特許異議申立
2024-701204
再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法
- 審判番号
- 2024-701204
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-082777
- 登録番号
- 7500652
- 請求日
- 2024年12月16日
- 審決日
- 2025年12月19日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
- 【権利者代理人】弁理士法人南青山国際特許事務所
- 【異議申立人】村上 兄
- 【異議申立人】河原田 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 小石 真弓
- 審判官 新留 豊
- 分類
- P1651.121-YAA(C07C) / P1651.113-YAA(C07C) / P1651.55 -YAA(C07C) / P1651.536-YAA(C07C) / P1651.537-YAA(C07C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第43条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7500652号発明「再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7500652号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7500652号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7500652号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)5月20日(パリ条約の例による(特許法第43条の2)優先権主張外国庁受理 2021年9月13日 台湾(TW))を出願日とする出願であって、令和6年6月7日に特許権の設定登録がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件請求項1~9に係る特許に対し、同年12月16日に特許異議申立人 村上 兄(以下「申立人A」という。)により、さらに同年同月17日に特許異議申立人 河原田 隆(以下「申立人B」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和7年 3月 4日付け 取消理由通知書
同年 5月28日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 8月 4日付け 訂正請求があった旨の通知(全申立人宛て)
同年 9月 5日 意見書の提出(申立人A)
同年 9月 8日 意見書の提出(申立人B)
同年10月22日 上申書の提出(申立人A)
同年10月29日 上申書の提出(申立人A)
第2 訂正の適否
1 訂正の請求の趣旨
令和7年5月28日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第7500652号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、本件訂正請求書の記載及び本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項からなるものであると認められる。
なお、「・・・」は摘記の省略を表し、下線は、訂正による記載の変更箇所を含め、当審合議体が付したものである。
[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項1に
「前記水相液体が70℃~150℃の吸着温度に加熱されることで、」
とあるのを
「前記水相液体が125℃~130℃の吸着温度に加熱されることで、」
に訂正する。
また、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~9も同様に訂正する。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~9のうち、請求項2~9は、いずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9についての本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」についてされたものである。
4 訂正事項についての訂正要件の判断
(1)訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載の吸着温度について「70℃~150℃」から「125℃~130℃」に範囲を縮小し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載の「70℃~150℃」を、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0054】における「・・・前記吸着温度は、・・・80℃~130℃であることが特に好ましい。」との記載、及び【0069】の実施例4における「実施例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を90℃から125℃に変更した以外は、実施例1と同様にした。」との記載に基づいて、吸着温度範囲を「125℃~130℃」に限定するものであって、本件明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載されている吸着工程における吸着温度範囲を限定し、より狭い温度範囲に限定して特許請求の範囲を減縮したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正事項1による請求項1~9の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~9に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、本件訂正前の請求項1~9に対応する本件訂正後の請求項1~9に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
5 訂正の請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の請求項1~9(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)の記載は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次のとおりのものである(以下、請求項の番号順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を提供する工程と、
化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、前記化学解重合液及び前記不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、
蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離する蒸発工程と、
前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させることで水相液体を形成し、活性炭材料を前記水相液体に添加して、前記活性炭材料で前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物を吸着するによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水相液体での純度を向上する吸着工程と、
前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出されることによって、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程と、を含み、
前記吸着工程において、前記活性炭材料のpH値(pH value)は、4~7であり、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET):水(重量比)は、1:3~1:20であり、前記水相液体が125℃~130℃の吸着温度に加熱されることで、前記活性炭材料で前記吸着温度において前記不純物を吸着する、ことを特徴とする再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項2】
前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、90以上のL値、-2.0~2.0のa値、及び-4.0~4.0のb値を有し、前記再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収率は85%以上である、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項3】
前記解重合工程において、エチレングリコール(EG)である前記化学解重合液は、金属触媒(metal catalyst)である解重合触媒の存在で、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項4】
前記解重合工程において、前記化学解重合液が180℃~260℃の解重合温度に加熱されることで、前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行う、請求項3に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項5】
前記蒸発工程において、前記解重合物が150℃~250℃の蒸発温度に加熱されることで、エチレングリコール(EG)である前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留される、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項6】
前記吸着工程において、前記活性炭材料の比表面積は、400m2/g~4,000m2/gである、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項7】
前記吸着工程において、前記活性炭材料の細孔容量(micropore volume)は、0.20ml/g~2.00ml/gである、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項8】
