特許異議申立
2024-700669
蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス
- 審判番号
- 2024-700669
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-087150
- 登録番号
- 7416313
- 請求日
- 2024年07月17日
- 審決日
- 2025年04月16日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】artience株式会社
- 【権利者代理人】家入 健
- 【権利者代理人】秦 恵子
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 山本 章裕
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1651.121-YB (H01M) / P1651.536-YB (H01M) / P1651.537-YB (H01M) / P1651.841-YB (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7416313号発明「蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7416313号の請求項1-9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許7416313号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る発明についての出願は、令和5年5月26日の出願であって、令和6年1月9日にその特許権が設定登録され、令和6年1月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立での経緯は、次のとおりである。
令和6年 7月17日 :特許異議申立人松山徳子による請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 8月22日付け:取消理由通知
令和6年10月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 1月16日付け:訂正拒絶理由通知
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年10月28日の訂正請求の趣旨は、特許第7416313号の明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
願書に添付した明細書(以下、「明細書」という。)の【0084】に記載された【表1-1】
「【表1-1】
[図:0001422445000001.jpg]
」を、
「【表1-1】
[図:0001422445000002.jpg]
」に訂正する。
詳細には、【表1-1】中の1行目・右から5番目の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目の(a2-4)~(a2-8)、(a2-11)、(a2-12)、(a2-14)の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000003.jpg]
(2)訂正事項2
明細書の【0089】に記載された【表2】
「【表2】
[図:0001422445000004.jpg]
」
を、
「【表2】
[図:0001422445000005.jpg]
」に訂正するものである。
詳細には、【表2】中の1行目・最右列に記載の「ポリイソシアネート(A)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率[質量%]」の項目の(A-2)~(A-5)、(A-7)~(A-17)、(A-19)、(A-22)の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000006.jpg]
(3)訂正事項3
明細書の【0093】に記載された【表3-1】
「【表3-1】
[図:0001422445000007.jpg]
」
を、
「【表3-1】
[図:0001422445000008.jpg]
」に訂正する。
詳細には、【表3-1】の1行目の左から2番目に記載の「多塩基酸」、同3番目に記載の「多価アルコール」の各列の原料の含有率(質量%)の数値を、整数から小数第1位を含む値に訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の【0093】に記載された【表3-1】を、上記「(3)訂正事項3」で記載した【表3-1】に訂正する。
詳細には、【表3-1】の1行目・右から5番目に記載の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目における(b1-4)~(b1-6)の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000009.jpg]
(5)訂正事項5
明細書の【0096】に記載された【表4】
「【表4】
[図:0001422445000010.jpg]
」を、
「【表4】
[図:0001422445000011.jpg]
」に訂正する
詳細には、【表4】の2行目の左から5番目に記載の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目の(B-1)~(B-6)、(B-8)~(B-13)の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000012.jpg]
(6)訂正事項6
明細書の【0096】に記載された【表4】を、上記「(5)訂正事項5」で記載した【表4】に訂正する。
詳細には、【表4】中の1行目 最右列に記載の「ポリオール(B)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目における(B-1)~(B-6)、(B-8)~(B-13)の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000013.jpg]
(7)訂正事項7
明細書の【0106】に記載された【表5】
「【表5】
[図:0001422445000014.jpg]
」を、
「【表5】
[図:0001422445000015.jpg]
」に訂正する。
詳細には、【表5】中の下から8、10行目に記載の実施例29、31を削除する。
(8)訂正事項8
明細書の【0106】に記載された【表5】を、上記「(7)訂正事項7」で記載した【表5】に訂正する。
詳細には、【表5】中の項目「配合比」中の「ポリイソシアネート(A)」の項目に含まれる「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目の実施例2~28、30、32~34,36~38の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000016.jpg]
[図:0001422445000017.jpg]
(9)訂正事項9
明細書の【0106】に記載された【表5】を、上記「(7)訂正事項7」で記載した【表5】に訂正する。
詳細には、【表5】中の項目「配合比」中の「ポリオール(B)」の項目に含まれる「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目の実施例1~24、26~28、32~36の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000018.jpg]
[図:0001422445000019.jpg]
(10)訂正事項10
明細書の【0106】に記載された【表5】を、上記「(7)訂正事項7」で記載した【表5】に訂正する。
詳細には、【表5】中の1行目の左から3番目に記載の項目の「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」における実施例1~28、32~38の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000020.jpg]
[図:0001422445000021.jpg]
(11)訂正事項11
明細書の【0107】に記載された【表6】
「【表6】
[図:0001422445000022.jpg]
」を、
「【表6】
[図:0001422445000023.jpg]
」に訂正する。
