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特許異議申立

2019-700833

トウプリプレグ

審判番号
2019-700833
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-211345
登録番号
特許第6503683号(P6503683)
請求日
2019年10月21日
審決日
2021年01月15日
公報発行日
2021年05月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
  • 【権利者代理人】伏見 俊介
  • 【権利者代理人】大浪 一徳
  • 【異議申立人】東レ 株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 大島 祥吾
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 植前 充司
分類
P1652.113-YAA(C08J) / P1652.121-YAA(C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6503683号発明「トウプリプレグ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6503683号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-10]について訂正することを認める。 特許第6503683号の請求項1ないし4、6、9及び10に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6503683号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、平成26年10月16日(優先権主張 平成25年10月17日)の出願であって、平成31年4月5日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和1年10月21日に特許異議申立人 東レ株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4、6、9及び10)がされ、同年12月13日付けで取消理由が通知され、令和2年2月17日に特許権者 三菱ケミカル株式会社(以下、「特許権者」という。)より意見書の提出がされ、同年3月19日付けで審尋を行ったところ、同年4月6日に特許異議申立人より回答書の提出がされ、同年6月5日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年9月10日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)がされ、同年10月2日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に行ったところ、同年同月30日に特許異議申立人より意見書の提出があったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000~55,000Paの範囲であるトウプリプレグ。」とあるのを、 「粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000~55,000Paの範囲であり、 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)および成分(C)を含み、 該成分(C)の含有量が特定有機化合物成分100質量部に対して3~18質量部であり、 かつ成分(C)の一次粒子径が1~30μmであり、 前記成分(C)が強化繊維束中に存在し、 前記強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径は3~100μmである、 トウプリプレグ。 成分(A):エポキシ樹脂 成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂」に訂正する。 あわせて、請求項1の記載を直接的あるいは間接的に引用する、請求項2ないし10についても同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記強化繊維束が炭素繊維束である請求項1又は2に記載のトウプリプレグ。」とあるのを、 「前記強化繊維束が炭素繊維束であり、前記炭素繊維束を構成する前記フィラメントの繊維径が3~12μmである請求項1又は2に記載のトウプリプレグ。」に訂正する。 あわせて、請求項3の記載を直接的あるいは間接的に引用する、請求項4ないし10についても同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6に、 「前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含み、該成分(C)及び成分(D)の含有量の合計が特定有機化合物成分100質量部に対して3~30質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1~30μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。 成分(A):エポキシ樹脂 成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂 成分(D):粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤および粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤」とあるのを、 「前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(D)を含み、 前記成分(C)及び成分(D)の含有量の合計が特定有機化合物成分100質量部に対して3~30質量部である、 請求項1~4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。 成分(D):粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤および粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤」に訂正する。 あわせて、請求項6の記載を直接的あるいは間接的に引用する、請求項7ないし10についても同様に訂正する。 