特許異議申立
2024-700568
ランドリー機器制御システム、ランドリー機器制御方法、端末機、そのランドリー機器制御方法及びプログラム
- 審判番号
- 2024-700568
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-062175
- 登録番号
- 7399015
- 請求日
- 2024年06月13日
- 審決日
- 2025年10月01日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社TOSEI
- 【権利者代理人】井上 正則
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 長馬 望
- 審判官 永冨 宏之
- 分類
- P1651.55 -YAA(D06F) / P1651.113-YAA(D06F) / P1651.121-YAA(D06F) / P1651.537-YAA(D06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7399015号発明「ランドリー機器制御システム、ランドリー機器制御方法、端末機、そのランドリー機器制御方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7399015号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、5、7、8について訂正することを認める。
特許第7399015号の請求項1から6に係る特許を維持する。
特許第7399015号の請求項7、8に対する申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7399015号の請求項1から8に係る特許についての出願は、令和2年3月31日になされ、令和5年3月22日提出の手続補正書により手続補正された。その後、令和5年8月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年10月25日に意見書が提出されると共に同日付けの手続補正書により手続補正され、同年12月7日にその特許権の設定登録がされ、同月15日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 6月13日 : 特許異議申立人藤江 桂子(以下、「申立人」という。)による、請求項1から8に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 9月11日付け : 取消理由通知書
同年11月21日 : 特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年12月11日付け : 手続補正指令(令和6年11月21日提出の訂正請求書に対し)
令和7年 3月19日付け : 手続却下の決定(令和6年11月21日提出の訂正請求書に対し)
同年 5月21日付け : 取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月18日 : 特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 7月28日付け : 訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
同年 8月20日 : 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年7月18日に特許権者により提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、次の(1)から(3)に示すとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「識別情報テーブルおよびコース情報を記憶し、前記複数のランドリー機器と通信可能なサーバ装置」とあるのを本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1において、「識別情報テーブルと、前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し、前記複数のランドリー機器と通信可能なサーバ装置」と訂正すると共に、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記選択されたランドリー機器が有するコースを含む全ての前記ランドリー機器が有する前記コース情報を前記端末機に提供し」とあるのを本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1において、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供し」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「識別情報テーブルおよびコース情報を記憶し、前記複数のランドリー機器と通信可能なサーバ装置」とあるのを本件訂正後の特許請求の範囲の請求項5において、「識別情報テーブルと、前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し、前記複数のランドリー機器と通信可能なサーバ装置」と訂正すると共に、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記選択されたランドリー機器が有するコースを含む全ての前記ランドリー機器が有する前記コース情報を提供し、」とあるのを本件訂正後の特許請求の範囲の請求項5において、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を提供し、」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7及び8を削除する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1において、サーバ装置が記憶するコース情報について、単に「コース情報」と記載されていたものを、本件訂正は、「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報」であることを明らかにすると共に、本件訂正前の請求項1において、端末機に提供するコース情報が「前記選択されたランドリー機器が有するコースを含む全ての前記ランドリー機器が有する前記コース情報」とされ、全てのランドリー機器のいずれもが有するコース情報であるのか、全ての前記ランドリー機器のいずれかが有するコース情報であるのか明らかでなかったものを、本件訂正は、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報」と明らかにするものであるから、訂正事項1は、特許法(以下、単に「法」という。)第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項について
願書に添付した明細書には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)
(ア)「【0008】
(全体構成)
本実施形態に係るランドリー機器制御システムの全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係るランドリー機器制御システムを示す概略図である。図1に示されるように、ランドリー機器制御システムは、複数のコインランドリー店舗Sに設置された複数のランドリー機器10と、インターネットまたはイントラネット等のネットワークN及びゲートウェイ40を介して複数のランドリー機器10にそれぞれ通信可能なサーバ装置20と、ネットワークNを介してサーバ装置20と通信可能な端末機30と、複数のコインランドリー店舗Sに設置されたゲートウェイ40とを備える。以下、上述した構成要素について詳細に説明する。
【0009】
(ランドリー機器10)
ランドリー機器10は、衣類等の洗濯物を洗濯乾燥可能な洗濯乾燥機であり、図1に示されるように、ランドリー機器10内に洗濯物を投入するための投入口を開閉可能な開閉扉11が設けられると共に、ランドリー機器10を固有に示すID番号が印字されたIDプレート12が筐体に付されている。また、ランドリー機器10の正面上部には、後述する操作パネル160が設けられている。なお、ランドリー機器10は洗濯乾燥機以外に、洗濯機、乾燥機、靴洗浄機、圧縮パック機、布団乾燥機等であってもよい。
【0010】
図2は本実施形態に係るランドリー機器のハードウェア構成を示すブロック図である。ランドリー機器10は、機器本体の主たる制御を行う制御部110と、ランドリー機器10内に空気を流入させるファン120と、流入する空気を加熱する加熱ヒータ130と、不図示の回転ドラムを回動させるモータ140と、開閉扉11を施解錠する施解錠部150と、運転終了時間を表示するディスプレイや設定コースの選択ボタンを有して利用者の入力を受け付ける操作パネル160と、加熱された空気の温度や水温、水位、開閉扉11の開閉を計測および検知するセンサ群170と、利用者が利用するべきランドリー機器10を報知するためのLED等のランプ180とを備える。」
(イ)「【0013】
(サーバ装置20)
サーバ装置20は、ネットワークNを介して端末機30と相互通信を行うと共に、端末機30の利用者からの要求に応じてネットワークN及びゲートウェイ40を介してランドリー機器10と相互通信を行い、これを制御する。なおサーバ装置20は、1つのサーバ装置として独立して設けられていてもよく、複数のサーバ装置からなる所謂クラウドサーバとして構築してもよい。