詳細には、【表6】中の項目「配合比」中の「ポリイソシアネート(A)」に含まれる「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目の比較例2~比較例4、比較例7の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000024.jpg]
[図:0001422445000025.jpg]
(12)訂正事項12
明細書の【0107】に記載された【表6】を、上記「(11)訂正事項11」で記載した【表6】に訂正する。
詳細には、【表6】中の項目「配合比」中の「ポリオール(B)」の項目に含まれる「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の項目の比較例2~4の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000026.jpg]
(13)訂正事項13
明細書の【0107】に記載された【表6】を、上記「(11)訂正事項11」で記載した【表6】に訂正する。
詳細には、【表6】中の1行目の左から3番目に記載の項目の「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」における比較例2~比較例4、比較例7の各値を、下記のように訂正する。
[図:0001422445000027.jpg]
(14)明細書と関係する請求項について
訂正事項1~13は、請求項1~9を訂正するものである。
そして、本件訂正前の請求項2~9は、訂正の対象となる請求項1を引用しているものであるから、請求項1~9は一群の請求項を構成する。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~9〕に対して請求されたものである。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の理由
訂正の理由について、訂正請求書で以下のように説明している。
[i]【表1-1】の「多価アルコール」の原料成分の種類の項目における「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」の組成比(質量%)の計算
【表1-1】は、ポリイソシアネート(A)を得るための成分であるポリエステルポリオール(a2)を得るための配合成分の組成比、および得られたポリエステルポリオール(a2)の特性が示されている。ポリエステルポリオール(a2)は、同表に記載の多塩酸基と多価アルコールを反応することにより得られる。具体例として、ポリエステルポリオール(a2-4)を例として説明する。
ポリエステルポリオール(a2-4)は、IPA、TPA、AdA、EG、NPG、1,6-HD、DEGを【表1-2】のモル比で用いて、本件明細書の段落【0081】の合成法により得た化合物である(明細書の段落【0082】)。そして、この組成比(モル%)に分子量を乗じて質量換算することにより、【表1-1】に記載の原料の組成比(質量%)が得られる。
【表1-1】中の項目である「多価アルコール」の項目中に含まれる「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」は、ポリエステルポリオール(a2-4)の例では、以下の構造式で表されるDEG(ジエチレングリコール):
[図:0001422445000028.jpg]
である。ポリエステルポリオール(a2-4)の例におけるDEGの含有率(質量%)は、【表1-1】、【表1-2】の記載および分子量から、以下の式により算出される。
[DEG(モル%)×分子量]/[Σ{仕込みモノマー(モル%)×その仕込みモノマーの分子量}]×100
=25×106/(30×166+30×166+40×146+35×62+35×104+5×118+25×106)×100=10.6639・・・≒10.7質量%
この値は【表1-1】の(a2-4)のDEGの含有率と一致する。
[ii]【表1-1】中の項目に記載の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の計算
本件明細書の【表1-1】中の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、本請求項1の一般式(1)の部分構造:
[図:0001422445000029.jpg]
一般式(1)
[一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
である。前記部分構造は、DEG:
[図:0001422445000030.jpg]
の場合には、両末端のOH基およびH原子を除いた構造(H2Oを除いた構造に相当する)である。
従って、「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、DEGの分子量(106)から水の分子量(18)を減じた割合で求められる。即ち、
10.6639・・・質量%×(106-18)/106=8.8531・・・≒8.9質量%
となる。
なお、明細書中の【表1-1】では、小数第2位の四捨五入した値を記載しているが、「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の計算にあたっては、四捨五入していない値を用いている。
[iii]訂正前の【表1-1】中の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の計算
訂正前の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、両末端のOH基およびH原子を除いた構造とすべきところを、錯誤のより、OH基のみを減じた計算で算出していた。即ち、ポリエステルポリオール(a2-4)の「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」を、
10.6639・・・質量%×(106-17)/106=8.9537・・・≒9.0質量%
として求めていた。
(訂正請求書23-25頁)
本件明細書の【表1-1】に接した当業者は、同表に示される「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」を再計算すると、小数点第1位が若干小さくなることに気付くものということができる。このため、OH基およびH原子の分子量を減じるところを、H原子を減じることを忘れたと当業者であれば予想がつく。
(訂正請求項30頁)
イ 当審の判断
まず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)には、訂正事項1について記載されていない。
そして、明細書には、【表1-1】中の項目に記載の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の計算方法が示されておらず何ら説明もないことから、明細書の記載から、本来、誤りがないことが推認される明細書の記載から、当該記載に、DEG等の両末端のOH基およびH原子を除いた計算とすべきところを、OH基のみを減じた計算で算出していた誤りが存在することに気付くことは、記載に誤りがないことを含め、多数ある誤りの可能性の中から特定の誤りを見出すものである。してみれば、当業者が技術常識を勘案したとしても、そのような多数の可能性の中から特定の誤りを見出すことは、非常に困難であって、訂正事項1が明細書等の記載から自明な事項であるとは認められない。
そうすると、訂正事項1は明細書等に記載されておらず、かつ自明な事項でもない。
よって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の理由
訂正の理由について、訂正請求書で以下のように説明している。
【表2】のポリイソシアネート(A)は、同表に記載のポリオール成分と、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)成分を反応することにより得られる。そして、得られたポリイソシアネート(A)中の「一般式(1)で示される部分構造の含有率[質量%]」(同表の最右欄)は、同表の「ポリオール成分」および「ポリイソシアネート成分」の原料を成分nとすると、以下の式により求められる。
[Σ{(一般式(1)で示される部分構造を有する成分nの含有率(質量%)/100)×成分nの配合量}]/(全成分の配合量)×100