なお、本件訂正請求における請求項1ないし10に係る訂正は、一群の請求項[1-10]に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、並びに独立特許要件 (1) 訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、マトリックス樹脂組成物に関し、含有する成分、成分(C)の含有量及び一次粒子径、強化繊維束中に成分(C)が存在すること、強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)及び成分(C)を含」むこと、「成分(C)の一次粒子径が1~30μmであり」、「成分(A):エポキシ樹脂」、「成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂」であることは、訂正前の請求項6に記載され、「成分(C)が強化繊維層中に存在」することは、明細書の段落【0059】に記載され、「強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径は3~100μmである」ことは、明細書の段落【0020】に記載されている。また、「成分(C)の含有量が特定有機化合物成分100質量部に対して3~18質量部」であることは、明細書の段落【0127】の【表1】における実施例3、7、10ないし13における各成分の割合から算出される。 してみると、訂正事項1に係る請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項1の記載を直接的あるいは間接的に引用する、請求項2ないし10についても同様である。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項3の訂正は、炭素繊維束について、「前記炭素繊維束を構成する前記フィラメントの繊維径が3~12μm」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、炭素繊維束を構成する「フィラメントの繊維径が3~12μm」であることは、明細書の段落【0024】に記載されているから、訂正事項2に係る請求項3の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項3の記載を直接的あるいは間接的に引用する、請求項4ないし10についても同様である。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3に係る請求項6の訂正は、上記訂正事項1に係る訂正にともない、訂正後の請求項6の記載の整合を図るための訂正であるから、明瞭で内記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項6の記載を直接的あるいは間接的に引用する、請求項7ないし10についても同様である。 (4) 請求項5、7及び8に係る訂正における独立特許要件について 訂正前の請求項5、7及び8は特許異議の申し立てがなされていない請求項であり、請求項5、7及び8についての訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、請求項5、7及び8についての訂正が認められるためには、これらの請求項について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件を満たさなければならない。 そこで、訂正後の請求項5、7及び8に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。 訂正後の請求項5、7及び8は、訂正後の請求項1を引用するものであるところ、後述のとおり、訂正後の請求項1に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由に記載した理由によって取り消されるべきものではない。 そうすると、訂正後の請求項5、7及び8に係る発明は、訂正後の請求項1に係る発明をさらに限定するものであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由によって、独立して特許を受けることができないものであるということはできない。 また、他に、訂正後の請求項5、7及び8に係る発明が独立して特許を受けることができない理由も発見しない。 したがって、訂正後の請求項5、7及び8に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (5) まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-10]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものであるところ、本件特許の請求項1ないし4、6、9及び10に係る発明(以下、請求項の番号にあわせて「本件発明1」のようにいう。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000~55,000Paの範囲であり、 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)および成分(C)を含み、 該成分(C)の含有量が特定有機化合物成分100質量部に対して3~18質量部であり、 かつ成分(C)の一次粒子径が1~30μmであり、 前記成分(C)が強化繊維束中に存在し、 前記強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径は3~100μmである、 トウプリプレグ。 成分(A):エポキシ樹脂 成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂 【請求項2】 前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が5~300Pa・sである請求項1に記載のトウプリプレグ。 【請求項3】 前記強化繊維束が炭素繊維束であり、前記炭素繊維束を構成する前記フィラメントの繊維径が3~12μmである請求項1又は2に記載のトウプリプレグ。 【請求項4】 樹脂含有率が20~40質量%である請求項1~3のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。 【請求項6】 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(D)を含み、 前記成分(C)及び成分(D)の含有量の合計が特定有機化合物成分100質量部に対して3~30質量部である、 請求項1~4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。 