特許異議申立
2024-700748
固体有機過酸化物組成物
- 審判番号
- 2024-700748
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-519741
- 登録番号
- 7436470
- 請求日
- 2024年08月08日
- 審決日
- 2025年06月10日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】片山 英二
- 【権利者代理人】大森 規雄
- 【権利者代理人】猪狩 俊博
- 【異議申立人】小池 良
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 冨永 保
- 審判官 天野 皓己
- 分類
- P1652.113-ZC (C07C) / P1652.121-ZC (C07C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7436470号発明「固体有機過酸化物組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7436470号の請求項1~3、5及び14に係る特許を取り消す。
同請求項4、6及び11~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7436470号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和元年(2019年)10月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年10月12日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、令和6年2月13日に特許権の設定登録がされ、同年同月21日にその特許掲載公報が発行され、同年8月8日に、その請求項1~6及び11~14に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 小池 良(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
当審は、同年12月24日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。
第2 本件発明
本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~6及び11~14の記載は、次のとおりである(以下、請求項1~6及び11~14に係る発明を、番号順に「本件発明1」等といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
室温で固体である有機過酸化物組成物であって、
前記組成物全体の重量基準で少なくとも40wt%の、室温で固体である有機過酸化物であって、ペルオキシ二炭酸エステルおよびジアシル過酸化物から選択される有機過酸化物と、
前記組成物中の有機過酸化物の重量基準で0.001~5wt%の、室温で固体であるHCl捕捉剤と、
を含み、
前記HCl捕捉剤が、金属カルボン酸塩(ただし、ラウリン酸ナトリウム、4-メチル安息香酸ナトリウムを除く)、金属酸化物(ただし、親水性シリカを除く)、金属(重)炭酸塩、金属ケイ酸塩、アニオン性クレー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、有機過酸化物組成物。
【請求項2】
前記組成物中の有機過酸化物の重量基準で、0.005~2.5wt%の前記HCl捕捉剤を含む、請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項3】
前記組成物全体の重量基準で、少なくとも85wt%の前記有機過酸化物を含む、請求項1に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項4】
前記有機過酸化物が、ペルオキシ二炭酸ジセチル、ペルオキシ二炭酸ジミリスチル、ペルオキシ二炭酸ジシクロヘキシル、およびペルオキシ二炭酸ジ(tert-ブチルシクロヘキシル)からなる群から選択されるペルオキシ二炭酸エステルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項5】
前記有機過酸化物が、少なくとも10個の炭素原子の脂肪族鎖を有する脂肪族ジアシル過酸化物、過酸化ジベンゾイル、および置換過酸化ジベンゾイルからなる群から選択されるジアシル過酸化物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機過酸化物組成物。
【請求項6】
前記HCl捕捉剤が、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル-2-乳酸カルシウム、CaO、炭酸カルシウム、およびアニオン性クレーからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の有機過酸化物組成物。」
