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特許異議申立

2024-700668

ミリ波レーダー部材用熱可塑性樹脂組成物及び成形体

審判番号
2024-700668
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-066525
登録番号
7424174
請求日
2024年07月17日
審決日
2024年10月09日
公報発行日
2024年11月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
  • 【異議申立人】東レ 株式会社
  • 【異議申立人代理人】伴 俊光
  • 【異議申立人代理人】細田 浩一
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 北澤 健一
  • 審判官 近野 光知
分類
P1651.121-Y (C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7424174号発明「ミリ波レーダー部材用熱可塑性樹脂組成物及び成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7424174号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7424174号(以下、「本件特許」という。)は、令和2年4月2日に出願された特願2020-66525号に係る特許であって、令和6年1月22日に特許権の設定登録(請求項数4)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和6年7月17日に、本件特許の請求項1~4に係る特許に対して、特許異議申立人である東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項の番号に従い、「本件発明1」などという。)。 「【請求項1】 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、 (i)(B)ゴム強化ポリスチレン系樹脂15~65質量部と(C)ポリカーボネート樹脂10~60質量部を含有するか、または (ii)(C)ポリカーボネート樹脂10~70質量部を含有し、 さらに、(D)エポキシ化合物を0.1~3質量部、(E)ガラス繊維を30~150質量部含有することを特徴とするミリ波レーダー部材用熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、レーザー溶着の際、透過側に用いられ、下記条件を満たす成形体と、 カーボンブラックを0.2~1質量%含有する相手材の樹脂成形品とがレーザー溶着により接合されていることを特徴とする、ミリ波レーダー部材。 (条件)前記熱可塑性樹脂組成物を厚さ1.5mmに成形した場合の成形体の、波長1070nmにおける透過率が42%以上である。 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂組成物が、波長が1070nmのレーザー光を透過する(F)レーザー光透過性染料を、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.0005~5質量部を含有する請求項1に記載のミリ波レーダー部材。 【請求項3】 前記熱可塑性樹脂組成物が、カーボンブラックを含有しないか、あるいは、含有する場合でもその含有量が、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1質量部以下である請求項1または2に記載のミリ波レーダー部材。 【請求項4】 前記成形体の比誘電率が3.50以下である請求項1~3のいずれかに記載のミリ波レーダー部材。」 第3 特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法 申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第8号証(以下、「甲1」などという。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。 申立理由1(進歩性) 本件発明1~4は、本件出願日前に頒布された以下の甲号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 ・甲1を主引例とする場合:甲1、及び、甲2、7~8 ・甲6を主引例とする場合:甲6、及び、甲1~5 甲1:特開2013-155278号公報 甲2:特開2010-144154号公報 甲3:特表2004-534104号公報 甲4:特開2005-281522号公報 甲5:特開2013-043942号公報 甲6:国際公開第2005/035657号 甲7:実験成績証明書(透過率),2024年7月1日,東レ株式会社 樹脂技術部 樹脂開発室 主任部員 石井智 甲8:実験成績証明書(比誘電率),2024年7月1日,東レ株式会社 樹脂技術部 樹脂開発室 主任部員 石井智 第4 当審の判断 1 申立理由1(甲1を主引例とする進歩性)について (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1には、次のとおり記載されている。 「【請求項1】 レーザー光による溶着に用いる樹脂組成物であって、 (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、及び(B)以下の(B-1)~(B-5)から選ばれる少なくとも1つの樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)50~95質量部、(B)50~5質量部含有し、 さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、 (D)強化充填材を0~120質量部、(E)エポキシ化合物を0~5質量部、(F)流動改質剤を0~10質量部、及び、(G)ニグロシン、アニリンブラック、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体及びインモニウムから選ばれる1つ以上のレーザー光吸収性染料を0.001~0.2質量部含有し、 換算吸光度a(1mm厚みに換算した、波長940nmのレーザー光に対する吸光度)が、0.2~2であることを特徴とするレーザー溶着用樹脂組成物。 (B-1)ポリエチレンテレフタレート系樹脂 (B-2)ポリカーボネート系樹脂 (B-3)芳香族ビニル系樹脂 (B-4)アクリル系樹脂 (B-5)ポリアミド系樹脂」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、レーザー溶着用樹脂組成物及び溶着体に関するものであり、さらに詳しくは、レーザー溶着加工性に優れ、かつ成形性に優れたレーザー溶着用のポリエステル系樹脂組成物及びそれからなる成形品をレーザー溶着した溶着体に関する。 【背景技術】 【0002】 熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び電気絶縁性等に優れており、また優れた耐熱性、成形性、リサイクル性を有していることから、各種の機器部品に広く用いられている。 最近では、これら機器部品を製造するのに、生産性効率化のため溶着加工により部品同士を結合させる例が増加してきており、中でも電子部品への影響が少ないレーザー溶着が多用されてきている。 【0003】 しかしながら、ポリカーボネート樹脂やポリスチレン系樹脂等に比べて、ポリエステル樹脂、特にポリブチレンテレフタレート樹脂はレーザー透過性が比較的低く、また成形品に反りが出やすいことなどから、溶着強度が不十分な場合が多かった。 成形品に反りが生じる場合は、溶着時に反りを矯正するように押し付け力を加える方法も採られるが、成形品の形状によっては効率的に押し付け力を加えることが難しい場合も多く、また溶着後に押し付け力を取り除いた溶着体に残留応力が残るため、高い溶着強度が得にくい問題がある。 【0004】 ポリブチレンテレフタレート樹脂のレーザー溶着性を向上させるために、共重合ポリブチレンテレフタレートを使用する方法(特許文献1)、ポリブチレンテレフタレートにポリカーボネート樹脂やスチレン系樹脂をアロイ化する方法(特許文献2及び3)、さらに特定のオリゴマーを添加する方法(特許文献4)等が提案されている。 しかしながらこれらの手法では、成形品の反り変形等によって生じる溶着部材間の隙間等のため、十分な溶着性が得られない場合があった。 また、熱可塑性樹脂にニグロシン等のレーザー透過吸収剤を添加して、溶着性を向上させる方法(特許文献5)も提案されているが、レーザー溶着に適したポリエステル樹脂組成物については記載されていない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特許第3510817号公報 【特許文献2】特開2003-292752号公報 【特許文献3】特許第4641377号公報 【特許文献4】特開2004-315805号公報 【特許文献5】特開2008-1112号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、レーザー溶着加工性に優れ、かつ成形性に優れたレーザー溶着用ポリエステル系樹脂組成物を提供することにある。」 「【発明の効果】 【0010】 本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、レーザー溶着加工性に優れ、かつ成形性に優れ、樹脂組成物の成形体をレーザー溶着した溶着体は、溶着強度及び耐久性に優れる。 また、本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、その換算吸光度aが、0.2~2の範囲にあるように調整されていることを特徴としており、これによりレーザー光の透過と吸収をバランスさせているので、従来のレーザー溶着のようにレーザー光透過性樹脂とレーザー光吸収性樹脂の2種を用いることなしに、1種類の樹脂材料のみでレーザー溶着が可能なポリエステル系樹脂材料を提供することが可能となる。そして、このような換算吸光度aを有することにより、本発明の樹脂組成物からの成形体が、成形時のヒケや反りにより接合用の部材間に仮に隙間がある場合、特に押し付け力を加えない状態で隙間がある場合でも、隙間が0.1mm以上、特には1mm以上であってもレーザー溶着が可能であり、実際の溶着加工において極めて優れた作業性を発揮することが可能となる。」 「【0105】 [レーザー溶着] 本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、その換算吸光度aを0.2~2という低い範囲に抑えてある。このため、上記したように、レーザー光透過性樹脂からなる成形体とレーザー光吸収性樹脂からなる成形体の2種を用いる必要はなく、また、レーザー光の透過深さが大きく、そのため大きい溶融深さを確保することができるので、重ね合わせ溶着は勿論、今まで出来なかったレーザー溶着用成形体の端部同士の突き合わせ溶着でも、十分高い溶着強度を達成することができる。また、成形体が、成形時のヒケや反りにより接合用部に仮に隙間が生じた場合にも、隙間が0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、さらには0.5mm以上、特には1mm以上もある場合であっても、レーザー溶着が可能である。 ・・・」 「【0106】 [レーザー溶着体] レーザー溶着された溶着体の形状、大きさ、厚み等は任意であり、溶着体の用途としては、自動車等の輸送機器用部品、電気電子機器部品、産業機械用部品、その他民生用部品等に特に好適である。」 「【実施例】 【0107】 以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。 【0108】 以下の実施例および比較例において、使用した成分は、以下の表1の通りである。 なお、ガラス繊維(D-3)及び(D-4)は、以下のようにして製造した。 アミノ系シランとノボラック型エポキシ樹脂が付着したガラス繊維は、特開2001-172055号公報の実施例1に記載の方法に従って、フェノールノボラック型エポキシ樹脂4質量%、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン1質量%、ウレタン系エマルジョン2質量%および脱イオン水93質量%からなる集束剤を作製し、その後、ガラス繊維ストランドに塗布した。このストランドを3mmに切断した。得られたガラス繊維チョップドストランドに対する集束剤の付着量は0.7質量%であった。このようにして得られたガラス繊維はガラス繊維(D-3)であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにビスフェノールA型のエポキシ樹脂を使用したものがガラス繊維(D-4)である。 