本発明のポリエステル複合加工糸を得た。
【0049】
次に、ダブルツイスターを使用して、得られたポリエステル複合加工糸をS方向に650T/M加撚し、80℃で30分間撚り止めセットして加撚糸条を得た。
【0050】
緯糸としてこの加撚糸条を用い、経糸としてポリエステル非捲縮糸44dtex24fを無撚りで用いて、経糸密度220本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cmのサテン織物を製織した。このサテン織物を液流染色機にて苛性ソーダ1g/L、界面活性剤1g/Lを併用した水溶液を用いて100℃×20分の条件で精練し、130℃×20分の条件でリラックス処理した後、乾燥した。その後、180℃×20秒の条件で中間セットし、次いで液流染色機で下記処方にて130℃×30分間染色加工し、乾燥後、170℃×20秒間仕上げセットすることにより、織物を得た。」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アにより、引用文献1には、次の発明が記載されている。ただし、括弧書は理解のため記載したものである。
「高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル成分とを、複合紡糸型溶融押出機に等量供給し、溶融し、紡糸口金の背面で両成分を合流させ、サイドバイサイド型に接合して紡出し、紡出した糸条を冷却固化した後、糸条を集束し、捲取り、次いで、得られた繊維を延伸して、56dtex48f(単糸繊度1.2dtex)のポリエステル潜在捲縮糸を得て(【0047】)、
一方、極限粘度0.61のPETを用い、60dtex144fのポリエステル糸条を得て、
次に、上記で得られた2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレースノズルへ2糸条を同時に導入して、ポリエステル複合加工糸を得て(【0048】)、
次いで、得られたポリエステル複合加工糸を撚り止めセットして加撚糸条を得て(【0049】)、
緯糸としてこの加撚糸条を用い、経糸としてポリエステル非捲縮糸44dtex24fを無撚りで用いて、経糸密度220本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cmのサテン織物を製織し、このサテン織物を精練し、リラックス処理した後、乾燥し、その後、中間セットし、次いで染色加工し、乾燥後、仕上げセットすることにより得た、織物(【0050】)。」(以下「引用発明1」という。)
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、次の記載がある。
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来の問題を解決し、非常にソフトでふくらみがあり、縫製性に優れ、腰・ハリとドレープ性のある織物に縫製での仕立て映えが向上し、着用時に快適な着心地を与える適度な伸縮性(ストレッチ性)を有する織物を提供することのできる複合糸およびその織物の製造方法を提供することを目的とする。」
「【0040】 次に本発明の織物の製造方法について説明する。本発明の織物の製造方法は、製織に用いる複合加工糸の巻縮発現力として伸縮復元率(CR)と、荷重下での熱処理による捲縮発現伸長率(TR)が重要である。すなわち、撚係数αが6,700~15,200の範囲の加撚のもとで、CR10%以上、TR5%以上有する複合糸を、経糸および/または緯糸に用い製織するによって得ることができる。本発明の方法により、ソフトでふくらみ感があり、ドレープ性かつ適度な伸縮性を有する可縫性と縫製品の仕立て映えに優れた織物を得ることができる。」
「【0042】
【実施例】
実施例1
ポリエチレンテレフタレート100%からなる低粘度成分の極限粘度(IV)が0.475で、高粘度成分の極限粘度(IV)が0.780である成分のポリマーを、重量複合比50:50で並列型複合紡糸したUY(未延伸糸)を熱延伸して得たコンジュゲート糸75D-18Fを、通常の仮撚機(東レエンジニアリング(株)製TFT-6M)を用いて仮撚加工した。加工条件は、仮撚数3,500T/M(撚係数30,310)、1stヒーター温度210℃、供給フィード率+2%、スピンドル回転数25万rpm(加撚方向S)で、ウーリー加工糸を得た。得られた加工糸の物性は、CR32.1%、TR35%、またS方向の1,000T/Mの追撚をダブルツイスターで実施した時の糸は、CR27.3%、TR31%であった。前記コンジュゲート糸の仮撚糸と、通常のポリエステルマルチフィラメント糸50D-72Fの仮撚加工糸(CR32%)とを、通常の混繊機(愛機製作所(株)製エアー混繊機AT-510型)にて、コンジュゲート糸の仮撚糸(75D-18F)に対してマルチフィラメント糸の仮撚糸(50D-96F)を5%のオーバーフィードで供給し、圧空2.5kg/cm2、ノズル1.6mmφ×1穴で交絡処理しつつ、糸速500m/分で複合加工を実施した。得られた複合加工糸は、128デニール、沸収率5.0%、CR30.7%、TR21.4%であった。また、この複合加工糸にS方向の追撚1,000T/M(撚係数11,314)を実施した糸は、CR20.8%、TR5.8%であり、加撚糸の荷重下での熱処理でも伸縮性の得られる複合糸であった。
【0043】一方、複合加工糸を1,000T/M(撚係数11,314)を追撚したものを経糸として使用し、緯糸には複合加工糸2本を400T/M(撚係数6,400)で合撚し、生機密度を90×70本/25.4mmの平織をWJL(ウォータージェットルーム)で製織した。そして通常の染色仕上加工により、密度102×82本/25.4mmに仕上げた。得られた織物は、経方向6%、緯方向に8%の適度なストレッチ性を有する加撚織物であるため、風合面でも従来の無撚複合加工糸織物にないハリ・腰と反発性を有し、タッチもきわめてソフトでよいものであった。」
イ 引用文献2に記載された発明
上記アにより、引用文献2には、次の発明が記載されている。
「ポリエチレンテレフタレート100%からなる低粘度成分の極限粘度(IV)が0.475で、高粘度成分の極限粘度(IV)が0.780である成分のポリマーを、重量複合比50:50で並列型複合紡糸したUY(未延伸糸)を熱延伸して得たコンジュゲート糸75D-18Fを、仮撚機(東レエンジニアリング(株)製TFT-6M)を用いて仮撚加工し、伸縮復元率(CR)32.1%、捲縮発現伸長率(TR)35%のウーリー加工糸を得て、前記コンジュゲート糸の仮撚糸と、通常のポリエステルマルチフィラメント糸50D-72Fの仮撚加工糸(CR32%)とを、通常の混繊機(愛機製作所(株)製エアー混繊機AT-510型)にて、コンジュゲート糸の仮撚糸(75D-18F)に対してマルチフィラメント糸の仮撚糸(50D-96F)を5%のオーバーフィードで供給し、圧空2.5kg/cm2 、ノズル1.6mmφ×1穴で交絡処理しつつ、糸速500m/分で複合加工を実施して、128デニール、沸収率5.0%、CR30.7%、TR21.4%の複合加工糸を得て(【0042】)、
複合加工糸を1,000T/M(撚係数11,314)を追撚したものを経糸として使用し、緯糸には複合加工糸2本を400T/M(撚係数6,400)で合撚し、生機密度を90×70本/25.4mmの平織を製織し、そして通常の染色仕上加工により、密度102×82本/25.4mmに仕上げて得た織物であって、得られた織物は、経方向6%、緯方向に8%の適度なストレッチ性を有する加撚織物である織物(【0043】)。」(以下「引用発明2」という。)
(3)引用文献3
引用文献3には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服などに使用することにより、フラットな表面感、ハリコシ感とソフトな風合いを有し、さらにはストレッチ性に優れた布帛を得られる複合加工糸およびその製造方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高次加工して、衣服などに使用する際、従来の技術では得られなかったフラットな表面感、ハリコシ感とソフトな風合いを併せもち、さらにはストレッチ性に優れた布帛を得ることができる複合加工糸およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の複合加工糸は、次の構成を有する。
【0006】
すなわち、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型であるポリエステル複合長繊維と、他のポリエステル長繊維との複合加工糸であって、以下の(1)から(4)を満足することを特徴とする複合加工糸である。
(1)ポリエステル複合長繊維におけるポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が30/70~70/30
(2)ポリエステル長繊維の単繊維繊度が0.3デシテックス以上1.2デシテックス以下
(3)トルクヨリ数が40T/m未満
(4)交絡数が30個/m以上200個/m以下
また、本発明の複合加工糸の製造方法は、次の構成を有する。
【0007】
すなわち、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型であるポリエステル複合長繊維と、他のポリエステル長繊維とを混繊し、仮ヨリした後、弛緩熱処理することを特徴とする複合加工糸の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合加工糸を用いることにより、フラットな表面感、ハリコシ感とソフトな風合いを併せもち、さらにはストレッチ性に優れた布帛を得ることができる。」
(4)引用文献4
引用文献4には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性だけでなく優れた伸縮性をも有する伸縮性難燃布帛、および該伸縮性難燃布帛を用いてなる繊維製品に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性だけでなく優れた伸縮性をも有する伸縮性難燃布帛、および該伸縮性難燃布帛を用いてなる繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、難燃性繊維を含む紡績糸と、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維とを含む複合糸を用いて布帛を構成し、前記難燃性繊維および前記複合繊維の重量比率を特定の範囲とすると、難燃性だけでなく優れた伸縮性をも有する伸縮性難燃布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば「JIS K7201により測定される限界酸素指数が25以上の難燃性繊維を含む紡績糸と、2成分がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型に貼り合わされた複合繊維とを含む複合糸を用いてなる布帛であり、前記難燃性繊維の重量比率が布帛重量に対して75重量%以上であり、かつ前記複合繊維の重量比率が布帛重量に対して5~15重量%の範囲内であることを特徴とする伸縮性難燃布帛。」が提供される。
【0009】
・・・また、前記複合繊維を構成する2成分が、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートの群から選ばれたいずれかの組合せであることが好ましい。・・・