【0014】
図4は、本実施形態に係るサーバ装置のハードウェア構成を示すブロック図である。サーバ装置20は、CPU210と、メモリ220と、ネットワークI/F230とを備える。CPU210はサーバ装置20の主たる処理を実行するものであり、メモリ220はRAMやROM等を含み、CPU210の作業領域に使用されると共に、各種機能を実現するプログラム、当該機能により実行される処理に用いられるデータ等を記憶する記憶装置である。本実施形態においては、メモリ220に複数のコース情報221とID番号テーブル222とが記憶されている。ネットワークI/F230は、ネットワークNを介したランドリー機器10及び端末機30との通信を行う。主としてCPU210とメモリ220とが協働することにより、各種機能が実現される。
【0015】
コース情報221は、ランドリー機器10が実行する洗濯乾燥処理に係る各種パラメータと、その利用料金とが対応付けられたものであり、例えば「洗濯乾燥」及び「洗濯重量2kg」のパラメータに「500円」の利用料金が予め対応付けられて1つのコースとして設定されている。なお、洗濯重量には洗濯時間及び水量のパラメータが含まれていることが好ましい。また、ここでの利用料金は、後述する決済処理において支払うものである。ここでのコース情報221は、ランドリー機器10の種類に関わらず全てのランドリー機器10が実行可能なコースとして設定されているとするが、ランドリー機器10毎またはコインランドリー店舗S毎の固有な設定で用意されていてもよい。」
(ウ)「【0025】
一方、ID番号が含まれていると判定された場合(S104,YES)、選択部204が、該当するID番号テーブル222に含まれるIPアドレスを取得し、当該IPアドレスに示されるランドリー機器10を選択すると共にID番号を送信した端末機30と紐付け、送信部203が、利用者により選択されたことを示す機器選択情報を選択されたランドリー機器10へ当該機器が属するランドリー店舗Sのゲートウェイ40を介して送信する(S108)。また、送信部203は、機器選択情報の送信と共に、サーバ装置20に記憶される全てのコース情報221を端末機30へ送信する(S109)。」
明細書の【0015】に記載された「全てのランドリー機器10」が複数のランドリー機器であることは明らかであり、また、「洗濯乾燥処理に係る各種パラメータ」は、「洗濯機や乾燥機等のランドリー機器」(明細書の【0002】)が実行する洗濯乾燥処理に係る各種パラメータであるであることを考慮すれば、明細書には、特に上記(イ)に示す【0013】から【0015】の記載より、サーバ装置が「識別情報テーブルと、前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶」することが記載されているといえる。また、このサーバ装置は、明細書の【0008】、【0013】の記載より、複数のランドリー機器と通信可能であることが理解できる。これらのことから、明細書には、「識別情報テーブルと、前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し、前記複数のランドリー機器と通信可能なサーバ装置」が記載されていたといえる。
さらに、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報」に関し、明細書には、ランドリー機器10の操作パネル160に「設定コースの選択ボタンを有し」(【0010】)ていることが記載されており、この選択ボタンが利用者により操作(選択)されると、当該ランドリー機器において選択ボタンに対応して設定されたコースが実行されることは、明らかであり、そのために、ランドリー機器は、選択ボタンに対応したコースを有しているといえる。そして、明細書に記載された第1の実施形態において、サーバ装置20は、「複数のランドリー機器10にそれぞれ通信可能」(【0008】)であって、メモリ220を備えており(【0014】)、このサーバ装置20のメモリ220は、ランドリー機器10が実行する洗濯乾燥処理に係る複数のコースのコース情報が記憶されている(【0014】、【0015】)から、サーバ装置20は、複数のランドリー機器10のいずれかが有するコースのコース情報を記憶しているといえる。さらに、明細書には、「サーバ装置20に記憶される全てのコース情報221を端末機30へ送信する」(【0025】)ことも記載されているから、明細書には、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供」することも記載されている。
以上のことから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、法第120条の5第9項において準用する法第126条第5項の規程に違反するものではない。
ウ 特許請求の範囲の拡張変更について
上記アに示すように、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、法第120条の5第9項において準用する法第126条第6項の規程に違反するものではない。
(2)訂正事項2について
本件訂正前後の請求項1に係る発明が「ランドリー機器制御システム」の発明であるのに対し、本件訂正前後の請求項5に係る発明は、これに対応した「ランドリー機器制御方法」の発明であって、訂正事項5は、請求項5について、訂正事項1と同様の訂正をするものである。そうすると、訂正事項2は、訂正事項1と同様に、法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、法第120条の5第9項において準用する法第126条第5項の規程に違反するものではなく、法第120条の5第9項において準用する法第126条第6項の規程に違反するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項7と請求項8を削除するものであるから、法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、法第120条の5第9項において準用する法第126条第5項の規程に違反するものではなく、法第120条の5第9項において準用する法第126条第6項の規程に違反するものではない。
3 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2は、請求項1を引用する請求項であるから、請求項1と請求項2は、一群の請求項である。そして、請求項1、2、5、7、8について訂正することを求める本件訂正は、一群の請求項ごとに訂正請求するものであり、法第120条の5第4項の規程に違反するものではない。
4 申立人の意見について
申立人は、令和7年8月20日提出の意見書において、「複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコース」及び「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理のすくなくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報」(当審注:「すくなくとも」は、「少なくとも」の誤記)については、明細書に記載されていない旨主張している。
しかしながら、本件訂正が願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは、上記2(1)イに示すとおりであり、申立人の主張は、採用することができない。
5 小括
以上のことから、本件訂正は、法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は同項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、法第120条の5第9項において準用する法第126条第5項の規程及び法第126条第6項の規程に違反するものではなく、さらに、法第120条の5第4項の規程に違反するものではない。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、2]、5、7、8について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2に示すように、本件訂正は、認められるから、特許第7399015号の請求項1から8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」から「本件発明8」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1から8に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。
「【請求項1】
洗濯物を洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥のいずれかの動作を行う複数のランドリー機器と、
識別情報テーブルと、前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し、前記複数のランドリー機器と通信可能なサーバ装置と、
前記サーバ装置と通信可能な利用者の端末機と、
を備えるランドリー機器制御システムであって、
前記サーバ装置は、前記ランドリー機器の使用に際し、前記端末機から受信した識別情報が正当なものであると判断した場合、前記識別情報テーブルを参照して前記識別情報から前記利用者により選択されたランドリー機器を選択して、当該ランドリー機器に向けて機器選択情報を送信し、前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供し、