【0109】 【表1】 [図:0001416519000001.jpg] 【0110】 (実施例1~39、比較例1~9) 表1に記載した各成分を表2以下に記載の量(いずれも質量部)で配合した樹脂組成物を使用して、射出成形機(住友重機械工業社製、ネスタールSG75-SYCAP-M3A)を用い、シリンダー温度255℃で射出成形して、以下に記載する成形品#1~成形品#5を、それぞれ製造した。 得られた成形品#1~成形品#5を使用し、以下の試験を行った。 レーザー溶着は、浜松ホトニクス社製レーザー装置「L10060」を用い、レーザー波長:940nm、レーザー走査速度:1mm/秒にて、各実施例および各比較例ごとに、レーザー出力を5W、10W、20W、30W、40W、50Wと変え、最大の溶着強度が得られる出力を選定して行った。 【0111】 <換算吸光度の測定方法> 成形品#1の溶着部において、島津製作所社製「UV-3100PC」を用いて、積分球による検出により、波長940nmにおける透過率T(%)と反射率R(%)を求めた。さらに吸光度aを、a=-log{T/(100-R)}の式によって求め、1mm厚みに換算した換算吸光度は、測定部の肉厚t(mm)を用いて、a/tとして求めた。 【0112】 <成形品#1と成形品#2の溶着強度と試験> ・成形品#1と成形品#2: 成形品#1と成形品#2として、ASTM4号ダンベル(1.5mmt)を使用した。 ・溶着強度: 図1に示すように、成形品#1と成形品#2をずらして重ね合わせ、成形品#1側から重ね合わせ部にレーザー光を照射し溶着した後、成形品#1と成形品#2の先端をそれぞれ掴み、引っ張り方向に荷重をかけて剪断破壊する荷重を求めた。なお、引張試験機としては、インストロン社製「5544」を使用し、引張速度は5mm/分で行った(以下同様)。 ・隙間溶着強度: 溶着時に成形品#1と成形品#2の溶着部両側に金属片スペーサーを挟んで溶着を行い、隙間間隔を、0.2mm、0.3mm、0.5mm、1.0mmと変化させ、上記同様に引っ張り剪断破壊荷重を求めた。 ・突き合わせ溶着強度: 図2に示すように、成形品#1と成形品#2のタブ部分を突き合わせ、合わせ部にレーザー光を照射して溶着した後、成形品#1と成形品#2の溶着部の反対側をそれぞれ掴み、上記同様の条件で、引っ張り方向に荷重をかけて破壊する荷重を求めた。 【0113】 <成形品#3と成形品#4の溶着と溶着強度試験> 図3に示した形状の板状成形品#3(100mm×100mm×厚み1.5mm)と、図4に示した形状の箱状成形品#4(80mm×80mm×高さ20mm、厚み3mm)を組み合わせ、板状成形品#3側からレーザー光を照射し、箱状成形品#4の上開口部の縁に沿って溶着した後、ボール盤切削加工により箱の底面中央にΦ10mmの穴を空けた複合成形体を作製した。水中にて複合成形体の穴部から内圧を加えていき、溶着部の一部が破壊し気泡が発生する内圧の最大値を求めた。内圧の最大値が大きいほど、溶着強度が高いといえる。 【0114】 <成形品#4の成形性評価> 図4の箱状成形品#4をシリンダー温度255℃、金型温度80℃にて射出成形した際に、イジェクタピンの接触部において、その反対面側に現れる突出し跡の有無を確認した。突出し跡のない場合を○、突出し跡がわずかに見られる場合を△、突出し跡が顕著に見られる場合を×とした。突出し跡が見られないほど、ハイサイクルで成形が可能で、成形性に優れているといえる。 【0115】 <成形品#5の引張強度試験> 成形品#5として、ISO多目的試験用ダンベル(4mm厚)を使用し、ISO527 -1、527-2に準拠して測定した。 【0116】 以上の評価結果を、以下の表2~表7に示す。 なお、表中の「×」は、レーザー溶着が出来なかったことを示す。突き合わせ溶着強度で「※」が付いている値は、最適溶着条件を得るため、レーザー照射位置を1mmだけ成形品#1側にずらして行った。また、「実」は実施例、「比」は比較例、「部」は質量部を示す。 ・・・ 【0122】 【表7】 [図:0001416519000002.jpg] 」 イ 上記アの記載事項によれば、甲1には、熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度等に優れ、優れた成形性等を有していることから広く用いられ、生産性効率化のため溶着加工、中でもレーザー溶着が多用されている(【0002】)が、ポリエステル樹脂、特にポリブチレンテレフタレート樹脂はレーザー透過性が比較的低く、溶着強度が不十分な場合が多かった(【0003】)ことから、レーザー溶着加工性に優れ、かつ成形性に優れたレーザー溶着用ポリエステル系樹脂組成物を提供すること(【0006】)を課題とした発明が記載されており、実施例において、そのようなレーザー溶着用ポリエステル系樹脂組成物を製造し、当該樹脂組成物を用いて、成形品#1及び#2を成形し、溶着体を得たことが示されている(【0107】~【0122】)。 そこで、甲1の実施例34に着目すると、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「PBT樹脂(A-2)(ポリブチレンテレフタレート樹脂 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ノバデュラン(固有粘度 0.85dl/g))70質量部、ポリカーボネート樹脂(B-2)(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ユーピロンH4000(粘度平均分子量15,000))30質量部、ガラス繊維(D-3)(アミノシランとクレゾールノボラック型エポキシ表面処理ガラス繊維)45質量部、エポキシ(E-2)(ビスフェノールA型エポキシ ADEKA社製 アデカサイザーEP-17 数平均分子量 370、エポキシ当量 185g/eq)1質量部、及び、ニグロシン(G-1)(オリヱント化学工業社製 NUBIAN BLACK PA9803)0.01質量部を配合した樹脂組成物を射出成形して得られた成形品#1と成形品#2(ASTM4号ダンベル(1.5mmt))をずらして重ね合わせ(成形品#1及び#2の換算吸光度(1mm厚みに換算した、波長940nmのレーザー光に対する吸光度)が0.48)、成形品#1側から重ね合わせ部にレーザー光を照射して溶着した溶着体。