特許異議申立
2024-700556
セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール
- 審判番号
- 2024-700556
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-064345
- 登録番号
- 7415748
- 請求日
- 2024年06月11日
- 審決日
- 2024年10月25日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】田口 昌浩
- 【権利者代理人】虎山 滋郎
- 【異議申立人】岩崎 千鶴子
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 西岡 貴央
- 審判官 橿本 英吾
- 分類
- P1651.113-Y (B29C) / P1651.121-Y (B29C) / P1651.537-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7415748号発明「セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7415748号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7415748号の請求項1~14に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2020-64345号)は、令和2年3月31日に特許出願したものであって、令和6年1月9日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月17日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和6年6月11日に、特許異議申立人 岩崎 千鶴子(以下「特許異議申立人」という。)から、請求項1~14に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明14」という。また、それらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルムを巻き取ってなり、
前記ポリエステルフィルムは、以下の手順(a-1)~(c-1)で測定される微視的な厚さ振れが0.14μm以下であり、以下の手順(a-2)~(c-2)で測定される巨視的な厚さ振れが0.14μm以下であり、かつ
前記ポリエステルフィルムが、以下の(1)を満足する、セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
(a-1)長手方向(MD方向)に流れるフィルムに膜厚計を幅方向(TD方向)に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-1)作成したグラフに対して移動平均処理を施し平滑化する。
(c-1)平滑化されたグラフから変曲点間の厚さ振れを算出し、これを微視的な厚さ振れとする。
(a-2)MD方向に流れるフィルムに膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-2)当該作成したグラフから、フィルムのTD方向に200mm間隔で全幅にわたってR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin)を算出する。
(c-2)200mm間隔で全幅にわたってサンプルリングした全R値の最大値を巨視的な厚さ振れとする。
(1)100℃で5分間加熱処理したとき、フィルム端部において、フィルムのMD方向0°に対して、左斜め45°方向の熱収縮率と右斜め45°方向の熱収縮率との差の絶対値が0.15%以下
【請求項2】
前記ポリエステルフィルムが、さらに、以下の(2)及び(3)を満足する請求項1に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
(2)100℃で5分間加熱処理したときの熱収縮率がMD方向で0.3%以下
(3)100℃で5分間加熱処理したときの熱収縮率がフィルムの幅方向(TD方向)で0.3%以下
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムは、チタン化合物を含む、請求項1又は2に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムの表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)が、0.65dl/g以上である、請求項1~3の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の面に粒子を含有する表面層Aを有する請求項1~4の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルムが、3層以上の積層構造を有する請求項1~5の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項7】
前記表面層Aは、平均粒径0.1~0.5μmの有機及び/又は無機粒子を含有する請求項5に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムは、前記表面層Aよりも平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)のいずれもが小さい表面層Cを有する、請求項5又は7に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項9】
前記表面層Cは、平均粒径0.05~0.2μmの粒子を900~6000ppm含有する、請求項8に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項10】
前記表面層Cは、チタン化合物を含む、請求項8又は9に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項11】
