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特許異議申立

2018-701043

放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法

審判番号
2018-701043
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-134638
登録番号
特許第6349166号(P6349166)
請求日
2018年12月21日
審決日
2020年02月17日
公報発行日
2020年07月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社クボタ
  • 【権利者代理人】橋本 薫
  • 【異議申立人】土田 裕介
  • 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
  • 【異議申立人代理人】黒木 義樹
  • 【異議申立人代理人】阿部 寛
審判長/審判官
  • 審判長 瀬川 勝久
  • 審判官 井上 博之
  • 審判官 山村 浩
分類
P1651.121-ZAA(G21F) / P1651.851-ZAA(G21F) / P1651.853-ZAA(G21F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6349166号発明「放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6349166号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8について訂正することを認める。 特許第6349166号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6349166号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成26年6月30日に出願され、平成30年6月8日にその特許権の設定登録がされ、同年6月27日に特許掲載公報が発行された。その後、同年12月21日に土田 裕介(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成31年3月29日付けで取消理由(発送日平成31年4月3日)が通知され、その指定期間内である令和元年5月30日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月11日に申立人から意見書が提出され、同年9月24日付けで取消理由(決定の予告)(発送日同年9月27日)が通知され、その指定期間内である同年11月26日に意見書の提出がされ、令和2年1月8日に申立人から上申書が提出されたものである。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(4)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 請求項1に 「被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱して放射性セシウムを揮散分離する加熱炉と、前記加熱炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が最大となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定工程と、 前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する塩基度調整工程と、 塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記加熱炉で加熱する加熱処理工程と、 前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程と、 を備えている放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。」とあるのを、 「被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定工程と、 前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する塩基度調整工程と、 塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記溶融炉で加熱し溶融する加熱処理工程と、 前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程と、 を備えている放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2~7も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項8に、 「被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱して放射性セシウムを揮散分離する加熱炉と、前記加熱炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が最大となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定装置を備え、 前記塩基度調整助剤添加装置は前記塩基度調整助剤添加量決定装置で決定された塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する、 放射性セシウム分離濃縮装置。」とあるのを、 「被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定装置を備え、 前記塩基度調整助剤添加装置は前記塩基度調整助剤添加量決定装置で決定された塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する、 放射性セシウム分離濃縮装置。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 本件明細書の段落【0014】に、 「・・・被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱して放射性セシウムを揮散分離する加熱炉と、前記加熱炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法であって、被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が最大となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定工程と、前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する塩基度調整工程と、塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記加熱炉で加熱する加熱処理工程と、前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程と、を備えている・・・」とあるのを、 「・・・被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法であって、被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定工程と、前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する塩基度調整工程と、塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記溶融炉で加熱し溶融する加熱処理工程と、前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程と、を備えている・・・」に訂正する。 (4)訂正事項4 本件明細書の段落【0030】に、 「・・・被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱して放射性セシウムを揮散分離する加熱炉と、前記加熱炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置であって、被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が最大となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定装置を備え・・・」とあるのを、 「・・・被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置であって、被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定装置を備え・・・」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1、2について ア 訂正の目的の適否について 訂正事項1、2は、いずれも「加熱」について「溶融」という限定、及び「最大となる範囲」について「99%以上となる範囲」という限定をしたものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて 上記アで説示したように、訂正事項1、2は「加熱」、「最大となる範囲」について限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて 訂正事項1、2の「溶融」、「溶融炉」の訂正については、「【0034】図1には、本発明による放射性セシウム分離濃縮装置1が示されている。放射性セシウム分離濃縮装置1は、放射性セシウムで汚染された土壌を含む被処理物から放射性セシウムを分離濃縮する装置で、放射性セシウムを含有する被処理物を集積する受入部2と、被処理物を1200℃から1500℃の温度範囲で加熱溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉5と、溶融炉5で被処理物から揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する第1集塵機11を備えている。」などに記載されている。 訂正事項1、2の「(放射性セシウムの揮散率が)99%以上(となる範囲)」の訂正については、「【0070】さらに、塩基度調整工程で添加される塩基度調整助剤の添加割合は、被処理物に対して25重量%から50重量%であることが好ましく、30重量%から50重量%であることがさらに好ましい。このような値を採用すれば放射性セシウムの揮散率を上昇させながらも、塩基度調整助剤の使用量を適正量に調整することができる。【0071】さらに、所定の添加割合は、前記分離工程で被処理物から揮散する放射性セシウムの揮散率が99%以上になるように決定される値であることが好ましい。放射性セシウムの揮散率が99%以上になれば、分離工程の後に被処理物に残存する放射線量が許容値、例えば一般廃棄物として許容される値に調整されるようになる。」の記載から見て、放射性セシウムの揮散率が99%以上となるように塩基度調整助剤の添加割合を調整することが記載されているから、「塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する」に際しても、「(放射性セシウムの揮散率が)99%以上」となるようにすることが本件明細書に記載されているといえる。 以上のとおり、訂正事項1、2は明細書等に記載されているものと認められる。 (2)訂正事項3、4について 訂正事項3、4は、上記訂正事項1、2の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項3、4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1~7は、請求項2~7が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~7は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。 (4)明細書の訂正と関係する一群の請求項について 明細書についての訂正である訂正事項3は、一群の請求項である請求項1~7についての訂正である訂正事項1との整合性をとるための訂正である。したがって、訂正事項3は、一群の請求項である請求項1~7に関連する訂正である。 (5)申立人の主張について 申立人は、令和元年7月11日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)において、訂正事項1、2について、「訂正後の「99%以上となる範囲」は、訂正前の「最大となる範囲」を減縮したものとはいえず、特許請求の範囲を拡張するものである」旨、及び「訂正後の請求項1に係る発明における「最大となる範囲」が「99%以上となる範囲」と同義であること、又は、「最大となる範囲」の好ましい範囲が「99%以上となる範囲」であることは、本件特許明細書に何ら記載されていない」旨主張している。 しかしながら、「最大となる範囲」とは具体的な数値範囲を指し示したものではないから、「99%以上」との具体的な数値を規定することにより範囲が限定されることは明らかである。また、本件明細書に「最大となる範囲」が「99%以上となる範囲」と同義であること等の明示的な記載がないとしても、上記(1)ウで説示したように、放射性セシウムの揮散率が99%以上となるように塩基度調整助剤の添加割合を調整することが記載されている以上、「最大となる範囲」として「99%以上」という範囲も想定されていたというべきである。 よって、申立人の主張は採用できない。 3 小括 したがって、上記訂正請求による訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕、8について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 訂正後の請求項1~8に係る発明 上記訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定工程と、 前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する塩基度調整工程と、 塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記溶融炉で加熱し溶融する加熱処理工程と、 前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程と、 を備えている放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。 【請求項2】 前記塩基度調整助剤添加量決定工程では、塩基度調整助剤添加後の被処理物の塩基度、 光学的塩基度、塩素濃度、被処理物の加熱処理工程後の塩基度、光学的塩基度の何れかから選択される単一または複数の指標が所定の範囲に収まるように、塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合が決定される請求項1記載の放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。 【請求項3】 前記塩基度調整助剤添加量決定工程では、被処理物の組成を自動測定し塩基度調整助剤の添加量が自動決定され、前記塩基度調整工程では、前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された添加量に従って被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が自動添加される請求項1または2記載の放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。 【請求項4】 前記塩基度調整工程で添加される塩素系塩基度調整助剤は、無機塩化物または無機塩化物が含まれる物質の何れかから選択される単一または複数の物質である請求項1から3の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。 【請求項5】 前記塩基度調整工程で添加される塩素系塩基度調整助剤は、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化鉄の何れかから選択される単一または複数の物質である請求項4に記載の放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。 