前記吸着工程において、前記活性炭材料:前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)(重量比)は、1:10~1:200である、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。
【請求項9】
前記結晶工程において、前記水相液体を前記吸着温度から5℃~25℃の結晶温度に冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出される、請求項1に記載の再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由について
申立人A及び申立人Bのそれぞれの特許異議申立書(それぞれ、以下「申立書A」及び「申立書B」という。)の記載全体から、申立人A及び申立人Bが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~9に係る特許に対して申し立てていた特許異議の申立理由(以下「申立理由」という。)は、概略、以下の1(1)及び(2)のとおりであると認められる。
また、申立人Aは、申立書Aに添付して、証拠方法として、下記1(3)の甲第1A~7A号証(以下、それぞれ「甲1A」~「甲7A」という。)を提出し、その後、令和7年10月29日提出の上申書に添付して試験報告書Aを提出し、申立人Bは、申立書Bに添付して、証拠方法として、下記1(4)の甲第1B~14B号証(以下、それぞれ「甲1B」~「甲14B」という。)を提出し、その後、令和7年9月8日提出の意見書に添付して参考資料1Bを提出している。
1 特許異議申立人が申し立てた理由
(1)申立人Aが申し立てた理由
ア 申立理由1A(新規性)
本件特許の訂正前の請求項1~7及び9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1Aに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許を受けることができないものであるから、訂正前の請求項1~7及び9に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
イ 申立理由2A(進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1Aに記載された発明及び甲2A~甲7Aに記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
ウ 申立理由3A(新規事項)
令和5年8月15日提出の手続補正書による発明の詳細な説明の【0071】及び【0073】についての補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 申立理由4A(サポート要件)
本件特許の訂正前の請求項1~9の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、これらの請求項に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
オ 申立理由5A(明確性)
本件特許の訂正前の請求項1~9の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないから、これらの請求項に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立人Bが申し立てた理由
ア 申立理由1B(新規事項)
令和5年8月15日提出の手続補正書による発明の詳細な説明の【0071】及び【0073】についての補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものであり、同法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 申立理由2B(サポート要件)
本件特許の訂正前の請求項1~9の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、これらの請求項に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 申立理由3B(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許の訂正前の請求項1~9に係る発明について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に適合するものでないから、これらの請求項に係る特許は、同法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 申立理由4B(進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1Bに記載された発明並びに甲2B~甲11Bに記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立人Aが提出した証拠方法
甲第1A号証:特開2008-88096号公報
甲第2A号証:特開2007-152197号公報
甲第3A号証:繊維工学、1971年、Vol.24、No.8、p.59-65
甲第4A号証:国際公開第2021/124149号
甲第5A号証:特表2019-525980号公報
甲第6A号証:特開2006-232701号公報
甲第7A号証:特開2004-155605号公報
試験報告書A:一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所作成、件名「初留点測定」、令和7年10月1日
(4)申立人Bが提出した証拠方法
甲第1B号証:特開2008-88096号公報
甲第2B号証:中国特許出願公開第109574835号明細書
甲第3B号証:Textile Research Journal、2020年、Vol.90(17-18)、p.2058-2069
甲第4B号証:米国特許第5869543号明細書
甲第5B号証:国際公開第2021/028695号
甲第6B号証:国際公開第2021/124149号
甲第7B号証:CLEAN TECHNOLOGY、2010年9月、Vol.16、No.3、p.206-212
甲第8B号証:American Journal of Analytical Chemistry、2013年、Vol.4、p.17-26
甲第9B号証:NORIT ACTIVATED CARBON、2009年11月4日、Cabot Corporation
甲第10B号証:Fuel Processing Technology、2006年、Vol.87、p.899-905
甲第11B号証:Carbon、1989年、Vol.27、No.2、p.191-195
甲第12B号証:特願2022-82777号の令和5年8月15日提出の手続補正書
甲第13B号証:特願2022-82777号の令和5年8月15日提出の意見書
甲第14B号証:特願2022-82777号の令和6年2月19日受付の審判請求書
参考資料1B:Journal of Korean Society of Environmental Engineers、1999年、Vol.21、No.9、p.1643-1653
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
当審合議体が令和7年3月4日付け取消理由通知書で通知した取消理由(以下「取消理由」という。)の概要は、以下のとおりである。
この取消理由は、申立理由2A及び4Bを採用したものである。
[取消理由(進歩性)]
請求項1~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1:特開2008-88096号公報(甲1A及び甲1B)
引用文献2:国際公開第2021/124149号(甲4A)
引用文献3:特開2006-232701号公報(甲6A)
引用文献4:中国特許出願公開第109574835号(甲2B)
引用文献5:M.Li 外4名、Textile Research Journal、2020年、Vol.90(17-18)、p.2058-2069(甲3B)
引用文献6:米国特許第5869543号明細書(甲4B)
引用文献7:国際公開第2021/028695号(甲5B)
引用文献8:国際公開第2021/124149号(甲6B)
引用文献9:D.Sun 外3名、American Jounal of Analytical Chemistry、2013年、4、p.17-26(甲8B)
引用文献10:NORIT ACTIVATED CARBON、2009年11月4日、Cabot Corporation(甲9B)
引用文献11:T.Budinova 外6名、Fuel Processing Technology、2006年、87、p.899-905(甲10B)
引用文献12:J.Laine 外2名、Carbon、1989年、Vol.27、No.2、p.191-195(甲11B)
第5 当審合議体の判断
当審合議体は、本件特許の請求項1~9に係る特許は、取消理由通知書に記載した理由並びに申立人A及びBが申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
なお、以下の引用文献等の記載事項の摘記において、下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
1 取消理由について
(1)引用文献の記載
ア 引用文献1の記載
(1a)「【図1】
[図:0001433071000001.jpg]
」
(1b)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートを含む原料と、触媒とを、エチレングリコールに混合して、混合液を調製する混合液調製工程と、
前記混合液中において、前記触媒の作用により、前記ポリエチレンテレフタレートを解重合してビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る解重合工程と、
前記混合液中から、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを回収する回収工程と、
回収された前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、加熱した水に溶解して水溶液を調整する熱水溶解工程と、
前記水溶液中において、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを晶析する晶析工程と、