前記端末機は、受信した前記コース情報が示すコース一覧から選択コース情報を生成し、その決済が完了すると前記サーバ装置に前記選択コース情報を送信し、
前記サーバ装置は、受信した前記選択コース情報に基づいたコースで運転させるための運転実行情報を前記選択されたランドリー機器に送信し、
前記選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する
ことを特徴とするランドリー機器制御システム。
【請求項2】
前記サーバ装置には、前記全てのランドリー機器が実行可能な前記コース情報を記憶するメモリを有し、
前記コース情報には、洗濯乾燥の複数のコース毎の料金、又は洗濯の複数のコース毎の料金、又は乾燥の複数のコース毎の料金が明示されていることを特徴とする請求項1記載のランドリー機器制御システム。
【請求項3】
洗濯物の洗濯乾燥を行う複数のランドリー機器と、
識別情報テーブルおよびパラメータ情報を記憶し、前記ランドリー機器と通信可能なサーバ装置と、
前記サーバ装置と通信可能な利用者の端末機と、
を備えるランドリー機器制御システムであって、
前記サーバ装置は、前記ランドリー機器の使用に際し、前記端末機から受信した識別情報が正当なものであると判断した場合、前記識別情報テーブルを参照して前記識別情報から前記利用者により選択されたランドリー機器を選択して、当該ランドリー機器に向けて機器選択情報を送信し、前記端末機に前記洗濯乾燥のパラメータを設定する前記パラメータ情報を提供し、
前記端末機は、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、その決済が完了すると前記サーバ装置に前記選択コース情報を送信し、
前記サーバ装置は、受信した前記選択コース情報に基づいたコースで運転させるための運転実行情報を前記選択されたランドリー機器に送信し、
前記選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される前記パラメータ情報に基づいた前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する
ことを特徴とするランドリー機器制御システム。
【請求項4】
前記サーバ装置には、前記パラメータ情報および料金テーブルを記憶するメモリを有し、
前記サーバ装置は前記料金テーブルを参照して、前記利用者によってパラメータ設定された前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間に従った料金を前記端末機に提供することを特徴とする請求項3に記載のランドリー機器制御システム。
【請求項5】
洗濯物を洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥のいずれかの動作を行う複数のランドリー機器と、
識別情報テーブルと、前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し、前記複数のランドリー機器と通信可能なサーバ装置と、
前記サーバ装置と通信可能な利用者の端末機と、
を備えるコインランドリーのランドリー機器制御方法であって、
前記ランドリー機器の使用に際し、前記サーバ装置が前記端末機から受信した識別情報が正当なものであると判断した場合、前記識別情報テーブルを参照して前記識別情報から前記利用者により選択されたランドリー機器を選択して、当該ランドリー機器に向けて機器選択情報を送信し、
前記サーバ装置から前記端末機に、前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を提供し、
前記端末機では、受信した前記コース情報が示すコース一覧から選択コース情報を生成し、その決済が完了すると前記サーバ装置に前記選択コース情報を送信し、
前記サーバ装置から前記選択されたランドリー機器に、受信した前記選択コース情報に基づいたコースで運転させるための運転実行情報を送信し、
前記選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、および乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する
ことを特徴とするランドリー機器制御方法。
【請求項6】
洗濯物の洗濯乾燥を行う複数のランドリー機器と、
識別情報テーブルおよびパラメータ情報を記憶し、前記ランドリー機器と通信可能なサーバ装置と、
前記サーバ装置と通信可能な利用者の端末機と、
を備えるコインランドリーのランドリー機器制御方法であって、
前記ランドリー機器の使用に際し、前記サーバ装置が前記端末機から受信した識別情報が正当なものであると判断した場合、前記識別情報テーブルを参照して前記識別情報から前記利用者により選択されたランドリー機器を選択して、当該ランドリー機器に向けて機器選択情報を送信し、前記端末機に前記パラメータ情報を提供し、
前記端末機では、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、その決済が完了すると前記選択コース情報を前記端末機から前記サーバ装置に送信し、
前記サーバ装置から前記選択されたランドリー機器に、受信した前記選択コース情報に基づいたコースで運転させるための運転実行情報を前記選択された送信し、
前記選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される前記パラメータに基づいた前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する
ことを特徴とするランドリー機器制御方法。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)」
第4 取消理由の概要
令和7年5月21日付けの取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由のうち請求項1、2及び5に対するものは、概略次のとおりである。
1 (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件訂正前の請求項1及び5に記載された「前記選択されたランドリー機器が有するコースを含む全ての前記ランドリー機器が有する前記コース情報」によって、特定される「コース情報」とは、何か不明である。よって、本件訂正前の請求項1、5及び請求項1を引用する請求項2に係る発明は、明確でない。
2 (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件訂正前の請求項1、5及び請求項1を引用する請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された課題である「利用者によるコース選択の自由度を向上させること」(【0004】)を解決しないものであり、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
3 (実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
発明の詳細な説明の記載は、「ランドリー機器10に設定されたコース以外の多数のコース」が利用者に選択されたときに、当該ランドリー機器で「設定されたコース以外」のコースが実行できるのか示されておらず、発明の詳細な説明の記載は、本件訂正前の請求項1、5及び請求項1を引用する請求項2に係る発明を当業者が上記課題を解決できるように実施できる程度に記載されたものではない。
第5 当審の判断
上記第4に示す取消理由について検討する。
1 明確性について
上記第2・1(1)に示すように、本件訂正前の請求項1に記載された「前記選択されたランドリー機器が有するコースを含む全ての前記ランドリー機器が有する前記コース情報」は、本件訂正により「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報」と訂正された。そこで、この「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報」について検討すると、この記載における「コース」は、複数あるランドリー機器のいずれか1つが少なくとも有しているコースであることが文言上明らかであり、このようなコースが複数あることが想定されることから、この記載における「コース情報」とは、複数あるコースの全てのコースについてのコース情報をいうと理解できる。
したがって、本件発明1の「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報」とは、明確であり、また他に請求項1の記載において、本件発明1を明確でないとする点はない。
よって、本件発明1は、明確であり、請求項1を引用する請求項2に係る発明である本件発明2も明確である。
さらに、本件発明1と同様の事項が特定されている本件発明5も、本件発明1と同様に明確である。
なお、本件訂正後、申立人は、令和7年8月20日に意見書を提出したが、本件発明の明確性については、特段の意見を主張していない。
2 サポート要件、実施可能要件について