また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなる繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、難燃性だけでなく優れた伸縮性をも有する伸縮性難燃布帛、および該伸縮性難燃布帛を用いてなる繊維製品が得られる。」
「【0025】
かくして得られた布帛は、前記の複合糸を含んでいるので、難燃性だけでなく優れた伸縮性をも有する。
ここで、布帛の伸縮性としては、経方向および/または緯方向の伸長率が3~50%の範囲内であることが好ましい。また、布帛の伸長回復率としては、経方向および/または緯方向の伸長回復率が70%以上(より好ましくは73~99%)であることが好ましい。・・・」
「【実施例】
【0027】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
・・・
(2)伸縮性
JIS L1096:2011(B法、定荷重法)にしたがって、伸長率及び伸長回復率を測定した。
・・・」
(5)引用文献5
引用文献5には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた捲縮発現能力により布帛にソフトストレッチ性を与えることのできるソフトストレッチ糸および製造方法ならびに布帛に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のサイドバイサイド複合糸で問題となっていた締め付け感の強さや布帛粗硬化の問題、糸斑による問題を解決し、従来よりソフトストレッチ性、均一染色性に優れた布帛を提供できるソフトストレッチ糸および製造方法ならびに布帛を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)2種のポリエステル(2種ともにポリプロピレンテレフタレートであることを除く)からなるサイドバイサイド複合糸または偏心芯鞘複合糸であって、ウースター斑が2.0%以下、糸の50%伸長に対する応力が30×10-3cN/dtex以下、回復率が60%以上を同時に満たすことを特徴とするソフトストレッチ糸。
・・・
(11)前記(1)~(6)および前記(10)のいずれかに記載のソフトストレッチ糸を少なくとも用いてなることを特徴とする布帛。
・・・
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来問題となっていた締め付け感の強さや布帛の粗硬化の問題を解決し、従来よりソフトストレッチ性に優れた布帛を提供できるソフトストレッチ糸および製造方法ならびに布帛を提供するものである。」
「【0041】
実施例1
溶融粘度400poiseの酸化チタンを含まないホモPPTと溶融粘度370poiseの酸化チタンを0.03重量%含むホモPETをそれぞれ260℃、285℃で別々に溶融し、絶対濾過径15μmのステンレス製不織布フィルターを用い別々に濾過を行った後、孔数12の平行合流複合紡糸口金(図2(a))から複合比1:1のサイドバイサイド複合糸(図3(b))として紡糸温度275℃で吐出した。この時の溶融粘度比は1.08であった。紡糸速度1500m/分で168dtex、12フィラメントの未延糸を巻き取り、その後ホットーローラーを有する延伸機を用い、第1ホットーローラーの温度70℃、第2ホットローラーの温度を130℃、延伸倍率3.00として延伸を行った。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり糸切れはなかった。製糸条件は表1に糸物性は表2に示すが、PPTが捲縮の内側に入り優れた捲縮発現能力を示した。また、E0の測定のための熱処理により発現する捲縮径が200μmと非常に細かく、また位相が揃っており非常に高品位のものとなった。さらに、これの初期引っ張り抵抗度は42cN/dtexと充分ソフトであり、乾熱収縮率も11%と充分低収縮性であった。また、収縮応力の極大を示す温度が128℃と充分高温であった。
・・・
【0043】
・・・
実施例2
溶融粘度2900poiseの酸化チタンを含まないホモPPTと溶融粘度370poiseの酸化チタンを0.03重量%含むホモPETをそれぞれ280℃、285℃で別々に溶融し、絶対濾過径15μmのステンレス製不織布フィルターを用い別々に濾過を行った後、孔数12の特開平9-157941号公報記載の挿入タイプ複合紡糸口金(図2(b))から複合比1:1のサイドバイサイド複合糸(図3(b))として紡糸温度275℃で吐出した。紡糸速度1350m/分で190dtex、12フィラメントの未延糸を巻き取り、その後ホットーローラーを有する延伸機を用い、第1ホットーローラーの温度80℃、第2ホットローラーの温度を135℃、延伸倍率3.40として延伸を行った。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり糸切れはなかった。製糸条件は表1に糸物性は表2に示すが、高粘度PPTが捲縮の内側に入り優れた捲縮発現能力を示した。また、E0の測定のための熱処理により発現する捲縮径が175μmと非常に細かく、また位相が揃っており非常に高品位のものとなった。さらに、これの初期引っ張り抵抗度は46cN/dtexと充分ソフトであり、乾熱収縮率も9%と充分低収縮性であった。また、収縮応力の極大を示す温度が130℃と充分高温であった。
・・・
【0046】
実施例5
紡糸速度を7000m/分に変更した以外は実施例1と同様の条件で溶融紡糸を行った。これは延伸を施すことなく、巻き取った状態で使用可能であった。これの物性値を表1に示すが、優れた捲縮発現能力を示した。また、E0の測定のための熱処理により発現する捲縮径が120μmと非常に細かく、また位相が揃っており非常に高品位のものとなった。さらに、乾熱収縮率は5%と充分低収縮性の糸であった。
・・・
【0049】
実施例8
実施例2において、PPTを溶融粘度1050poiseの酸化チタンを含まないPBTとした以外は実施例2と同様に製糸を行い、ソフトストレッチ糸を得た。製糸条件は表1に糸物性は表2に示すが、良好な捲縮発現能力を示した。ただし、50%伸長に対する回復率が70%未満であったため、ストレッチ性は実施例2に一歩譲るものであった。さらに、E0の測定のための熱処理により発現する捲縮径は280μmであり、また、捲縮の位相も実施例2に比較すると揃っておらず、捲縮の品位としては実施例2に一歩譲るものであった。さらに、これの初期引っ張り抵抗度は55cN/dtexとソフトさは実施例2に一歩譲るが、乾熱収縮率は12%と充分低収縮性であった。また、収縮応力の極大を示す温度が128℃と充分高温であった。
【0050】
実施例9
実施例5において、PPTを溶融粘度390poiseの酸化チタンを含まないPBTとし、紡糸速度を6000m/分とした以外は実施例5と同様に紡糸を行い、未延伸糸を得た。これを延伸倍率1.10とした以外は実施例1と同様に延伸を行い、ソフトストレッチ糸を得た。製糸条件は表1に糸物性は表2に示すが、良好な捲縮発現能力を示した。ただし、50%伸長に対する回復率が70%未満であったため、ストレッチ性は実施例5に一歩譲るものであった。さらに、E0の測定のための熱処理により発現する捲縮径は260μmであった。」
(6)引用文献6
引用文献6には、次の記載がある。
「【0017】
1.混繊交絡糸
本発明の混繊交絡糸は、単糸繊度が0.2~0.9dtexのポリエステル繊維Aと、単糸繊度が1.0~5.0dtexのポリエステル繊維Bとから構成されている。本発明の混繊交絡糸においては、ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの繊度を、それぞれこのような特定の範囲に設定することにより、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとを十分に絡めさせることができる。この絡まりにより、本発明の混繊交絡糸の表面部分において、相対的に細いポリエステル繊維Aによる突出部が形成されやすくなる。なお、本発明において、ポリエステル繊維Aによる突出部とは、混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aのループ、たるみなどによって、ポリエステル繊維Aが外側に突出した部分をいう。
【0018】
ここで、図1は、本発明の混繊交絡糸の一例の光学顕微鏡写真である。図1を参照しながら、本発明の混繊交絡糸の表面構造について説明する。本発明の混繊交絡糸の表面部分は、ポリエステル繊維Bに比して相対的に細いポリエステル繊維Aによる突出部が形成されている。混繊交絡糸の表面部分における微細な突出部は、相対的に細いポリエステル繊維Aにより形成されているため、突出部の上に水滴がのった場合に、水滴が混繊交絡糸の内側に移行しにくい。したがって、本発明の混繊交絡糸1を用いて織編物とすることにより、当該凸部において所謂ロータス効果を生じ、当該織編物に優れた撥水性能を発揮させることが可能となる。また、後述の通り、本発明の混繊交絡糸においては、特定の単糸繊度を有する2種類のポリエステル繊維A、Bを特定の質量比で混繊したものであるため、当該混繊交絡糸の表面部分には、相対的に細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合った部分が形成されている。そして、この細い繊維が絡み合った部分は、空気を保持しやすい層(空気保持層)を形成する。本発明の突出部は、ポリエステル繊維Aが絡み合ったこの部分から突出している。すなわち、ポリエステル繊維Aの突出部の内側(混繊交絡糸の内側)には、細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合って形成された上記の空気保持層が形成されているため、本発明の混繊交絡糸の内側に水分が移行しにくい。なお、本発明の混繊交絡糸において、当該空気保持層のさらに内側では、ポリエステル繊維A、Bとが絡み合っている。」
「【0058】
3.織編物
本発明の織編物は、上記混繊交絡糸を用いた織編物であり、従来公知の安価なフッ素系撥水剤などを使用することにより、織編物の構造を特段工夫せずとも、高い撥水性能を発揮することができる。以下、本発明の好ましい織編物について詳述する。
・・・
【0061】
上述の通り、本発明の織編物においては、織編物を構成する混繊交絡糸の表面構造を特定のものとすることにより、織編物の撥水性能を高めることを特徴としており、従来公知の安価なフッ素系撥水剤などを使用することによっても、優れた撥水性能を発揮することができる。したがって、本発明の織編物において、撥水加工に使用される撥水剤の組成は特に制限されない。」
(7)引用文献7
引用文献7には、次の記載がある。
「【0017】
[混繊交絡糸]
本発明の混繊交絡糸は、単糸繊度が0.2~0.9dtex、フィラメント数が40~120本、かつ総繊度20~40dtexのポリエステル繊維Aと、単糸繊度が1.0~5.0dtex、フィラメント数が8~20本、且つ総繊度が20~70dtexのポリエステル繊維Bから構成される。本発明の混繊交絡糸の総繊度は、40~110dtexであり、より好ましくは50~80dtexである。
本発明の混繊交絡糸においては、ポリエステル繊維A及びポリエステル繊維Bの繊度を、それぞれこのような特定の範囲に設定することにより、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとを十分に絡めさせることができる。この絡まりにより、本発明の混繊交絡糸の表面部分において、相対的に細いポリエステル繊維Aによる突出部が形成されやすくなる。なお、本発明において、ポリエステル繊維Aによる突出部とは、混繊交絡糸の表面部分において、ポリエステル繊維Aのループ、たるみなどによって、ポリエステル繊維Aが外側に突出した部分をいう。
【0018】