結晶化した前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、前記水溶液から分離する分離工程とを有することを特徴とするビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
・・・
【請求項4】
前記回収工程は、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートより沸点の低い低沸点成分を蒸発させることにより、前記混合液中から低沸点成分を除去して残留物を得るステップと、
前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを蒸発させることにより、前記残留物中からビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを回収するステップとを有する請求項1ないし3のいずれかに記載のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項5】
前記熱水溶解工程と前記晶析工程との間に、さらに前記水溶液が着色する要因となる着色要因物質を除去する着色要因物質除去工程を有する請求項1ないし4のいずれかに記載のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【請求項6】
前記着色要因物質除去工程において、前記着色要因物質の除去は、前記着色要因物質を吸着剤に接触させる吸着処理、前記着色要因物質を分解剤で分解する分解処理、および前記着色要因物質を還元剤で還元する還元処理のうちの少なくとも1つにより行われる請求項1ないし5のいずれかに記載のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
・・・
【請求項8】
前記晶析工程は、前記水溶液を急冷する急冷ステップを有する請求項1ないし7のいずれかに記載のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法」
(1c)「【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高純度のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを簡便に製造し得るビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法、および品質の高いポリエチレンテレフタレートを製造し得るポリエチレンテレフタレートの製造方法を提供することにある。」
(1d)「【0024】
(5) 前記熱水溶解工程と前記晶析工程との間に、さらに前記水溶液が着色する要因となる着色要因物質を除去する着色要因物質除去工程を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。
【0025】
これにより、得られるBHET(精製BHET)は、より着色度の低い(すなわち、純度が高く光学密度が低い)ものとなる。」
(1e)「【0050】
<混合液調製工程1>
まず、処理対象物であるPETを含む原料を用意する。
【0051】
原料としては、例えば、廃PETボトル、廃PETフィルム、廃PET繊維、廃PET産業用資材等が挙げられる。
・・・
【0056】
また、ポリエステルの重縮合反応に用いた触媒(例えば、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物等)、安定剤(例えば、リン化合物)、着色剤(例えば、フタロシアニン系色素、アンソランキノン系色素、モノアゾ系色素、カーボンブラック等)、および繊維用油剤などを含有していてもよい。
【0057】
後述するが、本発明によれば、このような原料から容易に高純度のBHET(精製BHET)を製造することができる。
【0058】
次に、原料を、例えば湿式粉砕機で粉砕し、水洗した後、脱水(遠心脱水、乾燥等)する。
【0059】
次に、脱水後の原料、触媒、およびエチレングリコール(以下、「EG」と記載する。)を、例えば攪拌機付きオートクレーブに投入、混合して、混合液を調製する。
【0060】
ここで、触媒(解重合触媒)としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の脂肪酸塩、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の脂肪酸塩、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の酸化物、遷移金属の水酸化物、遷移金属の炭酸塩、遷移金属の脂肪酸塩、遷移金属のアルコキシド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの触媒を用いることにより、PETを効率よく解重合させること、すなわちBHETを得ることができる。」
(1f)「【0064】
<解重合工程2>
次に、オートクレーブ内において、混合液中で前記触媒の作用により、PETを解重合してBHETにする。
・・・
【0088】
解重合の際の混合液の温度(解重合温度)は、特に限定されないが、180~210℃程度であるのが好ましく、185~200℃程度であるのがより好ましい。」
(1g)「【0095】
<低沸点成分蒸発除去工程4>
次に、BHETより沸点の低い低沸点成分を蒸発させることにより、混合液中から低沸点成分を除去して、残留物を得る。すなわち、混合液中から低沸点成分を蒸発留去する。
ここで、低沸点成分としては、主にEGやDEG等が挙げられる。
【0096】
低沸点成分の蒸発留去は、例えば、撹件機付きジャケット式縦型薄膜蒸発機(UIC社製、「RF-6型」)を使用して、2段(2回)に分けて行うことができる。具体的には、1段目(1回目)の蒸発工程では、混合液中の低沸点成分のうちの90%~95%程度を蒸発留去し、2段目(2回目)の蒸発工程にて、1段目の蒸発工程で蒸発処理しきれなかった混合液中の残存低沸点成分を蒸発留去する。これにより、混合液中の低沸点成分をより確実に減少させることができる。
【0097】
1段目の低沸点成分の蒸発留去条件は、ジャケット温度を130~170℃程度とするのが好ましく、150~160℃程度とするのがより好ましい。」
(1h)「【0118】
<熱水溶解工程6>
次に、回収された粗BHETを、加熱した水に溶解して水溶液を調整する。なお、BHETは、ある程度の温度にまで加熱した水(以下、「熱水」と記載する。)に容易に溶解させることができる。
【0119】
また、BHETの熱水に対する溶解度は、熱水の温度が高くなるのにしたがって増加する傾向を示すが、熱効率を考慮すると、熱水の温度は、65~85℃程度であるのが好ましく、65~75℃程度であるのがより好ましい。
【0120】
また、水溶液中のBHETの濃度は、熱水の温度に対するBHETの飽和溶解度以下ならばよく、特に限定されない。粗BHETと熱水との混合比で表した場合、粗BHET1重量部に対して、熱水を3~10重量部とするのが好ましく、4~7重量部とするのがより好ましく、4~5重量部とするのがさらに好ましい。これにより、次の晶析工程(粗BHET精製工程)7での処理が行い易くなる。
【0121】
なお、粗BHETと熱水との混合比は、晶析工程7での処理のし易さを含め、結晶化する精製BHETの結晶のサイズ、形状および得られる精製BHETの純度の点から適宜決定するのが好ましい。
【0122】
<着色要因物質除去工程7>
次に、水溶液が着色する要因となる着色要因物質を含有する場合、この着色要因物質を除去する。これにより、得られる精製BHETは、より着色度の低い(すなわち、純度が高く光学密度が低い)ものとなる。
【0123】
なお、この着色要因物質としては、例えば、アルデヒド化合物(以下詳述する。)や、原料に含まれていた色素(染料等)が挙げられる。」
(1i)「【0129】
ところで、このCAA(着色要因物質)を除去する方法としては、CAAを、I:活性炭、酸性処理粘土、白土等の吸着剤に接触させる吸着剤処理、II:塩素系漂白剤、過酸化物系漂白剤、還元漂白剤等の漂白剤(分解剤)で、CAAを分解(二重結合を破壊)する漂白剤処理(分解処理)、およびIII:CAAを水添触媒(還元剤)の存在下に、二重結合およびアルデヒド基を還元する水添処理(還元処理)等が挙げられる。これらの処理を用いることにより、簡便かつ短時間で着色要因物質の除去が可能となる。
・・・
【0131】
具体的には、吸着処理では、吸着剤として、特定の活性炭を使用することが極めて有効であり、特に、800~1200m2/gの表面積を有し、かつ薬品賦活した活性炭を使用するのが好ましい。この場合、水溶液(着色要因物質)と吸着剤との接触時間は、特に限定されないが、10~60分間程度とするのが好ましい。」
(1j)「【0147】
一方、本発明者の検討によれば、水をBHETの再結晶用の溶媒として用いる場合には、析出してくるBHETは、極めて高品質な針状結晶であることが判った。また、低温時では水の粘度が低いため、BHETと水との固液分離が容易である。このようなことから、水は、BHETの極めて優れた再結晶溶媒であるという結論に至った。
【0148】
なお、水(20℃)に対するBHETの溶解度は、0.5(w/v%)である。
ちなみに、20℃におけるEGの粘度は、20cP程度であり、水の粘度は、1cP程度である。
【0149】
このように、水中においてBHETの晶析(結晶化)を行うことにより、高品質の精製BHETを高収率で得ることができる。
【0150】
また、本工程においては、水溶液(BHET水溶解液)を急冷する急冷ステップを有するのが好ましく、急冷ステップの後、この急冷ステップにおける冷却速度より遅い冷却速度で水溶液を徐冷する徐冷ステップを有するのがより好ましい。さらに、徐冷ステップでは、溶解液を冷却する速度を少なくとも2回変化させるのが好ましい。これにより、より高品質の精製BHETを得ることができる。
【0151】
具体的には、水溶液を、前記熱水溶解工程6における熱水の温度から65℃までを急冷し、65℃から40℃までを1~10℃/時間で徐冷し、40℃から20℃(室温)までを5~20℃/時間で徐冷するのが好ましい。これにより、高品質なBHETの針状結晶を析出させることができる。」
イ 引用文献2の記載(原文は英語のため、訳文で示す。)
(2a)「本発明は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)、特にポリエチレンテレフタレート(PET)廃棄物を解重合して得られたBHETの精製プロセスに関するものである。」(第1頁第3~6行)