「【請求項11】
前記有機過酸化物および前記HCl捕捉剤を物理的に混合するステップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機過酸化物組成物を製造するための方法。
【請求項12】
前記HCl捕捉剤が、前記有機過酸化物が製造される反応器に加えられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機過酸化物組成物を製造するための方法。
【請求項13】
前記HCl捕捉剤を溶融有機過酸化物に加えるステップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機過酸化物組成物を製造するための方法。
【請求項14】
ポリプロピレンの改変のための、請求項1~6のいずれか1項に記載の有機過酸化物組成物の使用。」
第3 取消理由及びこれに対する当審の判断
1 取消理由の概要
本件発明1~3、5及び14に係る特許に対して、当審が令和6年12月24日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。
[取消理由1](新規性欠如)
本件特許の請求項1~3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3及び5に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[取消理由2](進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3、5及び14に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3、5及び14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(1)取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
・取消理由1(新規性欠如)
・本件発明1~3及び5
・引用文献 甲第1号証(主引例)及び甲第3号証(周知技術文献)
・取消理由2(進歩性欠如)
・本件発明1~3、5及び14
・引用文献 甲第1号証(主引例)、甲第3号証(周知技術文献)及び参考文献3(周知技術文献)
(2)引用文献等
甲第1号証:特開昭52-153926号公報(申立人が提出。)
甲第3号証:高分子、Vol.6、(1957)、p181~183(申立人が提出。)
参考文献1:化学大辞典編集委員会編集、「化学大辞典2 縮刷版」、1989年8月15日(第32刷)、370頁「かさんかベンゾイル」の項目、共立出版株式会社発行(当審において引用した、技術常識を示す文献。)
参考文献2:化学大辞典編集委員会編集、「化学大辞典事典1 縮刷版」、1989年8月15日(第32刷)、479頁「あんそくこうさんナトリウム」の項目、共立出版株式会社発行(当審において引用した、技術常識を示す文献。)
参考文献3:国際公開第2016/084862号(当審において引用した、周知の技術的事項を示す文献。)
2 当審の判断
当審は、本件発明1~3、5及び14に係る特許に対して、令和6年12月24日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。
そして、当該取消理由は妥当なものと認められるので、本件発明1~3、5及び14は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 異議申立ての理由について
1 申立人の異議申立ての理由について
申立人の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
[申立理由A]
本件発明1~6及び11~14は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。
[申立理由B]
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~6及び11~14を当業者が実施できるように記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。
[申立理由C-1]
本件発明1~3、5及び14は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第113条第2号に該当する。
[申立理由C-2]
本件発明1~3、5及び14は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第113条第2号に該当する。
[申立理由D-1]
本件発明1~3、5及び14は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。
[申立理由D-2]