図1は、本発明の混繊交絡糸の一例の表面部分の光学顕微鏡写真である(倍率200倍にて撮影)。図1を参照しながら、本発明の混繊交絡糸の表面構造について説明する。本発明の混繊交絡糸の表面部分は、ポリエステル繊維Bに比して相対的に細いポリエステル繊維Aによる突出部が形成されている。混繊交絡糸の断面部分における微細な突出部は、相対的に細いポリエステル繊維Aが鞘部で芯部を包み込むことにより形成されているため、突出部の上に水滴がのった場合に、水滴が混繊交絡糸の内側に移行しにくい。したがって、本発明の混繊交絡糸を用いて織編物とすることにより、当該凸部において所謂ロータス効果を生じ、当該織編物に優れた撥水性能を発揮させることが可能となる。また、後述の通り、本発明の混繊交絡糸においては、特定の単糸繊度を有する2種類のポリエステル繊維A、Bを特定の質量比で混繊したものであるため、当該混繊交絡糸の表面部分には、相対的に細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合った部分が形成されている。そして、この細い繊維が絡み合った部分は、空気を保持しやすい層(空気保持層)を形成する。本発明の突出部は、ポリエステル繊維Aが絡み合ったこの部分から突出している。すなわち、ポリエステル繊維Aの突出部の内側(混繊交絡糸の内側)には、細いポリエステル繊維Aが緩やかに絡み合って形成された上記の空気保持層が形成されているため、本発明の混繊交絡糸の内側に水分が移行しにくい。なお、本発明の混繊交絡糸において、当該空気保持層のさらに内側では、ポリエステル繊維Aとポリエステル繊維Bとが絡み合っている。」
「【0063】
[織編物]
本発明の織編物は、しなやかで柔らかい風合い、清涼感、軽量性の向上を目的として上記のように総繊度の細い混繊交絡糸を用いた織編物である。通常、構成繊維を細繊度とした織編物は、撥水性に劣るものであるが、本発明においては、特定構成を有する混繊交絡糸を用いているために、構成繊維を細繊度のものとした場合であっても、従来公知の安価な撥水剤などを使用することにより、又は撥水剤を使用せずとも、織編物の構造を特段工夫せずとも(例えば、構成密度を高くせずとも)、実用上十分な撥水性能を発揮することができる。こうした織編物は、しなやかで柔らかい風合い、清涼感、軽量性に優れ、さらに撥水性が維持されているために、例えば春夏用衣料用途の布帛に、好ましく用途展開することができる。なお、本発明の織編物においては、55質量%以上の混率で上記混繊交絡糸を含むことが好ましい。以下、本発明の好ましい織編物について詳述する。
・・・
【0066】
上述の通り、本発明の織編物においては、織編物を構成する混繊交絡糸の表面構造を特定のものとすることにより、構成繊維として細繊度のものを使用しても、構成密度等を大きくすることなく織編物の撥水性能を高めることを特徴としている。そのため、従来公知の安価な撥水剤などを使用することにより、又は撥水剤を使用せずとも、優れた撥水性能を発揮することができる。したがって、本発明の織編物において、撥水加工に使用される撥水剤の組成は特に制限されない。」
(8)引用文献8
ア 引用文献8の記載
引用文献8には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートを含む潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いた混繊糸及び編織物に関する。より詳細には、ポリトリメチレンテレフタレートの、繊維としての特性と、混繊する相手素材の特徴を十分に生かした、ストレッチ性に優れた混繊糸及び編織物に関する。」
「【0019】潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント糸と混繊する相手素材としては、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント糸以外の他のマルチフィラメント糸であればよく、例えば、絹、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジック繊維、精製セルロース繊維、アセテート繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維(6000m/分以上の巻取り速度で紡糸されたいわゆるスピンテイクアップ糸、5000m/分以上の巻取り速度で紡糸されたいわゆるスピンドローテイクアップ糸を含む)、ナイロン繊維、アクリル繊維等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)があり、又、その繊維形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよい。
【0020】繊維の断面形態は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3~4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。糸条の形態としては、マルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。」
「【0026】織物の組織については、平、綾、朱子及びこれら変化組織がある。生機及び仕上げのカバファクター(CF)は、生機においては、経糸CF=800~3000、緯糸CF=600~2500、仕上げにおいては、経糸CF=900~3000、緯糸CF=700~2500である。
経糸CF=経糸密度(本/2.54cm)×Da0.5
緯糸CF=緯糸密度(本/2.54cm)×Db0.5
Da:経糸の総繊度(dtex)
Db:緯糸の総繊度(dtex)
本発明の編織物を染色加工するに際しては、編織物を構成する繊維素材の種類に応じて常法にしたがって行えばよく、例えば、精練、漂白、減量、染色、仕上げ加工(撥水加工や柔軟加工等)が施される。」
「【0031】
【参考例1】潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造
固有粘度の異なるサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを以下の製造例1~4により製造した。
(製造例1)通常のサイドバイサイド型複合繊維紡糸用口金を用いて、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを質量比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得た。次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は、高粘度側が[η]=0.90、低粘度側が[η]=0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。」
「【0035】
【実施例1~3、比較例1】キュプラマルチフィラメント糸84dtex/45fと、各製造例で得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して混繊糸を得た。経糸及び緯糸にこの混繊糸を用いて平織物を製織(経糸CF=1300、緯糸CF=940)した後、オープンソーパーで拡布精練し、染色、仕上げ加工した(経糸CF=1890、緯糸CF=1060)。
【0036】実施例1には製造例1の複合フィラメント糸、・・・をそれぞれ用いた。実施例1~3で得られた平織物は、緯方向の織物伸長率15%以上であり、キュプラ繊維特有の風合い(5級)があったが、比較例1で得られた平織物は、緯方向の織物伸長率10%程度であり、キュプラ繊維特有の風合い(2.5級)も実施例1に比べて劣ったものであった。
・・・
【0038】
【実施例4】実施例1において、キュプラマルチフィラメント糸の代わりにジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fを用いて混繊糸を作製した以外は、実施例1同様に、製織、仕上げを行った。得られた平織物は、緯方向の織物伸長率15%以上であり、ジアセテート特有の風合い(5級)であった。」
イ 引用文献8に記載された発明
上記アにより、引用文献8には、実施例4に着目すると次の発明が記載されている。
「通常のサイドバイサイド型複合繊維紡糸用口金を用いて、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを質量比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得て、次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント糸を得て(【0031】)、
ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して混繊糸を得て、経糸及び緯糸にこの混繊糸を用いて平織物を製織(経糸CF=1300、緯糸CF=940)した後、オープンソーパーで拡布精練し、染色、仕上げ加工して(経糸CF=1890、緯糸CF=1060)得られた平織物(【0035】、【0038】)。
ただし、経糸CF、緯糸CFは下記式により定義される(【0026】)。
経糸CF=経糸密度(本/2.54cm)×Da0.5
緯糸CF=緯糸密度(本/2.54cm)×Db0.5
Da:経糸の総繊度(dtex)
Db:緯糸の総繊度(dtex)」(以下「引用発明8」という。)
(9)特開2019-183307号公報(申立人2が提出した甲第25号証。以下「引用文献9」という。)
引用文献9には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に配慮した撥水性織物であって優れた撥水性を有する撥水性織物、および該撥水性織物を用いてなる衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ衣料、カジュアル衣料、傘地などの分野で撥水性を有する布帛が求められており、フッ素系撥水剤などの撥水剤を布帛に付着させることが行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、近年では、環境に配慮するため、生物に影響を及ぼす可能性のある化合物(例えば、パーフルオロオクタン酸やパーフルオロオクタンスルホン酸など)を使用しない非フッ素系撥水剤を使用した布帛が提案されている。(例えば、特許文献3参照)
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、環境に配慮した撥水性織物であって優れた撥水性を有する撥水性織物、および該撥水性織物を用いてなる衣料を提供することにある。」
「【0008】
・・・また、織物の撥水ころがり角度が22度以下であることが好ましい。また、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が4級以上であることが好ましい。また、JIS L0217法に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が3級以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の撥水性織物を用いてなる衣料が提供される。」
「【0032】
その際、撥水性としては、織物の撥水ころがり角度が25度以下(より好ましくは22度以下、特に好ましくは5~22度)であることが好ましい。」
「【実施例】
【0036】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
・・・
(9)撥水性(撥水ころがり角度)