(2b)「添加する吸着剤の量は、主に吸着剤の性質と分離すべき汚染物質の濃度とに依存する。例えば、活性炭の場合、精製すべき溶液中に存在するBHETの重量に対して、好ましくは0.05重量%から3重量%、より好ましくは0.1重量%から1重量%の量で添加される。精製工程は、好ましくは40℃から100℃、より好ましくは70℃から90℃の温度で実施される。」(第16頁第27~第17頁第3行)
ウ 引用文献3の記載
(3a)「【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル繊維屑からエステルモノマーを回収する方法に関する。さらに詳しくは、ポリエステル繊維屑またはその造粒処理物であって染料や顔料の着色成分を含むものから精製エステルモノマーを効率良く回収する方法に関する。」
(3b)「【0046】
(吸着処理)
吸着処理は、EG溶液中の不純物を活性炭、骨炭等の吸着剤により吸着する処理である。吸着処理は、EG溶液を60~95℃、好ましくは70~90℃の温度に維持し、活性炭を充填した吸着塔に空間速度(SV)0.1~5.0hr-1で通液して行うことが好ましい。この吸着処理は微小な顔料等の着色剤を除去するものでもあり、脱色処理と云えるものである。活性炭としては、例えば三菱化学(株)製「ダイアホープ006」、「ダイアホープ008」等を挙げることができる。
・・・
【0063】
<モノマー精製工程(6)>
(吸着処理)
このEG溶液を、30部の活性炭(三菱化学(株)製、「ダイアホープ006」)を充填した85℃保温カラムに空間速度(SV)3.0hr-1で通液して活性炭による吸着処理(脱色処理)を行った。」
エ 引用文献4の記載(原文は中国語のため、訳文で示す。)
(4a)「
[図:0001433071000002.jpg]
」
(4b)「
[図:0001433071000003.jpg]
」
(4c)「
[図:0001433071000004.jpg]
」
(4d)「
[図:0001433071000005.jpg]
」
オ 引用文献5の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(5a)「
[図:0001433071000006.jpg]
」(第2058頁 タイトル及び要約)
(5b)「
[図:0001433071000007.jpg]
」(第2060頁左欄下から第4行~右欄第8行)
カ 引用文献6の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(6a)「
[図:0001433071000008.jpg]
」(第1欄第7~12行)
(6b)「
[図:0001433071000009.jpg]
」(第4欄第29~33行)
(6c)「
[図:0001433071000010.jpg]
[図:0001433071000011.jpg]
」(第6欄第58行~第7欄第35行)
キ 引用文献7の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(7a)「請求項1
ポリエチレンテレフタレート(PET)をリサイクルするための方法であって、
(a)直列の解重合反応器において、エチレングリコール及び触媒系の存在下でPETを解重合して、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む解重合された混合物を形成するステップ、
(b)解重合された混合物から、BHETを含む沈殿物を結晶化するステップ、
(c)沈殿物を、プロトン性溶媒に溶解して、BHETを含む溶液を形成するステップ、
(d)前記溶液から不純物を除去して、BHETを含む精製された溶液を形成するステップ、並びに
(e)前記精製された溶液から、BHETを含む精製された生成物を結晶化するステップを含む、前記方法。
。
・・・
請求項12
プロトン性溶媒が水である、請求項11に記載の方法。
・・・
請求項15
ステップ(d)が、例えば溶液を炭素(例えば活性炭)、樹脂、好ましくはイオン交換樹脂(例えばカチオン交換樹脂、例として酸性カチオン交換樹脂)、及び/又はクレイ(例えば活性白土、例としてベントナイトクレイ及びモンモリロナイトクレイ)と接触させることにより、好ましくは前記溶液を炭素及びイオン交換樹脂と接触させることにより、前記溶液を脱色するステップを含む、請求項1~14のいずれかに記載の方法」
(7b)「ステップ(d)は、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも55℃、より好ましくは少なくとも70℃の温度にて実施され得る。ステップ(d)は、110℃まで、好ましくは100℃まで、より好ましくは90℃までの温度にて実施され得る。したがって、ステップ(d)は、40~110℃、好ましくは55~100℃、より好ましくは70~90℃の温度にて実施され得る。」(第18頁第13~17行)
ク 引用文献8の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(8a)「請求項1
ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を精製するためのプロセスで、
ポリエチレンテレフタレート(PET)廃棄物の解重合から得られた粗BHET溶液を準備する工程と、
前記溶液を、30℃から100℃、好ましくは50℃から90℃の温度で、少なくとも1種の酸化剤で処理し、酸化溶液を得る工程と、
酸化溶液を少なくとも1種の吸着剤で処理し、精製酸化溶液を得る工程と、
精製酸化溶液から少なくとも1種の吸着剤を分離し、精製BHET溶液を得る工程と、
を含む、プロセス。
・・・
請求項14
少なくとも1種の吸着剤が、活性炭またはシリカである、請求項1から13のいずれか1項に記載のプロセス。
・・・
請求項18
少なくとも1種の吸着剤による精製工程が、40℃から100℃、好ましくは70℃から90℃の温度で実施される、請求項1から17のいずれか1項に記載のプロセス。」
ケ 引用文献9の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(9a)「
[図:0001433071000012.jpg]
」
(第17頁 タイトル及び要約)
(9b)「
[図:0001433071000013.jpg]
」(第21頁左欄図5)
コ 引用文献10の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(10a)「Norit DX ULTRAは、酸洗浄と蒸気による活性炭で、高純度であり、低い水抽出導電率を有する。
・・・
一般的性質
・・・
pH 5
・・・」
サ 引用文献11の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(11a)「
[図:0001433071000014.jpg]
」(タイトル及び要約)
(11b)「
[図:0001433071000015.jpg]
[図:0001433071000016.jpg]
」(第900頁左欄第14行~下から第4行)
(11c)「
[図:0001433071000017.jpg]
」(第901頁右欄表3)
シ 引用文献12の記載(原文は英語のため、訳文にて示す。)
(12a)「
[図:0001433071000018.jpg]
」(第191頁 タイトル及び要約)
(12b)「
[図:0001433071000019.jpg]
[図:0001433071000020.jpg]
[図:0001433071000021.jpg]
」(第191頁右欄第6行~第192頁左欄第25行及び表1)
ス 甲5Aの記載
(甲5Aa)
「【0070】
(脱色段階e))
本発明による方法は、予備精製されたモノマー流出物の脱色の段階を含み、この段階は、100~250℃、好ましくは110~200℃、望ましくは120~180℃の温度、0.1~1.0MPa、好ましくは0.2~0.8MPa、望ましくは0.3~0.5MPaの圧力で、吸着剤の存在下に行われ、精製されたモノマー流出物を生じさせる。
【0071】
前記吸着剤は、染料を捕捉することができる当業者に知られているあらゆる吸着剤、例えば、活性炭または粘士であることができるが、有利には活性炭である。」
(甲5Ab)
「【0074】
(実施例)
(実施例1-本発明に合致する)
この実施例により、20重量%の不透明PETを含む供給原料を用いる本発明による方法の使用が例証される。
【0075】
再循環させられ、すり潰され、かつ、洗浄されたPET供給原料に由来し、20重量%の不透明PETからなり、5重量%の顔料TiO2を含む4kg/hのフレーク、および12.9kg/hのエチレングリコール(MEG)が、250℃の温度とされ、次いで、0.4MPaの圧力に維持された、撹拌された反応器に注入される。滞留時間は、反応器の液体容積対反応器に入る液体容積流量の合計の比として定義されて、5時間に設定される。反応器の出口において、反応流出物は、69.06重量%のMEG、27.74重量%のBHET、2.96重量%のBHETダイマーおよび0.24重量%のTiO2からなる。
【0076】
反応流出物中に存在するエチレングリコールは、連続する4個の丸底フラスコにおける蒸発によって分離され、その際の温度は、210℃から130℃の範囲にわたり、圧力は、0.12MPaから0.001MPaの範囲にわたる。この蒸発段階の結論として、MEGの流れ11.1kg/hおよびBHETを豊富に含む液体の流れ5.84kg/hが回収される。MEGの流れは、事実上もっぱらエチレングリコールからなり、それ故に、脱重合反応器に再循環させられ得る。BHETを豊富に含む液体の流れは、80.50重量%のBHET、8.52重量%のBHETダイマー、10.3重量%のMEGおよび0.68重量%のTiO2からなる。
【0077】
BHETを豊富に含む液体の流れは、続いて、220℃の温度および50Paの圧力で薄膜蒸発器に注入される。薄膜蒸発器中の滞留時間は1分である。5.2kg/hの流量を有するガス流出物は、薄膜蒸発器の頂部において回収される。それは、88.5重量%のBHETおよび11.5重量%のMEGからなり、痕跡量のTiO2を欠いている。0.64kg/hの流量を有する重質残渣は、薄膜蒸発器の底部において回収され、93.75重量%のBHETオリゴマーおよび6.25重量%のTiO2からなる。
【0078】
ガス流出物は、130℃で液化されて、予備精製されたBHETの液体流れが与えられる。予備精製されたBHETの液体流れは、0.5MPaまで圧縮され、続いて、活性炭の固定床に供給する。この活性炭は、それの重量の5%に等しい吸着容量を有する。この段階の結果として、脱色されかつ顔料が除かれたBHETの液体流れが回収され、この流れは、未加工PETを生じさせるという目的のために当業者に知られている重合段階に再注入される。」
セ 申立人Bによる参考資料1Bの記載(原文が韓国語のため、訳文を示す。)