前記表面層Aは、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である、請求項5、及び7~10の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項12】
前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有する請求項1~11の何れか一項に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項13】
積層セラミックコンデンサーの製造工程において用いられる請求項12に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
【請求項14】
自動車用セラミックコンデンサーの製造工程において用いられる請求項12に記載のセラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール。
第3 特許異議申立ての概要
1 証拠方法
特許異議申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2015-62999号公報
甲第2号証:特開2016-187963号公報
甲第3号証:特開2018-90803号公報
以下、「甲第1号証」~「甲第3号証」をそれぞれ「甲1」~「甲3」という。
2 申立て理由の概要
特許異議申立人が主張する特許異議の申立て理由は、概略、以下のとおりである。
(1) 申立理由1:特許法29条1項3号(同法113条2号)
本件特許発明1~7、11、12は、甲1に記載された発明である。
(2) 申立理由2:特許法29条2項(同法113条2号)
本件特許発明8~10、13は、当業者が甲1及び甲2に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。本件特許発明14は、当業者が甲1に記載の発明、又は甲1及び甲3に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
(3) 申立理由3:特許法36条6項1号(同法113条4号)
本件特許発明1~14は、発明の課題が解決できることを認識することができないものである。
(4) 申立理由4:特許法36条6項2号(同法113条4号)
本件特許発明1~14は、不明確である。
(申立理由2において、甲1は主引用文献である。また、甲2~甲3は副引用文献である。)
第4 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
1 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載事項がある。
なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。以下同様である。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたオリゴマー封止性能と検査性能を有する離型ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ、有機EL、タッチパネル、電子ペーパーの技術は、汎用技術になりつつある。記述のアイテムの中でも、依然必要性が高い、部材同士を接着する粘着剤技術があるが、この粘着剤の需要は伸び続けている。このことから、粘着剤加工時に使用される可能性のある離型フィルムの需要は、同様に伸びる可能性を秘めている。
【0003】
上述の粘着剤技術において、タッチパネル部材の中に使用される粘着剤は、視認性の観点から、透明性が重要視される。中小型のタッチパネルでは、最終商品が小さく、人の目に近いところで、ディスプレイが見られるため、異物、基材起因の低分子成分の結晶などが、輝点となることを極端に嫌う。粘着剤には当然だが、離型フィルムについても、これらを防ぐ技術が要求される。
【0004】
粘着剤加工に使用される離型フィルムへの必要特性としては、離型性、ハンドリング性を中心とした加工特性は当然重要であるが、上述の理由から、異物検査性、工程汚染防止性、など、品質、加工歩留まり向上のための特性も重要となる。その中で、工程汚染防止性に関する封止機能、例えば、基材成分飛散防止性能、異物を寄せ付けないAS(帯電防止)性能、また、異物を容易に認識できる配向管理、粒子を見えにくくする技術は、成熟してきた粘着剤技術で使用されるセパレーターへの要請として挙げられる。
【0005】
従来の離型フィルム、特に、離型ポリエステルフィルムでは、工程中に存在するロール、特に、金属ロールや、加温ロール、通過時に入る傷、温度、また、粘着剤加工時にかかる熱が原因で、ポリエステルフィルム基材成分(ここでは、オリゴマーを示し、以後、OLと略すことがある)が発生することがある。
【0006】
また、タッチパネル技術中の特に厳しい用途では、ITO基材のハンドリング性を保持するために、粘着剤をITO基材に貼り合わせ、さらに、厚い離型フィルムを貼り合わせた状態で、ITO結晶化工程に使用されることがある。その場合、通常の離型フィルムでは、加熱によって、確実にOLが発生する。
【0007】
離型ポリエステルフィルムにおけるOL発生を抑制する既存技術としては、OL量の少ないポリエステル原料を用いる方法、OL封止層を設ける方法(特許文献1、2)、また、前記2つの技術を合わせる方法などが挙げられる。しかし、前者では、効力が不足することがあり、後者では、OL封止層の成分の微量な転写が原因で、最終シリコーン加工時に、シリコーン製膜が上手く出来ないという課題がある。
【0008】
つまり、離型ポリエステルフィルム技術では、シリコーン離型層を安定して、塗工するための、OL封止層付与技術が求められている。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、加熱工程のある粘着剤のキャリアのような働きをするか、ITOフィルムの結晶化時に貼り合わされる離型フィルムであって、高度なオリゴマー封止能力、かつ、高度な異物検査性を有する離型ポリエステルフィルムを提供することにある。」