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1のうち「(ii)(C)ポリカーボネート樹脂10~70質量部」を含有する発明と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「PBT樹脂(A-2)(ポリブチレンテレフタレート樹脂 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ノバデュラン(固有粘度 0.85dl/g))」、「ポリカーボネート樹脂(B-2)(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ユーピロンH4000(粘度平均分子量15,000))」、「ガラス繊維(D-3)(アミノシランとクレゾールノボラック型エポキシ表面処理ガラス繊維)」、「エポキシ(E-2)(ビスフェノールA型エポキシ ADEKA社製 アデカサイザーEP-17 数平均分子量 370、エポキシ当量 185g/eq)」は、本件発明1の「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「(C)ポリカーボネート樹脂」、「(E)ガラス繊維」、「(D)エポキシ化合物」にそれぞれ相当する。 また、甲1発明における「PBT樹脂(A-2)(ポリブチレンテレフタレート樹脂 三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ノバデュラン(固有粘度 0.85dl/g))」100質量部に対する各成分の量を計算すると、「ポリカーボネート樹脂(B-2)(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 ユーピロンH4000(粘度平均分子量15,000))」30×100/70=約43質量部、「ガラス繊維(D-3)(アミノシランとクレゾールノボラック型エポキシ表面処理ガラス繊維)」45×100/70=約64質量部、「エポキシ(E-2)(ビスフェノールA型エポキシ ADEKA社製 アデカサイザーEP-17 数平均分子量 370、エポキシ当量 185g/eq)」1×100/70=約1.4質量部であるから、本件発明1と同じく、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、ポリカーボネート樹脂10~70質量部を含有し、さらに、エポキシ化合物を0.1~3質量部、ガラス繊維を30~150質量部の範囲内で含有するものである。 甲1発明における「成形品#1」は、レーザー光が照射される側であるから、本件発明1の「透過側に用いられ」る「成形体」に相当する。 また、甲1発明における「成形品#2」は、「成形品#1」と溶着される成形品であるから、本件発明1の「カーボンブラックを0.2~1質量%含有する相手材の樹脂成形品」と、「相手材の樹脂成形品」である限りにおいて一致する。 甲1発明の「溶着体」は、本件発明1の「ミリ波レーダー部材」と、「溶着体」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、 (ii)(C)ポリカーボネート樹脂10~70質量部を含有し、 さらに、(D)エポキシ化合物を0.1~3質量部、(E)ガラス繊維を30~150質量部含有する熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、レーザー溶着の際、透過側に用いられる成形体と、 相手材の樹脂成形品とがレーザー溶着により接合されている溶着体。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点1-1> 透過側に用いられる成形体について、本件発明1は、「(条件)前記熱可塑性樹脂組成物を厚さ1.5mmに成形した場合の成形体の、波長1070nmにおける透過率が42%以上である。」という条件を満たすのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点 <相違点1-2> 相手材の樹脂成形品について、本件発明1は、「カーボンブラックを0.2~1質量%含有する」のに対し、甲1発明は、カーボンブラックを含まない点 <相違点1-3> 本件発明1は、「ミリ波レーダー部材」であるのに対し、甲1発明は、「溶着体」である点 イ 相違点について 事案に鑑み、相違点1-3について検討する。 甲1発明は、レーザー溶着加工性に優れ、かつ成形性に優れたレーザー溶着用ポリエステル系樹脂組成物を用いた溶着体を提供することを課題とした発明であるところ(【0006】)、特定の換算吸光度を有するため、レーザー光の透過と吸収のバランスがよく、レーザー光の透過深さが大きく、大きい溶融深さを確保できるものであり(【0010】、【0105】)、甲1には、溶着体の用途としては、自動車等の輸送機器用部品、電気電子機器部品、産業機械用部品、その他民生用部品等が挙げられることが記載されているにとどまる(【0106】)。 甲1には、甲1発明がミリ波レーダー部材に要求される誘電特性に優れることは記載されておらず、甲1の上記記載を考慮しても、誘電特性に優れることが要求されるミリ波レーダー部材という特定の用途に甲1発明が特に適したものであるという事情は見いだせない。そうすると、甲1の記載からは、甲1発明をミリ波レーダー部材に適用する動機付けに乏しい。 また、甲2には、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対して2~10重量部のエポキシ化合物を含有する、レーザー溶着することができる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が開示されているにとどまり、ミリ波レーダー部材についての記載はないから、甲2を考慮しても上記判断に影響しない。 そして、甲7及び8は、東レ株式会社の社員が本件特許の出願後(2024年7月1日)に作成した実験成績証明書であり、甲1の実施例34の樹脂成形体(甲1発明に対応)を再現して物性を測定したところ、波長1070nmにおける透過率が58%であり、比誘電率が3.48であったことが示されている。 しかしながら、甲7及び甲8に記載の実験は、本件特許の出願後に行われたものであるから、本件特許の出願前に甲1発明をミリ波レーダー部材とすることが動機付けられたことを裏付ける根拠とはできない。 そして、本件発明1は、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリカーボネート樹脂を配合することにより、低い比誘電率に加え、低反り性等とのバランスにも優れるという効果を奏するものである(【0109】【表2】)が、甲1には、上記においても示したとおり誘電性能に優れることは記載されておらず、さらに、ポリカーボネート樹脂を配合することによる反り量の低減について実施例において具体的に示されていないから、本件発明1の効果は、当業者が予測することができるものではない。 