本件発明1~3、5及び14は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。
2 証拠方法
甲第1号証:特開昭52-153926号公報
甲第2号証:特開平2-78658号公報
甲第3号証:高分子、Vol.6、(1957)、p181~183
3 取消理由として採用しなかった申立理由について
申立理由A及びB並びにC-2及びD-2は、取消理由として採用しなかったため、以下検討する。
申立理由C-1のうち、本件発明1~3及び5に関する理由は、上記第3で述べた取消理由1に対応するため、本件発明14に関する理由について、以下検討する。
申立理由D-1は、同取消理由2に対応する。
(1)申立理由Aについて
ア 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)についての判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件特許明細書の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
なお、「・・・」は摘記の省略を示す。
(ア)
「【発明の概要】
【0005】
したがって、ステンレス鋼容器に入れて、容器を腐食させることなく適切に貯蔵および輸送することができる固体有機過酸化物組成物を提供することが本発明の目的である。
【0006】
腐食の原因に対する検討では、製品中の水分または残留水と組み合わさってHClヒュームの形成をもたらすのは、有機過酸化物中の残渣のクロロギ酸または酸塩化物であるという結論に至っている。これらのHClヒュームにより、ステンレス鋼容器の腐食がもたらされる。
【0007】
クロロギ酸から調製される固体有機過酸化物はペルオキシ二炭酸エステルである。ペルオキシ二炭酸塩は、従来、アルカリ媒体中でクロロギ酸と過酸化水素とを反応させることによって調製される。
【0008】
酸塩化物から調製される固体有機過酸化物はジアシル過酸化物である。ジアシル過酸化物は、従来、アルカリ媒体中で酸塩化物と過酸化水素とを反応させることによって調製される。」
(イ)
「【0014】
適切な固体HCl捕捉剤は、
-モノカルボン酸、ジカルボン酸、およびトリカルボン酸の金属塩を含む金属カルボン酸塩を含む。モノカルボン酸の金属塩の例は、金属ステアリン酸塩、金属乳酸塩、および金属ラクチレート(lactylate)、例えばCa、Mg、Zn、Al、Na、K、およびLiのステアリン酸塩、乳酸塩、またはラクチレート(lactylate)、より好ましくは、ステアリン酸カルシウムおよびステアロイル-2-乳酸カルシウムである。・・・
-金属炭酸塩および金属重炭酸塩、例えばCa、Mg、Zn、Na、K、もしくはLiの炭酸塩またはNa、K、もしくはLiの重炭酸塩。好ましい(重)炭酸塩は、炭酸カルシウムである
-金属酸化物、例えばCaO、MgO、およびZnO。CaOが好ましい金属酸化物である
-金属ケイ酸塩、例えばケイ酸カルシウムまたはケイ酸マグネシウム
-アニオン性クレー
-およびそれらの組み合わせ。
【0015】
ハイドロタルサイトまたは層状複水酸化物とも称するアニオン性クレーは、アニオンおよび水分子が間に存在する二価および三価金属水酸化物の特定の組み合わせでできている正に帯電した層からなる結晶構造を有する。・・・
【0016】
金属カルボン酸塩、金属酸化物、金属ケイ酸塩、および金属(重)炭酸塩は、HClを中和する。アニオン性クレーは、アニオン(たとえば、炭酸イオン)を塩化物イオンと交換し、それによってクレー構造中に塩化物イオンを封じ込める。」
(ウ)
「【0017】
適切な固体ペルオキシ二炭酸エステルは、ペルオキシ二炭酸ジセチル、ペルオキシ二炭酸ジミリスチル、ペルオキシ二炭酸ジシクロヘキシル、およびペルオキシ二炭酸ジ(tert-ブチルシクロヘキシル)である。
【0018】
適切な固体ジアシル過酸化物は、脂肪族および芳香族ジアシル過酸化物を含む。好ましい脂肪族ジアシル過酸化物は、少なくとも10個の炭素原子の脂肪族鎖を有するもの、例えば過酸化ジラウロイルである。
【0019】
好ましい芳香族ジアシル過酸化物は、過酸化ジベンゾイルならびに置換過酸化ジベンゾイル、例えば過酸化ジ(2-メチルベンゾイル)、過酸化ジ(4-メチルベンゾイル)、および過酸化ジ(2,4-ジクロロベンゾイル)を含む。
【0020】
ペルオキシ二炭酸エステルおよびジアシル過酸化物は、ペルオキシ二炭酸エステルまたはジアシル過酸化物の存在下でポリプロピレンを押し出すことによって前記ポリプロピレンの溶融強度を高める(高溶融強度ポリプロピレン、HMS-PPに向けて)ためのプロセスにおいて利用される。したがって、本発明はまた、HMS-PPの製造などのポリプロピレン改変のための、本発明の組成物の使用に関する。」
(エ)
「【0025】
本発明の有機過酸化物組成物は、組成物全体の重量基準で、少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、さらにより好ましくは少なくとも85wt%、最も好ましくは少なくとも90wt%の、室温で固体である有機過酸化物であって、ペルオキシ二炭酸エステルおよびジアシル過酸化物から選択される有機過酸化物を含む。