発明の詳細な説明には、本件発明について、「ランドリー機器を制御する技術に関」し(【0001】)、従来、「洗濯機や乾燥機等のランドリー機器においては、メーカーや設置店舗毎に洗濯、乾燥の動作種別及び時間等の各種パラメータの組み合わせが予め設定されたコースが複数用意されている」が(【0002】)、「コースは、ランドリー機器に用いられる記憶装置の容量やコースの選択ボタンの設置等の仕様的な観点から、一般的には3~4コース程度が用意される」(【0002】)ものであったことから、「利用者によるコース選択の自由度を向上させること」(【0004】)を解決しようとする課題としてなされたものであることが記載されている。そして、このような課題を解決するものとして、発明の詳細な説明には、「複数のコインランドリー店舗Sに設置された複数のランドリー機器10」(【0008】)と「複数のランドリー機器10にそれぞれ通信可能なサーバ装置20」(【0008】)と「サーバ装置20と通信可能な端末機30」(【0008】)とを備えるランドリー機器制御システムについて記載されており、さらにサーバ装置20が備えるメモリ220には、「ランドリー機器10の種類に関わらず全てのランドリー機器10が実行可能なコースとして設定されている」複数のコース情報221が記憶されており(【0014】、【0015】)、ランドリー機器10の筐体には、ID番号が印字されたIDプレート12が付されており(【0009】)、端末機30にID番号が入力され、サーバ装置20に送信されて(【0023】)、「サーバ装置20の取得部201が端末機30により送信されたID番号を取得すると(S103)、判定部202は、取得されたID番号が、ID番号テーブル222に含まれているかを判定」し(【0024】)、「ID番号が含まれていると判定された場合」、「選択部204が、該当するID番号テーブル222に含まれるIPアドレスを取得し、当該IPアドレスに示されるランドリー機器10を選択」し、「機器選択情報を選択されたランドリー機器10へ」送信し(【0025】)、また、「サーバ装置20に記憶される全てのコース情報221を端末機30へ送信」し(【0025】)、端末機30が「サーバ装置20により送信されたコース情報221を取得すると(S113)」、「利用者が選択したコース情報221からなる選択コース情報を生成」し(【0028】)、「決済が完了したと判定された場合」、「選択コース情報をサーバ装置20へ送信」し(【0031】)、「サーバ装置20の取得部201が選択コース情報を取得すると(S120)、送信部203は、取得された選択コース情報に基づいて、ランドリー機器10を選択コース情報に示されるコース(パラメータ及びその値の組み合わせ)で運転させる運転実行情報をランドリー機器10へ」送信し(【0031】)、「ランドリー機器10の取得部101が運転実行情報を取得すると(S122)、駆動制御部102は運転実行情報に示される洗濯重量や洗剤種類、乾燥温度、乾燥時間といったパラメータに基づいて、ファン120、加熱ヒータ130、モータ140等を駆動して洗濯物を洗濯及び/又は乾燥する洗濯乾燥処理を実行する(S123)」(【0032】)ことが記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明には、従来のランドリー機器においては、「記憶装置の容量やコースの選択ボタンの設置等の仕様的な観点から、一般的には3~4コース程度が用意され」、「利用者はこれら予め設定された複数のコースの中から、いずれかを選択する」(【0002】)ものであったことから、「利用者によるコース選択の自由度を向上させる」(【0004】)という課題を解決するために、サーバ装置20が備えるメモリ220に「ランドリー機器10の種類に関わらず全てのランドリー機器10が実行可能なコースとして設定されている」複数のコース情報221を記憶し(【0015】)、「サーバ装置20に記憶される全てのコース情報221を端末機30へ送信」し(【0025】)、この全てのコース情報221から端末機30が「利用者が選択したコース情報221からなる選択コース情報を生成」(【0028】)できるようにしたものが記載されている。
これに対し、本件発明1は、サーバ装置が「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し」、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供し」て、「前記端末機は、受信した前記コース情報が示すコース一覧から選択コース情報を生成」することが特定されている。
ここで、本件発明1は、「洗濯物を洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥のいずれかの動作を行う複数のランドリー機器」を備えるものであるから、複数のランドリー機器は、全て洗濯物を洗濯乾燥する動作を行うランドリー機器か、全て洗濯する動作を行うランドリー機器か、あるいは全て乾燥する動作を行うランドリー機器である。したがって、本件発明1のサーバ装置が記憶する「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報」は、複数のランドリー機器が、全て洗濯乾燥する動作を行うランドリー機器であれば、洗濯処理及び乾燥処理に係るパラメータを示すものであり、複数のランドリー機器が、全て洗濯する動作を行うランドリー機器であれば、洗濯処理に係るパラメータを示すものであり、複数のランドリー機器が、全て乾燥する動作を行うランドリー機器であれば、乾燥処理に係るパラメータを示すものである。そして、このサーバ装置に記憶されたコース情報について、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供し、前記端末機は、受信した前記コース情報が示すコース一覧から選択コース情報を生成」することが特定されている。
そうすると、本件発明1は、サーバ装置が「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し」、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供し」て、「前記端末機は、受信した前記コース情報が示すコース一覧から選択コース情報を生成」することにより、上記課題を解決していると理解でき、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものである。
また、同様に請求項1を引用する請求項2に係る発明である本件発明2及び本件発明1と同様の事項が特定された「ランドリー機器制御方法」の発明である本件発明5も発明の詳細な説明に記載されたものである。
そして、本件発明1において、「前記端末機に提供」する「前記コース情報」は、「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報」、すなわち、「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理」「に係るパラメータを示すコース情報」又は「前記複数のランドリー機器が実行する」「乾燥処理」「に係るパラメータを示すコース情報」の少なくともいずれかであって、いずれのものであっても「複数のランドリー機器が実行する」コースのコース情報であるから、端末機に提供されたコース情報から選択された「選択コース情報」も複数のランドリー機器が実行することができるものである。
そうすると、このような事項が記載されている発明の詳細な説明の記載は、本件発明1を当業者が実施できるように記載されたものであり、また同様に本件発明2及び本件発明5を実施できるように記載されたものである。
申立人は、令和7年8月20日提出の意見書において、「例えば、洗濯物を乾燥の動作を行うランドリー機器(乾燥機)の使用に際し、乾燥の動作を行うランドリー機器(乾燥機)が有するコースではない洗濯や洗濯乾燥のコース情報が端末に提供されたとしても、洗濯や洗濯乾燥のコース情報は、乾燥の動作を行うランドリー機器(乾燥機)で実行可能なコースではないため、実質的に「利用者によるコース選択の自由度を向上させる」こととはならず、同様に、洗濯物を洗濯の動作を行うランドリー機器(乾燥機能のない洗濯機)の使用に際し、乾燥や洗濯乾燥のコース情報が端末に提供されたとしても、実質的に「利用者によるコース選択の自由度を向上させる」こととはな」らないから、本件発明1等は、サポート要件違反の取消理由を解消するものでない旨主張している。また、「サーバに記憶されている「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータ」には、「選択されたランドリー機器が有するコース」には関係のない「洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータ」も含まれている可能性があるから、上記の訂正によつても、「選択されたランドリー機器で運転できるコースである」ことにはな」らないから、実施可能要件を違反の取消理由を解消するものでない旨主張している。
しかし、上記のように、サーバ装置に記憶され、サーバ装置から端末機に提供されるコース情報は、「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報」であって、このコース情報は、「複数のランドリー機器が実行する」ものであるから、申立人の主張は、採用することができない。
3 明確性、サポート要件、実施可能要件についての結論