ここで、成分nは、ポリイソシアネート(A)の合成に用いる原料であり、【表2】の(A-1)の例では、ポリエステルポリオール(a2-1)、1,4-BD、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(al-1)であり、分子は前記各成分の含有率に各成分の配合量を乗じたものの総和となる。
具体例として、ポリイソシアネート(A-2)を例として説明する。
「ポリイソシアネート(A-2)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、【表1-1】より1.8(計算では四捨五入していない1.753…を用いている)より、
[(1.753…%×100)/100+(0%×65)/100+(4.4%×0)/100+(5.9%×0)/100]/(100+2.5+65)×100=l.046…≒1.0(質量%)となる。
しかし、訂正前の「ポリイソシアネート(A-2)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、【表1-1】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の対応する例の数値を用いるべきところを、錯誤により、【表1-1】の多価アルコールの「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」、即ち、多価アルコールの一般式(1)で示される部分構造を有する化合物の含有率を用いて計算していた。このため、ポリイソシアネート(A-2)の「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」が
[(2.1124…%×100)/100+(0%×65)/100+(4.4%×0)/100+(5.9%×0)/100]/(100+2.5+65)×100
=1.2611…≒1.3(質量%)となっていた。
他のポリイソシアネート(A)についても同様に、「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」を用いるべきところを、「多価アルコールの一般式(1)で示される部分構造を有するもの(=化合物)の含有率(質量%)」を用いて計算していた。
(訂正請求書32-34頁)
本件明細書の【表2】に接した当業者は、同表に示されている「ポリイソシアネート(a)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」を再計算すると、数値が同表に示されている値と若干異なることに気付くものということができる。
ここで、再計算の値よりも訂正前の値が全体的に大きいことから、「多価アルコールの一般式(1)で示される部分構造を有する化合物の含有率」を用いて計算したのではないかと当業者であれば推測できる。
(訂正請求書36-37頁)
イ 当審の判断
まず、明細書等には、訂正事項2について記載されていない。
そして、明細書には、【表2】中の項目に記載の「ポリイソシアネート(A)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率[質量%]」の計算方法が示されておらず何ら説明もないことから、明細書の記載から、本来、誤りがないことが推認される明細書の記載から、当該記載に、【表1-1】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の対応する例の数値を用いるべきところを、【表1-1】の多価アルコールの「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」を用いて計算していた誤りが存在することに気付くことは、記載に誤りがないことを含め、多数ある誤りの可能性の中から特定の誤りを見出すものである。してみれば、当業者が技術常識を勘案したとしても、そのような多数の可能性の中から特定の誤りを見出すことは、非常に困難であって、訂正事項2が明細書等の記載から自明な事項であるとは認められない。
そうすると、訂正事項2は明細書等に記載されておらず、かつ自明な事項でもない。
よって、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
(3)訂正事項3、4について
訂正事項3、4は、明細書の【0093】に記載された【表3-1】を、訂正明細書の【表3-1】に訂正するものである。
ア 訂正事項3
(ア)訂正の理由
訂正の理由について、訂正請求書で以下のように説明している。
本件明細書の【表3-1】に記載の「多塩基酸」および「多価アルコール」の含有率(質量%)は「整数」で記載されているが、対応する本件明細書の【表1-1】に記載の「多塩基酸」および「多価アルコール」の含有率(質量%)のように、本来は、「少数第1位までの数値」を記載すべきものであった。
(訂正請求書40頁)
本件明細書の【表3-1】に接した当業者は、同表に示されている「多塩基酸」および「多価アルコール」の各含有率(質量%)が、対応する本件明細書の【表1-1】の「多塩基酸」および「多価アルコール」の各含有率(質量%)が「少数第1位までの値」で記載されているのに対し、【表3-1】では、「多塩基酸」および「多価アルコール」の各含有率(質量%)が整数で記載されていることに気付くものということができる。
(訂正請求書41頁)
(イ)当審の判断
まず、明細書等には、訂正事項3について記載されていない。
そして、明細書の記載から、本来、誤りがないことが推認される明細書の記載から、【表1-1】の「多塩基酸」および「多価アルコール」の各含有率(質量%)が「少数第1位までの値」で記載されているの対して、【表3-1】では「多塩基酸」および「多価アルコール」の各含有率(質量%)が整数で記載されていることに気付いて、更に【表3-1】の方に誤りが存在することを認識することは、記載に誤りがないことを含め、多数ある誤りの可能性の中から特定の誤りを見出すものである。してみれば、当業者が技術常識を勘案したとしても、そのような多数の可能性の中から特定の誤りを見出すことは、非常に困難であって、訂正事項3が明細書等の記載から自明な事項であるとは認められない。
そうすると、訂正事項3は明細書等に記載されておらず、かつ自明な事項でもない。
よって、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
イ 訂正事項4
(ア)当審の判断
まず、明細書等には、訂正事項4について記載されていない。
そして、訂正の理由は、訂正事項1と同様に、DEG両末端のOH基およびH原子を除いた構造とすべきところを、OH基のみを減じた計算で算出していたものであるから、訂正事項4が明細書等の記載から自明な事項であるとは認められない。
よって、訂正事項4は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
ウ 小括
以上のように、訂正事項3、4は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、明細書の【0093】に記載された【表3-1】を訂正明細書の【表3-1】にする訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
(4)訂正事項5、6について
訂正事項5、6は、明細書の【0096】に記載された【表4】を、訂正明細書の【表4】に訂正するものである。
ア 訂正事項5
(ア)訂正の理由
訂正の理由について、訂正請求書で以下のように説明している。
本件明細書の【表4】に記載の「ポリエステルポリオール(b1)」中の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の各欄は、その名称の通り、「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」であり、本件明細書の【表3-1】の当該欄を転記すべきものであった。
しかしながら、錯誤により、本件明細書の【表3-1】中の項目における「多価アルコール」の項目に含まれる「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」の配合量(但し、少数第二位までを転記したもの。)を記載してしまった。
(訂正請求書51-52頁)
本件明細書の【表4】に接した当業者は、同表に示されている「ポリエステルポリオール(b1)」の項目に含まれる「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、本件明細書の【表3-1】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の各値を転記すべきものであるが、本件明細書の【表3-1】の「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」を転記していることに気付くものということができる。