(3)「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、平均粒子径0.5~3.0μmのコア・シェル型粒子を表層に含有する積層ポリエステルフィルムの一方の面に、四級アンモニウム塩基含有ポリマー、ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー、および架橋剤を含有する塗布液を塗布して得られたA層を有し、当該A層上に、少なくとも一種のオルガノシロキサン化合物を含有する塗布剤を塗布して形成された、厚みが10~100nmのB層を有するポリエステルフィルムであって、当該B層上に離型層を有することを特徴とする離型ポリエステルフィルムに存する。」
(4)「【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粘着剤工程の汚染を防ぎ、粘着剤加工歩留まりを上げ、かつ、検査性に優れるため、品質の高い粘着剤加工を可能にする離型ポリエステルフィルムを提供することができるため、その工業的価値は高い。」
(5)「【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上の多層フィルムであることを必須の要件とするものである。本発明にいう光学用積層ポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押し出される、いわゆる押出法により、押し出されたポリエステルフィルムであって、必要に応じ、縦方向および横方向の二軸方向に配向させたフィルムである。
【0016】
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレ-ト(PEN)等が例示される。
・・・
【0030】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7.0倍、好ましくは3.0~6.0倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7.0倍、好ましくは3.5~6.0倍である。そして、引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0031】
また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4~50倍、好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
・・・
【0033】
次に本発明におけるポリエステルフィルムを構成する層(ポリエステル基材に隣接する層であり、以下、単にA層と略記することがある)の形成について説明する。A層に関してはポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、A層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
【0034】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0035】
本発明において、A層は、粘着剤層中へのオリゴマー成分の進入防止を図ることを目的として、四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有する塗布液を使用することを必須の要件とするものである。
【0036】
本発明において使用する4級アンモニウム塩基含有ポリマーに関しては、分子中の主鎖や側鎖に、4級アンモニウム塩基を含む構成要素を有するものが対象となる。具体例としては、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N-アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2-ヒドロキシ3-メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。さらに、これらを組み合わせたり、あるいは他のバインダーポリマーと共重合させたりしても構わない。また、これら4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては、例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。中でも、ハロゲン以外の対イオンが、特に耐熱性が良好となる点で本発明の用途上好ましい。
・・・
【0061】
次にA層上に積層する塗布層(以下、単にB層と略記することがある)の形成について説明する。B層に関しては、上述の塗布延伸法(インラインコーティング)を用いてもよく、一旦製造した上述塗布層を有するポリエステルフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。
・・・
【0073】
本発明において、単独でOL封止性能がある、A層、B層だが、これらを組み合わせることで、膜内の密着性相互作用、また、互いの間隙を補い合う構成を取り、どちらか一方の膜を同程度の厚み(A+Bの厚み)にするよりも、効率的にOL封止性能を出すことが出来る。また、B層のみでも、100nmを超えるような、ある程度厚塗りを実施すれば、所望のOL封止性能を付与することが出来るが、前記不具合を生じることはもとより、さらに離型層塗膜(C層)形成時、硬化阻害を引き起こす。本特許の技術的な鍵は、このA,B層の組み合わせ、厚みの組み合わせが重要で、OL封止性能においても相乗効果をもたらしていると考えられる。
【0074】
本発明における塗布層(B層)上に設けられる離型層(C層)は、離型性を有する材料を含有していれば、特に限定されるものではない。その中でも、硬化型シリコーン樹脂を含有するものによれば離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
・・・
【0085】
本発明において、C層表面の粗さ(Sa)は10nm以下であることが好ましい。このとき、C層の表面粗さは、C層中に粒子を含有していない、また、薄層であるため、B層の表面粗さが、ダイレクトに反映されると考えてよい。表面粗さが10nmを超えると、OL封止性能が低下することがある。さらに、封止性能を発揮させるためには、好ましくはSaが8nm以下である。このSaを制御する方法として、塗布前の塗液剤でクラスター(会合体)をできるだけ生成させないことが重要である。検討の結果、B層の塗剤における溶液ヘーズが通常1.0%以下、好ましくは0.5%以下であれば、上記のSaを制御できることが分かった。」
