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特許異議申立

2024-700626

積層体、樹脂フィルム、及び積層体の製造方法

審判番号
2024-700626
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-108689
登録番号
7424601
請求日
2024年07月04日
審決日
2025年05月09日
公報発行日
2025年08月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】APC株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人サトー
  • 【異議申立人】筒井 雅人
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 長清 吉範
  • 審判官 金丸 治之
分類
P1652.113-YAA(B32B) / P1652.121-YAA(B32B) / P1652.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7424601号発明「積層体、樹脂フィルム、及び積層体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7424601号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。 特許第7424601号の請求項3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7424601号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和元年6月11日の出願であって、令和6年1月22日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月30日に特許掲載公報が発行された。 本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。 令和6年 7月 4日 :特許異議申立人筒井雅人(以下「申立人」という。)による請求項3に係る特許に対する本件特許異議の申立て 令和6年11月 5日付け:取消理由通知書 令和6年12月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 2月18日 :令和6年12月25日に提出した訂正請求書に対する手続補正書の提出(以下、この手続補正書によって補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和7年 3月31日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7424601号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項3に記載された 「フッ素樹脂層を有してフィルム状に形成され、」を、 「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成するための樹脂フィルムであって、 フッ素樹脂層を有してフィルム状に形成され、」に訂正する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項3に記載された 「前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている、」を、 「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面に真空プラズマ処理を施すことにより、前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている、」に訂正する。 2 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項3で規定する樹脂フィルムについて、「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成するため」の樹脂フィルムとしたものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1が、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるか否かについて検討すると、訂正事項1は、【0007】及び【0008】の記載に基づくものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)を特定するにあたっての前提として、「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面に真空プラズマ処理を施す」という点を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるか否かについて検討すると、訂正事項2は、【0018】の記載に基づくものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~4に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本件特許の請求項3に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項3】 表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成するための樹脂フィルムであって、 フッ素樹脂層を有してフィルム状に形成され、前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面に真空プラズマ処理を施すことにより、前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている、 樹脂フィルム。