【0026】
本発明の有機過酸化物組成物は、組成物中の有機過酸化物の重量基準で、0.001~5wt%、好ましくは0.005~2.5wt%、最も好ましくは0.01~0.5wt%の、室温で固体であるHCl捕捉剤を含む。
【0027】
有機過酸化物組成物中に存在し得る他の成分は、水、鈍感剤もしくは希釈剤、または添加剤であるが、但し有機過酸化物組成物が固体物質のままであることを条件とする。
【0028】
本発明の組成物は、有機過酸化物粒子とHCl捕捉剤粒子との物理的混合物の形態を有し得る。
【0029】
代替的には、ペルオキシ二炭酸エステルおよびHCl捕捉剤の両方を1粒子中に含有する粒子の形態(粉末、フレーク、顆粒、丸剤、ペレット、または他の固体粒子形態)を有する。
【0030】
本発明の有機過酸化物組成物は、いくつかの方法で調製することができる。
【0031】
一実施形態において、有機過酸化物およびHCl捕捉剤は物理的に混合される。この混合は、貯蔵および輸送のためのステンレス鋼容器に組成物を加える前に実施することができる。代替的には、有機過酸化物およびHCl捕捉剤は、ステンレス鋼容器に個別に加えることができ、その後、成分は容器内で混合される。
【0032】
適切な混合設備は、タンブルミキサーおよび回転スクリューミキサー(たとえば、Nauta mixer)を含む。代替的には、固体は、連続混合下、インライン混合によって、たとえば、回転スクリューミキサーまたは搬送スクリューに投入することによって、投入され得る。
【0033】
第2の実施形態において、HCl捕捉剤は、有機過酸化物が製造される反応器に加えられる。この実施形態によれば、HCl捕捉剤は、アルカリ媒体中でのクロロギ酸または酸塩化物と過酸化水素との反応中、存在してもよく、または反応が完了した後に反応器に加えられてもよい。
【0034】
第3の実施形態において、HCl捕捉剤は、溶融した有機過酸化物に加えられる。次いで、得られる製品は、たとえば押出または顆粒化によって、固体粒子に変換され得る。」
(オ)
「【実施例】
【0041】
実施例1
ペルオキシ二炭酸ジセチルのフレーク(97.5wt%の過酸化物および0.3wt%のセチルクロロギ酸)を含有するHDPEフラスコを、種々の量(有機過酸化物の重量基準のwt%で)の種々の酸捕捉剤とタンブル混合することによって組成物を調製した。
【0042】
追加量のセチルクロロギ酸(0.9wt%)を用いた実験も実施した。
【0043】
以下の酸捕捉剤、ステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイト(DHT-4A、前Kisuma)、炭酸カルシウムを使用した。
【0044】
事前洗浄した平滑なステンレス鋼(SS)316Lクーポン(20×10×1mm)を秤量し、続いて、約1gの有機過酸化物組成物とともにガラスバイアル中に載置した。
【0045】
蓋の開いたガラスバイアルを、約20gの有機過酸化物組成物を含有する250ml HDPEフラスコ中に載置した。HDPEフラスコをねじ蓋で閉じ、少なくとも12日間、20℃で貯蔵した。
【0046】
貯蔵期間後、クーポンに腐食がないか目視で検査し、以下の洗浄手順後、再秤量して重量減少を決定した。洗浄手順に従って、湿らせたスポンジ(水/研磨クリーム)を用いて、腐食したクーポンからさびをすべて除去した。クーポンを蒸留水で、次いでアセトンですすぎ、60℃のオーブンで1時間乾燥させ、室温まで冷却した。
【0047】
【表1】
[図:0001428999000001.jpg]
【0048】
結果は、有機過酸化物組成物が、HCl捕捉剤なしでは316Lステンレス鋼を腐食することを示す。結果はまた、有機過酸化物組成物が、希釈HCl溶液に対して耐性のあるより高品質のステンレス鋼254SMOを腐食することを示す。
【0049】
実施例2
実施例1において調製したいくつかの組成物を、以下の試験設定を用いて腐食効果に関して試験した。
事前洗浄した平滑な316Lステンレス鋼クーポン(20×10×1mm)を秤量し、続いて、21gのペルオキシ二炭酸ジセチル含有組成物の試料の直接上または下に、250ml HDPEフラスコ中に載置した。
【0050】
HDPEフラスコをねじ蓋で閉じ、少なくとも11日間、20℃で貯蔵した。
【0051】
試験後、クーポンを検査し、実施例1において説明したように洗浄し、秤量した。
【0052】
【表2】
[図:0001428999000002.jpg]
【0053】
これらの結果により、ここでもHCl捕捉剤によりステンレス鋼容器のすべての内壁の腐食を阻止することが可能であることが確認される。」
ウ 本件発明1について
(ア)本件発明1の課題について
本件特許明細書の【0005】の記載によれば、本件発明1の課題は、「ステンレス鋼容器に入れて、容器を腐食させることなく適切に貯蔵および輸送することができる固体有機過酸化物組成物を提供すること」と認められる。