(6)「【実施例】
【0089】
・・・
【0115】
(19)粘着剤加工特性
(A)離型フィルム10000m以上用いて、粘着剤(最高温度150℃、15m/分、炉長100m)加工したときの、粘着剤へのオリゴマーの結晶発生の度合いを評価する。次のような基準で判断する。
《判定基準》
○:OL発生がない
×:OL発生がある
・・・
【0117】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(a)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。
すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.61に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、極限粘度0.61のポリエステル(a)を得た。
【0118】
<ポリエステル(b)の製造方法>
ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径1.0μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が0.6重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(a)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(b)を得た。得られたポリエステル(b)は極限粘度0.63であった。
・・・
【0122】
〈ポリエステルの製造〉
ポリエステル(a)、(b)をそれぞれ80%、20%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(a)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々290℃で溶融した後、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、次に下記塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.03g/m2になるように塗布した後、テンターに導き、横方向に120℃で5.1倍延伸し、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、幅4500mm、A層を有する厚さ38μm(表層各2μm、中間層34μm)、固有粘度0.61のポリエステルフィルム(I)を得た。なお、A層を構成するために使用した化合物は以下のとおりである。
【0123】
(化合物例)
・4級アンモニウム塩基含有ポリマー(A1):
2-ヒドロキシ3-メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩ポリマー
対イオン:メチルスルホネート 数平均分子量:30000
・ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー(B1):
ポリエチレングリコール含有モノアクリレートポリマー 数平均分子量:20000
・ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー(B2):
オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノアクリレート ポリマー 数平均分子量:32000
・架橋剤(C1):メラミン架橋剤 (DIC社製:ベッカミン「MAS」)
・架橋剤(C2):オキサゾリン架橋剤(日本触媒製:エポクロス「WS500」)
【0124】
・粒子(D1):アルミナ表面変性コロイダルシリカ(平均粒径:50nm)
・粒子(D2):コロイダルシリカ(平均粒径:70nm)
得られたポリエステルフィルムのA層上に、下記塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.05g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布した後、120℃、30秒間熱処理し、B層を付与した積層ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
B層を構成するために使用した塗布剤組成は以下のとおりである。
《塗布剤組成》
オルガノシロキサン(エチルシリケート48:コルコート社):0.9重量%(溶媒100重量%に対して)
i-プロパノール/ブタノール=6/4混合溶媒で希釈し0.9重量%とした。
【0126】
得られた積層ポリエステルフィルムのB層上に、下記に示す離型剤組成からなる離型層組成―1の塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件でC層を設置し、ロール状の離型ポリエステルフィルムを得た。
【0127】
なお、C層を構成するために使用した離型剤組成は以下のとおりである。
《離型剤組成》
・離型層組成―1
硬化型シリコーン樹脂(KS-847H:信越化学製) 20部
触媒(PL-50T:信越化学製) 1.0部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)
・・・
【0136】
本発明の離型ポリエステルフィルムは、粘着剤工程、もしくは、ITO結晶化工程における加熱による粘着剤への汚染を防ぎ、最終加工歩留まりを上げるので、OL起因の異物に関して、品質管理が厳しい光学用途へ好適に利用することができる。」
(7)「【0130】
【表1】
[図:0001416503000001.jpg]
」
2 甲1に記載された発明
(1) 甲1ポリエステルフィルム発明
甲1の上記記載(【0117】~【0124】)に基づけば、甲1には、以下に示す「ポリエステルフィルム(I)」の発明(以下「甲1ポリエステルフィルム発明」という。)が記載されていると認められる
「テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行い、極限粘度0.61に相当する時点で反応を停止し、ポリエステル(a)を得て、