ウ したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び、甲1~2に記載された事項に基づき、甲7~8の実験成績証明書を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲1発明、及び、甲1~2に記載された事項に基づき、甲7~8の実験成績証明書を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人の主張について 特許異議申立書の43頁下から9行目~44頁18行目において、本件発明1と甲1発明との対比説明がなされているが、甲1発明をミリ波レーダー部材に適用することについては言及がない。 (5)小括 以上によれば、本件発明1~4は、甲1発明、及び、甲1~2に記載された事項に基づき、甲7~8の実験成績証明書を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人が主張する理由1(甲1を主引例とする進歩性)は、理由がない。 2 申立理由1(甲6を主引例とする進歩性)について (1)甲6に記載された事項及び甲6に記載された発明 ア 甲6には、次のとおり記載されている。 「請求の範囲 [1] ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、ポリカーボネート系樹脂(C)と、可塑剤(D)とを含むレーザー溶着用樹脂組成物。 ・・・ [6] ポリブチレンテレフタレート系樹脂(A)100重量部に対して、エラストマー(B)1~50重量部と、ポリカーボネート系樹脂(C)5~100重量部と、可塑剤(D)1~10重量部とを含む請求項1記載の樹脂組成物。 [7] さらに、充填剤又は補強剤(E)を含む請求項1記載の樹脂組成物。 [8] 充填剤又は補強剤(E)が、ガラス質である請求項7記載の樹脂組成物。」 「技術分野 [0001] 本発明は、レーザ溶着性が高く、成形加工性に優れるポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物、及びそれを用いた成形品に関する。」 「背景技術 [0002] ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械的特性、及び成形加工性などの種々の特性に優れるため、多くの用途に利用されている。具体的な用途としては、各種自動車用電装部品(各種コントロールユニット、各種センサー、イグニッションコイルなど)、コネクター類、スイッチ部品、リレー部品、コイル部品などが挙げられる。これらの部品には気密性が必要とされる場合があり、このような部品を簡便に作製するためには、接着剤、熱板溶着、超音波溶着などの接合方法が利用されている。しかし、これらの接合方法について、幾つかの問題点が指摘されている。例えば、接着剤を用いると、接着剤が硬化するまでの工程的な時間のロスや環境への負荷が問題となる。また、熱板溶着や超音波溶着では、熱や振動などによる製品の損傷が懸念される。 [0003] 一方、レーザ溶着による接合方法は、溶着に伴う熱や振動による製品のダメージが無く、溶着工程も非常に簡易である。しかし、PBT系樹脂をレーザ溶着で接合する場合、レーザ光の透過が低いため、炭化などを生じ、実質的に溶着できないことが指摘されている。特開2001-26656号公報(特許文献1)には、特定範囲の融点を有するポリエステル系共重合体で形成された成形品と他の成形品とを溶着加工により一体化させて成形体を製造する方法が開示されている。この文献には、ホモポリアルキレンアリレート樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)はレーザ溶着強度が小さいことが記載されている。 [0004] 特開平10-245481号公報(特許文献2)には、熱可塑性ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂とで構成された組成物に、架橋アクリル酸エステル系弾性体の存在下にメタクリル酸エステルを主成分とする単量体をグラフト重合して得られるメタクリル酸エステル系樹脂(グラフト樹脂)を1~10重量%の割合で配合した熱可塑性樹脂組成物が開示されている。この文献には、前記樹脂組成物において、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とを1.5/1~4/1(重量比)の割合で用いた例が記載されている。さらに、前記組成物の熱溶着法として、熱板溶着法、振動溶着法又は超音波溶着法も記載されている。しかし、この組成物では、溶着強度を高めるためには前記グラフト樹脂を必要とすると共に、このグラフト樹脂を用いると、機械的強度や耐熱性などが低下しやすい。 [0005] さらに、PBT系樹脂をベースとする成形品によっては、部位によってレーザ光に対する透過率が変動する場合がある。そのため、このような成形品を相手材(樹脂成形品)とレーザ溶着すると、成形品と相手材としての成形品とを接触界面で均一かつ強固に溶着できない場合がある。 特開2001-26656号公報(特許請求の範囲) 特開平10-245481号公報(特許請求の範囲)」 「発明の開示 発明が解決しようとする課題 [0006] 従って、本発明の目的は、PBT系樹脂をベースとしながらも、均一溶着性が高く、均一に溶着可能なレーザ溶着用PBT系樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。 [0007] 本発明の他の目的は、レーザ溶着性に優れ、高い溶着強度が得られるレーザ溶着用PBT系樹脂組成物、及びその成形品を提供することにある。」 「[0055] 充填剤又は補強剤(E) 樹脂組成物は充填剤又は補強剤(E)を含んでいてもよい。このような充填剤又は補強剤(E)には、繊維状補強材[例えば、無機質繊維(例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミニウムシリケート繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、ウィスカー(炭化ケイ素、アルミナ、窒化ホウ素などのウィスカー)など)、有機質繊維(例えば、脂肪族又は芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂、レーヨンなどで形成された繊維)など]、板状補強材[例えば、タルク、マイカ、ガラスフレークなど]、粉粒状補強材[例えば、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(例えば、ミルドガラスファイバーなど)など]、ウォラストナイト(珪灰石)などが含まれる。