(イ)本件発明1の課題解決について
本件特許明細書の【0041】~【0053】には、実施例1及び2として、有機過酸化物であるペルオキシ二炭酸ジセチルのフレーク(97.5wt%の過酸化物および0.3wt%のセチルクロロギ酸 )又は、追加量のセチルクロロギ酸(0.9wt%)を用いた実験により、HCl捕捉剤として、0.05~2.5wt%(有機過酸化物の重量基準。以下同様。)のステアリン酸Ca(ステアリン酸カルシウム)、0.016~0.1wt%のCaCo3(炭酸カルシウム)又は0.01~0.2wt%のDHT-4A(ハイドロタルサイト)を含む組成物とすることで、ともにステンレス鋼の腐食を防止できることが具体的に示されている。
そして、本件特許明細書の【0006】~【0008】には、有機過酸化物中の残渣のクロロギ酸又は酸塩化物が製品中の水分または残留水と組み合わさってHClヒュームの形成をもたらし、ステンレス鋼容器の腐食をもたらすこと、並びに、クロロギ酸及び酸塩化物はそれぞれペルオキシ二炭酸エステル及びジアシル過酸化物の調製に使用されるものであることが記載され、同明細書の【0014】~【0016】には、HClを中和する金属カルボン酸塩や金属炭酸塩、又は、塩化物イオンを封じ込める、ハイドロタルサイトとも称されるアニオン性クレー等を固体HCl捕捉剤として用いることが記載され、同明細書の【0017】~【0019】には、固体ペルオキシ二炭酸エステル及び固体ジアシル過酸化物について記載され、同明細書の【0025】~【0034】には、有機過酸化物組成物中の有機過酸化物及びHCl捕捉剤の重量割合及び有機過酸化物組成物の製造方法等について記載されている。
そうすると、上記の実施例の記載及び特許明細書の記載から、室温で固体である所定の有機過酸化物と室温で固体である所定のHCl捕捉剤を、所定の重量割合で含む有機過酸化物組成物とすることで、ステンレス鋼容器に入れた場合の腐食を防止できることを理解できるといえる。
したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるし、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
エ 本件発明2~6及び11~14について
本件発明2及び3は、それぞれ、本件発明1における「HCl捕捉剤」及び「有機過酸化物」の重量割合をさらに特定したものであり、本件発明4及び5は、本件発明1~3のいずれかにおける「有機過酸化物」を特定したものであり、本件発明6は、本件発明1~5のいずれかにおける「HCl捕捉剤」を特定したものであるところ、上記ウで述べたとおりであるから、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
本件発明11~13及び14は、それぞれ、本件発明1~6のいずれかの「有機過酸化物組成物」を製造するための方法及び「ポリプロピレンの改変のため」の本件発明1~6のいずれかの「有機過酸化物組成物」の「使用」に関するものであるところ、上記ウで述べたとおりであるから、いずれも発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
オ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の12頁~14頁において、概ね次の点を主張している。
(主張1)本件発明1~6及び11~14には、ステンレス鋼容器の特定がないから、HDPE等の容器に入った有機過酸化物組成物も包含するものであり、「ステンレス鋼容器の腐食を防止して安全に貯蔵、輸送できるようにする」という本発明の課題を解決できず、その全範囲にわたってサポート要件を担保できるものではない。
(主張2)本件発明1~3、5及び11~14について、有機過酸化物がジアシル過酸化物である場合については実施例がなく、酸塩化物から発生する物質によってステンレス鋼容器の腐食を起こすという根拠が欠如している。仮にそうであるとしても、HCl捕捉剤量が極微量である0.001重量%以上の全範囲にわたってステンレス鋼の腐食を防止できるとする根拠がない。
主張1について検討すると、上記ウ(イ)で述べたとおり、本件特許明細書には、固体HCl捕捉剤を含む固体有機過酸化物組成物とすることで、HClによるステンレス鋼容器の腐食を防止できることが、実施例を伴って具体的に記載されている。
そうすると、本件発明1~6及び11~14にはステンレス鋼容器の特定がなかったとしても、ステンレス鋼容器に入れて貯蔵および輸送する場合に、容器を腐食させない固体有機過酸化物組成物を提供できる点で、本件発明の課題が解決することを当業者は認識できるといえる。
したがって、申立人の主張1は採用できない。
主張2について検討すると、上記ウ(イ)で述べたとおり、本件特許明細書の【0006】~【0008】には、有機過酸化物がジアシル過酸化物である場合についても、調製に使用された残渣の酸塩化物が製品中の水分または残留水と組み合わさってHClヒュームの形成をもたらし、有機過酸化物がペルオキシ二炭酸エステルである場合と同様に、ステンレス鋼容器の腐食をもたらすことが説明されており、当該説明が技術的に誤りであるとも認められない。