上記ポリエステル(a)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径1.0μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が0.6重量%となるように添加した以外は上記ポリエステル(a)の製造方法と同様の方法を用いて、ポリエステル(b)を得て、
ポリエステル(a)、(b)をそれぞれ80%、20%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(a)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々290℃で溶融した後、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得て、
ロール周速差を利用してフィルム温度100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記化合物を含有する塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.03g/m2になるように塗布した後、テンターに導き、横方向に120℃で5.1倍延伸し、220℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に4%の弛緩を加え、幅4500mm、上記塗布剤からなるA層を有する厚さ38μm(表層各2μm、中間層34μm)、固有粘度0.61のポリエステルフィルム(I)。
(A層を構成するために使用した化合物)
・4級アンモニウム塩基含有ポリマー(A1):
2-ヒドロキシ3-メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩ポリマー対イオン:メチルスルホネート数平均分子量:30000
・ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー(B1):
ポリエチレングリコール含有モノアクリレートポリマー 数平均分子量:20000
・ポリエチレングリコール含有アクリレートポリマー(B2):
オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノアクリレートポリマー 数平均分子量:32000
・架橋剤(C1):メラミン架橋剤(DIC社製:ベッカミン「MAS」)
・架橋剤(C2):オキサゾリン架橋剤(日本触媒製:エポクロス「WS500」)
・粒子(D1):アルミナ表面変性コロイダルシリカ(平均粒径:50nm)
・粒子(D2):コロイダルシリカ(平均粒径:70nm)」
(2) 甲1発明
また、甲1の上記記載(【0122】~【0127】)に基づけば、甲1には、実施例1として、以下の「離型ポリエステルフィルム」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「甲1ポリエステルフィルム発明のA層上に、B層を構成するための下記塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.05g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布した後、120℃、30秒間熱処理し、B層を付与し、
得られた積層ポリエステルフィルムのB層上に、C層を構成するための下記離型剤組成からなる離型層組成―1の塗布剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/minの条件でC層を設置して得た、ロール状の離型ポリエステルフィルム。
(B層を構成するために使用した塗布剤組成)
オルガノシロキサン(エチルシリケート48:コルコート社):0.9重量%(溶媒100重量%に対して)
i-プロパノール/ブタノール=6/4混合溶媒で希釈し0.9重量%とした。
(C層を構成するために使用した離型剤組成)
・離型層組成―1
硬化型シリコーン樹脂(KS-847H:信越化学製) 20部
触媒(PL-50T:信越化学製) 1.0部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)」
第5 当審の判断
1 申立理由1(新規性)について
(1) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア) 二軸延伸ポリエステルフィルム
甲1発明における甲1ポリエステルフィルム発明は、「ポリエステル(a)、(b)を」「混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(a)を中間層の原料として、」「冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得て、」「縦方向に2.8倍延伸した後、」「横方向に120℃で5.1倍延伸し」て得た、「塗布剤からなるA層を有する厚さ38μm(表層各2μm、中間層34μm)」「のポリエステルフィルム(I)」である。ここで、A層を構成するために使用した化合物(塗布剤組成)は、上記「第4 2(1)」に示したものであって、ポリエステルを含まないものである。
そうすると、甲1発明におけるの甲1ポリエステルフィルム発明から、A層を除いたの(以下、単に「甲1ポリエステルフィルム」という。)が、本件特許発明1の「二軸延伸ポリエステルフィルム」に相当する。
(イ) セラミックグリーンシートの支持体用ポリエステルフィルムロール
甲1発明は、「ロール状の離型ポリエステルフィルム」である。
上記(ア)の対比結果と併せれば、甲1発明と、本件特許発明1の「セラミックグリーンシート支持体用ポリエステルフィルムロール」は、「二軸延伸ポリエステルフィルムを巻き取ってな」る、「ポリエステルフィルムロール」である点において、一致する。
以上によれば、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、
(一致点)
「二軸延伸ポリエステルフィルムを巻き取ってなる、ポリエステルフィルムロール。」
以下の点で相違する。
(相違点1)