成分(D):粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤および粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤 【請求項9】 更に、前記マトリックス樹脂組成物が下記成分(E)を含み、かつ該成分(E)の含有量が前記成分(A)100質量部に対して10~110質量部である、請求項5~8のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。 成分(E):ゴム粒子 【請求項10】 前記成分(E)がブタジエンゴムを含むゴム粒子である請求項9記載のトウプリプレグ。」 第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について 特許異議申立人が特許異議申立書において、請求項1ないし4、6、9及び10に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 申立理由1(新規性欠如) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由2(進歩性欠如) 本件特許の請求項1ないし4、6、9及び10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2011-157491号公報 甲第2号証:吉岡健一の実験成績証明書 甲第3号証:特開平11-130882号公報 甲第4号証:特開2007-217665号公報 甲第5号証:特開2011-190430号公報 なお、甲号証の記載は、特許異議申立書の記載に従った。 第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 訂正前の請求項1ないし4、6、9及び10に係る特許に対して、当審が令和2年6月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。(なお、異議申立理由はいずれも、取消理由に包含される。) 取消理由1(新規性欠如) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由2(進歩性欠如) 本件特許の請求項1ないし4、6、9及び10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 以下に検討するとおり、上記取消理由1及び2には理由がないと判断する。 1 主な甲号証の記載事項等 (1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には次の事項が記載されている。(下線は合議体が付したものである。) 「【請求項1】 少なくとも次の構成要素[A]~[F]を含み、25℃における粘度が60Pa・s以下であるエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂組成物を135℃の温度で2時間硬化した硬化物の破壊靭性(KIc)が1MPa・m0.5以上であることを特徴とするトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物。 [A]1分子中に1個以上の芳香環またはシクロヘキサン環と3~4個のエポキシ基を有し、25℃における粘度が5Pa・s以下であるエポキシ樹脂 [B]1分子中に2個のエポキシ基を有し、25℃における粘度が70Pa・s以下であるエポキシ樹脂 [C]エポキシ当量が350~700g/eqの範囲であり、25℃において固形であるビスフェノールF型エポキシ樹脂 [D]ジシアンジアミド [E]硬化促進剤 [F]コア成分が少なくともスチレンとブタジエンが含まれる共重合体であるコアシェルポリマー」 「【請求項8】 請求項1~7のいずれかに記載のトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物が、1,000~70,000フィラメントからなる強化繊維束に含浸されてなるトウプリプレグ。 【請求項9】 強化繊維が、炭素繊維である、請求項8に記載のトウプリプレグ。」 「【請求項11】 強化繊維の体積含有率が50~75%である、請求項8~10のいずれかに記載のトウプリプレグ。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、特に、繊維強化複合材料で構成された中空の管状物の製造に好適に用いられるトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物に関するものである。より詳しくは、ボビンからの解舒性や工程通過性に優れ、非常に高い破壊靭性を有する繊維強化複合材料を得ることができる、トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物、ならびにそのようなエポキシ樹脂組成物を用いたトウプリプレグおよび繊維強化複合材料に関するものである。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0014】 本発明は、かかる従来の背景に鑑み、自己接着性が極めて少ないことからボビンからの解舒性および工程通過性に優れ、適正なドレープ性を備え、非常に高い破壊靭性を有する繊維強化複合材料を製造可能なトウプリプレグおよび該トウプリプレグを製造可能なトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。」 「【0033】 ジシアンジアミドは粒子状の硬化剤であり、25℃での温度下ではエポキシ樹脂成分に溶解せず、粒子状のままエポキシ樹脂成分に散した状態となるため、各エポキシ樹脂成分中のエポキシ基と接触する面積が小さくなることから反応性をほとんど示さず、通常180℃以上まで加熱するとエポキシ樹脂に溶解し、エポキシ基と反応する特徴を有する。」 「【0044】 本発明において、構成要素[F]の配合量は、全エポキシ樹脂成分100質量部中に、0.5~15質量部配合されることが好ましく、1~10質量部であればさらに好ましい。配合量が0.5質量部以上であれば、成形後の繊維強化複合材料に必要とされる破壊靭性が得られやすく、さらに、配合量が15質量部以下であれば、得られるトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなることを抑え、強化繊維に無理なく含浸できるため、トウプリプレグ用により適したものとなる。」 「【0074】 <トウプリプレグの作製> 各実施例および比較例で得られたトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物を以下の方法によるホットメルト法により、強化繊維束に含浸し、トウプリプレグとした。 