ウォラストナイトは、板状、柱状、繊維状などの形態であってもよい。繊維状補強材の平均径は、例えば、1~50μm(好ましくは3~30μm)程度、平均長は、例えば、100μm~3mm(好ましくは500μm~1mm)程度であってもよい。また、板状又は粉粒状補強材の平均粒径は、例えば、0.1~100μm、好ましくは0.1~50μm程度であってもよい。これらの補強材は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。 [0056] これらの充填剤又は補強剤(E)のうち、レーザ光が透過可能な補強材が好ましい。このような補強材はレーザ光の波長に応じて選択できる。このような補強材としては、例えば、ガラス系又はガラス質充填剤又は補強材(ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズなど)などが例示でき、特に、ガラス繊維、例えば、高い強度・剛性を有するガラス繊維(チョップドストランドなど)などが好ましい。 [0057] 充填剤又は補強剤(E)の割合は、PBT系樹脂100重量部に対して、0~100重量部(例えば、0~80重量部)程度の範囲から選択でき、通常、10~100重量部(例えば、10~80重量部)、好ましくは20~80重量部、さらに好ましくは30~80重量部(例えば、50~70重量部)程度である。」 「[0060] 樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、無機充填剤、染顔料などの着色剤、分散剤、帯電防止剤、充填剤などを添加してもよい。なお、PBT系樹脂とポリカーボネート系樹脂との間でエステル交換反応が生じることが知られているが、このような反応を防止するための一般的な安定剤(例えば、ホスファイト系酸化防止剤などの燐系安定剤)を用いるのが有利である。また、耐加水分解性、耐ヒートショック性などを改善するため、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物などのエポキシ化合物を添加してもよい。また、レーザ光に対する反射成分(例えば、波長800~1200nm領域の入射光を殆ど反射する成分(例えば、酸化チタンなど))は、レーザ溶着性を損なわない範囲であれば使用してもよいが、通常、このような反射成分は添加しない場合が多い。また、必要であれば、他の樹脂[スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体など)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(エチレンテレフタレート単位を有する共重合体など)、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など]と組合せて用いてもよい。」 「[0070] 被着体(又は相手材)は、レーザ光に対する吸収剤又は着色剤を含んでいてもよい。前記着色剤は、レーザ光の波長に応じて選択でき、無機顔料[カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料など]、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料など)などが挙げられる。これらの吸収剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。吸収剤としては、通常、黒色顔料又は染料、特にカーボンブラックが使用できる。カーボンブラックの平均粒子径は、通常、10~1000nm、好ましくは10~100nm程度であってもよい。着色剤の割合は、被着体全体に対して0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%(例えば、0.5~3重量%)程度である。」 「産業上の利用可能性 [0082] 得られた複合成形品は、高い溶着強度を有し、レーザ光照射によるPBT系樹脂の損傷も少ないため、種々の用途、例えば、電気・電子部品、オフィスオートメーション(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、自動車機構部品などに適用できる。特に、自動車電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品など)、モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品などに好適に用いることができる。」 「実施例 [0083] 以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 [0084] 実施例1~10及び比較例1~2 実施例及び比較例では、以下のPBT系樹脂(A)、エラストマー(B)、ポリカーボネート系樹脂(C)、可塑剤(D)、充填剤又は補強剤(E)、核剤(F)、および着色剤を用いた。 [0085] PBT系樹脂(A) (A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂 テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとの反応において、テレフタル酸の一部(12.5mol%)に代えて、共重合成分としてのDMI12.5mol%を用い、変性ポリブチレンテレフタレートを調製した。 [0086] エラストマー(B) (B-1)エポキシ基含有ポリスチレン系熱可塑性エラストマーESBS[ダイセル化学工業(株)製「エポフレンドAT504」] (B-2)ポリエステル系熱可塑性エラストマー[東洋紡(株)製「GP200」] (B-3)ポリスチレン系熱可塑性エラストマー[クラレ(株)製「セプトン4055」] ポリカーボネート系樹脂(C) (C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL-1225」) 可塑剤(D) (D-1)芳香族多価カルボン酸エステル[旭電化工業(株)製アデカサイザー UL-100] (D-2)アクリル系可塑剤[東亜合成(株)製 ARUFON UP-1020] (D-3)スチレンーアクリル系流動性改良剤[東亜合成(株)製ARUFON XFM910] 充填剤又は補強剤(E) (E-1)ガラス繊維[日東紡績(株)製「CS3J-948S」、平均繊維径φ11μm、平均繊維長400μm] 核剤(F) (F-1)窒化ホウ素[川崎製鉄(株)製 FS-1] (F-2)タルク[日本タルク(株)製 タルク3A] 着色剤 紫色染顔料[クラリアントジャパン製 SANDOPLAST VIOLET RSB] 黄色染顔料[クラリアントジャパン製 SANDOPLAST YELLOW 2G] 表1に示す割合(重量比)で、各成分を2軸押出機(日本製鋼所製,30mmφ)により260℃で混錬し、ペレットを作製した。