上述した理由から、当業者であれば、本件明細書の【表4】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、本件明細書の【表3-1】より誤って「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」を転記してしまったことは明らかであるから、訂正前の【表4】の「ポリエステルポリオール中の式(1)で表される部分構造の含有率(質量%)」の数値には誤記があり、訂正後の「ポリエステルポリオール中の式(1)で表される部分構造の含有率(質量%)」の値が正しいことを理解するのが当然であるということができる。
(訂正請求書52-53頁)
(イ)当審の判断
まず、明細書等には、訂正事項5について記載されていない。
そして、【表3-1】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の各欄と、【表4】の「ポリエステルポリオール(b1)」中の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の各欄では、数値の相違に加えて有効桁数が相違しているため、対応している項目であると認識するのが困難である。
更に、明細書の記載から、本来、誤りがないことが推認される明細書の記載から、【表4】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、【表3-1】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の各値を転記すべきものを、【表3-1】の「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」を転記していることに気付くことは、記載に誤りがないことを含め、多数ある誤りの可能性の中から特定の誤りを見出すものである。してみれば、当業者が技術常識を勘案したとしても、そのような多数の可能性の中から特定の誤りを見出すことは、非常に困難である。加えて、訂正事項4によると、【表3-1】の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の数値には誤りがあるため、たとえ正しく転記しても訂正事項5は得られない。したがって、訂正事項5が明細書等の記載から自明な事項であるとは認められない。
そうすると、訂正事項5は明細書等に記載されておらず、かつ自明な事項でもない。
よって、訂正事項5は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
イ 訂正事項6
訂正事項6は、訂正事項5に連動して訂正されるものであるから、訂正事項5と同様に、訂正事項6は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
ウ 小括
以上のように、訂正事項5、6は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、明細書の【0096】に記載された【表4】を訂正明細書の【表4】にする訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
(5)訂正事項7-10について
訂正事項7-10は、明細書の【0106】に記載された【表5】を、訂正明細書の【表5】に訂正するものである。
ア 訂正事項8
訂正事項8は、訂正事項2に連動して訂正されるものであるから、訂正事項2と同様に、訂正事項8は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
イ 訂正事項9
訂正事項9は、訂正事項6に連動して訂正されるものであるから、訂正事項6と同様に、訂正事項9は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
ウ 訂正事項10
訂正事項10は、訂正事項8,9に連動して訂正されるものであるから、訂正事項8,9と同様に、訂正事項10は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
エ 小括
以上のように、訂正事項8-10は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、明細書の【0106】に記載された【表5】を訂正明細書の【表5】にする訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
また、訂正事項7は、詳細には、【表5】中の下から8、10行目に記載の実施例29、31を削除するものであるが、上記のように、明細書の【0106】に記載された【表5】を訂正明細書の【表5】にする訂正が認められないので、訂正事項7の訂正は認められない。
(6)訂正事項11-13について
訂正事項11-13は、明細書の【0107】に記載された【表6】を、訂正明細書の【表6】に訂正するものである。
ア 訂正事項11
訂正事項11は、訂正事項2に連動して訂正されるものであるから、訂正事項2と同様に、訂正事項11は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
イ 訂正事項12
訂正事項12は、訂正事項6に連動して訂正されるものであるから、訂正事項6と同様に、訂正事項12は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
ウ 訂正事項13
訂正事項13は、訂正事項11,12に連動して訂正されるものであるから、訂正事項11,12と同様に、訂正事項13は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
エ 小括
以上のように、訂正事項11-13は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではないから、明細書の【0107】に記載された【表6】を訂正明細書の【表6】にする訂正は、明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
(7)まとめ
本件訂正請求による訂正事項1-6、8-13は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを認めない。
したがって、訂正明細書に基づいて、請求項〔1-9〕を訂正することを認めない。
第3 本件発明
本件訂正請求による訂正は上記のとおり認められないから、本件の請求項1ないし9の特許に係る発明は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを含有する蓄電デバイス包装材用接着剤であって、
前記ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含み、
前記ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含み、
下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含む蓄電デバイス包装材用接着剤。
一般式(1)
【化1】
[図:0001422445000031.jpg]
[一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
【請求項2】
前記ポリイソシアネート(A)が、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールと、の反応生成物を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート(A)が、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1)を含むポリイソシアネートと、ポリエステルポリオール(a2)を含むポリオールと、の反応生成物を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項4】
前記ポリエステルポリオール(a2)の構成成分である多価アルコールが、多価アルコール100モル%中、一般式(1)で示される部分構造を有する多価アルコールを5~30モル%含む、請求項2又は3に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項5】