【請求項6】 前記塩基度調整工程で添加される非塩素系塩基度調整助剤は、非塩素系アルカリ金属化合物、非塩素系アルカリ土類金属化合物、非塩素系マグネシウム化合物、非塩素系ホウ素化合物、非塩素系鉄化合物、非塩素系鉛化合物の何れかから選択される単一または複数の物質である請求項1から5の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。 【請求項7】 前記塩基度調整助剤添加量決定工程では、還元剤が添加された被処理物に対して、塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合が決定される請求項1から6の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。 【請求項8】 被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定装置を備え、 前記塩基度調整助剤添加装置は前記塩基度調整助剤添加量決定装置で決定された塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する、 放射性セシウム分離濃縮装置。」 2 取消理由の概要 訂正後の請求項1~8に係る特許に対して、当審が令和元年9月24日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 本件発明1~8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の引用文献2、3に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2014-92412号公報 甲第2号証:(独)国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター,「放射性物質の挙動からみた適正な廃棄物処理処分(技術資料第四版)」、平成26年4月14日改訂版、p.72-94 引用文献1:特許第5162721号公報(甲第3号証) 引用文献2:特開2013-242194号公報(甲第4号証) 引用文献3:特開2010-230270号公報(甲第6号証) 3 取消理由について (1)引用文献の記載 ア 引用文献2の記載 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項4】 被処理物に含まれる放射性セシウムを分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮方法であって、 被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加工程と、 被処理物に融点降下剤を添加する融点降下剤添加工程と、 塩素系助剤及び融点降下剤が添加された被処理物を還元性雰囲気で溶融して溶融スラグから放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、 前記分離工程で揮散分離された放射性セシウムを捕集する捕集工程と、 を含む放射性セシウム分離濃縮方法。 【請求項5】 前記融点降下剤添加工程で被処理物に添加される融点降下剤が塩基度調整剤である請求項3または4記載の放射性セシウム分離濃縮方法。 【請求項6】 前記塩基度調整剤が、カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質である請求項5記載の放射性セシウム分離濃縮方法。 【請求項7】 前記分離工程で被処理物を還元性雰囲気で溶融するために、被処理物に還元剤を添加する還元剤添加工程をさらに含む請求項2から6の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮方法。 【請求項8】~【請求項9】 ・・・(略)・・・ 【請求項10】 前記塩素系助剤添加工程で被処理物に添加される塩素系助剤が、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質である請求項1から9の何れかに記載の放射性セシウム分離濃縮方法。」 (イ)「【0011】 本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、土壌や焼却灰等の被処理物に含まれる放射性セシウムを効率的に分離濃縮して、大きく減容化することができる放射性セシウム分離濃縮方法及び放射性セシウム分離濃縮装置を提供する点にある。」 (ウ)「【0045】 ・・・(略)・・・放射性セシウム分離濃縮装置1は、被処理物に含まれる放射性セシウムを分離濃縮する装置で、放射性セシウムを含有する被処理物を集積する受入部2と、被処理物を溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉7と、溶融炉7で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機11を備えている。 【0046】 受入れ部2に集積された被処理物を溶融炉7に搬送する搬送機構3が設けられ、搬送機構3で搬送される被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加装置4、還元剤を添加する還元剤添加装置5、融点降下剤を添加する融点降下剤添加装置6が設置されている。 【0047】 ・・・(略)・・・ 【0048】 被処理物に含まれる放射性セシウムは、溶融の過程で塩素と反応して塩化セシウムとなり、その殆どが揮散して排ガスとともに煙道9から流出する。煙道9に沿って、冷却装置10、第1集塵機11、中和剤添加装置12、第2集塵機13、白煙防止装置、煙突が配置されている。」 (エ)「【0056】 塩素系助剤添加工程で被処理物に添加される塩素系助剤として、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質が用いられ、無機塩化物として、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムまたは塩化第二鉄が用いられ、高沸点の塩化物として塩化カルシウムまたは塩化第二鉄が好適に用いられる。尚、塩素が含まれていれば塩素系助剤として用いることができ、塩素ガスや有機系塩化物等であってもよい。」 (オ)「【0061】 被処理物の塩基度(CaO(%)/SiO2(%))が1から離れると融点が高くなり、被処理物の融点が高いと、SiO2を主成分として陽イオン結合で構成されるスラグの骨格構造の結合が強く、骨格構造と結合しているセシウムとの結合力も強い。そのため、塩素成分がセシウムと結合しようとしてもセシウムは骨格構造から離れることが出来ず、塩素とセシウムの結合は阻害され、結果として溶融スラグに放射性セシウムが残存する傾向が強くなる。 【0062】 一方、融点降下剤を添加することによって、より低い温度で飛処理物(当審注;「被処理物」の誤記と認める。)が溶融して流動性が上昇する。つまり、スラグの骨格構造の結合が弱くなり、セシウムはスラグの骨格構造から離れやすくなる。添加された塩素系助剤に含まれる塩素と放射性セシウムはイオン結合の機会が増加し、塩化セシウムに移行する反応が促進されるためである。そのため、放射性セシウムの揮散が促進されると推測される。被処理物に融点降下剤を添加する時期は、塩素系助剤の添加工程の前後何れであってもよい。 【0063】 尚、上述した実施の形態では、塩基度として簡易的な(CaO(%)/SiO2(%))を指標として用いる場合を説明したが、塩基度はこれ以外にも様々な定義があり、廃棄物学会論文誌(Vol.19,No19,pp17-25,2008)に開示されている。例えば、以下の式で示すように、複数の成分で表すものもある。 (CaO+MgO+Fe2O3+K2O+Na2O)/(SiO2+Al2O3) このように複数の成分で表される塩基度では、単純に1で融点が低くなるのではなく、各成分の含有量になり複雑に定まるものである。」 (カ)「【0064】 融点降下剤添加工程で被処理物に添加される融点降下剤として塩基度調整剤が好適に用いられ、カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ほう砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄等から選択される何れか単一または複数の物質が好適に用いられる。 【0065】 尚、融点降下剤として塩基度調整剤が好適に用いられるのは、被処理物の融点や溶融時の流動性を見る指標として塩基度が利用されるからである。