得られたペレットを射出成形機((株)東芝製)により、シリンダー温度260℃及び金型温度80℃の条件で射出成形し、試験片A(縦80mm×横80mm×厚さ2mm,サイドゲート,ゲート幅2mm)を成形した。 [0087] また、前記試験片Aに対する被溶着体Bとして、前記ペレット100重量部と黒色着色用カーボンブラック(ウィンテックポリマー(株)製,商品名「2020C」)5重量部とを用いて射出成形し、肉厚2mmの箱形試験体Bを作製した。この箱形試験体Bは、長さ80mm、幅40mm及び高さ20mmの長方体状であり、上端面が開口している。また、下端面には、レーザー溶着により封止した後、内圧を加えるための孔(φ10mm)をボール盤を用いて形成した。なお、試験体Bはレーザ光による発熱体として作用する。 [0088] 図1に示すように、箱形試験体B(4)の開口端部に試験片A(3)を重ねて接触させ、レーザ溶着機(ライスター社製)を用いて、レーザ発振器のヘッダ(1)からのレーザ光(2)の焦点を調整して、試験片Aと箱形試験体Bとの接触面に線幅1.5mmで集光させた。そして、試験片A(3)側から、波長940nmのレーザ光を走査速度10mm/秒の条件で照射して溶着し、箱形試験体Bの開口部が試験片A(3)で封止されたボックス状複合体を作製した。 [0089] (1)気密性(均一溶着性) レーザ溶着により得られた試験片Aと試験体Bとのボックス状複合体について、水中にて内圧0.02MPaを30秒間加え、接合部での気泡の発生の有無により気密性を評価した。 [0090] (2)光線透過率 試験片Aの各部位について、分光光度計[日本分光(株)製「V570」]を用いて波長940nmでの光透過率(%)を測定し、光透過率の最大値と最小値との差(変動幅、%)を算出した。 [0091] 実施例及び比較例の結果を表1に示す。 [0092][表1] [図:0001416519000003.jpg] 実施例では、レーザ光に対する試験片Aの光線透過率が均一であるとともに、均一に溶着でき、気密性が高い。これに対して、比較例では、光線透過率が部位によって大きく変動し、気密性が低い。」 イ 上記アの記載事項によれば、甲6には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂は、機械的特性や成形加工性などの種々の特性に優れるため、多くの用途に利用されている([0002])が、PBT系樹脂は、レーザ光の透過が低いため、炭化などを生じ、実質的に溶着できないことが指摘されている([0003])ことから、PBT系樹脂をベースとしながらも、均一溶着性が高く、均一に溶着可能なレーザ溶着用PBT系樹脂組成物およびその成形品を提供すること([0006])を課題とした発明が記載されており、実施例において、そのようなレーザー溶着用樹脂組成物を製造し、当該樹脂組成物を用いて、試験片A及びカーボンブラックを加えた箱型試験体Bを成形し、ボックス状複合体を得たことが示されている([0083]~[0092])。 そこで、甲6の実施例1に着目すると、次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。なお、各成分が[表1]において、重量比で記載されているため、各成分を甲6の請求の範囲の請求項6の記載に倣い「重量部」にて表記する。 「(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂100重量部、(B-1)エポキシ基含有ポリスチレン系熱可塑性エラストマーESBS[ダイセル化学工業(株)製「エポフレンドAT504」]20重量部、(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL-1225」)25重量部、(D-1)芳香族多価カルボン酸エステル[旭電化工業(株)製アデカサイザー UL-100]4重量部、(E-1)ガラス繊維[日東紡績(株)製「CS3J-948S」、平均繊維径φ11μm、平均繊維長400μm]65重量部を用いてペレットを作成し、ペレットを射出成形して試験片Aを成形し、また、試験片Aに対する被溶着体として、前記ペレット100重量部と黒色着色用カーボンブラック(ウィンテックポリマー(株)製,商品名「2020C」)5重量部とを用いて射出成形し、箱形試験体Bを作製し、箱形試験体Bの開口端部に試験片Aを重ねて接触させ、試験片A側からレーザ光を照射して溶着してなる、ボックス状複合体。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1のうち「(i)(B)ゴム強化ポリスチレン系樹脂15~65質量部と(C)ポリカーボネート樹脂10~60質量部」を含有する発明と甲6発明とを対比する。 甲6発明における「(A-1)ジメチルイソフタル酸(DMI)変性PBT樹脂」、「(C-1)ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトL-1225」)」、「(E-1)ガラス繊維[日東紡績(株)製「CS3J-948S」、平均繊維径φ11μm、平均繊維長400μm]」は、本件発明1の「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂」、「(C)ポリカーボネート樹脂」、「(E)ガラス繊維」にそれぞれ相当する。 また、甲6発明の各成分の量は、本件発明1と同じく、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、ポリカーボネート樹脂10~60質量部、ガラス繊維30~150質量部の範囲内である。 甲6発明における「試験片A」は、レーザ光が照射される側であるから、本件発明1の「透過側に用いられ」る「成形体」に相当する。 また、甲6発明における「箱形試験体B」は、黒色着色用カーボンブラック(ウィンテックポリマー(株)製,商品名「2020C」)を含み、「試験片A」と溶着される成形体であるから、本件発明1の「カーボンブラックを0.2~1質量%含有する相手材の樹脂成形品」と、「カーボンブラック」を「含有する相手材の樹脂成形品」である限りにおいて一致する。 