【0075】 具体的には、強化繊維を送り出すクリール、強化繊維束を開繊する拡幅バー、プレヒーター、エポキシ樹脂組成物を含浸する溝付きキスロール、絞り(含浸)ロール、引取ロールおよび巻取り用ワインダーを備えたトウプリプレグ製造装置に強化繊維束を通し、糸道を作る。該エポキシ樹脂組成物は、別途、熱風オーブンで30℃の温度に調整し、ダイヤフラム式のチューブポンプにて溝付きキスロールに供給される。キスロール部には掻き取りブレードが設置されており、キスロールとブレードのキャップを調整することで得られるトウプリプレグのVf(強化繊維の体積含有率)を調整する。ボビンから送り出された強化繊維束は、140℃の温度に調整されたプレヒーターを通り加温された後、該エポキシ樹脂組成物が供給されたキスロールの溝部分を通過することで、該エポキシ樹脂組成物が供給される。次いで、80℃の温度の温風が当てられた絞りロールを通過することで該エポキシ樹脂組成物が強化繊維束内部まで含浸される。最後に引取ロールを通った後、ワインダーにて巻き取ることで、トウプリプレグのボビンとした。 【0076】 なお、トウプリプレグを作製する際のライン速度は10m/分、巻取ライン張力は3200kgfとした。」 「【0078】 ・・・ <実施例1> [成分構成]以下の構成の組成物とした。 構成要素[A]:TETRAD-X、7部 「成分」N,N’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ビス[ビス(オキシラン-2-イルメチル)アミン] 「25℃における粘度」2Pa・s 「メーカー」三井ガス化学(株) 構成要素[B]:“jER(登録商標)”806、67部 「成分」液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂 「25℃における粘度」2Pa・s 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[C]:YDF-2001、5部 「成分」固形ビスフェノールF型エポキシ樹脂 「エポキシ当量」450~500g/eq 「ガラス転移温度」55℃ 「メーカー」東都化成(株) 構成要素[D]:“jERキュア(登録商標)”DICY7、5部 「成分」ジシアンジアミド 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[E]:DCMU99、4部 「成分」3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素 「メーカー」保土谷化学工業(株) 構成要素[F]:“カネエース(登録商標)”MX-125、28部(内、コアシェルポリポリマー7部) 「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(75質量%、構成要素[B]に対応)、コアシェルポリマー(コア:スチレンとブタジエンの共重合体、体積平均粒子径:100nm) 「メーカー」(株)カネカ。 【0079】 [樹脂調製] TETRAD-Xを28g、“jER(登録商標)”806を228g、YDF-2001を20gおよび“カネエース(登録商標)”MX-125を112g、卓上型ニーダーに投入後、80℃の温度まで加熱し、1時間かけて攪拌混練を行った。YDF-2001の形状がなく、均一に溶解していることを確認後、30℃の温度まで冷却し、別途、3本ロールにて“jERキュア(登録商標)”DICY7と“jER(登録商標)”806が重量比で1対2となるように混練したマスターバッチ60gを投入し、30分間攪拌混練した。最後に、30℃の温度でDCMU99を16g投入し、30分間攪拌混練した後、卓上型ニーダーから取り出し、トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物とした。 【0080】 [樹脂組成物の特性] 得られたトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物の25℃の温度における粘度を前記した方法に測定した結果20Pa・sであり、トウプリプレグ用に適したものであった。 【0081】 また、前記した方法により樹脂硬化物を作製し、破壊靭性KIcおよびガラス転移温度を測定した結果、KIcは1.6MPa/m0.5、ガラス転移温度は123℃と高い値であった。 【0082】 [トウプリプレグの作製] 強化繊維束として“トレカ(登録商標)”T700SC-12K(東レ(株)製、引張強度4900MPa、引張弾性率230GPa、フィラメント数12,000本、繊度800tex、密度1.8g/cm3)を用い、前記方法にてトウプリプレグを作製した。」 「【0085】 <実施例2> [成分構成]以下の構成の組成物とした。 構成要素[A]:TETRAD-X、7部 「成分」N,N’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ビス[ビス(オキシラン-2-イルメチル)アミン] 「25℃における粘度」2Pa・s 「メーカー」三井ガス化学(株) 構成要素[B]:“jER(登録商標)”825、71部 「成分」液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂 「25℃における粘度」5.6Pa・s 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[C]:YDF-2001、10部 「成分」固形ビスフェノールF型エポキシ樹脂 「エポキシ当量」450~500g/eq 「ガラス転移温度」55℃ 「メーカー」東都化成(株) 構成要素[D]:“jERキュア(登録商標)”DICY7、4.7部 「成分」ジシアンジアミド 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[E]:“キュアゾール(登録商標)”1B2MZ、0.5部 「成分」2-メチル-1-(フェニルメチル)-1H-イミダゾール 「メーカー」四国化成工業(株) 構成要素[F]:“カネエース(登録商標)”MX-125、16部(内、コアシェルポリポリマー4部) 「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(75質量%、構成要素[B]に対応)、コアシェルポリマー(コア:スチレンとブタジエンの共重合体、体積平均粒子径:100nm) 「メーカー」(株)カネカ。 【0086】 [樹脂調製] TETRAD-Xを28g、“jER(登録商標)”825を246.4g、YDF-2001を40gおよび“カネエース(登録商標)”MX-125を64g、卓上型ニーダーに投入後、80℃の温度まで加熱し、1時間かけて攪拌混練を行った。