簡易的な塩基度(CaO(%)/SiO2(%))では1に近くなるほど融点は下がり、1から低い方に離れても、高い方に離れても融点は上がる傾向にある。また、前述の複数の成分で表される塩基度では、融点との相関は単純に一意の数値で表されるのではなく、各成分の比率により規定される塩基度の値が融点の指標となる。」 (キ)「【0066】 さらに、被処理物を還元性雰囲気、つまり酸素分圧が低い状況下で溶融することにより、被処理物中の放射性セシウムは酸素と結合する機会が減少し、塩素との結合機会を十分に確保することができるようになり、例えばセシウムの酸化化合物が還元されて塩素と結合し、セシウムが有機物との結合体である場合には酸化される前に塩素と結合するといったように、放射性セシウムが塩化物に移行する反応が促進され、高効率に溶融スラグから放射性セシウムを揮散分離させることができるようになる。 【0067】 そのために、還元剤添加工程で被処理物に添加される還元剤として、活性炭、グラファイト、カーボンブラック、コークス、木炭、プラスチック、草木、乾燥下水汚泥の何れかから選択される単一または複数の物質が好適に用いられる。・・・(略)・・・」 (ク)「【0075】 また、塩素系助剤、融点降下剤、または還元剤の添加量は、被処理物の性状に応じて適宜調整すればよい。例えば、被処理物が焼却灰(例えば焼却主灰と焼却飛灰の混合物)であれば、十分に塩素含有量が高いため、それほど大量に塩素系助剤を添加する必要は無い。 【0076】 さらに、塩素系助剤、融点降下剤、還元剤をそれぞれ別に添加する例を説明したが、被処理物の性状に大きな変化がない場合等では、同一の装置でまとめて投入してもよい。」 (ケ)「【0089】 基材4,5に塩素系助剤として塩化カルシウムを添加した複数の試料を用いて、試料中のトータル塩素量に対するセシウムの揮散率を確認した。図6(b)に示すように、塩化カルシウムの添加量を増加するほどにセシウムの揮散率が上昇することが判明した。また、基材4,5に塩素系助剤として塩化カルシウムを添加し、融点降下剤として炭酸カルシウムを添加したときの各添加量に対するセシウムの揮散率を調べた。このときの加熱温度は1350℃である。図6(c)に示すように、塩素系助剤の添加量が同じでも融点降下剤を添加することにより塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけるほどセシウムの揮散率が上昇し、1から離れる場合は、塩基度の値が大きいほうがセシウムの揮散率が高いことが判明した。」 (コ)図6(c)は以下のとおりである。 (サ)上記(オ)の「被処理物の塩基度(CaO(%)/SiO2(%))が1から離れると融点が高くなり、被処理物の融点が高いと、塩素とセシウムの結合は阻害され、結果として溶融スラグに放射性セシウムが残存する傾向が強くなる。」との記載、同じく「融点降下剤を添加することによって、より低い温度で飛処理物(当審注;「被処理物」の誤記と認める。)が溶融して流動性が上昇する。・・・(略)・・・そのため、放射性セシウムの揮散が促進されると推測される。」との記載、及び上記(ケ)の「塩素系助剤の添加量が同じでも融点降下剤を添加することにより塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけるほどセシウムの揮散率が上昇し、1から離れる場合は、塩基度の値が大きいほうがセシウムの揮散率が高いことが判明した。」との記載及び図6(c)を踏まえれば、引用文献2には、「塩素系助剤の添加量(重量%)を同じとし、融点降下剤としての塩基度調整剤の添加量(重量%)を調整して塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけることにより、セシウムの揮散率を上昇させる」ことが記載されているものと認められる。 また、図6(c)より、塩素系助剤(CaCl2)30%添加、塩基度1.02において、セシウム(Cs)揮散率が99.9%であることが看て取れる。 (シ)以上の記載から、引用文献2には、次の発明が記載されているものと認められる。 a 引用方法発明2 「放射性セシウムを含有する被処理物を集積する受入部と、 受入れ部に集積された被処理物を溶融炉に搬送する搬送機構と、 搬送機構で搬送される被処理物に、塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加装置、融点降下剤として塩基度調整剤を添加する融点降下剤添加装置及び還元剤を添加する還元剤添加装置と、 被処理物を溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、 溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、 を備えた被処理物に含まれる放射性セシウムを分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮装置を用いた放射性セシウム分離濃縮方法であって、 被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加工程と、 被処理物に融点降下剤として塩基度調整剤を添加する融点降下剤添加工程と、 被処理物を還元性雰囲気で溶融するために、被処理物に還元剤を添加する還元剤添加工程と、 塩素系助剤及び融点降下剤が添加された被処理物を還元性雰囲気で溶融して溶融スラグから放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、 前記分離工程で揮散分離された放射性セシウムを捕集する捕集工程と、 を含む放射性セシウム分離濃縮方法において、 前記塩素系助剤として、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質が用いられ、前記無機塩化物として、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムまたは塩化第二鉄が用いられ、 前記塩基度調整剤として、カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ほう砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄等から選択される何れか単一または複数の物質が用いられ、 塩素系助剤の添加量(重量%)を同じとし、融点降下剤としての塩基度調整剤の添加量(重量%)を調整して塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけることにより、セシウムの揮散率を上昇させ、塩素系助剤(CaCl2)30%添加、塩基度1.02において、セシウム(Cs)揮散率が99.9%である、 放射性セシウム分離濃縮方法。」 b 引用装置発明2 「放射性セシウムを含有する被処理物を集積する受入部と、 受入れ部に集積された被処理物を溶融炉7に搬送する搬送機構と、 搬送機構で搬送される被処理物に、塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加装置、融点降下剤として塩基度調整剤を添加する融点降下剤添加装置及び還元剤を添加する還元剤添加装置と、 被処理物を溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、 溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、 を備えた被処理物に含まれる放射性セシウムを分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮装置であって、 前記塩素系助剤は、無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質であって、前記無機塩化物は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムまたは塩化第二鉄であり、 前記塩基度調整剤は、カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ほう砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄等から選択される何れか単一または複数の物質であり、 塩素系助剤の添加量(重量%)を同じとし、融点降下剤としての塩基度調整剤の添加量(重量%)を調整して塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけることにより、セシウムの揮散率を上昇させ、塩素系助剤(CaCl2)30%添加、塩基度1.02において、セシウム(Cs)揮散率が99.9%である、 放射性セシウム放射性セシウム分離濃縮装置。」 