前記ポリオール(B)が、さらに水酸基含有エポキシ樹脂(b2)を、前記ポリオール(B)の質量を基準として5~50質量%の範囲で含む、請求項1~3いずれか1項に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項6】
前記水酸基含有エポキシ樹脂(b2)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である、請求項5に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項7】
少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されている構成を備えた蓄電デバイス包装材であって、
前記外層側接着剤層が、請求項1~3いずれか1項に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物である、蓄電デバイス包装材。
【請求項8】
請求項7に記載の蓄電デバイス包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器。
【請求項9】
請求項8に記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイス。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
請求項1ないし9に係る特許に対して、当審が令和6年8月22日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(実施可能要件)本件請求項1ないし9に係る特許は、明細書(発明の詳細な説明)の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
請求項1に「下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含む蓄電デバイス包装材用接着剤。
一般式(1)
【化1】(略)
[一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]」と記載されている。
一方、発明の詳細な説明の表5には、「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」が記載されているが、発明の詳細な説明には、当該含有率を得るための測定方法、測定条件等が記載されていない。
また、表5の「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」が、原料の組成比から算出可能であるか以下に検討する。
まず、表1-1には、「多塩基酸」と「多価アルコール」の各成分の組成比(質量%)が示されるともに、「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」が示されている。ここで、「多価アルコール」の成分である「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」の組成比(質量%)と、「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は一致してしない。
そうすると、「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、ポリエステルポリオールの原料である「多塩基酸」と「多価アルコール」の各成分の組成比(質量%)から、単純に算出できるものではないことがわかる。
このことを踏まえると、表5の「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、原料の組成比から算出できるものでないことは明らかである。
以上のように、表5の「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、原料の組成比から算出できるものでないので、製造した接着剤を測定することにより特定するしかないが、上記のように、発明の詳細な説明には、当該含有率を得るための測定方法、測定条件等が記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明には、接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の「含有率(質量%)」を得るための測定方法、測定条件等の手段が記載されていないので、製造した接着剤の上記「含有率(質量%)」の値をどのようにして得ることができるか不明である。
そうすると、請求項1の「下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含む」と特定された「蓄電デバイス包装材用接着剤」をどのような手段で得ることができるのか不明である。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
2 意見書の主張
令和6年10月28日の意見書における、特許権者の主張は次の通りである。
まず、本件明細書の【表1-1】に記載のポリイソシアネート(A)用のポリエステルポリオール(a2)についてご説明します。
【表1-1】に記載のポリエステルポリオール(a2)は、同表に記載の「多塩基酸」と「多価アルコール」を反応することにより得られます。
以下、ポリエステルポリオール(a2-2)を例に取りご説明します。ポリエステルポリオール(a2-2)は、IPA、TPA、AdA、EG、NPG、1,6-HD、DEGを以下に示す表Aのモル比で用いて、本件明細書の段落【0081】の合成法により得た化合物です(明細書の段落【0082】)。表Aの組成比(質量%)は、組成比(モル%)に分子量を乗じて質量換算した値です。
【表A】
[図:0001422445000032.jpg]
ここで、表Aの「多価アルコール」の項目に含まれる「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」は、その名称の通り、一般式(1)で示される部分構造を有する多価アルコールです。ポリエステルポリオール(a2-2)の例の場合、「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」は、以下の構造式で表されるDEG(ジエチレングリコール):
[図:0001422445000033.jpg]
です。そして、「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」の含有率(質量%)は、以下の式により算出されます。
[DEG(モル%)×分子量]/[全仕込みモノマーの質量の合計]×100=5×106/(30×166+30×166+40×146+35×62+35×104+25×118+5×106)×100=2.1123・・質量%≒2.1質量%
一方、表A (本件明細書の【表1-1】)中の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、本請求項1の一般式(1)の部分構造:
[図:0001422445000034.jpg]
一般式(1)
[一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
です。この部分構造は、DEGの例では、DEGからOH基と、H原子を除いた構造(H20を除いた構造に相当しています)です。
[図:0001422445000035.jpg]
従いまして、「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、DEGの分子量(106)から水の分子量(18)を減じた割合で表されます。即ち、
2.1123・・質量%×(106-18)/106≒1.8質量%となります。
本特許明細書に記載の【表2】の最右欄に示す「ポリイソシアネート(A)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率[質量%]」は、同表の「ポリオール成分」および「ポリイソシアネート成分」の原料を成分nとすると、以下の式により求められます。
[Σ{(一般式(1)で示される部分構造を有する成分nの含有率(質量%)/100)×成分nの配合量}]/(全成分の配合量)×100
ここで、成分nは、ポリイソシアネート(A)の合成に用いる原料であり、【表2】の(A-1)の例では、ポリエステルポリオール(a2-1)、1,4-BD、芳香族ポリイソシアネートのアダクト体(a1-1)であり、分母は前記各成分の含有率に各成分の配合量を乗じたものの総和となります。