YDF-2001の形状がなく、均一に溶解していることを確認後、30℃の温度まで冷却し、別途、3本ロールにて“jERキュア(登録商標)”DICY7と“jER(登録商標)”825が重量比で1対2となるように混練したマスターバッチ56.4gを投入し、30分間攪拌混練した。最後に、30℃の温度で“キュアゾール(登録商標)”1B2MZを2g投入し、30分間攪拌混練した後、卓上型ニーダーから取り出し、トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物とした。 【0087】 [樹脂組成物の特性] 得られたトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物の25℃の温度における粘度を実施例1と同様に測定した結果27Pa・sであり、トウプリプレグ用に適したものであった。 【0088】 また、実施例1と同様に樹脂硬化物を作製し、破壊靭性KIcおよびガラス転移温度を測定した結果、KIcは1.7MPa/m0.5、ガラス転移温度は120℃と高い値であった。 【0089】 [トウプリプレグの作製] 強化繊維束として“トレカ(登録商標)”T700SC-24K(東レ(株)製、引張強度4900MPa、引張弾性率230GPa、フィラメント数24,000本、繊度1650tex、密度1.8g/cm3)を用い、実施例1と同様の方法にてトウプリプレグを作製した。」 「【0141】 【表1】 」 (2)甲第1号証に記載された発明 実施例1、2の記載から、甲第1号証には以下の発明がそれぞれ記載されていると認める。 「樹脂組成物として、 構成要素[A]:TETRAD-X、7部 「成分」N,N’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ビス[ビス(オキシラン-2-イルメチル)アミン] 「25℃における粘度」2Pa・s 「メーカー」三井ガス化学(株) 構成要素[B]:“jER(登録商標)”806、67部 「成分」液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂 「25℃における粘度」2Pa・s 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[C]:YDF-2001、5部 「成分」固形ビスフェノールF型エポキシ樹脂 「エポキシ当量」450~500g/eq 「ガラス転移温度」55℃ 「メーカー」東都化成(株) 構成要素[D]:“jERキュア(登録商標)”DICY7、5部 「成分」ジシアンジアミド 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[E]:DCMU99、4部 「成分」3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素 「メーカー」保土谷化学工業(株) 構成要素[F]:“カネエース(登録商標)”MX-125、28部(内、コアシェルポリポリマー7部) 「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(75質量%、構成要素[B]に対応)、コアシェルポリマー(コア:スチレンとブタジエンの共重合体、体積平均粒子径:100nm) 「メーカー」(株)カネカ を構成要素とし、 TETRAD-Xを28g、“jER(登録商標)”806を228g、YDF-2001を20gおよび“カネエース(登録商標)”MX-125を112g、卓上型ニーダーに投入後、80℃の温度まで加熱し、1時間かけて攪拌混練を行った。YDF-2001の形状がなく、均一に溶解していることを確認後、30℃の温度まで冷却し、別途、3本ロールにて“jERキュア(登録商標)”DICY7と“jER(登録商標)”806が重量比で1対2となるように混練したマスターバッチ60gを投入し、30分間攪拌混練し、最後に、30℃の温度でDCMU99を16g投入し、30分間攪拌混練した後、卓上型ニーダーから取り出し、トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物とし、 強化繊維束として“トレカ(登録商標)”T700SC-12K(東レ(株)製、引張強度4900MPa、引張弾性率230GPa、フィラメント数12,000本、繊度800tex、密度1.8g/cm3)に前記トウプリプレグ用エポキシ組成物を含浸することで作製された、トウプリプレグ。」(以下、「甲1実施例1発明」という。) 「樹脂組成物として、 構成要素[A]:TETRAD-X、7部 「成分」N,N’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ビス[ビス(オキシラン-2-イルメチル)アミン] 「25℃における粘度」2Pa・s 「メーカー」三井ガス化学(株) 構成要素[B]:“jER(登録商標)”825、71部 「成分」液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂 「25℃における粘度」5.6Pa・s 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[C]:YDF-2001、10部 「成分」固形ビスフェノールF型エポキシ樹脂 「エポキシ当量」450~500g/eq 「ガラス転移温度」55℃ 「メーカー」東都化成(株) 構成要素[D]:“jERキュア(登録商標)”DICY7、4.7部 「成分」ジシアンジアミド 「メーカー」ジャパンエポキシレジン(株) 構成要素[E]:“キュアゾール(登録商標)”1B2MZ、0.5部 「成分」2-メチル-1-(フェニルメチル)-1H-イミダゾール 「メーカー」四国化成工業(株) 構成要素[F]:“カネエース(登録商標)”MX-125、16部(内、コアシェルポリポリマー4部) 「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(75質量%、構成要素[B]に対応)、コアシェルポリマー(コア:スチレンとブタジエンの共重合体、体積平均粒子径:100nm) 「メーカー」(株)カネカ。 を構成要素とし、 TETRAD-Xを28g、“jER(登録商標)”825を246.4g、YDF-2001を40gおよび“カネエース(登録商標)”MX-125を64g、卓上型ニーダーに投入後、80℃の温度まで加熱し、1時間かけて攪拌混練を行った。YDF-2001の形状がなく、均一に溶解していることを確認後、30℃の温度まで冷却し、別途、3本ロールにて“jERキュア(登録商標)”DICY7と“jER(登録商標)”825が重量比で1対2となるように混練したマスターバッチ56.4gを投入し、30分間攪拌混練した。