イ 引用文献3の記載 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「【0002】 過去、都市ごみなどの有機系の廃棄物の処理については、主に焼却炉にて焼却され、その灰は埋め立て処分を行うことが主流であったが、近年、ダイオキシンなどの有害物質の大気放散や埋め立て地の逼迫に伴う環境への影響から、こうした有害物質の無害化や灰の減容化の推進のために有効な手段として、ガス化溶融技術が注目され、現在ではごみ処理施設が採用する標準的なプロセスとして急速に普及しつつある。 【0003】及び【0004】 ・・・(略)・・・ 【0005】 周知の通り、このスラグの流動性を左右する大きな運転ファクターとして、スラグ塩基度(CaO/SiO2)が挙げられる。スラグの溶流点はスラグ塩基度に依存する。スラグ塩基度0.6~0.8で溶流点が最も低く(1200℃~1250℃)、スラグ塩基度が0.6以下では塩基度が低くなるにつれて溶流点が上昇しスラグ塩基度0.2で溶流点は1350℃を超える。また、スラグ塩基度が0.8以上では塩基度が高くなるにつれて溶流点が上昇し、スラグ塩基度1.0で溶流点が1250℃~1300℃、塩基度が1.2を超えると溶流点が1300℃を超える。スラグ塩基度に関わらず、溶融炉の炉内温度をスラグの溶流温度よりも50℃以上高くすると、スラグが十分に溶融しその流動性を比較的容易に向上させることができる。しかしながら、スラグの排出を常時円滑に行うためには、例えば炉内温度が1350℃以上の高温運転を継続して実施しなければならないことから、燃料費などのエネルギーコストの増大を招くとともに、炉の耐火物の損傷が著しくなるなどの不利を抱えることになり、好ましない(当審注:「好ましくない」の誤記と認める。) 【0006】 一方、スラグ塩基度を一定の範囲(スラグ塩基度0.6~0.8)に維持する運転を行えば、上記スラグの温度を高める操業上の不利を伴うことなくその流動性を確保することができ、安定かつ効率的な運転を続けることが可能となる。このスラグ塩基度はガス化溶融炉の操業条件を一定にして運転を継続させた場合においても処理対象となる廃棄物の種類や性状の変化などの影響により予め設定された適正範囲を逸脱することがあるため、排出されるスラグを定期的にサンプリングして、その塩基度を分析し、その値が設定範囲外であるときは、従来より塩基度調整剤を溶融炉に供給して同塩基度の設定範囲に調整することが一般に行われている。」 (2)引用文献2を主引例として ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用方法発明2を対比する。 a 本件発明1の「被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法」との発明特定事項について (a)引用方法発明2は「搬送機構で搬送される被処理物に、塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加装置」と「融点降下剤として塩基度調整剤を添加する融点降下剤添加装置」とを備え、さらに「塩基度調整剤は、カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ほう砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄等から選択される何れか単一または複数の物質であ」り、非塩素系塩基度調整剤といえるから、当該構成は、本件発明1の「被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する塩基度調整助剤添加装置」と、「被処理物に塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する助剤添加装置」を備える点で一致する。 (b)引用方法発明2の「被処理物を溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉」は、本件発明1の「被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉」に相当する。 (c)引用方法発明2の「溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機」は、本件発明1の「溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機」に相当する。 (d)引用方法発明2の「放射性セシウム分離濃縮装置を用いた放射性セシウム分離濃縮方法」は、本件発明1の「放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法」に相当する。 (e)したがって、本件発明1と引用方法発明2とは、「被処理物に塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤とを添加する助剤添加装置と、助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法」である点で一致する。 b 本件発明1の「被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定工程」との発明特定事項について (a)引用方法発明2は、「塩素系助剤の添加量(重量%)を同じとし、融点降下剤としての塩基度調整剤の添加量(重量%)を調整して塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけることにより、セシウムの揮散率を上昇させ、塩素系助剤(CaCl2)30%添加、塩基度1.02において、セシウム(Cs)揮散率が99.9%である」ものであるから、本件発明1の「被処理物の塩基度が所定値になるように塩基度調整助剤の添加量を決定し、予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する塩基度調整助剤添加量決定工程」と、「被処理物の塩基度が所定値になるように助剤(すなわち塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤)の添加量を決定し、放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように助剤である塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する助剤添加量決定工程」を有する点で一致する。 他方、引用方法発明2では、「予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系助剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて」配合割合を決定しているのか明らかではない。 (b)したがって、本件発明1と引用方法発明2とは、「被処理物の塩基度が所定値になるように塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤添加量の添加量を決定し、放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように助剤である塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する助剤添加量決定工程」を備える点で一致する。 c 本件発明1の「前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する塩基度調整工程」との発明特定事項について 引用方法発明2は、上記bのとおり、「被処理物の塩基度が所定値になるように塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤添加量の添加量を決定し、放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように助剤である塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する助剤添加量決定工程」を備えるのであるから、引用方法発明2の「被処理物に塩素系助剤を添加する塩素系助剤添加工程」及び「被処理物に融点降下剤として塩基度調整剤を添加する融点降下剤添加工程」においては、上記決定工程で決定した値のとおり助剤が添加されることは明らかである。 