上記1に示すように、本件発明1、2、5は明確であり、本件発明1、2、5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に違反するものではない。また、本件発明1、2、5は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件発明1、2、5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に違反するものでなく、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1、2、5を当業者が実施できる程度に記載したものであるから、本件発明1、2、5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に違反するものでない。
第6 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 申立人の主張
本件訂正により削除された請求項7及び8に対するものを除く、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。
(1) 新規事項について
特許査定時の請求項に記載された次の事項は、いずれも願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した範囲内の事項ではない。
ア 請求項1に記載された「前記選択されたランドリー機器が有するコースを含む全ての前記ランドリー機器が有する前記コース情報を前記端末機に提供し」
イ 請求項1に記載された「前記選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」
ウ 請求項3に記載された「前記端末機は、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、」
エ 請求項3に記載された「前記選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される前記パラメータ情報に基づいた前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する」
オ 請求項4に記載された「前記サーバ装置は前記料金テーブルを参照して、前記利用者によってパラメータ設定された前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間に従った料金を前記端末機に提供することを特徴とする請求項3に記載のランドリー機器制御システム。」
カ 請求項5に記載された「前記サーバ装置から前記端末機に、前記選択されたランドリー機器が有するコースを含む全ての前記ランドリー機器が有する前記コース情報を提供し、」
キ 請求項5に記載された「前記選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、および乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」
ク 請求項6に記載された「前記端末機では、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、」
ケ 請求項6に記載された「前記選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される前記パラメータに基づいた前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する」
(2)サポート要件、明確性について
特許査定時の請求項の次の記載は、明確でなく、また課題を解決し得ない場合を含むものである。
ア 請求項1に記載された「前記選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」
イ 請求項5に記載された「前記選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、および乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」
ウ 請求項3に記載された「洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、」及び「前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する」
エ 請求項4に記載された「前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間に従った料金を前記端末機に提供」
オ 請求項6に記載された「洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」、「洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行」及び「運転実行情報を前記選択された送信し」
(3)新規性、進歩性について
ア 特許査定時の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証(以下、「甲1」という。)に記載された発明である。
イ 特許査定時の請求項1から6に係る発明は、甲1に記載された発明に甲第2号証から甲第7号証(以下、それぞれ、「甲2」などという。)に記載された発明(以下、それぞれ「甲2発明」などという。)を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ここで、甲1から甲7及び申立人が証拠として提出した甲8は、次のとおりである。
甲1:特開2018-33823号公報
甲2:株式会社 巴商会 業務用/LANDRY SYSTEM/衣類乾燥機・洗濯機のカタログ 2017年9月
甲3:特開2008-104492号公報
甲4:米国特許第4981024号明細書
甲5:特開2002-85885号公報
甲6:特開2007-282732号公報
甲7:特開2010-264307号公報
甲8:特公平4-26572号公報
2 当審の判断
(1)新規事項について
ア 申立人の1(1)ア及びカの主張について
まず、上記第2・2(1)イに示すように、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1において、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供し」とする訂正は、特に願書に添付した明細書の段落【0008】から【0010】、【0013】から【0015】、【0025】に記載された事項に基づくものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内である。そして、発明の詳細な説明の記載は、段落【0005】を除いて、出願当初から、補正されておらず、段落【0008】から【0010】、【0013】から【0015】、【0025】の記載を含むその他の段落の記載事項は、出願当初から補正及び訂正されていない。
そうすると、本件発明1が「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供」するものであることは、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内であり、本件発明5においても同様である。したがって、上記ア及びカに示す事項を願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した範囲内の事項ではないとする申立人の主張は、採用することができない。
イ 申立人の1(1)イ及びキの主張について
本件発明1の複数のランドリー機器は、「洗濯物を洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥のいずれかの動作を行う」ものであり、この複数のランドリー機器が実行するのは、「洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれか」であるから、複数のランドリー機器は、全て洗濯処理を実行し、洗濯動作を行うものか、全て乾燥処理を実行し乾燥動作を行うものか、全て洗濯と乾燥の処理を実行し、洗濯乾燥の動作を行うものいずれかである。そして、本件発明1の「選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」ことは、例えば、ランドリー機器が洗濯処理を実行し、洗濯動作を行うものである場合には、「前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータ」のうちの洗濯に関連する洗濯重量のパラメータに基づいて洗濯を実行することは、技術常識、請求項の記載に基づいて自明な事項である。
一方、出願当初の明細書には、「【0032】 ランドリー機器10の取得部101が運転実行情報を取得すると(S122)、駆動制御部102は運転実行情報に示される洗濯重量や洗剤種類、乾燥温度、乾燥時間といったパラメータに基づいて、ファン120、加熱ヒータ130、モータ140等を駆動して洗濯物を洗濯及び/又は乾燥する洗濯乾燥処理を実行する(S123)。」(改行を省略し、下線は当審で付与した。以下同様)と記載されている。この記載における「洗濯重量や洗剤種類、乾燥温度、乾燥時間といったパラメータに基づいて」とは、実行する「洗濯及び/又は乾燥する洗濯乾燥処理」に応じて設定されるものであるから、例えば、乾燥処理が行われない洗濯処理の場合には、洗濯重量等のパラメータに基づいて実行することは、明らかである。
そうすると、請求項1に記載された「前記選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」ことは、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内である。