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 本件訂正前の請求項3に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件特許の【0006】の記載から明らかなとおり、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は「耐熱性高分子樹脂層と金属箔との間を接着剤なしで接合可能とし、高周波用途に使用する場合の信号伝送損失を小さく抑えることができる積層体及びその製造方法を提供する」ことであるところ、発明の詳細な説明を参酌すると、「フィルム状に成形されたフッ素樹脂層と、前記フッ素樹脂層の接合面に接着剤を用いずに直接接合された金属箔とを含んで構成される積層体であ」ること、「前記金属箔の接合面は、表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面であ」ること、「前記フッ素樹脂層の接合面は、真空プラズマ処理が施された真空プラズマ処理面とされて」いること、かつ、「真空プラズマ処理後の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている」ことにより、上記発明が解決しようとする課題を解決できるものであることが明らかである。 一方、本件特許の請求項3に係る発明は、「前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている」ことについて規定しているものの、当該「炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)」が、「真空プラズマ処理後の表面」のものであることを規定しておらず、さらに「フィルム状に成形されたフッ素樹脂層と、前記フッ素樹脂層の接合面に接着剤を用いずに直接接合された金属箔とを含んで構成される積層体であ」ること、「前記金属箔の接合面は、表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面であ」ること、「前記フッ素樹脂層の接合面は、真空プラズマ処理が施された真空プラズマ処理面とされて」いることについても規定していないものであり、したがって、本件特許の請求項3に係る発明は、上記発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められない。 2 取消理由2(新規性) 本件の請求項3に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 3 取消理由3(進歩性) 本件の請求項3に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用文献等一覧> 甲第1号証:国際公開第2018/212285号(申立人の提示した甲第1号証) (以下、甲第1号証を、「甲1」という。) 第5 当審の判断 以下に示すとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。 1 甲1の記載及び引用発明について (1)甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。下線は当審で付した。 「[0005] プリント基板においては、例えばフッ素樹脂を含む層における金属箔とは反対側に、熱プレスによってプリプレグ等の積層対象物を積層することがある。融点が260~320℃のフッ素樹脂を用いれば優れた耐熱性が得られる。しかし、260~320℃という高融点のフッ素樹脂を用いる場合、通常はプリプレグ等の硬化物の耐熱温度がフッ素樹脂の融点よりも低い。そのため、熱プレスはフッ素樹脂の融点よりも低い耐熱温度に近い温度で行う必要があり、フッ素樹脂が充分に溶融せず、充分な密着性が得られにくい。 [0006] 本発明は、耐熱性に優れ、プリプレグ等の積層対象物と熱プレスにより積層した際に積層対象物との層間密着性に優れた、フッ素樹脂フィルムおよびフッ素樹脂層を有する積層体の提供を目的とする。また、該フッ素樹脂フィルムおよび該積層体を用いた熱プレス積層体の製造方法、ならびにプリント基板の製造方法の提供を目的とする。」 「[0115] 層Bとして銅箔層を有する積層体は、基材として銅箔を使用し、銅箔の片面に液状組成物を塗布して液状組成物の膜を形成し、次いで加熱乾燥により液状媒体を除去し、引き続き加熱して樹脂パウダーを溶融し、その後冷却して未溶融粒子のない均一な樹脂層である層Aを形成して製造することができる。前記のように銅箔の両面に樹脂層を形成することもできる。」 「[0156](12)フッ素樹脂フィルムの表面組成比の評価 表面をXPS(X線光電子分光法)で分析して測定した。 装置:ulvac-φ 社製Quantera-SXM、 ビーム径:100μmφ、 測定領域:100×100μm2(エリア分析)、 検出角:45°。 <高分解能スペクトル取得条件> パスエネルギー:224eV、 エネルギーステップ:0.4eV(定量モード)。」 「[0158] [製造例1] TFE(テトラフルオロエチレン)、NAH(無水ハイミック酸)およびPPVE(CF2=CFO(CF2)3F)を用いて、国際公開第2016/017801号の[0123]に記載の手順で含フッ素重合体X-1を製造した。 含フッ素重合体X-1の共重合組成は、NAHに由来する単位/TFEに由来する単位/PPVEに由来する単位=0.1/97.9/2.0(モル%)であった。含フッ素重合体X-1は、融点が300℃であり、比誘電率(1MHz)が2.1であり、溶融流れ温度が17.6g/10分であり、300℃における溶融粘度が103Pa・sであり、平均粒径が1554μmであった。 [0159] 次いで、ジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力0.5MPa、処理速度1kg/hrの条件で、含フッ素重合体X-1を粉砕して樹脂パウダー(P-1)を得た。樹脂パウダー(P-1)のD50は2.58μmであり、D90は7.1μmであった。樹脂パウダー(P-1)の疎充填嵩密度は0.278g/mLであり、密充填嵩密度は0.328g/mLであった。 [0160][実施例1] 樹脂パウダー(P-1)120g、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント710FL)12g、およびメチルエチルケトン234gを横型ボールミルポットに投入し、15mm径のジルコニアボールにて分散を行い、分散液(C-1)を得た。分散液(C-1)を厚み12μmの銅箔上(福田金属箔粉工業社製、CF-T4X-SV)に塗布し、窒素雰囲気下において100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで厚み5μmの層(A-1)を有する片面銅張積層体を得た。 得られた片面銅張積層体の層(A-1)の表面をプラズマ処理した。プラズマ処理装置としてはNORDSON MARCH社のAP-1000を用いた。プラズマ処理条件としては、AP-1000のRF出力を300W、電極間ギャップを2インチ、導入ガスの種類をアルゴン(Ar)、導入ガス流量を50cm3/分、圧力を13Pa、処理時間を1分とした。プラズマ処理後の層(A-1)の表面の算術平均粗さRaは2.5μmであった。また、Ra(AFM)は14.5nm、Rz(AFM)は195nmであった。片面銅張積層体の層(A-1)のプラズマ処理した表面の濡れ張力は54mN/mであった。また、プラズマ処理前の層(A-1)の表面の濡れ張力は22.6mN/m以下であった。 なお、プラズマ処理後の片面銅張積層体の銅箔を塩酸処理して除去して、そのまま層(A-1)からなる単独フィルムが得られることを確認した。 表面処理を実施してから72時間以内の片面銅箔積層体の層(A-1)側に、プリプレグとしてFR-4シリーズ(日立化成社製、強化繊維:ガラス繊維、マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、品名:GEA-67N 0.2t(HAN)、厚み:0.2mm、硬化温度185℃未満)を重ね、プレス温度185℃、プレス圧力3.0MPa、プレス時間60分の条件で真空熱プレスを行って熱プレス積層体を得た。比誘電率(20GHz)は4.32であり、誘電正接(20GHz)は0.01568であった。なお、層(A-1)を有しない場合(銅箔とプリプレグが直接接する場合、以下同様)、比誘電率(20GHz)は4.56であり、誘電正接(20GHz)は0.01574であった。 なお、今回はプラズマ処理実施後72時間以内にプリプレグと積層したが、プラズマ処理の効果は1年継続する。 [0161][実施例2~6] プラズマ処理条件を表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にして片面銅張積層体を作製し、該片面銅張積層体を用いる以外は実施例1と同様にして熱プレス積層体を得た。」 「[0188][実施例23] 真空プラズマ処理のガス種を水素70容量%と窒素30容量%の混合ガスとした以外は実施例1と同様にして片面銅張積層板を作製し、熱プレス積層板を得た。剥離強度は、11.3N/10mmであった。 [0189][実施例24] 真空プラズマ処理のガス種を水素35容量%、窒素15容量%、アルゴン50容量%の混合ガス(酸素濃度は1ppm以下)とした以外は実施例1と同様にして片面銅張積層体を作製し、熱プレス積層板を得た。剥離強度は、10.9N/10mmであった。 [0190][実施例25] 真空プラズマ処理のガス種を水素50容量%、アルゴン50容量%の混合ガス(酸素濃度は1ppm以下)とした以外は実施例1と同様にして片面銅張積層体を作製し、熱プレス積層板を得た。元素量は炭素34.5%、酸素1.3%、フッ素64.2%であった。 [0191][実施例26] 樹脂パウダー(P-1)を市販のPFAであるP-63B(旭硝子社製、融点310℃)に代えた以外は実施例1と同様にして熱プレス積層体を得た。」 「[0193] 実施例2、5、6、23、24、25、26および比較例1、7における、層(A-1)(フッ素樹脂フィルム)のプラズマ処理面の元素分析結果、および、濡れ張力、水接触角、剥離強度の測定結果を表2に示す。 [0194][表2] [図:0001425742000001.jpg] 」 (2)甲1に記載されていると認められる事項 ア 上記[0158]~[0159]の記載より「樹脂パウダー(P-1)」はフッ素樹脂を含有していることが明らかであり、[0160]の記載より「層(A-1)」は「フッ素樹脂層」であることが明らかである。 イ 上記[0160]の記載、上記[0193]の「層(A-1)(フッ素樹脂フィルム)」という記載及び、上記[0160]の「層(A-1)からなる単独フィルム」という記載より、「層(A-1)」は「フッ素樹脂フィルム」であることは明らかである。 ウ 上記[0191]に記載された「市販のPFA」は、フッ素樹脂であることが明らかであるから、「実施例1と同様にして」得た「層(A-1)」は、「フッ素樹脂フィルム」を構成していることは明らかである。