したがって、引用方法発明2は、本件発明1の上記cの発明特定事項と、「前記助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する調整工程」を備える点で一致する。 d 本件発明1の「塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記溶融炉で加熱し溶融する加熱処理工程」との発明特定事項について 引用方法発明2の「塩素系助剤及び融点降下剤が添加された被処理物を還元性雰囲気で溶融して溶融スラグから放射性セシウムを揮散分離する分離工程」は、本件発明1の上記dの発明特定事項と、「塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記溶融炉で加熱し溶融する加熱処理工程」を備える点で一致する。 e 本件発明1の「前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程」との発明特定事項について 引用方法発明2の「分離工程で揮散分離された放射性セシウムを捕集する捕集工程」は、本件発明1の「前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程」に相当する。 f 一致点・相違点 以上のとおりであるので、本件発明1と引用方法発明2とは、以下の一致点・相違点を有する。 [一致点] 「被処理物に塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤を添加する助剤添加装置と、助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように助剤の添加量を決定し、放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように助剤である塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する助剤添加量決定工程と、 前記助剤添加量決定工程で決定された値に従って、被処理物に塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する調整工程と、 塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤が添加された被処理物を前記溶融炉で加熱し溶融する加熱処理工程と、 前記集塵機で捕集された放射性セシウムを含む飛灰を回収する回収処理工程と、 を備えている放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法。」 [相違点1] 添加する助剤について、本件発明1では、「塩基度調整工程」として、「塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤」を添加するのに対し、引用方法発明2では、塩基度調整と特定せずに「塩素系助剤」を添加すると共に「融点降下剤として塩基度調整剤」を添加する点。 [相違点2] 助剤添加量決定工程において、本件発明1では、「予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて」決定するのに対し、引用方法発明2では、そのような特定がなされていない点。 (イ)判断 a 相違点1について 引用方法発明2の「塩素系助剤」としては「塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムまたは塩化第二鉄」が、「塩基度調整剤として、カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ほう砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄等から選択される何れか単一または複数の物質が用いられ」ることから、引用方法発明2の「塩素系助剤」、「塩基度調整剤」は、それぞれ本件発明1の「塩素系塩基度調整助剤」、「非塩素系塩基度調整助剤」と同材料で構成されており、同材料で構成されている以上、同じ作用を有することは明らかであるから、上記相違点1は、それぞれの材料を「助剤」と称するか、あるいは「塩基度調整剤」と称するか程度の違いであって、実質的な相違点であるとはいえない。仮に相違点であるとしても、引用方法発明2の「塩素系助剤」が塩基度に影響を与えることは技術常識であり、また、引用方法発明2において塩基度を調整することが想定されていることから、「塩素系助剤」の使用による塩基度への影響を考慮することは当然であって、「塩素系助剤」を実質的に「塩基度調整助剤」と同様な扱いとすることは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。 b 相違点2について 引用方法発明2において「塩素系助剤の添加量(重量%)を同じとし、融点降下剤としての塩基度調整剤の添加量(重量%)を調整して塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけることにより、セシウムの揮散率を上昇させ、塩素系助剤(CaCl2)30%添加、塩基度1.02において、セシウム(Cs)揮散率が99.9%」としていること、及び引用文献2の段落0075に「塩素系助剤、融点降下剤、または還元剤の添加量は、被処理物の性状に応じて適宜調整すればよい。」とも記載されていることから、セシウムの揮散率を上昇させるに際し、塩素系助剤、塩基度調整剤、塩基度とセシウムの揮散率の関係に着目していることは明らかであり、また、添加割合を調整するに際して材料の添加量と指標の相関関係を予め求めておくことは常套手段にすぎず、引用方法発明2において、「被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系助剤の添加割合とセシウム揮散率との関係」を予め求めておくことは、当業者の通常の創作能力の範囲内のことである。 したがって、引用方法発明2において、被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系助剤の添加割合とセシウム揮散率との関係を予め求めておくようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 c 本件発明1の作用効果について そして、本件発明1の作用効果は、上記相違点1、2を総合的に勘案しても引用方法発明2から、当業者が容易に予測し得る程度のものである。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、引用方法発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 本件発明2について (ア)対比 本件発明2と引用方法発明2を対比すると、上記アの一致点・相違点に加え、以下の相違点で相違する。 [相違点3] 助剤添加量決定工程における、塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合の決定が、本件発明2では「塩基度調整助剤添加後の被処理物の塩基度、光学的塩基度、塩素濃度、被処理物の加熱処理工程後の塩基度、光学的塩基度の何れかから選択される単一または複数の指標が所定の範囲に収まるように」なされるのに対し、引用方法発明2では、そのような特定がなされていない点。 (イ)判断 a 相違点3について 引用方法発明2は、「塩素系助剤の添加量(重量%)を同じとし、融点降下剤としての塩基度調整剤の添加量(重量%)を調整して塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけることにより、セシウムの揮散率を上昇させる」ものであることを踏まえれば、当該塩基度を所定の範囲に収まるようになすことは、当業者が適宜なし得ることである。 そして、引用文献2の段落0063には、「上述した実施の形態では、塩基度として簡易的な(CaO(%)/SiO2(%))を指標として用いる場合を説明したが、塩基度はこれ以外にも様々な定義があり」と記載されていることを踏まえると、塩基度としてどのような定義のものを用いるかは、当業者が適宜選択し得ることである。