本特許明細書に記載の【表3-1】に示すポリオール(B)用のポリエステルポリオール(b1)についても、本特許明細書に記載の【表1-1】と同様の方法により「ポリエステルボリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」が求まります。
本特許明細書に記載の【表4】に示すポリオール(B)の各例における「ポリオール(B)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、以下の式により求められます。
[ポリエステルポリオール(b1)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)/100]×[ポリエステルポリオール(b1)の配合量(質量部)]/[水酸基含有エポキシ樹脂(b2)の配合量(質量部)+ポリエステルポリオール(b 1)の配合量(質量部)]×100
本特許明細書に記載の【表5】に示す接着剤の各例における「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、以下の式により求められます。
<{[ポリイソシアネート(A)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)]/100×[ポリイソシアネート(A)の配合量(質量部)]}+{[ポリオール(B)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)]/100×[ポリオール(B)の配合量(質量部)]}>/{[ポリイソシアネート(A)の配合量(質量部)]+[ポリオール(B)の配合量(質量部)]+[Siカップリング剤の含有量(質量部)]+[触媒の含有量(質量部)]}×100
本件明細書の発明の詳細な説明には、接着剤の固形分質量を基準とした
「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」を得るための測定方法、測定条件等の手段が記載されておりません。しかしながら、当業者であれば、上述した方法により、請求項1の「一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」を求めることができ、請求項1の「下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質輩%含む」と特定された「蓄電デバイス包装材用接着剤」を製造することができる開示がなされています。
3 当審の判断
意見書において、DEGにおける「一般式(1)で示される部分構造」に相当する部分の分子量が、DEGの分子量(106)から水の分子量(18)を減じた値であることの説明がなされた。また、このことは明細書の段落【0039】及び【0040】の記載より導き出せることであるといえる。
そして、これに基づいて、ポリエステルポリオール(a2-2)の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」が、表1-1、表1-2の記載より、次の方法で算出できると説明がなされている。
まず、表1-1における、ポリエステルポリオール(a2-2)の「一般式(1)で示される部分構造を有するもの」(DEG)の含有率(質量%)を、[DEG(モル%)×分子量]/[全仕込みモノマーの質量の合計]×100=5×106/(30×166+30×166+40×146+35×62+35×104+25×118+5×106)×100=2.1123・・質量%≒2.1質量%の計算式により算出し、
次に、上記含有率(質量%)を、DEGの分子量(106)から水の分子量(18)を減じた割合にすることで、ポリエステルポリオール(a2-2)の「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」を、2.1123・・質量%×(106-18)/106≒1.8質量%と算出できる。
更に、表2における「ポリイソシアネート(A)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率[質量%]」、表3-1における「ポリエステルポリオール中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」、表4における「ポリオール(B)中の一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」、表5における「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」の算出方法が、それぞれの表の記載に基づいて説明されている。
そして、表1-1には「多塩基酸」と「多価アルコール」の各成分の組成比(質量%)が示されているので、表5の「接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の含有率(質量%)」は、発明の詳細な説明の記載より導き出せるものであるといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載に基づいて、接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の「含有率(質量%)」の値を得ることができるので、請求項1の「下記一般式(1)で示される部分構造を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%含む」と特定された「蓄電デバイス包装材用接着剤」を製造することが、発明の詳細な説明の記載されているといえる。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 訂正前の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由1
請求項1ないし9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由3
請求項1ないし9に係る発明は明確でないため、請求項1ないし9係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
証拠方法
甲第1号証:特開2018-197310号公報
甲第2号証:国際公開第2019/116903号
甲第3号証:特開2016-204449号公報
甲第4号証:特開2023-042982号公報
甲第5号証:国際公開第2018/021132号
甲第6号証:国際公開第2020/246243号
甲第7号証:特開2015-166261号公報
甲第8号証:特開2015-24862号公報
甲第9号証:特開2019-137712号公報
甲第10号証:特開2021-099915号公報
甲第11号証:田中良平著、エポキシ樹脂、バインダー基礎講座(第IV講)色材、64(10)、655-665(1991)
2 各号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付したものである。以下同様。)
「【0010】
即ち、本発明は、ポリイソシアネート(A)、芳香族ビニルと無水マレイン酸との共重合体であってその原料モノマーのモル比[芳香族ビニル/無水マレイン酸]が1.5/1~5/1である芳香族ビニル・無水マレイン酸共重合体(B)を必須成分とするポリイソシアネート組成物(X)と、水を0.3~1.0質量%含むポリオール(Y)とを必須成分とする無溶剤型接着剤を提供する。」
「【0064】
合成例1[ポリエステルポリオール樹脂Y1の合成]
ジエチレングリコール560質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱した。更に撹拌しながらアジピン酸600質量部を反応容器に仕込み150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が5mgKOH/g以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させ、酸価0.8mgKOH/g、分子量約840の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂(以下、これを「ポリエステルポリオール樹脂Y1」と略記する)を得た。」
「【0066】
合成例3[ポリエステルポリオール樹脂Y3の合成]