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)より、甲1には、特に[0160]~[0161]、[0188]~[0189]、「0191」及び[0193]~[0194]に記載の実施例2、5、6、23、24及び26に着目すると、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「銅箔に樹脂パウダー(P-1)を含む分散液(C-1)を塗布し、窒素雰囲気下において100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで得た片面銅張積層体の厚み5μmの層(A-1)であるフッ素樹脂フィルムであって、 層(A-1)はフッ素樹脂層でありフィルム状に形成され、前記片面銅張積層体の層(A-1)の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成(C:O)(%)が、41.2:5.3、42.9:5.5、46.6:6.2、55.4:7.1、50.4:6.5、37.3:3.4となっている、 フッ素樹脂フィルム。」 2 取消理由1(サポート要件)について 本件訂正により、本件特許の請求項3において、「炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)」が、「真空プラズマ処理後の表面」のものであり、さらに「フィルム状に成形されたフッ素樹脂層と、前記フッ素樹脂層の接合面に接着剤を用いずに直接接合された金属箔とを含んで構成される積層体であ」ること、「前記金属箔の接合面は、表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面であ」ること、「前記フッ素樹脂層の接合面は、真空プラズマ処理が施された真空プラズマ処理面とされて」いることについて規定されたことより、取消理由通知で指摘した取消理由1(サポート要件)については解消した。 3 取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について (1)対比 本件特許の請求項3に係る発明(以下「本件発明」という。)と引用発明を対比する。 引用発明の「層(A-1)であるフッ素樹脂フィルム」、「層(A-1)」及び「フッ素樹脂フィルム」は、本件発明の「樹脂フィルム」に相当する。 引用発明の「銅箔」及び「片面銅張積層体」は、本件発明の「金属箔」及び「積層体」に相当するから、引用発明の「銅箔に樹脂パウダー(P-1)を含む分散液(C-1)を塗布し、窒素雰囲気下において100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで得た片面銅張積層体の厚み5μmの層(A-1)であるフッ素樹脂フィルム」は、本件発明の「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成するための樹脂フィルム」と、「金属箔とともに積層体を構成するための樹脂フィルム」である限りにおいて一致する。 引用発明の「層(A-1)はフッ素樹脂層でありフィルム状に形成され」ることは、本件発明の「フッ素樹脂層を有してフィルム状に形成され」ることに相当する。 引用発明の「前記片面銅張積層体の層(A-1)の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成(C:O)(%)が、41.2:5.3、42.9:5.5、46.6:6.2、55.4:7.1、50.4:6.5、37.3:3.4となっている」ことは、本件発明の「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面に真空プラズマ処理を施すことにより、前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている」ことと、「前記フッ素樹脂層の表面に炭素原子、酸素原子を含む」限りにおいて一致する。 以上より、本件発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「金属箔とともに積層体を構成するための樹脂フィルムであって、 フッ素樹脂層を有してフィルム状に形成され、前記フッ素樹脂層の表面に炭素原子、酸素原子を含む、 樹脂フィルム。」 <相違点1> 金属箔とともに積層体を構成するための樹脂フィルムについて、本件発明が「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合され」得るものであるのに対し、引用発明では「銅箔に樹脂パウダー(P-1)を含む分散液(C-1)を塗布し、窒素雰囲気下において100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで得」るものである点。 <相違点2> フッ素樹脂層の表面に含む、炭素原子及び酸素原子について、本件発明が「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面に真空プラズマ処理を施すことにより、前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている」のに対し、引用発明では、「前記片面銅張積層体の層(A-1)の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成(C:O)(%)が、41.2:5.3、42.9:5.5、46.6:6.2、55.4:7.1、50.4:6.5、37.3:3.4となっている」ものである点。 (2)判断 事案に鑑み<相違点2>より検討する。 <相違点2>について <相違点2>は実質的な相違点であり、本件発明は引用発明ではない。 引用発明の「炭素原子、酸素原子の原子数の組成(C:O)(%)が、41.2:5.3、42.9:5.5、46.6:6.2、55.4:7.1、50.4:6.5、37.3:3.4となっている」ものであることについては、「前記片面銅張積層体の層(A-1)の表面」の状態を規定するものであり、本件発明のように「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面」の状態を規定するものではない。