そして、ペルオキシ二炭酸エステルであるペルオキシ二炭酸ジセチルを用いた実施例において、固体HCl捕捉剤を含む固体有機過酸化物組成物とすることで、ステンレス鋼の腐食を防止できることが示されているところ、上記の説明を踏まえれば、有機過酸化物がジアシル過酸化物である場合においても、HCl捕捉剤により、同様に腐食を防止できることが理解されるといえる。
また、上記実施例におけるHCl捕捉剤として、有機過酸化物の重量基準で0.016wt%のCaCo3(炭酸カルシウム)や0.01wt%のDHT-4A(ハイドロタルサイト)を用いて腐食を防止できることが示されているところ、0.001重量%では腐食を防止できないといった技術常識が本願出願時に存在したとも認められない。
そうすると、有機過酸化物がジアシル過酸化物である場合について実施例がなかったとしても、また、HCl捕捉剤量が0.001重量%以上の全範囲にわたっても、実施例を含む本件特許明細書の記載から、同様に課題を解決できることを当業者が認識できる範囲のものといえる。
したがって、申立人の主張2も採用できない。
カ 小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する申立理由A(特許法第36条第6項第1号)によって、本件発明1~6及び11~14についての特許を取り消すことはできない。
(2)申立理由Bについて
ア 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)についての判断の前提
発明の詳細な説明の記載が明細書の実施可能要件に適合するか否かは、当業者が、明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明と出願時の技術常識に基づいて、請求項に係る発明を実施できることが理解できる必要があり、物の発明については、その物を作れ、使用できること、方法の発明については、その方法を使用できること、物を生産する方法については、その方法により物を生産でき、その方法により生産した物を使用できることが可能となるように記載されていることを要すると解される。
イ 判断
本件特許明細書の記載は上記(1)イのとおりであり、実施例における具体的な記載を含めて、本件発明の特定事項に対応した、所定の固体有機過酸化物及び所定の固体HCl捕捉剤を所定量含む固体有機過酸化物組成物とすること、製造方法、使用に関する記載(【0020】)があるから、本件発明1~6及び11~14を実施できるように記載されているといえる。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の12頁~14頁において、申立理由A(特許法第36条第6項第1号)についての主張1及び主張2と概略同様の理由により、全範囲にわたって発明の課題を解決し、格別の作用効果を奏することは不可能である旨を主張する。
しかしながら、(1)の申立理由Aについての検討で述べたとおり、本件発明は、実施例を含む本件特許明細書の記載から、課題を解決できることを当業者が認識できる範囲のものといえるものであって、上記イのとおり、発明の詳細な説明の記載は本件発明を実施できるように記載されているといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する申立理由B(特許法第36条第4項第1号)によって、本件発明1~6及び11~14についての特許を取り消すことはできない。
(3)申立理由C-1のうち、本件発明14に関する理由について
本件発明14は、本件発明1~6のいずれかの「有機過酸化物組成物」の「ポリプロピレンの改変のため」の「使用」に関するものである。
甲第1号証は、令和6年12月24日付け取消理由通知書で述べたとおり、過酸化ベンゾイルの製造方法に関する文献であって(特許請求の範囲 請求項1)、実施例の製造方法で得られた「純度98.5%以上の過酸化ベンゾイル」に関する発明が記載されているにとどまり、ポリピロピレンの改変について記載されているとはいえない。
したがって、本件発明14は、甲第1号証に記載された発明ではないから、申立人が主張する申立理由C-1によって、本件発明14に係る特許を取り消すことはできない。
(4)申立理由C-2及びD-2について
ア 引用文献等の記載事項
甲第2号証:特開平2-78658号公報(以下、甲2という。申立人が提出。)
甲第3号証:高分子、Vol.6、(1957)、p181~183(以下、甲3という。申立人が提出。)
参考文献1:化学大辞典編集委員会編集、「化学大辞典2 縮刷版」、1989年8月15日(第32刷)、370頁「かさんかベンゾイル」の項目、共立出版株式会社発行(以下、参考1という。当審において引用した、技術常識を示す文献。)
引用文献等には、以下の記載がある。
なお、「・・・」は摘記の省略を示し、半角文字は全角文字に、句点は「。」に、読点は「、」に、それぞれ統一する。