(参1Ba)
「活性炭の上でのアンモニア-Cu(II)複合体の吸着速度論」(表題)
(参1Bb)
「吸着速度に対する吸着温度の影響を調査するため、吸着温度を15、25、35℃と変化させながら、吸着時間に対する吸着量と平衡吸着飽和度を示した。吸着温度が増加すると物理吸着が減少する一般的な傾向とは異なり、温度が増加するほど吸着量及び平衡吸着飽和度は増加したが、平衡に達する時間はほぼ類似した。これは吸着温度上昇に伴い活性炭表面に存在するmesoporeの膨潤(swelling)による吸着表面積の増加により、任意の時点で吸着量と平衡吸着飽和度が増加した。」(1649頁左欄第3段落~右欄第1段落)
(2)引用文献1に記載の発明
ア 引用文献1は、高純度のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(以下、「BHET」ともいう。)を簡便に製造し得るビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法に関する文献であって(摘記(1b)及び摘記(1c))、摘記(1a)には、引用文献1における実施形態のフローチャートが示され、混合液調製工程、解重合工程、異物除去工程、低沸点成分蒸発除去工程、粗BHET回収工程、熱水溶解工程、着色要因物質除去工程、晶析工程、分離工程、乾燥工程の順で工程が示された上で、
摘記(1b)には、請求項1を引用する請求項5に係る発明として、
ポリエチレンテレフタレートを含む原料と、触媒とを、エチレングリコールに混合して、混合液を調製する混合液調製工程と、
前記混合液中において、前記触媒の作用により、前記ポリエチレンテレフタレートを解重合してビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る解重合工程と、
前記混合液中から、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを回収する回収工程と、
回収された前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、加熱した水に溶解して水溶液を調整する熱水溶解工程と、
前記熱水溶解工程と後記晶析工程との間に、さらに前記水溶液が着色する要因となる着色要因物質を除去する着色要因物質除去工程とを有し、
前記水溶液中において、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを晶析する晶析工程と、
結晶化した前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、前記水溶液から分離する分離工程とを有するビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法が記載されている。
イ そして、上記請求項5に係る発明に対応した記載として、
摘記(1d)には、前記熱水溶解工程と前記晶析工程との間に、さらに前記水溶液が着色する要因となる着色要因物質を除去する着色要因物質除去工程を有するビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法は、得られるBHET(精製BHET)が、より着色度の低い(すなわち、純度が高く光学密度が低い)ものとなることが記載され、
摘記(1e)には、混合液調製工程1では、処理対象物である廃PETボトル、廃PETフィルム、廃PET繊維、廃PET産業用資材等のPETを含む原料を用意すること、次に、原料を、粉砕し、水洗した後、脱水(遠心脱水、乾燥等)すること、脱水後の原料、触媒、およびエチレングリコールを混合して、混合液を調製することが記載され、
摘記(1f)には、解重合工程2では、混合液中で前記触媒の作用により、PETを解重合してBHETにすること及び解重合の際の混合液の温度(解重合温度)は、180~210℃程度であるのが好ましいことが記載され、
摘記(1g)には、低沸点成分蒸発除去工程4では、BHETより沸点の低い低沸点成分を蒸発させることにより、混合液中から主にEGやDEG等の低沸点成分を除去して、残留物を得て、混合液中から低沸点成分を蒸発留去すること及び低沸点成分の蒸発留去条件は、ジャケット温度を130~170℃程度とするのが好ましく、150~160℃程度とするのがより好ましいことが記載され、
摘記(1h)には、熱水溶解工程6では、回収された粗BHETを、加熱した水に溶解して水溶液を調整すること及び熱効率を考慮すると、熱水の温度は、65~85℃程度であるのが好ましく、65~75℃程度であるのがより好ましいこと及び水溶液中のBHETの濃度は、粗BHETと熱水との混合比で表した場合、粗BHET1重量部に対して、熱水を3~10重量部とするのが好ましく、4~7重量部とするのがより好ましく、4~5重量部とするのがさらに好ましいことが記載され、
摘記(1h)及び(1i)には、着色要因物質除去工程7では、アルデヒド化合物や、原料に含まれていた色素(染料等)この着色要因物質を除去することで、得られる精製BHETは、より着色度の低い(すなわち、純度が高く光学密度が低い)ものとなること、CAA(着色要因物質)を除去する方法としては、吸着剤に接触させる吸着剤処理、漂白剤処理(分解処理)、及び水添処理(還元処理)等が挙げられ、これらの処理を用いることにより、簡便かつ短時間で着色要因物質の除去が可能であること、並びに吸着処理では、吸着剤として、特定の活性炭を使用することが極めて有効で、特に、800~1200m2/gの表面積を有し、かつ薬品賦活した活性炭を使用するのが好ましいことが記載され、
摘記(1j)には、水中においてBHETの晶析(結晶化)を行うことにより、高品質の精製BHETを高収率で得ることができることが記載されている。
ウ したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下「引用文献1発明」という。)。
[引用文献1発明]
「処理対象物である廃PETボトル、廃PETフィルム、廃PET繊維、廃PET産業用資材等のポリエチレンテレフタレートを含む原料を用意し、原料と触媒とを、エチレングリコールに混合して、混合液を調製する混合液調製工程と、
前記混合液中において、前記触媒の作用により、前記ポリエチレンテレフタレートを、180~210℃程度で解重合してビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る解重合工程と、
前記混合液中から、ジャケット温度を150~160℃程度で主にEGやDEG等の低沸点成分を蒸留留去して除去する蒸発除去工程と、
前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを回収する回収工程と、
回収された前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、加熱した水に溶解して、65~85℃程度で水溶液中のビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの濃度を、粗BHETと熱水との混合比で表して粗BHET1重量部に対して、熱水を3~10重量部で調整する熱水溶解工程と、
前記熱水溶解工程と後記晶析工程との間に、さらに前記水溶液が着色する要因となる着色要因物質を除去する800~1200m2/gの表面積を有し、かつ薬品賦活した活性炭を使用する吸着剤に接触させる吸着剤処理、漂白剤処理(分解処理)、および水添処理(還元処理)等の方法で処理して簡便かつ短時間で着色要因物質の除去が可能となる着色要因物質除去工程を有し、
前記水溶液中において、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを晶析する晶析工程と、
結晶化した前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、前記水溶液から分離する分離工程とを有するビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造方法。」
(3)本件発明1について
ア 引用文献1発明との対比
以下、本件発明1と引用文献1発明を対比する。
(ア)引用文献1発明の「処理対象物である廃PETボトル、廃PETフィルム、廃PET繊維、廃PET産業用資材等のポリエチレンテレフタレートを含む原料を用意」することは、廃PET繊維が、不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を意味していることは自明であるので、本件発明1の「不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を提供する工程」に相当する。
(イ)引用文献1発明の「ポリエチレンテレフタレートを含む原料と触媒とを、エチレングリコールに混合して、混合液を調製する混合液調製工程」は、該混合液がその後化学解重合されるのであるから、本件発明1の「化学解重合液」を形成することに相当する。
(ウ)さらに、引用文献1発明の「前記混合液中において、前記触媒の作用により、前記ポリエチレンテレフタレートを、180~210℃程度で解重合してビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得る解重合工程」は、本件発明1の「化学解重合液で前記再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、前記化学解重合液及び前記不純物を含む解重合物を形成する解重合工程」に相当する。
(エ)引用文献1発明の「前記混合液中から、ジャケット温度を150~160℃程度で主にEGやDEG等の低沸点成分を蒸留留去してして除去する蒸発除去工程」及び「前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを回収する回収工程」は、それぞれ、本件発明1の「蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離する蒸発工程」に相当する。
(オ)引用文献1発明の「回収された前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、加熱した水に溶解して水溶液を、65~85℃程度で水溶液中のBHETの濃度は、粗BHETと熱水との混合比で表して粗BHET1重量部に対して、熱水を3~10重量部で調整する熱水溶解工程」は、本件発明1の「前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させることで水相液体を形成」することに相当する。