甲1発明の「溶着してなる、ボックス状複合体」は、本件発明1の「ミリ波レーダー部材」と、「溶着体」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲6発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、 (i)(C)ポリカーボネート樹脂10~60質量部を含有し、 さらに、(E)ガラス繊維を30~150質量部含有する熱可塑性樹脂組成物を成形してなる、レーザー溶着の際、透過側に用いられる成形体と、 カーボンブラックを含有する相手材の樹脂成形品とがレーザー溶着により接合されている溶着体。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点6-1> 本件発明1は、「(B)ゴム強化ポリスチレン系樹脂」を含有するのに対し、甲6発明は、「(B-1)エポキシ基含有ポリスチレン系熱可塑性エラストマーESBS[ダイセル化学工業(株)製「エポフレンドAT504」]」である点 <相違点6-2> 本件発明1は、「(D)エポキシ化合物」を含有するのに対し、甲6発明は、エポキシ化合物を含有しない点 <相違点6-3> 透過側に用いられる成形体について、本件発明1は、「(条件)前記熱可塑性樹脂組成物を厚さ1.5mmに成形した場合の成形体の、波長1070nmにおける透過率が42%以上である。」という条件を満たすのに対し、甲6発明は、そのような特定がない点 <相違点6-4> 相手材の樹脂成形品について、本件発明1は、「カーボンブラックを0.2~1質量%含有する」のに対し、甲6発明は、「ペレット100重量部と黒色着色用カーボンブラック(ウィンテックポリマー(株)製,商品名「2020C」)5重量部とを用い」る点 <相違点6-5> 本件発明1は、「ミリ波レーダー部材」であるのに対し、甲6発明は、「溶着体」である点 イ 相違点について 事案に鑑み、相違点6-5について検討する。 甲6発明は、PBT系樹脂をベースとしながらも、均一溶着性が高く、均一に溶着可能なレーザ溶着用PBT系樹脂組成物を用いた成形品を提供することを課題とした発明であるところ([0006])、可塑剤を含まない比較例に比べて、実施例1(甲6発明)は、波長940nmの光線透過率の変動幅が少なく、均一溶着性に優れるものであり([0092][表1])、甲6には、成形品の用途としては、電気・電子部品、オフィスオートメーション(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、自動車機構部品などが例示されているにとどまる([0082])。 甲6には、甲6発明がミリ波レーダー部材に要求される誘電特性に優れることは記載されておらず、甲6の上記用途についての記載を考慮しても、誘電特性に優れることが要求されるミリ波レーダー部材という特定の用途に甲6発明が特に適したものであるという事情は見いだせない。そうすると、甲6の記載からは、甲6発明をミリ波レーダー部材に適用する動機付けに乏しい。 また、甲5には、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上である環状オレフィン樹脂及びガラス繊維を含む樹脂組成物が、誘電特性等に優れることから、ミリ波用レドームの材料に好適であることが記載され(請求項1、5、7、【0015】)、Tgが100℃以上である環状オレフィン樹脂を含まない比較例1に比べ、実施例1~6は誘電特性等に優れることが示されている(【0060】【表1】【表2】)。 そうすると、甲5の記載を考慮しても、上記比較例1と同様に、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むがTgが100℃以上である環状オレフィン樹脂を含まない甲1発明の用途を、ミリ波用レドーム(ミリ波レーダー部材)とすることが動機付けられるとはいえない。 さらに、甲3及び4には、レーザー溶接用のレーザー光透過性染料について記載されているものの(特許請求の範囲)、ミリ波レーダー部材についての記載はなく、甲1及び2にもミリ波レーダー部材についての記載はないことは上記1(2)イに説示したとおりであるから、甲1~4を考慮しても上記判断に影響しない。 そして、本件発明1は、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリカーボネート樹脂を配合することにより、低い比誘電率に加え、低反り性等とのバランスにも優れるという効果を奏するものである(【0109】【表2】)が、甲6には、上記においても示したとおり誘電性能に優れることは記載されておらず、さらに、ポリカーボネート樹脂を配合することによる反り量の低減について実施例において具体的に示されていないから、本件発明1の効果は、当業者が予測することができるものではない。 ウ 甲6の実施例4、6~7を主引例とした場合についても同様のことがいえる。 エ したがって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明、及び、甲1~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4は、甲6発明、及び、甲1~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人の主張について 特許異議申立書の45頁下から6行目~46頁12行目において、本件発明1と甲6発明との対比説明がなされているが、甲6発明をミリ波レーダー部材に適用することについては言及がない。 (5)小括 以上によれば、本件発明1~4は、甲6発明、及び、甲1~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人が主張する理由1(甲6を主引例とする進歩性)は、理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~4に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、その他に、請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700668

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  • 2025-700661異議申立 / 2026-04-30 / 訂正認容ポリプロピレンコーティング組成物
    共通の審決分類: 121・C08L

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