(ア)甲2の記載事項
甲2a
「2.特許請求の範囲
ベンゾイルパーオキサイド65~90重量%と添加剤として初留点(IBP)が200℃/10mmHg以上の流動パラフィン、またはシリコーンオイル、またはジ-2-エチルヘキシルアジペート、またはジ-2-エチルヘキシルセバケートを単独又は組み合わせて0.1~5重量%と残部の水とからなることを特徴とするベンゾイルパーオキサイド組成物」(特許請求の範囲)
甲2b
「〔産業上の利用分野〕
ベンゾイルパーオキサイド(以下BPOと略す)はスチレンやアクリル酸エステルや酢酸ビニール等のビニールモノマーの重合開始剤や不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤として広く用いられている代表的な有機過酸化物である。
・・・
〔課題を解決するための手段〕
本発明の目的は、安全性に優れ、ポリスチレン等のビニールモノマーの重合に用いられた場合に、重合工程や得られたポリマー物性に悪影響がなく同時に、貯蔵及び形状の安定性の良いと共に作業性及び安全性に優れたBPO組成物を提供することにある。
本発明者らは、これらの目的にかなうBPO配合物を鋭意検討した結果、流動パラフィン、またはシリコーンオイル、またはジ-2-エチルへキシルアジぺート(DOAと略す)、またはジ-2-エチルヘキシルセパケート(DOSと略す)を単独または組み合わせて配合したBPOの水湿粉体において得られることを見い出し本発明に至った。」(1頁左下欄下から6行~2頁左上欄12行)
甲2c
「実施例I
撹拌機、温度計及び滴下ロートを備えた5lビーカーに水1600gと25%水酸化ナトリウム400g(2.5モル)と10%ネオゲンR(第一工業製薬製)水溶液5gを仕込み、外冷下10℃に冷却した。この溶液に60%過酸化水素水68g(1.2モル)を10~15℃に保ちながら撹拌下に滴下した。
得られた混合物中につづいて、ベンゾイルクロライド280g(2.0モル)を10~15℃で激しく撹拌しながら仕込み、さらにこの反応混合物を10~15℃で60分間撹拌した。反応終了後この反応混合物を遠心分離器で脱水し、さらに濾液がアルカリ性を示さなくなるまで水洗を行い純度79%の湿粉体BPO291g(収率95%)を得た。この79%の湿粉体BPOに流動パラフィン、シリコーンオイル、DOA、DOSの添加剤の必要量と水の必要量とを添加し、均一になるまで万能混合機で混合したものを実施例IのBPOを75%以下含む配合物の試料とした。
これとは別に79%の湿粉体BPOをBPO分95%、水5%まで風乾し、先の配合物と同様な方法で混合したものを同じく実施例I中のBPOを80%以上含む配合物の試料とした。」(2頁右上欄15行~左下欄下から2行)
(イ)甲3の記載事項
甲3a
「過酸化ベンゾイル」(p181 標題)
甲3b
「わが社が電解塩素利用の一端として、過酸化ベンゾイル(Dibenzoyl Peroxyde,BPO)の製造を開始したのは昭和6年の昔であり、わが国最初の製品であった。
・・・
BPOの合成は
2C6H5COCl+Na2O2 → C6H5CO-O-O-COC6H5
の反応に従って、塩化ベンゾイルを過酸化水素と苛性アルカリの等量水溶液、または過酸化ソーダ水の中に、液温を0~5℃に保ちながら滴下して行けばよい。滴下と同時にBPOの沈殿が生成する。1種のショッテンバウマン反応の応用である。この場合、本反応は次の2段階に分れる。
k1
C6H5COCl+Na2O2 → C6H5COOONa
k2
C6H5COCl+C6H5COOONa → BPO
そして副反応として
k3
C6H5COCl+NaOH → C6H5COONa
(k1、k2、k3はそれぞれの反応の速度恒数を示す)
・・・
この反応性のため副反応率は極めて小さく、塩化ベンゾイル基底のBPOの理論収率は95%以上にも達することができるわけである。」(p.181左欄1行~右欄24行)
(ウ)参考1の記載事項
参考1a
「かさんかベンゾイル 過酸化-、過酸化ジベンゾイル、ベンソイルペルオキシド、ルシドール、ルチドール、B.P.O.・・・製法 塩化ベンゾイルと過酸化水素をアルカリ触媒で反応させる。性質 無色結晶。融点103.5°(エタノール-クロロホルムから再結晶)」(370頁「かさんかベンゾイル」の項目)
イ 甲2に記載された発明
甲2は、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)組成物に関する文献であって(甲2a、甲2b)、甲2cの記載から、甲2には、実施例Iの製造方法で得られた次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(甲2発明)
「純度79%の湿粉体ベンゾイルパーオキサイド」
ウ 本件発明1について
(ア)甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明は、「湿粉体」であるから室温で固体であると理解され、「純度79%」の「ベンゾイルパーオキサイド」を含む組成物であるといえる。