2-メチル-プロパンジオール333質量部、エチレングリコール179質量部、トリメチロールプロパン39質量部、を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃に加熱して溶解した。更に撹拌しながらイソフタル酸106質量部、アジピン酸610質量部を反応容器に仕込み150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が5mgKOH/g以下になったところで反応容器を徐々に減圧し、1mmHg以下、200~240℃で1時間反応させ、酸価0.5mgKOH/g、分子量約2100の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂(以下、これを「ポリエステルポリオール樹脂Y3」と略記する)を得た。」
「【0076】
合成例13[ポリイソシアネート組成物X10の合成]
合成例1で得られたポリエステルポリオール樹脂Y1の820質量部に対して、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(エボニック社製「Vestanat H12MDI」)1000質量部、SMA-B1の36質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら85℃に加熱し約10時間反応させ、イソシアネート%が12.8%末端の2官能ポリイソシアネートを得た。このSMA-B1を2質量%配合含有するポリイソシアネート組成物をポリイソシアネート組成物X10とする。」
「【0082】
調整例2[ポリオール組成物Z2の調整]
合成例3で調整したポリエステルポリオール樹脂Y3の1000質量部に対して5部のイオン交換水を添加し、水を0.5%含んだポリオール樹脂Z2を調整した。」
「【0090】
実施例、及び比較例
表1~表4の配合に従い接着剤を調整し、下記の各種評価を行った。結果を表1~表4に示す。」
・表2より、実施例13は、ポリイソシアネート組成物X10を100、ポリオール樹脂Z2を50配合したものであること読み取れる。
イ 上記記載より実施例13に着目すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「ジエチレングリコール560質量部、アジピン酸600質量部からポリエステルポリオール樹脂Y1を得て(【0064】)、
ポリエステルポリオール樹脂Y1の820質量部、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート1000質量部、SMA-B1の36質量部から、2官能ポリイソシアネートとSMA-B1を2質量%配合含有するポリイソシアネート組成物X10を得て(【0076】)、
2-メチル-プロパンジオール333質量部、エチレングリコール179質量部、トリメチロールプロパン39質量部、イソフタル酸106質量部、アジピン酸610質量部からポリエステルポリオール樹脂Y3を得て(【0066】)、
ポリエステルポリオール樹脂Y3の1000質量部に対して5部のイオン交換水を添加して、ポリオール樹脂Z2を調整し(【0082】)、
ポリイソシアネート組成物X10を100、ポリオール樹脂Z2を50配合した(表2)、
無溶剤型接着剤(【0010】)。」
(2)甲第2号証
甲第2号証には実施例10に着目すると、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。
「アジピン酸の60.7部、エチレングリコールの28.2部、ジエチレングリコールの11.1部からポリエステルポリオールを得て、
当該ポリエステルポリオールと,4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート30部、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート30部からポリイソシアネートを「A-2」を得て([0064])、
ポリイソシアネート(A-2)を100、糖アルコール(b1)が16及びポリアルキレングリコール(b2)が64のポリオール成分(B)を配合した(表2)、
無溶剤型ラミネート接着剤([0009])。」
(3)甲第3号証
甲第3号証には実施例1に着目すると、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「ポリプロピレングリコール(PPG-400)300部、ポリプロピレングリコール(PPG-2000)400部、トリオール(PPG-400-3官能)200部、4,4’-MDI1000部からポリイソシアネートA1-(1)を得て(【0069】)、
ポリイソシアネートA1-(1)100部とクルードMDI A2-(1)100部からポリイソシアネート成分A-(1)を得た(【0076】)、
ポリエステルジオール(b1)-1を92部、ジエチレングリコールを8部を混合し、ポリオール成分B-(1)を得て(【0084】)、
ポリイソシアネート成分A-(1)100部と、ポリオール成分B-(1)50部とを混合した、
無溶剤型接着剤組成物(【0088】)。」
(4)甲第4号証
甲第4号証には実施例16に着目すると、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
「アジピン酸94.8部、セバシン酸65.6部、テレフタル酸269.5部、エチレングリコール60.4部、ジエチレングリコール309.7部からポリエステルポリオール(A-8)を得て(【0067】)、
2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(質量比50:50)279.7部、トリオール12.2部、トリメチロールプロパン2.1部、数平均分子量約400のポリプロピレングリコール25.8部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール308.2部、ポリテトラメチレングリコール92.0部を仕込みウレタン化反応を行い、ポリエーテルポリウレタンポリオールを得て、
得られたポリエーテルポリウレタンポリオールに、HDIビウレット80.0部を加えてポリイソシアネート(B-9)を得て(【0071】、【0072】、表3)、
ポリエステルポリオール(A-8)50と、ポリイソシアネート(B-9)100とを混合した、
2液硬化型接着剤16(【0079】、表4)。」
3 当審の判断
(1)申立理由1(特許法第29条第2項)について
ア 甲第1号証に記載された発明について
(ア)本件発明1
a 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。
(a)甲1発明の「2官能ポリイソシアネート」、「ポリオール樹脂Z2」は、それぞれ本件発明1の「ポリイソシアネート(A)」、「ポリオール(B)」に相当する。
そうすると、甲1発明の「ポリイソシアネート組成物X10を100、ポリオール樹脂Z2を50配合した」、「無溶剤型接着剤」と本件発明1とは、「ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを含有する接着剤」である点で共通する。
但し、接着剤について、本件発明1は「蓄電デバイス包装材用接着剤」であるのに対して、甲1発明は「無溶剤型接着剤」であるが、そのような特定がない点で相違する。
(b)甲1発明の「ポリオール樹脂Z2」は、「ポリエステルポリオール樹脂Y3の1000質量部に対して」「イオン交換水を添加し」たものであるので、ポリエステルポリオールを含んでいる。このことは、本件発明1の「前記ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含」んでいることに相当する。
(c)甲1発明は「ポリイソシアネート組成物X10を100、ポリオール樹脂Z2を50配合し」ているので、「ポリオール樹脂Z2」を「2官能ポリイソシアネート」を基準として、約50質量%含んでいるといえる。このことは、本件発明1の「前記ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含み」を満たす。
(d)甲1発明は「ジエチレングリコール」と「アジピン」から「ポリエステルポリオール樹脂Y1」を得ているので、「ポリエステルポリオール樹脂Y1」は、一般式(1)(略)で示される部分構造を有している。
したがって、本件発明1と甲1発明は、「下記一般式(1)で示される部分構造」を含む点で共通する。
但し、一般式(1)(略)で示される部分構造の含有率が、本件発明1は「接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%」であるのに対して、甲1発明はそのような特定がない点で相違する。
上記(a)及び(d)によれば、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを含有する接着剤であって、
前記ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含み、