また、同様に、請求項5に記載された「前記選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、および乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」ことも、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内である。
ウ 申立人の1(1)ウ及びクの主張について
出願当初の明細書には、「【0047】 ・・・図14は、端末機のディスプレイに表示されるパラメータ一覧を示す概略図である。図14に示されるように、パラメータ一覧には、洗濯のパラメータとして洗濯重量、洗剤の種類のレベル(A~C)、柔軟剤の有無、洗濯時間が表示され、乾燥のパラメータとして乾燥温度のレベル(低、中、高)、乾燥時間が表示されており、これらを増加ボタン341及び減少ボタン342により任意に増減することができる。また、パラメータ一覧には算出された利用料金が表示されており、その下に決算ボタン343が表示されている。」、「【0048】 算出後、決算ボタン343のタッチがなされると、生成部305は、利用者が選択したパラメータの値と、算出された利用料金とを対応付けて選択コース情報を生成し、これを読み出し可能にメモリ320に保存する(S205)。」と記載されている。また、洗濯時間に関し、「なお、洗濯重量には洗濯時間及び水量のパラメータが含まれていることが好ましい。」(【0015】)とも記載されており、第1の実施形態ではあるが、洗濯重量のパラメータに洗濯時間のパラメータを任意で含めることができることも記載され、洗濯時間についてのパラメータは、選択コース情報を生成するにあたり、必須のパラメータとはいえないことも示唆されている。そうすると、出願当初の明細書には、「端末機は」又は「端末機では」、「受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」することが記載されているといえ、請求項3に記載された「前記端末機は、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、」及び請求項6に記載された「前記端末機では、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、」は、出願当初の明細書に記載された事項の範囲内である。
エ 申立人の1(1)エ及びケの主張について
出願当初の明細書には第2の実施形態として、「本実施形態に係るサーバ装置20aは、第1の実施形態に係るサーバ装置20と比較して、コース情報221に代わり、パラメータ情報221aと、料金テーブル223とをメモリ220が記憶する点で異な」り(【0042】)、「パラメータ情報221aは、第1の実施形態において説明した洗濯乾燥処理に係る各種パラメータを示し、例えば「洗濯重量」、「洗剤種類」、「柔軟剤有無」、「洗濯時間」、「乾燥温度」、「乾燥時間」をパラメータとして含」み(【0042】)、「利用者が選択したパラメータの値と、算出された利用料金とを対応付けて選択コース情報を生成」(【0048】)し、選択コース情報をランドリー機器に実行させること(【0044】)が記載されている。そして、出願当初の明細書の記載より、洗濯時間についてのパラメータは、選択コース情報を生成するにあたり、必須のパラメータとはいえないことは、上記ウで示したとおりである。
そうすると、出願当初の明細書には、「前記選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される前記パラメータ情報に基づいた前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する」こと、及び「前記選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される前記パラメータに基づいた前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する」ことが記載されていたといえ、これらの記載は出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内である。
オ 申立人の1(1)オの主張について
出願当初の明細書には、「【0042】・・・パラメータ情報221aは、第1の実施形態において説明した洗濯乾燥処理に係る各種パラメータを示し、例えば「洗濯重量」、「洗剤種類」、「柔軟剤有無」、「洗濯時間」、「乾燥温度」、「乾燥時間」をパラメータとして含む。」、「【0043】料金テーブル223は、パラメータ情報221aに含まれる各種パラメータの値毎の料金が割り当てられたものであり」、「【0044】・・・算出部306は、パラメータ情報221aと料金テーブル223とに基づいて、選択コース情報をランドリー機器に実行させるにあたり利用者が支払うべき利用料金の算出を行う」と記載されており、例えば、洗濯処理のみが選択された場合には、技術常識より、「洗濯重量」、「洗剤種類」が設定されることが明らかである。さらにまた、洗濯時間に関し、「なお、洗濯重量には洗濯時間及び水量のパラメータが含まれていることが好ましい。」(【0015】)とも記載されており、第1の実施形態ではあるが、洗濯時間のパラメータは、料金を定めるにあたって必須のパラメータとはいえないことも示唆されている。そうすると、出願当初の明細書には、「前記料金テーブルを参照して、前記利用者によってパラメータ設定された前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間に従った料金」を算出することが記載されているといえ、請求項4に記載された「前記サーバ装置は前記料金テーブルを参照して、前記利用者によってパラメータ設定された前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間に従った料金を前記端末機に提供することを特徴とする請求項3に記載のランドリー機器制御システム。」は出願当初の明細書に記載された事項の範囲内である。
カ 小括
以上のことから、申立人の主張は採用することができず、本件発明に係る特許は、法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をしたものに対してされたものとはいえない。
(2)サポート要件、明確性について
ア 申立人の1(2)ア及びイの主張について
上記(1)イに示すように、本件発明1の「選択されたランドリー機器は、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行する」こと及び本件発明5の「選択されたランドリー機器では、前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、および乾燥時間のパラメータに基づいて前記洗濯乾燥又は洗濯又は乾燥を実行すること」は、例えば、ランドリー機器が洗濯処理を実行し、洗濯動作を行うものである場合には、「前記運転実行情報に示される洗濯重量、乾燥温度、乾燥時間のパラメータ」のうちの洗濯に関連する洗濯重量のパラメータに基づいて洗濯を実行することは、技術常識、請求項の記載に基づいて自明な事項であり、発明の詳細な説明に記載されたものであり、何ら不明確な点はない。
イ 申立人の1(2)ウの主張について
上記(1)エに示す理由と同様に、請求項3に記載された「前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行する」は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、何ら不明確な点はない。また、請求項3に記載された「洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成し、」は、上記(1)ウに示す理由と同様に、発明の詳細な説明に記載されたものであり、何ら不明確な点はない。
ウ 申立人の1(2)エの主張について
上記(1)オに示す理由と同様に請求項4に記載された「前記洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間に従った料金を前記端末機に提供」は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、何ら不明確な点はない。
オ 申立人の1(2)オの主張について
上記(1)ウ及び(1)エに示す理由と同様に、請求項6に記載された「洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」、「洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定して前記洗濯乾燥を実行」は、明確であり、発明の詳細な説明に記載されたものである。また、請求項6に記載された「前記サーバ装置から前記選択されたランドリー機器に、受信した前記選択コース情報に基づいたコースで運転させるための運転実行情報を前記選択された送信し」は、明らかに「前記サーバ装置から前記選択されたランドリー機器に、受信した前記選択コース情報に基づいたコースで運転させるための運転実行情報を送信し」の誤記であり、請求項6の記載から、そのような事項を特定するものであることが理解できるから、申立人の主張する「運転実行情報を前記選択された送信し」の記載によって、請求項6に係る発明が明確でないとは、いえない。
カ 小括
以上のことから、申立人の主張は採用することができず、本件発明に係る特許は、法36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