本件特許発明1は、ポリエステルフィルムが、以下の手順(a-1)~(c-1)で測定される微視的な厚さ振れが0.14μm以下であり、以下の手順(a-2)~(c-2)で測定される巨視的な厚さ振れが0.14μm以下であるのに対して、甲1発明は、上記微視的な厚さ振れ、巨視的な厚さ振れの大きさが不明である点。
(a-1)長手方向(MD方向)に流れるフィルムに膜厚計を幅方向(TD方向)に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-1)作成したグラフに対して移動平均処理を施し平滑化する。
(c-1)平滑化されたグラフから変曲点間の厚さ振れを算出し、これを微視的な厚さ振れとする。
(a-2)MD方向に流れるフィルムに膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成する。
(b-2)当該作成したグラフから、フィルムのTD方向に200mm間隔で全幅にわたってR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin)を算出する。
(c-2)200mm間隔で全幅にわたってサンプルリングした全R値の最大値を巨視的な厚さ振れとする。
(相違点2)
本件特許発明1は、熱収縮率に関して、下記(1)を満足するものであるのに対して、甲1発明は、下記(1)を満足するものであるか不明である点。
(1)100℃で5分間加熱処理したとき、フィルム端部において、フィルムのMD方向0°に対して、左斜め45°方向の熱収縮率と右斜め45°方向の熱収縮率との差の絶対値が0.15%以下。
(相違点3)
本件特許発明は、ポリエステルフィルムロールが、「セラミックグリーンシートの支持体用」であるのに対して、甲1発明は、そのような用途の特定がない点。
イ 判断
上記ア(エ)より、本件特許発明1と甲1発明には、上記相違点1~3がある。
そうすると、本件特許発明1は、甲1発明ではない。
したがって、本件特許発明1は、特許法29条1項3号に該当する発明ではない。
ウ 特許異議申立人の主張
特許異議申立人の主張の概略は、「甲1発明のフィルムは、本件特許発明のフィルムとほぼ同じ製造方法により製造されているので、微視的な厚さ振れも巨視的な厚さ振れも、本件特許発明と同じく、0.14μm以下と考えられる。」というものである(特許異議申立書23頁19~21行、下線は当合議体が付与したものである。)。
上記主張について検討する。
本件特許発明1に関し、本件明細書には、例えば巨視的な厚さ振れを所定の値以下とするために、「Rmaxが高い区間が検出されたら、都度、口金のリップ調整ボルトを機械的、熱的に作動させて口金のスリット間隙を変化させ樹脂吐出量を調整する等によりRmaxを調整して厚さ振れを小さくする」ことを行うことが記載されているが(【0019】、【0112】等)、甲1発明の製造工程においては、このような巨視的な厚さ振れを小さくする手法が採用されていない。また、甲1には、微視的及び巨視的な厚さ振れを調整することについて記載も示唆もないため、甲1発明の製造工程において、微視的及び巨視的な厚さ振れを小さくするような調整がなされていること(上記下線部)を前提とした上記主張は採用できない。
そうすると、甲1発明は、本件特許発明1の相違点1のうち、少なくとも巨視的な厚さ振れに関するに構成を具備している蓋然性が高いとはいえない。
(2) 本件特許発明2~14
本件特許発明2~14は、本件特許発明1にさらに構成要件を付加した発明である。そうすると、本件特許発明2~14と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1~3において相違するといえる。
したがって、本件特許発明2~14は、特許法29条1項3号に該当する発明ではない。
2 申立理由2(進歩性)について
(1) 本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、前記1(1)ア(エ)に記載したとおり、上記相違点1~3において実質的に相違する。
イ 判断
本件特許明細書の【0009】の「セラミックグリーンシートの薄肉化に伴い、誘電体層はより高い平滑性が求められてきており、とりわけ、セラミックグリーンシートの支持体として使用されるポリエステルフィルムの厚さ振れが、誘電体層の不均一性を招き、延いては、最終製品の収率に大きく影響を及ぼすことが分かってきた。」の記載から明らかなとおり、本件特許発明1は、「ポリエステルフィルム」をセラミックグリーンシートの支持体として使用する際に、ポリエステルフィルムの厚さ振れと誘電体層の不均一性との関係に着目しているものであるから、ポリエステルフィルムロールの厚さ振れと、ポリエステルロールに積層されるセラミックグリーンシートとは密接に関連しているといえる。したがって、相違点1と相違点3とを併せて検討する。
(ア) 本件特許発明1が、「セラミックグリーンシート支持体用のポリエステルフィルムロール」であるのに対して、甲1には、甲1発明の「離型ポリエステルフィルム」の課題及び用途について、以下の記載がある。
a 「離型ポリエステルフィルムでは、工程中に存在するロール、特に、金属ロールや、加温ロール、通過時に入る傷、温度、また、粘着剤加工時にかかる熱が原因で、ポリエステルフィルム基材成分(ここでは、オリゴマーを示し、以後、OLと略すことがある)が発生することがある。」(【0005】)
b 「加熱工程のある粘着剤のキャリアのような働きをするか、ITOフィルムの結晶化時に貼り合わされる離型フィルムであって、高度なオリゴマー封止能力、かつ、高度な異物検査性を有する離型ポリエステルフィルムを提供することにある。」(【0010】)
c 「(19)粘着剤加工特性
(A)離型フィルム10000m以上用いて、粘着剤(最高温度150℃、15m/分、炉長100m)加工したときの、粘着剤へのオリゴマーの結晶発生の度合いを評価する。次のような基準で判断する。」(【0115】)
d 「A層は、粘着剤層中へのオリゴマー成分の進入防止を図ることを目的として、四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有する塗布液を使用することを必須の要件とするものである。」(【0035】)