甲2発明の「純度79%」は、「純度79%の湿粉体BPO291g(収率95%)を得た」との記載(甲2c)を踏まえると、重量基準であるといえ、本件発明1における「組成物全体の重量基準で少なくとも40wt%」に相当する。
甲2発明の「ベンゾイルパーオキサイド」は、C6H5CO-O-O-COC6H5の化学構造式を有するから(甲3b)、ジアシル過酸化物であって、その融点は103.5℃であるから(参考1a)、室温で固体であると理解される。
そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「室温で固体である有機過酸化物組成物であって、
前記組成物全体の重量基準で少なくとも40wt%の、室温で固体である有機過酸化物であって、ペルオキシ二炭酸エステルおよびジアシル過酸化物から選択される有機過酸化物
を含む、有機過酸化物組成物。」
(相違点)
「有機過酸化物組成物」が、本件発明1では、「前記組成物中の有機過酸化物の重量基準で0.001~5wt%の、室温で固体であるHCl捕捉剤を含み、前記HCl捕捉剤が、金属カルボン酸塩(ただし、ラウリン酸ナトリウム、4-メチル安息香酸ナトリウムを除く)、金属酸化物(ただし、親水性シリカを除く)、金属(重)炭酸塩、金属ケイ酸塩、アニオン性クレー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される」ものであるのに対し、甲2発明では、そのようなHCl捕捉剤を上記特定量で含んでいるか明らかでない点。
(イ)相違点についての判断
甲2発明は、甲2における実施例Iの製造方法で得られたものであるところ、当該製造方法は水酸化ナトリウム、過酸化水素水を混合した後、ベンゾイルクロライドを反応させるものであるから(甲2c)、甲3の記載(甲3b)も踏まえると、下記の主反応及び副反応により、副反応として「C6H5COONa」が生じ得る可能性は否定できない。
(本反応)
2NaOH+H2O2 → Na2O2+2H2O
C6H5COCl+Na2O2 → C6H5COOONa+NaCl
C6H5COCl+C6H5COOONa → C6H5CO-O-O-COC6H5+NaCl
(副反応)
C6H5COCl+NaOH → C6H5COONa+HCl
しかしながら、「C6H5COONa」は上記相違点に係る「金属カルボン酸塩(ただし、ラウリン酸ナトリウム、4-メチル安息香酸ナトリウムを除く)」である「HCl捕捉剤」に相当する物質であるものの、甲2には、副反応で生成する「C6H5COONa」の重量割合についての記載はなく、「純度79%」の「ベンゾイルパーオキサイド」を含む組成物において、「有機過酸化物の重量基準で0.001~5wt%」という特定量で含むことを推認できる根拠を見出すことができない。
したがって、上記相違点は実質的な相違点である。
また、上記相違点について、甲2には、「C6H5COONa」が生じ得ることも、その重量割合についても記載されていないところ、甲3の記載を参照しても、「有機過酸化物の重量基準で0.001~5wt%」という特定量で含むものとする動機付けがあるとは認められない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件発明2~3、5及び14について
本件発明2及び3は、それぞれ、本件発明1における「HCl捕捉剤」及び「有機過酸化物」の重量割合をさらに特定したものであり、本件発明5は、本件発明1~3のいずれかにおける「有機過酸化物」を特定したものであり、本件発明14は、本件発明1~6のいずれかの「有機過酸化物組成物」の「ポリプロピレンの改変のため」の「使用」に関するものである。
すなわち、本件発明2~3及び5は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て満たすものであり、本件発明14は、本件発明1の発明特定事項を満たす組成物を使用するものである。
そうすると、上記ウと同様の理由により、本件発明2~3、5及び14は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
オ 小括
以上のとおりであるから、申立人が主張する申立理由C-2及びD-2によって、本件発明1~3、5及び14についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
上記第3のとおり、本件発明1~3、5及び14についての特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
しかしながら、上記第4で述べたとおりであるから、本件発明4、6及び11~13についての特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
そして、ほかに本件発明4、6及び11~13についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700748