(3)新規性、進歩性について
ア 甲1に記載された発明
申立人が提出した甲1の記載(特に、【請求項1】、【0001】、【0005】、【0016】、【0017】、【0019】、【0020】、【0023】から【0029】、【0035】から【0037】、図1、図3、図4、図5、図6の記載参照。)から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、ここで、甲1に記載されたサーバ30は、「識別コード21を読み込んだユーザ端末51からは、ユーザ端末51およびランドリー機器20に対応する識別信号Siが発信され」(【0024】)、識別信号Siが入力される(【0024】)と、「識別信号Siに基づいてユーザ端末51とランドリー機器20との紐付けを行」(【0025】)うものであるから、実質的に識別信号Siによって対応されている識別コード21とランドリー機器20との対応関係を記憶しているといえ、また、「運転コース信号をユーザ端末51に送信する」(【0026】)ものであるから、サーバ30は、運転コース信号に対応する運転コースも記憶しているといえることを考慮して甲1発明を認定した。
・甲1発明
「洗濯機能と乾燥機能との少なくとも一方を有する多数のランドリー機器20と、
識別コード21とランドリー機器20との対応関係および運転コースを記憶し、前記多数のランドリー機器20と信号の送受信が行われるサーバ30と、
前記サーバ30と信号の送受信が行われるユーザ端末51と、
を備えるセルフランドリーシステムであって、
前記サーバ30は、識別コード21を読み込んだユーザ端末51から識別信号Siが入力されると、識別コード21とランドリー機器20との対応関係に基づいて前記識別信号Siからユーザ端末51が識別コード21を読み込んだランドリー機器を選択して、前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信し、
前記ユーザ端末51は、受信した運転コース信号に基づいて表示される複数の運転コースからユーザにより選択された運転コースを前記サーバ30に送信し、
前記サーバ30は、前記ユーザ端末51から運転要求信号Sdが入力されると、課金処理を行い、前記課金処理が完了すると、前記選択された運転コースを実行する運転開始指令を前記選択されたランドリー機器20に出力し、
前記選択されたランドリー機器20は、選択された運転コースで運転を開始するセルフランドリーシステム。」
また、同様に甲1には、次の発明(以下、「甲1発明’」という。)も記載されていると認められる。
・甲1発明’
「洗濯機能と乾燥機能との少なくとも一方を有する多数のランドリー機器20と、
識別コード21とランドリー機器20との対応関係および運転コースを記憶し、前記多数のランドリー機器20と信号の送受信が行われるサーバ30と、
前記サーバ30と信号の送受信が行われるユーザ端末51と、
を備えるセルフランドリーのランドリーシステム使用方法であって、
識別コード21を読み込んだユーザ端末51から識別信号Siが入力されると、前記サーバ30が識別コード21とランドリー機器20との対応関係に基づいて前記識別信号Siからユーザにより選択されたランドリー機器を選択して、前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信し、
前記ユーザ端末51では、受信した運転コース信号に基づいて表示される複数の運転コースからユーザにより選択された運転コースを前記サーバ30に送信し、
前記サーバ30は、前記ユーザ端末51から運転要求信号Sdが入力されると、課金処理を行い、前記課金処理が完了すると、前記選択された運転コースを実行する運転開始指令を前記選択されたランドリー機器20に出力し、
前記選択されたランドリー機器20は、選択された運転コースで運転を開始する
ランドリーシステム使用方法。」
イ 本件発明と甲1発明又は甲1発明’との対比及び判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点1-1」という。)で相違する。
・相違点1-1
本件発明1は、サーバ装置が「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し」、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供し」、「前記端末機は、受信した前記コース情報が示すコース一覧から選択コース情報を生成」するのに対し、甲1発明は、サーバ30が「運転コースを記憶し」、「前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信し」、「前記ユーザ端末51は、受信した運転コース信号に基づいて表示される複数の運転コースからユーザにより選択された運転コースを前記サーバ30に送信」する点。
そして、この相違点1-1について検討すると、甲1発明のセルフランドリーシステムは、サーバ30が「前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信」するものであって、選択されていないランドリー機器の運転コース信号を含むサーバ30が記憶している全ての運転コースについての信号を送信するものではないから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許異議の申立てにおいて証拠として提出されている甲2から甲8をみても、サーバ装置が「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し」、「前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を前記端末機に提供」することは、記載も示唆もされていない。
そうすると、上記相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは当業者であっても容易であるとはいえない。
申立人は、令和7年8月20日提出の意見書において、「端末機に提供されるコース情報について、「複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースのコース情報」としても、「選択されたランドリー機器の全てのコースのコース情報」としても、いずれにおいても、選択されたランドリー機器に関して選択し得るコース情報は全て提供されているのであり、選択し得るコース情報以外のコース情報をどれだけ提供するかは、必要に応じて適宜設定し得ることであることから、上記相違点3は単なる設計的事項に過ぎません」(3(2)エ「本件発明1、5の進歩性について」)と主張している。しかしながら、甲1発明のサーバ30は、「選択したランドリー機器の運転コース信号を送信」するものであり、これにより申立人が主張するような「選択し得るコース情報は全て提供されている」か否かは不明であり、このような事項が甲1に記載されていたともいえないから、申立人の主張は、採用することができない。
以上のことから、本件発明1が甲1発明とはいえず、また、甲1発明および甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえない。
(イ)本件発明2について
請求項1を引用して記載された請求項2に係る発明である本件発明2は、請求項1に係る発明である本件発明1に発明特定事項を加え、発明を減縮したものである。
そうすると、本件発明1が甲1発明とはいえず、また、甲1発明および甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえないのと同様に、本件発明2も甲1発明とはいえず、また、甲1発明および甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえない。
(ウ)本件発明3について
本件発明3と甲1発明とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点3-1」という。)で相違する。
・相違点3-1
本件発明3は、サーバ装置が「パラメータ情報を記憶し」、「前記端末機に前記洗濯乾燥のパラメータを設定する前記パラメータ情報を提供し」、「前記端末機は、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」するのに対し、甲1発明は、サーバ30が「運転コースを記憶し」、「前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信し」、「前記ユーザ端末51は、受信した運転コース信号に基づいて表示される複数の運転コースからユーザにより選択された運転コースを前記サーバ30に送信」する点。