水平版上に取りつけた平面状の被測定試料に0.2ccの水を静かに滴下し、この平板を等速度で静かに傾斜させ、水滴がころがりはじめるときの角度を撥水ころがり角度とした。なお、撥水ころがり角度が小さいほど撥水性が良好であり、25度以下を合格とする。
(10)撥水度
JIS L 1092 スプレー法により撥水度(級)を測定した。
・・・
【0037】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレートを用いて通常の紡糸装置から280℃で溶融紡糸し、2800m/分の速度で引取り、延伸することなく巻取り、半延伸されたポリエチレンテレフタレート糸条56dtex/36filを得た。次いで、該ポリエチレンテレフタレート糸条を用いて、延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(S方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行った。また、前記ポリエチレンテレフタレート糸条を用いて延伸倍率1.6倍、仮撚数2500T/m(Z方向)、ヒーター温度180℃、糸速350m/分の条件で同時延伸仮撚捲縮加工を行った。
【0038】
次いで、これらS方向のトルクを有する仮撚捲縮加工糸とZ方向の仮撚捲縮加工糸とを合糸してインターレース加工(交絡処理)を行い、複合糸(66dtex/72fil、捲縮率16%、トルク0T/m)を得た。インターレース加工は、インターレースノズルを用い、オーバーフィード率1.0%、圧空圧0.3MPa(3kgf/cm2)で50個/mのインターレース(交絡)を付与した。
【0039】
次いで、該複合糸を経糸および緯糸に配して、通常のウオータージェットルーム織機を使用して平組織の織物(前記複合糸だけで構成される織物)を織成した。
【0040】
次いで、U型ソフサーを用いて95℃で前記織物を拡布精練した後、液流染色機を用いて温度120℃でリラックス処理した。次いで、テンターを用いて温度190℃で該織物を中間セットした。次いで、液流染色機を用いて温度130℃で分散染料による染色加工を行った後、下記の撥水加工を施した。撥水加工は下記の加工剤を使用し、ピックアップ率80%で搾液し、130℃で3分間乾燥後170℃で45秒間熱処理を行った。
<加工剤組成>
・非フッ素撥水剤 5.0wt%
(日華化学(株)製、NeoseedNR-7080、炭化水素系化合物)
・メラミン樹脂 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスレジンM-3)
・触媒 0.3wt%
(住友化学(株)製、スミテックスアクセレレータACX)
・水 94.4wt%
次いで、テンターを用いて温度170℃で該織物をファイナルセットした。そして、ロール温度150℃、線圧300N/cmで該織物にカレンダー加工を行い、撥水性織物を得た。
【0041】
かくして得られた撥水性織物において、厚さ0.14mm、目付け90g/m2、嵩高性1.65、経密度131本/2.54cm、緯密度111/2.54cm、カバーファクターは1874、緯ストレッチ性7%、ころがり角度17度であった。該撥水性織物の表面に蓮の葉状の微細な凹凸が形成されており、該撥水性織物は撥水度4級、JIS L0217法に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において撥水度が3級であった。また、該撥水性織物には前記の撥水剤が付着しているので、該撥水性織物は環境に配慮した織物であった。かかる撥水性織物を用いてウインドブレーカー(スポーツ衣料)を縫製し、試験者が該ウインドブレーカーを着用したところ、該ウインドブレーカーは撥水性に優れていた。」
(10)特開2017-20133号公報(当審において発見した文献。以下「引用文献10」という。)
引用文献10には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度に織ることによって適度な防風性がありながら、織物表面に隙間が視覚的に見え、その隙間により部分的に通気性を持たせた軽量高密度織物、及びこれを使用した繊維製品に関する。本発明の織物は、特にアウトドアウェア、スポーツウェア、カジュアルウェア、または寝袋に使用するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
活動して発汗し易い衣料用途には、スポーツウェア;ウォーキング、ハイキング、トレッキング、登山等のアウトドアウェアがあり、これらほどの発汗は少ない衣料用途として、シャツ、パンツ、ブルゾン等のカジュアルウェアがある。
【0003】
一般にスポーツウェア、アウトドアウェアの用途には、強く、軽く、防風性、撥水防水性、保温性、吸水速乾性、伸縮性等の機能性のある織物が求められる。さらに、耐磨耗性、滑脱抵抗力、撥水性、防水性、透湿性等に関しては、繰返しの着用や洗濯でも容易に劣化しない耐久性に富む、品質の安定した織物が求められる。このため、強力や染色堅牢性に優れたナイロンやポリエステルのフィラメント糸が一般的に用いられる。」
「【0072】
本発明の織物では、染色後に撥水加工を行うことが好ましい。撥水仕上げ剤は、製品の着用や洗濯による滑脱防止のため、洗濯耐久性のあるものが好ましく、これに併用する硬め仕上げ剤としてコロイダルシリカ(日華化学製)、ポリエステル系高分子樹脂(高松油脂製)、変性シリコーンエマルジョン(吉村油化学製)などの市販品が好適に用いられる。撥水剤としては、例えばフッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤、パラフィン系撥水剤、ステアリン系撥水剤などの非フッ素系撥水剤などが用いられる。環境配慮の点からは、フッ素系撥水剤はC6タイプのものが望ましい。また、洗濯耐久性等を目的に、撥水仕上げ剤に、メラミン系樹脂、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等を加えてもかまわない。加工手段としては、パディング法、コーティング法、グラビア法、スプレー法などが適用できる。本発明においては、撥水仕上げした織物をスポーツウェア(アウトドアウェアを含む)用、特にストレッチ性を要求される用途に好適に用いられる。」
「【0080】
引裂き強力:JIS L1096 D法(ペンジュラム法)」
「【0104】
【表1】
[図:0001432041000001.jpg]
【0105】
【表2】
[図:0001432041000002.jpg]
」
(11)周知技術
ア 周知技術1
引用文献3~5(上記(3)~(5))に示されるように、布帛にストレッチ性を与えるための複合糸に用いる繊維として、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維は周知技術である(以下「周知技術1」という。)。
イ 周知技術2
引用文献6、7(上記(6)、(7))に示されるように、極細繊維と単繊維繊度が比較的大きい繊維とを交絡して得られる複合糸は、表面部分においてループ、たるみなどの突出部が形成されており、当該複合糸を布帛に用いた場合には、織編物の撥水性が高まることは周知技術である(以下「周知技術2」という。)。
ウ 周知技術3
引用文献9、10(上記(9)、(10))に示されるように、ストレッチ性を有する織物をスポーツ用の衣類等に用い、そのような用途において、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施すことは周知技術である(以下「周知技術3」という。)。
2 取消理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル成分とを、複合紡糸型溶融押出機に等量供給し、溶融し、紡糸口金の背面で両成分を合流させ、サイドバイサイド型に接合して紡出し、紡出した糸条を冷却固化した後、糸条を集束し、捲取り、次いで、得られた繊維を延伸して」得た「ポリエステル潜在捲縮糸」は、その構造上、伸縮性を有することは明らかである。そうすると、本件発明1の「伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維」とは、その択一的な記載も考慮すれば、「伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され」た「複合繊維」である限りで一致する。
引用発明1の「60dtex144fのポリエステル糸条」は、60/144=約0.42dtexの単繊維であるから、本件発明1の「単繊維繊度1dtex以下の極細繊維」に相当する。
引用発明1の「上記で得られた2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレースノズルへ2糸条を同時に導入して、ポリエステル複合加工糸を得て、次いで、得られたポリエステル複合加工糸を撚り止めセットして」得られた「加撚糸条」は、本件発明1の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸」であるとともに、「複合糸が空気混繊糸」であることに相当する。
引用発明1の「緯糸としてこの加撚糸条を用い、経糸としてポリエステル非捲縮糸44dtex24fを無撚りで用いて、経糸密度220本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cmのサテン織物を製織し、このサテン織物を精練し、リラックス処理した後、乾燥し、その後、中間セットし、次いで染色加工し、乾燥後、仕上げセットすることにより得た、織物」は、撥水性の有無はさておき、本件発明1の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含」む「布帛」にひとまず相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1-1]
「布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型にもしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸である布帛。」
[相違点1-1]
布帛に関して、本件発明1は、「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛」であるのに対して、引用発明1の「織物」は、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施していない点。
[相違点1-2]
伸縮性繊維の成分に関して、本件発明1は、「少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であ」るのに対して、引用発明1は、「高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル成分」によるものであり、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートを用いているか不明である点。
[相違点1-3]
本件発明1は、「空気混繊糸」が「(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)」ものであるのに対して、引用発明1は、「2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレースノズルへ2糸条を同時に導入して、ポリエステル複合加工糸を得」たものであるが、同時仮撚及び空気混繊の両方を施していない糸であるか不明な点。
イ 判断
(ア)相違点1-1について