前記ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含み、
下記一般式(1)で示される部分構造を含む接着剤。
一般式(1)(略)」
(相違点1a)
接着剤について、本件発明1は「蓄電デバイス包装材用接着剤」であるのに対して、甲1発明は「無溶剤型接着剤」であるが、そのような特定がない点。
(相違点2a)
一般式(1)(略)で示される部分構造の含有率が、本件発明1は「接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%」であるのに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
b 判断
上記相違点1a、2aについて、まとめて検討する。
まず、甲第1号証には、「無溶剤型接着剤」を食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用することが記載されているが(【0001】)、蓄電デバイス包装材用に使用することは記載されていない。
ここで、特許異議申立人は、甲第5号証~甲第9号証には、ポリイソシアネートとポリオールとを含有する積層体(ラミネート)用接着剤を電池用包装材、食品用包装材、医療用PTP及びペット餌料用パック等に適用するこ記載されており、例えば食品用包装材に用いられる接着剤を電池用包装材に適用することは周知であると主張している(特許異議申立書88頁)。
しかしながら、上述のように、甲第1号証には「無溶剤型接着剤」を蓄電デバイス包装材用に使用することの記載がないだけではなく、蓄電デバイスに使用する際に重要な特性である、接着剤を用いて積層(ラミネート)したものの成型性や、成型後の耐湿熱性などのについての記載も示差もない。
そうすると、例え食品用包装材に用いられる接着剤を電池用包装材に適用することは周知であったとしても、蓄電デバイス包装材用に必要な特性(積層したものの成型性、成型後の耐湿熱性)が不明である甲1発明の「無溶剤型接着剤」を、蓄電デバイス包装材用接着剤として用いることに積極的な動機付けは認められない。
そして、上述のように、甲1発明の「無溶剤型接着剤」は食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用することを想定したものであるから、本件発明1のように積層したものの成型性や、成型後の耐湿熱性などに着目し、一般式(1)(略)で示される部分構造の含有率を、接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%に限定することは、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到しうることとはいえない。
したがって、上記相違点1a、2aに係る構成は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、特許異議申立人は、実施例13の一般式(1)で示される部分構造の含有比率を算出すると、12.0~16.7質量%程度であると主張している(特許異議申立書47頁)。
しかしながら、上記のように、甲1発明の「無溶剤型接着剤」を,蓄電デバイス包装材用接着剤として用いること、及び、一般式(1)で示される部分構造の含有率を、0.5~12.0質量%に限定することが、当業者が容易に想到し得ることとはいえないのであるから、たとえ特許異議申立人の見積もりの通りに、実施例13の一般式(1)で示される部分構造の含有比率が12.0~16.7質量%程度であっても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、上記結論のとおりである。
(イ)本件発明2ないし9について
本件発明2ないし9は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲第2号証に記載された発明について
(ア)本件発明1
a 対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、本件発明1と甲2発明とは次の相違点を有し、その余の点で一致する。
(相違点1b)
接着剤について、本件発明1は「蓄電デバイス包装材用接着剤」であるのに対して、甲2発明は「無溶剤型ラミネート接着剤」であるが、そのような特定がない点。
(相違点2b)
一般式(1)(略)で示される部分構造の含有率が、本件発明1は「接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%」であるのに対して、甲2発明はそのような特定がない点。
(相違点3b)
本件発明1は「前記ポリオール(B)が、ポリエステルポリオール(b1)を含」むのに対して、甲2発明はそのような特定がない点。
(相違点4b)
本件発明1は「前記ポリオール(B)を、ポリイソシアネート(A)の質量を基準として20~60質量%含」むのに対して、甲2発明は「ポリオール成分(B)」を、「ポリイソシアネート(A-2)」の質量を基準として80質量%含む点。
b 判断
上記相違点1b、2bは、上記「ア(ア)b」で検討した上記相違点1a、2aと同様の相違点である。
したがって、上記相違点1b、2bに係る構成は、甲2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2ないし9について
本件発明2ないし9は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲第3号証に記載された発明について
(ア)本件発明1
a 対比
本件発明1と甲3発明を対比すると、本件発明1と甲3発明とは次の相違点を有し、その余の点で一致する。
(相違点1c)
接着剤について、本件発明1は「蓄電デバイス包装材用接着剤」であるのに対して、甲3発明は「無溶剤型接着剤組成物」であるが、そのような特定がない点。
(相違点2c)
一般式(1)(略)で示される部分構造の含有率が、本件発明1は「接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%」であるのに対して、甲3発明はそのような特定がない点。
b 判断
上記相違点1c、2cは、上記「ア(ア)b」で検討した上記相違点1a、2aと同様の相違点である。
したがって、上記相違点1c、2cに係る構成は、甲3発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2ないし9について
本件発明2ないし9は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 甲第4号証に記載された発明について
(ア)本件発明1
a 対比
本件発明1と甲4発明を対比すると、本件発明1と甲4発明とは次の相違点を有し、その余の点で一致する。
(相違点1d)
接着剤について、本件発明1は「蓄電デバイス包装材用接着剤」であるのに対して、甲4発明は「2液硬化型接着剤16」であるが、そのような特定がない点。
(相違点2d)
一般式(1)(略)で示される部分構造の含有率が、本件発明1は「接着剤の固形分質量を基準として0.5~12.0質量%」であるのに対して、甲4発明はそのような特定がない点。
b 判断
上記相違点1d、2dは、上記「ア(ア)b」で検討した上記相違点1a、2aと同様の相違点である。
したがって、上記相違点1d、2dに係る構成は、甲4発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2ないし9について
本件発明2ないし9は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)申立理由3(特許法第36条第6項第2号)について
ア 特許異議申立人の主張
「エ 実施可能要件について」に記載の通り、本件発明1の構成dに規定される「一般式(1)で示される部分構造の接着剤の固形分質量を基準とした含有量」は、どのようにして一義的に導き出すことができる値であるのか不明である。
よって、本件特許発明1は、特許を受けようとする発明が明確に規定されていないため、明確性要件を満たしていない。
イ 当審の判断
上記「第4 3」で実施可能要件について検討したとおり、発明の詳細な説明の記載に基づいて、接着剤の固形分質量を基準とした一般式(1)で示される部分構造の「含有率(質量%)」の値を得ることができるので、上記主張は採用できない。
(3)まとめ
したがって、特許異議申立人の申立理由1及び3にかかる主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700669