e 「本発明において、単独でOL封止性能がある、A層、B層だが、これらを組み合わせることで、膜内の密着性相互作用、また、互いの間隙を補い合う構成を取り、どちらか一方の膜を同程度の厚み(A+Bの厚み)にするよりも、効率的にOL封止性能を出すことが出来る。」(【0073】)
f 「本発明において、C層表面の粗さ(Sa)は10nm以下であることが好ましい。このとき、C層の表面粗さは、C層中に粒子を含有していない、また、薄層であるため、B層の表面粗さが、ダイレクトに反映されると考えてよい。表面粗さが10nmを超えると、OL封止性能が低下することがある。さらに、封止性能を発揮させるためには、好ましくはSaが8nm以下である。」(【0085】)
g 「本発明の離型ポリエステルフィルムは、粘着剤工程、もしくは、ITO結晶化工程における加熱による粘着剤への汚染を防ぎ、最終加工歩留まりを上げるので、OL起因の異物に関して、品質管理が厳しい光学用途へ好適に利用することができる。」(【0136】)
上記a~gの記載から、甲1発明は、光学用途の「離型ポリエステルフィルム」であって、粘着剤が形成された離型フィルムにおいて、加熱工程によりポリエステルフィルムから発生するオリゴマー成分が、粘着剤層中へ侵入することを防ぐことを課題とするものであると認められる。そして、上記d~fの記載から、上記課題に対して、ポリエステルフィルムとC層(離型層)との間に、オリゴマー封止性能を有するA層及びB層を設けることを解決手段とするものと認められる。そうすると、甲1発明は、離型層に粘着剤層を設けること、及び、粘着剤層が設けられた離型層付きのポリエステルフィルムに対して、ITOの結晶化工程で例示される加熱工程を施すこと、すなわち、離型層に粘着剤層を設けることを前提とした、光学用途の発明であると認められる。
これに対して、一般に、本願特許発明1の技術分野に係るセラミックグリーンシートの支持体は、離型層に粘着剤層を設けて使用に供することがおよそ想定されていないものである。
そうすると、甲1発明の「離型ポリエステルフィルム」を「セラミックグリーンシートの支持体」に適したものとすることは、当業者が容易に想到するものではない。また、甲1の他の記載を参酌しても、上記認定判断を左右するものはない。
(イ) 本件特許発明1が特定する微視的・巨視的な厚さ振れについて
仮に、グリーンシートの支持体として用いることの動機づけがあったとしても、甲1発明のポリエステルの微視的及び巨視的な厚さ振れを、相違点1に係る構成とすることの動機づけはない。
すなわち、甲1には、甲1ポリエステルフィルムの厚さや表面粗さ等の表面特性を課題とすることについては記載も示唆もない。そのため、甲1ポリエステルフィルムの微視的及び巨視的な厚さ振れを0.14μm以下とすること、すなわち、相違点1に係る本件特許発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、甲1には、甲1発明に対し、上記相違点1及び3に係る本件特許発明1の構成を採用する十分な動機づけはないというべきである。
また、甲2~甲3の記載内容を検討しても上記判断を左右するものはない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠に記載された事項に基づいても当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 本件特許発明2~14について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~14は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明2~14は、本件特許発明1の構成を全て具備するものである。
そうすると、上記(1)イのとおり、本件特許発明1が、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない以上、本件特許発明2~14も、甲1発明及び特許異議申立人が提出したいずれの証拠の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 申立理由3-1(サポート要件(その1))について
特許異議申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2~14について、「請求項1の構成要件である「微視的な厚さ振れ」は、(a-1)~(c-1)で測定される。そして、(a-1)において幅方向(TD方向)の厚さ分布グラフを作成し、(b-1)と(c-1)において幅方向の厚さ分布グラフを基に「微視的な厚さ振れ」を計算により算出する。即ち、「微視的な厚さ振れ」は幅方向(TD方向)の厚さ振れであり、フィルムロールの長さ方向の厚さの振れに関する情報は入っていない。一方、発明が解決しようとする課題である「誘電体層の不均一性を改善」は、誘電体層を作成する際のベースフィルムの幅方法(合議体注:「幅方向」の誤記と認める。)の厚さ振れだけでなく、長さ方法(合議体注:「長さ方向」の誤記と認める。)の厚さ振れにも同様に影響を受けることは当然である。よって、幅方向の厚さ振れを規定しているが長さ方向の振れを規定していない本件特許発明1が、「誘電体層の不均一性を改善する」という発明の課題が解決できることを認識することはできない。また、「巨視的な厚さ振れ」に関しても「微視的な厚さ振れ」と同様である。」と主張する(特許異議申立書28頁20行~29頁6行)。
しかしながら、特許異議申立人の主張は、以下の理由により採用できない。
本件特許発明1における「微視的な厚さ振れ」は、手順(a-1)により作成されたフィルムのTD方向の厚さ分布グラフに基づき、手順(b-1)、(c-1)により算出されるものであるが、手順(a-1)は、「長手方向(MD方向)に流れるフィルムに膜厚計を幅方向(TD方向)に移動させながら測定したデータを平均化することで、フィルムのTD方向の厚さ分布グラフを作成」するものである。そうすると、膜厚分布グラフを作成するにあたり、膜厚計は、幅方向(TD)方向だけではなく、フィルムに対して相対的に長手方向(MD)方向にも移動するから、厚さ分布グラフはフィルムロールの長手方向の厚さ振れに関する情報も含むものと認められる。具体的には、膜厚計は長手方向(MD方向)にもフィルムに対して相対的に移動しているから、長手方向(MD方向)に厚さ振れが存在している場合、手順(a-1)により作成される厚さ分布グラフに当該長手方向(MD方向)の厚さ振れが反映されることは明らかである。したがって、本件特許発明1の「微視的な厚さ振れ」に、長手方向(MD方向)の情報が含まれると言える。