引用発明1の織物は、優れたストレッチ性やストレッチバック性を付与するものであると認められる(引用文献1の【0006】~【0008】)ところ、ストレッチ性を有する織物をスポーツ用の衣類等に用い、そのような用途において、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施すことは周知技術3として示したとおり周知技術であり、引用発明1において、周知技術3を参考にして、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることに格別の困難性はない。
(イ)相違点1-2について
周知技術1として示したとおり、布帛にストレッチ性を与えるための複合糸に用いる繊維として、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維は周知技術である。
引用文献1に記載されたポリエステル複合加工糸は、「ポリエステル潜在捲縮糸と他のポリエステル糸とを複合混繊」(【0001】)したものであるところ、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの繊維は、ポリエステル潜在捲縮糸であるから、引用発明1における「ポリエステル潜在捲縮糸」として、周知技術1の複合繊維を用いて、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
(ウ)相違点1-3について
引用発明1の「ポリエステル複合加工糸」は、「ポリエステル潜在捲縮糸」と「ポリエステル糸条」の「2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレースノズルへ2糸条を同時に導入して」得たものであるところ、その製造過程からみて、「ポリエステル潜在捲縮糸」と「ポリエステル糸条」は同時仮撚を施したものではない。
そうすると、相違点1-3は実質的な相違点ではない。
仮に相違点1-3が実質的なものであるとしても、同時仮撚を施したものとしないことに格別の困難性はない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル成分とを、複合紡糸型溶融押出機に等量供給し、溶融し、紡糸口金の背面で両成分を合流させ、サイドバイサイド型に接合して紡出し、紡出した糸条を冷却固化した後、糸条を集束し、捲取り、次いで、得られた繊維を延伸して」得た「ポリエステル潜在捲縮糸」は、上述(1)アと同様、本件発明2の「伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維」に相当する。
引用発明1の「60dtex144fのポリエステル糸条」は、60/144=約0.42dtexの単繊維であるから、本件発明2の「単繊維繊度1dtex以下の極細繊維」に相当する。
引用発明1の「上記で得られた2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレースノズルへ2糸条を同時に導入して、ポリエステル複合加工糸を得て、次いで、得られたポリエステル複合加工糸を撚り止めセットして」得られた「加撚糸条」は、本件発明2の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸」であるとともに、「複合糸が空気混繊糸」であることに相当する。
引用発明1の「緯糸としてこの加撚糸条を用い、経糸としてポリエステル非捲縮糸44dtex24fを無撚りで用いて、経糸密度220本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cmのサテン織物を製織し、このサテン織物を精練し、リラックス処理した後、乾燥し、その後、中間セットし、次いで染色加工し、乾燥後、仕上げセットすることにより得た、織物」は、撥水性の有無及び複合糸が経糸と緯糸に配されているか否かはさておき、本件発明2の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含」む「布帛」にひとまず相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1-2]
「布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸である布帛。」
[相違点1-4]
布帛に関して、本件発明2は、「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛」であるのに対して、引用発明1の「織物」は、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施していない点。
[相違点1-5]
本件発明2は、「空気混繊糸」が「(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)」ものであるのに対して、引用発明1は、「2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレースノズルへ2糸条を同時に導入して、ポリエステル複合加工糸を得」たものであるが、同時仮撚及び空気混繊の両方を施していない糸であるか不明な点。
[相違点1-6]
本件発明2の「布帛」は、「CF=(DWp/1.1) 1/2×MWp+(DWf/1.1) 1/2×MWf[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]」という式で定義される「カバーファクターCFが1000以上」であるのに対して、引用発明1のカバーファクターCFは不明である点。
[相違点1-7]
本件発明2は、「前記極細繊維が非捲縮繊維であ」るのに対して、引用発明1は、「60dtex144fのポリエステル糸条」が非捲縮繊維であるか不明な点。
[相違点1-8]
本件発明2は、「前記複合糸が経糸および緯糸に配されてなる」のに対して、引用発明1は、「加撚糸条」が経糸に配されていない点。
イ 判断
(ア)相違点1-4、相違点1-5について
相違点1-4、相違点1-5は、相違点1-1、相違点1-3と同様であり、その判断は、上記(1)イ(ア)、(ウ)で説示したとおりである。
(イ)相違点1-6について
引用発明1のカバーファクターCFは次のとおり計算される。
DWp=44(dtex)
MWp=220(本/2.54cm)
DWf=120(dtex)(=(56+60)×(1+0.035))
MWf=120(本/2.54cm)
CF=(44/1.1)1/2×220+(120/1.1)1/2×120
=2645
そうすると、引用発明1のカバーファクターCFは1000以上であり、相違点1-6は実質的な相違点ではない。
仮に相違点1-6が実質的なものであるとしても、布帛においてカバーファクターをどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、引用発明1において相違点1-6に係る本件発明2の構成とすることに格別の困難性はない。
(ウ)相違点1-7について
引用発明1では、「高溶融粘度ポリエステル成分と低溶融粘度ポリエステル成分」から「ポリエステル潜在捲縮糸」を作成していること、また、引用文献1には、「潜在捲縮糸以外のポリエステル糸条」として、「特に限定されるものでなく、複数のフィラメントからなる、所謂ポリエステルマルチフィラメント糸条でありさえすればよい。」(【0038】)と記載されていることからみて、あえて潜在捲縮糸とされていない「60dtex144fのポリエステル糸条」は、非捲縮繊維であると解釈することが整合的である。
また、仮にそうではないとしても、引用文献1の当該記載を参考にして、引用発明1における「60dtex144fのポリエステル糸条」を非捲縮繊維とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(エ)相違点1-8について
引用発明1の「加撚糸条」を経緯の両方に用いるかいずれか一方に用いるかは、織物に求められる伸縮性に応じて当業者が適宜決め得ることであり、引用発明1の「加撚糸条」を織物の経糸にも用いることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
ウ 小括
よって、本件発明2は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と引用発明1とを対比すると、両者は、上記相違点1-1~相違点1-8に加えて、次の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点1-9]
本件発明3は、「前記極細繊維からなる微細繊維ループが布帛表面に形成されている」のに対して、引用発明1はそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
相違点1-1~相違点1-8についての判断は上記(1)イ(ア)~(ウ)、(2)イ(ア)~(エ)で説示したとおりである。
相違点1-9について検討する。
引用発明1に係る織物は、製織したサテン織物を、精練し、リラックス処理した後、乾燥し、その後、中間セットし、次いで染色加工し、乾燥後、仕上げセットすることにより得たものであるから、これら工程における熱処理により、ポリエステル潜在捲縮糸とポリエステル糸条に糸長差が生じ、ポリエステル糸条のループが織物表面に形成されている蓋然性が高く、周知技術2も踏まえれば、相違点1-9は実質的な相違点ではない。
仮に相違点1-9が実質的なものであるとしても、引用発明1において、ポリエステル糸条のループが織物表面に形成されるようにし、相違点1-9に係る本件発明3の構成とすることに格別の困難性はない。
ウ 小括
よって、本件発明3は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
布帛において、撥水性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、撥水ころがり角度が小さいほうが撥水性が良好であること(引用文献9の【0036】)、また、撥水ころがり角度として15度以下のものが特別なものでもないこと(引用文献9の【0032】)から、引用発明1において、本件発明4で特定された程度の撥水性を付与することは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明4は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5、6について
布帛において、撥水性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が4級以上であることが好ましく、また、JIS L0217法に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が3級以上であることが好ましいこと(引用文献9の【0008】)が知られていることから、引用発明1において、本件発明5、6で特定された程度の撥水性を付与することは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明5、6は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明7について
引用発明1は、織編物に優れたストレッチ性を付与するものである(引用文献1の【0008】)ところ、布帛において、ストレッチ性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、ストレッチ性(伸長性)をJIS L1096:2011(B法、定荷重法)により測定することが知られていること(引用文献4の【0027】)、ストレッチ性(伸長率)として10%以上のものが特別なものでもないこと(引用文献4の【0025】)から、引用発明1において、本件発明7で特定された程度のストレッチ性とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明7は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明8について