また、塩基度、光学的塩基度、塩素濃度のいずれを採用するかによって、特段の作用効果を奏するものともいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明2は、引用方法発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 本件発明3について (ア)対比 本件発明3と引用方法発明2を対比する。上記ア及びイの一致点・相違点に加え、以下の相違点で相違する。 [相違点4] 本件発明3の塩基度調整助剤添加量決定工程では、「被処理物の組成を自動測定し塩基度調整助剤の添加量が自動決定され」、塩基度調整工程では、「前記塩基度調整助剤添加量決定工程で決定された添加量に従って被処理物に塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤が自動添加される」のに対し、引用方法発明2では、そのような特定がなされていない点。 (イ)判断 上記(1)イで摘記したように、引用文献3には、スラグの温度を高めることなくその流動性を確保するために、スラグを定期的にサンプリングして、その塩基度を分析し、その値が設定範囲外であるときは、塩基度調整剤を溶融炉に供給して同塩基度の設定範囲に調整する技術は、従来より一般に行われているものであることが記載されている。 そして、当該引用文献3に記載された技術を踏まえれば、引用方法発明2において、被処理物の組成を自動分析して塩基度調整剤の供給量を自動決定する装置を設けること、及び被処理物に自動添加することは、当業者であれば適宜なし得ることである。 (ウ)小括 したがって、本件発明3は、引用方法発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ 本件発明4について (ア)対比 本件発明4と引用方法発明2を対比する。 引用方法発明2の「塩素系助剤」としては、「無機塩化物、塩酸、塩素系プラスチック、焼却飛灰の何れかから選択される単一または複数の物質が用いられ、前記無機塩化物として、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムまたは塩化第二鉄が用いられ」るのであるから、引用方法発明2の「塩素系助剤」は、「無機塩化物または無機塩化物が含まれる物質の何れかから選択される単一または複数の物質」である。 したがって、本件発明4と引用方法発明2とは、上記ア~ウの一致点・相違点に加え、以下の点でも一致する。 [一致点] 「前記調整工程で添加される塩素系助剤は、無機塩化物または無機塩化物が含まれる物質の何れかから選択される単一または複数の物質である」である点。 (イ)判断 上記ア~ウの相違点については、上記ア~ウで検討したとおりである。 したがって、本件発明4は、引用方法発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 オ 本件発明5について (ア)対比 本件発明5と引用方法発明2を対比すると、上記エで対比したことを踏まえると、上記ア~エの一致点・相違点に加え、以下の点でも一致する。 [一致点] 「調整工程で添加される塩素系塩助剤は、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化鉄の何れかから選択される単一または複数の物質である」である点。 (イ)判断 上記ア~エの相違点については、上記ア~エで検討したとおりである。 したがって、本件発明5は、引用方法発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 カ 本件発明6について (ア)対比 本件発明6と引用方法発明2を対比する。 引用方法発明2の「塩基度調整剤」としては、「カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ほう砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄等から選択される何れか単一または複数の物質が用いられ」るのであるから、本件発明6と引用方法発明2とは、上記ア~オの一致点・相違点に加え、以下の点でも一致する。 [一致点] 「塩基度調整工程で添加される非塩素系塩基度調整助剤は、非塩素系アルカリ金属化合物、非塩素系アルカリ土類金属化合物、非塩素系マグネシウム化合物、非塩素系ホウ素化合物、非塩素系鉄化合物、非塩素系鉛化合物の何れかから選択される単一または複数の物質である」である点。 (イ)判断 上記ア~オの相違点については、上記ア~オで検討したとおりである。また、「非塩素系鉛化合物」を採用することも当業者であれば適宜なし得ることである。 したがって、本件発明6は、引用方法発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 キ 本件発明7について (ア)対比 本件発明7と引用方法発明2を対比すると、上記ア~カの一致点・相違点に加え、以下の点でも一致する。 [一致点] 「助剤添加量決定工程では、還元剤が添加された被処理物に対して、塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合が決定される」点。 (イ)判断 上記ア~カの相違点については、上記ア~カで検討したとおりである。 したがって、本件発明6は、引用方法発明2及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ク 本件発明8について (ア)対比 本件発明8と引用装置発明2を対比する。 本件発明8は、本件発明1の「放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法」に含まれる工程を装置として特定したものであるから、上記ア(ア)で検討した対比が概ね当てはまる。 そうすると、本件発明8と引用装置発明2とは、以下の一致点・相違点を有する。 [一致点] 「被処理物に塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる助剤を添加する助剤添加装置と、助剤が添加された被処理物を加熱し溶融して放射性セシウムを揮散分離する溶融炉と、前記溶融炉で揮散分離された放射性セシウムを含む飛灰を捕集する集塵機と、を備えて構成される放射性セシウム分離濃縮装置であって、 被処理物の塩基度が所定値になるように助剤の添加量を決定し、放射性セシウムの揮散率が99%以上となる範囲に入るように助剤である塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定する助剤添加量決定装置を備え、 前記助剤添加装置は前記助剤添加量決定装置で決定された塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤の添加量及び配合割合に従って、被処理物に塩素系助剤と非塩素系塩基度調整助剤を添加する、 放射性セシウム分離濃縮装置。」 [相違点5] 添加する助剤について、本件発明8では、「塩基度調整助剤添加装置」により、「塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤からなる塩基度調整助剤」を添加するのに対し、引用装置発明2では、「塩素系助剤添加装置」により「塩素系助剤」を添加すると共に、「融点降下剤添加装置」により「融点降下剤として塩基度調整剤」を添加する点。 [相違点6] 本件発明8では、塩基度調整助剤の添加量を決定し、塩基度調整助剤である塩素系塩基度調整助剤と非塩素系塩基度調整助剤の配合割合を決定するのが「塩基度調整助剤添加量決定装置」であって、「予め求める被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系塩基度調整剤の添加割合とセシウム揮散率との関係に基づいて」決定するものであるのに対し、引用装置発明2では、そのような特定がなされていない点。 (イ)判断 a 相違点5について 上記ア(イ)aで検討したことと同様に、引用装置発明2の「塩素系助剤」としては「塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウムまたは塩化第二鉄」が、「塩基度調整剤として、カルシウム化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ素化合物、鉄化合物の何れかから選択される何れか単一または複数の物質、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、ほう砂、ホウ酸、酸化第一鉄、四酸化三鉄、酸化第二鉄等から選択される何れか単一または複数の物質が用いられ」ることから、引用装置発明2の「塩素系助剤」、「塩基度調整剤」は、それぞれ本件発明8の「塩素系塩基度調整助剤」、「非塩素系塩基度調整助剤」と同材料で構成されており、同材料で構成されている以上、同じ作用を有することは明らかであるから、上記相違点5の助剤については、それぞれの材料を「助剤」と称するか、あるいは「塩基度調整剤」と称するか程度の違いであって、実質的な相違点であるとはいえない。