(カ)さらに、引用文献1発明の「前記水溶液が着色する要因となる着色要因物質を除去する800~1200m2/gの表面積を有し、かつ薬品賦活した活性炭を使用する吸着剤に接触させる吸着剤処理、漂白剤処理(分解処理)、および水添処理(還元処理)等の方法で処理して簡便かつ短時間で着色要因物質の除去が可能となる着色要因物質除去工程」は、本件発明1の「活性炭材料を前記水相液体に添加して、前記活性炭材料で前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物を吸着するによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水相液体での純度を向上する吸着工程」と、「活性炭を使用する吸着剤により、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水相液体での純度を向上する工程」である点で共通する。
(キ)引用文献1発明の「前記水溶液中において、前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを晶析する晶析工程と、
結晶化した前記ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを、前記水溶液から分離する分離工程」は、本件発明1の「前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出されることによって、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程」に相当する。
(ク)引用文献1発明において、「処理対象物である廃PETボトル、廃PETフィルム、廃PET繊維、廃PET産業用資材等のポリエチレンテレフタレートを含む原料」から「着色要因物質除去工程」を経て「ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート」を製造する「製造方法」は、製造工程を通じてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの着色要因物質を除去し着色度の低いものを製造しているのであるから、本件発明1の「再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法」に相当するといえる。
(ケ)したがって、本件発明1と引用文献1発明とは、
「不純物が付いた再生すべきポリエステル織物を提供する工程と、
化学解重合液を形成し、前記ポリエチレンテレフタレートを含む原料に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、前記化学解重合液及び前記不純物を含む解重合物を形成する解重合工程と、
蒸発で前記化学解重合液が前記解重合物から蒸留されることで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離する蒸発工程と、
前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させることで水相液体を形成し、活性炭を使用する吸着剤により、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水相液体での純度を向上する工程と、
前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出されることによって、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを得る結晶工程と、を含む、
再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
着色する要因となる着色要因物質を除去する手段が、本件発明1においては、「活性炭材料を前記水相液体に添加して」、「前記活性炭材料で前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物を吸着する」工程であると特定されているのに対して、引用文献1発明においては、「水溶液が着色する要因となる着色要因物質を除去する800~1200m2/gの表面積を有し、かつ薬品賦活した活性炭を使用する吸着剤に接触させる吸着剤処理、漂白剤処理(分解処理)、および水添処理(還元処理)等の方法で処理して簡便かつ短時間で着色要因物質の除去が可能となる着色要因物質除去工程」である点。
[相違点2]
本件発明1においては、「前記吸着工程において、 前記活性炭材料のpH値(pH value)は、4~7であり、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET):水(重量比)は、1:3~1:20であり、前記水相液体が125℃~130℃の吸着温度に加熱される」ことが特定されているのに対して、引用文献1発明においては、吸着工程における活性炭材料のpH値範囲、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET):水(重量比)の比、及び前記水相液体の吸着温度が特定されていない点。
イ 相違点の判断
(ア)相違点1について
引用文献1発明において、着色する要因となる着色要因物質を除去する手段として、800~1200m2/gの表面積を有し、かつ薬品賦活した活性炭を使用する吸着剤に接触させる吸着剤処理が、選択肢のわずか3例の一つとして特定事項になっており、吸着工程の前の熱水溶解工程で水溶液が形成されているのであるから、「活性炭材料を前記水相液体に添加して、前記活性炭材料で前記再生すべきポリエステル織物に元々存在した不純物を吸着する」ことを特定することは、当業者が容易になし得る技術的事項である。
(イ)相違点2について
吸着剤である活性炭を用いて着色要因物質を除去する際の吸着温度として、125℃~130℃の吸着温度を用いる点は、引用文献1~12のいずれにも記載ないし示唆されていない。そして、具体的な吸着温度が記載されている場合も、引用文献2には、40℃から100℃(摘記(2b))、引用文献3には、60~95℃(摘記(3b))、引用文献4には90℃(摘記(4d))、引用文献5には90℃(摘記(5b))、引用文献6には約98℃(摘記(6c))、引用文献7には40~110℃(摘記(7b))、引用文献8には40℃から100℃(摘記(8a))、引用文献9には27℃(摘記(9a))と記載されていることを総合的に考慮すると、吸着温度は27℃から最高でも110℃であることが望ましいことが理解できるため、引用文献1発明において、吸着温度として、あえて125℃~130℃を採用する動機付けがあったとはいえない。
そして、本件発明1は、吸着温度を「125℃~130℃」とすることによって、本件明細書の【0069】の実施例4に記載されるとおり、他の実施例と比べても、最も高いL値(92%)及び、最も低いa値(0.1)及びb値(1.3)を有する、最も高い品質のBHETが回収できるという、格別顕著な効果を奏すると認められる。
そうすると、本件発明1は、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するといえる。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~12に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2~9は、上記(3)と同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~12に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)申立人Aの意見について
ア 申立人Aの主張
申立人Aは、令和7年9月5日提出の意見書(3(2))において、本件発明1について、以下の点を主張している。
a 甲5Aには、吸着剤の存在下における精製処理において、常圧~加圧下における温度として100℃~250℃が記載されており、加圧下における温度として120℃~180℃が記載されているから、上記取消理由通知書において認定された引用文献1発明において、加圧等をすることで120℃~180℃の範囲内において実施することは当業者が容易になし得る技術的事項である点。
b 訂正後の本件発明の効果について検討すると、「常圧下での沸点は理論上125℃までは上昇しない」ため、「実施例4は実現不可能である」ことから、実施例4で示された効果を本件発明の効果として認定することは妥当でない点。
イ 申立人Aの主張についての判断
(ア)上記主張aについて、甲5Aには、モノマー流出物の脱色の段階が、100~250℃、好ましくは110~200℃、望ましくは120~180℃の温度で行われることが記載されている(摘記(甲5Aa))。
しかしながら、甲5Aにはより具体的に、不透明PETを含む供給原料をエチレングリコール中で脱重合反応させ、反応流出物中のエチレングリコールを蒸発によって分離した後、薄膜蒸発器で88.5重量%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートおよび11.5重量%のエチレングリコールからなるガス流出物を得て、これを液化して活性炭の固定床に供給することにより脱色されかつ顔料が除かれたBHETの液体流れを得て、これを重合段階に再注入することが記載されている(摘記(甲5Ab))。
他方、引用文献1発明は、PETを含む供給原料をエチレングリコール中で解重合させ、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと化学解重合液とを蒸発により分離し、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを回収した後に、加熱した水に溶解して活性炭に接触させ、得られた水溶液からビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを晶析させる方法である。
すなわち、甲5Aの方法は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートとエチレングリコールのガス流出物を液化させた温度(130℃)でそのまま活性炭に接触させるものであるのに対し、引用文献1発明は一旦回収したビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを熱水に溶解させて、その熱水として活性炭に接触させるものである点で、全く異なるプロセスである。
したがって、引用文献1発明において熱水を使用しながら、あえて活性炭との接触温度だけを130℃付近にする動機はなく、また甲5Aのプロセスにおいて、あえてガス流出物からビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート回収し、水の沸点よりも低い温度まで下げて熱水に溶かし、再度、水の沸点よりも高い130℃付近を選択して活性炭との接触を行う動機もなく、引用文献1にも甲5Aにも、そのような記載も示唆もされていない。