引用発明1は、織編物にストレッチバック性を含めた優れたストレッチ性を付与するものである(引用文献1の【0006】、【0008】)ところ、布帛において、ストレッチ性回復率をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、ストレッチ性回復率(伸長回復率)をJIS L1096:2011(B法、定荷重法)により測定することが知られていること(引用文献4の【0027】)、ストレッチ性回復率(伸長回復率)として85%以上のものが特別なものでもないこと(引用文献4の【0025】)から、引用発明1において、本件発明8で特定された程度のストレッチ性回復率とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明8は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件発明9について
ア 対比
上記(2)アの相当関係を踏まえると、本件発明9と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1-3]
「布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸である布帛。」
[相違点1-10]
布帛に関して、本件発明9は、「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる」「撥水性布帛」であるのに対して、引用発明1の「織物」は、撥水加工を施していない点。
[相違点1-11]
本件発明9は、「空気混繊糸」が「(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)」ものであるのに対して、引用発明1は、「2糸条にそれぞれ3.5%のオーバーフィードを掛けながら、インターレースノズルへ2糸条を同時に導入して、ポリエステル複合加工糸を得」たものであるが、同時仮撚及び空気混繊の両方を施していない糸であるか不明な点。
[相違点1-12]
本件発明9の「布帛」は、「CF=(DWp/1.1) 1/2×MWp+(DWf/1.1) 1/2×MWf[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]」という式で定義される「カバーファクターCFが1000以上」であるのに対して、引用発明1のカバーファクターCFは不明である点。
[相違点1-13]
本件発明9は、「JIS L1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が4級以上であり、JIS L0217-1995に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が3級以上であ」るのに対して、引用発明1は、撥水性が不明な点。
[相違点1-14]
本件発明9は、「JIS L1096-2010 8.16 B法により測定した、経方向または緯方向のストレッチ性が10%以上であ」るのに対して、引用発明1は、ストレッチ性が不明な点。
[相違点1-15]
本件発明9は、「JIS L1096-2010 8.17 D法により測定した、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上であ」るのに対して、引用発明1は、引裂強度が不明な点。
イ 判断
(ア)相違点1-10~相違点1-12について
相違点1-10~相違点1-12は、相違点1-1、相違点1-3、相違点1-6と同様であり、その判断は、上記(1)イ(ア)、(ウ)、(2)イ(イ)で説示したとおりである。
(イ)相違点1-13について
相違点1-13についての判断は、上記(5)で説示したものと同様である。
(ウ)相違点1-14について
相違点1-14についての判断は、上記(6)で説示したものと同様である。
(エ)相違点1-15について
布帛において、引裂強度をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、引裂強度(引裂き強力)をJIS L1096 D法(ペンジュラム法)により測定することが知られていること(引用文献10の【0080】)、経方向または緯方向の引裂強度(引裂き強力)として7N以上のものが特別なものでもないこと(引用文献10の【0104】【表1】の実施例1~3、【0105】【表2】の実施例4、5)から、引用発明1において、本件発明9で特定された程度の引裂強度とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
ウ 小括
よって、本件発明9は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)本件発明10について
引用発明1における「織物」は本件発明10の「繊維製品」にも相当する。
そうすると、本件発明10は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)取消理由1のまとめ
本件発明1~10は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 取消理由2(進歩性)について
(1)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「コンジュゲート糸」は、「並列型複合紡糸したUY(未延伸糸)を熱延伸して得た」ものであるから、その構造からみて2成分がサイドバイサイド型に接合された複合繊維であると理解でき、また、「コンジュゲート糸の仮撚糸」は、「伸縮復元率(CR)32.1%」、「捲縮発現伸長率(TR)35%」であって伸縮性を有するものであるから、当該「コンジュゲート糸の仮撚糸」は、本件発明9の「2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であ」る「伸縮性繊維」に相当する。
引用発明2の「ポリエステルマルチフィラメント糸50D-72Fの仮撚加工糸」は、50/72=約0.69単繊維度であるから、本件発明9の「単繊維繊度1dtex以下の極細繊維」に相当する。
引用発明2の「前記コンジュゲート糸の仮撚糸と、通常のポリエステルマルチフィラメント糸50D-72Fの仮撚加工糸(CR32%)とを、通常の混繊機(愛機製作所(株)製エアー混繊機AT-510型)にて、コンジュゲート糸の仮撚糸(75D-18F)に対してマルチフィラメント糸の仮撚糸(50D-96F)を5%のオーバーフィードで供給し、圧空2.5kg/cm2 、ノズル1.6mmφ×1穴で交絡処理しつつ、糸速500m/分で複合加工を実施して」得た「複合加工糸」は、本件発明9の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸」であるとともに、「複合糸が空気混繊糸」であるということに相当する。
引用発明2の「複合加工糸を1,000T/M(撚係数11,314)を追撚したものを経糸として使用し、緯糸には複合加工糸2本を400T/M(撚係数6,400)で合撚し、生機密度を90×70本/25.4mmの平織を製織し、そして通常の染色仕上加工により、密度102×82本/25.4mmに仕上げて得た」「織物」は、撥水加工の有無はさておき、本件発明9の「布帛」にひとまず相当する。また、引用発明2の「織物」は、複合加工糸を用いたものであるから、本件発明9の「該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み」に相当する。
そうすると、本件発明9と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸である布帛。」
[相違点2-1]
布帛に関して、本件発明1は、「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる撥水性布帛」であるのに対して、引用発明2の「織物」は、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施していない点。
[相違点2-2]
本件発明1は、「空気混繊糸」が「(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)」ものであるのに対して、引用発明2は、「前記コンジュゲート糸の仮撚糸と、通常のポリエステルマルチフィラメント糸50D-72Fの仮撚加工糸(CR32%)とを、通常の混繊機(愛機製作所(株)製エアー混繊機AT-510型)にて、コンジュゲート糸の仮撚糸(75D-18F)に対してマルチフィラメント糸の仮撚糸(50D-96F)を5%のオーバーフィードで供給し、圧空2.5kg/cm2 、ノズル1.6mmφ×1穴で交絡処理しつつ、糸速500m/分で複合加工を実施して」得たものではあるが、同時仮撚及び空気混繊の両方を施していない糸であるか不明な点。
[相違点2-3]
本件発明9の「布帛」は、「CF=(DWp/1.1) 1/2×MWp+(DWf/1.1) 1/2×MWf[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]」という式で定義される「カバーファクターCFが1000以上」であるのに対して、引用発明2のカバーファクターCFは不明である点。
[相違点2-4]
本件発明9は、「JIS L1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が4級以上であり、JIS L0217-1995に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が3級以上であ」るのに対して、引用発明2は、撥水度が不明な点。
[相違点2-5]
本件発明9は、「JIS L1096-2010 8.16 B法により測定した、経方向または緯方向のストレッチ性が10%以上であ」るのに対して、引用発明2は、ストレッチ性が不明な点。
[相違点2-6]
本件発明9は、「JIS L1096-2010 8.17 D法により測定した、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上であ」るのに対して、引用発明2は、引裂強度が不明な点。
イ 判断
(ア)相違点2-1について
引用文献2の【0002】、【0003】の記載に鑑みれば、引用発明2における織物の用途として、アウターウエアーやスポーツ衣料に用いることを想定していることが理解できる。そして、用途に応じて布帛に撥水処理を施すか否かは、当業者が適宜決め得ることであるところ、ストレッチ性を有する織物をスポーツ用の衣類等に用い、そのような用途において、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施すことは周知技術3として示したとおり周知技術であり、引用発明2において、周知技術3を参考にして、相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることに格別の困難性はない。
(イ)相違点2-2について