最後に、30℃の温度で“キュアゾール(登録商標)”1B2MZを2g投入し、30分間攪拌混練した後、卓上型ニーダーから取り出し、トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物とし、 強化繊維束として“トレカ(登録商標)”T700SC-24K(東レ(株)製、引張強度4900MPa、引張弾性率230GPa、フィラメント数24,000本、繊度1650tex、密度1.8g/cm3)に前記トウプリプレグ用エポキシ組成物を含浸することで作製された、トウプリプレグ。」(以下、「甲1実施例2発明」という。また、「甲1実施例1発明」と「甲1実施例2発明」を総称し、「甲1発明」という。) (3) 甲第2号証の記載事項 「 」 「 」 2 対比・判断 (1)本件発明1と甲第1号証に記載された発明との対比・判断 ア 本件発明1と甲1実施例1発明との対比・判断 本件発明1と甲1実施例1発明とを対比する。 甲1実施例1発明のトウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物に含まれる「ジシアンアミド」は、甲第1号証の【0033】の記載によると、粒子状である。すると、甲1実施例1発明の「トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物」は、本件発明1の「粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物」に相当する。 したがって、両者は、 「粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)を含む トウプリプレグ。 成分(A):エポキシ樹脂」 で一致するものの、次の点で相違している。 ・相違点1 本件発明1のトウプリプレグは、「タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000~55,000Paの範囲」であるのに対し、甲1実施例1発明では、そのような特定がない点。 ・相違点2 本件発明1のトウプリプレグは、マトリックス樹脂組成物に「成分(C)を含み、該成分(C)の含有量が特定有機化合物成分100質量部に対して3~18質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1~30μmであり、前記成分(C)が強化繊維束中に存在」するものであって、成分(C)は「粒子状の熱可塑性樹脂」であるのに対して、甲1実施例1発明では、そのような特定がない点。 ・相違点3 強化繊維束に関し、本件発明1は、「フィラメントの繊維径は3~100μmである」のに対し、甲1実施例1発明では、そのような特定がない点。 事案に鑑み、まず相違点2について検討する。 甲第1号証には、粒子状の熱可塑性樹脂を強化繊維束中に存在させることについての記載はなく、また、他の甲号証の記載を見ても、粒子状の熱可塑性樹脂を強化繊維束中に存在させることを示唆する記載もない。 そして、本件発明1は、相違点2に係る特定事項を満たすことにより、「単繊維同士が密に充填することを防」ぎ、「これにより強化繊維束中の空隙の体積を大きくし」、「トウプリプレグ表層に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことにより、トウプリプレグのタックを低減する」(段落【0059】)との格別顕著な効果を奏するものである。 してみれば、相違点1、3については検討するまでもなく、本件発明1は甲1実施例1発明ではないし、甲1実施例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明1と甲1実施例2発明との対比・判断 本件発明1と甲1実施例2発明とを対比すると、上記アと同様に、両者は、 「粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)を含む トウプリプレグ。 成分(A):エポキシ樹脂」 で一致するものの、上記アの相違点1ないし3と同じ点で相違するものであり、上記アの検討と同様に、本件発明1は甲1実施例2発明ではないし、甲1実施例2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2) 本件発明2ないし4、6、9及び10と甲1発明との対比・判断 本件発明2ないし4、6、9及び10はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。 そして、上記(1)のとおり、本件発明1は、甲1発明と同一ではないから、本件発明2ないし4も、甲1発明と同一ではない。 また、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2ないし4、6、9及び10も同様に、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 意見書における特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、本件発明1における「前記成分(C)が強化繊維束中に存在し」との要件のみでは、成分(C)が強化繊維束中でどのように存在するかが不明である旨主張する。 しかし、本件発明1の記載自体は明確であるし、本件特許の明細書の段落【0059】の、 「成分(C)を強化繊維束中に含むことで、単繊維同士が密に充填することを防ぐ効果が得られる。これにより強化繊維束中の空隙の体積を大きくして、強化繊維束中により多くのマトリックス樹脂組成物を含有可能となり、十分にマトリックス樹脂組成物が含浸していればトウプリプレグ表層に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことができる。トウプリプレグ表層に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことにより、トウプリプレグのタックを低減することができる。」 の記載を参酌すれば、その技術的意味も当業者において明らかである。 よって、特許異議申立人の主張は採用しない。 第7 結論 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし4、6、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし4、6、9及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700833

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