ここで本件発明の発明の解決しようとする課題が「耐熱性高分子樹脂層と金属箔との間を接着剤なしで接合可能とし、高周波用途に使用する場合の信号伝送損失を小さく抑えることができる積層体及びその製造方法を提供する」ことであるところ、甲1が、「プリント基板においては、例えばフッ素樹脂を含む層における金属箔とは反対側に、熱プレスによってプリプレグ等の積層対象物を積層することがある」([0005])ことを前提として、発明が解決しようとする課題が「本発明は、耐熱性に優れ、プリプレグ等の積層対象物と熱プレスにより積層した際に積層対象物との層間密着性に優れた、フッ素樹脂フィルムおよびフッ素樹脂層を有する積層体の提供を目的とする。」ことであること、さらに「層(A-1)」と「銅箔」との積層に関し、「層Bとして銅箔層を有する積層体は、基材として銅箔を使用し、銅箔の片面に液状組成物を塗布して液状組成物の膜を形成し、次いで加熱乾燥により液状媒体を除去し、引き続き加熱して樹脂パウダーを溶融し、その後冷却して未溶融粒子のない均一な樹脂層である層Aを形成して製造することができる。」([0115])という記載、及び引用発明の「銅箔に樹脂パウダー(P-1)を含む分散液(C-1)を塗布し、窒素雰囲気下において100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで得た片面銅張積層体の厚み5μmの層(A-1)であるフッ素樹脂フィルム」という構成を踏まえると、引用発明において、「片面銅張積層体」の「層(A-1)」と「銅箔」との接合面について検討する動機付けは存在しないから、引用発明において、「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面」の「前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)」を規定することは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 申立人は意見書にて、「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成するための樹脂フィルム、であること」が「特徴1」であると整理した上で「本件特許発明3は、「樹脂フィルム」の発明であるところ、上記特徴1は、樹脂フィルムをどのように使うかといった主観的な規定で あり、樹脂フィルム自体を客観的に特定するものではない。よって、上記特徴1は、本件特許発明3の「樹脂フィルム」を何ら特定するものではない。」と主張する。 しかしながら、「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成する」ことは、本件特許発明3の「樹脂フィルム」において当該使用が妥当な、または当該使用が可能な構成を有するものであることを特定するものといえる。そして、「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面に真空プラズマ処理を施すことにより、前記フッ素樹脂層の表面の炭素原子、酸素原子の原子数の組成比の値(O/C)が、0.05以上、0.20以下となっている」という発明特定事項は、「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成する」にあたり、当該使用が妥当な、または当該使用が可能な構成を示すものである。したがって、「表面粗度Rzが1.2μm以下の平滑面を有する金属箔の前記平滑面に接着剤を用いずに加圧により直接接合されて前記金属箔とともに積層体を構成する」ことは、当該使用に関連し、「樹脂フィルム」を特定するにあたって意味を有しないものとはいえず、申立人の上記主張は採用することはできない。 また申立人は、「本件特許発明3は、「樹脂フィルム」(物の発明)であるところ、「前記金属箔との接合面となる前記フッ素樹脂層の表面に真空プラズマ処理を施す」という、その物の製造方法が記載されているものと認められる。 ・・・ しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、特許権者から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。」と主張する。しかし、樹脂フィルムの表面加工方法によって、それぞれ別異の態様の表面となること、及び「真空プラズマ処理」が他の表面処理法と同一の表面となるとは断定できないことは当業者にとって周知であり、一方で「真空プラズマ処理」によって得られる表面の態様を物理的、化学的及びその他の観点で分析し、特定のパラメータで表現を試みることが、本件特許発明3における「真空プラズマ処理」によって得られる表面の技術的意義から鑑みて非実際的であるとすることは、特許権者が何らの主張を行うまでもなく明らかである。よって申立人の上記主張は採用することはできない。 (3)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明ではない。 また、本件特許は、引用発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものでない。 4 まとめ 以上により、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 また、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第29条第1項及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては取り消すことはできない。そして、取消理由通知に採用しなかった異議申立書に記載した申立理由はない。さらに、他に請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700626

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