引用発明2の「複合加工糸」は、「前記コンジュゲート糸の仮撚糸と、通常のポリエステルマルチフィラメント糸50D-72Fの仮撚加工糸(CR32%)とを、通常の混繊機(愛機製作所(株)製エアー混繊機AT-510型)にて、コンジュゲート糸の仮撚糸(75D-18F)に対してマルチフィラメント糸の仮撚糸(50D-96F)を5%のオーバーフィードで供給し、圧空2.5kg/cm2 、ノズル1.6mmφ×1穴で交絡処理しつつ、糸速500m/分で複合加工を実施して」得たものであるところ、その製造過程からみて、「コンジュゲート糸の仮撚糸」と「通常のポリエステルマルチフィラメント糸50D-72Fの仮撚加工糸」は同時仮撚を施したものではない。
そうすると、相違点2-2は実質的な相違点ではない。
仮に相違点2-2が実質的なものであるとしても、同時仮撚を施したものとしないことに格別の困難性はない。
(ウ)相違点2-3について
引用発明2の「織物」は、「密度102×82本/25.4mm」であるが、経緯の方向が記載されていないため、引用発明2のカバーファクターCFについて、経緯の方向を場合分けして計算する。
a 「密度102×82本/25.4mm」が経方向×緯方向の場合
DWp=142(dtex)(=128デニール×1.11)
MWp=102(本/2.54cm)
DWf=284(dtex)(=128デニール×1.11×2本合撚)
MWf=82(本/2.54cm)
CF=(142/1.1)1/2×102+(284/1.1)1/2×82
=2476
b 「密度102×82本/25.4mm」が緯方向×経方向の場合
DWp=142(dtex)(=128デニール×1.11)
MWp=82(本/2.54cm)
DWf=284(dtex)(=128デニール×1.11×2本合撚)
MWf=102(本/2.54cm)
CF=(142/1.1)1/2×82+(284/1.1)1/2×102
=2571
そうすると、「密度102×82本/25.4mm」の経緯の方向がいずれであったとしても、引用発明2のカバーファクターCFは1000以上であり、相違点2-3は実質的な相違点ではない。
仮に相違点2-3が実質的なものであるとしても、布帛においてカバーファクターをどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、引用発明2において相違点2-3に係る本件発明9の構成とすることに格別の困難性はない。
(エ)相違点2-4について
布帛において、撥水性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が4級以上であることが好ましく、また、JIS L0217法に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が3級以上であることが好ましいこと(引用文献9の【0008】)が知られていることから、引用発明2において、本件発明9で特定された程度の撥水性を付与することは、当業者が適宜なし得たことである。
(オ)相違点2-5について
引用発明2は、着用時に快適な着心地を与える適度な伸縮性(ストレッチ性)を有する織物を提供するものである(引用文献2の【0006】)ところ、布帛において、ストレッチ性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、ストレッチ性(伸長性)をJIS L1096:2011(B法、定荷重法)により測定することが知られていること(引用文献4の【0027】)、ストレッチ性(伸長率)として10%以上のものが特別なものでもないこと(引用文献4の【0025】)から、引用発明2において、本件発明9で特定された程度のストレッチ性とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(カ)相違点2-6について
布帛において、引裂強度をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、引裂強度(引裂き強力)をJIS L1096 D法(ペンジュラム法)により測定することが知られていること(引用文献10の【0080】)、経方向または緯方向の引裂強度(引裂き強力)として7N以上のものが特別なものでもないこと(引用文献10の【0104】【表1】の実施例1~3、【0105】【表2】の実施例4、5)から、引用発明2において、本件発明9で特定された程度の引裂強度とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
ウ 小括
よって、本件発明9は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明10について
引用発明2における「織物」は本件発明10の「繊維製品」にも相当する。
そうすると、本件発明10は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)取消理由2のまとめ
本件発明9、10は、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 取消理由3(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明8とを対比する。
引用発明8の「固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを質量比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得て、次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し」て得られた「56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント糸」は、その構造上、伸縮性を有することは明らかである。そうすると、本件発明1の「2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であ」る「伸縮性繊維」に相当する。
引用発明8の「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55f」は、本件発明1の「単繊維繊度1dtex以下の極細繊維」に相当する。
引用発明8の「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して」得た「混繊糸」は、本件発明1の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸」であるとともに、「複合糸が空気混繊糸」であることに相当する。
引用発明8の「経糸及び緯糸にこの混繊糸を用いて平織物を製織(経糸CF=1300、緯糸CF=940)した後、オープンソーパーで拡布精練し、染色、仕上げ加工して(経糸CF=1890、緯糸CF=1060)得られた」「平織物」は、本件発明1の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含」む「布帛」に相当する。
引用発明8の「平織物」と本件発明1の「撥水加工を施してなる」「撥水性布帛」とは、布帛の限りで一致する。
そうすると、本件発明1と引用発明8との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3-1]
「布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸である布帛。」
[相違点3-1]
布帛に関して、本件発明1は「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる」「撥水性布帛」であるのに対して、引用発明8の「平織物」は、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施していない点。
[相違点3-2]
空気混繊糸である複合糸に関して、本件発明1は、「空気混繊糸」が「(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)」ものであるのに対して、引用発明8は、「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して」得た「混繊糸」であって、同時仮撚及び空気混繊の両方を施していない糸であるか不明な点。
イ 判断
(ア)相違点3-1について
引用文献8の【0026】には、仕上げ加工として撥水加工が例示されている。そして、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施すことは周知技術3として示したとおり周知技術であり、引用発明8において、周知技術3を参考にして、相違点3-1に係る本件発明1の構成とすることに格別の困難性はない。
(イ)相違点3-2について
引用発明8の「混繊糸」は、「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して」得たものであるところ、その製造過程からみて、「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55f」と「複合フィラメント糸」は同時仮撚を施したものではない。
そうすると、相違点3-2は実質的な相違点ではない。
仮に相違点3-2が実質的なものであるとしても、同時仮撚を施したものとしないことに格別の困難性はない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と引用発明8とを対比する。
引用発明8の「固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを質量比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得て、次いで、ホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し」て得られた「56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント糸」は、本件発明2の「2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合された複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であ」る「伸縮性繊維」に相当する。
引用発明8の「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55f」は、本件発明2の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維」に相当する。
引用発明8の「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して」得た「混繊糸」は、本件発明1の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸」であるとともに、「複合糸が空気混繊糸」であることに相当する。
引用発明8の「経糸及び緯糸にこの混繊糸を用いて平織物を製織(経糸CF=1300、緯糸CF=940)した後、オープンソーパーで拡布精練し、染色、仕上げ加工して(経糸CF=1890、緯糸CF=1060)得られた」「平織物」は、本件発明2の「伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含」み、「前記複合糸が経糸及び緯糸に配されてなる」「布帛」に相当する。
引用発明8の「平織物」と本件発明2の「撥水加工を施してなる」「撥水性布帛」とは、布帛の限りで一致する。
引用発明8の「平織物」について、本件発明2で定義された「カバーファクターCF」を計算すると、「2812」(=1890/(1.1)1/2+1060/(1.1)1/2)と計算されるから、引用発明8の「平織物」が「経糸CF=1890、緯糸CF=1060」であることは、本件発明2の「布帛が、カバーファクターCFが1000以上の織物であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明2と引用発明8との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3-2]