仮に、その点が相違点であるとしても、引用装置発明2の「塩素系助剤」が塩基度に影響を与えることは技術常識であり、また、引用装置発明2において塩基度を調整することが想定されていることから、「塩素系助剤」の使用による塩基度への影響を考慮することは当然であって、「塩素系助剤」を実質的に「塩基度調整助剤」と同様な扱いとすることは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。 また、「助剤添加装置」について、引用装置発明2のように2つの装置として「塩素系助剤添加装置」、「融点降下剤添加装置」とするか、本件発明8のような一つの「塩基度調整助剤添加装置」とするかは当業者が適宜選択しうる事項にすぎない。 b 相違点6ついて 上記ア(イ)bで検討したことと同様に、引用装置発明2において「塩素系助剤の添加量(重量%)を同じとし、融点降下剤としての塩基度調整剤の添加量(重量%)を調整して塩基度(CaO/SiO2)を1に近づけることにより、セシウムの揮散率を上昇させ、塩素系助剤(CaCl2)30%添加、塩基度1.02において、セシウム(Cs)揮散率が99.9%」としていること、及び引用文献2の段落0075に「塩素系助剤、融点降下剤、または還元剤の添加量は、被処理物の性状に応じて適宜調整すればよい。」とも記載されていることから、塩素系助剤、塩基度調整剤、塩基度とセシウムの揮散率の関係に着目していることは明らかであり、また、添加割合を調整するに際して材料の添加量と指標の相関関係を予め求めておくことは常套手段にすぎず、引用装置発明2において、「被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系助剤の添加割合とセシウム揮散率との関係」を予め求めておくことは、当業者の通常の創作能力の範囲内のことである。 したがって、引用装置発明2において、被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系助剤の添加割合とセシウム揮散率との関係を予め求めておくようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 そして、引用文献3に記載されているように、スラグの温度を高めることなくその流動性を確保するために、スラグを定期的にサンプリングして、その塩基度を分析し、その値が設定範囲外であるときは、塩基度調整剤を溶融炉に供給して同塩基度の設定範囲に調整する技術は、従来より一般に行われているものであることを踏まえれば、引用装置発明2において、被処理物の組成を自動分析して助剤の供給量を決定する装置を設けること、及び、上記助剤添加装置により助剤を添加することは、当業者であれば適宜なし得ることである。 c 本件発明8の作用効果について 本件発明8の作用効果は、上記相違点5、6を総合的に勘案しても、引用装置発明2及び引用文献3に記載された事項から、当業者が予測し得る程度のものである。 (ウ)小括 したがって、本件発明8は、引用装置発明2及び引用文献3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ケ 特許権者の主張について (ア)特許権者は、令和元年11月26日付け意見書において、概ね以下のように主張している。 a 引用方法発明2には、塩化カルシウムの添加量を一定に維持して融点降下剤を添加し、塩基度を1に近づけるとセシウムの揮散率が上昇する。その状態で塩化カルシウムの添加量を増加すると、さらにセシウムの揮散率が上昇する、或いは、塩化カルシウムの添加量を増加してセシウムの揮散率を最大にし、その状態で融点降下剤を添加して塩基度を1に近づけるとセシウムの揮散率がさらに上昇する、という知見が示されているにすぎない。 引用文献2の段落[0075]の「塩素系助剤、融点降下剤、または還元剤の添加量は、被処理物の性状に応じて適宜調整すればよい。」との記載は、上記知見に基づき、放射性セシウムの揮散率を高めるために塩素系助剤の添加量を増加調整し、融点が低くなる1に近づけるように塩基度を調整し、還元性雰囲気となるように調整する、との技術的意義を明示しているに過ぎない。 塩素系助剤と融点降下剤の比率を調整するような解釈を可能にする何らの明示の記載も示唆する記載も存在しない中で、「引用方法発明2において、被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系助剤の添加割合とセシウム揮散率との関係を予め求めておくようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。」との判断は、極めて事後分析的かつ非論理的思考による曲解した判断と言わざるを得ない。 b 本件発明1は、「【0013】・・・放射性セシウムの揮散を促進する塩素系助剤の使用量を抑制しながらも、放射性セシウムの揮散率をさらに上昇させることができる放射性セシウム分離濃縮装置の運転方法を提供する」との目的のもとでなされた発明であり、「 【0016】・・・塩基度調整工程で被処理物に添加する塩基度調整助剤として塩素系の塩基度調整助剤を用いれば、好ましい塩基度への調整のみならず、放射性セシウムの揮散促進剤としても機能するのではないかと想到し、鋭意実験を行なったところ、塩基度調整助剤として塩素系塩基度調整助剤及び非塩素系塩基度調整助剤を所定の添加量及び配合割合で被処理物に添加すれば、別途の塩化ナトリウム等の塩素系助剤を添加しなくても、分離工程で高効率に放射性セシウムを揮散させることができ、且つ排ガス中の塩化水素濃度を低減でき、捕集工程で効率的に放射性セシウムを捕集できるという新知見を得たのである。」との新知見に基づいてなされた発明である。 その結果、「【0017】・・・塩素系助剤の添加量を減らしても放射性セシウムの揮散率を最大に上昇させることができ、添加する塩素量を減らすことにより塩素系の腐食ガスの発生量を低減できるようになり、以て、中和剤を含めた薬剤コストを大きく低減することができ、また飛灰の発生量も減少し、大型の排ガス処理設備を構築する必要もなくなるのである。」との特有の作用効果、つまり放射性セシウムの揮散率を上げるためには塩素系助剤の添加量を増やさなければならない(【0011】)、という従来の当業者常識とは全く異なる異質な作用効果が奏されるようになる。 (イ)上記主張について検討すると、引用方法発明2は、セシウムの揮散率を可能な限り大きくすることを前提としており、また、上記アでも説示したように、塩素系助剤、塩基度調整剤、塩基度とセシウムの揮散率の関係に着目していることは明らかである。そして、一般的に、材料の添加割合を調整するに際して材料の添加量と指標の相関関係を予め求めておくことは常套手段にすぎないから、引用方法発明2において、被処理物の塩基度が前記所定値のもとでの塩素系助剤の添加割合とセシウム揮散率との関係を予め求めておくようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。 また、本件発明1の「塩素系助剤の添加量を減らしても放射性セシウムの揮散率を最大に上昇させることができ」との作用効果については、上記ア(イ)aでも説示したように、引用方法発明2の「塩素系助剤」は、本件発明1の「塩素系塩基度調整助剤」と同材料で構成されており、助剤の名称を除けば、両材料の違いが認められず、また、引用方法発明2において、本件発明1と同様に「放射性セシウムの揮散率が99%以上となる」ことが実現されていることから、上記作用効果は名称の相違に基づく程度のものであるとしか認められず、格別なものとはいえない。 よって、特許権者の主張は採用できない。 コ まとめ したがって、本件発明1~8は、甲第2号証、甲第3号証に記載されたものから、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-701043

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