そして、この相違点3-1について検討すると、甲1発明のセルフランドリーシステムは、サーバ30が「前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信」するものであって、サーバ30が、パラメータ情報を記憶し、ユーザ端末に送信するものではなく、また、ユーザ端末が受信したパラメータ情報から運転コースを生成するものではない。また、本件特許異議の申立てにおいて証拠として提出されている甲2から甲8をみても、サーバ装置が「パラメータ情報を記憶し」、「前記端末機に前記洗濯乾燥のパラメータを設定する前記パラメータ情報を提供し」、「前記端末機は、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」することは、記載されていない。甲2には、「「低」・「中」・「高」3つの乾燥温度コースをご用意。デリケートなストッキングなど洗濯物に合わせて選択できます。」と記載されているが、3つの温度が予め設定された乾燥温度コースが選択されるものであっても、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項である「前記端末機に前記洗濯乾燥のパラメータを設定する前記パラメータ情報を提供し」、「前記端末機は、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」するものではない。甲3には、操作パネルに「乾燥運転時間を設定するための時間設定部72、乾燥運転時の到達温度を設定するための温度設定部73が設けられ、そうした設定値や運転中の残り時間を表示するための表示部8が配置されている」衣類乾燥機が記載(【0022】)されているが、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項が記載されているとはいえない。甲4には、「システム10は、制御手段の制御下で洗濯機に注入するための複数の化学物質の少なくとも1つをユーザが選択することを可能にするための選択手段として機能する選択装置39を含む。換言すれば、押しボタンのような適当な手段が選択装置39に設けられており、ユーザは、4つの供給源27~30に収容された洗濯化学薬品の中から所望の洗濯化学薬品を選択するように作動させることができる」ことが記載(特に、第6欄58行から第7欄28行参照)されているが、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項は、記載されていない。甲5には、「【0026】そして、使用者は、表示装置25のカスタマイズ画面において、タッチパネル26を操作することにより、洗濯行程の内容をカスタマイズすることができ、この場合、使用する洗剤の種類(銘柄)を設定することができると共に、全自動洗濯乾燥機1が使用される地域情報を設定することができる。」と記載され、洗剤の種類を設定することは記載されているが、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項は、記載されていない。甲6には、「【0056】・・・操作パネル64には、ドラム洗浄ボタン68、標準コース選択ボタン69、少量コース選択ボタン、洗濯コース洗濯ボタン71、乾燥コース選択ボタン72、除菌すすぎ実行ボタン73、ソフト剤なしボタン79、カード利用ボタン80およびカード返却ボタン81が設けられる」ことが記載され、ソフト剤、すなわち柔軟剤の有無を選択するボタンが設けられることは記載されているが、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項は、記載されていない。甲7にも甲6と同様の事項が記載(【0072】参照)されているが、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項は、記載されていない。甲8には、「従来例にあつては、被乾燥物の量に関係なくコインの投入額に応じた加熱乾燥が行われるので、例えば、被乾燥物の量が少なくて、早く乾燥が終了した場合でも、依然として加熱が続行され、熱のために被乾燥物の布地を傷める問題がある。」(1ページ右欄8行から同欄12行)と記載されているが、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項は、記載されていない。
したがって、本件発明3は、甲1発明1及び甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとは、いえない。
申立人は、特許異議申立書において、「甲1の図5を見ると、ユーザ端末52には、洗濯、乾燥の重量、時間等のパラメータ情報が表示されていることが見て取れるから、上記の甲1における「サーバ30」が「運転コース信号をユーザ端末51に送信する」ことは、「サーバ装置」が「端末機に洗濯乾燥のパラメータを設定するパラメータ情報を提供」することに他ならないことがわかる。」(特許異議申立書86ページ7行から同ページ11行)と主張するが、甲1の図5に記載されたものは、例えば、「洗濯/乾燥 22kg 60分 1800円」が四角で囲まれて表示されている「運転コース」ボタン73aがユーザ端末51に表示されているものであって、これより、サーバ30が記憶している選択されたランドリー機器の運転コース信号を送信しているといえても、サーバ装置が「前記端末機に前記洗濯乾燥のパラメータを設定する前記パラメータ情報を提供し」ているとはいえないし、また、「前記端末機は、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」するともいえないから、申立人の主張は採用することができない。
以上のことから、本件発明3は甲1発明および甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえない。
(エ)本件発明4について
請求項3を引用して記載された請求項4に係る発明である本件発明4は、請求項3に係る発明である本件発明3に発明特定事項を加え、発明を減縮したものである。
そうすると、本件発明3が甲1発明および甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえないのと同様に、本件発明4も甲1発明および甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえない。
(オ)本件発明5について
本件発明5と甲1発明’とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点5-1」という。)で相違する。
・相違点5-1
本件発明5は、サーバ装置が「前記複数のランドリー機器が実行する洗濯処理又は乾燥処理の少なくともいずれかに係るパラメータを示すコース情報とを記憶し」、「前記サーバ装置から前記端末機に、前記複数のランドリー機器のいずれかが有する全てのコースの前記コース情報を提供し」、「前記端末機では、受信した前記コース情報が示すコース一覧から選択コース情報を生成」するのに対し、甲1発明’は、サーバ30が「運転コースを記憶し」、「前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信し」、「前記ユーザ端末51では、受信した運転コース信号に基づいて表示される複数の運転コースからユーザにより選択された運転コースを前記サーバ30に送信」する点。
そして、本件発明5は、物の発明である本件発明1に対応する方法の発明であるところ、上記相違点5-1は、相違点1-1と同様の相違点である。そうすると、本件発明5は、本件発明1と同様に、甲1発明’及び甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえない。
(カ)本件発明6について
本件発明6と甲1発明’とを対比すると、少なくとも次の点(以下、「相違点6-1」という。)で相違する。
・相違点6-1
本件発明6は、サーバ装置が「パラメータ情報を記憶し」、「前記端末機に前記パラメータ情報を提供し」、「前記端末機では、受信した前記パラメータ情報から洗濯重量、洗剤種類、柔軟剤有無、乾燥温度、および乾燥時間を設定した選択コース情報を生成」するのに対し、甲1発明’は、サーバ30が「運転コースを記憶し」、「前記ユーザ端末51に選択したランドリー機器の運転コース信号を送信し」、「前記ユーザ端末51は、受信した運転コース信号に基づいて表示される複数の運転コースからユーザにより選択された運転コースを前記サーバ30に送信」する点。
そして、本件発明6は、物の発明である本件発明3に対応する方法の発明であるところ、上記相違点6-1は、相違点3-1と同様の相違点である。そうすると、本件発明6は、本件発明3と同様に、甲1発明’及び甲2から甲8に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たものといえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1から6に係る特許は、法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
また、本件発明1から6に係る特許は、法第36条第6項第2号に規定する要件、同項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、本件発明1、2、5に係る特許は、同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
本件発明1及び2は、甲1に記載された発明でないから、本件発明1及び2に係る特許は、法29条1項の規程に違反してされたものとはいえず、本件発明1から6は、甲1に記載された発明及び甲2から甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1から6に係る特許は、法29条2項の規程に違反してされたものとはいえない。また、他に本件発明1から6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項7及び8に係る特許は、上記第2に示すとおり、本件訂正により削除された。これにより、本件特許異議の申立てについて、請求項7及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、法第120条の8第1項で準用する同法135条の規程により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700568