「布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)であり、
布帛が、カバーファクターCFが1000以上の織物であり、前記複合糸が経糸及び緯糸に配されてなる布帛。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]」
[相違点3-3]
布帛に関して、本件発明2は「非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施してなる」「撥水性布帛」であるのに対して、引用発明8の「平織物」は、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施していない点。
[相違点3-4]
空気混繊糸である複合糸に関して、本件発明2は、「空気混繊糸」が「(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)」ものであるのに対して、引用発明8は、「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して」得た「混繊糸」であって、同時仮撚及び空気混繊の両方を施していない糸であるか不明な点。
[相違点3-5]
本件発明2は、「前記極細繊維が非捲縮繊維であ」るのに対して、引用発明8の「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55f」が非捲縮繊維であるか不明である点。
イ 判断
(ア)相違点3-3、相違点3-4について
相違点3-3、相違点3-4は、それぞれ相違点3-1、相違点3-2と同様であり、その判断は、それぞれ上記(1)イ(ア)、(イ)で説示したとおりである。
(イ)相違点3-5について
引用文献8の【0019】、【0020】には、「潜在捲縮発現性ポリエステル繊維マルチフィラメント糸と混繊する相手素材」として、「糸条の形態としては、マルチフィラメント原糸(極細糸を含む)」と記載されていることから、引用発明8の「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55f」は「原糸」、すなわち非捲縮繊維であり、相違点3-5は実質的な相違点ではない。
仮に相違点3-5が実質的なものであるとしても、引用文献8の上記記載を参考にして、引用発明8の「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55f」を非捲縮繊維のものとすることに格別の困難性はない。
ウ 小括
よって、本件発明2は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
引用発明8に係る平織物に用いられる「混繊糸」は、「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して」得られたものであるから、周知技術2も踏まえれば、当該交絡によって、ジアセテートマルチフィラメント糸のループが「混繊糸」に形成され、それにより極細繊維であるジアセテートマルチフィラメント糸のループが平織物表面に形成されている蓋然性が高い。
仮にそうでないとしても、引用発明8において、ジアセテートマルチフィラメント糸のループが織物表面に形成される構成とすることに格別の困難性はない。
よって、本件発明3は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
布帛において、撥水性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、撥水ころがり角度が小さいほうが撥水性が良好であること(引用文献9の【0036】)、また、撥水ころがり角度として15度以下のものが特別なものでもないこと(引用文献9の【0032】)から、引用発明8において、本件発明4で特定された程度の撥水性を付与することは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明8は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5、6について
布帛において、撥水性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が4級以上であることが好ましく、また、JIS L0217法に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092 スプレー法により測定した、撥水度が3級以上であることが好ましいこと(引用文献9の【0008】)が知られていることから、引用発明8において、本件発明5、6で特定された程度の撥水性を付与することは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明5、6は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明7について
引用発明8は、ストレッチ性に優れた編織物に関するものである(引用文献8の【0001】)ところ、布帛において、ストレッチ性をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、ストレッチ性(伸長性)をJIS L1096:2011(B法、定荷重法)により測定することが知られていること(引用文献4の【0027】)、ストレッチ性(伸長率)として10%以上のものが特別なものでもないこと(引用文献4の【0025】)から、引用発明8において、本件発明7で特定された程度のストレッチ性とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明7は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明8について
引用発明8は、ストレッチ性に優れた編織物に関するものである(引用文献8の【0001】)ところ、布帛において、ストレッチ性回復率をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、ストレッチ性回復率(伸長回復率)をJIS L1096:2011(B法、定荷重法)により測定することが知られていること(引用文献4の【0027】)、ストレッチ性回復率(伸長回復率)として85%以上のものが特別なものでもないこと(引用文献4の【0025】)から、引用発明8において、本件発明8で特定された程度のストレッチ性回復率とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
よって、本件発明8は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件発明9について
ア 対比
上記(2)アの相当関係を踏まえると、本件発明9と引用発明8との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点3-3]
「布帛であって、該布帛が、伸縮性繊維と単繊維繊度1dtex以下の極細繊維とを含む複合糸を含み、
前記伸縮性繊維が、2成分がサイドバイサイド型もしくは偏心芯鞘型に接合され、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである複合繊維、またはポリトリメチレンテレフタレート繊維であり、
前記複合糸が空気混繊糸(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)であり、
布帛が、カバーファクターCFが1000以上の織物である布帛。
ただし、カバーファクターCFは下記式により定義される。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
[DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。]」
[相違点3-6]
布帛に関して、本件発明9は「撥水加工を施してなる」「撥水性布帛」であるのに対して、引用発明8の「平織物」は、非フッ素撥水剤を用いた撥水加工を施していない点。
[相違点3-7]
空気混繊糸である複合糸に関して、本件発明9は、「空気混繊糸」が「(ただし、同時仮撚及び空気混繊の両方を施した糸を除く。)」ものであるのに対して、引用発明8は、「ジアセテートマルチフィラメント糸55d/55fと、得られた複合フィラメント糸(2%オーバーフィード)をインターレース混繊により80ケ/mの交絡を付与して」得た「混繊糸」であって、同時仮撚及び空気混繊の両方を施していない糸であるか不明な点。
[相違点3-8]
本件発明9は、「JIS L1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が4級以上であり、JIS L0217-1995に規定された洗濯(但し、JAFET標準配合洗剤を使用)を10回行った後において、JIS L 1092-2009 7.2 はっ水度試験(スプレー法)により測定した、撥水度が3級以上であ」るのに対して、引用発明8は、撥水性が不明な点。
[相違点3-9]
本件発明9は、「JIS L1096-2010 8.16 B法により測定した、経方向または緯方向のストレッチ性が10%以上であ」るのに対して、引用発明8は、ストレッチ性が不明な点。
[相違点3-10]
本件発明9は、「JIS L1096-2010 8.17 D法により測定した、経方向または緯方向の引裂強度が7N以上であ」るのに対して、引用発明8は、引裂強度が不明な点。
イ 判断
(ア)相違点3-6、相違点3-7について
相違点3-6、相違点3-7は、それぞれ相違点3-1、相違点3-2と同様であり、その判断は、それぞれ上記(1)イ(ア)、(イ)で説示したとおりである。
(イ)相違点3-8について
相違点3-8についての判断は、上記(5)で説示したものと同様である。
(ウ)相違点3-9について
相違点3-9についての判断は、上記(6)で説示したものと同様である。
(エ)相違点3-10について
布帛において、引裂強度をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、引裂強度(引裂き強力)をJIS L1096 D法(ペンジュラム法)により測定することが知られていること(引用文献10の【0080】)、経方向または緯方向の引裂強度(引裂き強力)として7N以上のものが特別なものでもないこと(引用文献10の【0104】【表1】の実施例1~3、【0105】【表2】の実施例4、5)から、引用発明8において、本件発明9で特定された程度の引裂強度とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
ウ 小括
よって、本件発明9は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)本件発明10について
引用発明8における「平織物」は本件発明10の「繊維製品」にも相当する。
そうすると、本件発明10は、引用発明8、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(10)取消理由3のまとめ
本件発明1~10は、引用文献8に記載された発明、引用文献8に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700859