したがって甲5Aに100~250℃で脱色を行うことが記載されていたとしても、引用文献1発明においてこれを選択できるとはいえず、主張aは採用できない。
(イ)上記主張bについては、後記2(5)で述べるように、本件発明は「125℃まで上昇しない」とはいえないから、本件明細書の「実施例4は実現不可能である」とはいえない。
したがって、主張bについても採用できない。
(6)申立人Bの意見について
ア 申立人Bの主張
申立人Bは、令和7年9月8日提出の意見書(3(1)~(4))において、以下の点を主張している。
a 本件発明1の明度に関するL値に関して、実施例4(吸着温度125℃)の結果は、実施例1(吸着温度90℃)と同一であり、差は無い。また赤色及び緑色に関するa値、並びに黄色及び青色に関するb値に関して、実施例4(吸着温度125℃)と、実施例1~3(吸着温度85℃~95℃)との差は、1程度に過ぎない。a値及びb値は、測定変動が大きい指標であるため、1程度の差は、実験誤差に過ぎない可能性があり、回収率に関して、実施例4(吸着温度125℃)の結果は、実施例1~3(吸着温度85℃~95℃)よりも、大きく低下しているため、吸着温度を125℃とすることによって顕著な効果が発揮されるとは認められない点。
b 仮に実施例4の結果が顕著であったとしても、「125℃~130℃」の全範囲にわたって顕著な効果が得られるとは認められない点。
c 例えば参考資料1Bにも記載されているとおり、吸着温度を上げることによって、不純物の除去効果が向上することは、当業者が容易に予測できるものである点。
イ 申立人Bの主張についての判断
(ア)上記a~cの点は本件発明の効果に関する主張であるが、上記(3)イ(イ)で説示したとおり、引用文献1発明において、吸着温度として、あえて125℃~130℃を選択する動機付けがあったとはいえないので、効果の点をおくとしても、本件発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~12に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)また、上記a及びbについては、上記(3)イ(イ)で説示したとおり、本件発明1は、吸着温度を「125℃~130℃」とすることにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。そして、本件明細書の実施例に吸着温度が125℃の場合の結果しか示されていないとしても、130℃との差は5℃しかないから、130℃においても同様の効果があると推認できる。他方、申立人Bは上記5℃の差によって、上記効果が失われることについての根拠は何ら示していない。
(ウ)さらに、上記cについては、参考資料1Bの記載が15~35℃の吸着温度についてのものであり、本件発明のような高温での吸着処理に関するものではないから、採用することはできない。
(エ)以上のとおり、申立人Bの主張a~cはいずれも採用できない。
(7)当審合議体が通知した取消理由についてのまとめ
上記(1)~(6)から、本件発明1~9は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2~12に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、取消理由には理由がない。
2 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
取消理由(進歩性)は、引用文献1を主引用例とする点で、申立理由2A及び4Bと同旨である。申立理由1A、3A、4A、5A、1B、2B、及び3Bについては、取消理由として採用しなかったため、以下検討する。
(1)申立理由1A(新規性)について
上記1(3)アにおいて説示したとおり、引用文献1発明と本件発明1との対比に基づく相違点1及び2については、いずれも実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。本件発明1を引用する本件発明2~9についても同様に、引用文献1に記載された発明ではない。
(2)申立理由3A及び1B(新規事項)について
令和5年8月15日提出の手続補正書による補正には、以下の補正事項1及び2が含まれるものと認められる。
[補正事項1]
比較例1について記載した本件特許の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の【0071】に
「反応液を90℃に冷却した後に18kgの水を添加して、65℃に加熱することでBHETを水に溶解させ、30gの活性炭を添加して、75℃で1時間撹拌することで染料などの不純物を吸着した後に」とあるのを
「反応液を90℃に冷却した後に18kgの水を添加して、65℃に加熱することでBHETを水に溶解させ、30gの活性炭を添加して、65℃で1時間撹拌することで染料などの不純物を吸着した後に」
に補正する。
[補正事項2]
当初明細書の【0073】に
「比較例2:
比較例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を55℃から65℃に変更した以外は、比較例1と同様にした。」
とあるのを、
「比較例2:
比較例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を65℃から55℃に変更した以外は、比較例1と同様にした。」
に補正する。
ア 補正事項1について
まず、補正事項1について検討すると、当初明細書の【0054】には、「吸着温度は、70℃~150℃であることが好ましく」と記載され、好ましい温度の範囲である「75℃」で吸着が行われた例を「比較例」とする補正前の「比較例1」の記載は、上記記載と整合しない。また、当初明細書の【0075】には、
「比較例3:
比較例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を65℃から180℃に変更した以外は、比較例1と同様にした。」
と、比較例3に、比較例1において不純物を吸着する温度が65℃である旨の記載があり、また同【0071】の比較例1に「65℃に加熱することでBHETを水に溶解させ」とあること、さらにその後は加熱したことの記載がないことも併せて考えれば、当初明細書の比較例1の吸着温度の「75℃」は誤記であり、「65℃」と記載されるべきものであったと解釈するのが自然である。
よって、補正事項1は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項から、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
イ 補正事項2について
補正事項2について検討すると、上記アのとおり比較例1の吸着温度は「65℃」であったと解されることから、仮に補正前の記載のとおり、比較例2の吸着温度が65℃であったとすると、比較例1と同じ温度になってしまうために不合理であるため、比較例2における「55℃から65℃に変更した」との記載は誤記であり、同温度を「65℃から55℃に変更した」と記載されるべきものであると考えるのが自然である。
よって、補正事項2も、当初明細書等に記載された事項から、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、当初明細書等全体の記載を総合すれば、令和5年8月15日提出の手続補正書による補正は、当初明細書等に記載された事項から、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
ウ 申立人Aの主張について
申立人Aは申立書A(4-2)において、以下の点に基づき、補正事項1及び2は新規事項を追加するものであると主張している。
a 当初明細書の実施例1では、溶解温度と吸着温度とは同じ温度で行われているものの、実施例2や実施例3では溶解温度と吸着温度とは異なる温度で行われていることから、比較例1において溶解温度と吸着温度とが同じ温度であるとは認められない点。
b 当初明細書には、比較例1の吸着温度として「75℃」、「55℃」及び「65℃」の3つの温度が記載されており、どの記載が正しく、どの記載が誤記であるのかが判然としないため、「65℃」が正しいという理由に客観性は認められない点。
しかしながら、上記アで述べたとおり、当初明細書の比較例1の吸着温度の「75℃」は誤記であり、「65℃」と記載されるべきものであったとの解釈は、当初明細書の【0064】の実施例1で溶解温度と吸着温度が同じであることが記載されているだけでなく、同【0054】、【0071】及び【0075】の記載を併せて考慮したものである。それゆえ、上記主張aについては、実施例2及び3における吸着温度を変更したとの記載を参酌しても、上記解釈が誤りであるとはいえないから、採用できない。
また、上記主張bについても、当初明細書等の記載を全体として考慮した場合、補正前の記載が補正事項1及び2の記載を意図したものであると考えることが自然であるから、採用できない。
したがって、申立人Aの主張は採用できない。
エ 申立人Bの主張について
申立人Bは申立書B(4(2))において、以下の表を示し、そのケース1及び2のように、補正後の明細書の吸着温度の組み合わせ以外にも考えられる温度の組み合わせを示し、補正後の明細書では、比較例間における吸着温度の数値に矛盾は無いが、ケース1及び2でも矛盾は無い。また、補正後の明細書では、誤記として3箇所補正しているのに対し、ケース1及び2では2箇所しか補正していないため、補正後の明細書における温度が正解であるか明らかではない旨、主張している。
[図:0001433071000022.jpg]
しかしながら、当初明細書の「比較例1」では、同【0054】に記載された好ましい温度範囲内の温度(75℃)での吸着が行われているにもかかわらず、BHETの品質が劣る結果が得られているから、「ケース1」は不合理がある。
また、「ケース2」は好ましい吸着温度により近い比較例2(65℃)が、比較例1(55℃)と比べてBHETの品質が劣っているのは不自然である。
そして、補正により新たな技術的事項を導入するかどうかは、記載の整合性を取るために必要な補正箇所の数で決まるものではなく、出願当初の明細書の記載全体からみて、新たな技術的事項を導入するかを判断すべきであり、また上記ア及びイで述べたとおり、当初明細書等全体の記載を総合すれば、上記補正は新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、上記主張は採用できない。
(3)申立理由4A及び2B(サポート要件)について