なお、(a-1)~(c-1)により算出される微視的な厚さ振れが、仮に幅方向(TD方向)の厚さ振れに関する情報のみを含むものだとしても、幅方向(TD方向)及び長手方向(MD方向)のいずれの厚さ振れも考慮しないものよりも、少なくとも幅方向(TD方向)の厚さ振れを考慮したものの方が、「誘電体層の不均一性を改善する」を改善するものであることは当業者にとって明らかである(下記、4 申立理由3-2(サポート要件(その2))も参照のこと。)。
また、上記は、「微視的な厚さ振れ」について説示したものだが、「巨視的な厚さ振れ」は手順(a-2)の「MD方向に流れるフィルムに膜厚計をTD方向に移動させながら測定したデータを平均化し」作成されたフィルムのTD方向の厚さ分布グラフを基づき、手順(b-2)、(c-2)により算出されるものであり、膜厚計は相対的に長さ方向(MD方向)にも移動しているから、「巨視的な厚さ振れ」についても上記の「微視的な厚さ振れ」で説示した内容が同様にあてはまる。
以上を踏まえると、本件特許発明1~14は、当業者が発明の課題が解決できると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものである。
4 申立理由3-2(サポート要件(その2))について
特許異議申立人は、本件特許発明1~14について、「実施例1~7のフィルムロールが、本件特許発明が解決しようとする課題である「グリーンシートの変形防止」も「誘電体層の不均一性を改善」も解決していることが示されていない。即ち、実施例において示されているのは、請求項の要件を満たすフィルムロールが製造されたことに留まり、これら実施例に記載されたフィルムロールが発明の課題を解決することを示す評価が行われておらず、本件特許発明の全ては、発明の課題が解決できると認識すること(が)できない。」と主張する(特許異議申立書29頁12~19行)。
しかしながら、特許異議申立人の主張は、以下の理由により採用できない。
すなわち、セラミックグリーンシートの支持体として、ポリエステルフィルムの平滑性が高いことが好ましいことは、当業者にとって明らかな事項である。これは、本件明細書の【背景技術】における「セラミックグリーンシートが薄膜化されると、キャリアフィルムとしての離型フィルムの表面に微小な突起があれば、これに起因して、セラミックグリーンシートにピンホール等が発生する。このため当該離型フィルムには、高い表面平滑性が求められている。」(【0003】)、「特許文献2には、離型フィルムの支持体として、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムとして、・・・である離型用ポリエステルフィルムが開示されている。」(【0005】)等の記載からも理解できることである。
そして、本件特許発明の「微視的な厚さ振れ」は、手順(C-1)で求められる変曲点間の厚さ振れ、「巨視的な厚さ振れ」は、手順(C-3)で求められるR値(フィルム厚みの最大値Rmax-フィルム厚みの最小値Rmin)により算出されるものであるから、これらの値が所定の値よりも小さければ、ポリエステルフィルムの平滑性に関する特性が高く、その上に成膜される誘電体層の均一性向上に資するということは、当業者にとって明らかである。
そうすると、本件明細書は、実施例として開示された積層ポリエステルフィルムロールを用いてグリーンシートを作成することによって効果を検証していないものの、当業者は、本件明細書の記載に基づいて本件特許発明の課題が解決できることを理解できることは上述のとおりであるから、グリーンシートを作成することによる検証がないことをもって直ちに発明の課題が解決できると認識することができないとはいえない。
以上を踏まえると、本件特許発明1~14は、当業者が発明の課題が解決できると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものである。
5 申立理由4(明確性要件)について
特許異議申立人は、本件特許発明1及び本件特許発明1の記載を引用する本件特許発明2~14について、「請求項1の構成要件である「微視的な厚さ振れ」と「巨視的な厚さ振れ」の測定法において、幅方向に単位長さ当たり何点測定するか(測定点密度)が記載されていない。そして、膜厚計の装置名も記載されていない。よって、「微視的な厚さ振れ」と「巨視的な厚さ振れ」を評価するための幅方向の膜厚測定において測定点密度をどうするのかが不明である。そして、測定点密度が細かければより細かい厚さ斑を測定することとなり、測定点密度により「微視的な厚さ振れ」と「巨視的な厚さ振れ」も値が変化する。よって、測定点密度が不明である膜厚測定に基づき評価される「微視的な厚さ振れ」と「巨視的な厚さ振れ」は一義的に決まらず、「微視的な厚さ振れ」と「巨視的な厚さ振れ」を構成要件とする請求項1は明確性要件を満たしていない。」と主張する(特許異議申立書29頁22行~30頁6行)。
上記主張について検討する。
「微視的な厚さ振れ」及び「巨視的な厚さ振れ」の測定法については、本件明細書の【0015】~【0017】及び【0129】~【0132】に記載されており、当該記載に接した当業者はその範囲内で測定点密度を適宜選択するといえるところ、それでもなお、測定値が一義的に決まらないという上記主張の趣旨は、要するに、測定点密度が変われば厚さ振れの測定値が変動すること、すなわち、統計的な測定値の変動(ばらつき)を問題視するものと解される。しかしながら、当該測定値の変動の程度は、第三者の利益を不当に害するほどのものとはいえない。むしろ、測定点密度に応じて測定値に統計的な変動が生じることは技術常識であるから、上記測定点密度の選択にあたり、変動がある程度抑制されるような測定点密度を確保することは当業者であれば当然に考慮することである。
したがって、本件特許発明1~14は明確である。
以上のとおりであるから、異議申立書に記載した特許異議申立理由は、採用すべき理由がない。
第6 むすび
以上より、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700556