ア 本件発明の解決しようとする課題
本件明細書の背景技術(【0002】~【0007】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0009】)、並びに実施例におけるBHETの品質及び回収率の記載(【0045】~【0056】)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、ポリエステル織物の解重合により得られる、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良する方法を提供することであると認める。
イ 本件発明の詳細な説明の記載
本件明細書には、上記課題を解決する手段として、不純物が付いた再生すべきポリエステル織物に化学解重合を行うことにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、化学解重合液及び前記不純物を含む解重合物を形成し、蒸発で前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートと前記化学解重合液とを分離し、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させることで水相液体を形成し、活性炭材料を前記水相液体に添加し、125℃~130℃の吸着温度で前記活性炭材料で前記不純物を吸着することによって、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの水相液体での純度を向上させ、前記水相液体を冷却することで、前記ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートが前記水相液体から結晶として析出させる方法が記載され(【0010】、【0054】、【0069】)、実際に実施例では、上記構成を有する組成物が、上記課題を解決することができることが記載されている(【0069】)。さらに、1(6)イ(イ)で説示したとおり、130℃でも同様の効果が推認される。
したがって、本件発明1~9は、その範囲全体にわたって前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであり、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
ウ 申立人Aの主張について
申立人Aは申立書A(4-2)において、以下の点を主張している。
令和5年8月15日提出の手続補正書による補正は補正却下すべきであるから、本件細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明の課題を解決できない発明として発明の詳細な説明に記載された比較例1~3が上記補正前の特許の請求項1~12に包含されており、審査段階における同補正前の令和5年5月24日付け拒絶理由通知書において指摘された理由が解消されていないから、これらの請求項に係る発明は、本件発明の課題を解決できない点。
しかしながら、上記(2)において述べたとおり、令和5年8月15日付けの手続補正書による補正は適法になされたものであると認められる。
よって、比較例1~3の活性炭の吸着温度はそれぞれ65℃、55℃、180℃であると認められ、本件発明1の吸着温度とは異なるものであると解されるので、令和5年5月24日付け拒絶理由通知書において指摘された理由は解消している。
したがって、申立Aの上記主張は採用できない。
エ 申立人Bの主張について
申立人Bは、申立書B(4(3)及び(4))において、以下の点を主張している。
a 本件訂正前の請求項1~9における吸着温度である70~150℃について、70℃は比較例1に近接している温度であるから、そのL値、a値、b値については、比較例1と同様に良好な色合いが得られない。
よって、本件訂正前の請求項1~9に係る発明について、本件訂正前の請求項1~9に係る発明の70℃~150℃の吸着温度の全範囲にわたってBHETの良好な色合いが得られるものではなく、また、本件発明1~9の吸着温度についても、125℃~130℃のうち、実際に結果を確認したのは、実施例4の125℃の1点のみであるから、125~130℃の範囲にわたって、実施例4と同様の結果が得られる具体的な理由が説明されていない点。
b 請求項2について、仮に、本件発明2の構成要件2A(再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、90以上のL値、-2.0~ 2.0のa値、及び-4.0~4.0のb値を有する点)及び2B(再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収率が85%以上である点)が、本件発明1を実施した結果を必ずしも示していない場合であって、吸着温度を85~125℃の範囲内とすること(及び、必要に応じて、当業者が容易に実施可能な設計変更をすること)によっても、上記構成要件2A及び2Bが達成されないときは、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載されていないことになる点。
しかしながら、上記主張aについて、本件訂正によって、吸着温度の範囲は125~130℃となったので、70℃付近において本件発明の課題を解決しないとする申立人の主張は採用できない。
また、上記イで述べたとおり、本件明細書の【0054】において、80~130℃において吸着効果が優れることが記載され、また、実施例4において、125℃において効果を確認しているのであるから、125~130℃に亘って、本件発明の課題を解決できることは明らかである。
さらに、上記主張bについて、申立人Bは、吸着温度が「125℃~130℃である本件発明1において上記構成要件2A及び2Bが達成されない場合があることを何ら示しておらず、「達成されないときは」と仮定の話をしているだけであって、根拠を欠くものである。
したがって、申立人Bの上記主張a及びbは採用できない。
(4)申立理由3B(実施可能要件)について
ア 本件発明の実施可能要件について
上記(3)イで説示したように、125℃~130℃の吸着温度でビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートを水に溶解させた水相液体を活性炭に添加することにより、再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの色合いを改良し得ることが本件明細書の発明の詳細な説明に記載されているから、本件発明1~9について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
イ 申立人Bの主張について
申立人Bは、申立書B(4(3)及び(4))において、以下の点を主張している。
a 本件訂正前の請求項1~9における吸着温度である70~150℃について、70℃は比較例1に近接している温度であるから、そのL値、a値、b値については、比較例1と同様に良好な色合いが得られない。
よって、本件訂正前の請求項1~9に係る発明について、本件発明の70℃~150℃の吸着温度の全範囲にわたってBHETの良好な色合いが得られるものではなく、また、本件発明1~9の吸着温度についても、125℃~130℃のうち、実際に結果を確認したのは、実施例4の125℃の1点のみであるから、125~130℃の範囲にわたって、実施例4と同様の結果が得られる具体的な理由が説明されていない点。
b 訂正前の請求項2について、仮に、本件発明2の構成要件2A(再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートは、90以上のL値、-2.0~ 2.0のa値、及び-4.0~4.0のb値を有する点)及び2B(再生ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの回収率が85%以上である点)が、本件発明1を実施した結果を必ずしも示していない場合であって、吸着温度を85~125℃の範囲内とすること(及び、必要に応じて、当業者が容易に実施可能な設計変更をすること)によっても、上記構成要件2A及び2Bが達成されないときは、これらの構成要件を達成できるように、本件明細書の発明の詳細な説明は十分に記載されていない点。
しかしながら、上記(3)エで述べたことと同様の理由より、上記理由は採用できない。
(5)申立理由5A(明確性)について
ア 本件特許の請求項1~9の明確性について
本件特許の請求項1の「水相液体が125℃~130℃の吸着温度に加熱される」との記載について、吸着温度は明確に特定されており、水相液体を加熱することも特定されている。そして、水の沸点よりも高い吸着温度が特定されている点についても、技術常識を考慮すれば、水相液体を加圧することで当該温度への加熱が可能であると理解できるから、上記記載は明確であり、請求項1及びこれを直接的又は間接的に引用する請求項2~9の記載についても、明確である。
イ 申立人Aの主張について
申立人Aは、申立書A(4-3)、令和7年9月5日提出の意見書(3(1))、同年10月29日提出の上申書及び同上申書に添付した試験報告書Aにおいて、以下の点を主張している。
本件特許の請求項1の「水相液体が125℃~130℃の吸着温度に加熱される」との記載について、本件明細書には、水相液体を100℃より高い温度まで加熱する際に、加圧等の処理を行うことは記載されていないため、上記記載における100.68℃より高い温度を包含する吸着温度は、技術的に適切でない点。
しかしながら、本件明細書には、本件発明が常温での処理に限定されることは記載されていない。そして、上記アで説示したとおり、本件特許の請求項1の記載は本件特許出願時の技術常識を参酌すれば、それ自体で明確であるため、上記理由は採用できない。
なお、125℃の吸着温度を用いている実施例4についての本件明細書【0069】の「実施例1において、活性炭の染料などの不純物を吸着する温度を90℃から125℃に変更した以外は、実施例1と同様にした。」との記載は、化学処理であることから、用いる材料の点で「同様」であると理解するのが自然であり、装置類に関しては温度や圧力の条件に応じて適切なものを使用するものと理解するのが当然である。
(6)取消理由で採用しなかった申立理由のまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1A、3A、4A、5A、1B、2B、及び3Bには理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び各特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701204